(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】生体センサ及び生体状態判別方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20241210BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20241210BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20241210BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20241210BHJP
【FI】
A61B5/00 N
A61B5/16 110
A61B10/00 E
G01N21/3563
(21)【出願番号】P 2022541140
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2021023292
(87)【国際公開番号】W WO2022030116
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2020134690
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦史
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-049271(JP,A)
【文献】特表2019-503827(JP,A)
【文献】特開平04-307071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0365299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/16
A61B 10/00
G01N 21/3563
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する照射系と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光する受光系と、
前記受光系から出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する処理系と、
を備
え、
前記処理系は、前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第1の分布の特徴量から、前記生体の状態を判別し、
前記第1の分布の特徴量は、前記部位毎の信号の信号値が基準値以下の信号数である、生体センサ。
【請求項2】
前記基準値は、前記部位毎の信号の信号値の平均値である、請求項
1に記載の生体センサ。
【請求項3】
水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する照射系と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光する受光系と、
前記受光系から出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する処理系と、
を備
え、
前記処理系は、前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第1の分布の特徴量から、前記生体の状態を判別し、
前記第1の分布の特徴量は、前記部位毎の信号の信号値の中央値、平均値又は最頻値である、生体センサ。
【請求項4】
前記処理系は、前記複数部位自体の反射率分布に応じた前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第2の分布を更に用いて、前記生体の状態を判別する、請求項
1~3のいずれか一項に記載の生体センサ。
【請求項5】
前記処理系は、前記第1及び第2の分布の特徴量を比較して、前記生体の状態を判別する、請求項
4に記載の生体センサ。
【請求項6】
前記第2の分布の特徴量は、前記第1の分布の特徴量に対応する特徴量である、請求項
5に記載の生体センサ。
【請求項7】
水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する照射系と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光する受光系と、
前記受光系から出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する処理系と、
を備
え、
前記処理系は、前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第1の分布の特徴量と、前記複数部位自体の反射率分布に応じた前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第2の分布の特徴量とを比較して、前記生体の状態を判別し、
前記第1の分布の特徴量は、前記第1の分布における前記部位毎の信号のうち信号値が複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率であり、
前記第2の分布の特徴量は、前記第2の分布における前記部位毎の信号のうち信号値が前記複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率である、生体センサ。
【請求項8】
水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する照射系と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光する受光系と、
前記受光系から出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する処理系と、
を備
え、
前記受光系は、
前記複数部位にそれぞれ対応する複数の受光素子を含む受光素子アレイと、
前記複数の受光素子に対応する光学系と、
を含み、
前記光学系は、前記照射系から照射され前記複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を該部位に対応する前記受光素子に導く、生体センサ。
【請求項9】
前記照射光は、前記波長帯域内の波長の光のみを含み、
前記光学系は、前記照射系から照射され対応する前記部位で反射された前記波長帯域内の波長の光を対応する前記受光素子に導く光学部材を有する、請求項
8に記載の生体センサ。
【請求項10】
前記照射光は、前記波長帯域内の波長の光及び前記波長帯域外の波長の光を含み、
前記光学系は、前記照射系から照射され前記複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を選択的に通過させる波長選択フィルタを有する、請求項
8に記載の生体センサ。
【請求項11】
前記光学系は、前記波長選択フィルタを通過した前記波長帯域内の波長の光を対応する受光素子に導く光学部材を有する、請求項
10に記載の生体センサ。
【請求項12】
前記光学系は、前記波長帯域内の波長の光を前記波長選択フィルタを介して対応する受光素子に導く光学部材を有する、請求項
10に記載の生体センサ。
【請求項13】
前記照射系は、
前記波長帯域内の波長の光及び前記波長帯域外の波長の光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記波長帯域内の光及び前記波長帯域外の光のうち前記波長帯域内の光を選択的に通過させる波長選択フィルタと、
を有する、請求項
8に記載の生体センサ。
【請求項14】
前記光学系は、前記波長選択フィルタを通過して対応する前記部位で反射された前記波長帯域内の波長の光を対応する受光素子に導く光学部材を有する、請求項
13に記載の生体センサ。
【請求項15】
前記照射系は、前記複数の受光素子のうち隣り合う2つの前記受光素子間に配置され、前記波長帯域内の波長の光を含む光を出射する光源を少なくとも1つ含む、請求項
8に記載の生体センサ。
【請求項16】
前記光学系と前記生体との間に配置される導光板を更に備え、
前記照射系は、前記波長帯域内の波長の光を含む光を出射する光源を含み、
前記導光板は、前記光源から出射された光のうち少なくとも前記波長帯域内の波長の光を導光し、該波長帯域内の光を前記複数部位の各々に入射させる、請求項
8に記載の生体センサ。
【請求項17】
前記導光板は、前記波長帯域内の波長の光に対して透明である、請求項
16に記載の生体センサ。
【請求項18】
前記導光板は、前記複数の受光素子にそれぞれ対応する複数の回折部を前記光学系側に有し、
前記複数の回折部の各々は、入射された前記波長帯域内の波長の光を対応する前記部位に向けて回折する、請求項
16又は17に記載の生体センサ。
【請求項19】
前記受光素子アレイと前記生体との間に配置される円偏光板を更に備える、請求項
8~18のいずれか一項に記載の生体センサ。
【請求項20】
水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する照射系と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光する受光系と、
前記受光系から出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する処理系と、
を備
え、
前記生体の状態は、前記部位毎の発汗状況から推定される精神状態である、生体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に係る技術(以下「本技術」とも呼ぶ)は、生体センサ及び生体状態判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体に光を照射し、該生体からの反射光を撮像して、該生体の水分分布を可視化する検査方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検査方法を用いても、生体の状態を簡易に判別することが困難であった。
【0005】
そこで、本技術は、生体の状態を簡易に判別することができる生体センサ及び生体状態判別方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する照射系と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光する受光系と、
前記受光系から出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する処理系と、
を備える、生体センサを提供する。
前記処理系は、前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第1の分布を用いて、前記生体の状態を判別してもよい。
前記処理系は、前記第1の分布の特徴量から、前記生体の状態を判別してもよい。
前記第1の分布の特徴量は、前記部位毎の信号の信号値が基準値以下の信号数であってもよい。
前記基準値は、前記部位毎の信号の信号値の平均値であってもよい。
前記第1の分布の特徴量は、前記部位毎の信号の信号値の中央値、平均値又は最頻値であってもよい。
