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特許7601090配車管理装置、配車管理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】配車管理装置、配車管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20241210BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20241210BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241210BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20241210BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241210BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G06Q50/40
G16Y20/20
G16Y40/60
G16Y10/40
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022509555
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009440
(87)【国際公開番号】W WO2021193052
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020052974
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一晃
(72)【発明者】
【氏名】川崎 眞実
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】増田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 萌樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩一
【審査官】宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219781(JP,A)
【文献】特開2020-038472(JP,A)
【文献】特開2003-296888(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103810843(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G06Q 50/40
G16Y 20/20
G16Y 40/60
G16Y 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡依頼を送信し、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、第2のユーザの端末装置へ、前記配車可能であることを送信する管理部を備える
配車管理装置。
【請求項2】
前記管理部は、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記第1のユーザの端末装置にインセンティブ情報を送信する
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項3】
前記第1のユーザと前記第2のユーザは、登録されているユーザの種別が異なり、
前記第2のユーザは、前記第1のユーザよりも配車が優先される種別である
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項4】
前記依頼が送信される前記第1のユーザは、前記第2のユーザが指定した乗車地から所定の範囲内の場所へ移動している前記移動装置の配車が確定済みのユーザである
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項5】
前記管理部は、移動装置の配車が確定済みの複数の前記第1のユーザそれぞれの端末装置に、前記配車の権利譲渡依頼を送信する
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項6】
前記管理部は、複数の前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記第2のユーザが指定した乗車地へ最も早く到着可能な前記移動装置の前記第1のユーザへ配車する移動装置を、前記第2のユーザへ割り当てる移動装置に決定する
請求項5に記載の配車管理装置。
【請求項7】
前記管理部は、複数の前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記配車の権利譲渡金額が最も安い前記第1のユーザへ配車する移動装置を、前記第2のユーザへ割り当てる移動装置に決定する
請求項5に記載の配車管理装置。
【請求項8】
前記管理部は、優先的な配車を行うか否かを前記第2のユーザの端末装置へ送信し、前記優先的な配車を行うと返信されてきた場合、移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡依頼を送信する
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項9】
前記管理部は、前記第1のユーザの端末装置に前記依頼を送信し、前記第1のユーザから拒否された場合、前記依頼を許諾した場合に前記第1のユーザの端末装置に送信するインセンティブ情報を変更し、再度、前記依頼を送信する
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項10】
前記管理部は、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記移動装置に搭載された端末装置へ、前記移動装置の配車の変更通知を送信する
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項11】
配車管理装置が、
移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡依頼を送信し、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、第2のユーザの端末装置へ、前記配車可能であることを送信する
配車管理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
移動装置の配車の権利譲渡依頼を、配車管理装置から受信する処理と、
前記依頼を許諾する通知を前記配車管理装置へ送信する処理と、
前記依頼を許諾する通知に応じて、前記配車管理装置から、インセンティブ情報を受信する処理と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、配車管理装置、配車管理方法、およびプログラムに関し、特に、優先会員等の特定のユーザからの配車依頼に対応できる確率を向上できるようにした配車管理装置、配車管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タクシーの運行状況を参照し、複数のタクシーの中から適したタクシーを決定して配車するタクシーの配車システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。近年では、タクシー利用者がスマートフォンのアプリを使って配車を依頼する依頼方法も普及してきている。
【0003】
配車を依頼できるアプリの利用者のうち、利用頻度や利用額が多いユーザや、有料登録のユーザなどに対して、一般会員とは別の優先会員とする制度を設けた場合、優先会員からの配車の依頼に対しては、必ず応えられることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-109191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、配車依頼の場所や時間、天候、その他の状況によってタクシー需要が多い場合は必ず存在し、希望の配車依頼に対して必ず応えられることが難しい場合がある。そうであるからといって、優先会員からの配車依頼に対する応答用の配車余剰枠を設けておくことは無駄になる場合もあり得るし、仮に配車余剰枠を設けておいたとしても、どの場所から配車依頼がなされるかが不明であるため、即座に対応できるかどうかは不明である。
【0006】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、優先会員等の特定のユーザからの配車依頼に対応できる確率を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一側面の配車管理装置は、移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡依頼を送信し、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、第2のユーザの端末装置へ、前記配車可能であることを送信する管理部を備える。
【0008】
