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特許7601047制御装置、制御方法、プログラム、非接触電力伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、プログラム、非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20241210BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022066445
(22)【出願日】2022-04-13
(65)【公開番号】P2023156841
(43)【公開日】2023-10-25
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池村 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】津下 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-178442(JP,A)
【文献】特開2018-074838(JP,A)
【文献】特開2016-007116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0287382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から電力を非接触で受電する受電装置の制御装置であって、
受電電力の大きさに応じてPWM制御により前記受電電力を抑制する抑制処理を実行するように構成され、
前記抑制処理は、
抑制を行わないときの前記受電電力とデューティの変化に対する前記受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、前記PWM制御を開始することと、
前記PWM制御を開始したとき、前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力以下となる領域まで前記デューティを増加させることと、
を含む
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記抑制処理は、
前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力より大きくなるとき、現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回るまでは前記デューティを減少させないことと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、前記デューティをゼロまで減少させることと、
をさらに含む
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の制御装置であって、
前記デューティの変化に対する前記受電電力の変化特性の情報を格納するメモリを含み、
前記抑制処理において、前記電力増加代を算出することは、
現在の前記受電電力から前記送電装置と前記受電装置との間の結合係数を推定することと、
前記結合係数と前記変化特性とから前記電力増加代を算出することと、
を含む
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置であって、
受電を行うことが予測される前記送電装置について、諸元情報及び前記送電装置を特定する識別情報を取得する処理と、
受電を開始する前に前記識別情報に基づいて受電を行う前記送電装置を特定する処理と、
をさらに実行するように構成され、
前記抑制処理は、特定した前記送電装置についての前記諸元情報に基づいて、前記変化特性を算出することをさらに含む
ことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
送電装置から電力を非接触で受電する受電装置の制御方法であって、
受電電力の大きさに応じてPWM制御により前記受電電力を抑制することを含み、
前記PWM制御により前記受電電力を抑制することは、
抑制を行わないときの前記受電電力とデューティの変化に対する前記受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、前記PWM制御を開始することと、
前記PWM制御を開始したとき、前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力以下となる領域まで前記デューティを増加させることと、
を含む
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の制御方法であって、
前記PWM制御により前記受電電力を抑制することは、
前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力より大きくなるとき、現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回るまでは前記デューティを減少させないことと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、前記デューティをゼロまで減少させることと、
をさらに含む
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
送電装置から電力を非接触で受電する受電装置の制御についてのプログラムであって、
受電電力の大きさに応じてPWM制御により前記受電電力を抑制する抑制処理をコンピュータに実行させるように構成されており、
前記抑制処理は、
抑制を行わないときの前記受電電力とデューティの変化に対する前記受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、前記PWM制御を開始することと、
前記PWM制御を開始したとき、前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力以下となる領域まで前記デューティを増加させることと、
