(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】サーバ、及び充電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241210BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20241210BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20241210BHJP
B60L 53/68 20190101ALI20241210BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20241210BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
B60L53/30
B60L53/63
B60L53/68
H02J3/14
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2022041497
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-035135(JP,A)
【文献】特開2013-225971(JP,A)
【文献】特開2017-055476(JP,A)
【文献】特開2021-125940(JP,A)
【文献】特開2020-115707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0107373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 7/00
B60L 53/30
B60L 53/68
B60L 53/63
H02J 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源と電気的に接続可能に構成される複数の車両を含む車群を制御するサーバであって、
前記車群に含まれる各車両は、蓄電装置を備え、
前記サーバは、
所定の調整期間の開始前に前記車群から複数の対象車両を選ぶ選択部と、
充電制御部と、
を備え、
前記充電制御部は、前記調整期間内においては、前記外部電源と電気的に接続された前記複数の対象車両の各々が備える前記蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように、前記複数の対象車両の少なくとも1つを制御するように構成され、
前記充電制御部は、前記複数の対象車両のうち、前記調整期間内に充電終了時刻が予約された第1車両が備える前記蓄電装置の充電開始を早めるように構成される、サーバ。
【請求項2】
前記充電制御部は、前記第1車両が備える前記蓄電装置の充電開始を、前記調整期間の開始前に充電が完了するように早める、請求項1に記載のサーバ。
【請求項3】
前記選択部は、前記調整期間の前日又はそれよりも前の日に前記車群から前記複数の対象車両を選ぶように構成され、
前記充電制御部は、前記調整期間の開始前に、前記複数の対象車両の中から前記第1車両を判別して前記第1車両が備える前記蓄電装置の充電開始を早めた後、前記調整期間内においては、予め設定された電力範囲内で任意に要求される前記目標値を逐次受信するように構成される、請求項1又は2に記載のサーバ。
【請求項4】
前記車群に含まれる各車両は、充電終了時刻及び目標SOCを予約可能に構成され、
前記充電制御部は、前記充電終了時刻及び前記目標SOCが予約された前記対象車両について、当該対象車両が備える前記蓄電装置のSOCが前記充電終了時刻に前記目標SOCに到達するための充電開始時刻を取得するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項5】
前記充電制御部は、前記複数の対象車両の中から、前記充電開始時刻が前記調整期間の終了後であり、かつ、前記調整期間の開始前に前記外部電源と電気的に接続された第2車両を判別し、
前記充電制御部は、前記調整期間内において、前記総充電電力が前記目標値に追従するように、前記第2車両が備える前記蓄電装置の充電制御を実行する、請求項4に記載のサーバ。
【請求項6】
前記充電制御部は、前記複数の対象車両の中から、前記充電終了時刻が前記調整期間の終了後であり、かつ、前記調整期間の開始前かつ前記充電開始時刻の後に前記外部電源と電気的に接続された第3車両を判別し、
前記充電制御部は、前記第3車両が備える前記蓄電装置の充電を、前記第3車両が前記外部電源と電気的に接続されてから前記充電終了時刻まで継続させる、請求項4又は5に記載のサーバ。
【請求項7】
前記充電制御部は、前記複数の対象車両の中から、前記充電開始時刻が前記調整期間内であり、かつ、前記調整期間の開始前に前記外部電源と電気的に接続された第4車両を判別し、
前記充電制御部は、前記第4車両が備える前記蓄電装置の充電を、前記第4車両が前記外部電源と電気的に接続されてから前記調整期間の開始時刻まで継続させる、請求項4~6のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項8】
前記充電制御部は、前記複数の対象車両の中から、前記充電開始時刻が前記調整期間の終了後であり、かつ、前記調整期間の途中で前記外部電源と電気的に接続された第5車両を判別し、
前記充電制御部は、前記調整期間内において、前記総充電電力が前記目標値に追従するように、前記第5車両が備える前記蓄電装置の充電制御を実行する、請求項4~7のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項9】
前記充電制御部は、前記複数の対象車両の中から、前記調整期間内かつ前記充電開始時刻の後に前記外部電源と電気的に接続された第6車両を判別し、
前記充電制御部は、前記第6車両が前記外部電源と電気的に接続されると、前記第6車両が備える前記蓄電装置の充電を即時開始する、請求項4~8のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項10】
前記充電制御部は、前記複数の対象車両の中から、前記調整期間内の前記充電開始時刻の前かつ前記調整期間の開始後に前記外部電源と電気的に接続された第7車両を判別し、
前記充電制御部は、前記第7車両が前記外部電源と電気的に接続されてから前記充電開始時刻が到来するまでの期間においては、前記総充電電力が前記目標値に追従するように、前記第7車両が備える前記蓄電装置の充電制御を実行する、請求項4~9のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項11】
前記選択部は、タイマ充電が予約された車両を優先的に前記対象車両として選ぶ、請求項1~10のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項12】
前記車群に含まれる各車両の移動予測を行なう予測部をさらに備え、
前記選択部は、前記予測部による移動予測の結果を用いて、前記外部電源と電気的に接続された状態を前記調整期間の全体にわたって維持すると予測される車両を優先的に前記対象車両として選ぶ、請求項1~11のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項13】
所定の調整期間の開始前に車群から複数の対象車両を選ぶことと、
選ばれた前記複数の対象車両のうち、前記調整期間内に充電終了時刻が予約された対象車両が備える蓄電装置の充電開始を早めることと、
前記調整期間内において、外部電源と電気的に接続された前記複数の対象車両の各々が備える前記蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように、前記複数の対象車両の少なくとも1つを制御することと、
を含む、充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ及び充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の分散型エネルギーリソース(以下、「DER」とも称する)を束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者(以下、「アグリゲータ」と称する)が知られている。たとえば特開2020-156149号公報(特許文献1)には、アグリゲータが運用計画に従って電力機器を動作させる技術が開示されている。電力機器の充放電性能は環境(たとえば、温度)によって変化し得るため、特許文献1では、環境情報によって補正された電力機器の充放電性能をアグリゲータが取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両外部から供給される電力を蓄えることができるxEV(たとえば、電気自動車)は、外部電源の調整力(たとえば、電力需給を平準化させる調整力)として動作し得る。このため、たとえばアグリゲータに帰属するサーバが、xEVをリモート制御することにより、xEVが備える蓄電装置を用いて外部電源の電力調整を行なうことができる。ただし、xEVの状況によっては、サーバが、xEVによる上記外部電源の電力調整を行なうことができない場合がある。たとえば、外部電源と電気的に接続されていないxEVは、外部電源の調整力として機能しない。また、タイマ充電が予約されたxEVでは、予約された充電スケジュールに従って蓄電装置の充電が実行される。タイマ充電中のxEVは外部電源の電力調整を行なわない。その一方で、サーバがxEVに予約されたタイマ充電を完全に解除してxEVが備える蓄電装置を外部電源の電力調整のために使用してしまうことは、車両ユーザの利便性を大きく損なう。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両ユーザの利便性を過度に損なうことなく、車両が備える蓄電装置を外部電源の電力調整に好適に使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係るサーバは、外部電源と電気的に接続可能に構成される複数の車両を含む車群を制御するように構成される。車群に含まれる各車両は、蓄電装置を備える。サーバは、所定の調整期間の開始前に車群から複数の対象車両を選ぶ選択部と、充電制御部とを備える。充電制御部は、調整期間内においては、外部電源と電気的に接続された複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように複数の対象車両の少なくとも1つを制御するように構成される。また、充電制御部は、複数の対象車両のうち、調整期間内に充電終了時刻が予約された第1車両が備える蓄電装置の充電開始を早めるように構成される。
【0007】