本技術の一側面の配車管理方法は、配車管理装置が、移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡依頼を送信し、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、第2のユーザの端末装置へ、前記配車可能であることを送信する。
【0009】
本技術の一側面のプログラムは、コンピュータに、移動装置の配車の権利譲渡依頼を、配車管理装置から受信する処理と、前記依頼を許諾する通知を前記配車管理装置へ送信する処理と、前記依頼を許諾する通知に応じて、前記配車管理装置から、インセンティブ情報を受信する処理とを実行させるためのものである。
【0010】
本技術の一側面においては、移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡依頼が送信され、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、第2のユーザの端末装置へ、前記配車可能であることが送信される。
【0011】
なお、本技術の一側面の配車管理装置は、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現することができる。コンピュータに実行させるプログラムは、伝送媒体を介して伝送することにより、又は、記録媒体に記録して、提供することができる。
【0012】
配車管理装置は、独立した装置であっても良いし、1つの装置を構成している内部ブロックであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本技術を適用した実施の形態であるタクシー配車システムの構成例を示すブロック図である。
図2】通常配車制御の流れを説明するフローチャートである。
図3】ユーザアプリの配車依頼画面の例を示す図である。
図4】配車統合管理装置による通常配車処理を説明するフローチャートである。
図5】配車権利の譲渡で対処する配車制御の流れを説明するフローチャートである。
図6】ユーザ端末のディスプレイに表示される譲渡依頼画面の例を示す図である。
図7】配車権利譲渡の依頼を行う配車処理の詳細を説明するフローチャートである。
図8】「空車」のタクシーが1台も存在しない場合の配車依頼画面を示す図である。
図9】同乗依頼画面の例を示す図である。
図10】本技術を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。説明は以下の順序で行う。
1.タクシー配車システムの構成例
2.通常配車制御の流れ
3.配車統合管理装置の通常配車処理
4.配車権利譲渡の依頼を行う場合の配車制御の流れ
5.配車権利譲渡の依頼を行う配車統合管理装置の配車処理
6.同乗依頼を行う変形例
7.配車権利譲渡の変形例
8.実施の形態のまとめ
9.コンピュータ構成例
【0015】
<1.タクシー配車システムの構成例>
図1は、本技術を適用した実施の形態であるタクシー配車システムの構成例を示すブロック図である。
【0016】
図1のタクシー配車システム1は、タクシーの利用者であるユーザの依頼に基づいて、移動装置としてのタクシーをユーザに配車するシステムであり、A社、B社、およびC社それぞれのタクシー会社の配車管理装置11A乃至11Cと、それらを統合管理する配車管理装置である配車統合管理装置12とを有する。
【0017】
A社の配車管理装置11Aは、A社に属する1以上のタクシー21Aと所定のネットワークを介して接続されるとともに、配車統合管理装置12とも所定のネットワークを介して接続されている。
【0018】
同様に、B社の配車管理装置11Bは、B社に属する1以上のタクシー21Bと所定のネットワークを介して接続されるとともに、配車統合管理装置12とも所定のネットワークを介して接続されている。
【0019】
同様に、C社の配車管理装置11Cは、C社に属する1以上のタクシー21Cと所定のネットワークを介して接続されるとともに、配車統合管理装置12とも所定のネットワークを介して接続されている。
【0020】
また、所定の会社に属さない個人タクシー21Dは、配車管理装置11を介さず、直接、配車統合管理装置12と所定のネットワークを介して接続されている。A社、B社、およびC社それぞれのタクシー21A乃至21C、並びに、個人タクシー21Dを特に区別しない場合には、単に、タクシー21と称する。
【0021】
ここで、所定のネットワークは、例えば、インターネット、公衆電話回線網、所謂4G回線や5G回線等の携帯通信用の広域通信網、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)規格に準拠した通信を行う無線通信網、NFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信の通信路、赤外線通信の通信路、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)やUSB(Universal Serial Bus)等の規格に準拠した有線通信の通信網等、任意の通信規格の通信網や通信路で構成することができる。
【0022】
A社のタクシー21Aは、車載器31と、通信部32とを有する。また、A社のタクシー21Aには、端末装置33が搭載されている。
【0023】
車載器31は、料金メータ、GPS (Global Positioning System)受信機、ジャイロセンサ、速度メータなど(いずれも不図示)から、必要なデータを取得し、車両(タクシー21A)の動態ログを表す車両動態データを生成する車両動態データ生成部34を備える。
【0024】
車両動態データ生成部34は、例えば、料金メータから、「実車」、「空車」、または「迎車」のステータスと、料金(運賃)などのデータを取得する。ステータスは、タクシー21の営業状態を表す。また、車両動態データ生成部34は、例えば、GPS受信機、ジャイロセンサ、速度メータなどから、車両の現在位置、移動速度および移動方向などの情報を取得する。
【0025】
そして、車両動態データ生成部34は、タクシー21Aが所属する会社を識別する会社ID、タクシー21Aの車両を識別する無線ID、タクシー21Aに乗務しているドライバを識別する乗務員ID、ステータスの生成時刻を表すステータス時刻、タクシー21Aの位置情報である緯度および経度、タクシー21Aの走行速度および進行方向、「実車」、「空車」、または、「迎車」のステータス、並びに、ステータスが「実車」または「迎車」の場合にはそのタクシー21の乗車地および目的地、などの情報を、車両動態データとして定期的または不定期に生成し、通信部32を介して、A社の配車管理装置11Aに送信する。
【0026】
通信部32は、車載器31の車両動態データ生成部34で生成された車両動態データを、A社の配車管理装置11Aに送信する。通信部32は、所定のネットワークを介したネットワーク通信を行うネットワークインタフェースで構成される。
【0027】
端末装置33は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の情報処理装置で構成される。端末装置33には、ドライバ用のアプリケーションプログラムであるドライバアプリ35がインストールされている。ドライバアプリ35は、配車統合管理装置12からの配車依頼に関するデータを取得してディスプレイに表示したり、ドライバの操作に基づき、配車依頼に対する応答のデータを配車統合管理装置12に送信する。ドライバアプリ35は、携帯通信用の広域通信網などのネットワークを介して直接、配車統合管理装置12と通信を行う。なお、ドライバアプリ35は、通信部32を介して、A社の配車管理装置11Aを経由して、配車統合管理装置12と通信を行ってもよい。
【0028】
B社のタクシー21Bと、C社のタクシー21Cも、会社が異なるのみで、A社のタクシー21Aと基本的に同様であるので、その説明は省略する。
【0029】
A社の配車管理装置11Aは、1以上のA社のタクシー21Aの車両動態データを収集し、配車統合管理装置12に送信するとともに、配車統合管理装置12からA社のタクシー21Aへ送信される配車依頼に関するデータを中継して、指定されたA社のタクシー21Aへ送信する。
【0030】
A社の配車管理装置11Aは、車両動態データ管理部41、注文情報管理部42、および、通信部43を有する。A社の配車管理装置11Aは、例えば、ネットワーク接続機能を有するサーバ装置(情報処理装置)で構成される。
【0031】
車両動態データ管理部41は、A社のタクシー21Aそれぞれから供給される車両動態データを管理する。具体的には、車両動態データ管理部41は、A社のタクシー21Aそれぞれから供給される車両動態データを内部の記憶部に記憶し、各タクシー21Aの車両動態データを不図示のディスプレイに表示させる。また、車両動態データ管理部41は、各タクシー21Aから供給される車両動態データを配車統合管理装置12に送信する。
【0032】
A社のタクシー21Aの運行を管理するオペレータは、A社に配車依頼の電話等があった場合、車両動態データ管理部41に記憶されている、A社の各タクシー21Aの現在位置や、「実車」または「空車」等のステータスを確認し、配車依頼に対応可能なタクシー21Aを検索したり、割り当てることができる。
【0033】
