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  • 特許-樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241210BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20241210BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241210BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20241210BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L25/04
C08K3/013
B32B27/38
H05K1/03 610H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022076082
(22)【出願日】2022-05-02
(65)【公開番号】P2023165254
(43)【公開日】2023-11-15
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165876(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152350(WO,A1)
【文献】特開2019-167426(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016489(WO,A1)
【文献】特開2021-109914(JP,A)
【文献】特表2021-528503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む有機充填材と、(B)硬化性樹脂と、を含み、
(A)有機充填材の平均粒径が、5μm以下であり、
(B)硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及び活性エステル樹脂を含
(A)有機充填材の量が、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0.2質量%以上40質量%以下であり、
エポキシ樹脂の量が、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、5質量%以上80質量%以下であり、
活性エステル樹脂の量が、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、1質量%以上80質量%以下である、樹脂組成物。
【化1】
(式(1)において、
は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の飽和炭化水素基を表し、
は、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項2】
(C)無機充填材を更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)硬化性樹脂が、フェノール樹脂、シアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチリル樹脂、プロペニル樹脂、及び、マレイミド樹脂、からなる群より選ばれる1種類以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)有機充填材の粒子が、当該(A)有機充填材の粒子の表面に露出したシェル部を含み、
前記シェル部が、前記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)有機充填材の平均粒径が、1μm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
Df(25℃)に対するDf(100℃)の上昇率が、20%未満であり、
Df(25℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の25℃での誘電正接を表し、
Df(100℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の100℃での誘電正接を表す、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)有機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.2質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
絶縁層形成用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、シート状積層材料。
【請求項11】
支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
【請求項12】
請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
【請求項13】
請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
【請求項14】
請求項12に記載の回路基板を備える、半導体装置。
【請求項15】
請求項13に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、並びに、当該樹脂組成物を用いたシート状積層材料、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板及び半導体チップパッケージには、一般に、絶縁層が設けられる。例えば、回路基板の一種としてのプリント配線板には、絶縁層として層間絶縁層が設けられることがある。また、例えば、半導体チップパッケージには、絶縁層として再配線形成層が設けられることがある。これらの絶縁層は、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物によって形成されることが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-23714号公報
【文献】特開2020-83966号公報
【文献】特開2020-136542号公報
【文献】特許第6859897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、回路基板及び半導体チップパッケージの配線の高密度化の進行に伴い、絶縁層のクラック耐性を向上させることが求められている。本発明者は、クラック耐性の向上のために、有機充填材を用いることを試みた。適切な有機充填材を含む樹脂組成物の硬化物では、有機充填材が応力を緩和できる成分(応力緩和成分)として働くので、クラック耐性を向上させることが期待できる。
【0005】
ところが、本発明者が検討を進めたところ、有機充填材を含む樹脂組成物において、下記の第一の課題及び第二の課題が見出された。
【0006】
第一に、応力緩和成分として従来の有機充填材を用いる場合、硬化物の誘電正接が高くなり、伝送損失が大きくなることがある。また、ポリスチレン粒子等の一部の有機充填材は、クラック耐性の改善及び誘電正接の低減は可能であるが、リフロープロセスにおいてブリスターが発生しやすい傾向があった。ここで、ブリスターとは、リフロー時に導体層が盛り上がって膨れる現象をいう。
【0007】
よって、本発明の第一の課題は、誘電正接が低く、クラック耐性及びブリスター耐性に優れる絶縁層を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含むシート状積層材料及び樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供することを目的とする。
【0008】
第二に、応力緩和成分として従来の有機充填材を用いる場合、樹脂組成物の硬化物の誘電正接が高温での温度安定性に劣る傾向がある。具体的には、常温環境における硬化物の誘電正接に比べて、高温環境における硬化物の誘電正接が大きく上昇する傾向がある。一般に、回路基板及び半導体チップパッケージは使用時に発熱する。よって、前記のように高温環境で誘電正接が大きく上昇する硬化物を使用した場合には、高温環境において伝送損失が大きくなることがある。また、従来の有機充填材を用いる場合、絶縁層の絶縁信頼性に劣る傾向があった。
【0009】
よって、本発明の第二の課題は、クラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性に優れる絶縁層を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含むシート状積層材料及び樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、(A)特定の繰り返し単位を含有するポリマーを含む有機充填材と、(B)硬化性樹脂と、を含む樹脂組成物であって、(A)有機充填材の平均粒径が特定範囲にあるものが、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0011】
<1> (A)下記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む有機充填材と、(B)硬化性樹脂と、を含み、
(A)有機充填材の平均粒径が、5μm以下である、樹脂組成物。
【化1】
(式(1)において、
は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の飽和炭化水素基を表し、
は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。)
<2> (C)無機充填材を更に含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> (B)硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチリル樹脂、プロペニル樹脂、及び、マレイミド樹脂、からなる群より選ばれる1種類以上を含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> (A)有機充填材の粒子が、当該(A)有機充填材の粒子の表面に露出したシェル部を含み、
前記シェル部が、前記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<5> (A)有機充填材の平均粒径が、1μm以下である、<1>~<4>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<6> (B)硬化性樹脂が、活性エステル樹脂を含む、<1>~<5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<7> Df(25℃)に対するDf(100℃)の上昇率が、20%未満であり、
Df(25℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の25℃での誘電正接を表し、
Df(100℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の100℃での誘電正接を表す、<1>~<6>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<8> (A)有機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.2質量%以上5質量%以下である、<1>~<7>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<9> 絶縁層形成用である、<1>~<8>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<10> <1>~<9>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
<11> <1>~<9>の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、シート状積層材料。
<12> 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、<1>~<9>の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
<13> <1>~<9>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
<14> <1>~<9>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
<15> <13>に記載の回路基板を備える、半導体装置。
<16> <14>に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【0012】
特に、第一の課題を解決する観点では、下記のものが望ましい。
<I-1> (A)前記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む有機充填材と、(B)硬化性樹脂と、を含み、
(A)有機充填材の平均粒径が、5μm以下である、樹脂組成物。
<I-2> (C)無機充填材を更に含む、<I-1>に記載の樹脂組成物。
<I-3> (B)硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチリル樹脂、プロペニル樹脂、及び、マレイミド樹脂、からなる群より選ばれる1種類以上を含む、<I-1>又は<I-2>に記載の樹脂組成物。
<I-4> (A)有機充填材の粒子が、当該(A)有機充填材の粒子の表面に露出したシェル部を含み、
前記シェル部が、前記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む、<I-1>~<I-3>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<I-5> (A)有機充填材の平均粒径が、1μm以下である、<I-1>~<I-4>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<I-6> 絶縁層形成用である、<I-1>~<I-5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<I-7> <I-1>~<I-6>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
<I-8> <I-1>~<I-6>の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、シート状積層材料。
<I-9> 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、<I-1>~<I-6>の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
<I-10> <I-1>~<I-6>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
<I-11> <I-1>~<I-6>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
<I-12> <I-10>に記載の回路基板又は<I-11>に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【0013】
また、特に第二の課題を解決する観点では、下記のものが好ましい。
<II-1> (A)前記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む有機充填材と、(B)硬化性樹脂と、を含み、
(A)有機充填材の平均粒径が、5μm以下である、樹脂組成物。
<II-2> (C)無機充填材を更に含む、<II-1>に記載の樹脂組成物。
<II-3> (B)硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチリル樹脂、プロペニル樹脂、及び、マレイミド樹脂、からなる群より選ばれる1種類以上を含む、<II-1>又は<II-2>に記載の樹脂組成物。
<II-4> (A)有機充填材の粒子が、当該(A)有機充填材の粒子の表面に露出したシェル部を含み、
前記シェル部が、前記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む、<II-1>~<II-3>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<II-5> (B)硬化性樹脂が、活性エステル樹脂を含む、<II-1>~<II-4>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<II-6> Df(25℃)に対するDf(100℃)の上昇率が、20%未満であり、
Df(25℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の25℃での誘電正接を表し、
Df(100℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の100℃での誘電正接を表す、<II-1>~<II-5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<II-7> (A)有機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.2質量%以上5質量%以下である、<II-1>~<II-6>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<II-8> 絶縁層形成用である、<II-1>~<II-7>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<II-9> <II-1>~<II-8>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
<II-10> <II-1>~<II-8>の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
<II-11> 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、<II-1>~<II-8>の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