を含む
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムであって、
前記抑制処理は、
前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力より大きくなるとき、現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回るまでは前記デューティを減少させないことと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、前記デューティをゼロまで減少させることと、
をさらに含む
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
受電装置と、
前記受電装置に電力を非接触で伝送する送電装置と、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと結合され、複数の実行可能なインストラクションを格納するメモリと、
を含み、
前記複数の実行可能なインストラクションは、前記少なくとも1つのプロセッサに、受電電力の大きさに応じてPWM制御により前記受電電力を抑制する抑制処理を実行させるように構成され、
前記抑制処理は、
抑制を行わないときの前記受電電力とデューティの変化に対する前記受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、前記PWM制御を開始することと、
前記PWM制御を開始したとき、前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力以下となる領域まで前記デューティを増加させることと、
を含む
ことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項10】
請求項9に記載の非接触電力伝送システムであって、
前記抑制処理は、
前記受電電力が抑制を行わないときの前記受電電力より大きくなるとき、現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回るまでは前記デューティを減少させないことと、
現在の前記受電電力に前記電力増加代を加えた値が前記上限から前記マージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、前記デューティをゼロまで減少させることと、
をさらに含む
ことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電装置から電力を非接触で受電する受電装置の制御装置、制御方法、及び制御についてのプログラムに関する。また送電装置から受電装置に電力を非接触で伝送する非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電装置から受電装置に電力を非接触で伝送する非接触電力伝送システムが提案されている。非接触電力伝送システムに関して、受電電力が過度に大きくなることによる過電圧の発生等から受電装置を保護するため、スイッチング制御により受電電力を抑制する技術が考えられている。
【0003】
特許文献1には、送電側からの電力をワイヤレスに(非接触で)受電する受電コイル及び受電コイルに接続される受電側共振コンデンサを有する受電側共振回路と、受電コイルが受電した電力を整流して負荷に出力する整流回路と、整流回路の出力電圧を検知する受電側電圧検知部と、受電側共振回路の出力部と整流回路の出力部との間に接続されるスイッチング素子及び受電側共振回路の出力部とスイッチング素子との間に挿入される整流素子を有する短絡回路と、受電側電圧検知部が検知した出力電圧の値があらかじめ設定された基準電圧値を超えたときスイッチング素子を動作させる制御回路と、を備えるワイヤレス受電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6361818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受電電力を抑制するためのスイッチング制御として、PWM制御を採用することが考えられる。PWM制御は、簡易な構成で実装することができ、デューティを変化させることで簡易に受電電力を調整することができるという利点がある。しかしながら、PWM制御を採用する場合、デューティを増加させることで受電電力を抑制しようとするところ、デューティの変化に対して受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなる領域(以下、「電力増加領域」とも称する。)が原理的に存在してしまう。このため、受電電力を抑制しようとするときに、受電電力が急増して定格の上限を超えてしまう虞がある。延いては、受電装置を適切に保護できない虞がある。
【0006】
本開示の1つの目的は、上記の課題を鑑み、PWM制御により受電電力を抑制する場合において、オーバーシュートの発生を抑制することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示は、送電装置から電力を非接触で受電する受電装置の制御装置に関する。
【0008】
第1の開示に係る制御装置は、受電電力の大きさに応じてPWM制御により受電電力を抑制する抑制処理を実行するように構成されている。また抑制処理は、抑制を行わないときの受電電力とデューティの変化に対する受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、PWM制御を開始することと、PWM制御を開始したとき、受電電力が抑制を行わないときの受電電力以下となるまで前記デューティを増加させることと、を含んでいる。
【0009】
第2の開示は、第1の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
【0010】