注文情報管理部42は、顧客等からの事前の配車依頼(配車予約)の情報を管理する。例えば、A社のタクシー21Aのオペレータが、顧客から配車予約の電話を受け付けた場合、オペレータは、配車予約の情報、例えば、迎車場所、迎車時刻、顧客名、目的地などの情報を、操作端末から注文情報管理部42に入力する。注文情報管理部42は、配車予約の情報を記憶し、予約時刻の所定時間前になると、配車依頼の表示を行う。配車依頼の表示を確認したオペレータは、車両動態データ管理部41に記憶されている車両動態データに基づいて、所定のタクシー21Aに配車依頼を行う。なお、注文情報管理部42が、予約時刻の所定時間前になると、車両動態データ管理部41の車両動態データから、最適なタクシー21Aを検索し、配車依頼を行ってもよい。
【0034】
通信部43は、配車統合管理装置12およびA社のタクシー21Aそれぞれと所定の通信を行う。例えば、通信部43は、配車統合管理装置12からの配車依頼を所定のタクシー21Aに送信したり、各タクシー21Aから定期的に取得される車両動態データを、配車統合管理装置12に送信する。
【0035】
B社およびC社それぞれのタクシー会社の配車管理装置11Bおよび11Cも、会社が異なるのみで、A社の配車管理装置11Aと基本的に同様であるので、その説明は省略する。なお、A社、B社、およびC社を特に区別しない場合、単に、配車管理装置11と称する場合がある。
【0036】
配車統合管理装置12は、A社、B社、およびC社の配車管理装置11との間で、車両動態データや配車依頼などのデータを送受信する。また、配車統合管理装置12は、タクシーの利用者であるユーザの端末装置(以下、ユーザ端末と称する。)13にインストールされた、配車依頼を行うアプリケーションプログラム(以下、ユーザアプリと称する。)61とも、所定のネットワークを介して通信を行う。配車統合管理装置12は、例えば、ネットワーク接続機能を有するサーバ装置で構成される。
【0037】
配車統合管理装置12は、全てのタクシー21の配車を管理する配車管理装置である。配車統合管理装置12は、車両動態データ管理部51、顧客データ管理部52、注文情報管理部53、配車管理部54、タクシー会社通信部55、および、アプリ通信部56を有する。
【0038】
車両動態データ管理部51は、各タクシー会社の配車管理装置11、および、各個人タクシー21Dから供給される車両動態データを管理する。具体的には、車両動態データ管理部51は、各タクシー会社の配車管理装置11および各個人タクシー21Dから供給される車両動態データを内部の記憶部に記憶し、車両動態データを不図示のディスプレイに表示させる。車両動態データは、タクシー21の会社ID、タクシー21の無線ID、乗務員ID、ステータス時刻、タクシー21の位置情報、タクシー21の走行速度および進行方向、ステータス、並びに、ステータスが「実車」または「迎車」の場合のタクシー21の乗車地および目的地などの情報である。また、車両動態データ管理部51は、1回の「実車」のステータスが終了するごとに、タクシー21の会社ID、タクシー21の無線ID、乗務員ID、乗車地および目的地、料金などを、過去の実車データとして内部の記憶部に記録する。
【0039】
顧客データ管理部52は、オペレータによって入力されたり、ユーザアプリ61から送信されてくるデータに基づいて、顧客データを生成し、内部の記憶部に記憶する。例えば、顧客データ管理部52は、顧客データとして、顧客の名前、顧客が好きなタクシー会社や優先的に配車して欲しいタクシー会社、よく利用するタクシー乗り場、迎車に対する平均待ち時間、などの情報を、顧客を識別する識別情報である顧客IDとともに記憶する。顧客データは、ユーザアプリ61においてユーザが入力(指定)したデータであってもよし、ユーザの乗車履歴などに基づいて、顧客データ管理部52が生成したデータでもよい。
【0040】
ユーザアプリ61の利用者(顧客)は、会員の種別として、一般会員か、または、優先会員のいずれかに分類される。優先会員は、一般会員よりも優遇措置が得られる会員である。優先会員は、例えば、過去の一定期間の利用頻度や利用額に応じて決定することができ、利用頻度や利用額が一定値以上のユーザとすることができる。あるいはまた、優先会員は、一定額の課金を行った有料登録のユーザを割り当てるようにしてもよい。顧客データ管理部52が記憶する顧客データには、顧客の会員の種別も記憶されている。
【0041】
注文情報管理部53は、顧客等からの事前の配車依頼(配車予約)の情報を管理する。各配車管理装置11の注文情報管理部42は、各タクシー会社が受け付けた配車依頼(配車予約)の情報であるのに対して、注文情報管理部53は、各タクシー会社を統括する代表の予約センターやユーザアプリ61で受け付けた配車依頼(配車予約)の情報を管理する。注文情報管理部53は、配車予約の予約時刻の所定時間前になると、配車管理部54に配車依頼を行う。
【0042】
配車管理部54は、配車依頼または配車予約に基づく配車の制御を行う。例えば、配車管理部54は、ユーザアプリ61から配車依頼が送信されてくると、車両動態データ管理部51に記憶されている車両動態データに基づいて、配車依頼の条件を満たすタクシー21を抽出して、抽出したタクシー21に配車依頼を送信する。また、配車管理部54は、注文情報管理部53から配車依頼が送信されてくると、車両動態データ管理部51に記憶されている車両動態データに基づいて、配車依頼の条件を満たすタクシー21を抽出して、抽出したタクシー21に配車依頼を送信する。
【0043】
タクシー会社通信部55は、各タクシー会社の配車管理装置11それぞれと所定の通信を行う。例えば、タクシー会社通信部55は、各タクシー21Aから定期的に送信されてくる車両動態データを受信し、車両動態データ管理部51に供給したり、配車管理部54からの配車依頼を、配車管理装置11を介して所定のタクシー21に送信する。
【0044】
なお、タクシー会社通信部55は、各タクシー会社の配車管理装置11を介さずに、直接、各タクシー会社のタクシー21と通信を行うことにより、車両動態データを受信したり、配車管理部54からの配車依頼を所定のタクシー21に送信するようにしてもよい。
【0045】
アプリ通信部56は、ユーザアプリ61と所定の通信を行う。例えば、アプリ通信部56は、ユーザアプリ61からの配車依頼を受信して、配車管理部54に供給したり、所定のタクシー21の配車が確定した場合に、配車確定通知をユーザアプリ61へ送信する。
【0046】
なお、図1では、理解を容易にするため、1人のユーザに対応するユーザ端末13とユーザアプリ61しか図示されていないが、配車統合管理装置12は、複数のユーザ端末13のユーザアプリ61と必要に応じて、所要の通信を行うことができる。
【0047】
ユーザ端末13は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の情報処理装置で構成され、配車統合管理装置12と所定の通信を行う。ユーザアプリ61は、ユーザの操作に基づいて、タクシー21の配車を配車統合管理装置12に依頼したり、配車依頼に応じた配車確定の表示を行う。また、ユーザアプリ61は、配車統合管理装置12から、ユーザの現在地近傍の車両動態データを取得することで、現在のタクシー21の運行状況などをディスプレイに表示することもできる。
【0048】
以上のように構成されるタクシー配車システム1においては、ユーザがユーザアプリ61を操作して、タクシー21の配車依頼を行った場合、配車統合管理装置12は、車両動態データ管理部51の車両動態データを参照して、最適なタクシー21を探索し、探索されたタクシー21に配車依頼を送信する。
【0049】
配車統合管理装置12は、最適なタクシー21を探索する場合に、最初に、タクシー21のステータスが「空車」であるタクシー21のなかから、配車依頼の要求に応えるタクシー21があるかを探索する。
【0050】
しかしながら、配車依頼の場所や時間、天候、その他の状況によってタクシー需要が多い場合は必ず存在し、希望の配車依頼に対して必ず応えられることが難しい場合がある。
【0051】
そこで、配車統合管理装置12では、ユーザアプリ61の利用者のうち、優先会員からの配車依頼に対しては、一般会員と比較して高い確率で応えられるような配車制御が構築されている。
【0052】
具体的には、優先会員であるユーザが配車依頼を行った際に、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台も存在しない場合、配車統合管理装置12は、一般会員である他のユーザの配車依頼に割り当てたタクシー21であって、割り当てられたユーザの乗車地に迎車中のタクシー21を、優先会員のユーザに割り当て直すような配車の制御を行う。配車の権利を譲渡する一般会員のユーザには、配車権利の譲渡に対する報酬として所定のインセンティブが与えられる。インセンティブは、例えば、次回、配車を利用した際に利用できる迎車料金無料や割引券の電子クーポンであったり、現在地周辺や目的地周辺で利用できるショップ等の無料券や割引券などとすることができる。あるいはまた、インセンティブは、配車権利の譲渡に対して、譲渡人に与えられる、電子マネー、ポイントなどの報酬であってもよい。
【0053】
以下では、最初に、一般会員と優先会員とを区別せずに、ユーザが配車依頼を行った際に、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台以上存在し、ユーザからの配車依頼に対して、「空車」のタクシー21を割り当てることができる場合の配車の制御(通常配車制御)について説明する。次に、「空車」のタクシー21が存在しないような状況において、優先会員からの配車依頼に対して応えることができるようにした配車の制御について説明する。
