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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/40 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A01F12/40 303
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022171997
(22)【出願日】2022-10-27
(65)【公開番号】P2024063852
(43)【公開日】2024-05-14
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】西崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 章史
(72)【発明者】
【氏名】上田 光瑠
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲之
(72)【発明者】
【氏名】杉田 泰行
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 宏真
(72)【発明者】
【氏名】谷上 智洋
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-095288(JP,A)
【文献】特開2008-109876(JP,A)
【文献】特開平07-213146(JP,A)
【文献】実開昭54-044767(JP,U)
【文献】実開平06-026427(JP,U)
【文献】井関農機株式会社,ヰセキコンバイン (5条刈)HJ5101(101馬力) (6条刈)HJ6115(115馬力) Japan ,2018年,https://products.iseki.co.jp/cms/upload/pdf/catalog/JapanHJ5_6.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00-34/90
A01D 43/00-43/16
A01F 12/00-12/60
A01F 29/00-29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)を備えた機体フレーム(1)の前方に、穀稈を圃場から刈り取る刈取装置(4)を設け、刈取装置(4)が刈り取った穀稈を穀粒と排藁に分離させる脱穀装置(3)を設け、脱穀装置(3)の後方に機外に排出する排藁を切断しながら排出する排藁カッタ(10)を設け、排藁カッタ(10)には排藁カッタ(10)の拡散幅の広狭を切り替える幅切替装置(11)を設けたコンバインにおいて、幅切替装置(11)による拡散幅の広狭の切り替えはスイッチ(30)により行う構成とし、幅切替装置(11)のスイッチ(30)の操作位置は、拡散幅の「広」位置(31)と「狭」位置(32)とを設けると共に、排藁カッタ(10)の作動を停止させて排藁をそのまま落下させる「落下」位置(33)を設ける構成とし、さらに、幅切替装置(11)のスイッチ(30)の操作位置に「自動」位置(34)を設定し、操縦部(6)に設けた、副変速操作レバー(35)と、副変速操作レバー(35)の操作位置を検出する副変速センサ(36)により副変速操作レバー(35)が「倒伏」位置(37)に操作されていることが検知され、且つ幅切替装置(11)が「自動」位置(34)に操作されているとき、制御部(29)は、回り刈りまたは中割りと判定し、且つ幅切替装置(11)のスイッチ(30)が「自動」位置(34)に操作されているとき、排藁カッタ(10)の幅切替装置(11)の拡散幅を自動的に「狭」状態に切り替えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