抑制処理は、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るまでデューティを減少させないことと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、デューティをゼロまで減少させることと、をさらに含んでいる。
【0011】
第3の開示は、第1又は第2の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
【0012】
第3の開示に係る制御装置は、デューティの変化に対する受電電力の変化特性の情報を格納するメモリを含んでいる。そして抑制処理において、電力増加代を算出することは、現在の受電電力から送電装置と受電装置との間の結合係数を推定することと、結合係数と受電電力の変化特性とから電力増加代を算出することと、を含んでいる。
【0013】
第4の開示は、第3の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
【0014】
第4の開示に係る制御装置は、受電を行うことが予測される送電装置について、諸元情報及び送電装置を特定する識別情報を取得する処理と、受電を開始する前に識別情報に基づいて受電を行う送電装置を特定する処理と、をさらに実行するように構成されている。そして抑制処理は、特定した送電装置についての諸元情報に基づいて、変化特性を算出することをさらに含んでいる。
【0015】
第5の開示は、送電装置から電力を非接触で受電する受電装置の制御方法に関する。
【0016】
第5の開示に係る制御方法は、受電電力の大きさに応じてPWM制御により受電電力を抑制することを含んでいる。また、受電電力の大きさに応じてPWM制御により受電電力を抑制することは、抑制を行わないときの受電電力とデューティの変化に対する受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、PWM制御を開始することと、PWM制御を開始したとき、受電電力が抑制を行わないときの受電電力以下となるまで前記デューティを増加させることと、を含んでいる。
【0017】
第6の開示は、第5の開示に係る制御方法に対して、さらに以下の特徴を有する制御方法に関する。
【0018】
受電電力の大きさに応じてPWM制御により受電電力を抑制することは、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るまでデューティを減少させないことと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、デューティをゼロまで減少させることと、をさらに含んでいる。
【0019】
第7の開示は、送電装置から電力を非接触で受電する受電装置の制御についてのプログラムに関する。
【0020】
第7の開示に係るプログラムは、受電電力の大きさに応じてPWM制御により受電電力を抑制する抑制処理をコンピュータに実行させるように構成されている。また抑制処理は、抑制を行わないときの受電電力とデューティの変化に対する受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、PWM制御を開始することと、PWM制御を開始したとき、受電電力が抑制を行わないときの受電電力以下となるまで前記デューティを増加させることと、を含んでいる。
【0021】
第8の開示は、第7の開示に係るプログラムに対して、さらに以下の特徴を有するプログラムに関する。
【0022】
抑制処理は、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るまでデューティを減少させないことと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、デューティをゼロまで減少させることと、をさらに含んでいる。
【0023】
第9の開示は、非接触電力伝送システムに関する。
【0024】
第9の開示に係る非接触電力伝送システムは、受電装置と、受電装置に電力を非接触で伝送する送電装置と、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサと結合され複数の実行可能なインストラクションを格納するメモリと、を含んでいる。ここで、複数の実行可能なインストラクションは、少なくとも1つのプロセッサに、受電電力の大きさに応じてPWM制御により受電電力を抑制する抑制処理を実行させるように構成されている。また抑制処理は、抑制を行わないときの受電電力とデューティの変化に対する受電電力の極大値との差分である電力増加代を算出することと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、PWM制御を開始することと、PWM制御を開始したとき、受電電力が抑制を行わないときの受電電力以下となるまで前記デューティを増加させることと、を含んでいる。
【0025】
第10の開示は、第9の開示に係る非接触電力伝送システムに対して、さらに以下の特徴を有する非接触電力伝送システムに関する。
【0026】
抑制処理は、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るまでデューティを減少させないことと、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、デューティをゼロまで減少させることと、をさらに含んでいる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、PMW制御を開始する。またPWM制御を開始した時、受電電力が抑制を行わないときの受電電力以下となる領域を過ぎるまでデューティを増加させる。これにより、PWM制御を開始しようとするときのオーバーシュートの発生を抑制することができる。
【0028】