【0054】
<2.通常配車制御の流れ>
図2は、「空車」のタクシー21を割り当てることができる場合の、タクシー配車システム1全体における通常配車制御の流れを説明するフローチャートである。
【0055】
なお、図2の処理とは別に、配車統合管理装置12が、タクシー21の車両動態データを各タクシー21から定期的または不定期に取得し、車両動態データ管理部51の車両動態データを更新する処理が、常時実行されていることとする。
【0056】
最初に、ユーザが、ステップS1において、ユーザアプリ61を起動し、ユーザアプリ61に乗車地「X」および目的地「Y」を入力して配車依頼の操作を行う。
【0057】
図3は、ユーザが配車依頼を行うために、ユーザアプリ61を起動した場合のユーザアプリ61の配車依頼画面の例を示している。
【0058】
図3の配車依頼画面には、現在地近傍の地図を表示するエリアマップ81、配車依頼操作を行う配車依頼操作部82、乗車地を入力する乗車地入力部83、目的地を入力する目的地入力部84、および、支払方法を指定する支払設定部85が設けられている。
【0059】
エリアマップ81には、ステータスが「空車」のタクシー21を表すタクシーマーク91Aと、ステータスが「実車」または「迎車」のタクシー21を表すタクシーマーク91Bとが、タクシー21の現在位置に応じた地図上の位置に表示されている。ステータスが「空車」のタクシーマーク91Aと、ステータスが「実車」または「迎車」のタクシーマーク91Bとでは、表示の色または模様が異なっており、区別して表示されている。図3の例では、ステータスが「空車」のタクシーマーク91Aは、白色(無地)で表され、ステータスが「実車」または「迎車」のタクシーマーク91Bは、灰色で表されている。
【0060】
なお、図3の例では、ステータスが「実車」のタクシーマーク91Bと、「迎車」のタクシーマーク91Bとを区別することなく、同一の色または模様で表しているが、「実車」のタクシーマーク91Bと、「迎車」のタクシーマーク91Bとを区別可能に色または模様などで異なる表示としてもよい。
【0061】
以下では、ステータスが「空車」のタクシー21を表すタクシーマーク91Aを、空車タクシーマーク91Aと称し、ステータスが「実車」または「迎車」のタクシーマーク91Bを、実車・迎車タクシーマーク91Bと称して説明することとする。空車タクシーマーク91Aと実車・迎車タクシーマーク91Bとを特に区別しない場合、単にタクシーマーク91と称する。
【0062】
エリアマップ81には、ユーザ端末13のGPS受信機で取得されたユーザの現在地を示す現在地マーク93と、ユーザによって乗車地入力部83に入力された乗車地に対応する位置に乗車地マーク94が表示されている。乗車地マーク94は、ユーザがタッチ操作により、エリアマップ81上の所望の場所に自由に移動させることができ、乗車地マーク94の場所に応じた住所が、乗車地入力部83に表示される。
【0063】
配車依頼操作部82には、操作バー82Aが表示されており、操作バー82Aを右側にスライドすることにより、配車依頼を実行することができる。
【0064】
乗車地入力部83には、ユーザが希望する乗車地が入力される。乗車地入力部83は、アプリ起動時には空欄とされてもよいし、GPS受信機で取得された現在地がデフォルトで入力されてもよい。乗車地入力部83が空欄とされる場合には、乗車地マーク94も表示されない。
【0065】
目的地入力部84には、ユーザが希望する行き先である目的地が入力される。
【0066】
支払設定部85では、支払方法を指定することができる。支払方法には、例えば、ドライバに現金で支払う現金払いや、ユーザアプリ61に登録されているクレジットカードで支払うカード払いなどを選択することができる。図3の支払設定部85には、カード払いを指定した際の表示例が示されている。
【0067】
アプリ起動時には、ユーザアプリ61は、ユーザの現在地に対して地図の縮尺に応じた所定の範囲内に位置する、ステータスが「空車」、「実車」または「迎車」のタクシー21のタクシーマーク91をエリアマップ81上に表示する。
【0068】
ステップS1の処理は、図3の配車依頼画面において、ユーザが、乗車地入力部83に乗車地「X」を入力し、目的地入力部84に目的地「Y」を入力した後、操作バー82Aを右側にスライドする操作に対応する。
【0069】
図2に戻り、ユーザによって操作バー82Aが右側にスライドされると、ステップS2において、ユーザアプリ61は、乗車地「X」および目的地「Y」の情報とともに配車依頼を、配車統合管理装置12に送信する。
【0070】
ステップS11において、配車統合管理装置12の配車管理部54は、ユーザアプリ61からの配車依頼を受信し、車両動態データ管理部51が管理する現在の車両動態データを参照し、配車可能なタクシー21を抽出する。ここで、乗車地「X」に最も近いタクシー21で、「空車」のステータスを有するA社のタクシー21Aが、検索されたとする。
【0071】
ステップS12において、配車管理部54は、検索されたA社のタクシー21Aに配車依頼を送信する。
【0072】
ステップS21において、A社のタクシー21Aのドライバアプリ35は、配車統合管理装置12からの配車依頼に関するデータ(例えば、乗車地「X」および目的地「Y」など)を取得してディスプレイに表示する。そして、ドライバが、配車依頼を受諾する旨の応答操作を行うと、ステップS22において、ドライバアプリ35は、配車依頼を受諾する旨の依頼受諾通知を、配車統合管理装置12に送信する。
【0073】
配車統合管理装置12の配車管理部54は、ステップS13において、タクシー21Aからの依頼受諾通知を受信すると、そのタクシー21Aを、配車するタクシーに決定し、ステップS14において、ユーザのドライバアプリ35に、配車確定通知を送信する。
【0074】
ユーザのドライバアプリ35は、ステップS3において、配車確定通知を受信すると、配車確定表示を行う。そして、ユーザに割り当てられたA社のタクシー21Aが、乗車地「X」に到着すると、ステップS4において、ユーザは、タクシー21Aに乗車し、目的地「Y」への移動を開始する。
【0075】
<3.配車統合管理装置の通常配車処理>
次に、図2を参照して説明したタクシー配車システム1全体の配車制御の流れのうち、配車統合管理装置12による通常配車処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。図4の処理は、例えば、配車統合管理装置12としてのサーバ装置において配車処理を実行するプログラムが起動されたとき、開始される。
【0076】
初めに、ステップS41において、配車統合管理装置12の配車管理部54は、ユーザアプリ61から、配車依頼を受信したかを判定し、配車依頼を受信したと判定されるまで待機する。
【0077】
ステップS41で、配車依頼を受信したと判定された場合、処理はステップS42に進む。タクシー21から送信されてくる配車依頼には、図3を参照して説明したように、ユーザアプリ61の配車依頼画面で入力された、乗車地、目的地、および、支払方法とともに、ユーザを識別するユーザIDおよび名前などの情報が含まれる。
【0078】
ステップS42において、配車管理部54は、車両動態データ管理部51に記憶されている車両動態データを参照し、ステータスが「空車」のタクシー21のなかから、配車依頼があった乗車地に所定時間以内に配車可能なタクシー21を抽出する。例えば、配車管理部54は、ステータスが「空車」のタクシー21について、タクシー21の現在位置から、ユーザが指定した乗車地までの移動時間を計算し、計算された移動時間が所定時間以内であるタクシー21を抽出する。
【0079】
ステップS43において、配車管理部54は、抽出された1台以上のタクシー21のなかから、乗車地に一番早く到着可能なタクシー21を配車候補に決定し、ステップS44において、配車候補に決定したタクシー21に配車依頼を送信する。
【0080】
ステップS45において、配車管理部54は、配車依頼を送信したタクシー21から、依頼受諾通知があったか否かを判定する。
【0081】
ステップS45で、配車依頼を送信したタクシー21から依頼受諾通知を一定時間内(例えば、15秒)に受信しなかった場合、または、依頼拒否通知が送信されてきた場合、配車管理部54は、依頼受諾通知がないと判定し、処理をステップS43に戻す。これにより、配車依頼に対応可能な次のタクシー21が配車候補に決定される。
【0082】
一方、配車依頼を送信したタクシー21から依頼受諾通知を受信した場合、配車管理部54は、ステップS45で、配車依頼を送信したタクシー21から依頼受諾通知があったと判定し、処理をステップS46に進める。
【0083】
ステップS46において、配車管理部54は、依頼受諾通知を送信してきたタクシー21を、配車するタクシー21に決定し、決定したタクシー21に配車予約情報を送信する。配車予約情報は、例えば、配車依頼をしてきたユーザの名前、乗車地、乗車時刻、目的地などの情報である。
【0084】
そして、ステップS47において、配車管理部54は、配車依頼をしてきたユーザアプリ61に配車確定通知を送信する。
【0085】
通常配車処理は、以上のように実行される。
【0086】