走行装置(2)を備えた機体フレーム(1)の前方に、穀稈を圃場から刈り取る刈取装置(4)を設け、刈取装置(4)が刈り取った穀稈を穀粒と排藁に分離させる脱穀装置(3)を設け、脱穀装置(3)の後方に機外に排出する排藁を切断しながら排出する排藁カッタ(10)を設け、排藁カッタ(10)には排藁カッタ(10)の拡散幅の広狭を切り替える幅切替装置(11)を設けたコンバインにおいて、幅切替装置(11)による拡散幅の広狭の切り替えはスイッチ(30)により行う構成とし、幅切替装置(11)のスイッチ(30)の操作位置は、拡散幅の「広」位置(31)と「狭」位置(32)とを設けると共に、排藁カッタ(10)の作動を停止させて排藁をそのまま落下させる「落下」位置(33)を設ける構成とし、さらに、幅切替装置(11)のスイッチ(30)の操作位置に「自動」位置(34)を設定し、刈取装置(4)に、刈取装置(4)の分草体(39)の先端位置を左右に切り替える分草杆操作装置(40)と、分草体(39)の操作位置を検出する分草体センサ(41)を設け、分草体(39)を「開放(機体外)」側に操作されていることが分草体センサ(41)により検知され、且つ幅切替装置(11)が「自動」位置(34)に操作されているとき、制御部(29)は、回り刈りまたは中割りと判定し、排藁カッタ(10)の幅切替装置(11)の拡散幅を自動的に「狭」状態に切り替えることを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫機に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀稈を刈り取る刈取装置と、穀稈から穀粒を脱穀すると共に排藁を搬送する脱穀装置と、排藁を切断する切断装置と、切断された排藁を設定範囲に拡散させながら排出する拡散排出装置と、切断装置を通過させずに排藁を機外に排出させる排藁ドロッパを備えたコンバインは公知である(特許文献1、2)。
これにより、切断されて排出された排藁が土壌で分解されやすくなり、圃場の肥沃化や、田植の際に排藁が浮き上がって苗の植付を邪魔することを防止できる。あるいは、切断せずに排出した藁を拾い集めやすく、回収が容易になる。
拡散排出装置は、稲の品種や圃場の土質等に合わせて、拡散ロールの回転を変更し、拡散範囲を広くするか狭くするかを、切替スイッチにより選択でき、また、排藁を切断装置に接触させるか、接触させずに排藁ドロッパに送り込むかの切替も、別の切替操作により行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-223891号公報
【文献】特開2011-188810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例では、排藁の拡散幅の切替と、切断するかそのまま排出するかの切替が別々になっており、各々にハーネスやカプラなどの電装部品を用意する必要がある。これにより、電装部品点数が多くなると共に、メンテナンス時に配索を整える労力が必要になる問題がある。
本願は、スイッチの構成を工夫し、電装部品点数を少なくし、メンテナンスを容易にしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明では、走行装置2を備えた機体フレーム1の前方に、穀稈を圃場から刈り取る刈取装置4を設け、刈取装置4が刈り取った穀稈を穀粒と排藁に分離させる脱穀装置3を設け、脱穀装置3の後方に機外に排出する排藁を切断しながら排出する排藁カッタ10を設け、排藁カッタ10には排藁カッタ10の拡散幅の広狭を切り替える幅切替装置11を設けたコンバインにおいて、幅切替装置11による拡散幅の広狭の切り替えはスイッチ30により行う構成とし、幅切替装置11のスイッチ30の操作位置は、拡散幅の「広」位置31と「狭」位置32とを設けると共に、排藁カッタ10の作動を停止させて排藁をそのまま落下させる「落下」位置33を設ける構成とし、さらに、幅切替装置11のスイッチ30の操作位置に「自動」位置34を設定し、操縦部6に設けた、副変速操作レバー35と、副変速操作レバー35の操作位置を検出する副変速センサ36により副変速操作レバー35が「倒伏」位置37に操作されていることが検知され、且つ幅切替装置11が「自動」位置34に操作されているとき、制御部29は、回り刈りまたは中割りと判定し、且つ幅切替装置11のスイッチ30が「自動」位置34に操作されているとき、排藁カッタ10の幅切替装置11の拡散幅を自動的に「狭」状態に切り替えることを特徴とするコンバインとしたものである。