さらに、本開示によれば、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るまでデューティを減少させない。また現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、デューティをゼロまで減少させる。これにより、PWM制御を終了しようとするときのオーバーシュートの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成例を示す回路図である。
図2】スイッチング制御としてPWM制御を採用する場合のアクティブ整流器にかかる電圧の例を示すグラフである。
図3】車両に備えるバッテリを車両が走行しながら充電する充電システムに非接触電力伝送システムを適用する場合を示す概念図である。
図4】PWM制御によりデューティを変化させたときの受電電力の変化特性の例を示すグラフである。
図5図3に示す場合において受電制御装置が受電電力の変化特性を算出するための処理を実行する際の例を示す概念図である。
図6】本実施形態に係る受電制御装置がPWM制御を開始するときに実行する処理を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る受電制御装置がPWM制御を実施している間に実行する処理を示すフローチャートである。
図8】本実施形態に係る受電制御装置による抑制処理の実施例を示すグラフである。
図9】本実施形態に係る受電制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0031】
1.非接触電力伝送システム
本実施形態は、送電装置から受電装置に電力を非接触で伝送する非接触電力伝送システムに関する。図1は、本実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成例を示す回路図である。図1は、DC電源1が供給する電力によりバッテリ2を充電する充電システムに非接触電力伝送システムを適用する場合を示している。つまり、DC電源1は送電装置110に電力を供給し、送電装置110から受電装置210に非接触で電力が送電される。そして、受電装置210の受電電力によりバッテリ2の充電が行われる。
【0032】
DC電源1及び送電装置110は、典型的には、地面、床面、壁面等に定置される。受電装置210及びバッテリ2は、典型的には、充電の対象となる携帯端末や車両等の移動体に搭載される。バッテリ2は、典型的には、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の再充電可能な二次電池である。
【0033】
図1に示す非接触電力伝送システムは、送電装置110に含まれる送電コイル116と、受電装置210に含まれる受電コイル216と、が互いに磁界共振することにより、送電コイル116から受電コイル216に電力が伝送される。つまり、磁界共振方式による電力伝送が行われる。
【0034】
送電装置110は、平滑コンデンサ111と、インバータ112と、イミタンスフィルタ114と、送電回路115と、を含んでいる。ここで、インバータ112、イミタンスフィルタ114、及び送電回路115はそれぞれ縦続接続するように構成されている。
【0035】
インバータ112は、直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して出力する。インバータ112の出力電力は、イミタンスフィルタ114を介して送電回路115に供給される。
【0036】
インバータ112は、スイッチングデバイス113を含む単相フルブリッジ回路により構成される。またインバータ112は、送電制御装置100と接続している。送電制御装置100は、検出装置120(例えば、電流計や電圧計)から取得する情報に基づいて、スイッチングデバイス113のスイッチング制御を行う制御装置である。これにより、インバータ112の出力電力の周波数と大きさが制御される。延いては、送電装置110の送電電力が制御される。特に、インバータ112の出力電力の周波数は、送電回路115の共振周波数と同等となるように調整される。この意味で、送電回路115の共振周波数は「駆動周波数」と言い換えることもできる。なお、送電装置110が検出装置120から取得する情報は、少なくともインバータ112の出力電流及び出力電圧を含んでいる。
【0037】
イミタンスフィルタ114は、インバータ112の出力電力の電磁ノイズを低減する。イミタンスフィルタ114は、コイルとコンデンサにより構成されており、ローパスフィルタとして機能する。また送電装置110のインピーダンスを調整する。
【0038】
送電回路115は、送電コイル116と、共振コンデンサ117と、により構成される共振回路である。送電コイル116は、インバータ112から送電回路115に共振周波数の電力が供給されることにより、受電コイル216と磁界共振する。これにより、送電コイル116から受電コイル216に電力が伝送される。
【0039】
受電装置210は、平滑コンデンサ211と、アクティブ整流器212と、イミタンスフィルタ214と、受電回路215と、を含んでいる。ここで、アクティブ整流器212、イミタンスフィルタ214、及び受電回路215はそれぞれ縦続接続するように構成されている。
【0040】
受電回路215は、受電コイル216と、共振コンデンサ217と、により構成される共振回路である。受電回路215の共振周波数は、送電回路115の共振周波数と同等となるように構成されている。受電コイル216は、送電コイル116と磁界共振し、送電コイル116から伝送される電力を受電する。
【0041】
イミタンスフィルタ214は、受電回路215が受電する電力の電磁ノイズを低減する。イミタンスフィルタ214は、コイルとコンデンサにより構成されており、ローパスフィルタとして機能する。また受電装置210のインピーダンスを調整する。
【0042】
アクティブ整流器212は、受電回路215が受電する電力を直流電力に変換して出力する。アクティブ整流器212の出力電力は、平滑コンデンサ211を介してバッテリ2に供給される。つまり、アクティブ整流器212の出力電力が、受電装置210の受電電力となる。
【0043】