前記処理系は、前記複数部位自体の反射率分布に応じた前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第2の分布を更に用いて、前記生体の状態を判別してもよい。
前記処理系は、前記第1及び第2の分布の特徴量を比較して、前記生体の状態を判別してもよい。
前記第2の分布の特徴量は、前記第1の分布の特徴量に対応する特徴量であってもよい。
前記第1の分布の特徴量は、前記第1の分布における前記部位毎の信号のうち信号値が複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率であり、前記第2の分布の特徴量は、前記第2の分布における前記部位毎の信号のうち信号値が前記複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率であってもよい。
前記受光系は、前記複数部位にそれぞれ対応する複数の受光素子を含む受光素子アレイと、前記複数の受光素子に対応する光学系と、を含み、前記光学系は、前記照射系から照射され前記複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を該部位に対応する前記受光素子に導いてもよい。
前記照射光は、前記波長帯域内の波長の光のみを含み、前記光学系は、前記照射系から照射され対応する前記部位で反射された前記波長帯域内の波長の光を対応する前記受光素子に導く光学部材を有していてもよい。
前記照射光は、前記波長帯域内の波長の光及び前記波長帯域外の波長の光を含み、前記光学系は、前記照射系から照射され前記複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を選択的に通過させる波長選択フィルタを有していてもよい。
前記光学系は、前記波長選択フィルタを通過した前記波長帯域内の波長の光を対応する受光素子に導く光学部材を有していてもよい。
前記光学系は、前記波長帯域内の波長の光を前記波長選択フィルタを介して対応する受光素子に導く光学部材を有していてもよい。
前記照射系は、前記波長帯域内の波長の光及び前記波長帯域外の波長の光を出射する光源と、前記光源から出射された前記波長帯域内の光及び前記波長帯域外の光のうち前記波長帯域内の光を選択的に通過させる波長選択フィルタと、を有していてもよい。
前記光学系は、前記波長選択フィルタを通過して対応する前記部位で反射された前記波長帯域内の波長の光を対応する受光素子に導く光学部材を有していてもよい。
前記照射系は、前記複数の受光素子のうち隣り合う2つの前記受光素子間に配置され、前記波長帯域内の波長の光を含む光を出射する光源を少なくとも1つ含んでいてもよい。
前記光学系と前記生体との間に配置される導光板を更に備え、前記照射系は、前記波長帯域内の波長の光を含む光を出射する光源を含み、前記導光板は、前記光源から出射された光のうち少なくとも前記波長帯域内の波長の光を導光し、該波長帯域内の光を前記複数部位の各々に入射させてもよい。
前記導光板は、前記波長帯域内の波長の光に対して透明であってもよい。
前記導光板は、前記複数の受光素子にそれぞれ対応する複数の回折部を前記光学系側に有し、前記複数の回折部の各々は、入射された前記波長帯域内の波長の光を対応する前記部位に向けて回折してもよい。
前記受光素子アレイと前記生体との間に配置される円偏光板を更に備えていてもよい。
前記生体の状態は、前記部位毎の発汗状況から推定される精神状態であってもよい。
本技術は、
水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する工程と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光して前記部位毎の信号を出力する工程と、
前記出力する工程で出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する工程と、
を含む、生体状態判別方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本技術の一実施形態の実施例1に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図2】本技術の一実施形態の実施例1に係る生体センサの機能例を示すブロック図である。
【
図3】第1の分布及び第2の分布を示すグラフである。
【
図4】
図3に第1の分布及び第2の分布の信号値の平均値を表記した図である。
【
図5】
図3に第1の分布及び第2の分布の信号値の中央値を表記した図である。
【
図6】
図3に第1の分布及び第2の分布の信号値の最頻値を表記した図である。
【
図7】生体状態判別処理1を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本技術の一実施形態の実施例1の変形例に係る生体センサの機能例を示すブロック図である。
【
図9】生体状態判別処理2を説明するためのフローチャートである。
【
図10】本技術の一実施形態の実施例2に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図11】本技術の一実施形態の実施例3に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図12】本技術の一実施形態の実施例4に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図13】本技術の一実施形態の実施例5に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図14】本技術の一実施形態の実施例6に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図15】本技術の一実施形態の実施例7に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図16】本技術の一実施形態の実施例8に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図17】本技術の一実施形態の実施例9に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図18】本技術の一実施形態の実施例10に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図19】本技術の一実施形態の実施例11に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図20】本技術の一実施形態の実施例12に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図21】本技術の一実施形態の実施例13に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図22】本技術の一実施形態の実施例14に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図23】本技術の一実施形態の実施例15に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図24】本技術の一実施形態の実施例16に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図25】本技術の一実施形態の実施例17に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図26】本技術の一実施形態の実施例18に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図27】本技術の一実施形態の実施例19に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図28】本技術の一実施形態の実施例20に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【
図29】本技術の一実施形態の実施例3の変形例に係る生体センサの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照しながら、本技術の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。本明細書において、本技術に係る生体センサ及び生体状態判別方法の各々が複数の効果を奏することが記載される場合でも、本技術に係る生体センサ及び生体状態判別方法の各々は、少なくとも1つの効果を奏すればよい。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0009】
また、以下の順序で説明を行う。
1.導入
2.本技術の一実施形態に係る生体センサ
3.本技術の一実施形態の実施例1に係る生体センサの構成
4.生体状態判別処理1
5.本技術の一実施形態の実施例1に係る生体センサの効果及び生体状態判別方法の効果
6.本技術の一実施形態の実施例1の変形例に係る生体センサの構成
7.生体状態判別処理2
8.本技術の一実施形態の実施例1の変形例に係る生体センサの効果
9.本技術の一実施形態の実施例2~20に係る生体センサ
10.本技術の変形例
【0010】
1.<導入>
従来、例えば人の精神状態を計測する手段として発汗計測装置が広く用いられている。この発汗計測装置として、例えばカプセルで皮膚を覆い、発汗による湿度変化を観測する換気カプセル式計測装置が知られている。また、この発汗計測装置として、例えば電気的に発汗現象を計測する皮膚電気活動(EDA)計測装置も用いられている。EDA計測装置は、人の精神的な活動により皮膚のエクリン線などの器官が影響を受けた結果、皮膚のインピーダンスやコンダクタンスが変化する現象を用いるものである。EDA計測装置は、換気カプセル式計測装置に比べて電極を2つ皮膚に貼り付けるだけの簡単な実装により実現できるため、広く用いられている。
しかし、換気カプセル式計測装置及びEDA計測装置の何れの場合も皮膚に計測部を当接させる必要があり、装着時に不快感が生じるという問題があった。このため、これらの発汗計測装置は一般には普及しておらず病院など専門機関で使用されることが多い。このような使用環境に制限が生じる発汗計測装置を気軽に(簡易に)不快感なく使用することができるようになれば人の精神状態に応じて提供するサービスを動的に変更するなどの新たな製品市場が広がってくると期待できる。
そこで、発明者は、鋭意検討の末、以下に説明するような、生体(例えば人体)の状態(例えば生体の発汗状況から推定される精神状態)を簡易に判別可能な非接触型の生体センサを開発するに至った。
【0011】
2.<本技術の一実施形態に係る生体センサ>
以下、本技術の一実施形態に係る生体センサについて説明する。
本技術の一実施形態に係る生体センサは、例えば、計測部が、生体(例えば人体)の表面(例えば皮膚)に光を照射し、反射光を受光することにより、生体の状態(例えば人の発汗状況に応じた精神状態)を判別する光学式のセンサである。
詳述すると、一実施形態に係る生体センサは、少なくとも計測部が生体に対して非接触の状態で用いられる非接触型の生体センサである。
本技術に係る生体センサの使用形態としては、例えばリストバンド型、イヤリング型、指輪型、ネックレス型、貼付型、サポーター型等の生体に対して装着されて用いられる装着型の他、生体に対してかざすことにより用いられる携帯型のもの等、多種多様な形態が想定される。