請求項2の発明では、走行装置2を備えた機体フレーム1の前方に、穀稈を圃場から刈り取る刈取装置4を設け、刈取装置4が刈り取った穀稈を穀粒と排藁に分離させる脱穀装置3を設け、脱穀装置3の後方に機外に排出する排藁を切断しながら排出する排藁カッタ10を設け、排藁カッタ10には排藁カッタ10の拡散幅の広狭を切り替える幅切替装置11を設けたコンバインにおいて、幅切替装置11による拡散幅の広狭の切り替えはスイッチ30により行う構成とし、幅切替装置11のスイッチ30の操作位置は、拡散幅の「広」位置31と「狭」位置32とを設けると共に、排藁カッタ10の作動を停止させて排藁をそのまま落下させる「落下」位置33を設ける構成とし、さらに、幅切替装置11のスイッチ30の操作位置に「自動」位置34を設定し、刈取装置4に、刈取装置4の分草体39の先端位置を左右に切り替える分草杆操作装置40と、分草体39の操作位置を検出する分草体センサ41を設け、分草体39を「開放(機体外)」側に操作されていることが分草体センサ41により検知され、且つ幅切替装置11が「自動」位置34に操作されているとき、制御部29は、回り刈りまたは中割りと判定し、排藁カッタ10の幅切替装置11の拡散幅を自動的に「狭」状態に切り替えることを特徴とするコンバインとしたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、一つの幅切替装置11で排藁の拡散幅の切替と、排藁のカットの有無の切替を行えるので、操作性が向上する。従来のように、排藁カッタ10の拡散幅を変更するスイッチと、排藁カッタ10機能の入切(排藁カッタ10とドロッパ12の切替)をするスイッチを設ける必要が無く、電装系の構成をシンプルにすることができる。
請求項2の発明では、幅切替装置11の操作時に、幅切替装置11の設定を毎回変更する必要が無く、幅切替装置11による拡散範囲の切替構成が受ける負荷を軽減できる。
請求項3の発明では、広範囲に排藁を排出すると刈取り前の穀稈に排藁が乗って刈取収穫に影響が出る作業状態では、幅切替装置11が排藁カッタ10の排藁の排出幅を自動的に狭くすることにより、作業能率の向上が図られる。
請求項4の発明では、 広範囲に排藁を排出すると刈取り前の穀稈に排藁が乗って刈取収穫作業に影響が出る作業状態では、幅切替装置11が排藁カッタ10の排藁の排出幅を自動的に狭くすることにより、作業能率の向上が図られる。
請求項5の発明では、結束排出装置45を装着したとき、排藁を排藁カッタ10で切断しないことにより、適切な長さの排藁を結束して機外に排出できるので、排藁の回収作業が容易になり、排藁が散らばらないので、未刈取の穀稈を刈り取る際に排藁が邪魔になることもなく、作業能率が向上する。
請求項6の発明では、感知板51が紐体ロール50の芯に接触する位置まで回動すると、紐体48の残量が結束ミスを起こし得るまで減少していると判定して報知することにより、紐体48の長さ不足で結束されないまま排出された排藁が、圃場内に散らばることが防止できる。また、結束されない排藁の発生を防止することにより、排藁束の回収作業の能率の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバインの側面図。
図2】コンバインの側面図。
図3】コンバインの平面図。
図4】コンバインの背面図。
図5】コンバインの平面図と側面図と背面図。
図6】コンバインの平面図。
図7】コンバインの背面図。
図8】コンバインの背面図。
図9】スイッチの平面図。
図10】スイッチの他の実施形態の平面図。
図11】スイッチの他の実施形態の平面図。
図12】ブロック図。
図13】紐ケースの断面図。
図14】引起装置の正面図。
図15】同側面図。
図16】同他の実施形態の側面図。
図17】同他の実施形態の側面図。
図18】同他の実施形態の側面図。
図19】同他の実施形態の側面図。
図20】同他の実施形態の側面図。
図21】同他の実施形態の側面図。
図22】同他の実施形態の側面図。
図23】同他の実施形態の側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は走行装置であり、走行装置2の上方の一側に刈り取られた穀稈を穀粒と排藁に分離させる脱穀装置3を設け、脱穀装置3の前方に該脱穀装置3に供給する穀稈を圃場から刈り取る刈取装置4を設ける。
なお、本発明を説明するにあたり、理解を容易にするため、コンバインの前進走行方向を基準に前後・左右・上下等の方向を示して説明するが、これにより、本発明の構成が限定されることはない。
脱穀装置4の側方にグレンタンク5を設け、グレンタンク5の前方には操縦部6を設けている。
刈取装置4の構成は任意であるが、一例を示すと、最前方位置に分草体7を設け、分草体7の後方に穀稈を引起す引起装置8を設け、引起装置8の下方に刈刃9を設け、引起装置8の後方に刈刃9が切断した穀稈を脱穀装置3に搬送する搬送装置を設けている。
