(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/591 20210101AFI20241210BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241210BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241210BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241210BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20241210BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20241210BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M50/591
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M50/531
H01M50/548 101
H01M50/586
(21)【出願番号】P 2022531771
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022312
(87)【国際公開番号】W WO2021256398
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2020103168
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】中野 廣一
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-133178(JP,A)
【文献】特開2012-038425(JP,A)
【文献】特開2019-197652(JP,A)
【文献】特開2009-266467(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164642(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/591
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 10/0585
H01M 50/531
H01M 50/548
H01M 50/586
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に介在する固体電解質層を備える電池構成単位を少なくとも1つ備える固体電池積層体を有して成り、
前記固体電池積層体の対向する側面にそれぞれ設けられた正極端子および負極端子の外部端子を備え、
前記正極層および前記負極層の少なくとも一方の電極層が、前記外部端子との境界領域において、前記電極層の活物質部と、絶縁部とが互いに積層された構成を有しており、
断面視において前記絶縁部がスリーブ状に前記活物質部を覆
っており、
前記外部端子の一部が前記絶縁部と接している、固体電池。
【請求項2】
前記境界領域において断面視で前記活物質部を積層方向で上下から挟むように前記絶縁部が設けられている、請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記正極層が前記境界領域において前記正極端子と電気的に接続している、請求項1または2に記載の固体電池。
【請求項4】
断面視において前記電極層の厚みに対する前記絶縁部の前記スリーブ状の部分の長さの割合が0.05%以上10%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の固体電池。
【請求項5】
断面視において、前記絶縁部の前記スリーブ状の部分と前記電極層とが面一である、請求項1~4のいずれかに記載の固体電池。
【請求項6】
断面視において、前記絶縁部の前記スリーブ状の部分が、前記電極層が前記絶縁部で覆われていない部分よりも隆起している、請求項1~4のいずれかに記載の固体電池。
【請求項7】
断面視において、前記絶縁部の前記隆起している前記スリーブ状の部分が、前記絶縁部の前記外部端子と接触する部分よりも隆起している、請求項6に記載の固体電池。
【請求項8】
断面視において、前記絶縁部の前記隆起している前記スリーブ状の部分が、前記絶縁部が前記外部端子と接触する部分と面一である、請求項6に記載の固体電池。
【請求項9】
前記正極層が集電層を有していて、断面視にて前記スリーブ状の前記絶縁部の間を通るように前記集電層が延在している、請求項1~8のいずれかに記載の固体電池。
【請求項10】
前記正極層および前記負極層がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層となっている、請求項1~9のいずれかに記載の固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体電池に関する。より具体的には、固体電池の電極層と外部端子との境界領域において電極層に絶縁部が積層されている固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、繰り返しの充放電が可能な二次電池は様々な用途に用いられている。例えば、二次電池は、スマートフォンおよびノートパソコン等の電子機器の電源として用いられたりする。
【0003】
二次電池においては、充放電に寄与するイオン移動のための媒体として液体の電解質が一般に使用されている。つまり、いわゆる“電解液”が二次電池に用いられている。しかしながら、そのような二次電池においては、電解液の漏出防止点で安全性が一般に求められる。また、電解液に用いられる有機溶媒等は可燃性物質ゆえ、その点でも安全性が求められる。
【0004】
そこで、電解液に変えて、固体電解質を用いた固体電池について研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、従前の固体電池には克服すべき課題があることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者は見出した。
【0007】
例えば
図12に示すように従前の固体電池100は、正極層110と、負極層120と、それらの間に少なくとも介在する固体電解質層130とを備える電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも1つ備える固体電池積層体150を有する。さらに固体電池100は固体電池積層体150の対向する側面または端面(より具体的には左右の側面または端面)に設けられた正極端子160Aおよび負極端子160Bを外部端子として備える。正極端子160Aは正極層110と電気的に接続されていて、負極端子160Bは負極層120と電気的に接続されている。
【0008】
例えば
図12に示す通り、従前の固体電池100では、正極層110と負極端子160Bとの間、負極層120と正極端子160Aとの間において、電気的な短絡を防止するために絶縁部(又は電極分離部又は余白層とも呼ばれる)140をそれぞれ設けることができる。
【0009】
ここで、固体電池は、概して各層が焼成によって形成され得ること、ひいては固体電池積層体が一体焼結体を成していることが望ましいので、固体電池積層体は、スクリーン印刷法等の印刷法やグリーンシートを用いるグリーンシート法などの積層化技術により製造することが望ましい。
【0010】
しかし、本願発明者の研究により、このような積層化技術、特に印刷法などを利用した固体電池の製造法によると、各層の積層段階、つまり「正極層」、「負極層」および「固体電解質層」の積層や「絶縁部」の形成において、例えば、以下の(1)~(3)のような問題が発生しやすくなることがわかった(
図12についてもあわせて参照のこと)。
【0011】
(1)電極層間の短絡