【0012】
3.<本技術の一実施形態の実施例1に係る生体センサの構成>
図1は、一実施形態の実施例1に係る生体センサ10-1の構成を模式的に示す図である。
図1では、生体センサ10-1の計測部(後述する照射系100-1及び受光系200-1)が断面図で示されている。
図2は、一実施形態の実施例1に係る生体センサ10-1の機能例1を示すブロック図である。
実施例1の生体センサ10-1は、
図1に示すように、照射系100-1、受光系200-1及び処理系300-1を備える。
照射系100-1及び受光系200-1は、例えば、一体的に設けられている。処理系300-1は、照射系100-1及び受光系200-1と一体的に設けられてもよいし、別体であってもよい。
生体センサ10-1は、
図1に示すように、照射系100-1と受光系200-1とから成る計測部が生体LBに対して非接触の状態(例えば近接した状態)で使用される。
なお、生体LBは、例えば人体の他、人間以外の動物等の身体も含む。
【0013】
(照射系)
照射系100-1は、水の吸収に関するピーク波長λPを含む波長帯域WB内の波長の光を含む照射光ILを生体LB(詳しくは、生体LB表面)に照射する。
水の吸収に関するピーク波長λPは、水の吸収スペクトルを示すグラフ(横軸:波長、縦軸:吸光度)において、ピーク(極大値)をとる波長である。
波長帯域WBは、一例として、1300nm~2100nmの波長範囲に複数(例えば2つ)存在する、相対的に水の吸収性が高い波長帯域である。
上記2つの波長帯域WBの一方が、ピーク波長λP1(例えば1450nm)を含む第1の波長帯域WB1である。第1の波長帯域WB1は、例えば、λP1-100nm≦WB1≦λP1+100nmであることが好ましく、λP1-50nm≦WB1≦λP1+50nmであることがより好ましい。
上記2つの波長帯域WBの他方が、ピーク波長λP2(例えば1940nm)を含む第2の波長帯域WB2である。第2の波長帯域WB2は、例えば、λP2-100nm≦WB2≦λP2+100nmであることが好ましく、λP2-50nm≦WB2≦λP2+50nmであることがより好ましい。
【0014】
照射系100-1は、光源110aを含む。光源110aは、例えば、ハロゲンランプ、LED(発光ダイオード)、レーザ等である。光源110aが出射する光は、可視光でも非可視光でもよいが、非可視光(例えば赤外光)が好ましい。
【0015】
光源110aは、一例として、
図1に示すように、受光系200-1を生体LB表面に対して正対させたときに生体LB表面に対して傾斜する方向から光を出射するように受光系200-1に対して位置決めされている。
【0016】
光源110aは、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を出射する。ここでは、光源110aから出射された光が照射光ILである。すなわち、照射光ILは、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を含む。
照射光ILは、第1及び第2の波長帯域WB1、WB2の少なくとも一方内の波長の光を含んでいればよい。
詳述すると、照射光ILは、第1の波長帯域WB1内の少なくとも1つの波長の光を含んでいてもよいし、第2の波長帯域WB2内の少なくとも1つの波長の光を含んでいてもよいし、第1の波長帯域WB1内の少なくとも1つの波長の光及び第2の波長帯域WB2内の少なくとも1つの波長の光を含んでいてもよい。
【0017】
(受光系)
受光系200-1は、照射系100-1から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を個別に受光する。
受光系200-1は、複数(例えば)の受光素子210aを含む受光素子アレイ210と、複数の受光素子210aに対応する光学系220-1とを含む。
【0018】
複数の受光素子210aは、一例として、2次元アレイ状に配列されている。
複数の受光素子210aは、生体LBの複数部位(例えばLB1~LB6)にそれぞれ対応する。
各受光素子210aは、例えば、1400nm~2000nmの波長範囲で感度を持つ。
各受光素子210aは、例えば、InGaAs、PbSe、InSb等の材料からなる画素センサである。すなわち、受光素子アレイ210は、複数の画素センサを含む画像センサ(エリアセンサ)である。
例えば比較的安価なInGaAsからなる画素センサでは、略1700nm以下の波長に対して感度を有する。この場合、照射光ILが第1の波長帯域WB1内の波長の光を含んでいればよい。
各受光素子210aは、入射光を光電変換し、電気信号を出力する。
受光素子210aとしては、例えばPD(フォトダイオード)、フォトトランジスタ等が用いられる。
受光素子は、例えば「受光器」、「光検出器」等とも呼ばれる。
【0019】
(光学系)
光学系220-1は、照射系100-1から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く。
光学系220-1は、複数の受光レンズ220a1を含むレンズアレイ220a(光学部材)と、波長選択フィルタ220bとを有する。
光学系220-1では、レンズアレイ220aが受光素子アレイ210側に配置され、且つ、波長選択フィルタ220bが生体LB側に配置されるようにレンズアレイ220aと波長選択フィルタ220bとが互いに隣接して配置されている。
【0020】
波長選択フィルタ220bは、照射系100-1から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を選択的に通過させる。波長選択フィルタ220bは、一例として波長帯域WBを通過帯域とするバンドパスフィルタである。
【0021】
レンズアレイ220aは、波長選択フィルタ220bの生体LB側とは反対側に配置されている。レンズアレイ220aは、波長選択フィルタ220bを通過した波長帯域WB内の波長の光を対応する受光素子210aに導く。
レンズアレイ220aの複数の受光レンズ220a1は、一例として、対応する複数の受光素子210aに対向するように2次元アレイ状に配列されている。
各受光レンズ220a1は、対応する受光素子210a側に凸となるレンズであり、波長選択フィルタ220bを介した、生体LBの対応する部位からの光を対応する受光素子210aに集光(好ましくは結像)する。
すなわち、各受光素子210aには、対応する受光レンズ220a1の集光作用により生体LBの対応する部位からの光のみが入射される。このため、各受光素子210aに生体LBの対応しない部位からの光が入射されること(クロストーク)が抑制される。
【0022】
(非接触による発汗計測のメカニズム)
ところで、汗は、周知のとおり、生体表面から満遍なく湧き出るものではなく、生体表面の汗腺と呼ばれる器官から離散的に湧き出る。このため、生体表面の複数部位のうち汗腺がある部位は、水(汗)による吸光により、汗腺がない部位に比べて実質的に反射率が低下する。この反射率低下は、汗腺の数が多い部位ほど大きくなる。生体の各部位の反射率が低下するほど、該部位からの反射光の光量が低下し、該部位に対応する受光素子での受光光量は低下することとなる。
【0023】
詳述すると、一例として、
図1において、生体LBの、紙面に向かって最も左側の部位LB1には2つの汗腺があり、この2つの汗腺から汗Wが湧き出ている。この場合、該部位に対応する受光素子210aでの受光光量(出力信号の信号値)は、この2つの汗腺から汗Wが湧き出ていない場合に比べて、大きく低下することとなる。
図1において、生体LBの、紙面に向かって最も左側の部位から数えて2番目の部位LB2、4番目の部位LB4及び5番目の部位LB5には汗腺がなく、これらの各部位に対応する受光素子210aでの受光光量は変化しない。
図1において、生体LBの、紙面に向かって最も左側の部位から数えて3番目の部位LB3及び6番目の部位LB6には汗腺が1つずつあり、各汗腺から汗Wが湧き出ている。この場合、これらの各部位に対応する受光素子210aでの受光光量は、各汗腺から汗Wが湧き出ていない場合に比べて、低下することとなる。
結果として、LB1に対応する受光素子210aでの受光光量の低下が、LB3及びLB6の各々に対応する受光素子210aでの受光光量の低下よりも大きくなると推定される。
【0024】
(非接触による発汗計測の問題点)
以上のように非接触で生体LBの部位毎の発汗計測を行うことは可能であるが、複数の受光素子210aの受光光量を単純に比較しても、対応する複数部位の発汗状況を比較することは困難である。その理由は、複数の受光素子210aと生体LBとの生体LB表面に沿う方向の相対位置を厳密に一致させ続けることが困難だからである。一般に人の汗腺密度は130~600個/cm2であり、平均的な汗線間隔は0.4~0.8mmと算出される。よって、上記相対位置が1mm程度ずれただけでも、生体LBの複数部位と複数の受光素子210aとの対応関係が変わってしまうので、各受光素子210aの受光光量を取得しても該受光素子210aに一対一で対応する部位の発汗状況を取得したことにはならない。
【0025】
そこで、受光系200-1から出力された生体LBの部位毎の信号に関する統計をとれば、生体LBの複数部位の全体の発汗状況(発汗傾向)が分かり、該発汗状況から生体LBの状態(例えば精神状態)を判別することが可能となる。
【0026】
補足すると、一実施形態に係る生体センサでは、精神性発汗のような微量な発汗現象の際には汗腺位置で離散的に汗が表出することを利用する。その際、アレイ状に配列された複数の受光素子にて計測を行うが、個々の受光素子の出力値を観測するのではなく、複数の受光素子の出力全体の統計量を用いて発汗量を測定する。
例えば発汗の生じていない皮膚を観測する場合、複数の受光素子のそれぞれからの出力のヒストグラムを作成すると平均的な皮膚の反射率分布に従った略正規分布形状の出力分布となる。これに対して、発汗が生じると、汗腺を有する部位からの反射光を受光する受光素子については汗の水分により反射率が低下する。このため、反射率分布は略正規分布から低出力側へと重心が移動することとなる。さらに発汗が進めば出力はさらに低出力側へとシフトし、最終的に皮膚が汗で満たされればすべての受光素子の出力が0となる。
【0027】
(処理系)
処理系300-1は、受光系200-1から出力された生体LBの部位毎の信号に関する統計に基づいて、生体LBの状態を判別する。
生体LBの状態は、例えば、生体LBの部位毎の発汗状況から推定される精神状態である。
【0028】
処理系300-1は、一例として、生体LBの部位毎の信号の信号値毎の信号数(信号の数)の分布である第1の分布D1(
図3参照)を用いて、生体の状態を判別する。
図3において、横軸は信号値を表し、縦軸は信号数を表す。
ここで、
図3に示すように、生体LBが発汗していないと仮定したときの、生体LBの複数部位の各々の信号の信号値毎の信号数の分布は、該複数部位自体の反射率分布に応じた略正規分布(以下「第2の分布D2」と呼ぶ)となる。
これに対して、上述したように、第1の分布D1は、生体LBが発汗しているときの生体LBの部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布であるため、該部位自体の反射率に該部位に付着した汗Wによる吸光度(吸光率)が加味された分布、すなわち第2の分布に対して信号値が低くなる側にずれた分布となる。この場合、第1の分布の特徴量が、生体LBの発汗状況を示す指標となる。