アクティブ整流器212は、スイッチングデバイス213を含む単相全波整流回路により構成される。またアクティブ整流器212は、受電制御装置200と接続している。受電制御装置200は、検出装置220から取得する情報に基づいて、スイッチングデバイス213のスイッチング制御を行う制御装置である。これにより、アクティブ整流器212の出力電力(受電装置210の受電電力)が制御される。
【0044】
より具体的には、受電制御装置200は、スイッチングデバイス213のオンオフを切り替えることで、アクティブ整流器212において一時的に短絡回路を形成する。短絡回路を形成するとき、アクティブ整流器212の出力電力は、バッテリ2にほとんど供給されない。従って、スイッチング制御により一時的に短絡回路を形成することで、アクティブ整流器212の出力電力(受電装置210の受電電力)を抑制することができるのである。受電装置210において受電電力の抑制が行われていることは、一時的に短絡回路が形成されていることから、受電装置210が「短絡モード」であると言い換えることもできる。以下、受電制御装置200がスイッチング制御により受電電力を抑制する処理を「抑制処理」と称する。
【0045】
抑制処理は、受電装置210やバッテリ2の保護を目的として、受電電力が受電装置210やバッテリ2の定格により定まる上限を超えないように実行される。
【0046】
特に、受電制御装置200は、抑制処理に係るスイッチング制御としてPWM制御を採用する。つまり、PWM制御のデューティが、短絡回路を形成する期間と対応する。図2は、スイッチング制御としてPWM制御を採用する場合のアクティブ整流器212にかかる電圧の例を示すグラフである。図2には、抑制処理を実行していない場合のグラフ(破線)と、PWM制御による抑制処理を実行する場合のグラフ(実線)と、が示されている。このように、PWM制御による抑制処理を実行するとき、デューティ(Duty)を増加させることで、短絡回路が形成される期間が増加し、受電電力の抑制をより強めることができる。
【0047】
以上説明するように、本実施形態に係る非接触電力伝送システムが構成される。なお、図1に示す非接触電力伝送システムでは、送電装置110は、DC電源1から電力が供給されるが、AC電源から電力が供給されるように構成されていても良い。この場合、送電装置110の入力段にコンバータを備えることで、図1と同様に構成することができる。
【0048】
また本実施形態に係る非接触電力伝送システムは、複数の送電装置110又は複数の受電装置210を含んでいても良い。例えば、車両に備えるバッテリ2を車両が走行しながら充電する充電システムに非接触電力伝送システムを適用する場合が考えられる。図3に、非接触電力伝送システムを車両3が走行しながら充電する充電システムに適用する場合の例を示す。図3に示す例では、車両3が走行路に連なって配置する複数の送電装置110を通過する際に、車両3に備える受電装置210が非接触で電力を受電することでバッテリ2の充電が行われる。図3では、2つの送電装置110が図示されているが、さらに多くの送電装置110がより長い距離にわたって配置されていても良い。またこの場合、同様の車両3が複数存在し得ることを考えれば、非接触電力伝送システムは、複数の受電装置210を含む。
【0049】
ところで、受電制御装置200がPWM制御による抑制処理を実行する場合、デューティを増加させることで受電電力を抑制しようとするところ、デューティの変化に対して受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなる領域(電力増加領域)が原理的に存在してしまう。これは、送電装置110から見た受電装置210の見かけのインピーダンスが変化するためである。図4は、結合係数が異なる3つの場合(大(実線)、中(破線)、小(一点鎖線))それぞれについて、デューティを変化させたときの受電電力の変化特性を示すグラフである。図4に示すように、結合係数が異なると受電電力の変化特性は異なる曲線を描く一方で、いずれの場合についても電力増加領域10が存在する。また図4には、結合係数が異なるそれぞれの曲線について、デューティ(Duty)がゼロのとき(抑制を行わないとき)の受電電力とデューティの変化に対する受電電力の極大値(丸印で図示)との差分である電力増加代を示している。
【0050】
このように電力増加領域10が存在するため、PWM制御による抑制処理を実行するとき、受電電力が急増して上限を超えてしまうオーバーシュートが発生する虞がある。特に、オーバーシュートが発生する虞のある状況として、PWM制御を開始しようとするときとPWM制御を終了しようとするときが挙げられる。例えば、受電電力が上限に近づくことからPWM制御を開始してデューティを増加させると、電力増加領域10において受電電力が増加し、オーバーシュートが発生する虞がある。また受電電力が減少に転じたことからPWM制御を終了しようとデューティをゼロまで減少させると、受電電力の抑制が受電電力の減少に対して過度に解消されることによりオーバーシュートが発生する虞がある。
【0051】
オーバーシュートが頻繁に発生することは、受電装置210及びバッテリ2の劣化や故障の要因となる。このため、オーバーシュートの発生を抑制することが求められる。そこで本実施形態に係る非接触電力伝送システムでは、オーバーシュートの発生を抑制することを目的として、受電制御装置200が実行する抑制処理に特徴を有している。特に、本実施形態に係る受電制御装置200は、抑制処理において、PWM制御を開始するときに実行する処理と、PWM制御を実施している間に実行する処理に特徴を有している。以下、本実施形態に係る受電制御装置200が実行する特徴的な処理について説明する。
【0052】
2.抑制処理