上記サーバは、調整期間の開始前に複数の対象車両を選び、調整期間内においてそれら対象車両の少なくとも1つを制御することによって、外部電源の電力調整(以下、単に「電力調整」とも称する)を行なうことができる。選択部は、車群に含まれる一部の車両を選んでもよいし、車群に含まれる全ての車両を選んでもよい。また、上記サーバは、選ばれた複数の対象車両のうち第1車両(すなわち、調整期間内に充電終了時刻が予約された車両)が備える蓄電装置の充電開始時刻を早めるように構成される。こうした構成によれば、以下に説明するような作用及び効果が奏される。
【0008】
充電予約された車両は、タイマ充電を実行する。タイマ充電は、車両に予約された充電スケジュールに従う充電である。上記第1車両は、調整期間内においてタイマ充電を実行する。調整期間内において対象車両によって実行されるタイマ充電は、電力調整のための充電ではないため、電力調整にとって外乱となる。こうした外乱の影響は、他の対象車両における蓄電装置の充電抑制及び/又は放電によって相殺できる。しかし、調整期間内におけるタイマ充電の総充電電力が、他の対象車両によって調整可能なレベル(許容レベル)を超えると、電力調整の精度(目標値に対する追従性)が低下しやすくなる。そこで、上記サーバは、第1車両におけるタイマ充電の開始を早めることで、第1車両のタイマ充電を、予約された充電終了時刻よりも早く完了させる。これにより、調整期間内において第1車両がタイマ充電を実行する期間が短くなり、電力調整の精度低下が抑制される。
【0009】
ユーザによって車両に予約された充電終了時刻は、車両の出発予定時刻に対応することが多い。電力調整のために充電完了を遅らせた場合には、車両が出発するときに充電が完了していない事態を招き、車両ユーザの利便性を大きく損なう可能性が高い。一方、電力調整のために充電完了を早めた場合には、車両が出発するときに充電は完了しているため、車両ユーザの利便性を大きく損なうことはないと考えられる。
【0010】
以上説明したように、上記構成を有するサーバによれば、車両ユーザの利便性を過度に損なうことなく車両が備える蓄電装置を外部電源の電力調整に好適に使用することが可能になる。
【0011】
なお、外部電源は、所定のエリアに電力を供給する電力網(たとえば、マイクログリッド、又はインフラストラクチャとして整備された大規模な電力網)であってもよい。外部電源は、スマートグリッドであってもよい。上記外部電源は、交流電力を供給してもよいし、直流電力を供給してもよい。電力調整は、周波数制御であってもよいし、需給バランス調整であってもよい。
【0012】
充電制御部は、第1車両が備える蓄電装置の充電開始を、調整期間の開始前に充電が完了するように早めるように構成されてもよい。
【0013】
上記構成によれば、調整期間の開始前に第1車両のタイマ充電を完了させることができる。これにより、電力調整にとっての外乱が少なくなる。
【0014】
選択部は、調整期間の前日又はそれよりも前の日に車群から複数の対象車両を選ぶように構成されてもよい。充電制御部は、調整期間の開始前に、複数の対象車両の中から第1車両を判別して第1車両が備える蓄電装置の充電開始を早めた後、調整期間内においては、予め設定された電力範囲内で任意に要求される目標値を逐次受信するように構成されてもよい。
【0015】
調整期間に対して対象車両の決定が早いほど、調整期間の開始までにユーザによって充電予約の内容が変更される可能性が高くなる。そのため、第1車両を避けて対象車両を選んだとしても、対象車両に予約された充電スケジュールが変更されることによって、選ばれた対象車両が第1車両になるかもしれない。この点、上記のサーバは、調整期間の開始前に第1車両におけるタイマ充電の開始を早めることで、電力調整にとっての外乱を低減できる。また、上記のサーバは、調整期間内において逐次受信する目標値に従って対象車両を制御することで、外部電源の電力調整を行なうことができる。
【0016】
車群に含まれる各車両は、充電終了時刻及び目標SOCを予約可能に構成されてもよい。充電制御部は、充電終了時刻及び目標SOCが予約された対象車両について、当該対象車両が備える蓄電装置のSOCが充電終了時刻に目標SOCに到達するための充電開始時刻を取得するように構成されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、充電制御部が、上記充電開始時刻を用いて、複数の対象車両の中から所定の車両(たとえば、後述する第1~第7車両の少なくとも1つ)を判別しやすくなる。充電制御部は、車両から取得した充電終了時刻及び目標SOCに基づいて充電開始時刻を求めてもよい。あるいは、充電制御部は、車両が求めた上記充電開始時刻を車両から取得してもよい。なお、SOC(State Of Charge)は、蓄電装置の蓄電残量を示し、たとえば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0018】
充電制御部は、複数の対象車両の中から、充電開始時刻が調整期間の終了後であり、かつ、調整期間の開始前に外部電源と電気的に接続された第2車両を判別するように構成されてもよい。充電制御部は、調整期間内において、複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように、第2車両が備える蓄電装置の充電制御を実行するように構成されてもよい。
【0019】
上記の充電制御部は、調整期間内において、第2車両が備える蓄電装置を用いて電力調整を行なう。第2車両は、調整期間よりも後にタイマ充電を開始しても蓄電装置を目標SOCまで充電することができる。このため、上記のように電力調整を行なっても、第2車両のユーザの利便性を大きく損なうことはないと考えられる。
【0020】
充電制御部は、複数の対象車両の中から、充電終了時刻が調整期間の終了後であり、かつ、調整期間の開始前かつ充電開始時刻の後に外部電源と電気的に接続された第3車両を判別するように構成されてもよい。充電制御部は、第3車両が備える蓄電装置の充電を、第3車両が外部電源と電気的に接続されてから充電終了時刻まで継続させるように構成されてもよい。
【0021】
第3車両では、調整期間の全体にわたって蓄電装置の充電を継続しても、予約された充電終了時刻までに蓄電装置のSOCが目標SOCに到達しないと考えられる。ただし、上記構成によれば、第3車両が外部電源と電気的に接続されるとすぐに第3車両の蓄電装置の充電が開始されるため、充電終了時刻における蓄電装置のSOCを目標SOCに近づけやすくなる。
【0022】
充電制御部は、複数の対象車両の中から、充電開始時刻が調整期間内であり、かつ、調整期間の開始前に外部電源と電気的に接続された第4車両を判別するように構成されてもよい。充電制御部は、第4車両が備える蓄電装置の充電を、第4車両が外部電源と電気的に接続されてから調整期間の開始時刻まで継続させるように構成されてもよい。
【0023】
上記サーバは、第4車両が外部電源と電気的に接続されるとすぐに第4車両の蓄電装置の充電を開始する。これにより、第4車両に予約された充電終了時刻における蓄電装置のSOCを目標SOCに近づけやすくなる。また、上記サーバは、調整期間内においては、第4車両が備える蓄電装置を用いて電力調整を行なうことができる。上記構成によれば、調整期間内において第4車両が備える蓄電装置を用いて電力調整を行ないつつ、第4車両の充電終了時刻における蓄電装置のSOCを目標SOCに近づけやすくなる。
【0024】
充電制御部は、複数の対象車両の中から、充電開始時刻が調整期間の終了後であり、かつ、調整期間の途中で外部電源と電気的に接続された第5車両を判別するように構成されてもよい。充電制御部は、調整期間内において、複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように、第5車両が備える蓄電装置の充電制御を実行するように構成されてもよい。
【0025】
上記の充電制御部は、調整期間内において、第5車両が備える蓄電装置を用いて電力調整を行なう。第5車両は、調整期間よりも後にタイマ充電を開始しても蓄電装置を目標SOCまで充電することができる。このため、上記のように電力調整を行なっても、第5車両のユーザの利便性を大きく損なうことはないと考えられる。
【0026】
充電制御部は、複数の対象車両の中から、調整期間内かつ充電開始時刻の後に外部電源と電気的に接続された第6車両を判別するように構成されてもよい。充電制御部は、第6車両が外部電源と電気的に接続されると、第6車両が備える蓄電装置の充電を即時開始するように構成されてもよい。
【0027】
上記構成によれば、第6車両が外部電源と電気的に接続されるとすぐに第6車両の蓄電装置の充電が開始されるため、第6車両の充電終了時刻における蓄電装置のSOCを目標SOCに近づけやすくなる。
【0028】
充電制御部は、複数の対象車両の中から、調整期間内の充電開始時刻の前かつ調整期間の開始後に外部電源と電気的に接続された第7車両を判別するように構成されてもよい。充電制御部は、第7車両が外部電源と電気的に接続されてから充電開始時刻が到来するまでの期間においては、複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように、第7車両が備える蓄電装置の充電制御を実行するように構成されてもよい。
【0029】
上記サーバは、第7車両が外部電源と電気的に接続されてから第7車両の充電開始時刻が到来するまでの期間においては、第7車両が備える蓄電装置を用いて電力調整を行なう。第7車両は、充電開始時刻にタイマ充電を開始すれば蓄電装置を目標SOCまで充電することができる。このため、第7車両の蓄電装置が上記のように電力調整に使用されても、第7車両のユーザの利便性を大きく損なうことはないと考えられる。
【0030】
選択部は、タイマ充電が予約された車両を優先的に対象車両として選ぶように構成されてもよい。
【0031】
タイマ充電(たとえば、タイマ充電に係る充電終了時刻及び目標SOC)が予約されていない車両では、即時充電、又はユーザの手動操作によって、蓄電装置の充電が行なわれる傾向がある。即時充電は、車両が外部電源と電気的に接続されると、すぐに開始される充電である。こうした車両のユーザは、サーバによる車両のリモート制御を希望しないことが多い。上記構成によれば、タイマ充電が予約された車両が対象車両として優先的に選ばれることで、車両ユーザの利便性の低下を抑制できる。
【0032】
上述したいずれかのサーバは、車群に含まれる各車両の移動予測を行なう予測部をさらに備えてもよい。選択部は、予測部による移動予測の結果を用いて、外部電源と電気的に接続された状態を調整期間の全体にわたって維持すると予測される車両を優先的に対象車両として選ぶように構成されてもよい。
【0033】
外部電源と電気的に接続されていない車両(たとえば、走行中の車両)は、外部電源の調整力として機能しない。そこで、上記サーバは、車群から対象車両を選択する前に、車群に含まれる各車両の移動スケジュールを予測する。そして、上記サーバは、外部電源と電気的に接続された状態を調整期間の全体にわたって維持すると予測される車両を優先的に対象車両として選ぶ。これにより、電力調整のために使用可能な車両(蓄電装置)を確保しやすくなる。
【0034】
本開示の第2の観点に係る充電制御方法は、以下に示す第1~第3ステップを含む。