そこで、処理系300-1は、第1の分布の特徴量から、生体LBの状態(例えば生体LBの発汗状況から推定される精神状態)を判別しうる。
【0029】
詳述すると、
図3において、第2の分布D2は信号値が約30を中心とした略正規分布の出力分布となっている。一方、第1の分布D1は、信号値の平均が約20に低下するとともに重心が第2の分布D2に対して信号値が低くなる側にずれている。
受光素子個々の出力を捉えることを行わず、すべての出力を統計的に処理することにより複雑な処理を行うことなく発汗現象の有無、発汗量を得ることができる。このような統計的な処理を行うことで、外光が入射する場合、皮膚の計測位置がずれた場合等の外的要因があっても発汗がない場合は略正規型の分布となり、低出力側に分布が変位した場合は変位量に応じた分だけ発汗が生じたことが分かる。このため、複数の受光素子を用いて統計的な処理を行うことによって外的要因によらず継続した発汗量の計測が可能となる。
【0030】
処理系300-1は、
図2に示すように、分布取得部300a、特徴量抽出部300b及び判別部300cを含む。処理系300-1は、例えばCPU、チップセット等のハードウェアにより実現される。
分布取得部300aは、第1の分布D1を取得する。
特徴量抽出部300bは、第1の分布D1からその特徴量を抽出する。
【0031】
第1の分布D1の特徴量は、例えば第1の分布D1の歪み(尖度、歪度)、分散、標準偏差等の第2の分布に対する第1の分布のずれを示すものであれば、如何なるものであってもよい。第1の分布の特徴量と、対応する第2の分布の特徴量との差が大きいほど、生体LBの発汗量が多く、例えば生体LBがより緊張した状態、よりストレスのある状態、より自律神経の乱れが生じた状態等と推定できる。
【0032】
例えば、第1の分布D1の特徴量は、
図4に示すように、第1の分布D1における生体LBの部位毎の信号の信号値の平均値S1
Aveであってもよい。この平均値S1
Aveは、第2の分布D2における生体LBの部位毎の信号の信号値の平均値S2
Aveよりも小さくなり、その値が小さいほど、生体LBにおいて発汗量が多いと推定される。
【0033】
例えば、第1の分布D1の特徴量は、第1の分布D1における生体LBの部位毎の信号の信号値が例えば平均値S1AVe(基準値)以下の信号数(信号の数)であってもよい。この信号数は、第2の分布D2における生体LBの部位毎の信号値が平均値S2Ave以下の信号数よりも大きくなり、その値が大きいほど、生体LBにおいて発汗量が多いと推定される。なお、上記基準値は、第1の分布D1における生体LBの部位毎の信号の信号値の平均値S1AVeに限らず、該信号値の最大値未満の値であればよい。
【0034】
例えば、第1の分布D1の特徴量は、
図5に示すように、生体LBの部位毎の信号の信号値の中央値S1
Meであってもよい。この中央値S1
Meは、第2の分布D2における生体LBの部位毎の信号の信号値の中央値S2
Meよりも小さくなり、その値が小さいほど、生体LBにおいて発汗量が多いと推定される。
【0035】
例えば、第1の分布D1の特徴量は、
図6に示すように、生体LBの部位毎の信号の信号値の最頻値S1
Mo(第1の分布における信号数がピークとなる信号値))であってもよい。この最頻値S1
Moは、第2の分布D2における生体LBの部位毎の信号の信号値の最頻値S2
Mo(第2の分布における信号数がピークとなる信号値))よりも小さくなり、その値が小さいほど、生体LBにおいて発汗量が多いと推定される。
【0036】
4.<生体状態判別処理1>
以下、生体センサ10-1を用いて実施される生体状態判別処理1について、
図7のフローチャートを参照して説明する。生体状態判別処理1は、本技術に係る生体状態判別方法の一例である。生体状態判別処理1は、例えば、生体LBに対して計測部が近接して対向した状態にある生体センサ10-1の電源がオンになったときに開始される。
【0037】
最初のステップS1では、照射系100-1が生体LBに照射光ILを照射する。具体的には、照射系100-1が光源110aを発光させて、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を含む照射光ILを生体LBに照射する。
【0038】
次のステップS2では、受光系200-1が、生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち水の吸収に関するピーク波長λPを含む波長帯域WB内の波長の光を個別に受光する。具体的には、生体LBの複数部位の各々に照射され反射された光(照射光IL)のうち波長帯域WB内の光が波長選択フィルタ220bを通過し、対応する受光レンズ220a1で対応する受光素子210aに集光される。
【0039】
次のステップS3では、受光系200-1が、生体LBの部位毎の信号を出力する。具体的には、複数の受光素子210aの各々が、受光した光を光電変換し、受光光量に応じた電気信号を出力する。
【0040】
次のステップS4では、処理系300-1が、第1の分布D1を取得する。具体的には、分布取得部300aが生体LBの部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布を取得する(
図3参照)。
【0041】
次のステップS5では、処理系300-1が、第1の分布D1の特徴量を抽出する。具体的には、特徴量抽出部300bが、第1の分布D1から、例えば平均値S1Ave、信号値が平均値S1Ave以下の信号数、中央値S1Me、最頻値S1Mo等を抽出する。
【0042】
次のステップS6では、処理系300-1が、第1の分布D1の特徴量から、生体LBの状態を判別する。
例えば、第1の分布D1の特徴量が平均値S1Aveである場合には、判別部300cが、その値が小さいほど(生体LBの発汗量が多いほど)生体LBがより緊張した状態にあると判断し、その値が大きいほど(生体LBの発汗量が少ないほど)生体LBがよりリラックスした状態にあると判断する。
例えば、第1の分布D1の特徴量が、信号値が平均値S1Ave以下の信号数である場合には、判別部300cが、該信号数が多いほど(生体LBの発汗量が多いほど)生体LBがより緊張した状態にあると判断し、該信号数が少ないほど(生体LBの発汗量が少ないほど)生体LBがよりリラックスした状態にあると判断する。
例えば、第1の分布の特徴量が中央値S1Meである場合には、判別部300cが、その値が小さいほど(生体LBの発汗量が多いほど)生体LBがより緊張した状態にあると判断し、その値が大きいほど(生体LBの発汗量が少ないほど)生体LBがよりリラックスした状態にあると判断する。
例えば、第1の分布の特徴量が最頻値S1Moである場合には、判別部300cが、その値が小さいほど(生体LBの発汗量が多いほど)生体LBがより緊張した状態にあると判断し、その値が大きいほど(生体LBの発汗量が少ないほど)生体LBがよりリラックスした状態にあると判断する。
なお、判別部300cは、以上のような判別の結果(例えば第1の分布の特徴量の大きさに応じた生体LBの精神状態)を段階評価的に出力してもよい。例えば、生体LBが最もリラックスした状態にある場合を1とし、最も緊張した状態にある場合を10とした10段階の判別結果を出力してもよい。
【0043】
最後のステップS7では、処理系300-1が、処理を終了するか否かを判断する。具体的には、処理系300-1は、例えば生体センサ10-1の電源がオフとなったときに処理を終了させる。ステップS7での判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS1に戻る。
【0044】
5.<本技術の一実施形態の実施例1に係る生体センサ及び生体状態判別方法の効果>
実施例1に係る生体センサ10-1は、水の吸収に関するピーク波長λPを含む波長帯域WB内の波長の光を含む照射光ILを生体LBに照射する照射系100-1と、照射系100-1から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を個別に受光する受光系200-1と、該受光系200-1から出力された部位毎の信号に関する統計に基づいて、生体LBの状態を判別する処理系300-1と、を備える。
これにより、生体LBの複数部位の各々での実質的な反射率(汗Wの有無、量を正確に反映する反射率)に応じた信号値の統計から生体LBの状態を判別できるので、生体LBの状態を簡易に判別することができる。
結果として、生体センサ10-1によれば、生体LBの状態を簡易に判別することができる生体センサを提供できる。
なお、波長帯域WB外の波長の光は相対的に水の吸収性が低いので、生体LBで反射された光のうち波長帯域WB外の光を受光素子アレイで受光しても、その受光結果は汗Wの有無、量を正確には反映しない。
【0045】
一方、上述したように受光素子毎の出力を得る方法では、生体センサと生体との間の相対位置の僅かなずれで、複数の受光素子と生体の複数部位との対応関係が変わってしまう。この対策として、受光素子アレイの出力を画像と見立ててトラッキングを行い、各汗腺の信号を追跡し継続した値を取得する方法が考えられる。しかし、このような方法を用いても、多大な演算量を要するため、生体の状態を簡易に判別可能な生体センサを実現することはできない。
【0046】
また、別の方法として受光素子アレイの計測値全体の平均値を発汗量として定義する方法もある。この場合、受光素子毎の出力は重要ではなく単に全体の反射率が低下すれば発汗量が増加したと考えることができる。このように構成すれば、受光素子は必ずしもアレイ状に配列される必要はなく、単一の受光素子でもよいことになる。しかし、このような場合、生体が動いた際にセンサ全体が皮膚から浮いて外光が入る、またはセンサ全体が横方向に移動して平均的な皮膚の反射率が変化するなどが生じた場合には継続した計測を行うことができない。
【0047】
人の精神状態を知りたいと考えた場合、病院や研究室などでの安静な場合のみを想定するのではなく、ウェアラブル機器として人に装着し、日常生活環境で発汗状態を計測することも求められるため外光の侵入などについては十分な対策が必要であり、さらなる改善が求められる。
本技術に係る生体センサは、トラッキングを行わず、かつ上述した計測値全体の平均値を用いるのと同様な簡便さで安定的に発汗計測を実現することができる。
【0048】
処理系300-1は、生体LBの部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第1の分布を用いて、生体LBの状態を判別する。これにより、生体LBの状態をより簡易に判別可能とすることができる。
【0049】
処理系300-1は、第1の分布D1の特徴量から、生体LBの状態を判別することが好ましい。これにより、生体LBの状態をより簡易かつ精度良く判別することができる。
【0050】
第1の分布D1の特徴量は、生体LBの部位毎の信号の信号値の平均値S1Ave、中央値SMe又は最頻値SMoであってもよい。これにより、例えば歪度を計算するよりも極めて簡易な処理で発汗量の指標を算出することができる。
【0051】