本実施形態に係る受電制御装置200は、受電を行う送電装置110について、図4に示すようなデューティの変化に対する受電電力の変化特性をあらかじめ管理する。図4に示すような受電電力の変化特性は、送電装置110及び受電装置210の回路情報から定まる。ここで回路情報として、回路構成、駆動周波数、送電コイル116及び受電コイル216のインダクタンス、抵抗値、コンデンサ容量、電源電圧等が例示される。つまり、送電装置110と受電装置210の組について受電電力の変化特性を一意に定めることができる。例えば、受電制御装置200は、図4に示すようなマップ情報をあらかじめメモリに格納する。
【0053】
ところで、非接触電力伝送システムが複数の送電装置110又は複数の受電装置210を含む場合は、送電装置110と受電装置210の組によって受電電力の変化特性が異なることが想定される。このため、本実施形態に係る受電制御装置200は、受電を行う送電装置110について受電電力の変化特性を取得するために、さらに次のような処理を実行するように構成されていても良い。
【0054】
まず、受電制御装置200は、受電を行うことが予測される送電装置110について、諸元情報及び送電装置110を特定する情報(識別情報)を取得する処理を実行する。ここで、諸元情報は、送電装置110の回路情報を含む。識別情報は、例えば、送電装置110が定置される位置情報やエリア情報である。あるいは、送電装置110のID情報である。受電制御装置200は、取得した諸元情報と識別情報を対応させて管理する。なお情報の取得は、例えば、広域通信等により送電装置110と受電装置210が互いに離れた地点において行われて良い。
【0055】
次に、受電制御装置200は、受電を開始する前に事前に取得した識別情報に基づいて受電を行う送電装置110を特定する処理を実行する。例えば、識別情報として位置情報を取得するとき、受電装置210の位置がいずれかの送電装置110の近傍となったことから、受電を行う送電装置110を特定する。
【0056】
そして、受電制御装置200は、特定した送電装置110についての諸元情報に基づいて受電電力の変化特性を算出する。これは、例えば、特定した送電装置110の識別情報から対応する諸元情報を参照し、送電装置110の諸元情報と受電装置210の諸元情報から算出することで行うことができる。
【0057】
図5は、図3に示す場合において、受電制御装置200が上述する処理を実行する際の例を示す概念図である。図5に示す例において、受電制御装置200は、走行することが予測される(例えば、車両3の走行計画から予測する)エリアに配置される送電装置110の送電制御装置100と広域通信を行い、識別情報として送電装置110の位置を含むエリア情報を、諸元情報としてエリアに配置される送電装置110の回路情報を取得する。ここで広域通信として、例えば、LTEや4G等が例示される。次に、受電制御装置200はGPS位置情報を随時取得しながら走行し、GPS位置情報とエリア情報から受電を行う送電装置110を特定する。これにより、受電を行う送電装置110の回路情報を取得することができる。そして、受電制御装置200は、受電を行う送電装置110に対して受電電力の変化特性を算出し、受電を開始する。
【0058】
このように受電制御装置200が処理を実行することで、非接触電力伝送システムが複数の送電装置110又は複数の受電装置210を含む場合においても、受電を行う送電装置110に対する受電電力の変化特性を受電を開始する前にあらかじめ管理することができる。
【0059】
2-1.PWM制御を開始するときに実行する処理
まず本実施形態に係る受電制御装置200がPWM制御を開始するときに実行する処理について説明する。図6は、本実施形態に係る受電制御装置200がPWM制御を開始するときに実行する処理を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、PWM制御が開始されていない(受電電力の抑制が行われていない)場合に所定の処理周期毎に実行される。なお、以下の説明において、受電制御装置200は、受電を行う送電装置110について、デューティの変化に対する受電電力の変化特性があらかじめ管理されているとする。
【0060】
ステップS100で、受電制御装置200は、現在の受電装置210の受電電力を取得する。例えば、検出装置220から受電装置210の受電電力を取得する。あるいは、検出装置220から取得する受電装置210の出力電流及び出力電圧から算出するように構成されていても良い。
【0061】
ステップS100の後、処理はステップS110に進む。
【0062】
ステップS110で、受電制御装置200は、受電電力の変化特性から、電力増加代を算出する。受電電力の変化特性がマップ情報等により与えられるとき、送電装置110と受電装置210との間の結合係数が決まれば、電力増加代を算出することができる。ここで、PWM制御が未だ開始されていない(Dutyゼロ)ことに注目すれば、図4の例に示すように、ステップS100において取得した受電電力から結合係数を推定することができる。このように、電力増加代は、ステップS100において取得する受電電力から結合係数を推定することで、あらかじめ管理する受電電力の変化特性から算出することができる。
【0063】
ステップS110の後、処理はステップS120に進む。
【0064】
ステップS120で、受電制御装置200は、ステップS100において取得した受電電力にステップS110において算出した電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えるか否かを判定する。ここで、所定のマージンは、受電電力の観測誤差に対して十分に与えられることが望ましい。
【0065】
受電電力に電力増加代を加えた値が上限からマージンを差し引いた値を超えない場合(ステップS120;No)、受電制御装置200は、今回処理においてPWM制御を開始せず、ステップS100に戻り処理を繰り返す。
【0066】
受電電力を加えた値が上限からマージンを差し引いた値を超える場合(ステップS120;Yes)、受電制御装置200は、PWM制御を開始する(ステップS130)。そしてPWM制御を開始したとき、受電電力が電力増加領域10を過ぎるまで(抑制を行わないときの受電電力以下となる領域まで)デューティを増加させる(ステップS140)。なお図6に示すフローチャートに係る処理が終了した後において、受電制御装置200は、受電電力の大きさに応じたPWM制御を実施する。例えば、受電電力の大きさに応じたフィードバック制御により、PWM制御のデューティが与えられる。