第1ステップでは、所定の調整期間の開始前に車群から複数の対象車両を選ぶ。第2ステップでは、選ばれた複数の対象車両のうち、調整期間内に充電終了時刻が予約された対象車両が備える蓄電装置の充電開始を早める。第3ステップでは、調整期間内において、外部電源と電気的に接続された複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように、複数の対象車両の少なくとも1つを制御する。
【0035】
上記充電制御方法によっても、前述したサーバと同様、車両ユーザの利便性を過度に損なうことなく、車両が備える蓄電装置を外部電源の電力調整に好適に使用することが可能になる。
【発明の効果】
【0036】
本開示によれば、車両ユーザの利便性を過度に損なうことなく、車両が備える蓄電装置を外部電源の電力調整に好適に使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本開示の実施の形態に係る管理システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した車両及びEVSEの構成を示す図である。
【
図4】
図1に示したサーバによって実行される市場取引に係る処理を示すフローチャートである。
【
図5】第1~第4車両について説明するための図である。
【
図6】
図1に示したサーバによって実行される第1車両判別に係る処理を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施の形態に係る充電制御方法において、サーバが、第1車両が備える蓄電装置の充電開始を早める処理について説明するための図である。
【
図8】本開示の実施の形態に係る充電制御方法において、サーバが、第4車両に予約されたタイマ充電のスケジュールを変更する処理について説明するための図である。
【
図9】第5~第7車両について説明するための図である。
【
図10】
図1に示したサーバによって実行される第2車両判別に係る処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図1に示したサーバによって実行される外部電源の電力調整に係る処理を示すフローチャートである。
【
図12】タイマ充電が予約された対象車両によって実行されるタイマ充電に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0039】
図1は、本開示の実施の形態に係る管理システムの概略的な構成を示す図である。
図1を参照して、この実施の形態に係る管理システムは、車群1と、EVSE群2と、サーバ700と、管理装置1000とを含む。管理装置1000は、サーバ200及び500を含む。EVSEは、車両用給電設備(Electric Vehicle Supply Equipment)を意味する。
【0040】
サーバ200,500,700の各々は、たとえばHMI(Human Machine Interface)及び通信I/F(インターフェース)を具備するコンピュータである。各コンピュータは、プロセッサと記憶装置とを備える。記憶装置には、プロセッサに実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。HMIは入力装置及び表示装置を含む。HMIは、タッチパネルディスプレイであってもよい。
【0041】
電力系統PGは、送配電設備によって構築される電力網である。電力系統PGには、複数の発電所が接続されている。電力系統PGは、それらの発電所から電力の供給を受けている。この実施の形態では、電力会社が、電力系統PG(商用電源)を保守及び管理する。電力会社は、TSO(系統運用者)に相当する。電力系統PGは、交流電力(たとえば、三相交流電力)を供給する。サーバ700は、TSOに帰属するコンピュータに相当する。サーバ700は、中給システム(中央給電指令所のシステム)及び簡易指令システムを内蔵する。この実施の形態に係る電力系統PGは、本開示に係る「外部電源」の一例に相当する。
【0042】
サーバ500は、車群1に含まれる各車両と周期的に通信を行なう。この実施の形態では、車群1に含まれる各車両が、xEV(電動車)であり、電力系統PGの調整力として動作可能に構成される。車群1に含まれる各車両は、たとえば個人が所有する車両(POV)である。車群1に含まれる車両の数は、5台以上30台未満であってもよいし、30台以上100台未満であってもよいし、100台以上であってもよい。この実施の形態では、車群1が50台程度の車両を含むものとする。車群1は、後述する構成(
図2参照)を有する車両100を含む。車群1における車両100と他の車両との構成は、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0043】
EVSE群2は、電力系統PGから電力の供給を受ける複数のEVSEを含む。サーバ200は、必要に応じて各EVSEと通信を行なう。EVSE群2は、後述する構成(
図2参照)を有するEVSE300を含む。EVSE群2は、複数種のEVSE(たとえば、普通充電器及び急速充電器)を含んでもよい。EVSEは、公共EVSE(たとえば、商業施設、自動車販売店、又は高速道路のパーキングエリアに設置されたEVSE)と非公共EVSE(たとえば、家庭用EVSE)との両方を含んでもよい。EVSE群2に含まれるEVSEの数は任意である。
【0044】
管理装置1000と、サーバ700と、車群1に含まれる各車両と、EVSE群2に含まれる各EVSEとは、通信ネットワークNWを介して相互に通信可能に構成される。サーバ700は通信ネットワークNWを介してサーバ200と通信する。管理装置1000においては、サーバ200とサーバ500とが相互に通信可能に構成される。通信ネットワークNWは、たとえばインターネットと無線基地局とによって構築される広域ネットワークである。各車両は、無線通信で通信ネットワークNWにアクセスして通信ネットワークNWと接続されるように構成される。各EVSEは、たとえば通信線を介して通信ネットワークNWと接続されている。なお、通信形態は、上記に限られず適宜変更可能である。たとえば、各EVSEは無線通信により通信ネットワークNWと接続されてもよい。
【0045】
図2は、車両100及びEVSE300の構成を示す図である。
図2を参照して、EVSE300は、電力系統PGから電力の供給を受けて給電を行なうように構成される。EVSE300は、電力回路310を内蔵し、充電ケーブル320を備える。電力回路310は、電力系統PGと電気的に接続されている。充電ケーブル320は、先端にコネクタ320a(プラグ)を有し、内部に通信線及び電力線を含む。1つの電線が通信線及び電力線の両方を兼ねてもよい。電力回路310は、電力系統PGから供給される電力を、車両100への給電に適した電力に変換して、変換後の電力を充電ケーブル320に出力する。EVSE300による給電電力はコネクタ320aから出力される。
【0046】
車両100は、コネクタ320aが着脱可能なインレット60を備える。EVSE300の本体につながる充電ケーブル320のコネクタ320aが駐車状態の車両100のインレット60に接続されることで、車両100はEVSE300を介して電力系統PGと電気的に接続された状態(以下、「プラグイン状態」とも称する)になる。一方、たとえば車両100の走行中においては、車両100がEVSE300及び電力系統PGの各々と電気的に接続されていない状態(以下、「プラグアウト状態」とも称する)になる。なお、
図2には、EVSE300の給電方式に対応するインレット60のみを示しているが、車両100は、複数種の給電方式(たとえば、AC方式及びDC方式)に対応できるように複数のインレットを備えてもよい。
【0047】
車両100は、バッテリ11と、SMR(System Main Relay)12と、MG(Motor Generator)20と、PCU(Power Control Unit)22と、電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する)150とをさらに備える。ECU150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、及び記憶装置153を含んで構成される。ECU150はコンピュータであってもよい。プロセッサ151はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、ECU150における各種制御(たとえば、バッテリ11の充電制御)が実行される。
【0048】
バッテリ11は、車両100の走行用の電力を蓄電する。車両100は、バッテリ11に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。この実施の形態に係る車両100は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(BEV)である。バッテリ11としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。この実施の形態に係るバッテリ11は、本開示に係る「蓄電装置」の一例に相当する。
【0049】
車両100は、バッテリ11の状態を監視する監視モジュール11aをさらに備える。監視モジュール11aは、バッテリ11の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。監視モジュール11aは、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、及び通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU150は、監視モジュール11aの出力に基づいてバッテリ11の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。
【0050】
車両100は、充電器61(車載充電器)及び充電リレー62をさらに備える。充電器61及び充電リレー62の各々は、インレット60とバッテリ11との間に位置する。充電器61及び充電リレー62の各々は、ECU150によって制御される。この実施の形態では、インレット60、充電器61、及び充電リレー62を含む充電ラインが、SMR12とPCU22との間に接続されている。しかしこれに限られず、バッテリ11とSMR12との間に充電ラインが接続されてもよい。
【0051】
充電器61は、車両外部からインレット60に入力された電力(たとえば、交流電力)を用いてバッテリ11を充電する。充電器61は電力変換回路を含む。電力変換回路は、AC(交流)/DC(直流)変換を行なうように構成されてもよい。電力変換回路は、PFC(Power Factor Correction)回路、インバータ、絶縁回路(たとえば、絶縁トランス)、及び整流回路の少なくとも1つを含んでもよい。充電リレー62は、インレット60からバッテリ11までの電路の接続/遮断を切り替える。車両100は、充電器61の状態を監視する監視モジュール61aをさらに備える。監視モジュール61aは、充電器61の状態(たとえば、充電電力)を検出する各種センサ(たとえば、電流センサ及び電圧センサ)を含み、検出結果をECU150へ出力する。