<II-12> <II-1>~<II-8>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
<II-13> <II-1>~<II-8>の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
<II-14> <II-12>に記載の回路基板又は<II-13>に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物によれば、下記の第一の効果及び第二の効果の少なくともいずれかが得られる。
第一に、本発明によれば、誘電正接が低く、クラック耐性及びブリスター耐性に優れる絶縁層を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含むシート状積層材料及び樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供できる。
第二に、本発明によれば、クラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性に優れる絶縁層を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含むシート状積層材料及び樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0017】
以下の説明において、用語「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、メタクリル案及びその組み合わせを包含する。また、用語「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート及びその組み合わせを包含する。
【0018】
以下の説明において、用語「誘電率」は、別に断らない限り比誘電率を表す。
【0019】
<第一実施形態に係る樹脂組成物の概要>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)有機充填材と(B)硬化性樹脂とを組み合わせて含む。(A)有機充填材は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを含む。そして、(A)有機充填材は、特定範囲の平均粒径を有する。以下、式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーを、適宜「ポリマー(1)」ということがある。
【0020】
【化2】
(式(1)において、
は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の飽和炭化水素基を表し、
は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。)
【0021】
第一実施形態に係る樹脂組成物によれば、誘電正接が低く、クラック耐性及びブリスター耐性に優れる絶縁層を得ることができる。また、この絶縁層は、通常、低い比誘電率を有することができる。
【0022】
<第一実施形態に係る(A)有機充填材>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)有機充填材を含む。この(A)有機充填材は、樹脂組成物中に粒子状の形態で存在し、通常は、その粒子状の形態を維持したまま硬化物に含まれる。
【0023】
(A)有機充填材は、式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマー(1)を含む。ポリマー(1)を含む(A)有機充填材は、通常、樹脂組成物の硬化物において応力を緩和させる作用を発揮できるので、硬化物のクラック耐性を向上させることができる。また、その硬化物は、通常、低い極性を有することができるので、誘電正接等の誘電特性を低くすることができる。
【0024】
【化3】
【0025】
式(1)において、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の飽和炭化水素基を表す。1価の飽和炭化水素基は、環構造を含まない鎖状炭化水素基であってもよく、環構造を含む環状炭化水素基であってもよい。中でも、1価の飽和炭化水素基は、アルキル基が好ましい。また、Rとしての1価の飽和炭化水素基の炭素原子数は、通常1以上であり、通常12以下、好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。好ましい1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;が挙げられる。中でも、Rは、水素原子が好ましい。
【0026】
式(1)において、Rは、水素原子、又は、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基は、環構造を含まない鎖状炭化水素基であってもよく、環構造を含む環状炭化水素基であってもよい。また、1価の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。さらに、1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。Rとしての1価の炭化水素基の炭素原子数は、通常1以上であり、通常18以下、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。好ましい1価の炭化水素基としては、例えば、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メチルフェニル基、エチルフェニル基等のアルキルアリール基;が挙げられる。
【0027】
の1価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。炭化水素基が「置換基を有していてもよい」という用語は、別に断らない限り、炭化水素基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びオキソ基などが挙げられる。中でも、ヒドロキシ基及びカルボキシ基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。
【0028】
前記の中でも、Rは、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基が好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシ基又はアルキル基を有していてもよいアリール基がより好ましく、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有していてもよいアリール基が更に好ましく、カルボキシ基を有していてもよいアリール基が更に好ましく、無置換のアリール基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0029】
式(1)で表される繰り返し単位の例としては、下記の式(1-1)~式(1-5)で表されるものが挙げられる。中でも、式(1-1)で表される繰り返し単位及び式(1-5)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0030】
【化4】
【0031】
ポリマー(1)は、式(1)で表される繰り返し単位を多く含有することが好ましく、式(1)で表される繰り返し単位のみを含有していてもよい。式(1)で表される繰り返し単位の量は、ポリマー(1)の全質量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、通常100質量%以下である。
【0032】
ポリマー(1)は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。よって、ポリマー(1)は、式(1)で表される1の繰り返し単位のみを含有する単独重合体であってもよく、式(1)で表される2以上の繰り返し単位を含有する共重合体であってもよい。さらに、ポリマー(1)は、式(1)で表される繰り返し単位と、式(1)で表されない任意の繰り返し単位とを組み合わせて含有する共重合体であってもよい。
【0033】
ポリマー(1)が任意の繰り返し単位を含有する共重合体である場合、任意の繰り返し単位は、任意の単量体を重合して形成される構造を有しうる。任意の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミド;マレイミド;マレイン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;などが挙げられる。任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。よって、ポリマー(1)は、任意の繰り返し単位を、1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0034】
ポリマー(1)における任意の繰り返し単位の量は少ないことが好ましい。任意の繰り返し単位の量は、ポリマー(1)の全質量100質量%に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、0質量%であってもよい。
【0035】
ポリマー(1)のガラス転移温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは50℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。ポリマー(1)のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により昇温速度10℃/分で測定でできる。
【0036】
(A)有機充填材は、ポリマー(1)を多く含むことが好ましく、ポリマー(1)のみを含んでいてもよい。ポリマー(1)の量は、(A)有機充填材100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、通常100質量%以下である。
【0037】
(A)有機充填材は、ポリマー(1)に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。(A)有機充填材が含みうるポリマー(1)以外の任意の成分としては、例えば、任意のポリマーが挙げられる。任意のポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系ポリマー;ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系ポリマー;が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(A)有機充填材における任意の成分の量は少ないことが好ましい。(A)有機充填材が含みうる任意の成分の量は、(A)有機充填材100質量%に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、0質量%であってもよい。
【0039】
(A)有機充填材の粒子は、粒子全体が均一な組成を有していてもよく、当該粒子が不均一な組成を有していてもよい。(A)有機充填材の粒子に含まれる部分を組成によって区分した場合、当該粒子は、通常、粒子の表面に露出したシェル部を含む。このシェル部は、(A)有機充填材の粒子の最外層部分に該当する。よって、均一な組成を有する(A)有機充填材の粒子は、当該粒子全体がシェル部によって形成されていると理解できる。また、不均一な組成を有する(A)有機充填材の粒子は、シェル部と、このシェル部内に形成されたコア部とを有していてもよい。この際、(A)有機充填材の粒子は、コア部内に更に任意の部分を含んでいてもよく、シェル部とコア部との間に任意の部分を含んでいてもよい。ここで、シェル部とコア部とが明確に区別できなくてもよく、シェル部とコア部との境界は不明瞭であってよい。さらに、コア部はシェル部によって被覆されていてもよく、完全には被覆されていなくてもよい。さらに、(A)有機充填材の粒子は、シェル部内に中空部を有していてもよい。
【0040】
本発明の効果を顕著に発揮する観点では、前記のシェル部が、ポリマー(1)が含むことが好ましい。シェル部は、ポリマー(1)を多く含むことが好ましく、ポリマー(1)のみを含んでいてもよい。シェル部100質量%に対するポリマー(1)の量の範囲は、上述した(A)有機充填材100質量%に対するポリマー(1)の量の範囲と同じであってもよい。シェル部がポリマー(1)を含む場合、(A)有機充填材の粒子の凝集を効果的に抑制できるので、(A)有機充填材による作用を有効に発揮できる。また、特に(A)有機充填材の粒子がシェル部とコア部とを組み合わせて含む場合、シェル部によって覆われるコア部の組成の自由度を高めることができる。
【0041】
上述したポリマー(1)を含む市販の(A)有機充填材としては、例えば、平均粒径が1μm以下の有機充填材として、根上工業社製の「SEP-03T3」、「SEP-03T3A」、「SSD-001T」、「SEP-03T4」、「SEP-03T3AB」、「SEP-03T3AC」、「SEP-03T3AD」;積水化成品工業社製の「XX-6283Z」、「XX-6288Z」、「XX-6145Z」、「XX-6229Z」、「XX-6283Z」、「XX-6214Z(中空ポリスチレン)」、「XX-6430Z(中空ポリスチレン)」;アイカ工業社製の「PS-050-1」、「PS-050-2」;森本ケミカル社製の「SB-25N」;が挙げられる。また、例えば、平均粒径が1μmより大きい有機充填材として、アイカ工業社製の「GS-0305」(平均粒径3μm);森本ケミカル社製の「SB-25」(平均粒径2.5μm);綜研化学社製の「SX-130H」(平均粒径1.3μm);などが挙げられる。
【0042】
(A)有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(A)有機充填材は、特定範囲の平均粒径を有する。具体的には、(A)有機充填材の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μm以下である。(A)有機充填材の粒子の平均粒径が前記のように小さい場合、誘電正接及びクラック耐性だけでなくブリスター耐性の改善が可能である。詳細には、以下の通りである。ポリマー(1)を含有する有機充填材を含む硬化物は、従来、絶縁層の下地としての導体層との密着性が低い傾向があった。よって、従来は、硬化物によって形成された絶縁層上に導体層を形成してリフロー処理を施した場合に、下地としての導体層から絶縁層が剥がれて当該絶縁層上の導体層が容易に盛り上がるので、ブリスターが生じやすかった。これに対し、本発明の第一実施形態においては、特定範囲の平均粒径を有する(A)有機充填材を用いたことにより、優れたクラック耐性及び誘電特性を有しながら、ブリスターを抑制することを達成した。(A)有機充填材の平均粒径を制御することによってブリスターが抑制できることは、本発明者が初めて発見した効果であり、従来の技術常識からすれば意外な効果といえる。(A)有機充填材の平均粒径の下限は、特段の制限はなく、例えば、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上などでありうる。
【0044】
(A)有機充填材の平均粒径は、レーザー回折式粒径分布測定装置(例えば、島津製作所社製「SALD-2100」)を用いて測定できる。前記の測定装置によれば、(A)有機充填材の平均粒径として体積平均粒径を測定しうる。測定は、(A)有機充填材を溶解しない有機溶媒に(A)有機充填材を分散させて行いうる。有機溶媒としては、(A)有機充填材の凝集を抑制するため、通常は低極性溶剤又は中極性溶剤を用い、好ましくはトルエン又はテトラヒドロフラン(THF)を用いる。
【0045】
(A)有機充填材は、表面処理剤で処理されていなくてもよく、表面処理剤で処理されていてもよい。(A)有機充填材のための表面処理剤としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸等のカルボン酸、p-トルエンスルホン酸、エチルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等の有機酸;テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;エチルイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)有機充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。(A)有機充填材の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0047】
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)有機充填材の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。樹脂組成物の樹脂成分とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち、(C)無機充填材を除いた成分を表す。(A)有機充填材の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0048】
<第一実施形態に係る(B)硬化性樹脂>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)硬化性樹脂を含む。(B)硬化性樹脂には、上述した(A)成分に該当するものは含めない。(B)硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、光硬化性樹脂であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。また、硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、チオール樹脂、及び、ラジカル重合性樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
特に、本発明の効果を顕著に得る観点からは、エポキシ樹脂と、そのエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうる樹脂とを組み合わせて用いることが好ましい。エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうる樹脂を、以下「硬化剤」と呼ぶことがある。硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、チオール樹脂などが挙げられる。硬化剤の中でも、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂及びカルボジイミド樹脂が好ましい。また、硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する硬化性樹脂である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