【0067】
以上説明するように、本実施形態に係る受電制御装置200は、PWM制御を開始したとき、受電電力が電力増加領域10を過ぎるまでデューティを増加させる。これにより、PWM制御を開始した後、抑制を行わないときの受電電力以下となる領域においてPWM制御を実施することができる。特に本実施形態に係る受電制御装置200は、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、PWM制御を開始する。これにより、デューティを増加させる間のオーバーシュートの発生を抑止することができる。このように、本実施形態に係る受電制御装置200によれば、PWM制御を開始しようとするときのオーバーシュートの発生を抑制することができる。またこのように本実施形態に係る受電制御装置200により、図6に示すフローチャートに対応する受電装置210の制御方法が実現される。さらに図6に示すフローチャートに対応する制御方法は、受電装置210の制御についてのプログラムに適用することも可能である。
【0068】
2-2.PWM制御を実施している間に実行する処理
次に本実施形態に係る受電制御装置200がPWM制御を実施している間に実行する処理について説明する。図7は、本実施形態に係る受電制御装置200がPWM制御を実施している間に実行する処理を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、PWM制御を実施している間に所定の処理周期毎に実行される。
【0069】
ステップS200で、受電制御装置200は、現在の受電装置210の受電電力を取得する。
【0070】
ステップS200の後、処理はステップS210に進む。
【0071】
ステップS210で、受電制御装置200は、ステップS200において取得した受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるか否かを判定する。これは、あらかじめ管理する受電電力の変化特性に基づいて、現在のデューティの値と受電電力の値の組の座標位置から判定することができる(図4に示す電力増加領域10を参照)。
【0072】
受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくないとき(ステップS210;No)、受電制御装置200は、受電電力の大きさに応じたPWM制御(通常動作)を継続して実施する(ステップS220)。
【0073】
受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき(ステップS210;Yes)、処理はステップS230に進む。
【0074】
ステップS230で、受電制御装置200は、受電電力の変化特性から、電力増加代を算出する。ここで、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなる時点であることに注目すれば、変化特性において受電電力は電力増加領域10の境界線上である。従って、図4の例に示すように、ステップS200において取得した受電電力から結合係数を推定することができる。延いては、電力増加代を算出することができる。
【0075】
ステップS230の後、処理はステップS240に進む。
【0076】
ステップS240で、受電制御装置200は、ステップS200において取得した受電電力にステップS220において算出した電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るか否かを判定する。ここで、所定のマージンは、受電電力の観測誤差に対して十分に与えられることが望ましい。特に、PWM制御を開始するときに実行する処理におけるマージンと同等であっても良い。
【0077】
受電電力に電力増加代を加えた値が上限からマージンを差し引いた値を下回らない場合(ステップS240;No)、受電制御装置200は、今回処理においてデューティを減少させないようにPWM制御を実施する。つまり、図7に示すフローチャートが所定の処理周期毎に実行される場合において、受電制御装置200は、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、受電電力に電力増加代を加えた値が上限からマージンを差し引いた値を下回るまでデューティを減少させないようにPWM制御を実施する。
【0078】
受電電力に電力増加代を加えた値が上限からマージンを差し引いた値を下回る場合(ステップS240;Yes)、受電制御装置200は、デューティをゼロまで減少させて、PWM制御を終了する。なお、ステップS260を実行した後、図7に示すフローチャートの処理の繰り返しの実行は終了する。受電制御装置200は、再度PWM制御が開始された後において、図7に示すフローチャートの繰り返しの実行を再開することとなる。
【0079】
以上説明するように、本実施形態に係る受電制御装置200は、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るまで、デューティを減少させないようにPWM制御を実施する。また現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、デューティをゼロまで減少させてPWM制御を終了する。これにより、デューティを減少させる間のオーバーシュートの発生を抑止することができる。このように、本実施形態に係る受電制御装置200によれば、PWM制御を終了しようとするときのオーバーシュートの発生を抑制することができる。またこのように本実施形態に係る受電制御装置200により、図7に示すフローチャートに対応する受電装置210の制御方法が実現される。さらに図7に示すフローチャートに対応する制御方法は、受電装置210の制御についてのプログラムに適用することも可能である。