絶縁部の付近では、正極層110を印刷法などで形成する際、正極層110(具体的には正極層110を形成するためのペースト)が隆起して又は盛り上がって、積層方向の上方に位置して形成され得る負極層120に近接して電気的に短絡し易くなる。また同様に負極層120を印刷法などで形成する際にも負極層120(具体的には負極層120を形成するためのペースト)が隆起して又は盛り上がって、積層方向の上方に位置して形成され得る正極層110に近接して電気的に短絡し易くなる。
(2)電極層と外部端子との間の短絡
絶縁部の付近では、正極層110を印刷法などで形成する際に正極層110(具体的には正極層110を形成するためのペースト)が負極端子160Bの方に延出して負極端子160Bに近接して電気的に短絡し易くなる。また同様に負極層120を印刷法などで形成する際にも負極層120(具体的には負極層120を形成するためのペースト)が正極端子160Aの方に延出して正極端子160Aに近接して電気的に短絡し易くなる。
(3)電極層の剥離
絶縁部の付近では、構造上、固体電池の製造時および固体電池の充放電時に正極層110の物理的な剥離、特に層間剥離が発生し易くなる。また同様に負極層120も絶縁部の付近でも物理的な剥離、特に層間剥離が発生し易くなる。
【0012】
上記の問題はいずれも固体電池の性能の低下をもたらすと考えられる。
【0013】
また、上記の問題は、例えば
図13に示すように電極層内に集電層(より具体的には正極集電層211など)が配置され得ることで電極層が多層化される場合に特に顕著になることも本願発明者の研究によりわかった。
【0014】
本願発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、電極層間の短絡や、電極層と外部端子との間の短絡、電極層の剥離がより抑制された固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成された固体電池の発明に至った。
【0016】
本発明では、固体電池であって、正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に介在する固体電解質層を備える電池構成単位を例えば積層方向に沿って少なくとも1つ備える固体電池積層体を有して成り、前記固体電池積層体の対向する側面(より具体的には図示する態様のように左右の側面)にそれぞれ設けられた正極端子および負極端子の外部端子を備え、前記正極層および前記負極層の少なくとも一方の電極層が、前記外部端子との境界領域において、前記電極層の活物質部と、絶縁部とが互いに積層された構成を有しており、断面視において前記絶縁部がスリーブ状に前記活物質部を覆っている固体電池が提供される。
【0017】
例えば
図1に示すように本発明の一実施形態に係る固体電池では、電極層(1,2)が、外部端子6との境界領域Xにおいて、少なくとも1つの電極層(1,2)に含まれ得る活物質部(1’,2’)と、絶縁部4またはその一部とが互いに積層された構成を有していて、断面視において絶縁部4が「スリーブ状」に活物質部(1’,2’)を覆っていることを特徴とする。換言すると、少なくとも1つの電極層(1,2)において、絶縁部4が電極層(1,2)の積層方向の外側または上下方向に配置され得るように、絶縁部4、特にその「スリーブ状」の部分(S)が電極層(1,2)、とりわけ活物質部(1’,2’)と上下に重なり合うこと、なかでも特に電極層(1,2)の主面、とりわけ活物質部(1’,2’)の主面で接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、電極層間の短絡や、電極層と外部端子との間の短絡、電極層の剥離がより抑制された固体電池が得られる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでなく、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る固体電池の境界領域を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る固体電池を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る固体電池の境界領域を模式的に示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る固体電池を模式的に示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る固体電池の境界領域を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係る固体電池を模式的に示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態に係る固体電池の境界領域を模式的に示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態に係る固体電池を模式的に示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施形態に係る固体電池の境界領域を模式的に示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、絶縁部の形成を模式的に示す概略図である。
【
図11】
図11は、別の絶縁部の形成を模式的に示す概略図である。
【
図12】
図12は、従来の固体電池を模式的に示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、従来の別の固体電池を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の「固体電池」を詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したに過ぎず、外観および/または寸法比などは実物と異なり得る。
【0021】
本明細書でいう「断面視」とは、固体電池を構成し得る各層の積層方向または重ねる方向に基づく厚み方向に対して略垂直な方向から捉えた場合の形態に基づいている。換言すれば、厚み方向に平行な面で切り取った場合の形態に基づいている。端的にいえば、例えば
図1および
図2などに示される対象物の断面の形態に基づく。本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”および“左右方向”は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材もしくは部位または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」/「底面側」に相当し、その逆向きが「上方向」/「頂面側」に相当すると捉えることができる。
【0022】
本発明でいう「固体電池」は、広義にはその構成要素が固体から構成され得る電池を指し、狭義にはその構成要素(特に好ましくは全ての構成要素)が固体から構成され得る全固体電池を指している。ある好適な態様では、本発明における固体電池は、電池構成単位を成す各層が互いに積層するように構成された積層型固体電池であり、好ましくはそのような各層が焼結体から成っている。なお、「固体電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な、いわゆる「二次電池」のみならず、放電のみが可能な「一次電池」をも包含し得る。本発明のある好適な態様に従うと「固体電池」は二次電池である。「二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものではなく、例えば、蓄電デバイスなども包含し得る。
【0023】
以下では、まず、本発明の「固体電池」の基本的構成を説明したうえで、本発明の固体電池の特徴(特に「絶縁部」)について説明する。ここで説明される固体電池の基本的構成は、あくまでも発明の理解のための例示にすぎず、発明を限定するものではない。
【0024】