(B)硬化性樹脂は、エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0054】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0055】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0056】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0057】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0059】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0060】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは7:1~1:7である。
【0062】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0063】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0064】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0065】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0066】
フェノール樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する化合物を用いうる。フェノール樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「フェノール系硬化剤」ということがある。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」等が挙げられる。
【0067】
樹脂組成物中のフェノール樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。フェノール樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0068】
樹脂組成物中のフェノール樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。フェノール樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0069】
活性エステル樹脂としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「活性エステル系硬化剤」ということがある。当該活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0070】
具体的には、活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、及びナフタレン型活性エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂が好ましい。
【0071】
活性エステル樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0072】
樹脂組成物中の活性エステル樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。活性エステル樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0073】
樹脂組成物中の活性エステル樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。活性エステル樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0074】
シアネート樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する化合物を用いうる。シアネート樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「シアネート系硬化剤」ということがある。シアネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネート樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネート樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0075】
樹脂組成物中のシアネート樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。シアネート樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0076】
樹脂組成物中のシアネート樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。シアネート樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0077】
カルボジイミド樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する化合物を用いうる。カルボジイミド樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「カルボジイミド系硬化剤」ということがある。カルボジイミド樹脂の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0078】
樹脂組成物中のカルボジイミド樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。カルボジイミド樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0079】
樹脂組成物中のカルボジイミド樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。カルボジイミド樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0080】
酸無水物樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する化合物を用いうる。酸無水物樹脂は、エポキシ基と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「酸無水物系硬化剤」ということがある。酸無水物樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0081】
アミン樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する化合物を用いうる。アミン樹脂は、エポキシ基と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「アミン系硬化剤」ということがある。アミン樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン樹脂の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0082】
ベンゾオキサジン樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「ベンゾオキサジン系硬化剤」ということがある。ベンゾオキサジン樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0083】
チオール樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「チオール系硬化剤」ということがある。チオール樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0084】
硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの硬化剤の質量である。
【0085】
エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.0以下である。「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0086】
樹脂組成物中の硬化剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。硬化剤の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0087】
樹脂組成物中の硬化剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。硬化剤の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0088】
ラジカル重合性樹脂としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を用いうる。よって、ラジカル重合性樹脂は、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性基を有しうる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。ラジカル重合性樹脂が1分子内中に含むラジカル重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。ラジカル重合性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましいラジカル重合性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、スチリル樹脂、プロペニル樹脂、及び、マレイミド樹が挙げられる。
【0089】
(メタ)アクリル樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物でありうる。(メタ)アクリル樹脂は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよい。「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基、メタクリロイル基及びそれらの組み合わせを包含しうる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の低分子量(分子量1000未満)の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の低分子量(分子量1000未満)のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の低分子量(分子量1000未満)のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の高分子量(分子量1000以上)のアクリル酸エステル化合物等が挙げられる。また、市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」;共栄社化学社製の「DCP」、「DCP-A」;日本化薬社製の「NPDGA」、「FM-400」、「R-604」、「R-684」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」;SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」等が挙げられる。
【0090】
スチリル樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のスチリル基又はビニルフェニル基を有する化合物でありうる。スチリル樹脂は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよい。スチリル樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテル等の低分子量(分子量1000未満)のスチレン系化合物;ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等の高分子量(分子量1000以上)のスチレン系化合物等が挙げられる。また、市販のスチリル樹脂としては、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」等が挙げられる。
【0091】
プロペニル樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のプロペニル基を有する化合物でありうる。プロペニル樹脂は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよい。前記のプロペニル基は、1-プロペニル基、2-プロペニル基(即ち、アリル基)及びそれらの組み合わせを包含しうる。プロペニル樹脂としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン等のエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン等のベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼン等のエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシラン等のアリルシラン化合物等が挙げられる。市販のプロペニル樹脂としては、例えば、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、和光純薬工業社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)等が挙げられる。また、プロペニル樹脂として、芳香環に結合した水酸基を含有する樹脂を用いてもよく、例えば、下記式(b1)に示す樹脂を用いてもよい。このように芳香環に結合した水酸基を含有するプロペニル樹脂は、ラジカル重合性樹脂としてだけでなく、フェノール系硬化剤としても機能できる。
【0092】
【化5】
【0093】
マレイミド樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する化合物でありうる。マレイミド樹脂は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよい。市販のマレイミド樹脂としては、例えば、「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもデジクナーモレキュールズ社製)などの、ダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格を含むマレイミド樹脂;発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
【0094】
ラジカル重合性樹脂のエチレン性不飽和結合当量は、好ましくは20g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1500g/eq.である。エチレン性不飽和結合当量は、エチレン性不飽和結合1当量あたりのラジカル重合性樹脂の質量を表す。
【0095】
ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは5000以下、特に好ましくは3000以下である。下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150以上でありうる。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0096】
樹脂組成物中のラジカル重合性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。ラジカル重合性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0097】
樹脂組成物中のラジカル重合性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。ラジカル重合性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0098】
上述したものの中でも、(B)硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチリル樹脂、プロペニル樹脂、及び、マレイミド樹脂、からなる群より選ばれる1種類以上を含むことが好ましい。このとき、前記の群から選ばれる樹脂の合計量は、(B)硬化性樹脂100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、通常100質量%以下である。このような好ましい樹脂を(B)硬化性樹脂が含む場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0099】
樹脂組成物中の(B)硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(B)硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0100】
樹脂組成物中の(B)硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、特に好ましくは94質量%以下である。(B)硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0101】
<第一実施形態に係る(C)無機充填材>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(C)無機充填材を更に含んでいてもよい。(C)成分としての(C)無機充填材には、上述した(A)~(B)成分に該当するものは含めない。(C)無機充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0102】
(C)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(C)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