【0052】
プラグイン状態の車両100では、外部充電(すなわち、車両外部からの電力によるバッテリ11の充電)が可能になる。車両100は、外部充電によって電力系統PGの電力調整を行なうことができる。外部充電のための電力は、たとえば電力系統PGからEVSE300の充電ケーブル320を通じてインレット60に供給される。外部充電が実行されるときには充電リレー62が閉状態(接続状態)にされ、外部充電が実行されないときには充電リレー62が開状態(遮断状態)にされる。
【0053】
MG20は、たとえば三相交流モータジェネレータである。MG20は、車両100の走行用モータとして機能する。MG20は、PCU22によって駆動され、車両100の駆動輪を回転させる。また、MG20は、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ11へ出力する。車両100は、MG20の状態を監視するモータセンサ21をさらに備える。モータセンサ21は、MG20の状態を検出する各種センサ(たとえば、電流センサ、電圧センサ、及び温度センサ)を含み、検出結果をECU150へ出力する。なお、車両100が備える走行用モータの数は任意であり、1つでも2つでも3つ以上でもよい。走行用モータはインホイールモータであってもよい。
【0054】
PCU22は、バッテリ11から供給される電力を用いてMG20を駆動する。SMR12は、バッテリ11からPCU22までの電路の接続/遮断を切り替える。PCU22は、たとえばインバータとコンバータとを含んで構成される。SMR12及びPCU22の各々は、ECU150によって制御される。SMR12は、車両100の走行時に閉状態(接続状態)にされる。また、バッテリ11とインレット60(ひいては、車両外部)との間で電力のやり取りが行なわれるときも、SMR12は閉状態にされる。
【0055】
ECU150は、タイマ充電に係る充電終了時刻及び目標SOC(充電終了時のSOC)を予約可能に構成される。充電終了時刻及び目標SOCが予約されたECU150はタイマ充電を実行する。車両に充電終了時刻及び目標SOCが予約されていることは、車両にタイマ充電が予約されていることを意味する。タイマ充電は、予約された充電スケジュールに従う充電である。具体的には、車両100におけるタイマ充電では、予約された充電終了時刻にバッテリ11のSOCが目標SOCに到達するようにECU150がバッテリ11の充電制御(充電器61の制御)を実行する。
【0056】
車群1に含まれる各車両は、ユーザからのタイマ充電の予約を受け付けるとともに、予約されたタイマ充電を実行可能に構成される。車群1に含まれる各車両は、充電予約情報をサーバ500へ送信する。充電予約情報は、車両にタイマ充電が予約されているか否かを示す。また、充電予約情報は、車両に予約された充電終了時刻及び目標SOCをさらに示す。車群1に含まれる各車両は、タイマ充電が予約されたときに、充電予約情報をサーバ500へ送信してもよい。この実施の形態では、車群1においてタイマ充電が予約された車両は、サーバ200による蓄電装置のリモート制御を許可する。他方、車群1においてタイマ充電が予約されていない車両は、サーバ200による蓄電装置のリモート制御を許可しない。ただし、リモート制御の許可条件は、上記に限られず適宜変更可能である。
【0057】
車両100は、HMI81と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」とも称する)82と、通信装置90とをさらに備える。バッテリ11は、これらの装置(補機類)にも直接的又は間接的に電力を供給する。
【0058】
HMI81は、入力装置及び表示装置を含む。HMI81は、タッチパネルディスプレイを含んでもよい。HMI81は、タイマ充電の予約を受け付けてもよい。HMI81は、メータパネル及び/又はヘッドアップディスプレイを含んでもよい。HMI81は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0059】
NAVI82は、タッチパネルディスプレイと、GPS(Global Positioning System)モジュールと、記憶装置と(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。タッチパネルディスプレイは、車内のユーザからの入力を受け付けたり、地図及びその他の情報を表示したりする。GPSモジュールは、図示しないGPS衛星からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVI82は、GPS信号を用いて車両100の位置を検出する。NAVI82は、地図上に車両100の位置をリアルタイムで表示可能に構成される。NAVI82は、地図情報を参照して、車両100の現在位置から目的地までの最適ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行なう。NAVI82は、OTAによって地図情報を逐次更新してもよい。
【0060】
通信装置90は、各種通信I/Fを含んで構成される。ECU150は、通信装置90を通じて車両100の外部の装置と通信を行なう。通信装置90は、通信ネットワークNWにアクセス可能な無線通信機(たとえば、DCM(Data Communication Module))を含む。無線通信機は、5G又は6G(第5又は第6世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。車両100は、たとえばプラグイン状態とプラグアウト状態との両方においてサーバ200及び500の各々と無線通信を行なう。この実施の形態では、車両100が、サーバ200及び500の各々からの指令又は通知を上記無線通信機で受信する。ただしこれに限られず、車両100は、プラグイン状態においてはEVSE300を介してサーバ200及び500の各々と有線通信してもよい。
【0061】
モバイル端末UTは、車両100のユーザによって携帯される端末である。この実施の形態では、モバイル端末UTとして、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。スマートフォンはコンピュータを内蔵する。通信装置90は、車内又は車両周辺の範囲内に存在するモバイル端末UTと直接通信するための通信I/Fを含む。通信装置90とモバイル端末UTとは、無線LAN(Local Area Network)、NFC(Near Field Communication)、又はBluetooth(登録商標)のような近距離通信を行なってもよい。なお、モバイル端末UTとしては、任意のモバイル端末を採用可能であり、ラップトップ、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ又はスマートグラス)、又は電子キーなども採用可能である。また、車両100とモバイル端末UTとの通信方式としても任意の通信方式を採用可能である。
【0062】
モバイル端末UTは、予めサーバ200,500に登録され、サーバ200,500と無線通信可能に構成される。モバイル端末UTには所定のアプリケーションソフトウェア(以下、「モバイルアプリ」と称する)がインストールされている。サーバ200,500は、モバイル端末との通信を開始する前に所定の認証を行ない、認証に成功したモバイル端末のみと通信を行なうように構成される。これにより、サーバ200,500に登録されていないモバイル端末が不正な通信を行なうことを抑制できる。車両100のユーザは、所定の認証情報(上記認証に成功するための情報)をモバイル端末UTに入力することで、サーバ200,500との通信を開始できる。また、上記モバイルアプリに所定の認証情報を登録しておくことで、上記認証情報の入力を省略できる。モバイル端末UTは、上記モバイルアプリを通じてサーバ200,500と情報のやり取りを行なうことができる。
【0063】
この実施の形態では、モバイル端末UTが位置センサを備える。位置センサは、GPSを利用したセンサであってもよい。モバイル端末UTは、ユーザの位置を示す情報(以下、「ユーザ位置情報」とも称する)を、定期的に又はサーバ500からの要求に応じて、サーバ500へ送信する。
【0064】
ECU150を含む車両システム(車両100を制御するシステム)のオン(作動)/オフ(停止)は、ユーザが起動スイッチ70を操作することによって切り替わる。起動スイッチ70は、たとえば車両100の車室内に設置される。起動スイッチ70がオン操作されることによって車両システムが起動する。また、車両システムが作動しているときに、起動スイッチ70がオフ操作されると、車両システムは停止状態になる。ただし、走行中の車両100においては、起動スイッチ70のオフ操作が禁止される。一般に、車両の起動スイッチは「パワースイッチ」又は「イグニッションスイッチ」などと称される。
【0065】
再び
図1を参照して、サーバ200は、アグリゲータに帰属するコンピュータに相当する。アグリゲータは、複数のDER(Distributed Energy Resources)を束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者である。サーバ200は車群1を制御するように構成される。車群1に含まれる各車両は、電力系統PG(外部電源)と電気的に接続可能に構成される蓄電装置を備え、DERとして機能し得る。サーバ200は、複数のDER(たとえば、車群1に含まれる各車両)を遠隔・統合制御することによって、これらのDERをVPP(仮想発電所)として機能させてもよい。なお、サーバ500は、アグリゲータに帰属してもよいし、自動車メーカに帰属してもよい。
【0066】
サーバ200は、複数のDERをVPPとして統合制御するために、各DERに対してDR(デマンドレスポンス)を実施してもよい。DRにより、DERに電力系統PGの電力調整が要請される。サーバ200は、DRを利用して、サーバ700から要請された電力系統PGの電力調整、又は電力市場で落札した電力系統PGの電力調整を、複数のDER(たとえば、車群1に含まれる各車両)に行なわせてもよい。
【0067】
DERがDR(電力調整)に参加することによって、電力系統PGに柔軟性及びアカデシーを付与することができる。DRに参加するDERの管理者(たとえば、車両ユーザ)は、サーバ200にリモート制御を許可する。サーバ200によるDERのリモート制御が許可されている状況においては、サーバ200が、リモート制御により、電力系統PGの電力調整のための充電又は放電をDERに行なわせることができる。たとえば、車両100において、ECU150がサーバ200からの指令に従って充電器61を制御する。ただし、サーバ200がDERへ指令を送信しても、電力調整のためのDERの準備が完了していなければ、DERはリモート制御による電力調整を行なうことができない。