脱穀装置3の構成は任意であるが、一例を示すと、扱胴13を有する扱室14を設け、扱室14の下方に穀粒と藁屑を選別する選別装置15を設ける。
【0009】
脱穀装置3には刈取装置4で刈り取った穀稈を穀稈供給装置16により供給搬送し、脱穀済みの穀稈(排藁)を穀稈供給装置16から排藁搬送装置17に引き継いで後方搬送する。
脱穀装置3の後部には、機外に排出する排藁を切断しながら排出する排藁カッタ10を設ける。排藁カッタ10の下方には、排藁カッタ10で細断された排藁の拡散幅の広狭を切り替える、幅切替装置11を設ける。さらに、図1、13に示すとおり、機体の右後側には、排藁を細断せずに圃場に落下させる、ドロッパ12を設ける。
前記排藁カッタ10は排藁搬送装置17の終端下方位置に設ける。排藁カッタ10の構成は任意であるが、一例を示すと、前後に並設した回転軸18に左右に所定間隔をおいてカッタ刃19を複数並設したカッタ室20を形成すると共に、前後の回転軸18のカッタ刃19とが側面視において前後方向に一部重なるように配置し、排藁搬送装置17から落下する排藁を切断し、圃場に落下させる構成である。
排藁カッタ10の下方には、排藁カッタ10で細断された切断排藁が排出される排出範囲(拡散幅)の広狭を切り替える、幅切替装置11を設ける。
【0010】
幅切替装置11は、左右一対の軸棒体で形成した前後方向の可変排藁体(拡散ガイド板るいは拡散ガイド棒)21を設け、可変排藁体21の基部を後述する切替モーター62を有する位置切替部22に回動自在に取付け、可変排藁体21の先端(後端)は自由端に形成する。幅切替装置11は切替モーター62により位置切替部22に対して可変排藁体21の先端位置を左右に振り替えるように回動させ、図9において、右側に位置すると、カッタ拡散幅が[広」となり、左側に位置すると、カッタ拡散幅が[狭」となる。
前記ドロッパ12の構成は任意であるが、一例を示すと、ドロッパ12は、左右一対の軸棒体で形成した前後方向の案内ガイド23を設けて構成し(図3)、ドロッパ12は排藁搬送装置17からの排藁を結束せずに、そのまま、圃場に落下させる。
幅切替装置11の操作位置は、一例を示すと、スイッチ30の拡散幅の「広」位置31と「狭」位置32に加えて、排藁カッタ10の作動を停止させて排藁をそのまま落下させる「落下(ドロッパ)」位置33を設けた構成とする。
そのため、一つの幅切替装置11で排藁の拡散幅の切替と、排藁のカットの有無の切替を行えるので、操作性が向上する。
すなわち、スイッチ30の操作位置に基づいて制御部29が各部を作動させて幅切替装置11の拡散幅の切替と、排藁のカットの有無の切替等を行う(図13)。
【0011】
スイッチ30の操作位置がカッタ「広」か「狭」であれば、切替モーター62により位置切替部22に対して可変排藁体21の先端位置を左右に振り替えるように回動させられ、排藁の拡散範囲を変更する。このとき、排藁カッタ10の上方は後述する切替蓋24により開口されており、搬送されてくる排藁はカッタ室20内に落下して排藁カッタ10に接触して細断される。
一方、「落下(ドロッパ)」位置33に操作されたときは、排藁カッタ10の上方を切替蓋24が塞ぎ、排藁は切断されることなく、ドロッパ12から機体後方に放出する。
すなわち、走行装置2を備えた機体フレーム1の前方に、穀稈を圃場から刈り取る刈取装置4を設け、刈取装置4が刈り取った穀稈を穀粒と排藁に分離させる脱穀装置3を設け、脱穀装置3の後方に機外に排出する排藁を切断しながら排出する排藁カッタ10を設け、排藁カッタ10には排藁カッタ10の拡散幅の広狭を切り替える幅切替装置11を設けた収穫機において、幅切替装置11の設定可能なの操作位置は、拡散幅の「広」位置31と「狭」位置32に加えて、排藁カッタ10の作動を停止させて排藁をそのまま落下させる「落下」位置33を有する構成とする。
【0012】
換言すると、幅切替装置11のスイッチ30の操作位置は、拡散幅の「広」位置31と「狭」位置32に加えて、排藁カッタ10の作動を停止させて排藁をそのまま落下させる「落下」位置33を設ける。
そのため、一つのスイッチ30で、幅切替装置11による排藁の拡散幅の切替と、切替蓋24による排藁のカットの有無の切替を行えるので、操作性が向上する。
すなわち、従来のように、排藁カッタ10の拡散幅を変更するスイッチと、カッタ機能の入切(カッタとドロッパの切替)をするスイッチの2個のスイッチを設けると、電装系の構成が複雑となるが、本発明ではシンプルにすることができる。