(C)無機充填材は、内部に空孔を有する中空無機充填材と、内部に空孔を有さない中実無機充填材とに分類できる。(C)無機充填材としては、中空無機充填材のみを用いてもよく、中実無機充填材のみを用いてもよく、中空無機充填材と中実無機充填材とを組み合わせて用いてもよい。中空無機充填材を用いる場合、通常は、樹脂組成物の硬化物の比誘電率を低くできる。
【0104】
中空無機充填材は、空孔を有するので、通常、0体積%より大きい空孔率を有する。樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層の比誘電率を低くする観点から、中空無機充填材の空孔率は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、特に好ましくは15体積%以上である。また、樹脂組成物の硬化物の機械的強度の観点から、中空無機充填材の空孔率は、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、特に好ましくは85体積%以下である。
【0105】
粒子の空孔率P(体積%)は、粒子の外面を基準とした粒子全体の体積に対する粒子内部に1個又は2個以上存在する空孔の合計体積の体積基準割合(空孔の合計体積/粒子の体積)として定義される。この空孔率Pは、粒子の実際の密度の測定値D(g/cm)、及び、粒子を形成する材料の物質密度の理論値D(g/cm)を用いて、下記式(X1)により算出できる。
【0106】
【数1】
【0107】
中空無機充填材は、例えば、特許第5940188号公報及び特許第5864299号公報に記載の方法又はこれに準ずる方法により製造してもよい。
【0108】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製「セルフィアーズ」;日揮触媒化成社製「エスフェリーク」などが挙げられる。
【0109】
(C)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0110】
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0111】
(C)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、特に好ましくは3m/g以上であり、好ましくは100m/g以下、より好ましくは70m/g以下、さらに好ましくは50m/g以下、特に好ましくは40m/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0112】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0113】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0114】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0115】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0116】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0117】
樹脂組成物中の(C)無機充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは94質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。(C)無機充填材の量が前記範囲にある場合、絶縁層の誘電正接、クラック耐性及びブリスター耐性を効果的に改善でき、更に通常は、絶縁層の比誘電率を低くできる。
【0118】
<第一実施形態に係る(D)硬化促進剤>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(D)硬化促進剤を更に含んでいてもよい。(D)成分としての(D)硬化促進剤には、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)硬化促進剤は、(B)硬化性樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0119】
(D)硬化促進剤としては、(B)硬化性樹脂の種類に応じて適切なものを用いうる。例えば、(B)硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、そのエポキシ樹脂の硬化を促進させうる(D)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(D)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0121】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0122】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0123】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0124】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0125】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0126】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。
【0127】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0128】
<第一実施形態に係る(E)熱可塑性樹脂>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(E)熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。(E)成分としての(E)熱可塑性樹脂には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。
【0129】
(E)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。(E)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0131】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0132】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0133】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0134】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0135】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0136】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0137】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0138】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0139】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0140】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0141】
(E)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。(E)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0142】
樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0143】
樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0144】
<第一実施形態に係る(F)任意の添加剤>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の不揮発成分として、(F)任意の添加剤を更に含んでいてもよい。(F)成分としての(F)任意の添加剤には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)任意の添加剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤;が挙げられる。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
<第一実施形態に係る(G)溶剤>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(F)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に任意の揮発性成分として、(G)溶剤を含んでいてもよい。(G)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(G)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
(G)溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありえ、0質量%であってもよい。
【0147】
<第一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、樹脂組成物に含まれうる成分を混合することによって、製造することができる。上述した成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0148】
<第一実施形態に係る樹脂組成物の特性>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物を硬化することにより、硬化物が得られる。前記の効果の際、通常は、樹脂組成物には熱が加えられる。よって、通常、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(G)溶剤等の揮発成分は硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(F)成分といった不揮発成分は、硬化時の熱によっては揮発しない。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0149】
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、低い誘電正接を有することができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、誘電正接の低い絶縁層を得ることができる。樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、好ましくは0.040以下、より好ましくは0.030以下、特に好ましくは0.020以下である。下限は、特段の制限はなく、例えば、0.0001以上でありうる。硬化物の誘電正接は、後述する実施例の<試験例I-1:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>に記載の方法で測定できる。
【0150】
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、クラック耐性に優れる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、クラック耐性に優れる絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例の<試験例I-2:クラック耐性の評価>で説明する方法でクラック耐性の評価を行った場合に、歩留まりを、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上にできる。通常、歩留まりの値が大きいほど、クラック耐性に優れることを表す。
【0151】
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、ブリスター耐性に優れる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、リフロー時のブリスターを抑制できる。例えば、後述する実施例の<試験例I-3:ブリスター耐性の評価>で説明する方法で評価を行った場合、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層上に形成される導体層の膨れ等の異常を抑制できる。
【0152】
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、低い比誘電率を有することができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、比誘電率の低い絶縁層を得ることができる。樹脂組成物の硬化物の比誘電率は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下、特に好ましくは3.5以下である。下限は、特段の制限はなく、例えば、0.1以上でありうる。硬化物の誘電正接は、後述する実施例の<試験例I-1:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>に記載の方法で測定できる。
【0153】
<第二実施形態に係る樹脂組成物の概要>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、(A)有機充填材と(B)硬化性樹脂とを組み合わせて含む。(A)有機充填材は、式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマー(1)を含む。そして、(A)有機充填材が、特定範囲の平均粒径を有する。
【0154】
【化6】
(式(1)において、
は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の飽和炭化水素基を表し、
は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。)
【0155】
第二実施形態に係る樹脂組成物によれば、クラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性に優れる絶縁層を得ることができる。また、この絶縁層は、通常、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性が低いものであることができる。
【0156】
<第二実施形態に係る(A)有機充填材>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)有機充填材を含む。この(A)有機充填材は、樹脂組成物中に粒子状の形態で存在し、通常は、その粒子状の形態を維持したまま硬化物に含まれる。(A)有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。第二実施形態に係る(A)有機充填材としては、第一実施形態で説明した(A)有機充填材と同じものを用いうる。したがって、第二実施形態に係る(A)有機充填材の範囲は、第一実施形態に係る(A)有機充填材の範囲と同じでありうる。
【0157】
したがって、第二実施形態におけるポリマー(1)は、第一実施形態で説明したポリマー(1)と同じでありうる。また、第二実施形態に係る(A)有機充填材が含むポリマー(1)の量は、第一実施形態に係る(A)有機充填材が含むポリマー(1)の量と同じでありうる。さらに、第二実施形態に係る(A)有機充填材が含みうる任意の成分の種類及び量は、第一実施形態に係る(A)有機充填材が含みうる任意の成分の種類及び量と同じでありうる。また、第二実施形態に係る(A)有機充填材は、シェル部及びコア部等の部分を含んでいてもよい。第二実施形態に係る(A)有機充填材が含みうるシェル部及びコア部等の部分は、第一実施形態に係る(A)有機充填材が含みうるコア部及びシェル部等の部分と同じでありうる。さらに、第二実施形態に係る(A)有機充填材の平均粒径の範囲は、第一実施形態に係る(A)有機充填材の平均粒径の範囲と同じでありうる。また、第二実施形態に係る(A)有機充填材は、表面処理剤で処理されていてもよい。第二実施形態に係る(A)有機充填材の表面処理剤は、第一実施形態に係る(A)有機充填材の表面処理剤と同じでありうる。
【0158】
ポリマー(1)を含む(A)有機充填材は、通常、樹脂組成物の硬化物において応力を緩和させる作用を発揮できるので、硬化物のクラック耐性を向上させることができる。また、ポリマー(1)を含有する有機充填材を含む硬化物は、従来、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性に劣る傾向があった。これに対し、本発明の第二実施形態においては、特定範囲の平均粒径を有する(A)有機充填材を用いたことにより、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を改善することができた。そのため、第二実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって絶縁層を形成することにより、クラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性に優れる絶縁層を得ることができる。(A)有機充填材の平均粒径を制御した場合に、クラック耐性を高く維持しながら誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を改善できることは、本発明者が初めて発見した効果であり、従来の技術常識からすれば意外な効果といえる。また、その硬化物は、通常、低い極性を有することができるので、誘電正接等の誘電特性を低くすることができる。
【0159】
第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)有機充填材の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)有機充填材の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0160】