【0080】
2-3.実施例
以下、本実施形態に係る受電制御装置200による抑制処理の実施例を示す。図8は、本実施形態に係る受電制御装置200による抑制処理の実施例を示すグラフである。図8には、受電装置210の受電電力のグラフと、受電制御装置200によるPWM制御のデューティのグラフと、が時間軸を対応させて示されている。また図8は、受電装置210が定置される送電装置110に近づいていき、その後、受電装置210が送電装置110から離れていく場合の実施例を示している。
【0081】
図8に示す実施例では、時刻t0において、受電装置210が受電を開始(電力の伝送が開始)している。例えば、受電装置210が送電装置110の頭上にさしかかるときである。時刻t0から時刻t1までの間は、受電電力は上限に対して十分小さく、受電制御装置200は、PWM制御を開始しない(Dutyゼロ)。
【0082】
時刻t1において、受電電力に電力増加代を加えた値が上限からマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、受電制御装置200は、PWM制御を開始する。そして、受電電力が電力増加領域10を過ぎるまでデューティを増加させる。図8に示す実施例では、時刻t2までデューティを増加させている。ここで、PWM制御の開始において、オーバーシュートの発生を抑えられていることが分かる。
【0083】
時刻t2から時刻t3までの間、受電制御装置200は、受電電力に応じてPWM制御を実施する。ここで、受電制御装置200は、抑制を行わないときの受電電力以下となる領域で、PWM制御を実施することができる。延いては、オーバーシュートを発生させることなく、PWM制御により効率の良い受電電力を達成することができる。なお、本実施形態に係る受電制御装置200では、PWM制御を開始するとき受電電力が電力増加領域10を超えるまでデューティを増加させるため、PWM制御を開始した後しばらくの間(時刻t2からしばらくの間)はデューティが一定値を保つことが想定される。
【0084】
時刻t3において、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなることから、受電制御装置200は、デューティを減少させないようにPWM制御を実施する。
【0085】
時刻t4において、受電電力に電力増加代を加えた値が上限からマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、受電制御装置200は、デューティをゼロまで減少させてPWM制御を終了する。図8に示す実施例では、時刻t5において、デューティがゼロとなっている。ここで、PWM制御の終了において、オーバーシュートの発生が抑えられていることがわかる。
【0086】
3.受電制御装置の構成
以下、図9を参照して、本実施形態に係る受電制御装置200の構成について説明する。図9は、本実施形態に係る受電制御装置200の概略構成を示すブロック図である。受電制御装置200は、メモリ201と、プロセッサ205と、通信装置206と、を備えるコンピュータである。メモリ201は、プロセッサ205と結合し、複数の実行可能なインストラクション204と、処理の実行に必要なデータ202と、を格納している。ここでインストラクション204は、プログラム203により与えられる。この意味で、メモリ201は、「プログラムメモリ」と呼ぶこともできる。メモリ201が格納するデータ202には、受電電力の変化特性の情報が含まれる。
【0087】
通信装置206は、受電制御装置200の外部の装置と情報を送受信する装置である。通信装置206として、送電制御装置100又は送電装置110と広域通信を行う装置、GPS受信機等が例示される。通信装置206が受信する情報として、受電装置210の受電電力、受電装置210の諸元情報や識別情報、GPS位置情報等が例示される。さらに、通信装置206を介して受電電力の変化特性を与えるマップ情報を取得しても良い。通信装置206が受信する情報は、データ202としてメモリ201に格納される。
【0088】
インストラクション204は、プロセッサ205に抑制処理を実行させるように構成されている。特に、図6及び図7に示す処理を実行させるように構成されている。つまり、インストラクション204に従ってプロセッサ205が動作することにより、データ202に基づいて図6及び図7に示す処理の実行が実現される。
【0089】
4.効果
以上説明したように、本実施形態によれば、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を超えたことを受けて、PWM制御を開始する。またPWM制御を開始したとき、受電電力が電力増加領域10を過ぎるまで(抑制を行わないときの受電電力以下となる領域まで)デューティを増加させる。さらに、PWM制御を実施している間において、受電電力が抑制を行わないときの受電電力より大きくなるとき、現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回るまで、デューティを減少させない。また現在の受電電力に電力増加代を加えた値が受電電力の上限から所定のマージンを差し引いた値を下回ったことを受けて、デューティをゼロまで減少させてPWM制御を終了する。これにより、PWM制御による抑制処理において、オーバーシュートの発生を抑制することができる。延いては、受電装置210及びバッテリ2の劣化や故障のリスクを低減することができる。
【0090】
なお、本実施形態では、磁界共振方式の非接触電力伝送システムについて説明したが、電磁誘導方式等の他の方式の非接触電力伝送システムについても同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 電力増加領域
100 送電制御装置
110 送電装置
200 受電制御装置
201 メモリ
204 インストラクション
205 プロセッサ
210 受電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9