[固体電池の基本的構成]
固体電池は、正極および負極の電極層と固体電解質層(又は固体電解質)とを少なくとも有して成る。より具体的には、例えば
図2に示すように、固体電池は、正極層(1)、負極層(2)、およびそれらの間に少なくとも介在する固体電解質層(又は固体電解質)(3)を備える電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも1つ備える固体電池積層体(5)を有して成る。
【0025】
好ましくは、固体電池は、それを構成し得る各層が焼成によって形成されていてもよく、正極層、負極層および固体電解質層などが焼結層を成していてもよい。より好ましくは、正極層、負極層および固体電解質層は、それぞれが互いに一体焼成されており、それゆえ電池構成単位または固体電池積層体が一体焼結体を成していてもよい。
【0026】
正極層(1)は、少なくとも正極活物質を含んで成る電極層である。従って、正極層(1)は、主として正極活物質から成る正極活物質層であってもよい。正極層は、必要に応じて、更に固体電解質を含んで成っていてよい。ある態様では、正極層は、正極活物質粒子と固体電解質粒子とを少なくとも含む焼結体から構成されていてよい。
負極層(2)は、少なくとも負極活物質を含んで成る電極層である。従って、負極層(2)は、主として負極活物質から成る負極活物質層であってもよい。負極層は、必要に応じて、更に固体電解質を含んで成っていてよい。ある態様では、負極層は、負極活物質粒子と固体電解質粒子とを少なくとも含む焼結体から構成されていてよい。
【0027】
正極活物質および負極活物質は、固体電池においてイオンの吸蔵放出および外部回路との電子の受け渡しに関与し得る物質である。固体電解質を介して、イオンは、正極層と負極層との間で移動(伝導)する。活物質へのイオンの吸蔵放出は、活物質の酸化もしくは還元を伴うが、このような酸化還元反応のための電子またはホールが、外部回路から外部端子へと、さらには正極層もしくは負極層へと受け渡しが行われることによって充放電が進行し得る。正極層および負極層は、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、プロトン(H+)、カリウムイオン(K+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、アルミニウムイオン(Al3+)、銀イオン(Ag+)、フッ化物イオン(F-)または塩化物イオン(Cl-)を吸蔵放出可能な層である。つまり、固体電池は、固体電解質を介して、上記イオンが正極層と負極層との間で移動して電池の充放電が行われ得る全固体型二次電池であることが好ましい。
【0028】
(正極活物質)
正極層(1)に含まれ得る正極活物質としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、リチウム含有層状酸化物、およびスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li3V2(PO4)3等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li3Fe2(PO4)3、LiFePO4、LiMnPO4、および/またはLiFe0.6Mn0.4PO4等が挙げられる。リチウム含有層状酸化物の一例としては、LiCoO2、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、および/またはLiCo0.8Ni0.15Al0.05O2等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、LiMn2O4、および/またはLiNi0.5Mn1.5O4等が挙げられる。
【0029】
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質としては、ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、ナトリウム含有層状酸化物およびスピネル型構造を有するナトリウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0030】
(負極活物質)
負極層(2)に含まれ得る負極活物質としては、例えば、Ti、Si、Sn、Cr、Fe、NbおよびMoから成る群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物、黒鉛などの炭素材料、黒鉛-リチウム化合物、リチウム合金、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ならびにスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。リチウム合金の一例としては、Li-Al等が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li3V2(PO4)3、および/またはLiTi2(PO4)3等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li3Fe2(PO4)3、および/またはLiCuPO4等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、Li4Ti5O12等が挙げられる。
【0031】
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物およびスピネル型構造を有するナトリウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0032】
尚、固体電池において、正極層と負極層とが同一材料から成っていてもよい。
【0033】
正極層および/または負極層は、導電性材料を含んでいてもよい。正極層および負極層に含まれ得る導電性材料として、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅およびニッケル等の金属材料、ならびに炭素などから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0034】
さらに、正極層および/または負極層は、焼結助剤を含んでいてもよい。焼結助剤としては、リチウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ビスマスおよび酸化リンから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0035】
正極層および負極層の厚みは特に限定されない。例えば、正極層および負極層の各厚みは、2μm以上100μm以下であってよく、特に5μm以上50μm以下であってよい。
【0036】
(固体電解質)
固体電解質(又は固体電解質層)(3)は、例えば、リチウムイオンまたはナトリウムイオンなどのイオンが伝導可能な材質である。特に固体電池で電池構成単位を成す固体電解質は、正極層と負極層との間において、例えば、リチウムイオンが伝導可能な層を成していてよい。具体的な固体電解質としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト型構造を有する酸化物、ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物、酸化物ガラスセラミックス系リチウムイオン伝導体等が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物としては、LixMy(PO4)3(1≦x≦2、1≦y≦2、Mは、Ti、Ge、Al、GaおよびZrから成る群より選ばれた少なくとも一種である)が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、例えば、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO4)3等が挙げられる。ペロブスカイト型構造を有する酸化物の一例としては、La0.55Li0.35TiO3等が挙げられる。ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物の一例としては、Li7La3Zr2O12等が挙げられる。