【0068】
DERが行なう電力調整の種類は任意である。電力調整は、たとえば需給調整、電源安定化、負荷追従、周波数調整のいずれかであってもよい。DERは、リモート制御によって電力系統PGの調整力又は予備力として動作してもよい。なお、DRは、上げDRと下げDRとに大別される。上げDRは、基本的には需要増加を要請するDRである。ただし、要請を受けるDERが発電設備である場合には、上げDRはDERに供給抑制を要請することもある。一方、下げDRは、需要抑制又は逆潮流を要請するDRである。
【0069】
この実施の形態では、サーバ200が、選択部210と、充電制御部220と、予測部230とを含む。これら各部は、たとえば、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって具現化される。ただしこれに限られず、上記各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0070】
選択部210は、所定の調整期間の開始前に車群1から複数の対象車両を選ぶように構成される。調整期間は、サーバ700から指定された期間であってもよいし、電力市場において約定した期間であってもよい。電力市場において約定した期間は、一般に「提供期間」とも称される。また、提供期間の長さは、一般に「継続時間」とも称される。
【0071】
充電制御部220は、調整期間内においては、電力系統PGと電気的に接続された複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力が目標値に追従するように、複数の対象車両の少なくとも1つを制御するように構成される。
【0072】
予測部230は、車群1に含まれる各車両の移動予測を行なうように構成される。詳細は後述するが、選択部210は、予測部230による移動予測の結果を用いて、車群1から複数の対象車両を選ぶ。予測部230は、移動予測のための情報をサーバ500から取得して、移動予測を行なう。
【0073】
サーバ500は、車群1に含まれる各車両に関する情報(以下、「車両情報」とも称する)を保有する。車両情報は、サーバ500の記憶装置に保存され、逐次更新される。サーバ500は、車群1に含まれる各車両と周期的に通信を行ない、各車両から車両情報を逐次受信する。そして、サーバ500は、受信した最新の車両情報に基づいて記憶装置内の車両情報を更新する。車両情報は、車両ID(車両の識別情報)で区別されている。車両情報には、たとえば、充電場所と、充電場所に設置されたEVSEのスペックと、ユーザ位置情報(車両ユーザの位置)と、車両の位置情報と、車載バッテリのSOCと、系統接続状態(プラグイン状態/プラグアウト状態)と、充電予約情報と、車両システムの状態(オン/オフ)と、ナビゲーションシステムに設定された情報(たとえば、目的地までの走行ルート)と、車両の移動に関する履歴データ(たとえば、毎日の車両の移動に関して車両の位置と時刻とを紐付けたデータ)と、車両ユーザの行動に関する履歴データとが含まれる。また、車両ごとに仕様が異なる場合には、各車両の仕様(たとえば、充電に関するスペック)が予めサーバ500に登録されてもよい。
【0074】
図2に示した車両100の充電場所は、車両ユーザの自宅(たとえば、EVSE300の設置場所)であってもよい。この実施の形態では、車両100の走行中において、車両100の位置とバッテリ11のSOCとの各々が、リアルタイムで車両100からサーバ500へ逐次送信される。また、車両100においてプラグイン状態とプラグアウト状態とが切り替わったタイミングで、車両100からサーバ500へ最新の系統接続状態が送信される。また、車両100において車両システムのオン/オフが切り替わったタイミングで、車両100からサーバ500へ最新の車両システムの状態が送信される。また、NAVI82に目的地が設定されると、NAVI82によって探索された走行ルートが車両100からサーバ500へ送信される。
【0075】
サーバ200は、サーバ500から上述の車両情報を取得できる。サーバ500は、たとえばサーバ200からの要求に応じて、サーバ200へ車両情報を送信する。また、サーバ500は、定期的に車両情報をサーバ200へ送信してもよい。
【0076】
サーバ200の予測部230は、車両システムがオンからオフに切り替わったときに、車両が駐車状態になったと推定してもよい。予測部230は、車両の駐車状態が所定時間以上継続した場合に、その車両はユーザの自宅又は勤務先に存在すると推定してもよい。予測部230は、車両の位置情報とユーザ位置情報とに基づいて、ユーザが車両に乗っているか否かを判断してもよい。予測部230は、ユーザ位置情報を用いて、車両を降りた後のユーザの位置を追跡しながら、今後のユーザの行動を予測してもよい。予測部230は、ユーザの行動に関する履歴データ(たとえば、気象情報、渋滞情報、及び曜日によって区別して管理される過去の位置データ)からユーザの行動スケジュールを予測してもよい。予測部230は、車両システムがオフからオンに切り替わったときに、所定時間後に車両が発車すると予測してもよい。予測部230は、ナビゲーションシステムに設定された情報から走行計画を取得してもよい。走行計画の例としては、出発地、出発地からの発車時刻、目的地、目的地への到着時刻、目的地までの走行ルートが挙げられる。予測部230は、車両の位置情報を用いて車両の位置を追跡しながら、車両の目的地への到着時刻及び到着時のバッテリ残量を予測してもよい。予測部230は、車両の移動に関する履歴データ(たとえば、気象情報、渋滞情報、及び曜日によって区別して管理される過去の位置データ)から車両の移動スケジュールを予測してもよい。
【0077】
充電制御部220は、調整期間の当日において、サーバ500から受信する各対象車両の車両情報に基づいて、対象車両ごとに電力調整のための準備が完了しているか否かを判断する。以下、電力調整のための準備が完了している対象車両を、「スタンバイ車両」とも称する。
【0078】
対象車両が所定の要件(以下、「スタンバイ要件」とも称する)を満たしている場合に、充電制御部220は、当該対象車両について電力調整のための準備が完了していると判断する。この実施の形態に係るスタンバイ要件は、対象車両が所定の充電場所(たとえば、前述の車両情報によって示される充電場所)でプラグイン状態になっていることを含む。たとえば
図2に示すように、所定の充電場所に設置されたEVSE300の本体につながる充電ケーブル320のコネクタ320aが車両100のインレット60に接続されることで、車両100はプラグイン状態になってスタンバイ要件を満たす。プラグイン状態の車両100は、電力系統PGと電気的に接続される。
【0079】
以下、電力市場で落札した電力系統PGの調整力として車群1を動作させるためにサーバ200が実行する処理について説明する。以下では、電力市場で落札される調整力の一例として、三次調整力-2について説明する。
【0080】
図3は、三次調整力-2の概要を示す図である。
図3を参照して、三次調整力-2は、FIT(Feed-in Tariff)特例制度のための調整力であり、需給調整市場で取引きされる。需給調整市場では、電力を商品とした取引きが行なわれる。各商品は、たとえば入札方式によって売買される。三次調整力-2は、「RR-FIT」(Replacement Reserve for Feed-in Tariff)に相当し、応動時間は45分以内、継続時間は3時間(6コマ)である。需給調整市場では、1日を3時間単位で区切った8ブロックの各々について、三次調整力-2の取引きが行なわれる。
【0081】
FIT特例制度では、TSOが発電計画に対するインバランスの責任を負う。TSOは、対象ブロック(調整期間)の前々日に再エネ出力を予測して発電計画値を決定する。そして、TSOは、対象ブロックの前日に、再エネ予測誤差(前々日からの予測誤差)を解消するための三次調整力-2を調達する。なお、再エネは、再生可能エネルギー(RE:Renewable Energy)を意味する。
【0082】
アグリゲータは、対象ブロック(調整期間)の前日の12時から14時までの期間内に、需給調整市場で入札を行なう。具体的には、アグリゲータは、サーバ200を用いて、商品(たとえば、三次調整力-2)、ブロック(8ブロックのいずれか)、入札量(ΔkW)、対象車両の識別情報(車両ID)、及び対象車両の充電場所を含む入札情報を、需給調整市場システムへ送信する。入札者には、入札日の15時に結果が通知される。入札した商品が落札されると、約定に至る。ΔkW約定量は、落札量に相当する。
【0083】
需給調整市場で三次調整力-2を落札した者(落札者)は、基準値(kW)に対して設定された落札量の範囲(以下、「落札範囲」とも称する)内で電力を調整する。この実施の形態では、アグリゲータが、充電側の三次調整力-2に入札する。そして、アグリゲータが落札者になる。落札者は、所定の時刻t0(たとえば、落札された対象ブロックの開始時刻1時間前)までに基準値を需給調整市場システムに登録する。時刻t0は、基準値の提出期限に相当する。この実施の形態では、充電側の基準値が登録される。落札者に帰属するサーバ200は、落札された対象ブロック(たとえば、
図3に示す調整期間t1~t2)内において、落札範囲内でサーバ700が任意に要求する目標値(たとえば、
図3に示す充電指令値L1)を、サーバ700から逐次受信する。そして、サーバ200の充電制御部220は、調整期間t1~t2において、電力系統PG(外部電源)と電気的に接続された複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力(たとえば、
図3に示す充電電力値L2)が目標値に追従するように複数の対象車両の少なくとも1つを制御する。基準値(kW)と充電電力値L2(kW)との差が、複数の対象車両が提供する電力系統PGの調整力(ΔkW)に相当する。
【0084】
具体的には、調整期間t1~t2内において充電指令値L1が変更された場合、充電制御部220は、商品要件の応動時間(45分)内に充電電力値L2をその値に変化させる。調整期間t1~t2内において充電指令値L1が同じ値で継続する場合、充電制御部220は、少なくとも商品要件の継続時間はその指令に従って充電電力値L2を制御する。調整期間t1~t2の終了後、サーバ200は、調整期間t1~t2における実績データ(充電電力値L2)をサーバ700(TSOのサーバ)へ送信する。TSOは、調整期間t1~t2において、ΔkW約定量(落札量)の供出が可能な状態を落札者が維持していることと、落札範囲内で充電指令値L1に従って落札者が調整していること(応動実績)とを確認する。ΔkW約定量の供出可否の評価(アセスメントI)と応動実績の評価(アセスメントII)との少なくとも一方において、商品要件の不適合が判明した場合には、落札者に所定のペナルティ料金が科される。
【0085】