特に望ましい態様において、本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)有機充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下である。(A)有機充填材の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0161】
特に望ましい態様において、本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)有機充填材の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。樹脂組成物の樹脂成分とは、前述の通り、樹脂組成物の不揮発成分のうち、(C)無機充填材を除いた成分を表す。(A)有機充填材の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0162】
<第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)硬化性樹脂を含む。(B)硬化性樹脂には、上述した(A)成分に該当するものは含めない。(B)硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂としては、第一実施形態で説明した(B)硬化性樹脂と同じものを用いうる。したがって、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂の範囲は、第一実施形態に係る(B)硬化性樹脂の範囲と同じでありうる。
【0163】
よって、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含んでいてもよい。第二実施形態に係るエポキシ樹脂としては、第一実施形態に係るエポキシ樹脂と同じものを用いうる。第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0164】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0165】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0166】
また、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、フェノール樹脂を含んでいてもよい。第二実施形態に係るフェノール樹脂としては、第一実施形態に係るフェノール樹脂と同じものを用いうる。第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0167】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のフェノール樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。フェノール樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0168】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のフェノール樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。フェノール樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0169】
さらに、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、活性エステル樹脂を含んでいてもよい。第二実施形態に係る活性エステル樹脂としては、第一実施形態に係る活性エステル樹脂と同じものを用いうる。第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる活性エステル樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる活性エステル樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0170】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の活性エステル樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。活性エステル樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0171】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の活性エステル樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。活性エステル樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0172】
また、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、シアネート樹脂を含んでいてもよい。第二実施形態に係るシアネート樹脂としては、第一実施形態に係るシアネート樹脂と同じものを用いうる。第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれるシアネート樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれるシアネート樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0173】
さらに、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、カルボジイミド樹脂を含んでいてもよい。第二実施形態に係るカルボジイミド樹脂としては、第一実施形態に係るカルボジイミド樹脂と同じものを用いうる。第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれるカルボジイミド樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれるカルボジイミド樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0174】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のカルボジイミド樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。カルボジイミド樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0175】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のカルボジイミド樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。カルボジイミド樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0176】
また、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、上述した以外の硬化剤を含んでいてもよい。第二実施形態に係る硬化剤としては、第一実施形態に係る硬化剤と同じものを用いうる。エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するフェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、チオール樹脂等の硬化剤の活性基数の比は、第一実施形態と同じでありうる。すなわち、第二実施形態に係る樹脂組成物において、エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の硬化剤の活性基数の範囲は、第一実施形態で説明したのと同じ範囲にありうる。
【0177】
第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる硬化剤の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる硬化剤の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0178】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の硬化剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。硬化剤の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0179】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の硬化剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。硬化剤の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0180】
さらに、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、ラジカル重合性樹脂を含んでいてもよい。第二実施形態に係るラジカル重合性樹脂としては、第一実施形態に係るラジカル重合性樹脂と同じものを用いうる。第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれるラジカル重合性樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれるラジカル重合性樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0181】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のラジカル重合性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。ラジカル重合性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0182】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中のラジカル重合性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。ラジカル重合性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0183】
上述したものの中でも、第二実施形態に係る(B)硬化性樹脂は、第一実施形態に係る(B)硬化性樹脂と同じく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチリル樹脂、プロペニル樹脂、及び、マレイミド樹脂、からなる群より選ばれる1種類以上を含むことが好ましい。このとき、前記の群から選ばれる樹脂の合計量の範囲は、第一実施形態で説明した範囲と同じでありうる。特に望ましい態様において、前記の群から選ばれる樹脂の合計量は、(B)硬化性樹脂100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、特に好ましくは96質量%以下である。このような好ましい樹脂を(B)硬化性樹脂が含む場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0184】
第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(B)硬化性樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(B)硬化性樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0185】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の(B)硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。(B)硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0186】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の(B)硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、特に好ましくは94質量%以下である。(B)硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0187】
<第二実施形態に係る(C)無機充填材>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(C)無機充填材を更に含んでいてもよい。(C)成分としての(C)無機充填材には、上述した(A)~(B)成分に該当するものは含めない。(C)無機充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(C)無機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。第二実施形態に係る(C)無機充填材としては、第一実施形態で説明した(C)無機充填材と同じものを用いうる。したがって、第二実施形態に係る(C)無機充填材の範囲は、第一実施形態に係る(C)無機充填材の範囲と同じでありうる。
【0188】
第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(C)無機充填材の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(C)無機充填材の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の(C)無機充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは94質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。(C)無機充填材の量が前記範囲にある場合、絶縁層のクラック耐性、誘電正接の高温での温度安定性及び絶縁信頼性を特に良好にでき、更に通常は、比誘電率及び誘電正接を低減できる。
【0189】
<第二実施形態に係る(D)硬化促進剤>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(D)硬化促進剤を更に含んでいてもよい。(D)成分としての(D)硬化促進剤には、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。第二実施形態に係る(D)硬化促進剤としては、第一実施形態で説明した(D)硬化促進剤と同じものを用いうる。したがって、第二実施形態に係る(D)硬化促進剤の範囲は、第一実施形態に係る(D)硬化促進剤の範囲と同じでありうる。
【0190】
第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(D)硬化促進剤の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(D)硬化促進剤の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0191】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0192】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0193】
<第二実施形態に係る(E)熱可塑性樹脂>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(E)熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。(E)成分としての(E)熱可塑性樹脂には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。(E)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。第二実施形態に係る(E)熱可塑性樹脂としては、第一実施形態で説明した(E)熱可塑性樹脂と同じものを用いうる。したがって、第二実施形態に係る(E)熱可塑性樹脂の範囲は、第一実施形態に係る(E)熱可塑性樹脂の範囲と同じでありうる。
【0194】
第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(E)熱可塑性樹脂の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(E)熱可塑性樹脂の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0195】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0196】
特に望ましい態様において、第二実施形態に係る樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0197】
<第二実施形態に係る(F)任意の添加剤>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の不揮発成分として、(F)任意の添加剤を更に含んでいてもよい。(F)成分としての(F)任意の添加剤には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。第二実施形態に係る(F)任意の添加剤としては、第一実施形態で説明した(F)任意の添加剤と同じものを用いうる。したがって、第二実施形態に係る(F)任意の添加剤の範囲は、第一実施形態に係る(F)任意の添加剤の範囲と同じでありうる。
【0198】
<第一実施形態に係る(G)溶剤>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(F)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に任意の揮発性成分として、(G)溶剤を含んでいてもよい。(G)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。第二実施形態に係る(G)溶剤としては、第一実施形態で説明した(G)溶剤と同じものを用いうる。したがって、第二実施形態に係る(G)溶剤の範囲は、第一実施形態に係る(G)溶剤の範囲と同じでありうる。
【0199】