幅切替装置11のスイッチ30の操作位置の一側端部に設定する「落下」位置33の幅を「広」位置31としたとき、隣接する操作位置に設定する排藁カッタ10の拡散幅は「広」位置31となり、幅切替装置11の操作位置の他側端部に設定する排藁カッタ10の拡散幅は「狭」位置32となる。
【0013】
すなわち、「ドロッパ」の横の「広/狭」は、隣接するスイッチ30のポジションが「カッタ/広」か「カッタ/狭」であるかを判別するものである。
したがって、「ドロッパ位置33」とは、排藁カッタ10を停止させると共に、排藁が排藁搬送チェーン排藁搬送装置17によってドロッパ12まで搬送される状態にする。
なお、広/狭については、作業者の手作業で切り替える構成としてもよい。
また、幅切替装置11の操作位置の一側端部に設定する「落下」位置33の幅を「狭」位置32としたとき、隣接する操作位置に設定する排藁カッタ10の拡散幅は「狭」位置32となり、幅切替装置11の操作位置の他側端部に設定する排藁カッタ10の拡散幅は「広」位置31となる。
そのため、幅切替装置11のスイッチ30の操作時に、「幅切替装置11の設定を毎回変更する必要が無く、拡散範囲の切替構成が受ける負荷を軽減できる。
【0014】
幅切替装置11のスイッチ30の操作位置に「自動」位置34を設定し、操縦部6に設ける、副変速操作レバー35と、副変速操作レバー35の操作位置を検出する副変速センサ36により副変速操作レバー35が「倒伏」位置37に操作されていることが検知され、且つ幅切替装置11が「自動」位置34に操作されているとき、コンバインは回り刈りまたは中割りと判定し、排藁カッタ10の幅切替装置11を自動的に「狭」位置32状態に切り替える構成とする。
副変速操作レバー35の「倒伏」位置37への操作は、図3の平面図に図示した後述する副変速検出センサ36により副変速操作レバー35の操作位置の検出で行う。
広範囲に排藁を排出すると刈取り前の穀稈に排藁が乗って刈取収穫に影響が出る作業状態では、幅切替装置11が排藁カッタ10の排藁の排出幅を自動的に狭くすることにより、作業能率の向上が図られる。
【0015】
幅切替装置11の操作位置に「自動」位置34を設定し、刈取装置4に、刈取装置4の分草体39の先端位置を左右に切り替える分草杆操作装置(リモコン分草杆)40と、分草体39の操作位置を検出する分草体センサ41を設け、分草体39を「開放(機体外)」側に操作されていることを分草体センサ41が検知し、且つ幅切替装置11が「自動」位置34に操作されているとき、回り刈りまたは中割りと判定し、排藁カッタ10を自動的に「狭」位置32状態に切り替える構成とする。
そのため、広範囲に排藁を排出すると刈取り前の穀稈に排藁が乗って刈取収穫に影響が出る作業状態では、幅切替装置11が排藁カッタ10の排藁の排出幅を自動的に狭くすることにより、作業能率の向上が図られる。
【0016】
所定量の排藁を紐材(ロープ)で結束して排出する結束排出装置(ノッタ)45を設け、結束排出装置45の装着を検出する結束検出手段(カプラ接続で判定)46を設け、結束検出手段46が結束排出装置45の装着を判定し、且つ幅切替装置11が「自動」位置34に操作されているとき、排藁カッタ10を停止させ、切替蓋24によりカッタ室20の上部を閉塞し、排藁搬送装置17からの排藁の流路を「落下」47に切り替える(図5)。
すなわち、結束排出装置45を制御回路に接続する際に、誤作動を防止すべく排藁カッタ10のカプラを抜いて動作しないようにするか、あるいは結束排出装置45が接続されているときは、排藁カッタ10へのクラッチの切状態が維持され、作動しない状態とし、排藁カッタ10と結束排出装置45との切替は、カッタ室20の上部に設けた切替蓋24によりカッタ室20の上部を閉塞すると、カッタ10の上部を覆って排藁の落下経路を塞ぐことになって、排藁の搬送経路の切換を行う。
【0017】
なお、図3では、理解を容易にするため、切替蓋24を省略してカッタ10を露出させているが、スイッチ30を「落下」位置33に切り替えてドロッパ12を使用する際、あるいは結束排出装置45を装着した際は、切換蓋切替蓋24を閉じて、排藁がドロッパ12と同じ位置まで搬送される状態に切り替え、排藁が結束落下位置47に向かって排藁搬送装置17により搬送される経路に切り替わる。
そのため、結束排出装置45を装着したとき、排藁をカッタ10で切断しないことにより、適切な長さの排藁を結束して機外に排出できるので、排藁の回収作業が容易になる。
また、排藁が散らばらないので、未刈取の穀稈を刈り取る際に排藁が邪魔になることがなく、作業能率が向上する。