ユーザが配車依頼を行った際に、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台以上存在する場合には、一般会員または優先会員の区別関係なく、ユーザの配車依頼に即座に応えることができる。
【0087】
<4.配車権利譲渡の依頼を行う場合の配車制御の流れ>
次に、ユーザが配車依頼を行った際に、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台も存在しない場合を想定する。
【0088】
「空車」のタクシー21が1台も存在しない場合、配車依頼を行ったユーザの会員種別が一般会員である場合には、ユーザに、「空車」のタクシー21がない旨のメッセージや、配車可能なタクシー21ができるまで待ってもらうこともやむを得ないが、配車統合管理装置12は、優先会員に対しては、できるだけ配車に応えるように配車の制御を行う。
【0089】
具体的には、配車統合管理装置12は、優先会員から配車依頼があり、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台も存在しない場合には、既に配車依頼が確定し、ステータスが「迎車」となっているタクシー21のなかで、優先会員の配車依頼の乗車地に近い乗車地に配車中のタクシー21のユーザに配車権利の譲渡依頼を通知し、そのユーザに配車の権利を譲ってもらうことで、優先会員からの配車依頼に応えるような配車制御を実行する。
【0090】
図5は、「空車」のタクシー21を割り当てることができない場合に、優先会員からの配車依頼に配車権利の譲渡で対処するタクシー配車システム1全体の配車制御の流れを説明するフローチャートである。
【0091】
最初に、優先会員であるユーザ(以下、単に、優先会員と称する。)が、ステップS61において、ユーザアプリ61を起動し、ユーザアプリ61に乗車地「X」および目的地「Y」を入力して配車依頼の操作を行う。配車依頼の操作は、図3を参照して説明した操作と同様である。
【0092】
優先会員によって操作バー82Aが右側にスライドされると、ステップS62において、ユーザアプリ61は、乗車地「X」および目的地「Y」の情報とともに配車依頼を、配車統合管理装置12に送信する。
【0093】
ステップS81において、配車統合管理装置12の配車管理部54は、ユーザアプリ61からの配車依頼を受信し、車両動態データ管理部51が管理する現在の車両動態データを参照し、配車可能なタクシー21を抽出する。ここで、乗車地「X」に最も近いタクシー21で、「空車」のステータスを有するタクシー21が1台も存在しないとする。
【0094】
次に、ステップS82において、配車管理部54は、優先会員の乗車地「X」付近に迎車中のタクシー21を抽出する。この抽出処理により、乗車地「X」の近くである乗車地「X1」に配車が確定し、迎車中(タクシー21の到着待ち)である一般会員のユーザA(以下、一般ユーザAと称する。)と、乗車地「X」の近くである乗車地「X2」に配車が確定し、迎車中である一般会員のユーザB(以下、一般ユーザBと称する。)が抽出されたとする。
【0095】
ステップS83において、配車管理部54は、一般ユーザAのユーザアプリ61および、一般ユーザBのユーザアプリ61に、配車権利の譲渡を依頼する譲渡依頼を送信する。
【0096】
ステップS101において、一般ユーザAのユーザアプリ61は、配車統合管理装置12の配車管理部54からの譲渡依頼を受信し、譲渡依頼画面をユーザ端末13のディスプレイに表示する。
【0097】
ステップS111において、一般ユーザBのユーザアプリ61も、配車統合管理装置12の配車管理部54からの譲渡依頼を受信し、譲渡依頼画面をユーザ端末13のディスプレイに表示する。
【0098】
図6は、配車統合管理装置12からの譲渡依頼を受信した場合に、ユーザ端末13のディスプレイに表示される譲渡依頼画面の例を示している。
【0099】
譲渡依頼画面では、図6に示されるように、エリアマップ81上に、「配車権利の譲渡希望者がいます。譲渡した場合、次回の迎車料金が無料になります。譲渡しますか?」のメッセージ121と、「譲渡する」ボタン122、および、「譲渡しない」ボタン123を備えるウィンドウ124が表示される。「譲渡する」ボタン122は、ユーザが譲渡してもよい場合に操作(押下)される。「譲渡しない」ボタン123は、ユーザが譲渡したくない場合に操作(押下)される。
【0100】
図5の処理では、一般ユーザAが「譲渡する」ボタン122を操作し、一般ユーザBは「譲渡しない」ボタン123を操作したとする。
【0101】
一般ユーザAが「譲渡する」ボタン122を操作すると、ステップS102において、一般ユーザAのユーザアプリ61は、配車権利の譲渡をしてもよい旨を表す依頼許諾通知を、配車統合管理装置12に送信する。
【0102】
一般ユーザBが「譲渡しない」ボタン123を操作すると、ステップS112において、一般ユーザBのユーザアプリ61は、配車権利の譲渡をしない旨を表す依頼拒否通知を、配車統合管理装置12に送信する。
【0103】
配車統合管理装置12の配車管理部54は、ステップS84において、一般ユーザAのユーザアプリ61からの依頼許諾通知を受信するとともに、一般ユーザBのユーザアプリ61からの依頼拒否通知を受信する。そして、配車管理部54は、受信した結果に基づいて、優先会員に配車するタクシーを決定する。この例では、一般ユーザAに迎車中のタクシー21が、優先会員に配車するタクシーに決定される。
【0104】
ステップS85において、配車管理部54は、一般ユーザAの乗車地に向けて迎車中のタクシー21のドライバアプリ35に、配車依頼の変更通知を送信する。配車依頼の変更通知は、例えば、配車依頼が、先に確定された一般ユーザAから優先会員に変更されたことと、優先会員の名前、変更後の乗車地「X」、乗車時刻、目的地などを示す情報である。
【0105】
ステップS141において、一般ユーザAへ迎車中のタクシー21のドライバアプリ35は、配車統合管理装置12からの配車依頼の変更通知に関するデータを取得してディスプレイに表示する。そして、ドライバが、配車依頼の変更を受諾する旨の応答操作を行うと、ステップS142において、ドライバアプリ35は、配車依頼の変更を受諾する旨の依頼受諾通知を、配車統合管理装置12に送信する。
【0106】
配車統合管理装置12の配車管理部54は、タクシー21からの依頼受諾通知を受信すると、ステップS86において、一般ユーザAのユーザアプリ61に、配車権利の譲渡が成立した旨の譲渡成立通知を送信する。一般ユーザAのユーザアプリ61には、次回の迎車料金無料の電子クーポンなど、配車権利を譲渡したことにより得られるインセンティブ情報も、譲渡成立通知とともに送信される。これにより、配車権利を譲渡した一般ユーザAは、次回、配車依頼を行う際、迎車料金無料の電子クーポンを利用することができる。
【0107】
さらに、配車管理部54は、ステップS87において、優先会員のドライバアプリ35に、配車確定通知を送信する。ステップS86とステップS87の順番は逆でもよいし、同時(並列)でもよい。
【0108】
優先会員のドライバアプリ35は、ステップS63において、配車確定通知を受信すると、配車確定表示を行う。
【0109】
<5.配車権利譲渡の依頼を行う配車統合管理装置の配車処理>
次に、図5に示したタクシー配車システム1全体の配車制御処理のうち、配車統合管理装置12による配車処理の詳細について、図7のフローチャートを参照して説明する。図7の処理は、例えば、配車統合管理装置12としてのサーバ装置において配車処理を実行するプログラムが起動されたとき、開始される。
【0110】
初めに、ステップS181において、配車統合管理装置12の配車管理部54は、ユーザアプリ61から、配車依頼を受信したかを判定し、配車依頼を受信したと判定されるまで待機する。
【0111】
ステップS181で、配車依頼を受信したと判定された場合、処理はステップS182に進む。図7の配車処理においても、図5と同様に、ステップS181で受信した配車依頼は優先会員からの配車依頼であり、乗車地は「X」、目的地は「Y」であるとする。
【0112】
ステップS182において、配車管理部54は、車両動態データ管理部51に記憶されている車両動態データを参照し、ステータスが「空車」のタクシー21のなかから、配車依頼があった乗車地に所定時間以内に配車可能なタクシー21を抽出する。
【0113】
ステップS183において、配車管理部54は、通常配車が可能であるか、換言すれば、配車依頼があった乗車地「X」に所定時間以内に配車可能な、ステータスが「空車」のタクシー21が存在するかを判定する。
【0114】
ステップS183で、通常配車が可能であると判定された場合、処理はステップS184に進み、配車管理部54は、通常配車処理を実行する。ステップS184の通常配車処理としては、具体的には、図4のステップS43乃至S47の処理と同じ処理が実行される。
【0115】
一方、ステップS183で、通常配車が可能ではないと判定された場合、処理はステップS185に進み、配車管理部54は、配車依頼を送信してきたユーザアプリ61のユーザが、優先会員であるかを判定する。
【0116】
ステップS185で、ユーザが優先会員ではないと判定された場合、処理はステップS186に進み、配車管理部54は、「現在、周囲に配車可能なタクシーはありません。配車時刻の変更を検討してください」等のメッセージをユーザアプリ61に送信し、配車時間の変更をユーザに提案する。したがって、ユーザが一般会員である場合には、配車権利の譲渡依頼処理は実行されない。