第1の分布D1の特徴量は、生体LBの部位毎の信号の信号値が基準値以下の信号数であってもよい。これにより、例えば歪度を計算するよりも極めて簡易な処理で発汗量の指標を算出することができる。この場合に、当該基準値は、例えば生体LBの部位毎の信号の信号値の平均値S1Aveであってもよいし、その他の値であってもよい。当該基準値が平均値S1Aveである場合には、極めて簡易に妥当な判別結果を得ることができる。
【0052】
受光系200-1は、生体LBの複数部位にそれぞれ対応する複数の受光素子210aを含む受光素子アレイ210と、複数の受光素子210aに対応する光学系220-1と、を含み、光学系220-1は、照射系100-1から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く。これにより、生体LBの各部位で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに確実に導くことができる。
【0053】
照射光ILは、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を含み、光学系220-1は、照射系100-1から照射され複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を選択的に通過させる波長選択フィルタ220bを有する。これにより、生体LBの各部位で反射された光のうち相対的に水の吸収性が低い、波長帯域WB外の波長の光を遮光することができる。
【0054】
光学系220-1は、波長選択フィルタ220bを通過した波長帯域WB内の波長の光を対応する受光素子210aに導く受光レンズ220a1を有する。これにより、生体LBの各部位で反射された光のうち波長選択フィルタ220bを通過した波長帯域WB内の波長の光を対応する受光素子210aに確実に導くことができる。
【0055】
生体LBの状態は、例えば、生体LBの部位毎の発汗状況から推定される精神状態である。これにより、生体LBの精神状態を簡易に判別できる生体センサ10-1を提供できる。
【0056】
本技術の一実施形態の実施例1の生体センサ10-1を用いる生体状態判別方法(例えば生体状態判別処理1)は、水の吸収に関するピーク波長λPを含む波長帯域WB内の波長の光を含む照射光ILを生体LBに照射する工程と、照射系100-1から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光を個別に受光して該部位毎の信号を出力する工程と、該出力する工程で出力された該部位毎の信号に関する統計に基づいて、生体LBの状態を判別する工程と、を含む。
これにより、複数部位の各々での実質的な反射率(汗Wの影響も反映する反射率)に応じた信号値の統計から生体LBの状態を判別できるので、生体LBの状態を簡易に判別することができる。
結果として、生体センサ10-1を用いる生体状態判別方法によれば、生体LBの状態を簡易に判別することができる。
【0057】
6.<本技術の一実施形態の実施例1の変形例に係る生体センサの構成>
実施例1の変形例に係る生体センサは、
図8に示すように、処理系の構成が異なる点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成(
図1参照)を有する。
変形例に係る生体センサの処理系300-2は、処理系300-1の構成(
図2参照)に加えて、記憶部300d及び比較部300eを有する。
【0058】
記憶部300dは、予め取得された第2の分布D2を記憶する。第2の分布D2は、予め、例えば安静且つリラックスした状態(発汗がない状態)にある生体LBに対して、変形例に係る生体センサを用いた計測を行うことにより取得されている。
記憶部300dは、例えばROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスク等により実現される。
【0059】
処理系300-2において、特徴量抽出部300bは、分布取得部300aで取得された第1の分布D1の特徴量を抽出するとともに、記憶部300dに記憶された第2の分布D2の特徴量(第1の分布D1の特徴量に対応する(同種の)特徴量)を抽出する。
【0060】
比較部300eは、特徴量抽出部300bで抽出された第1及び第2の分布D1、D2の特徴量を比較する。比較部300eは、例えばCPU等により担われる。
【0061】
処理系300-2において、判別部300cは、比較部300eでの比較結果に応じて、生体LBの状態を判別する。
7.<生体状態判別処理2>
以下、実施例1の変形例に係る生体センサを用いて実施される生体状態判別処理2について、
図9のフローチャートを参照して説明する。生体状態判別処理2は、本技術に係る生体状態判別方法の一例である。生体状態判別処理1は、例えば、生体LBに対して計測部が近接して対向した状態にある生体センサの電源がオンになったときに開始される。
【0062】
最初のステップS11では、照射系100-1が生体LBに照射光ILを照射する。具体的には、照射系100-1が光源110aを発光させて、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を含む照射光ILを生体LBに照射する。
【0063】
次のステップS12では、受光系200-1が、生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち水の吸収に関するピーク波長λPを含む波長帯域WB内の波長の光を個別に受光する。具体的には、生体LBの複数部位の各々に照射され反射された光(照射光IL)のうち波長帯域WB内の光が波長選択フィルタ220bを通過し、対応する受光レンズ220a1で対応する受光素子210aに集光される。
【0064】
次のステップS13では、受光系200-1が、生体LBの部位毎の信号を出力する。具体的には、複数の受光素子210aの各々が、受光した光を光電変換し、受光光量に応じた電気信号を処理系300-2に出力する。
【0065】
次のステップS14では、処理系300-2が、第1の分布D1を取得する。具体的には、分布取得部300aが、入力された生体LBの部位毎の信号から、生体LBの部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布(
図3参照)を取得し、その取得結果を特徴量抽出部300bに出力する。
【0066】
次のステップS15では、処理系300-2が、第1及び第2の分布D1、D2の特徴量を抽出する。具体的には、特徴量抽出部300bが、入力された第1の分布D1の特徴量及び記憶部300dに記憶された第2の分布D2の特徴量を抽出し、第1及び第2の分布D1、D2の特徴量を比較部300eに出力する。
例えば、特徴量抽出部300bが、第1の分布D1から平均値S1
Aveを抽出し、且つ、第2の分布D2から平均値S2
Aveを抽出する(
図4参照)。
例えば、特徴量抽出部300bが、第1の分布D1から信号値が基準値(例えば平均値S1
Ave)以下の信号数を抽出し、且つ、第2の分布D2から信号値が基準値(例えば平均値S2
Ave)以下の信号数を抽出する。
例えば、特徴量抽出部300bが、第1の分布D1から中央値S1
Meを抽出し、且つ、第2の分布D2から中央値S2
Meを抽出する(
図5参照)。
例えば、特徴量抽出部300bが、第1の分布D1から最頻値S1
Moを抽出し、且つ、第2の分布D2から最頻値S2
Moを抽出する(
図6参照)。
例えば、特徴量抽出部300bが、第1の分布D1から信号値が複数の値(例えば
図3において15と45)にそれぞれ一致する信号の数(例えば
図3において400と200)の比率(例えば0.5)を抽出し、且つ、第2の分布D2から信号値が該複数の値(例えば
図3において15と45)にそれぞれ一致する信号の数(例えば
図3において250と320)の比率(例えば0.78)を抽出する。
【0067】
次のステップS16では、処理系300-2が、第1及び第2の分布D1、D2の特徴量を比較する。具体的には、比較部300eが、入力された第1及び第2の分布D1、D2の対応する特徴量を比較し、その比較結果(例えば特徴量の差分、比等)を判別部300cに出力する。
例えば比較部300eが、入力された平均値S1Aveと平均値S2Aveとの差分をとり、該差分を判別部300cに出力する。
例えば比較部300eが、入力された、信号値が平均値S1Ave以下の信号数と信号値が平均値S2Ave以下の信号数との差分とり、該差分を判別部300cに出力する。
例えば比較部300eが、入力された中央値S1Meと中央値S2Meとの差分をとり、該差分を判別部300cに出力する。
例えば比較部300eが、入力された最頻値S1Moと最頻値S2Moとの差分をとり、該差分を判別部300cに出力する。
なお、判別部300cは、以上のような判別の結果(例えば差分の大きさに応じた生体LBの精神状態)を段階評価的に出力してもよい。例えば、生体LBが最もリラックスした状態にある場合を1とし、最も緊張した状態にある場合を10とした10段階の判別結果を出力してもよい。
【0068】
次のステップS17では、処理系300-2が、生体LBの状態を判別する。具体的には、判別部300cが、入力された比較結果(例えば特徴量の差分、比等)に応じて、生体LBの状態を判別する。
例えば、判別部300cは、入力された特徴量の差分が大きいほど生体LBがより緊張した状態にあると判別し、該差分が小さいほど生体LBがよりリラックスした状態にあると判別する。
【0069】
最後のステップS18では、処理系300-2が、処理を終了するか否かを判断する。具体的には、処理系300-2は、例えば実施例1の変形例に係る生体センサの電源がオフとなったときに処理を終了させる。ステップS18での判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS11に戻る。
【0070】
なお、実施例1の変形例に係る生体センサでは、第2の分布D2が予め記憶部300dに記憶されているが、これに代えて又は加えて、当該生体センサを用いて第2の分布D2を随時取得、更新することとしてもよい。
実施例1の変形例に係る生体センサでは、判別部300cが比較部300eの機能も有していてもよい。この場合、比較部300eは不要である。
【0071】
8.<本技術の一実施形態の実施例1の変形例に係る生体センサの効果>
実施例1の変形例に係る生体センサは、処理系300-2が、第1及び第2の分布D1D、D2の特徴量を比較して、生体LBの状態(例えば生体LBの発汗状況に応じた精神状態)を判別する。これにより、生体LBの状態をより精度良く判別することができる。
第2の分布D2の特徴量は、第1の分布D1の特徴量に対応する(同種の)特徴量である。
例えば、第1の分布D1の特徴量は、第1の分布D1における部位毎の信号のうち信号値が複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率であり、第2の分布D2の特徴量は、第2の分布D2における部位毎の信号のうち信号値が複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率であってもよい。
【0072】
9.<本技術の一実施形態の実施例2~20に係る生体センサ>
以下、一実施形態の実施例2~20に係る生体センサ10-2~10~20について
図10~
図28を参照して説明する。
【0073】
(実施例2に係る生体センサ)