第二実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(G)溶剤の量の範囲は、第一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(G)溶剤の量の範囲と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0200】
<第二実施形態に係る樹脂組成物の製造方法>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、第一実施形態に係る樹脂組成物と同じく、当該樹脂組成物に含まれうる成分を混合することによって、製造することができる。
【0201】
<第二実施形態に係る樹脂組成物の特性>
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物を硬化することにより、硬化物が得られる。前記の硬化の際、通常は、樹脂組成物には熱が加えられる。よって、通常、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(G)溶剤等の揮発成分は硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(F)成分といった不揮発成分は、硬化時の熱によっては揮発しない。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0202】
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、誘電正接の高温での温度安定性に優れる。したがって、高温環境における硬化物の誘電正接の上昇を抑制できる。よって、25℃における硬化物の誘電正接Df(25℃)に対する100℃における硬化物の誘電正接Df(100℃)の上昇率を小さくできる。前記の上昇率の範囲は、具体的には、通常0%以上であり、通常20%未満、好ましくは19%以下、より好ましくは18%以下である。このように高温における誘電正接の上昇率が低い硬化物で絶縁層を形成した場合、誘電正接の高温での温度安定性に優れる絶縁層を得ることができる。
【0203】
硬化物の誘電正接の前記上昇率は、下記式(X)によって測定できる。
上昇率={Df(100℃)-Df(25℃)}/Df(25℃) (X)
(式(X)において、Df(25℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の25℃での誘電正接を表し、Df(100℃)は、樹脂組成物を200℃で90分間熱処理して得られる硬化物の100℃での誘電正接を表す。)
硬化物の誘電正接は、後述する実施例の<試験例II-1:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>に記載の方法で測定できる。
【0204】
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、クラック耐性に優れる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、クラック耐性に優れる絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例の<試験例I-2:クラック耐性の評価>で説明する方法でクラック耐性の評価を行った場合に、歩留まりを、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上にできる。通常、歩留まりの値が大きいほど、クラック耐性に優れることを表す。
【0205】
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、絶縁信頼性に優れる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、絶縁信頼性に優れる絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例の<試験例II-3:絶縁信頼性の評価>で説明する方法で絶縁信頼性の評価を行った場合に、初期抵抗値及びHAST後抵抗値がともに1.0×10Ω以上であるサンプルの数を、好ましくは5か所以上、より好ましくは6か所以上、特に好ましくは7か所にできる。
【0206】
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、低い誘電正接を有することができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、誘電正接の低い絶縁層を得ることができる。樹脂組成物の硬化物の25℃における誘電正接は、好ましくは0.040以下、より好ましくは0.035以下、特に好ましくは0.030以下である。下限は、特段の制限はなく、例えば、0.0001以上でありうる。また、樹脂組成物の硬化物の100℃における誘電正接は、好ましくは0.050以下、より好ましくは0.040以下、特に好ましくは0.035以下である。下限は、特段の制限はなく、例えば、0.0001以上でありうる。硬化物の誘電正接は、後述する実施例の<試験例II-1:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>に記載の方法で測定できる。
【0207】
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、低い比誘電率を有することができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合、比誘電率の低い絶縁層を得ることができる。樹脂組成物の硬化物の25℃における比誘電率は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下、特に好ましくは3.5以下である。下限は、特段の制限はなく、例えば、0.1以上でありうる。硬化物の誘電正接は、後述する実施例の<試験例II-1:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>に記載の方法で測定できる。
【0208】
<第一実施形態及び第二実施形態に係る樹脂組成物の用途>
以下の説明では、別に断らない限り、「樹脂組成物」とは、上述した第一実施形態に係る樹脂組成物及び第二実施形態に係る樹脂組成物の両方を包括して示す。樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として使用でき、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物(絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。例えば、本実施形態に係る樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。特に、樹脂組成物は、導体層と導体層との間に設けられる層間絶縁層を形成するために好適である。
【0209】
半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。
【0210】
また、前記の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0211】
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0212】
<シート状積層材料>
樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用してもよいが、工業的には、該樹脂組成物を含むシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0213】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0214】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物で形成されている。よって、樹脂組成物層は、通常は樹脂組成物を含み、好ましくは樹脂組成物のみを含む。
【0215】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点、及び、樹脂組成物によって薄くても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、5μm以上、10μm以上等でありうる。
【0216】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0217】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0218】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0219】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0220】
支持体として、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0221】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0222】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着やキズを抑制することができる。
【0223】
樹脂シートは、例えば、液状(ワニス状)の樹脂組成物をそのまま、或いは溶剤に樹脂組成物を溶解して液状(ワニス状)の樹脂組成物を調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0224】
溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した溶剤と同様のものが挙げられる。溶剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0225】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0226】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0227】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本実施形態に係る樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0228】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されず、通常10μm以上である。
【0229】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の方法により製造することができる。
【0230】
プリプレグの厚さは、上述した樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲でありうる。
【0231】
シート状積層材料は、例えば、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。また、シート状積層材料は、例えば、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。さらに、シート状積層材料は、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。特に、シート状積層材料は、層間絶縁層を形成するために好適である。
【0232】
<回路基板>
本発明の一実施形態に係る回路基板は、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、回路基板は、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む。絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(I)及び工程(II)を含む製造方法によって、製造できる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(II)樹脂組成物層を硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0233】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、回路基板の基材となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。また回路基板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、前記の「内層基板」に含まれる。回路基板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0234】
内層基板が備える導体層がパターン加工されている場合、クラック耐性に優れるという利点を活用する観点から、その導体層の最小ライン/スペース比は、小さいことが好ましい。「ライン」とは、導体層の回路幅を表し、「スペース」とは回路間の間隔を表す。最小ライン/スペース比の範囲は、好ましくは好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは15/15μm以下、さらに好ましくは10/10μm以下である。下限は、例えば、0.5/0.5μm以上でありうる。ピッチは、導体層の全体にわたって均一でもよく、不均一でもよい。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0235】
内層基板上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板と樹脂シートとを積層することによって行いうる。内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0236】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
【0237】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0238】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0239】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0240】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化は、熱硬化、光硬化等のように、樹脂組成物に適した方法で行いうる。樹脂組成物層の具体的な硬化条件は、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0241】
熱硬化性の樹脂組成物を用いた場合、樹脂組成物の硬化は、熱硬化として進行しうる。よってこの場合、工程(II)は、樹脂組成物層を熱硬化させることを含みうる。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。例えば、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。また、硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0242】
また、樹脂組成物層を熱硬化させる場合には、回路基板の製造方法は、その熱硬化の前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含むことが好ましい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0243】
他方、光硬化性の樹脂組成物を用いた場合、樹脂組成物の硬化は、光硬化として進行しうる。よってこの場合、工程(II)は、樹脂組成物層を光硬化させることを含みうる。樹脂組成物の光硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。例えば、樹脂組成物層に活性光線を照射する露光処理によって、照射部の樹脂組成物層を光硬化させうる。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量は、例えば、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。支持体を備える樹脂シートを用いた場合、支持体を通して露光を行ってもよく、支持体を剥離した後に露光を行ってもよい。
【0244】
露光処理では、パターンを形成されたマスクを通して樹脂組成物層に活性光線を照射してもよい。マスクを用いた露光方法には、マスクをワークに接触させて露光を行う接触露光法と、接触させずに平行光線を使用して露光を行う非接触露光法とがあり、どちらを用いてもよい。
【0245】
工程(II)は、露光処理の後に、現像処理を行うことを含んでいてもよい。現像処理によれば、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して、硬化体層にパターンを形成することができる。現像は、通常、ウェット現像により行う。ウェット現像において、現像液としては、例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の、安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられる。なかでも、アルカリ水溶液による現像工程が好ましい。現像方法としては、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の方法が採用されうる。
【0246】
さらに、樹脂組成物層を光硬化させた場合には、光硬化及び現像の後で、必要に応じて、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理としては、例えば、高圧水銀ランプによる紫外線照射処理、クリーンオーブンを用いた加熱処理、などが挙げられる。紫外線照射処理は、例えば、0.05J/cm~10J/cm程度の照射量で行いうる。また、加熱処理は、例えば、好ましくは150℃~250℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~230℃で30分間~120分間の範囲で行いうる。
【0247】
回路基板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、回路基板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板等の多層構造を有する回路基板を形成してもよい。