【0117】
一方、ステップS185で、ユーザが優先会員であると判定された場合、処理はステップS187に進み、配車管理部54は、車両動態データ管理部51の車両動態データを参照して、優先会員の乗車地「X」付近に迎車中のタクシー21が存在するかを判定する。乗車地「X」付近とは、例えば、乗車地「X」からの距離または時間が所定範囲内となる範囲である。
【0118】
図7の配車処理では、図5で説明した処理と同様、乗車地「X」の近くである乗車地「X1」でタクシー21の到着待ち(迎車中)の一般ユーザAと、乗車地「X」の近くである乗車地「X2」でタクシー21の到着待ち(迎車中)の一般ユーザBが存在するとする。
【0119】
ステップS187で、優先会員の乗車地「X」付近に迎車中のタクシー21が存在しないと判定された場合、処理は上述したステップS186に進む。この場合、配車管理部54は、「現在、周囲に配車可能なタクシーはありません。配車時刻の変更を検討してください」等のメッセージを、ユーザアプリ61に送信する。
【0120】
一方、ステップS187で、優先会員の乗車地「X」付近に迎車中のタクシー21が存在すると判定された場合、処理はステップS188に進み、配車管理部54は、乗車地「X」付近に迎車中のタクシー21のユーザのユーザアプリ61に、配車権利の譲渡依頼を送信する。具体的には、一般ユーザAのユーザアプリ61、および、一般ユーザBのユーザアプリ61に、配車権利の譲渡依頼が送信される。
【0121】
そして、ステップS189において、配車管理部54は、送信した配車権利の譲渡依頼に対する返答、すなわち、依頼許諾通知または依頼拒否通知を待機し、1人以上のユーザ(のユーザアプリ61)から依頼受諾通知があったかを判定する。配車管理部54は、配車権利の譲渡依頼を送信したユーザから、一定時間内(例えば、15秒)に依頼許諾通知を受信しなかった場合、依頼が拒否されたと認識し、依頼拒否通知の受信と同等に扱うことができる。
【0122】
ステップS189で、1人以上のユーザ(のユーザアプリ61)から依頼受諾通知がない、すなわち、全てのユーザから依頼拒否通知が受信されたと判定された場合、処理は上述したステップS186に進む。この場合、「周囲に配車可能なタクシーはありません。」等の配車不可メッセージが、配車管理部54からユーザアプリ61に送信される。
【0123】
一方、ステップS189で、1人以上のユーザ(のユーザアプリ61)から依頼受諾通知があったと判定された場合、処理はステップS190に進み、配車管理部54は、依頼受諾通知があったユーザは1人であるかを判定する。
【0124】
ステップS190で、依頼受諾通知があったユーザは1人であると判定された場合、処理はステップS191に進み、配車管理部54は、依頼受諾通知があったユーザ(図5の例では、ユーザA)に迎車中のタクシー21を、優先会員に配車するタクシーに決定する。
【0125】
一方、ステップS190で、複数のユーザから依頼受諾通知があったと判定された場合、処理はステップS192に進み、配車管理部54は、依頼受諾通知があった複数のユーザのなかから、優先会員に配車するタクシーを決定する。配車管理部54は、例えば、依頼受諾通知があった複数のユーザそれぞれに割り当てられた迎車中のタクシー21のうち、最も早く優先会員の乗車地「X」に到着可能なタクシー21を、優先会員に配車するタクシーに決定する。また例えば、配車権利の譲渡に対する報酬としての金額を譲渡人であるユーザが申請する場合、配車管理部54は、依頼受諾通知があった複数のユーザのうち、譲渡金額が最も安いユーザに割り当てられた迎車中のタクシー21を、優先会員に配車するタクシーを決定する。譲渡金額の申請は、例えば、配車権利の譲渡を希望するか否かを確認する図6のウィンドウ124において、ユーザに入力させてもよいし、ユーザアプリ61の設定画面等において、ユーザが配車権利を譲渡する際の許容金額を予め設定してもよい。
【0126】
例えば、会員種別が、ゴールド会員、シルバー会員、ブロンズ会員のように複数あり、依頼受諾通知を返信した複数のユーザの会員種別が異なる場合、会員種別の低いユーザに割り当てられた迎車中のタクシー21を、優先会員に配車するタクシーに決定してもよい。また例えば、依頼受諾通知を返信した複数のユーザが、ドライバアプリ35を介して会話するなどして交渉し、配車権利を譲渡するユーザを決定してもよい。
【0127】
ステップS191またはステップS192の処理により、配車権利を譲渡する迎車中のタクシー21が決定されると、ステップS193において、配車管理部54は、配車権利を譲渡する迎車中のタクシー21、上述の例では、一般ユーザAの乗車地「X1」に迎車中のタクシー21のドライバアプリ35に、配車依頼の変更通知を送信する。一般ユーザAの乗車地「X1」に迎車中のタクシー21のドライバは、ドライバアプリ35によりディスプレイに表示された、配車依頼の変更情報を確認し、配車依頼の変更を受諾する旨の操作を行う。ドライバの操作に基づいて、配車依頼の変更を受諾する旨の依頼受諾通知が、ドライバアプリ35から配車統合管理装置12に送信され、配車統合管理装置12で受信される。
【0128】
ステップS194において、配車管理部54は、一般ユーザAのユーザアプリ61に、配車権利の譲渡が成立した旨の譲渡成立通知を送信するとともに、配車権利を譲渡したことにより得られるインセンティブ情報を送信する。
【0129】
ステップS195において、配車管理部54は、優先会員のユーザアプリ61に、配車依頼に対して配車が確定したことを表す配車確定通知を送信する。配車確定通知には、例えば、配車するタクシー21を識別するナンバー、タクシー会社名、無線番号、迎車到着時刻などの情報が含まれ、ユーザ端末13のディスプレイに表示される。迎車到着時刻は、配車されたタクシー21が乗車地「X」に到着する予定時刻である。また、乗車地「X」から目的地「Y」までの予想料金や到着予想時刻(予想移動時間)などを表示してもよい。ステップS194とステップS195の順番は逆でもよいし、同時(並列)でもよい。
【0130】
以上のように、配車権利の譲渡を可能とした配車制御によれば、優先会員から配車依頼があり、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台も存在しない場合であっても、一般会員である他のユーザの配車依頼に割り当てられた迎車中のタクシー21を、優先会員のユーザに割り当てることができる。これにより、優先会員等の特定のユーザからの配車依頼に対応できる確率を向上させることができる。
【0131】
また、配車権利の譲渡に応じた一般ユーザには、次回の配車時に利用できる、迎車料金無料や優先予約権等の電子クーポン、電子マネー、ポイントなどの報酬が、インセンティブとして付与される。これにより、配車権利を譲渡した譲渡人も一定のメリットを享受できるので、配車権利の譲渡が促進される。
【0132】
上述した実施の形態では、ユーザアプリ61の利用者の会員種別として、一般会員と優先会員とに区分し、優先会員であるユーザが配車権利を譲り受けることができることとしたが、一般会員と優先会員の区分を決めずに、例えば、1回の配車依頼を行う度に所定の追加料金を支払うことなどによって、配車権利を譲渡してもらう権利を獲得できるようにしてもよい。
【0133】
例えば、配車管理部54は、配車依頼に対応可能なタクシー21を抽出した結果、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台も存在しないと判定された場合に、図8に示されるような配車依頼画面を、配車依頼操作を行ったユーザのユーザアプリ61に表示させる。
【0134】
図8の配車依頼画面には、エリアマップ81上に、「周囲に配車可能なタクシーはありません。あなたの前にXX人が配車を待っています。優先配車権を使用しますか?」のメッセージ141と、「使用する」ボタン142、および、「使用しない」ボタン143を備えるウィンドウ144が表示される。「使用する」ボタン142は、ユーザが優先配車権を使用する場合に操作(押下)される。「使用しない」ボタン143は、ユーザが優先配車権を使用したくない場合に操作(押下)される。ユーザが優先配車権を使用すると、1回の使用に付き、所定の料金がカード決済等により支払われる。
【0135】
また、図5乃至図7を参照して説明した配車制御では、ユーザが優先会員であり、配車依頼に対応可能な「空車」のタクシー21が1台も存在しないと判定された場合に、一般会員に迎車中のタクシー21のなかで配車可能な迎車中のタクシー21を検索したが、ユーザが優先会員である場合においても、図8の配車依頼画面を表示して、優先配車権を使用するか否かを確認してから、配車可能な迎車中のタクシー21を検索するようにしてもよい。あるいはまた、配車可能な「空車」のタクシー21が存在しないと判定された場合に、「周囲に配車可能なタクシーはありません。あなたの前にXX人が配車を待っています。優先配車を行います。」等のメッセージを表示することで、優先配車を行っている旨を優先会員に通知してもよい。優先配車を行っている旨を通知した場合には、仮に、譲渡してもらえそうなタクシー21が存在しない場合、「配車権利を譲渡可能なタクシーはありませんでした。」のように、優先配車の実行結果のメッセージを表示してもよい。
【0136】