図10に示すように、実施例2に係る生体センサ10-2は、受光系の光学系におけるレンズアレイ220aと波長選択フィルタ220bとの位置関係が実施例1に係る生体センサ10-1と逆になっている点を除いて、該生体センサ10-1と同様の構成を有する。
生体センサ10-2は、受光系200-2の光学系220-2のレンズアレイ220aと、受光素子アレイ210との間に光学系220-2の波長選択フィルタ220bが配置されている。
すなわち、光学系220-2では、レンズアレイ220aが生体LB側に配置され、且つ、波長選択フィルタ220bが受光素子アレイ210側に配置されるようにレンズアレイ220aと波長選択フィルタ220bとが互いに隣接して配置されている。
以上のように、実施例2に係る生体センサ10-2は、光学系220-2が、波長帯域WB内の波長の光を波長選択フィルタ220bを介して対応する受光素子210aに導く受光レンズ220a1を有する。
以上説明した実施例2に係る生体センサ10-2でも、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(実施例3に係る生体センサ)
図11に示すように、実施例3に係る生体センサ10-4は、受光系に代えて照射系が波長選択フィルタを有している点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成を有する。
生体センサ10-4の照射系100-4では、光源110aと生体LBとの間の光路上に配置される波長選択フィルタ120を有している。波長選択フィルタ120は、実施例1に係る生体センサ10-1の波長選択フィルタ220bと実質的に同一である。
【0075】
すなわち、照射系100-4は、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を出射する光源110aと、該光源110aから出射された波長帯域WB内の光及び波長帯域WB外の光のうち波長帯域WB内の光を選択的に通過させる波長選択フィルタ120と、を有する。
生体センサ10-4の受光系200-4の光学系220-4は、波長選択フィルタ120を通過して生体LBの対応する部位で反射された波長帯域WB内の波長の光を対応する受光素子210aに導く、複数の受光レンズ220a1を含むレンズアレイ220aを有する。
以上のように構成される生体センサ10-4では、光源110aから出射された波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光のうち波長帯域WB内の波長の光が波長選択フィルタ120を通過して照射光として生体LBに照射される。生体LBに照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光は、再び波長選択フィルタ120を通過し、対応する受光レンズ220a1を介して対応する受光素子210aに導かれる。
以上説明した実施例3に係る生体センサ10-4も、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の効果を奏する。
【0076】
(実施例4に係る生体センサ)
図12に示すように、実施例4に係る生体センサ10-5は、照射系100-5が波長帯域WB内の光のみを出射する光源110bを有している点、及び受光系200-4が波長選択フィルタを有していない点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成を有する。
【0077】
すなわち、生体センサ10-5では、照射光は波長帯域WB内の波長の光のみを含み、受光系200-4の光学系220-4は、照射系100-5から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く受光レンズ220a1を含むレンズアレイ220aを有する。
【0078】
以上のように構成される生体センサ10-5では、光源110bから出射された波長帯域WB内の波長の光が照射光として生体LBに照射される。生体LBに照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光は、該部位に対応する受光レンズ220a1を介して対応する受光素子210aに導かれる。
以上説明した実施例4に係る生体センサ10-5も、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の効果を奏するとともに、波長選択フィルタを有していない分、小型化を図ることができる。
【0079】
(実施例5に係る生体センサ)
図13に示すように、実施例5に係る生体センサ10-6は、受光系200-6の光学系220-6がレンズアレイに代えて遮光部材220d(光学部材)を有している点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成を有する。
遮光部材220dは、波長選択フィルタ220bと受光素子アレイ210との間に配置されている。
遮光部材220dは、複数の受光素子210aの各々に対応する導光路LGP(Light Guide Path)を形成する遮光壁220d1を有している。遮光壁220d1は各導光路LGPを取り囲むように設けられている。遮光壁220d1により隣り合う導光路LGPが隔てられている。
【0080】
以上のように構成される生体センサ10-6では、生体LBに照射され該生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光が波長選択フィルタ220bを通過し、対応する導光路LGPを介して対応する受光素子210aに入射される。
以上説明した生体センサ10-6によれば、実施例1の生体センサ10-1と概ね同様の効果を得ることができる。
【0081】
(実施例6に係る生体センサ)
図14に示すように、実施例6に係る生体センサ10-7は、受光系の光学系において波長選択フィルタ220bと遮光部材220dとの位置関係が異なる点を除いて、実施例5に係る生体センサ10-6と同様の構成を有する。
生体センサ10-7は、受光系200-7の光学系220-7において遮光部材220dが生体LB側に配置され、且つ、波長選択フィルタ220bがレンズアレイ220a側に配置されている。
以上のように構成される生体センサ10-7では、照射系100-1から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された光は、遮光部材220dの対応する導光路LGPで導光され、導光された光のうち波長帯域WB内の波長の光が波長選択フィルタ220bを通過し、対応する受光素子210aに入射される。
以上説明した生体センサ10-7によれば、実施例5の生体センサ10-6と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(実施例7に係る生体センサ)
図15に示すように、実施例7に係る生体センサ10-9は、受光系に代えて照射系が波長選択フィルタを有している点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成を有する。
生体センサ10-9の照射系100-4は、光源110aと生体LBとの間の光路上に配置される波長選択フィルタ120を有している。波長選択フィルタ120は、実施例1に係る生体センサ10-1の波長選択フィルタ220bと実質的に同一である。
【0083】
すなわち、照射系100-4は、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を出射する光源110aと、該光源110aから出射された波長帯域WB内の光及び波長帯域WB外の光のうち波長帯域WB内の光を選択的に通過させる波長選択フィルタ120と、を有する。
生体センサ10-9の受光系200-9の光学系220-9は、波長選択フィルタ120を通過して生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く遮光部材220dを有する。
以上のように構成される生体センサ10-9では、光源110aから出射された波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光のうち波長帯域WB内の波長の光が波長選択フィルタ120を通過して照射光として生体LBに照射される。生体LBに照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光は、再び波長選択フィルタ120を通過し、遮光部材220dの対応する導光路LGPを介して対応する受光素子210aに導かれる。
以上説明した実施例7に係る生体センサ10-9も、実施例5に係る生体センサ10-6と同様の効果を奏する。
【0084】
(実施例8に係る生体センサ)
図16に示すように、実施例8に係る生体センサ10-10は、照射系100-5が波長帯域WB内の光のみを出射する光源110bを有している点、及び受光系200-10が波長選択フィルタを有していない点を除いて、実施例5に係る生体センサ10-6と同様の構成を有する。
【0085】
すなわち、生体センサ10-10では、照射光は波長帯域WB内の波長の光のみを含み、受光系200-10の光学系220-10は、照射系100-5から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く遮光部材220dを有する。
【0086】
以上のように構成される生体センサ10-10では、光源110bから出射された波長帯域WB内の波長の光が照射光として生体LBに照射される。生体LBに照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光は、遮光部材220dの対応する導光路LGPを介して対応する受光素子210aに導かれる。
以上説明した実施例8に係る生体センサ10-10も、実施例5に係る生体センサ10-6と同様の効果を奏するとともに、波長選択フィルタを有していない分、小型化を図ることができる。
【0087】
(実施例9に係る生体センサ)
図17に示すように、実施例9に係る生体センサ10-11は、照射系100-11が複数の光源110aを含む光源アレイを有し、該光源アレイと複数の受光素子210aを含む受光素子アレイ210-11とが同一平面に沿って一体的に設けられている点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成を有する。
生体センサ10-11の照射系100-11は、アレイ状に配列された複数の受光素子210aのうち隣り合う2つの受光素子210a間に配置され、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を出射する、少なくとも1つ(例えば複数)の光源110aを含む。
逆に言えば、生体センサ10-11の受光系200-11は、アレイ状に配列された複数の光源110aのうち隣り合う2つの光源110a間に配置された、少なくとも1つ(例えば複数)の受光素子210aを含む。
図17の例では、光源アレイの複数の光源110aと受光素子アレイ210-11の複数の受光素子210aは、全体として同一平面に沿ってアレイ状に配列されている。ここでは、一例として、隣り合う2つの光源110a間に3つの受光素子210aが配置されている。
各光源110aは、光源アレイの面内方向において、光学系220-1のレンズアレイ220aの隣接する2つの受光レンズ220a1の境界に対応する位置に配置されている。