酸化物ガラスセラミックス系リチウムイオン伝導体としては、例えば、リチウム、アルミニウムおよびチタンを構成元素に含むリン酸化合物(LATP)、リチウム、アルミニウムおよびゲルマニウムを構成元素に含むリン酸化合物(LAGP)を用いることができる。
また、ナトリウムイオンが伝導可能な固体電解質としては、例えば、ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト型構造を有する酸化物、ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物等が挙げられる。ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物としては、NaxMy(PO4)3(1≦x≦2、1≦y≦2、Mは、Ti、Ge、Al、GaおよびZrから成る群より選ばれた少なくとも一種である)が挙げられる。
【0037】
固体電解質層は、焼結助剤を含んでいてもよい。固体電解質層に含まれ得る焼結助剤は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてよい。
【0038】
固体電解質層の厚みは特に限定されない。固体電解質層の厚みは、例えば1μm以上15μm以下であってよく、特に1μm以上5μm以下であってよい。
【0039】
(正極集電層および負極集電層)
正極層(1)および負極層(2)は、それぞれ正極集電層および負極集電層を備えていてもよい。正極集電層および負極集電層はそれぞれ箔の形態を有していてもよい。しかしながら、一体焼成による固体電池の製造コスト低減および固体電池の内部抵抗低減などの観点から、正極集電層および負極集電層は、焼結体の形態を有していてもよい。なお、正極集電層および/または負極集電層が焼結体の形態を有する場合、導電性材料および/または焼結助剤を含む焼結体により構成されてもよい。正極集電層および/または負極集電層に含まれ得る導電性材料は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る導電性材料と同様の材料から選択されてよい。正極集電層および/または負極集電層に含まれ得る焼結助剤は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてよい。
【0040】
正極集電層および負極集電層の厚みは特に限定されない。例えば、正極集電層および負極集電層の各厚みは、1μm以上10μm以下であってよく、特に1μm以上5μm以下であってよい。
【0041】
なお、本開示の固体電池において、正極集電層および/または負極集電層が必須というわけではなく、そのような正極集電層および/または負極集電層が設けられていない固体電池も考えられる。つまり、本発明における固体電池は“集電レス”の固体電池であってもよい(
図2参照)。
【0042】
(外部端子)
固体電池積層体(5)には、外部との接続用の端子が設けられている(以下、「外部端子」または「外部端子6」と呼ぶ)。特に、固体電池積層体(5)の側面(具体的には左右の側面)に“端面電極”として外部との接続用の端子が設けられていることが好ましい。より具体的には、外部端子6として、例えば
図2に示す通り、正極層(1)と電気的に接続された正極側の端子(正極端子)(6A)と、負極層(2)と電気的に接続された負極側の端子(負極端子)(6B)とが固体電池積層体5に設けられていてよい。このような端子は、導電率が大きい材料(又は導電材料)を含んで成ることが好ましい。端子の材質としては、特に限定するわけではないが、例えば、金、銀、プラチナ、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、鉄、チタンおよびクロムから成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
端子が配置される位置に特に制限はなく、固体電池積層体の左右の側面に限定されない。
【0043】
[本開示の固体電池の特徴]
本発明は固体電池に関する。例えば
図1に本発明の一実施形態に係る固体電池を示す(以下、「本開示の固体電池」と呼ぶ場合もある)。本開示の固体電池は、例えば
図1に示すように、極性の異なる少なくとも2つの電極層(1,2)と、この電極層(1,2)との間に少なくとも介在する固体電解質層3とを備える電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも1つ備える固体電池積層体を有して成る(
図2参照)。
【0044】
本開示の固体電池は、外部端子6(正極端子または負極端子)を備える。例えば
図2に示すような固体電池積層体5の対向する側面(具体的には左右の側面)にそれぞれ設けられた正極端子6Aおよび負極端子6Bを備える。
【0045】
本開示の固体電池は、例えば
図1に示す通り、電極層(1,2)が、外部端子6との境界領域Xにおいて、電極層(1,2)に含まれ得る活物質部(1’,2’)と、絶縁部4(またはその一部)とが互いに上下方向に積層された構成を有していてよく、断面視において絶縁部4が「スリーブ状」に活物質部(1’,2’)を覆っていることを特徴とする。
【0046】
以下、説明の便宜上、
図1では電極層1を正極層とし、電極層2を負極層として示すが、電極層1は負極層であってよく、従って電極層2は正極層であってもよい。つまり、外部端子6は説明の便宜上、正極端子として示すが、外部端子6は、正極端子であっても負極端子であってもよい。
【0047】
以下、各用語を説明したうえで、本発明の特徴をより具体的に説明する。
【0048】
(活物質部)
本開示において「活物質部」とは、電極層において電極活物質が含まれている部分を意味する。より具体的には、正極層において上記の「正極活物質」が少なくとも含まれている部分および負極層において上記の「負極活物質」が少なくとも含まれている部分を意味する。
【0049】
(境界領域)
本開示において「境界領域」とは、「電極層」と「外部端子」とが互いに対向して配置され得る領域を意味し、この境界領域において「電極層」と「外部端子」とが互いに電気的に接続していてもよいし、電気的に接続していなくてもよい。
【0050】
本開示の固体電池では、このような境界領域に「絶縁部」を配置することができる。従って、本開示の固体電池では、このような「絶縁部」を配置することのできる領域を「境界領域」と呼ぶこともできる。
【0051】
より具体的には、
図1に示す通り、電極層1(例えば正極層)と外部端子6(例えば正極端子)とが互いに対向して配置され得る領域や、電極層2(例えば負極層)と外部端子6(例えば正極端子)とが互いに対向して配置され得る領域に境界領域Xが存在する。
【0052】
例えば
図1に示す態様では、電極層1と外部端子6とが電気的に接続されていて、電極層2と外部端子6とは絶縁部4を介して電気的に接続されていない。
【0053】
(絶縁部)
本開示において「絶縁部」(「電極分離部」または「余白部」もしくは「余白層」とも称される)とは、少なくとも電極層(正極層および/または負極層)と外部端子とが対向することができる領域、すなわち電極層を外部端子との境界領域に配置することができ、電極層と外部端子とを離間および/または電気的に絶縁させることができる部分を意味する。具体的には固体電池の正極端子と負極端子とが対向する方向または左右方向で電極層と外部端子とを離間および/または電気的に絶縁させる部分を意味する。
【0054】
絶縁部を構成することのできる材料に特に制限はないが、例えば、上記の「固体電解質」や「絶縁材」などから構成されることが好ましい。
【0055】
「絶縁材」として、例えば、ガラス材、セラミック材等が挙げられる。