【0018】
結束排出装置(ノッタ)45に、紐体48の残量を検出する紐体検知部材49を設け、紐体検知部材49は、紐体48を巻回した紐体ロール50の外周に接触して回動する感知板51と、紐体ロール50が小径になり感知板51が所定位置まで回動すると検知状態になる残量検知体(検知スイッチ)52とにより構成する。
残量検知体52の検知位置は、感知板51と紐体ロール50の芯部分の接線上とし、残量検知体52が検知状態になると、ブザー等で鳴動報知する構成とする。
残量検知体52は、紐体ロール50の芯の一部が露出するほど紐体48が減少した状態に、感知板51が回動すると、感知板51が残量検知体52に接触する構成とする。
そのため、感知板51が紐体ロール50の芯に接触する位置まで回動すると、紐体48の残量が結束ミスを起こし得るまで減少していると判定して報知することにより、紐体48の長さ不足で結束されないまま排出された排藁が、圃場内に散らばることが防止できる。
【0019】
また、結束されない排藁の発生を防止することにより、排藁束の回収作業の能率の低下が防止される。
排藁カッタ10とドロッパ12とを切り換えるカッタドロッパ切替モータ60と、拡散ガイド61を切り換えるガイド切替モータ62を搭載し、カッタドロッパ切替モータ60とガイド切替モータ62の切り換えを一つのスイッチ30で行う構成とする。
従来では、切替蓋24を回動させ、排藁カッタ10が内装されたカッタ室20の上部を開口させた状態と、カッタ室20の上方を塞いで排藁が機体後方のドロッパ12から排藁を切らずに排出する状態とを切換えるカッタドロッパ切替モータ60と、拡散ガイド61=可変排藁体21の切り換えを実行するガイド切替モータ62とを操作するスイッチを2個設けているので、配線数も多くなりコストが高く、スペースも必要となるが、本発明では、一つのスイッチ30により実行でき、コストダウンが図れ、作業性および操作性を向上させ、スペースの有効活用できる。
【0020】
スイッチ30は、「広」位置31と「狭」位置32と「落下(ドロッパ)」位置33との3操作位置のロータリースイッチにて構成する。
そのため、一つのスイッチ30により実行でき、コストダウンが図れ、作業性および操作性を向上させ、スペースの有効活用できる。
スイッチ30の操作位置は、正面視(平面視)において、作動角度は-45°から45°までの90°の範囲とする(図10)。
言い換えれば、0°、45°、90°となる位置に切替可能である。
そのため、一つのスイッチ30により実行でき、コストダウンが図れ、作業性および操作性を向上させ、スペースの有効活用できる。
制御(操作位置)の並びは左右切り換え方向で真ん中の制御(操作位置)とどちらかが同じとなる。
【0021】
例えば、
例1:「ドロッパ/広い」⇔「カッタ/広い」⇔「カッタ/狭い」
例2:「ドロッパ/狭い」⇔「カッタ/狭い」⇔「カッタ/広い」
とする。
ドロッパ12の「広い/狭い」とカッタ10の「広い/狭い」の表示が隣接し合うことにより、当該機体をドロッパ12からカッタ10に切り替える際、排藁の排出範囲が広いか狭いかを判断できる。
これにより、刈取作業を行う圃場や品種に合わせて適切な範囲に排藁を排出することができるので、排藁を能率よく圃場の養分に還元することができる。
また、例えば、米の収穫作業後、裏作として麦を育てる場合には、広い範囲に排藁を散布し、分解されやすくすると共に、偏った養分の供給を生じにくくする。
【0022】
畝を立てて栽培する野菜を育てる場合には、畝を立てる予定の位置に排藁の散布範囲を絞ることで、畝となる土の中に集中的に養分を供給し、畝溝など雑草の生えやすい場所には養分があまり供給されないようにできる。
一方、排藁を利用する場合(工芸品やアート等)は、排藁を細切れにすると材料にならないので、ドロッパ12でそのまま圃場に放出するか、あるいは結束排出装置45で結束して圃場に放出し、刈取作業後に排藁を回収する。
また、米の収穫作業後、再度米を栽培する二期作を行う場所では、排藁がある程度分解されていないと、代掻きで水を張った際に腐敗してガスを発生させ、植え付けた水稲苗の生育を阻害する可能性があるので、排藁は細断せず回収し、圃場外で堆肥にしたり、燃料や材料にしたりする。
なお、上記は一例であり、地域等によっては異なることもある。
この場合、スイッチ30の操作位置は、「ドロッパ/広い」⇔「カッタ/広い」⇔「カッタ/狭い」とすると、真ん中の制御を、通常使用頻度の多い「カッタ/広い」とすることで、操作性および作業性を向上させられる。