【0248】
他の実施形態において、回路基板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様でありうる。
【0249】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0250】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。よって、前記の粗化処理は「デスミア処理」と呼ばれることがある。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0251】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0252】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0253】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0254】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0255】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0256】
導体層の厚さは、所望の回路基板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0257】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0258】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0259】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0260】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0261】
<半導体チップパッケージ>
本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む。絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。この半導体チップパッケージとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0262】
第一の例に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0263】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0264】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間の範囲)である。
【0265】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0266】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよい。
【0267】
第二の例に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層とを含む。第二の例に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-out型PLP等が挙げられる。
【0268】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。Fan-out型WLPとしての半導体チップパッケージ100は、例えば、図1に示すように、半導体チップ110;半導体チップ110の周囲を覆うように形成された封止層120;半導体チップ110の封止層120とは反対側の面に設けられた、絶縁層としての再配線形成層130;導体層としての再配線層140;ソルダーレジスト層150;及び、バンプ160を備える。
【0269】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0270】
(工程(A))
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における基材と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0271】
基材としては、例えば、シリコンウエハ;ガラスウエハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0272】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0273】
(工程(B))
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0274】
(工程(C))
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、例えば、感光性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物によって形成しうる。この封止層を、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成できる。
【0275】
(工程(D))
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0276】
前記のように基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離すると、封止層の面が露出する。半導体チップパッケージの製造方法は、この露出した封止層の面を研磨することを含んでいてもよい。研磨により、封止層の表面の平滑性を向上させることができる。
【0277】
(工程(E))
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。通常、この再配線形成層は、半導体チップ及び封止層上に形成される。再配線形成層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成しうる。再配線形成層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて再配線形成層を形成する工程とを含む方法で形成できる。半導体チップ上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板の代わりに半導体チップを用いること以外は、前記の回路基板の製造方法で説明した内層基板上への樹脂組成物層の形成方法と同じ方法で行いうる。
【0278】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を硬化させて、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層としての再配線形成層を得る。樹脂組成物層の硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の硬化条件と同じ条件を採用してもよい。樹脂組成物層を熱硬化させる場合には、その熱硬化の前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。通常、再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを接続するために、再配線形成層にホールを形成する。
【0279】
(工程(F))
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0280】
(工程(G))
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物が好ましい。ソルダーレジスト層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。
【0281】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行ってもよい。
【0282】
(工程(H))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0283】
<半導体装置>
半導体装置は、上述した回路基板又は半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0284】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)であった。以下の説明において「L/S」とは、別に断らない限り、配線パターンのライン/スペース比を表す。
【0285】
<合成例1>
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lの反応容器に、メタノール410g、水酸化ナトリウム48.0g、及び、ビフェノールを205.0g仕込み、40℃で塩化アリル91.8gを発熱に注意しながら3時間かけて滴下した。その後、メタノールが還流する温度(約60℃)まで昇温し、アリルエーテル化反応を4時間行った。次いで、水洗で塩を除去後、180℃まで昇温し、10時間転移反応を行った。転移反応後、100℃まで温度を下げ、ブタノールを205.0g添加して樹脂を溶解させ、さらに水酸化カリウムを70.5g添加し、115℃で6時間プロペニル化反応を行った。その後、水洗し、濃縮して、前記の式(b1)で表されるプロペニル樹脂(ビフェノールのプロペニル体、水酸基当量133g/eq.)を得た。
【0286】
<実施例群Iに係る説明>
<実施例I-1>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.)10部を、ソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させて、溶液を得た。この溶液を室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0287】
このエポキシ樹脂の溶解組成物に、ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)100部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)15部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)300部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を調製した。
【0288】
<実施例I-2>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)の量を5部から20部に増量した。さらに、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)100部の代わりに活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)100部を用いた。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0289】
<実施例I-3>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン/アクリル共重合微粒子(根上工業社製「SEP-03T3A」、平均粒径0.3μm)5部を用いた。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を300部から210部に減量した。さらに、樹脂組成物に更に中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、中空無機充填材、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)を6部追加した。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0290】
<実施例I-4>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン微粒子(積水化成工業社製「XX-6283Z」、平均粒径0.3μm)5部を用いた。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0291】
<実施例I-5>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、カルボキシ基が付与されたポリスチレン微粒子(積水化成工業社製「XX-6288Z」、平均粒径0.3μm)5部を用いた。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0292】
<実施例I-6>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン微粒子(アイカ工業社製「GS-0305」、平均粒径3.0μm)5部を用いた。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0293】
<実施例I-7>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリエチレン微粒子(森本ケミカル社製「SB-25」、平均粒径2.5μm)5部を用いた。以上の事項以外は、実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0294】
<実施例I-8>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部及びビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.)10部の代わりに、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)20部及びビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量190g/eq.)10部を用いた。さらに、樹脂組成物に、ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)を3部追加した。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0295】
<実施例I-9>
ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)3部の代わりに、ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 2200」、不揮発成分率65%のトルエン溶液)5部を用いた。以上の事項以外は実施例I-8と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0296】
<実施例I-10>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン/アクリル共重合微粒子(根上工業社製「SEP-03T3A」、平均粒径0.3μm)3部及びポリスチレン微粒子(積水化成工業社製「XX-6283Z」、平均粒径0.3μm)2部を用いた。また、ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)を3部の代わりに、合成例1で得られたプロペニル樹脂を3部用いた。以上の事項以外は、実施例I-8と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0297】
<実施例I-11>
活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)100部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部及びカルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)15部の代わりに、ノボラック型フェノール系硬化剤(DIC社製「TD-2090」、活性基当量約105g/eq.、不揮発成分率60%の溶液)40部を使用した。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を300部から50部に減量した。さらに、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部の代わりにイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.1部を使用した。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0298】
<実施例I-12>
活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)100部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部及びカルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)15部の代わりに、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)15部とビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン社製「Primaset BA230S75」、シアネート当量約232g/eq.、不揮発成分75質量%のMEK溶液)20部を用いた。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を300部から60部に減量した。さらに、樹脂組成物にコバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製、Co(III)AcAc)0.01部を追加した。以上の事項以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0299】
<比較例I-1>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)を用いなかったこと以外は実施例I-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0300】
<比較例I-2>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、コアシェル構造ゴム粒子(アイカ工業社製「スタフィロイドAC3816N」、コア部がアクリル樹脂、シェル部がポリメタクリレート樹脂、平均粒径0.3μm)5部を用いた。ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)を用いなかった。以上の事項以外は実施例I-8と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0301】