図4は、サーバ200によって実行される市場取引に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の条件が成立すると、実行される。所定の条件は、所定の時刻に成立してもよいし、定期的に成立してもよい。サーバ200がユーザから入札指示を受けたときに、所定の条件が成立してもよい。サーバ200は、市場価格と、気象情報(予測情報を含む)と、車群1の需要履歴との少なくとも1つに基づいて、入札に適したタイミングを決定し、入札に適したタイミングに
図4に示す処理を実行してもよい。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0086】
図1及び
図2とともに
図4を参照して、S11では、予測部230が、入札に係る商品(電力調整の種類)、調整期間(対象ブロック)、及び入札量(ΔkW)を取得する。これらの情報は、アグリゲータがHMIを通じてサーバ200に入力してもよい。
【0087】
続くS12では、予測部230が、車群1に含まれる各車両の車両情報をサーバ500から取得し、取得した車両情報を用いて、車群1に含まれる各車両の今後の移動を予測する。具体的には、予測部230は、車両の位置及びSOCの推移と、車両の走行計画と、車両の移動に関する履歴データとの少なくとも1つを用いて、その車両の今後の移動を予測する。そして、予測部230は、車群1に含まれる各車両について、S11で取得された調整期間に関して後述する第1~第7車両(
図5及び
図9参照)のいずれになるかを予測する。なお、調整期間の開始時刻までにタイマ充電が予約されないと予測される車両については、第1~第7車両のいずれにもならないと予測される。予測部230は、車両ユーザの行動に関する履歴データを用いて、車両ユーザの行動(たとえば、タイマ充電を予約するか否か)を予測してもよい。
【0088】
続くS13では、選択部210が、予測部230による移動予測の結果を用いて、入札に係る電力調整(すなわち、S11で取得された条件に従う電力系統PGの電力調整)を実行させる複数の対象車両を選ぶ。詳しくは、選択部210は、車群1の中から後述する優先順位(第2車両、第5車両、第4車両、第7車両の順)に従って車両を選び、入札に係る電力調整に関する情報(たとえば、調整期間、及び電力調整の対価として車両ユーザに与えられる報酬)をその車両のユーザ端末へ送信し、当該電力調整への参加を承認するユーザに対して返信を要求する。この要求に対して車両ユーザが返信することによって、当該車両が対象車両として確定する。このようにして、選択部210は、車群1の中から、電力調整のために十分な数の対象車両を選ぶ。選択された一部の対象車両が電力調整から離脱しても、残った対象車両によって電力調整を完遂できるように、選択部210は、入札量よりも大きな調整力(入札量に余裕分を足した調整力)に対応する対象車両を選ぶ。調整力の余裕分は学習によって更新されてもよい。なお、サーバ200からの通知(返信要求)を受けるユーザ端末は、車両に搭載された端末(たとえば、
図2に示したHMI81又はNAVI82)であってもよいし、車両ユーザによって携帯される端末(たとえば、
図2に示したモバイル端末UT)であってもよい。後述するS16におけるユーザ端末についても、同様のことがいえる。
【0089】
選択部210は、S12において第2車両(
図5)になると予測された車両を、対象車両として優先的に選ぶ。詳細は後述するが、第2車両は、調整期間の開始時刻までにタイマ充電が予約されており、かつ、調整期間の全体にわたってプラグイン状態(電力系統PGと電気的に接続された状態)を維持する車両に相当する。第2車両になると予測された車両だけでは十分な調整力を確保できない場合には、選択部210は、第5車両(
図9)になると予測された車両を選ぶ。それでも対象車両が足りない場合には、選択部210は、第4車両(
図5)になると予測された車両を、対象車両として選ぶ。さらに、選択部210は、第7車両(
図9)になると予測された車両を、対象車両として選んでもよい。ただしこれに限られず、対象車両の選び方は適宜変更可能である。対象車両を選ぶ優先条件は、アグリゲータによって任意に設定されてもよい。
【0090】
続くS14では、サーバ200が入札を行なう。具体的には、充電制御部220が、需給調整市場システムへ入札情報を送信する。入札情報は、S11で取得された情報(商品、調整期間、及び入札量)を含む。さらに、入札情報は、S13で決定された各対象車両の識別情報(車両ID)及び充電場所を含む。充電場所は、座標値(緯度及び経度)によって特定されてもよいし、充電場所に設置された電力量計の識別情報(メータID)によって特定されてもよい。サーバ200は、各対象車両に関する情報をサーバ500から取得してもよい。
【0091】
続くS15では、充電制御部220が、入札した商品(たとえば、三次調整力-2)が落札されたか否かを判断する。落札されなかった場合には(S15にてNO)、
図4に示す一連の処理が終了する。他方、落札された場合には(S15にてYES)、処理がS16に進む。
【0092】
S16では、落札された商品に関する情報を含む前述の入札情報を、充電制御部220がサーバ700に通知する。これにより、落札された商品に対応する電力調整のためのリソース(対象車両)を示すリストパターンがサーバ700に通知される。
【0093】
さらに、充電制御部220は、S16において、各対象車両のユーザ端末に調整期間(開始時刻及び終了時刻)を通知するとともに、車両をタイマ充電が予約された状態にすることを車両ユーザに要求する。タイマ充電が予約されていない対象車両のユーザ端末は、タイマ充電の予約を受け付ける入力画面を表示してもよい。このように、サーバ200は、電力市場で調整力の入札を行ない(S14)、車群1の中から選ばれた複数の対象車両を、電力市場で約定した調整力として動作させるための通知(S16)を行なうように構成される。以下では、
図4に示した処理によって入札され、かつ、落札された商品の調整期間を、「約定期間」と称する。この実施の形態では、三次調整力-2が落札される。すなわち、約定期間は、
図3に示した調整期間t1~t2に相当する。
【0094】
この実施の形態に係るサーバ200では、充電制御部220が、約定期間の開始前に複数の対象車両(より特定的には、
図4に示した処理によって約定期間に対して選ばれた複数の対象車両)から第1~第4車両を判別する。以下では、説明の便宜上、全ての対象車両の各々が、
図2に示した構成(車両100と同じ構成)を有するものとする。
【0095】
充電制御部220は、タイマ充電が予約された対象車両について、予約された充電終了時刻(以下、「Te」と表記する)及び目標SOCの両方の要件を満たす充電開始時刻(以下、「Ts」と表記する)を取得するように構成される。Tsは、対象車両においてバッテリ11(蓄電装置)のSOCが充電終了時刻に目標SOCに到達するための充電開始時刻に相当する。充電制御部220は、対象車両の充電スペック(たとえば、定格充電電力)と、充電場所に設置されたEVSEのスペック(たとえば、定格充電電力)とを用いて、対象車両に予約されたTe及び目標SOCに対応するTsを算出してもよい。
【0096】
図5は、第1~第4車両について説明するための図である。
図5を参照して、第1車両は、約定期間(t1~t2)内にTeが予約された車両である。第2車両は、Tsが約定期間の終了時刻(t2)よりも後であり、かつ、約定期間の開始時刻(t1)前に電力系統PGと電気的に接続された車両である。第3車両は、Teが約定期間の終了時刻(t2)後であり、かつ、約定期間の開始時刻(t1)前かつTsの後に電力系統PGと電気的に接続された車両である。
図5中の線L31は、第3車両に予約されたタイマ充電のスケジュールに従うSOCの推移を示す。
図5中の線L32は、第3車両が即時充電を実行した場合のSOCの推移を示す。第4車両は、Tsが約定期間(t1~t2)内であり、かつ、約定期間の開始時刻(t1)前に電力系統PGと電気的に接続された車両である。
【0097】
図6は、サーバ200によって実行される第1車両判別に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、対象車両ごとに実行される。この実施の形態では、約定期間の開始前に対象車両がプラグイン状態になると、その対象車両(すなわち、約定期間の開始前に電力系統PGと電気的に接続された対象車両)について以下に説明する
図6に示す一連の処理が開始される。
【0098】
図1及び
図2とともに
図6を参照して、S20では、充電制御部220が、対象車両に関する情報(車両情報)をサーバ500から取得し、取得した車両情報に基づいて車両判別を行なう。具体的には、充電制御部220は、まず、充電予約情報に基づいて、対象車両にタイマ充電が予約されているか否かを判断する。充電制御部220は、タイマ充電が予約された対象車両については、充電予約情報(Te及び目標SOC)と充電スペックとを用いてTsを算出するとともに、算出されたTsを用いて第1~第4車両の各々に該当するか否かを判断する。そして、判別結果を示す情報(以下、「第1判別情報」とも称する)が対象車両の車両IDと紐付けられてサーバ200の記憶装置に保存される。第1判別情報は、対象車両にタイマ充電が予約されているか否かを示す。さらに、第1判別情報は、対象車両が該当する車両の区分(「第1車両」、「第2車両」、「第3車両」、「第4車両」、又は「その他」)を示す。「その他」は、対象車両が第1~第4車両のいずれにも該当しないことを意味する。
【0099】
その後、充電制御部220は、S21、S22、S23、S24において、対象車両がそれぞれ第1車両、第2車両、第3車両、第4車両に該当するか否かを判断する。
【0100】
対象車両が第1車両に該当する場合には(S21にてYES)、充電制御部220が、S31において、対象車両(第1車両)が備えるバッテリ11の充電開始時刻を早める。
図7は、S31の処理について説明するための図である。
図7を参照して、充電制御部220は、基本的には、線L21で示すように、約定期間の開始前に充電が完了するように、第1車両が備えるバッテリ11の充電開始を早める。ただし、約定期間の開始時刻(t1)までの余裕時間が不十分であり、約定期間の開始前に充電を完了させることができない場合には、充電制御部220は、線L22で示すように、可能な限り早く充電を完了させるように、第1車両が備えるバッテリ11の充電開始時刻として現在時刻を設定する。この場合、第1車両がバッテリ11の即時充電を実行する。上記充電開始時刻の変更によって、第1車両における充電が早期に完了する。第1車両における充電は、タイマ充電のみによって完了する。すなわち、第1車両は、約定期間における電力調整から除外される。
【0101】
上記S31においては、サーバ200(充電制御部220)が、タイマ充電のスケジュール変更を要求する信号(以下、「スケジュール変更信号」とも称する)を対象車両へ送信する。対象車両は、サーバ200からの要求(スケジュール変更信号)に応じてタイマ充電のスケジュール(たとえば、Ts及びTe)を変更する。こうして、対象車両におけるタイマ充電のスケジュール変更が行なわれる(