【0088】
生成センサ10-11では、各光源110aから出射された波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光が隣接する2つの受光レンズ220a1に跨って入射し、該2つの受光レンズ220a1により拡散される。該拡散された光のうち波長帯域WB内の波長の光が波長選択フィルタ220bを通過し、生体LBの隣接する2つの部位に跨って照射される。生体LBの隣接する2つの部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光は、再び波長選択フィルタ220bを通過し、対応する受光レンズ220a1で対応する受光素子210aに集光される。
【0089】
生体センサ10-11によれば、実施例1に係る生体センサ10-1と同様な効果を奏するとともに、複数の光源110aと複数の受光素子210aとがアレイ状に一体的に配置されているので小型化を図ることができる。
【0090】
(実施例10に係る生体センサ)
図18に示すように、実施例10に係る生体センサ10-12は、受光系の光学系におけるレンズアレイと波長選択フィルタとの位置関係が異なる点を除いて、実施例9に係る生体センサ10-11と同様の構成を有する。
生体センサ10-12は、受光系200-12の光学系220-2のレンズアレイ220aと、受光素子アレイ210-11との間に光学系220-2の波長選択フィルタ220bが配置されている。
すなわち、光学系220-2では、レンズアレイ220aが生体LB側に配置され、且つ、波長選択フィルタ220bが受光素子アレイ210側に配置されるようにレンズアレイ220aと波長選択フィルタ220bとが互いに隣接して配置されている。
以上のように、実施例10に係る生体センサ10-12は、光学系220-2が、波長帯域WB内の波長の光を波長選択フィルタ220bを介して対応する受光素子210aに導く受光レンズ220a1を有する。
以上説明した実施例10に係る生体センサ10-12は、実施例9に係る生体センサ10-11と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(実施例11に係る生体センサ)
図19に示すように、実施例11に係る生体センサ10-13は、照射系100-13が波長帯域WB内の光のみを出射する光源110bを有している点、及び受光系200-13が波長選択フィルタを有していない点を除いて、実施例9に係る生体センサ10-11と同様の構成を有する。
【0092】
すなわち、生体センサ10-13では、照射光は波長帯域WB内の波長の光のみを含み、受光系200-13の光学系220-3は、照射系100-13から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く、複数の受光レンズ220a1を含むレンズアレイ220a有する。
【0093】
以上のように構成される生体センサ10-13では、各光源110bから出射された波長帯域WB内の波長の光が照射光として生体LBの隣接する2つの部位に跨って照射される。生体LBの隣接する2つの部位に照射され該2つの部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光は、該部位に対応する受光レンズ220a1で対応する受光素子210aに集光される。
以上説明した実施例11に係る生体センサ10-13も、実施例9に係る生体センサ10-11と同様の効果を奏するとともに、波長選択フィルタを有していない分、小型化を図ることができる。
【0094】
(実施例12に係る生体センサ)
図20に示すように、実施例12に係る生体センサ10-14は、光学系220-1と生体LBとの間に配置される導光板400を備えている点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成を有する。
【0095】
生体センサ10-14では、照射系100-1は、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を出射する光源100aを含む。
光源110aは、導光板400の一端面に出射方向が向いた状態で該一端面側に配置されている。詳述すると、光源110aは、該光源110aから出射された光であって、導光板400の一端面から導光板400内に入射された光が導光板400の、生体LB側の面で全反射するように出射方向が設定されている。
【0096】
導光板400は、光源100aから出射された光のうち波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を導光し、該波長帯域WB内の波長の光及び該波長帯域WB外の光を生体LBの複数部位の各々に入射させる。
【0097】
詳述すると、導光板400は、複数の受光素子210aにそれぞれ対応する複数の回折部400aを光学系220-1側に有している。導光板400は、少なくとも波長帯域WB内の波長の光に対して透明である。複数の回折部400aの各々は、入射された光を生体LBの対応する部位に向けて反射回折する。
【0098】
以上のように構成される生体センサ10-14では、光源110aから出射された光の大半が、導光板400の一端面から導光板400内に入射され、導光板400の、生体LB側の面で互いに異なる全反射角度で全反射される。互いに異なる全反射角度で全反射された各光は、対応する回折部400aで反射回折され導光板400の、生体LB側の面を透過して生体LBの対応する部位に入射される。該部位に入射された光は該部位で反射され、導光板400の対応する回折部400aを透過する。該透過した光のうち波長帯域WB内の波長の光のみが波長選択フィルタ220bを通過して対応する受光レンズ220a1で対応する受光素子210aに集光される。
【0099】
以上説明した実施例12に係る生体センサ10-14も、上記第1の実施例1に係る生体センサ10-1と同様の効果を奏するとともに、導光板400により生体LBの各部位からの反射光をより精度良く対応する受光素子210aに導くことができる。
【0100】
なお、導光板400は、光源110aから出射された光のうち波長帯域WB内の波長の光に対してのみ透明であってもよい。この場合、波長帯域WB外の波長の光を遮光できるので、波長選択フィルタ220bは不要である。
【0101】
(実施例13に係る生体センサ)
図21に示すように、実施例13に係る生体センサ10-15は、受光系の光学系におけるレンズアレイ220aと波長選択フィルタ220bとの位置関係が異なる点を除いて、実施例12に係る生体センサ10-14と同様の構成を有する。
生体センサ10-15は、受光系200-2の光学系220-2のレンズアレイ220aと、受光素子アレイ210との間に光学系220-2の波長選択フィルタ220bが配置されている。
すなわち、光学系220-2では、レンズアレイ220aが生体LB側に配置され、且つ、波長選択フィルタ220bが受光素子アレイ210側に配置されるようにレンズアレイ220aと波長選択フィルタ220bとが互いに隣接して配置されている。
以上のように、実施例13に係る生体センサ10-15は、光学系220-2が、波長帯域WB内の波長の光を波長選択フィルタ220bを介して対応する受光素子210aに導く受光レンズ220a1を有する。
以上説明した実施例13に係る生体センサ10-15は、実施例12に係る生体センサ10-14と同様の効果を奏する。
【0102】
(実施例14に係る生体センサ)
図22に示すように、実施例14に係る生体センサ10-16は、受光系に代えて照射系が波長選択フィルタを有している点を除いて、実施例12に係る生体センサ10-14と同様の構成を有する。
生体センサ10-16の照射系100-4は、光源110aと生体LBとの間の光路上に配置される波長選択フィルタ120を有している。波長選択フィルタ120は、実施例1に係る生体センサ10-1の波長選択フィルタ220bと実質的に同一である。
【0103】
光源110aは、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を出射する。
波長選択フィルタ120は、光源110aから出射された波長帯域WB内の光及び波長帯域WB外の光のうち波長帯域WB内の光を選択的に通過させる。
【0104】
生体センサ10-16の受光系200-4の光学系220-4は、波長選択フィルタ120を通過して生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く受光レンズ220a1を有する。
以上のように構成される生体センサ10-16では、光源110aから出射され導光板400の、生体LB側の面で全反射された各光は、対応する回折部400aで回折され導光板400の、生体LB側の面を透過し、波長選択フィルタ120に入射される。波長選択フィルタ120を通過した波長帯域WB内の波長の各光が生体LBの対応する部位で反射され、波長選択フィルタ120及び対応する回折部400aを介して対応する受光レンズ220a1に入射され、該受光レンズ220a1で対応する受光素子210aに集光される。
以上説明した実施例14に係る生体センサ10-16も、実施例12に係る生体センサ10-14と同様の効果を奏する。
【0105】
(実施例15に係る生体センサ)
図23に示すように、実施例15に係る生体センサ10-17は、受光素子アレイ210と生体LBとの間に円偏光板220cが配置される点を除いて、実施例12に係る生体センサ10-14と同様の構成を有する。
生体センサ10-17によれば、円偏光板220cにより、汗や生体LB表面(皮膚)の表面反射を抑えることができるため不要なノイズを減らし、安定した計測が可能となる。
ここでは、生体センサ10-17は、一例として、受光系200-3の光学系220-3が、導光板400と生体LBとの間に配置される円偏光板220cを有している。
【0106】
(実施例16に係る生体センサ)
図24に示すように、実施例16に係る生体センサ10-18は、照射系100-5が波長帯域WB内の光のみを出射する光源110bを有している点、及び受光系200-4が波長選択フィルタを有していない点を除いて、実施例12に係る生体センサ10-14と同様の構成を有する。
【0107】
すなわち、生体センサ10-18では、照射光は波長帯域WB内の波長の光のみを含み、受光系200-4の光学系220-4は、照射系100-5から導光板400を介して照射され生体LBの複数部位の各々で反射され導光板400を介した波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導く受光レンズ220a1を含むレンズアレイ220a有する。
【0108】
以上のように構成される生体センサ10-18では、各光源110bから出射された波長帯域WB内の波長の光の大半が、導光板400の一端面から導光板400内に入射され、導光板400の、生体LB側の面で互いに異なる全反射角度で全反射される。互いに異なる全反射角度で全反射された各光は、対応する回折部400aで反射回折され導光板400の、生体LB側の面を透過して生体LBの対応する部位に入射される。該部位に入射された光は該部位で反射され、再び導光板400に入射し、導光板400の対応する回折部400aを透過する。該透過した光は、対応する受光レンズ220a1で対応する受光素子210aに集光される。