「ガラス材」として、特に限定されるものではないが、例えば、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、ホウ酸塩系ガラス、ホウケイ酸塩系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラス、ホウ酸亜塩系ガラス、ホウ酸バリウム系ガラス、ホウケイ酸ビスマス塩系ガラス、ホウ酸ビスマス亜鉛系ガラス、ビスマスケイ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、アルミノリン酸塩系ガラス、および、リン酸亜塩系ガラスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
「セラミック材」として、特に限定されるものではないが、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化ホウ素(BN)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)およびチタン酸バリウム(BaTiO3)からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0056】
絶縁部を構成し得る材料が固体電解質を含む場合、この絶縁部に含まれ得る固体電解質材料は、上記「固体電解質層」に含まれ得る固体電解質と同じ材料であることが好ましい。このような構成とすることで絶縁部と固体電解質層との間の結合性をさらに向上させることができる。
【0057】
(「スリーブ状」の部分)
本開示の固体電池は、例えば
図1に示すように、2つの電極層(具体的には正極層1および負極層2)の少なくとも一方が、外部端子6(具体的には正極端子)との境界領域Xにおいて、電極層(1,2)に含まれる活物質部(1’,2’)と、絶縁部4(又はその一部)とが互いに上下方向に積層された構成を有していて、断面視において絶縁部4が「スリーブ状」(袖状)に活物質部(1’,2’)を覆っていることを主たる特徴とする。換言すると、断面視で絶縁部のスリーブ状の部分で覆われた電極層が活物質部である。
【0058】
例えば
図1に示す態様では、絶縁部4の「スリーブ状」の部分を符号「S」(Sleeve)で示し、それ以外の「非スリーブ状」の部分を符号「NS」(Non-Sleeve)で示す。
【0059】
図1に示す境界領域Xにおいて、断面視で活物質部(1’,2’)を積層方向で上下から挟むように絶縁部4のスリーブ状の部分(S)が設けられていることが好ましい。換言すると、絶縁部4のスリーブ状の部分(S)が電極層(1,2)の活物質部(1’,2’)を上下方向から挟持するように配置されていることが好ましい。より理解しやすく説明すると、絶縁部4のスリーブ状の部分(S)は、例えば、その断面視での形状がロボットのアームや、カニのツメ、クチバシのような形状をしていることが好ましい。
【0060】
図1に示す態様において、スリーブ状の部分(S)は、断面視にて矩形または長方形の形状で示されているが、スリーブ状の部分(S)と活物質部(1’,2’)との境界は、なだらかな曲線であってもよく、内側に湾曲していても、外側に湾曲していてもよく、フィレット形状であってもよく、外部端子6に近づくにつれてテーパー状に細く狭くなるような形状であってもよい。
【0061】
このように「スリーブ状」の部分(S)を形成することで、特に固体電池積層体の製造時において電極層(1,2)の活物質部(1’,2’)の上下方向(または積層方向)の延出(滲出、はみ出し)、特に極性の異なる電極層への近接を抑制することができ、製造後においては積層方向で対向する電極層間での短絡をより防止することができる。
【0062】
また、このように「スリーブ状」の部分(S)を形成することで、特に固体電池積層体の製造時において電極層2の活物質部2’の左右方向(または正極端子と負極端子とが対向する方向)の延出(滲出、はみ出し)、特に外部端子6への近接をより抑制することができ、製造後においては電極層2の対向する外部端子6との短絡をより防止することができる。
【0063】
このように「スリーブ状」の部分(S)を形成することで、絶縁部4を固体電解質層3との接触面積をより確保し、固体電池の製造時または固体電池の充放電時において、電極層(1,2)の界面での剥離、具体的には固体電解質層からの剥離、特に層間剥離をより抑制することができる。
【0064】
ここで、
図1に示すように、断面視において、電極層(1,2)の厚み(具体的には、その積層方向(上下方向)の寸法)に対する絶縁部4のスリーブ状の部分(S)の長さ(具体的には、その左右方向の寸法)の割合(長さ/厚みの割合)は、例えば0.05%以上10%以下である。
【0065】
また、
図1に示すように電極層1(具体的には正極層1)の活物質部1’が絶縁部4でスリーブ状に覆われている部分(S)と、電極層2(具体的には負極層2)の活物質部2’が絶縁部4でスリーブ状に覆われている部分(S)とが積層方向(上下方向)において重複していることが好ましい(例えば
図1の距離D
1で示される部分)。
このような重複部分を形成することで積層方向において対向する電極層間での短絡や層間剥離をさらに防止することができる。
【0066】
絶縁部4のスリーブ状の部分(S)が重複している部分の長さは、
図1の断面視において距離D
1で示される正極端子と負極端子とが対向する方向(左右方向)の長さとして、例えば、10μm以上200μm以下、好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0067】
絶縁部4のスリーブ状の部分(S)の厚み(Ts)は、固体電解質層3の厚み(T3)に対して、例えば1%以上50%以下である(Ts/T3×100(%))。尚、スリーブ状の部分(S)は、その断面の形状が矩形や長方形以外の形状であってもよいことから、その厚み(Ts)は、「平均の厚み」として、スリーブ状の部分(S)の面積(具体的には、その断面の面積)をスリーブ状の部分(S)の長さ(具体的には、その左右方向の寸法)で除算した値であってもよい。
絶縁部4のスリーブ状の部分(S)の厚み(Ts)は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)などの写真から測定して決定することができる。
図示する態様において、絶縁部4のスリーブ状の部分(S)の厚み(Ts)は、それぞれ異なっていても、同一であってもよい。
【0068】
絶縁部4の「非スリーブ状」の部分(NS)では、例えば電極層1(具体的には正極層1)で示すように活物質部1’が外部端子6(具体的には正極端子)まで延在していてよく、電極層1が外部端子6と電気的に接続していてよい。つまり電気的な「接続状態」を形成してよい。
【0069】
また、絶縁部4の「非スリーブ状」の部分(NS)では、例えば電極層2(具体的には負極層2)で示すように活物質部2’が外部端子6(具体的には正極端子)まで延在しておらず、電極層2が外部端子6と電気的に接続していなくてもよい。つまり絶縁部4によって電気的な「非接続状態」を形成してよい。
【0070】
このように絶縁部4が「非スリーブ状」の部分(NS)を有することによって、電極層の外部端子との電気的な接続を任意に選択することができる。
【0071】
以下、好ましい実施形態により本発明を詳しく説明する。
【0072】
(第1実施形態)
本発明の好ましい実施形態に係る固体電池として例えば
図2に第1実施形態の固体電池10を示す。
【0073】
図2に示す固体電池10は、正極層1、負極層2、および正極層1と負極層2との間に少なくとも介在する固体電解質層3を備える電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも1つ備える固体電池積層体5を有する。
固体電池10は、固体電池積層体5の対向する側面(具体的には左右の側面)にそれぞれ設けられた正極端子6Aおよび負極端子6Bの外部端子を備える。
固体電池10は、正極層1および負極層2の少なくとも一方の電極層が、外部端子(6A,6B)との境界領域(X