【0023】
図11は、スイッチ30の他の実施形態を示し、拡散ガイド61の仕様がない機体(コンバイン)においては、「ドロッパ」位置33Aと「カッタ」位置31Aの二操作位置の90°切り換え式のロータリースイッチにて構成とする。
スイッチ30の操作位置は、正面視において、作動角度は-45°から45°までの90°の範囲とする。
そのため、一つのスイッチ30により実行でき、コストダウンが図れ、作業性および操作性を向上させ、スペースの有効活用できる。
三位置切り換え式のロータリースイッチの取り付け穴をそのまま使用でき、コストダウンが図れ、作業性および操作性を向上させ、スペースの有効活用できる。
【0024】
図12は、スイッチ30の他の実施形態を示し、スイッチ30は四位置のロータリースイッチとする。
スイッチ30は、「ドロッパ/広い」位置33⇔「カッタ/広い」位置31⇔「カッタ/狭い」位置33の三位置に「自動」位置34のモードを追加し、四操作位置のロータリースイッチとする。
この場合、スイッチ30が「自動」位置34の操作位置の状態にて、副変速レバー35が「倒伏」位置であると副変速センサ36が検知した場合、回り刈り又は中割りと判定し、スイッチ30が「狭」位置(「カッタ/狭い」)32と同じ状態となるように各モータを自動制御する。
そのため、広範囲に排藁を排出すると刈取り前の穀稈に排藁が乗って刈取収穫に影響が出る作業状態では、幅切替装置11が排藁カッタ10の排藁の排出幅を自動的に狭くすることにより、作業能率の向上が図られる。
【0025】
また、スイッチ30が「自動」位置34の位置の状態にて、分草杆操作装置40が「開く」の位置の場合、回り刈り又は中割りと判定し、「狭」位置(「カッタ/狭い」)32の状態に各モータを制御する。
そのため、広範囲に排藁を排出すると刈取り前の穀稈に排藁が乗って刈取収穫に影響が出る作業状態では、幅切替装置11が排藁カッタ10の排藁の排出幅を自動的に狭くすることにより、作業能率の向上が図られる。
42は分草杆操作装置40を作動させる分草杆操作モーターである。
また、スイッチ30が「自動」位置34の位置の状態にて結束排出装置45の装備を結束検出手段46が検出すると、「落下(ドロッパ)」位置33の状態に各モータを制御する。
この場合、刈取装置4に設けた条横刈取センサ(図示省略)が、刈取装置4の「横刈り」を判定(感知)した場合、「広」位置31の状態に各モータを制御する。
【0026】
そのため、排藁の排出範囲が自動で切り替わることにより、次の刈取作業方向に移動する操作時の操作工数を減らすことができ、次の刈取作業位置に適切な位置に機体を移動させやすい。
また、排藁カッタ10と幅切替装置11とドロッパ12とが、どの作業状態であるか、操縦部6に設けたモニタ65にて常時表示する。
そのため、操作性および作業性を向上させられる。
また、カッタドロッパ切替モータ60とガイド切替モータ62の切り換えは排藁カッタ10とドロッパ12とを切替えるカッタドロッパ切替モータ60を優先する。
すなわち、カッタドロッパ切替モータ60を先に動かさないと、排藁を細断したくない状況で圃場に細断された排藁を落下させてしまうおそれがあり、一方、ガイド切替モータ62の作動が多少遅れても、排藁の散布範囲が大幅に変わらないので、優先度を下げても問題がある。
したがって、カッタドロッパ切替モータ60の動作が優先されることにより、排藁を細断しない作業条件において誤って排藁が細断され、圃場に落下してしまうことを防止できるので、回収可能な排藁の量が減少することが防止される。
【0027】
また、スイッチ30の切り換え時にはブザー63にて報知する。
また、スイッチ30の接点が同時ONを感知した時は、現状の位置を継続する。
刈取、脱穀した排藁を結束する結束排出装置45は、結束に必要な紐体48の残量を感知する感知板51を紐ケース66内に備える。
すなわち、結束排出装置(ノッタ)45に、紐体48の残量を検出する紐体検知部材49を設け、紐体検知部材49は、紐体48を巻回した紐体ロール50に接触して回動する感知板51と、紐体ロール50が小径になり感知板51が所定位置まで回動すると検知状態になる残量検知体(検知スイッチ)残量検知体52とにより構成する。
スプリング67の弾力で感知板51が紐体ロール50の残量(外周)に応じて追従回動し、所定の残量で装着した残量検知体52が感知する。