図7参照)。後述するS33及びS34の各々においても、サーバ200がスケジュール変更信号を送信することによって、対象車両におけるタイマ充電のスケジュール変更が行なわれる。
【0102】
再び
図1及び
図2とともに
図6を参照して、対象車両が第2車両に該当する場合には(S21にてNOかつS22にてYES)、充電制御部220は、対象車両(第2車両)に予約されたタイマ充電のスケジュールを変更することなく(S32)、
図6に示す一連の処理を終了する。
【0103】
対象車両が第3車両に該当する場合には(S21,S22にてNOかつS23にてYES)、充電制御部220は、S33において、バッテリ11の即時充電が実行されるように、対象車両(第3車両)に予約されたタイマ充電のスケジュールを変更する。すなわち、充電開始時刻として現在時刻が設定される。これにより、第3車両が、
図5中に線L32で示したようにバッテリ11の即時充電を実行する。第3車両が備えるバッテリ11のタイマ充電は、当該対象車両が電力系統PGと電気的に接続されてからTe(変更なし)まで継続する。第3車両は、約定期間の全体にわたってバッテリ11のタイマ充電を実行する。すなわち、第3車両は、約定期間における電力調整から除外される。
【0104】
対象車両が第4車両に該当する場合には(S21~S23にてNOかつS24にてYES)、充電制御部220は、S34において、対象車両(第4車両)に予約されたタイマ充電のスケジュールを変更する。
図8は、S34の処理について説明するための図である。
図8を参照して、充電制御部220は、第4車両に予約されたタイマ充電が約定期間前の第1充電と約定期間後の第2充電とに分けて実行されるように、対象車両の充電スケジュールを変更する。第4車両には、第1充電の充電開始時刻、充電終了時刻として、それぞれ現在時刻、約定期間の開始時刻(t1)が設定される。第1充電は、第4車両が電力系統PGと電気的に接続されてから約定期間の開始時刻まで継続される。また、第4車両には、第2充電の充電開始時刻、充電終了時刻として、それぞれ約定期間の終了時刻(t2)、Te(変更なし)が設定される。第4車両は、第1充電としてバッテリ11の即時充電を実行する。そして、約定期間の開始時刻が到来すると、タイマ充電(第1充電)はいったん終了する。第4車両は、約定期間内においてはサーバ200からの指示(リモート制御)に従ってバッテリ11の充電を実行し、約定期間が終了すると、タイマ充電(第2充電)を再開する。
【0105】
再び
図1及び
図2とともに
図6を参照して、対象車両が第1~第4車両のいずれにも該当しない場合には(S21~S24の全てでNO)、
図6に示す一連の処理を終了する。第1~第4車両のいずれにも該当しない対象車両は、「その他」に該当し、約定期間における電力調整から除外される。たとえば、タイマ充電が予約されていない対象車両(以下、「予約なし車両」とも称する)は、「その他」に該当する。予約なし車両は、プラグイン状態になると、バッテリ11の即時充電を実行する。また、予約なし車両は、ユーザからの指示に応じてバッテリ11の充電を実行する。ユーザは、たとえばモバイル端末UTを操作して、予約なし車両に充電開始を指示することができる。
【0106】
この実施の形態に係るサーバ200では、充電制御部220が、約定期間内において複数の対象車両から第5~第7車両を判別する。
図9は、第5~第7車両について説明するための図である。
図9を参照して、第5車両は、Tsが約定期間の終了時刻(t2)後であり、かつ、約定期間(t1~t2)の途中で電力系統PGと電気的に接続された車両である。第6車両は、約定期間(t1~t2)内かつTsの後に電力系統PGと電気的に接続された車両である。第7車両は、約定期間(t1~t2)内のTsの前かつ約定期間の開始時刻(t1)後に電力系統PGと電気的に接続された車両である。
【0107】
図10は、サーバ200によって実行される第2車両判別に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、対象車両ごとに実行される。この実施の形態では、約定期間内に対象車両がプラグイン状態になると、その対象車両(すなわち、約定期間内に電力系統PGと電気的に接続された対象車両)について以下に説明する
図10に示す一連の処理が開始される。
【0108】
図1及び
図2とともに
図10を参照して、S60では、充電制御部220が、対象車両に関する情報(車両情報)をサーバ500から取得し、取得した車両情報に基づいて車両判別を行なう。具体的には、充電制御部220は、まず、充電予約情報に基づいて、対象車両にタイマ充電が予約されているか否かを判断する。充電制御部220は、タイマ充電が予約された対象車両については、充電予約情報(Te及び目標SOC)と充電スペックとを用いてTsを算出するとともに、算出されたTsを用いて第5~第7車両の各々に該当するか否かを判断する。そして、判別結果を示す情報(以下、「第2判別情報」とも称する)が対象車両の車両IDと紐付けられてサーバ200の記憶装置に保存される。第2判別情報は、対象車両にタイマ充電が予約されているか否かを示す。さらに、第2判別情報は、対象車両が該当する車両の区分(「第5車両」、「第6車両」、「第7車両」、又は「その他」)を示す。「その他」は、対象車両が第5~第7車両のいずれにも該当しないことを意味する。
【0109】
その後、充電制御部220は、S61、S62、S63において、対象車両がそれぞれ第5車両、第6車両、第7車両に該当するか否かを判断する。
【0110】
対象車両が第5車両に該当する場合には(S61にてYES)、充電制御部220が、S71において、対象車両(第5車両)が備えるバッテリ11について後述するリモート制御(
図11参照)を開始する。
【0111】
対象車両が第6車両に該当する場合には(S61にてNOかつS62にてYES)、充電制御部220は、S72において、バッテリ11の即時充電が実行されるように、対象車両(第6車両)に予約されたタイマ充電のスケジュールを変更する。すなわち、充電開始時刻として現在時刻が設定される。これにより、第6車両がバッテリ11の即時充電を実行する。第6車両におけるタイマ充電は、約定期間が終了しても継続される。すなわち、第6車両は、約定期間における電力調整から除外される。
【0112】
対象車両が第7車両に該当する場合には(S61,S62にてNOかつS63にてYES)、充電制御部220が、S73において、対象車両(第7車両)が備えるバッテリ11について後述するリモート制御(
図11参照)を開始する。ただし、第7車両のリモート制御の終了時刻としては、第7車両に予約されたTsが設定される。第7車両に予約されたTs(リモート制御の終了時刻)は、第7車両の車両IDと紐付けられてサーバ200の記憶装置に保存される。
【0113】
対象車両が第5~第7車両のいずれにも該当しない場合には(S61~S63の全てでNO)、
図10に示す一連の処理を終了する。第5~第7車両のいずれにも該当しない対象車両(たとえば、予約なし車両)は、「その他」に該当し、約定期間における電力調整から除外される。
【0114】
図11は、サーバ200によって実行される電力系統PGの電力調整に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、約定期間(調整期間)の開始時刻が到来すると、開始される。
【0115】
図1及び
図2とともに
図11を参照して、S81では、充電制御部220が充電制御の目標値(以下、「目標値W1」と表記する)を取得する。具体的には、約定期間内においては、サーバ700が、
図3に示した落札量の範囲(すなわち、基準値によって下限が、落札量によって上限が規定される落札範囲)内で任意の目標値W1を決定し、後述する総充電電力W2(S82)を目標値W1に近づけることをサーバ200に要求する。サーバ700は、目標値W1を示す信号をサーバ200へ逐次送信する。サーバ200は、目標値W1をサーバ700から逐次受信する。S81においては、充電制御部220が最新の目標値W1を取得する。
【0116】
続くS82では、電力系統PGと電気的に接続された複数の対象車両の各々が備えるバッテリ11の総充電電力(以下、「総充電電力W2」と表記する)を、充電制御部220が取得する。対象車両が備えるバッテリ11の充電電力(より特定的には、電力系統PGから供給される電力を用いたバッテリ11の充電電力)は、充電場所に設置された電力量計によって計測されて、サーバ200へ送信されてもよい。充電場所に設置された電力量計は、受電点に設置されたスマートメータであってもよいし、EVSEに内蔵される電力量計であってもよい。総充電電力W2は、各充電場所に設置された電力量計によって計測される全ての対象車両の充電電力の合計値に相当する。
【0117】
続くS83では、電力系統PGと電気的に接続された複数の対象車両の中に、リモート制御の終了時刻(Ts)が到来していない第7車両(以下、「Ts未達の第7車両」とも称する)が存在するか否かを、充電制御部220が判断する。S83における「第7車両」は、
図10に示した処理によって「第7車両」に該当すると判別された対象車両に相当する。
【0118】
Ts未達の第7車両が存在しない場合には(S83にてNO)、充電制御部220は、S84において、第2車両、第4車両、及び第5車両を制御対象とする。なお、第7車両が1台も存在しない場合も、S83においてNOと判断される。
【0119】
他方、Ts未達の第7車両が存在する場合には(S83にてYES)、充電制御部220は、S85において、第2,4,5車両に加えて、Ts未達の第7車両を、制御対象とする。
【0120】
S84又はS85において制御対象が決定されると、充電制御部220は、続くS86において、総充電電力W2を目標値W1に近づけるように制御対象を制御する。具体的には、充電制御部220は、目標値W1及び総充電電力W2に基づいて、制御対象に割り当てる充電電力(以下、「要求充電電力」と記載する)を決定し、要求充電電力を示す充電指令を制御対象へ送信する。充電制御部220は、制御対象ごとに要求充電電力を決定し、各制御対象に充電指令を送信する。充電制御部220は、各制御対象の充電スペック、現在のSOC、及び充電予約情報の少なくとも1つを用いて、各制御対象の要求充電電力を決定してもよい。サーバ200から充電指令を受信した制御対象のECU150は、その充電指令に従ってバッテリ11の充電制御を実行する。すなわち、ECU150は、バッテリ11の充電電力が要求充電電力に近づくように充電器61を制御する。なお、充電制御部220は、要求充電電力の代わりにON(実行)/OFF(停止)の充電指令を制御対象ごとに決定してもよい。充電制御部220は、総充電電力W2を目標値W1に近づけるように各制御対象に対して充電のON/OFF制御を実行してもよい。
【0121】
上記のように、S86においては、充電制御部220によって、電力系統PGの電力調整のための各制御対象のリモート制御が実行される。約定期間(調整期間)内において制御対象以外の対象車両によって実行されるタイマ充電は、電力調整のための充電ではないため、電力調整にとって外乱となる。こうした外乱の影響は、制御対象におけるバッテリ11の充電抑制(たとえば、充電停止)によって相殺される。