a,X
b)において、電極層(1,2)の活物質部(1’,2’)と、絶縁部(またはその一部)とが互いに上下方向に積層された構成を有しており、断面視において絶縁部がスリーブ状に活物質部(1’,2’)を覆っていることを主たる特徴として有する。
【0074】
正極層1では、正極端子6Aとの境界領域X
aにおいて、正極側の絶縁部4aが存在している。正極層1(又は活物質部1’)が正極端子6Aと電気的に接続している。より具体的には、正極層1が絶縁部4aの内部(内側)を延在して通って正極端子6Aと電気的に接続している(接続状態の形成)。
正極層1では、さらに、負極端子6Bとの境界領域X
bにおいても、負極側の絶縁部4bが存在していて、正極層1は負極端子6Bと電気的に接続していない(非接続状態の形成)。
尚、正極層1に配置され得る正極側の絶縁部4a、負極側の絶縁部4bは、
図1に示す絶縁部4(上段、下段)と同様のものを使用することができる。
【0075】
負極層2では、負極端子6Bとの境界領域X
bにおいて、負極層2が負極端子6Bと電気的に接続している。
負極層2では、正極端子6Aとの境界領域X
aにおいて、正極側の絶縁部4が存在していて、負極層2の活物質部2’は正極端子6Aと電気的に接続していない(非接続状態の形成)。
負極層2に配置され得る正極側の絶縁部4は、
図1に示す絶縁部4(下段)と同様のものを使用することができる。
尚、負極層2の負極端子6Bとの境界領域X
bにおいても、正極側の絶縁部4aと同様に負極側の絶縁部が設けられていてもよい。このとき、負極層2が負極側の絶縁部(図示せず)の内部(内側)を延在して通って負極端子6Bと電気的に接続していてよい(接続状態の形成)。
【0076】
図2に示す通り、固体電池10では、断面視において、絶縁部のスリーブ状の部分と、電極層(又は活物質部が絶縁部で覆われていない部分)とが面一であることが好ましい。
【0077】
より具体的には、
図3に拡大して示す通り、正極層1において、絶縁部4aのスリーブ状の部分(S)と、正極層1(具体的には正極層1の活物質部1’が絶縁部4aで覆われていない部分(F))とが面一であることが好ましい。
同様に、負極層2において、絶縁部4のスリーブ状の部分(S)と負極層2(具体的には負極層2の活物質部2’が絶縁部4で覆われていない部分(F))とが面一であることが好ましい。
【0078】
従って、
図3に示す態様では、各層の厚みを揃えることができるので固体電池の構造安定性がより向上する。また、各層の厚みが揃うことで電極層と固体電解質層との界面での層間剥離をより抑制することができる。
【0079】
図3に示す態様において、断面視において、電極層(1,2)の厚み(具体的には、その積層方向(上下方向)の寸法)に対する絶縁部4のスリーブ状の部分(S)の長さ(具体的には、その左右方向の寸法)の割合(長さ/厚みの割合)は、例えば0.05%以上10%以下である。
【0080】
また、正極層1の絶縁部4aのスリーブ状の部分(S)と、負極層2の絶縁部4のスリーブ状の部分(S)とが積層方向(上下方向)において重複することが好ましい。重複する部分の距離D1は、固体電池10の正極端子と負極端子とが対向する方向(左右方向)の長さとして、例えば、10μm以上200μm以下、好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0081】
固体電池10では、スリーブ状の部分(S)と非スリーブ状の部分(NS)の合計の長さに特に制限はなく、例えば
図3に示すように正極層1の方が長くても、負極層2の方が長くてもよい。例えば
図1に示すように正極層1と負極層2とで絶縁部は同じ長さであってもよい。
【0082】
このような構成によって電極層(1,2)の間での電気的な短絡(つまり上下方向の短絡)や、負極層2と正極端子6Aとの電気的な短絡および正極層1と負極端子6Bとの電気的な短絡(つまり左右方向の短絡)、電極層(1,2)と固体電解質層3との間の層間剥離などをさらに抑制することができる。
【0083】
(第2実施形態)
本発明の好ましい実施形態に係る固体電池として
図4および
図5に第2実施形態の固体電池20を示す。
【0084】
第2実施形態の固体電池20の構成は、第1実施形態の固体電池10の構成と同様であるが、第2実施形態の固体電池20は正極層21が正極集電層21cを備える点で固体電池10とは異なっている。
【0085】
正極層21では正極集電層21cが断面視にてスリーブ状の絶縁部24aの間を通るように延在していて、特に絶縁部24aの非スリーブ状の部分(NS)を通して正極端子26Aと電気的に接続している(
図5)。
【0086】
固体電池20では、正極層21と同様に、負極層22においても負極集電層を備えていてもよい(図示せず)。
【0087】
図5に示す態様では、断面視において、電極層(21,22)の厚み(具体的には、その積層方向(上下方向)の寸法)に対するスリーブ状の部分(S)の長さ(具体的には、その左右方向の寸法)の割合(長さ/厚みの割合)は、例えば0.05%以上10%以下である。
【0088】
また、例えば
図5に示すように、正極層21の絶縁部24aのスリーブ状の部分(S)と、負極層22の絶縁部24のスリーブ状の部分(S)とが積層方向(上下方向)において重複することが好ましい。重複する部分の距離D
2は、正極端子と負極端子とが対向する方向(左右方向)の長さとして、例えば、10μm以上200μm以下、好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0089】
第2実施形態の固体電池20では、正極層21の絶縁部24aおよび24bならびに負極層22の絶縁部24が第1実施形態の固体電池10の絶縁部(4a,4b,4)と同様の構成を有し得ることから(
図2,4)、電極層(21,22)が集電層を含む場合であっても、つまり電極層が多層化された場合であっても、電極層(21,22)の間での電気的な短絡(つまり上下方向の短絡)や、負極層22と正極端子26Aとの電気的な短絡および正極層21と負極端子26Bとの電気的な短絡(つまり左右方向の短絡)、電極層(21,22)と固体電解質層23との間の層間剥離などを同様により抑制することができる。
【0090】
(第3実施形態)
本発明の好ましい実施形態に係る固体電池として
図6および
図7に第3実施形態の固体電池30を示す。
【0091】
第3実施形態の固体電池30の構成は、第2実施形態の固体電池20の構成と同様であるが、第3実施形態の固体電池30は正極層31の絶縁部34aおよび34bならびに負極層32の絶縁部34の形状が変更されている点で固体電池20とは異なっている。
【0092】
固体電池30では、断面視において、絶縁部のスリーブ状の部分が、電極層(又は活物質部)が絶縁部で覆われていない部分よりも隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている。
【0093】
より具体的には、
図7に拡大して示す通り、正極層31の絶縁部34aのスリーブ状の部分(S)が、正極層31(又は活物質部(31’))が絶縁部34aで覆われていない部分(F)よりも隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている。より具体的には、スリーブ状の部分(S)が積層方向の上下方向に隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている。
負極層32の絶縁部34のスリーブ状の部分(S)が、負極層32(又は活物質部(32’))が絶縁部34で覆われていない部分(F)よりも隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている。スリーブ状の部分(S)は、より具体的には、積層方向の上下方向に隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている。