従来では、ヒモが無くなってヒモ切れセンサの感知でヒモ切れしたことは認識できたが、その時点で結束ミスが発生していることになるが、本発明では、紐体ロール50が所定の小径になったことを事前に分かることで、紐切れ前に認識でき、結束ミス発生を未然に防止でき、作業のロスを減らすことができる。
【0028】
前記結束に必要な紐体ロール50を収納する紐ケース66を透明な樹脂板で構成する。
そのため、紐体ロール50の残量が一目で分かり、紐体ロール50の交換時期の目安が分かり作業のロスが省ける。
刈取装置4の分草体39の後方に圃場の穀稈を引起す引起装置8を設け、引起装置8の後面に引起した穀稈の穂先側を後方に案内する穀稈ガイド71を設け、穀稈ガイド71は引起装置8の引起ケース72あるいは引起ケース72を取付ける引起フレーム73側に工具レスで脱着可能に構成する。
従来の引起装置8は、メンテナンスのため、引起ケースを開閉するが、その際に、穀稈ガイドを取り外し、メンテナンス後再装着する必要があるが、ボルトナットで穀稈ガイドを取付付けているため、面倒であった。
本発明では、穀稈ガイド71を工具レスで着脱できるので、引起装置8のメンテナンスを容易にする。
【0029】
引起しフレーム72後方に配置した穀稈ガイド71と引起しフレーム72とを丸棒とピン(ヘアーピン)75で連結する構成とする。
引起しフレーム72後方に配置した穀稈ガイド71と引起しフレーム72を丸パイプ75Aに挿入し、ピン75により連結する構成とする(図17、18)。
引起しフレーム72後方に配置した穀稈ガイド71と引起しフレーム72を回動するフック76で連結する構成とする(図19)。
引起しフレーム72後方に配置した穀稈ガイド71をノブボルト77で連結する構成とする(図20)。
引起しフレーム72の後部にハブ78を配置し、その後方に配置した穀稈ガイド71の先端部を差し込んで穀稈ガイド71と連結する構成とする(図21)。
引起しフレーム72後部にハブ79を配置し、その後方に配置した二つの穀稈ガイド71の先端部をそれぞれ差し込んで、二つの穀稈ガイド71の先端を連結する構成とする(図22)。
穀稈ガイド71の先端形状は丸棒形状でも角軸棒形状でもよい。
【0030】
隣り合う引起しフレーム72のそれぞれから連結されているV字形状の穀稈ガイド71について、V字の谷部で分割できるような構成とする。
隣り合う引起しフレーム72のそれぞれから連結されているV字形状の穀稈ガイド71について、V字の谷部で工具レスで分割できるような構成とする。
隣り合う引起しフレーム72のそれぞれから連結されているV字形状の穀稈ガイド71について、V字の谷部で丸棒とピン75で連結する構成とする。
隣り合う引起しフレーム72のそれぞれから連結されているV字形状の穀稈ガイド71について、V字の谷部で丸棒とピン75で連結する構成とする。
隣り合う引起しフレーム72のそれぞれから連結されているV字形状の穀稈ガイド71について、V字の谷部で丸パイプとピン75で連結する構成とする。
隣り合う引起しフレーム72のそれぞれから連結されているV字形状の穀稈ガイド71について、V字の谷部で、丸棒をハブ80に差し込んで連結する構成とする(図23)。
【符号の説明】
【0031】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、8…引起装置8、9…刈刃、10…排藁カッタ10、11…幅切替装置、12…ドロッパ、13…扱胴、14…扱室、15…選別装置、16…穀稈供給装置、17…排藁搬送装置、18…回転軸、19…カッタ刃、20…カッタ室、21…可変排藁体、22…位置切替部、23…案内ガイド、24…切替蓋、30…スイッチ、31…「広」位置、32…「狭」位置、33…「落下(ドロッパ)」位置、34…「自動」位置、35…副変速操作レバー、36…副変速センサ、37…「倒伏」位置、40…分草杆操作装置、41…分草体センサ、45…結束排出装置、46…結束検出手段、47…「落下」、48…紐体、49…紐体検知部材、50…紐体ロール、51…感知板、52…残量検知体、60…カッタドロッパ切替モータ、61…拡散ガイド、62…ガイド切替モータ、65…モニタ、66…紐ケース、67…スプリング、71…穀稈ガイド、72…引起ケース、73…引起フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14
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図16
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