<比較例I-3>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン粒子(根上工業社製「G-800T」、平均粒径6.0μm)5部を用いた。また、ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)を用いなかった。以上の事項以外は実施例I-8と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0302】
<比較例I-4>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)を用いなかったこと以外は実施例I-12と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0303】
<樹脂シートの製造>
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、上述した実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0304】
<試験例I-1:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>
前記の樹脂シートを200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離することで、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物フィルムを得た。硬化物フィルムを、幅2mm、長さ80mmに切り出し、評価用硬化物Aを得た。
【0305】
得られた評価用硬化物Aについて、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて比誘電率(Dk)と誘電正接(Df)を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0306】
<試験例I-2:クラック耐性の評価>
(1)樹脂シートのラミネート:
L/S=8μm/8μmの配線パターンとして形成された回路導体(銅)を両面に有する内層基板(日立化成社製「MCL-E700G」、導体層の厚さ35μm、計0.4mm厚、残銅率40%)を用意した。この内層基板の両面に、樹脂組成物層が内層基板と接するように、樹脂シートをラミネートした。かかるラミネートは、真空加圧式ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用い、温度120℃にて30秒間真空吸引後、温度120℃、圧力7.0kg/cmの条件で、支持体上から、耐熱ゴムを介して30秒間プレスすることにより行った。次に、大気圧下で、SUS鏡板を用いて、温度120℃、圧力5.5kg/cmの条件で60秒間プレスを行った。
【0307】
(2)樹脂組成物層の熱硬化:
130℃で30分間加熱し、次いで170℃で30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、樹脂組成物の硬化物からなる硬化物層としての絶縁層を得た。その後、支持体を剥離して、絶縁層/内層基板/絶縁層の層構成を有する試料基板を得た。
【0308】
(3)粗化処理:
試料基板の絶縁層に、粗化処理を施した。具体的には、試料基板を、膨潤液であるアトテックジャパン社製のスエリングディップ・セキュリガントPに60℃で10分間浸漬した。次に、粗化液であるアトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬した。最後に、中和液であるアトテックジャパン社製のリダクションソリューション・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。
【0309】
(4)クラックの評価:
粗化処理後の絶縁層表面のうち、内層基板の配線パターン上の部分を観察した。100個の内層基板のパターン形状に沿って絶縁層の表面にクラック(割れ)が発生しているか確認し、クラックの発生していないパターン上の部分の数の割合を数えた。この割合を「歩留まり」として算出した。また、算出した歩留まりを以下の基準で点数をつけた。
1点:0%以上20%未満。
2点:20%以上40%未満。
3点:40%以上60%未満。
4点:60%以上80%未満。
5点:80%以上。
5点以上を「○」、3~4点を「△」、2点以下を「×」として評価した。
【0310】
<試験例I-3:ブリスター耐性の評価>
(1)内装基板の下地処理:
内層基板として、表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層基板の表面の銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量1μmにてエッチングして、粗化処理を行った。その後、190℃にて30分乾燥を行った。
【0311】
(2)樹脂シートの積層・硬化:
樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。
【0312】
130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させて、樹脂組成物の硬化物からなる硬化物層としての絶縁層を得た。その後、支持体を剥離して、絶縁層/内層基板/絶縁層の層構成を有する中間基板を得た。
【0313】
(3)粗化処理:
中間基板を、膨潤液であるアトテックジャパン社製のスエリングディップ・セキュリガントPに60℃で10分間浸漬した。次に、粗化液であるアトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬した。最後に、中和液であるアトテックジャパン社製のリダクションソリューション・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。得られた中間基板を評価基板Aとした。
【0314】
(4)セミアディティブ工法によるメッキ:
絶縁層の表面に回路を形成するために、評価基板Aを、PdClを含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成を行った。その後、硫酸銅電解メッキを行い、30±5μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。これにより、絶縁層上に導体層を備える回路基板としての評価基板Bを得た。
【0315】
(5)リフロー工程でのふくれ評価:
評価用基板Bを切断して、100mm×50mmの小片を得た。この小片を、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム社製「HAS-6116」)に5回通す試験を行った(リフロー温度プロファイルは、IPC/JEDEC J-STD-020Cに準拠)。前記の試験を5つの小片で行い、試験後の小片を目視観察した。目視観察の結果、3つ以上の小片において導体層にふくれ等の異常があるもののブリスター耐性を「×」と判定した。また、1~2つの小片で導体層にふくれ等の異常があるもののブリスター耐性を「△」と判定した。さらに、全ての小片で全く異常のないもののブリスター耐性を「○」と判定した。
【0316】
<実施例群Iに係る結果>
上述した実施例I-1からI-12及び比較例I-1からI-4の結果を、下記の表1~表3に示す。下記の表において、「化合物1」は、合成例1で製造したプロペニル樹脂を表す。
【0317】
【表1】
【0318】
【表2】
【0319】
【表3】
【0320】
<実施例群IIに係る説明>
<実施例II-1>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部及びビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.)10部を、ソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させて、溶液を得た。この溶液を室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0321】
このエポキシ樹脂の溶解組成物に、ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)100部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)15部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)300部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を調製した。
【0322】
<実施例II-2>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)の量を5部から15部に増量した。さらに、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)100部の代わりに、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)100部を用いた。以上の事項以外は実施例II-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0323】
<実施例II-3>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン/アクリル共重合微粒子(根上工業社製「SEP-03T3A」、平均粒径0.3μm)5部を用いた。さらに、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を300部から210部に減量した。また、樹脂組成物に中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、中空無機充填材、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)6部を追加した。以上の事項以外は実施例II-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0324】
<実施例II-4>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、カルボキシ基が付与されたポリスチレン微粒子(積水化成工業社製「XX-6288Z」、平均粒径0.3μm)5部を用いた。さらに、樹脂組成物にビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)を3部追加した。以上の事項以外は実施例II-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0325】
<実施例II-5>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン微粒子(アイカ工業社製「GS-0305」、平均粒径3.0μm)5部を用いた。加えて、ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.)10部の代わりに、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)10部を用いた。さらに、樹脂組成物に、ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 2200」、不揮発成分率65%のトルエン溶液)を5部追加した。以上の事項以外は実施例II-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0326】
<実施例II-6>
ポリスチレン微粒子(アイカ工業社製「GS-0305」、平均粒径3.0μm)5部の代わりに、ポリエチレン微粒子(森村ケミカル社製「SB-25」、平均粒径2.5μm)5部を用いた。また、ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 2200」、不揮発成分率65%のトルエン溶液)5部の代わりに、合成例1で得られたプロペニル樹脂を3部用いた。以上の事項以外は、実施例II-5と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0327】
<実施例II-7>
ポリスチレン微粒子(アイカ工業社製「GS-0305」、平均粒径3.0μm)5部の代わりに、ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部を用いた。また、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)の量を100部から80部に減量した。さらに、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を300部から250部に減量した。以上の事項以外は実施例II-5と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0328】
<比較例II-1>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)を用いなかったこと以外は実施例II-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0329】
<比較例II-2>
ポリスチレン微粒子(根上工業社製「SEP-03T3」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、コアシェル構造ゴム粒子(アイカ工業社製「スタフィロイドAC3816N」、コア部がアクリル樹脂、シェル部がポリメタクリレート樹脂、平均粒径0.3μm)5部を用いた。また、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部及びビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.)10部に代わりに、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)20部及びビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量190g/eq.)10部を用いた。以上の事項以外は実施例II-1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0330】
<比較例II-3>
ゴム粒子(アイカ工業社製「スタフィロイドAC3816N」、平均粒径0.3μm)5部の代わりに、ポリスチレン粒子(根上工業社製「G-800T」、平均粒径6.0μm)5部を用いた。以上の事項以外は、比較例II-2と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0331】
<樹脂シートの製造>
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、上述した実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0332】
<試験例II-1:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>
前記の樹脂シートを200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離することで、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物フィルムを得た。硬化物フィルムを、62mm×75mmに切り出し、評価用硬化物Aを得た。
【0333】
得られた評価用硬化物Aについて、EMラボ社製「CR-710」を用いて、スプリットシリンダ共振法により、測定周波数10GHzにて誘電正接及び比誘電率を測定した。誘電正接の測定は、25℃及び100℃で行った。また、比誘電率の測定は25℃で行った。
【0334】
25℃での誘電正接Df(25℃)に対する100℃での誘電正接Df(100℃)の上昇率{Df(100℃)-Df(25℃)}/Df(25℃)を計算した。この上昇率が20%未満にある場合に、誘電正接の高温での温度安定性を「〇」と判定した。また、上昇率が20%以上である場合に、誘電正接の高温での温度安定性を「×」と判定した。
【0335】
<試験例II-2:クラック耐性の評価>
実施例群Iに係る説明の<試験例I-2:クラック耐性の評価>において説明した方法によって、各実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を用いた絶縁層の形成及びクラックの評価を行った。
【0336】
<試験例II-3:絶縁信頼性の評価>
樹脂シートをバッチ式真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製「VP160」)を用いて、L/S=20μm/20μmのTABテープ(tape automated bondigに用いられるテープ)にラミネートした。支持体を剥離した後、バッチ式オーブンにて180℃、90分間加熱し、樹脂組成物層を硬化させて、TABテープ/絶縁層の層構成を有するサンプルを得た。絶縁層の抵抗値を7カ所で測定した。こうして測定された絶縁層の抵抗値を「初期抵抗値」という。
【0337】
つづけて、サンプルをHAST試験機(楠本化成社製、「ETAC PM422」)中に130℃、85%Rhの条件下で100時間放置するHAST試験を行った。このHAST試験の後で、サンプルの絶縁層の抵抗値を7か所で測定した。こうして測定された絶縁層の抵抗値を「HAST後抵抗値」という。
【0338】
絶縁性の判定基準は、抵抗値が1.0×10Ω以上を良好、1.0×10Ω未満を不良とした。そして、この基準に基づき、絶縁信頼性を下記の基準で評価した。
○:初期抵抗値及びHAST後抵抗値ともに、絶縁性良好なサンプルが6か所以上。
△:初期抵抗値及びHAST後抵抗値ともに、絶縁性良好なサンプルが5か所。
×:初期抵抗値及びHAST後抵抗値ともに、絶縁性良好なサンプルが5か所未満。
【0339】
<実施例群IIに係る結果>
上述した実施例II-1からII-7及び比較例II-1からII-3の結果を、下記の表4及び表5に示す。
【0340】
【表4】
【0341】
【表5】
【符号の説明】
【0342】
100 半導体チップパッケージ
110 半導体チップ
120 封止層
130 再配線形成層
140 再配線層
150 ソルダーレジスト層
160 バンプ
図1