尚、図示する実施形態では、スリーブ状の部分(S)は、断面視にて段差により矩形または長方形の形状で隆起しているように示しているが、なだらかな曲線、曲面で円弧を描いて隆起して又は盛り上がって又は高くなっていてもよい。
【0094】
スリーブ状の部分(S)の厚み(T3S)は、電極層の絶縁部で覆われていない部分(F)の厚み(T31,T32)に対して、例えば1%以上50%以下の範囲の高さで隆起している(T3S/T31またはT32×100(%))。
スリーブ状の部分(S)の厚み(T3S)は、固体電解質層33の厚み(T33)に対して、例えば1%以上50%以下の範囲の高さで隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている(T3S/T33×100(%))。
図示する態様において、スリーブ状の部分(S)の厚み(T3s)は、それぞれ異なっていても、同一であってもよい。
【0095】
固体電池30では、断面視において、絶縁部の隆起しているスリーブ状の部分が、絶縁部の外部端子と接触する部分よりも隆起している又は盛り上がっている又は高くなっていることが好ましい。
【0096】
より具体的には、
図7に示す通り、断面視において、正極層31の絶縁部34aの隆起しているスリーブ状の部分(S)が、絶縁部34aの正極端子36Aと接触する部分(具体的には非スリーブ状の部分(NS)の右側の正極端子36Aと接触する端部)よりも隆起していることが好ましい。
また、断面視において、負極層32の絶縁部34の隆起しているスリーブ状の部分(S)が、絶縁部34の正極端子36Aと接触する部分(具体的には非スリーブ状の部分(NS)の右側の正極端子36Aと接触する端部)よりも隆起している又は盛り上がっている又は高くなっていることが好ましい。
【0097】
図7に示す態様において、断面視において、電極層(31,32)の厚み(具体的には、その積層方向(上下方向)の寸法(T
31,T
32))に対するスリーブ状の部分(S)の長さ(具体的には、その左右方向の寸法)の割合(長さ/厚みの割合)は、例えば0.05%以上10%以下である。
【0098】
また、正極層31の絶縁部34aのスリーブ状の部分(S)と負極層32の絶縁部34のスリーブ状の部分(S)とが積層方向(上下方向)において重複することが好ましい。重複する部分の距離D3は、正極端子と負極端子とが対向する方向(左右方向)の長さとして、例えば、10μm以上200μm以下、好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0099】
第3実施形態の固体電池30では、スリーブ状の部分(S)が隆起していることで電極層(31,32)の間での電気的な短絡(つまり上下方向の短絡)や、負極層32と正極端子36Aとの電気的な短絡および正極層31と負極端子36Bとの電気的な短絡(つまり左右方向の短絡)、電極層(31,32)と固体電解質層33との間の層間剥離などをさらに抑制することができる。
【0100】
また、第3実施形態の固体電池30では、第1および第2の実施形態の固体電池と比べて、スリーブ状の部分(S)が隆起していることにより各電極層の活物質の充填量をより増加させることができるのでエネルギー密度をより向上させることができる。
【0101】
なお、第3実施形態の固体電池30において、絶縁部の下側(下面)は、第1および第2の実施形態と同様に(
図1~
図5参照)、電極層のスリーブ状に覆われていない部分(F)と面一であってもよい。
【0102】
(第4実施形態)
本発明の好ましい実施形態に係る固体電池として
図8および
図9に第4実施形態の固体電池40を示す。
【0103】
第4実施形態の固体電池40の構成は、第3実施形態の固体電池30の構成と同様であるが、第4実施形態の固体電池40は正極層41の絶縁部44aおよび44bならびに負極層42の絶縁部44の形状、特に「非スリーブ状の部分」の形状が変更されている点で固体電池30とは異なっている。
【0104】
固体電池40では、断面視において、絶縁部のスリーブ状の部分が、電極層(又は活物質部)が絶縁部で覆われていない部分よりも隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている。
【0105】
より具体的には、
図9に拡大して示す通り、正極層41の絶縁部44aのスリーブ状の部分(S)が、正極層41(又は活物質部(41’))が絶縁部44aで覆われていない部分(F)よりも隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている。
負極層42の絶縁部44のスリーブ状の部分(S)が、負極層42(又は活物質部(42’))が絶縁部44で覆われていない部分(F)よりも隆起している。
尚、図示する実施形態では、スリーブ状の部分(S)は、断面視にて段差により矩形または長方形の形状で隆起しているように示しているが、なだらかな曲線、曲面で円弧を描いて隆起していてもよい。
【0106】
スリーブ状の部分(S)の厚み(T4S)は、電極層の絶縁部で覆われていない部分(F)の厚み(T41,T42)に対して、例えば1%以上50%以下の範囲の高さで隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている(T4S/T41またはT42×100(%))。
スリーブ状の部分(S)の厚み(T4S)は、固体電解質層43の厚み(T43)に対して、例えば1%以上50%以下の範囲の高さで隆起している又は盛り上がっている又は高くなっている(T4S/T43×100(%))。
図示する態様において、スリーブ状の部分(S)の厚み(T4s)は、それぞれ異なっていても、同一であってもよい。
【0107】
固体電池40では、断面視において、絶縁部の隆起しているスリーブ状の部分が、絶縁部が外部端子と接触する部分と面一であることが好ましい。
【0108】
より具体的には、
図9に拡大して示す通り、断面視において、正極層41の絶縁部44aの隆起しているスリーブ状の部分(S)が、絶縁部44aの正極端子46Aと接触する部分(具体的には非スリーブ状の部分(NS)の右側の正極端子46Aと接触する端部)と面一であること又は高さが合わせられて一致していることが好ましい。
また、断面視において、負極層42の絶縁部44の隆起しているスリーブ状の部分(S)が、絶縁部44の正極端子46Aと接触する部分(具体的には非スリーブ状の部分(NS)の右側の正極端子46Aと接触する端部)と面一であること又は高さが合わせられて一致していることが好ましい。
【0109】
図9に示す態様において、断面視において、電極層(41,42)の厚み(具体的には、その積層方向(上下方向)の寸法(T
41,T
42))に対するスリーブ状の部分(S)の長さ(具体的には、その左右方向の寸法)の割合(長さ/厚みの割合)は、例えば0.05%以上10%以下である。
【0110】
また、正極層41の絶縁部44aのスリーブ状の部分(S)と負極層42の絶縁部44のスリーブ状の部分(S)とが積層方向(つまり上下方向)において重複することが好ましい。重複する部分の距離D4は、正極端子と負極端子とが対向する方向または左右方向の長さとして、例えば、10μm以上200μm以下、30μm以上50μm以下である。
【0111】
第4実施形態の固体電池40では、スリーブ状の部分(S)が隆起している又は盛り上がっている又は高くなっていることで電極層(41,42)の間での電気的な短絡(つまり上下方向の短絡)や、負極層42と正極端子46Aとの電気的な短絡および正極層41と負極端子46Bとの電気的な短絡(つまり左右方向の短絡)、電極層(41,42)と固体電解質層43との間の層間剥離などをさらに抑制することができる。
【0112】
第4実施形態の固体電池40では、第1~第3の実施形態の固体電池と比べて、絶縁部の非スリーブ状の部分(NS)の厚みが増加することから、負極層42と正極端子46Aとの電気的な短絡および正極層41と負極端子46Bとの電気的な短絡(つまり左右方向の短絡)をより抑制することができる。
【0113】