【0122】
続くS87では、約定期間の終了時刻が到来したか否かを、充電制御部220が判断する。約定期間が終了していない場合には(S87にてNO)、処理が最初のステップ(S81)に戻る。約定期間内においては、S81~S86の処理が繰返し実行されることにより、制御対象によって電力系統PGの電力調整が行なわれる。
【0123】
そして、約定期間が終了すると(S87にてYES)、
図11に示す一連の処理が終了する。約定期間の終了後、アグリゲータが、電力調整を行なった対象車両(制御対象)のユーザに対してインセンティブを付与してもよい。
【0124】
図12は、タイマ充電が予約された対象車両(予約あり車両)によって実行されるタイマ充電に係る処理を示すフローチャートである。たとえば、タイマ充電が予約された対象車両がプラグイン状態になると、その対象車両のECU150が以下に説明する
図12に示す一連の処理を開始する。
【0125】
図1及び
図2とともに
図12を参照して、S91では、当該対象車両がサーバ200からの充電指令(
図11のS86)を受信したか否かを、ECU150が判断する。当該対象車両が充電指令を受信していない場合には(S91にてNO)、ECU150が、S92において、バッテリ11が充電中か否かを判断する。バッテリ11が充電中ではない場合には(S92にてNO)、ECU150が、S93において、タイマ充電の充電開始時刻(Ts)を過ぎているか否かを判断する。すでにTsが到来している場合には(S93にてYES)、ECU150が、S94においてバッテリ11の充電(タイマ充電)を開始する。その後、処理は最初のステップ(S91)に戻る。また、Tsが未達である場合も(S93にてNO)、処理はS91に戻る。
【0126】
バッテリ11が充電中である場合には(S92にてYES)、ECU150が、S95において、タイマ充電の充電終了時刻(Te)を過ぎているか否かを判断する。Teが未達であれば(S95にてNO)、ECU150は、S96においてタイマ充電を続行する。タイマ充電中は、ECU150によって充電器61が制御される。他方、すでにTeが到来している場合には(S95にてYES)、ECU150が、S97において、バッテリ11の充電(タイマ充電)を終了する。完了したタイマ充電(Te及び目標SOC)の予約は解除される。
【0127】
当該対象車両が充電指令を受信した場合には(S91にてYES)、ECU150が、S98において、タイマ充電を中断して、
図11に示したサーバ200による充電制御(リモート制御)に移行する。ECU150は、続くS99において、リモート制御が終了したか否かを判断する。そして、リモート制御が終了すると(S99にてYES)、処理が最初のステップ(S91)に戻る。これにより、タイマ充電が再開される(S94)。
【0128】
第1車両(
図5)に関しては、
図6に示した処理により、タイマ充電の充電開始時刻が早められる(S31)。その後、
図12に示した処理により、約定期間の開始時刻よりも前のTsでタイマ充電が開始され(S94)、Teが到来するまでタイマ充電が継続される(S96)。第1車両は電力調整を行なわない。
【0129】
第2車両(
図5)に関しては、
図11及び
図12に示した処理により、約定期間内において、総充電電力W2が目標値W1に追従するようにバッテリ11の充電制御が実行される(
図12のS98、及び
図11のS86)。その後、
図12に示した処理により、約定期間の終了時刻よりも後のTsでタイマ充電が開始され(S94)、Teが到来するまでタイマ充電が継続される(S96)。第2車両は約定期間内において電力調整を行なう。
【0130】
第3車両(
図5)に関しては、
図6及び
図12に示した処理により、即時充電が実行され(
図6のS33、及び
図12のS94)、Teが到来するまでタイマ充電が継続される(
図12のS96)。第3車両は電力調整を行なわない。
【0131】
第4車両(
図5)に関しては、
図6及び
図12に示した処理により、即時充電が実行され(
図6のS34、及び
図12のS94)、約定期間の開始時刻が到来するまでタイマ充電が継続される(
図12のS96)。約定期間内においては、
図11に示した処理により、総充電電力W2が目標値W1に追従するようにバッテリ11の充電制御が実行される(
図12のS98、及び
図11のS86)。そして、約定期間が終了すると、
図12に示した処理により、タイマ充電が再開され(S94)、Teが到来するまでタイマ充電が継続される(S96)。第4車両は約定期間内において電力調整を行なう。
【0132】
第5車両(
図9)に関しては、
図10及び
図12に示した処理により、約定期間内において、総充電電力W2が目標値W1に追従するようにバッテリ11の充電制御が実行される(
図10のS71、及び
図11のS86)。その後、
図12に示した処理により、約定期間の終了時刻よりも後のTsでタイマ充電が開始され(S94)、Teが到来するまでタイマ充電が継続される(S96)。第5車両は約定期間内において電力調整を行なう。
【0133】
第6車両(
図9)に関しては、
図10及び
図12に示した処理により、即時充電が実行され(
図10のS72、及び
図12のS94)、Teが到来するまでタイマ充電が継続される(
図12のS96)。第6車両は電力調整を行なわない。
【0134】
第7車両(
図9)に関しては、
図10及び
図12に示した処理により、第7車両がプラグイン状態になってからTsが到来するまでの期間においては、総充電電力W2が目標値W1に追従するようにバッテリ11の充電制御が実行される(
図10のS73、及び
図11のS86)。そして、Tsが到来すると、
図12に示した処理により、タイマ充電が開始され(S94)、Teが到来するまでタイマ充電が継続される(S96)。第7車両は、プラグイン状態になってからTsが到来するまでの期間において電力調整を行なう。
【0135】
以上説明したように、この実施の形態に係る充電制御方法は、
図4、
図6、及び
図10~
図12に示した処理を含む。
【0136】
所定の調整期間(約定期間)の開始前に、サーバ200が、
図4のS13において、車群1から複数の対象車両を選ぶ。
図6のS31では、サーバ200が、選ばれた複数の対象車両のうち第1車両(調整期間内に充電終了時刻が予約された対象車両)が備える蓄電装置の充電開始を早める。
図11のS86では、サーバ200が、調整期間内において、電力系統PG(外部電源)と電気的に接続された複数の対象車両の各々が備える蓄電装置の総充電電力W2が目標値W1に追従するように、制御対象(複数の対象車両の少なくとも1つ)を制御する。
【0137】
上記のように、第1車両のタイマ充電を、予約された充電終了時刻よりも早く完了させることで、調整期間内において第1車両がタイマ充電を実行する期間が短くなり、電力調整の精度低下が抑制される。上記充電制御方法によれば、車両ユーザの利便性を過度に損なうことなく車両が備える蓄電装置を外部電源の電力調整に好適に使用することが可能になる。
【0138】
図4、
図6、及び
図10~
図12の各々に示した処理は、適宜変更可能である。たとえば、対象車両の決定処理(特に、
図4のS13参照)における選定の優先順位が変更されてもよい。たとえば、選択部210は、タイマ充電が予約された車両を優先的に対象車両として選んでもよい。また、選択部210は、予測部230による移動予測の結果を用いて、外部電源と電気的に接続された状態を調整期間の全体にわたって維持すると予測される車両を優先的に対象車両として選んでもよい。また、第7車両における充電制御(特に、
図10のS73参照)は、即時充電(ローカル制御)によって蓄電装置のSOCが所定値まで上昇した後、リモート制御に移行するように、変更されてもよい。また、各対象車両のタイマ充電制御(特に、
図12のS95参照)は、予約された充電終了時刻(Te)が到来しても蓄電装置のSOCが目標SOCに到達していないときには、蓄電装置のSOCが目標SOCに到達するまで蓄電装置の充電が継続されるように、変更されてもよい。
【0139】
車両の分類の仕方は、前述した「第1車両」~「第7車両」及び「その他」に限られず、適宜変更可能である。たとえば、分類の区分を少なくしてもよい。
【0140】
電力系統PG(外部電源)は、電力会社が提供する大規模な交流グリッドに限られず、マイクログリッドであってもよいし、DC(直流)グリッドであってもよい。また、管理システムの構成は、
図1に示した構成に限られない。サーバ700とサーバ200との間に他のサーバ(たとえば、上位アグリゲータのサーバ)が設けられてもよい。サーバ200は、他のサーバを介してサーバ700と通信を行なってもよい。また、サーバ500の機能がサーバ200に実装され、サーバ500が割愛されてもよい。サーバ200が車群1と直接的に無線通信を行なってもよい。上記実施の形態では、オンプレミスサーバ(
図1に示したサーバ200及び500)が、車群1を管理するコンピュータとして機能する。しかしこれに限られず、クラウドコンピューティングによってクラウド上にサーバ200及び500の機能(特に、車群管理に係る機能)が実装されてもよい。管理装置1000は、アグリゲータではなく、他の電気事業者(たとえば、TSO)に帰属してもよい。
【0141】
車両の構成は、前述した構成(
図2参照)に限られない。車両は、充電器61の代わりに、充電回路及び放電回路の両方として機能する充放電器(充放電回路)を備えてもよい。インレット60は、充電口及び放電口の両方として機能してもよい。車両は、車載バッテリから放電される電力をEVSEの代わりに放電コネクタを介して外部電源へ出力してもよい。車載バッテリは、交換式であってもよい。車両は、BEV以外のxEV(PHEV、FCEV、レンジエクステンダーEVなど)であってもよい。
【0142】
車輪の数は4輪に限られず3輪でも5輪以上でもよい。車両は非接触充電可能に構成されてもよい。車両はソーラーパネルを備えてもよい。車両は、自動運転可能に構成されてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、MaaS(Mobility as a Service)車両であってもよい。MaaS車両は、MaaS事業者が管理する車両である。車両は、無人で走行可能な車両(たとえば、ロボタクシー、無人搬送車(AGV)、又は農業機械)であってもよい。車両は、無人又は1人乗りの小型BEV(たとえば、マイクロパレット)であってもよい。
【0143】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
1 車群、11 バッテリ、20 MG、60 インレット、61 充電器、62 充電リレー、81 HMI、82 NAVI、90 通信装置、100 車両、150 ECU、200,500,700 サーバ、210 選択部、220 充電制御部、230 予測部、300 EVSE、320 充電ケーブル、1000 管理装置、PG 電力系統、UT モバイル端末。