優先会員の乗車地「X」付近に迎車中のタクシー21が存在するにもかかわらず、全てのユーザから拒否された場合、報酬や割引額を上げるなど、譲渡人であるユーザに有利になるようにインセンティブを変更し、再度、配車権利の譲渡依頼を送信してもよい。「配車権利を譲渡可能なタクシーはありませんでした。報酬を変更しますか?」のように、報酬の変更を、配車権利を譲渡してもらうユーザに確認してもよい。配車権利を譲渡してもらうユーザ(譲受人)、または、配車権利を譲渡するユーザ(譲渡人)のどちらかが主導権を持って、インセンティブの変更を提案し、譲受人と譲渡人が交渉によりインセンティブを決定し、配車権利を譲渡するか否かを決定してもよい。
【0137】
配車権利を譲渡して欲しいユーザ(譲受人)は、その理由を、ユーザアプリ61を介して、配車権利を譲渡するユーザ(譲渡人)にアピールしてもよい。例えば、大学受験に遅刻しそう、大事な会議に間に合わない、空車タクシーがこない場所にいる、などを、ユーザアプリ61で入力し、譲渡人に通知してもよい。
【0138】
図5乃至図7を参照して説明した配車制御では、配車権利を譲渡してもらうユーザを一般会員に限定して、配車可能な迎車中のタクシー21を検索したが、配車権利を譲渡してもらうユーザを、一般会員に限定せずに、優先会員を含めて検索するようにしてもよい。
【0139】
また、ユーザアプリ61の設定画面等において、配車権利を譲渡してもよいか否か、配車権利を譲渡する場合には、いくら以上の報酬であれば譲渡するか、などを設定情報として予め登録しておき、配車統合管理装置12は、ユーザの設定情報を取得して、顧客データ管理部52に顧客データとして記憶しておくことができる。その場合、配車統合管理装置12は、配車権利を譲渡してもよいと設定されているユーザに対して配車途中(迎車中)のタクシー21のなかから、配車権利の譲渡依頼が可能なユーザを検索し、配車権利を譲渡したくないと設定されているユーザに対しては、配車権利の譲渡依頼を送信しない。
【0140】
あるはまた、ユーザの設定情報を基にするのではなく、1回ごとの配車依頼成立時に、「配車権利の譲渡依頼がくる可能性があります。譲渡依頼がきた場合は、譲渡しますか?」のようなメッセージを表示し、1回ごとに、ユーザの譲渡の可否を確認しておき、譲渡可能と返答したユーザのタクシー21のなかから、譲渡依頼が可能なユーザを検索してもよい。
【0141】
配車権利の譲渡が行われる可能性があるタクシー21と、行われないタクシー21とを区別して設定してユーザが認識できるようにしておいてもよい。この場合、配車権利の譲渡が行われる可能性があるタクシー21が配車されるユーザは、配車権利の譲渡の依頼がくることを予想することができる。インセンティブを獲得したいユーザは、敢えて、配車権利の譲渡が行われる可能性があるタクシー21を利用することもあり得る。配車権利の譲渡が行われる可能性があるタクシー21と、行われないタクシー21との設定台数、割合は、営業地域、営業時間帯、天候、イベントの有無などによりフレキシブルに設定することができる。
【0142】
<6.同乗依頼を行う変形例>
上述した実施の形態では、優先会員の配車依頼の乗車地「X」を中心として一定範囲内の距離または時間で到着可能なタクシー21のなかから、配車の権利を譲渡可能なユーザを検索し、譲渡依頼を行うようにした。配車の権利を譲渡したユーザは、別のタクシー21をもう一度探したり、電車、バス等の代替手段で移動する必要がある。
【0143】
配車統合管理装置12によるその他の配車制御として、優先会員の配車依頼の乗車地「X」と目的地「Y」のそれぞれに近い配車依頼をしているユーザを検索し、そのユーザに同乗依頼を送信し、依頼受諾通知があった場合に、同乗する方法も取り得る。この場合、同乗の権利を譲渡するユーザと、譲り受けるユーザの両者がタクシー21を利用して目的地まで到着することができる。
【0144】
図9は、配車統合管理装置12が、配車依頼の乗車地「X」と目的地「Y」のそれぞれに近い配車依頼をしているユーザのユーザアプリ61に同乗依頼を送信した場合に、同乗依頼が送信されたユーザ端末13のディスプレイに表示される同乗依頼画面の例を示している。
【0145】
図9の同乗依頼画面では、「同乗希望者がいます。同乗を許可した場合、同乗者の目的地までの運賃が0円になります。同乗を許可しますか?」のメッセージ161と、「許可する」ボタン162、および、「許可しない」ボタン163を備えるウィンドウ164が表示される。「許可する」ボタン162は、ユーザが同乗を許可してもよい場合に操作(押下)される。「許可しない」ボタン163は、ユーザが同乗を許可したくない場合に操作(押下)される。
【0146】
エリアマップ81上には、同乗を依頼されたユーザの乗車地を示す乗車地マーク181および目的地を示す目的地マーク182と、同乗を依頼されたユーザの予定走行ルート183とが表示されている。また、同乗希望者であるユーザの乗車地を示す乗車地マーク184および目的地を示す目的地マーク185も表示されている。
【0147】
同乗を依頼されたユーザは、図9の同乗依頼画面を参照することにより、同乗を依頼してきたユーザの乗車地および目的地と、自分の乗車地および目的地との近さ(遠さ)を確認することができ、インセンティブとして、運賃が0円になる目安を確認することができる。同乗を依頼されたユーザが、自分の目的地を、同乗を依頼してきたユーザの目的地に合わせて変更してもよいか否かを問い合わせ、変更を許可した場合に、同乗を依頼されたユーザにインセンティブを与えてもよい。
【0148】
同乗依頼を行う場合の配車制御の処理は、配車権利の譲渡依頼を行う図5および図7の処理と基本的に同様であるので、その詳細な説明は省略する。同乗依頼を行う場合の配車制御の処理は、配車権利の譲渡依頼を行う処理と比較して、同乗可能なタクシー21を抽出する場合に、乗車地だけでなく、目的地も考慮する必要がある点、インセンティブとして、譲渡人の運賃を割り引くことができる点などが異なる。
【0149】
乗車地と目的地の両方が近いユーザに対しては、配車権利の譲渡依頼と、同乗依頼の両方を送信し、どちらか一方でも受諾可能かどうかを問い合わせるようにしてもよい。
【0150】
さらには、乗車地については同乗希望のユーザと近いが、目的地については多少離れている同乗候補のユーザに対して、配車権利の譲渡依頼と、同乗依頼の両方を送信し、依頼を受諾するかどうかを問い合わせてもよい。同乗依頼が許可された場合、譲渡人が先に目的地で降車する場合には、譲渡人の目的地までの運賃を無料(譲受人が支払う)にしたり、譲受人が先に目的地で降車する場合には、譲受人の目的地までの運賃を無料(譲受人が支払う)にするインセンティブを付与することができる。
【0151】
<7.配車権利譲渡の変形例>
上述した実施の形態では、優先会員であるユーザが配車依頼を行った際に、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台も存在しない場合、配車統合管理装置12は、迎車中のタクシー21のなかで、配車を希望する優先会員の乗車地「X」に近いタクシー21を抽出した。
【0152】
その他、配車統合管理装置12は、ユーザを実際に乗せている実車中のタクシー21のなかから、配車を希望する優先会員の乗車地「X」に近いタクシー21を抽出し、そのタクシー21のユーザ(のユーザアプリ61)に、同乗依頼または譲渡依頼を送信してもよい。同乗依頼の場合、上述した同乗依頼の変形例と同様に、譲渡人は、インセンティブとして、譲受人が乗車する経路部分の運賃や、全体の運賃の一部を割り引くことができる。譲渡依頼の場合、譲渡人のインセンティブとして、譲渡人が譲受人に譲渡するまでにかかった運賃を無料とし、代わりに、譲受人が運賃を支払うようにすることができる。譲渡人が譲受人に譲渡してタクシー21を降車した場合、配車統合管理装置12の配車管理部54は、代わりのタクシー21を要請し、譲渡人のインセンティブとして、代わりのタクシー21の運賃を無料にしたり、割引料金にしてもよい。同乗依頼または譲渡依頼を許諾可能なユーザが複数いる場合には、目的地までの残りの距離が少ないユーザを譲渡人として、同乗または譲渡するタクシー21を決定してもよい。
【0153】
優先会員の乗車地「X」付近に迎車中のタクシー21が存在せず、配車権利を譲渡してくれるユーザや、同乗を許可してくれるユーザがいない場合に、配車予約が確定しているユーザに、配車予約の時刻を30分ないし1時間程度ずらせないか依頼し、配車予約の時間をずらしてくれた場合に、そのユーザにインセンティブを付与するように制御することができる。
【0154】
タクシー需要が多く、「空車」のタクシー21が存在しないような状況は、例えば、バス等のその他の移動手段がない地域であったり、通勤、通学が集中する時間帯など、場所や時間、天候、などの状況で予測できる場合もある。
【0155】
そのようなタクシー需給の逼迫が予想される時間、場所に、ユーザのユーザアプリ61から配車依頼が行われた場合、配車管理部54は、混雑する時間帯や場所(乗車地、目的地)を回避するような提案を行うことができる。ユーザが、配車管理部54からの依頼に対して、配車依頼の時間や場所の変更を行った場合、そのユーザにインセンティブを付与するように制御することができる。
【0156】
<8.実施の形態のまとめ>