なお、第4実施形態の固体電池40において、絶縁部の下側(下面)は、第1および第2の実施形態と同様に(
図1~
図5参照)、各電極層のスリーブ状の部分で覆われていない部分(F)と面一であってもよい。
【0114】
本開示の固体電池は、上記の第1~第4の実施形態の構成を必要に応じて組み合わせたものであってよく、特に第1~第4の実施形態で使用する絶縁部をそれぞれ適切に組み合わせて使用してよい。
【0115】
本開示の固体電池は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0116】
(固体電池の製造方法)
以下、本開示の固体電池の製造方法を簡単に説明する。
【0117】
(固体電池積層体形成)
固体電池積層体は、スクリーン印刷法等の印刷法、グリーンシートを用いるグリーンシート法、またはそれらの複合法により製造することができる。つまり、固体電池積層体自体は、常套的な固体電池の製法に準じて作製してよい(よって、下記で説明する固体電解質、有機バインダー、溶剤、任意の添加剤、正極活物質、負極活物質などの原料物質は、既知の固体電池の製造で用いられているものを用いてよい)。
【0118】
以下では、本発明のより良い理解のために、ある1つの製法を例示説明するが、本発明は当該方法に限定されない。また、以下の記載順序など経時的な事項は、あくまでも説明のための便宜上のものにすぎず、必ずしもそれに拘束されるわけではない。
尚、本発明の特徴部分である絶縁部の形成については、以下にて具体的に別途に説明する。
【0119】
(積層体ブロック形成)
・固体電解質、有機バインダー、溶剤および任意の添加剤などを混合してスラリーを調製する。次いで、調製されたスラリーからシート成形によって、焼成後の厚みが約10μmのシートを得る。
・正極活物質、固体電解質、導電性材料、有機バインダー、溶剤および任意の添加剤などを混合して正極用ペーストを作成する。同様にして、負極活物質、固体電解質、導電性材料、有機バインダー、溶剤および任意の添加剤などを混合して負極用ペーストを作成する。
・シート上に正極用ペーストを印刷し、また、必要に応じて集電層を印刷する。同様にして、シート上に負極用ペーストを印刷し、また、必要に応じて集電層を印刷する。
・正極用ペーストを印刷したシートと、負極用ペーストを印刷したシートとを交互に積層して積層体を得る。なお、積層体の最外層(最上層および/または最下層)についていえば、それが電解質層でも絶縁層(電気を通さない層、例えば、ガラス材および/またはセラミック材等の非導電性材から構成され得る層)でもよく、あるいは、電極層であってもよい。
【0120】
(電池焼結体形成)
積層体を圧着一体化させた後、所定のサイズにカットする。得られたカット済み積層体を脱脂および焼成に付す。これにより、焼結された積層体を得る。なお、カット前に積層体を脱脂および焼成に付し、その後にカットを行ってもよい。
【0121】
(外部端子形成)
正極側の外部端子(又は端面電極)は、焼結積層体における正極露出側面に対して導電性ペーストを塗布することを通じて形成できる。同様にして、負極側の外部端子(又は端面電極)は、焼結積層体における負極露出側面に対して導電性ペーストを塗布することを通じて形成できる。
【0122】
なお、正極側および負極側の外部端子は、積層体の焼結後に形成することに限らず、焼成前に形成し、同時焼結に付してもよい。
【0123】
(絶縁部の形成)
絶縁部は、上記の「積層体ブロック形成」(焼成前)において、必要に応じて、例えば以下のように形成することができる。
【0124】
固体電解質および/または絶縁材、結着剤、有機バインダー、溶剤および任意の添加剤などを混合して絶縁用ペースト(又は電極分離用ペーストもしくは余白用ペーストとも称する)を調製する。
【0125】
例えば
図5(上段)に示す形状の絶縁部24aなどは、例えば
図10に示す手順などに従って形成することができる。
(A)
固体電解質を含むスラリーから形成されたシートP
1上に絶縁用ペーストP
2を印刷する。このとき所望の「スリーブ状」の部分が形成されるように絶縁用ペーストP
2を印刷することが好ましい。
(B)
シートP
1およびペーストP
2の一部(「スリーブ状」の部分となるところ)に電極ペースト(正極用ペーストまたは負極用ペースト)P
3を印刷する。
(C)
ペーストP
2およびペーストP
3の全面に必要に応じて集電層(ペースト)P
4を印刷する。
(D)
集電層P
4の上に電極ペーストP
5を印刷する(電極ペーストP
5は電極ペーストP
3と同一の極性である)。このとき所望の「スリーブ状」の部分が形成され得るように電極ペーストP
5を印刷することが好ましい。
(E)
集電層P
4およびペーストP
5の一部(「スリーブ状」の部分で覆われるところ)に絶縁用ペーストP
6を印刷する。ここでペーストP
6はペーストP
2と同一であることが好ましい。
【0126】
このようにして、例えば
図5(上段)に示す形状の絶縁部を最終的には焼成により形成することができるが、絶縁部の形成は上記の方法により限定されるものではない。
【0127】
例えば
図5(下段)に示す形状の絶縁部24などは、例えば
図11に示す手順などに従って形成することができる。
(A)
固体電解質を含むスラリーから形成されたシートQ
1上に絶縁用ペーストQ
2を印刷する。このとき所望の「スリーブ状」の部分が形成され得るように絶縁用ペーストを印刷することが好ましい。
(B)
シートQ
1およびペーストQ
2の一部(「スリーブ状」の部分となるところ)に電極ペースト(正極用ペーストまたは負極用ペースト)Q
3を印刷する。
(C)
ペーストQ
2およびペーストQ
3の一部(「スリーブ状」の部分で覆われるところ)に絶縁用ペーストQ
4を印刷する。ここでペーストQ
4はペーストQ
2と同一であることが好ましい。
【0128】
このようにして、例えば
図5(下段)に示す形状の絶縁部を最終的には焼成により形成することができる。しかし、絶縁部の形成は上記の方法により限定されるものではない。
【0129】
上述の手順に従って絶縁部を形成することで様々なバリエーションの絶縁部を形成することができる。
【0130】
以上の如くの工程を経ることによって、最終的に所望の固体電池を得ることができるが、固体電池の製造方法は上記の製造方法に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の固体電池は、電池使用または蓄電が想定され得る様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明の固体電池は、電気・電子機器などが使用され得る電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパー、ウェアラブルデバイス、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などに利用することができる。
【符号の説明】
【0132】
1,21,31,41,110,210 電極層(正極層)
1’,21’,31’,41’ 活物質部(正極活物質部)
2,22,32,42,120,220 電極層(負極層)
2’,22’,32’,42’ 活物質部(負極活物質部)
3,23,33,43,130,230 固体電解質層
4,24,34,44,140,240 絶縁部
4a,24a,34a,44a,240a 絶縁部(正極側)
4b,24b,34b,44b,240b 絶縁部(負極側)
5,25,35,45,150,250 固体電池積層体
6 外部端子
6A,26A,36A,46A,160A,260A 正極端子
6B,26B,36B,46B,160B,260B 負極端子
10,20,30,40,100,200 固体電池
21a,31a,41a 正極活物質部(上側)
21b,31b,41b 正極活物質部(下側)
21c,31c,41c,211 正極集電層
X 境界領域
Xa 境界領域(正極側)
Xb 境界領域(負極側)
S スリーブ状の部分
NS 非スリーブ状の部分
F 電極層が絶縁部で覆われていない部分