以上、本技術を適用した実施の形態であるタクシー配車システム1によれば、配車統合管理装置12の配車管理部54は、例えば、優先会員のユーザから配車依頼があり、ステータスが「空車」であるタクシー21が1台も存在しない場合には、優先会員のユーザが配車依頼で入力した乗車地「X」から所定の範囲内の場所へ移動している迎車中のタクシー21を検索し、ユーザAのタクシー21や、ユーザBのタクシー21を抽出する。配車管理部54は、タクシー21の配車が確定済みのユーザAやユーザB(第1のユーザ)の端末装置13に、配車の権利譲渡またはタクシー21への同乗許可の依頼を送信し、ユーザAやユーザBの端末装置13から、依頼を許諾する通知を受信した場合、優先会員のユーザ(第2のユーザ)の端末装置13へ、配車または同乗が可能であることを送信する。
【0157】
これにより、優先会員等の特定のユーザからの配車依頼に対応できる確率を向上させることができる。
【0158】
上述した実施の形態では、移動装置として、タクシーの配車を制御する例について説明したが、お客(人)を乗せるその他の移動装置、具体的には、バス、電車、飛行機、船、ヘリコプターなどや、物(荷物)を載せる移動装置、トラック、ダンプ等の移動装置にも適用することができる。また、移動装置は、ドローン等の無人で動く装置であってもよい。
【0159】
<9.コンピュータ構成例>
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているマイクロコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0160】
図12は、配車統合管理装置12、ユーザ端末13、または、端末装置33が実行する各処理をコンピュータがプログラムにより実行する場合の、コンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0161】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0162】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、通信部209、及びドライブ210が接続されている。
【0163】
入力部206は、操作ボタン、キーボード、マウス、マイクロホン、タッチパネル、入力端子などよりなる。出力部207は、ディスプレイ、スピーカ、出力端子などよりなる。記憶部208は、ハードディスク、RAMディスク、不揮発性のメモリなどよりなる。通信部209は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体211を駆動する。
【0164】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0165】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブル記録媒体211に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0166】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブル記録媒体211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0167】
本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0168】
また、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる場合はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで実行されてもよい。
【0169】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0170】
例えば、上述した実施の形態の全てまたは一部を組み合わせた形態を採用することができる。
【0171】
例えば、本技術は、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0172】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0173】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0174】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、本明細書に記載されたもの以外の効果があってもよい。
【0175】
なお、本技術は、以下の構成を取ることができる。
(1)
移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡または前記移動装置への同乗許可の依頼を送信し、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、第2のユーザの端末装置へ、前記配車または同乗が可能であることを送信する管理部を備える
配車管理装置。
(2)
前記管理部は、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記第1のユーザの端末装置にインセンティブ情報を送信する
前記(1)に記載の配車管理装置。
(3)
前記第1のユーザと前記第2のユーザは、登録されているユーザの種別が異なり、
前記第2のユーザは、前記第1のユーザよりも配車が優先される種別である
前記(1)または(2)に記載の配車管理装置。
(4)
前記依頼が送信される前記第1のユーザは、前記第2のユーザが指定した乗車地から所定の範囲内の場所へ移動している前記移動装置の配車が確定済みのユーザである
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の配車管理装置。
(5)
前記管理部は、移動装置の配車が確定済みの複数の前記第1のユーザそれぞれの端末装置に、前記配車の権利譲渡または前記移動装置への同乗許可の依頼を送信する
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の配車管理装置。
(6)
前記管理部は、複数の前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記第2のユーザが指定した乗車地へ最も早く到着可能な前記移動装置の前記第1のユーザへ配車する移動装置を、前記第2のユーザへ割り当てる移動装置に決定する
前記(5)に記載の配車管理装置。
(7)
前記管理部は、複数の前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記配車の権利譲渡または前記移動装置への同乗許可の金額が最も安い前記第1のユーザへ配車する移動装置を、前記第2のユーザへ割り当てる移動装置に決定する
前記(5)に記載の配車管理装置。
(8)
前記管理部は、優先的な配車を行うか否かを前記第2のユーザの端末装置へ送信し、前記優先的な配車を行うと返信されてきた場合、移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡または前記移動装置への同乗許可の依頼を送信する
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の配車管理装置。
(9)
前記管理部は、前記第1のユーザの端末装置に前記依頼を送信し、前記第1のユーザから拒否された場合、前記依頼を許諾した場合に前記第1のユーザの端末装置に送信するインセンティブ情報を変更し、再度、前記依頼を送信する
前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の配車管理装置。
(10)
前記管理部は、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、前記移動装置に搭載された端末装置へ、前記移動装置の配車の変更通知を送信する
前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の配車管理装置。
(11)
配車管理装置が、
移動装置の配車が確定済みの第1のユーザの端末装置に、前記配車の権利譲渡または前記移動装置への同乗許可の依頼を送信し、前記第1のユーザの端末装置から、前記依頼を許諾する通知を受信した場合、第2のユーザの端末装置へ、前記配車または同乗が可能であることを送信する
配車管理方法。
(12)
コンピュータに、
移動装置の配車の権利譲渡または前記移動装置への同乗許可の依頼を、配車管理装置から受信する処理と、
前記依頼を許諾する通知を前記配車管理装置へ送信する処理と、
前記依頼を許諾する通知に応じて、前記配車管理装置から、インセンティブ情報を受信する処理と
を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0176】
1 タクシー配車システム, 11 配車管理装置, 12 配車統合管理装置, 13 端末装置(ユーザ端末), 21 タクシー, 31 車載器, 33 端末装置, 34 車両動態データ生成部, 35 ドライバアプリ, 41 車両動態データ管理部, 42 注文情報管理部, 51 車両動態データ管理部, 52 顧客データ管理部, 53 注文情報管理部, 54 配車管理部, 61 ユーザアプリ, 201 CPU, 202 ROM, 203 RAM, 206 入力部, 207 出力部, 208 記憶部, 209 通信部, 210 ドライブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10