以上説明した実施例16に係る生体センサ10-18も、実施例12に係る生体センサ10-14と同様の効果を奏するとともに、波長選択フィルタを有していない分、小型化を図ることができる。
【0109】
(実施例17に係る生体センサ)
図25に示すように、実施例17に係る生体センサ10-19は、受光系がレンズアレイに代えてレンズを有している点を除いて、実施例1に係る生体センサ10-1と同様の構成を有する。
生体センサ10-19は、受光系200-19の光学系220-19が、複数の受光素子210aを含む受光素子アレイ210に対応するレンズ220f(光学部材)を有する。レンズ220fは、一例として受光素子アレイ210側に凸となるレンズである。
生体センサ10-19では、光源110aから出射され生体LBの複数部位の各々で反射された光のうち波長帯域WB内の波長の光のみが波長選択フィルタ220bを通過してレンズ220fに入射される。レンズ220fに入射された波長帯域WB内の波長の光は、レンズ220fにより対応する受光素子210aに集光される。
以上説明した生体センサ10-19によれば、実施例1に係る光学センサ10-1と同様の効果を奏するとともに、光学系220-19が単一のレンズ220fを有するので、光学系220-19と受光素子アレイ210との位置決めが容易であるとともに、カメラと同様に設計が確立されており、レンズ220fを安価に入手可能である。
【0110】
(実施例18に係る生体センサ)
図26に示すように、実施例18に係る生体センサ10-20は、受光系の光学系におけるレンズアレイと波長選択フィルタとの位置関係が異なる点を除いて、実施例17に係る生体センサ10-19と同様の構成を有する。
生体センサ10-20は、受光系200-2の光学系220-20のレンズ220fと、受光素子アレイ210との間に光学系220-20の波長選択フィルタ220bが配置されている。
すなわち、光学系220-20では、レンズ220fが生体LB側に配置され、且つ、波長選択フィルタ220bが受光素子アレイ210側に配置されるようにレンズ220fと波長選択フィルタ220bとが互いに隣接して配置されている。
以上のように、実施例18に係る生体センサ10-20は、光学系220-20が、波長帯域WB内の波長の光を波長選択フィルタ220bを介して対応する受光素子210aに導くレンズ220fを有する。この場合にも、実施例17に係る生体センサ10-19と同様の効果を得ることができる。
【0111】
(実施例19に係る生体センサ)
図27に示すように、実施例19に係る生体センサ10-22は、受光系に代えて照射系が波長選択フィルタを有している点を除いて、実施例17に係る生体センサ10-19と同様の構成を有する。
生体センサ10-22の照射系100-4は、光源110aと生体LBとの間の光路上に配置される波長選択フィルタ120を有している。波長選択フィルタ120は、実施例1に係る生体センサ10-1の波長選択フィルタ220bと実質的に同一である。
【0112】
光源110aは、波長帯域WB内の波長の光及び波長帯域WB外の波長の光を出射する。
波長選択フィルタ120は、光源110aから出射された波長帯域WB内の光及び波長帯域WB外の光のうち波長帯域WB内の光を選択的に通過させる。
【0113】
生体センサ10-22の受光系200-22の光学系220-22は、波長選択フィルタ120を通過して生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導くレンズ220fを有する。
以上のように構成される生体センサ10-22では、光源110aから出射された光のうち波長帯域WB内の波長の光が波長選択フィルタ120を透過して生体LBに照射される。生体LBに照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の光は、レンズ220fで該部位に対応する受光素子210aに集光される。
以上説明した実施例19に係る生体センサ10-22も、実施例17に係る生体センサ10-19と同様の効果を奏する。
【0114】
(実施例20に係る生体センサ)
図28に示すように、実施例20に係る生体センサ10-23は、照射系100-5が波長帯域WB内の光のみを出射する光源110bを有している点、及び受光系200-23が波長選択フィルタを有していない点を除いて、実施例17に係る生体センサ10-19と同様の構成を有する。
【0115】
すなわち、生体センサ10-23では、照射光は波長帯域WB内の波長の光のみを含み、受光系200-23の光学系220-5は、照射系100-5から照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光を該部位に対応する受光素子210aに導くレンズ220fを有する。
【0116】
以上のように構成される生体センサ10-23では、光源110bから出射された波長帯域WB内の波長の光が照射光として生体LBに照射される。生体LBに照射され生体LBの複数部位の各々で反射された波長帯域WB内の波長の光は、レンズ220fで対応する受光素子210aに導かれる。
以上説明した実施例20に係る生体センサ10-23も、実施例17に係る生体センサ10-19と同様の効果を奏するとともに、波長選択フィルタを有していない分、小型化を図ることができる。
【0117】
10.<本技術の変形例>
【0118】
本技術は、上記実施形態の各実施例及び変形例で説明した構成に限らず、適宜変更可能である。
例えば、上記各実施例及び変形例の構成を相互に矛盾しない範囲内で組み合わせてもよい。
【0119】
例えば、本技術に係る生体センサの受光系の光学系は、複数の受光素子(画素センサ)が1次元に(ライン状に)配置されたラインセンサを有していてもよい。この場合、複数の受光レンズがライン状に配列されたレンズアレイ又は複数の導光路がライン状に配列された遮光部材又は単一のレンズをラインセンサに組み合わせてもよい。
【0120】
例えば、実施例2~20に係る生体センサは、処理系300-1に代えて処理系300-2を備えていてもよい。
【0121】
例えば実施例3に係る生体センサ10-4(
図11参照)ではレンズアレイ220aと生体LBとの間に波長選択フィルタ120が配置されているが、例えば
図29に示す変形例のように光源110aと生体LBとの間に波長選択フィルタ120を配置してもよい。実施例7に係る生体センサ10-8(
図15参照)及び実施例19に係る生体センサ10-22(
図27参照)においても、波長選択フィルタ120を
図29と同様に配置してもよい。また、実施例14に係る生体センサ10-12(
図22参照)において、波長選択フィルタ120を光源110aと導光板400との間に配置してもよい。
【0122】
また、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
(1)水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する照射系と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光する受光系と、
前記受光系から出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する処理系と、
を備える、生体センサ。
(2)前記処理系は、前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第1の分布を用いて、前記生体の状態を判別する、(1)に記載の生体センサ。
(3)前記処理系は、前記第1の分布の特徴量から、前記生体の状態を判別する、(2)に記載の生体センサ。
(4)前記第1の分布の特徴量は、前記部位毎の信号の信号値が基準値以下の信号数である、(3)に記載の生体センサ。
(5)前記基準値は、前記部位毎の信号の信号値の平均値である、(4)に記載の生体センサ。
(6)前記第1の分布の特徴量は、前記部位毎の信号の信号値の中央値、平均値又は最頻値である、(3)に記載の生体センサ。
(7)前記処理系は、前記複数部位自体の反射率分布に応じた前記部位毎の信号の信号値毎の信号数の分布である第2の分布を更に用いて、前記生体の状態を判別する、(2)~(6)のいずれか1つに記載の生体センサ。
(8)前記処理系は、前記第1及び第2の分布の特徴量を比較して、前記生体の状態を判別する、請求項7に記載の生体センサ。
(9)前記第2の分布の特徴量は、前記第1の分布の特徴量に対応する特徴量である、(8)に記載の生体センサ。
(10)前記第1の分布の特徴量は、前記第1の分布における前記部位毎の信号のうち信号値が複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率であり、前記第2の分布の特徴量は、前記第2の分布における前記部位毎の信号のうち信号値が前記複数の値にそれぞれ一致する信号の数の比率である、(8)に記載の生体センサ。
(11)前記受光系は、前記複数部位にそれぞれ対応する複数の受光素子を含む受光素子アレイと、前記複数の受光素子に対応する光学系と、を含み、前記光学系は、前記照射系から照射され前記複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を該部位に対応する前記受光素子に導く、(1)~(10)のいずれか1つに記載の生体センサ。
(12)前記照射光は、前記波長帯域内の波長の光のみを含み、前記光学系は、前記照射系から照射され対応する前記部位で反射された前記波長帯域内の波長の光を対応する前記受光素子に導く光学部材を有する、(11)に記載の生体センサ。
(13)前記照射光は、前記波長帯域内の波長の光及び前記波長帯域外の波長の光を含み、前記光学系は、前記照射系から照射され前記複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を選択的に通過させる波長選択フィルタを有する、(11)に記載の生体センサ。
(14)前記光学系は、前記波長選択フィルタを通過した前記波長帯域内の波長の光を対応する受光素子に導く光学部材を有する、(13)に記載の生体センサ。
(15)前記光学系は、前記波長帯域内の波長の光を前記波長選択フィルタを介して対応する受光素子に導く光学部材を有する、(13)に記載の生体センサ。
(16)前記照射系は、前記波長帯域内の波長の光及び前記波長帯域外の波長の光を出射する光源と、前記光源から出射された前記波長帯域内の光及び前記波長帯域外の光のうち前記波長帯域内の光を選択的に通過させる波長選択フィルタと、を有する、(11)に記載の生体センサ。
(17)前記光学系は、前記波長選択フィルタを通過して対応する前記部位で反射された前記波長帯域内の波長の光を対応する受光素子に導く光学部材を有する、(16)に記載の生体センサ。
(18)前記照射系は、前記複数の受光素子のうち隣り合う2つの前記受光素子間に配置され、前記波長帯域内の波長の光を含む光を出射する光源を少なくとも1つ含む、(11)に記載の生体センサ。
(19)前記光学系と前記生体との間に配置される導光板を更に備え、前記照射系は、前記波長帯域内の波長の光を含む光を出射する光源を含み、前記導光板は、前記光源から出射された光のうち少なくとも前記波長帯域内の波長の光を導光し、該波長帯域内の光を前記複数部位の各々に入射させる、(11)に記載の生体センサ。
(20)前記導光板は、前記波長帯域内の波長の光に対して透明である、(19)に記載の生体センサ。
(21)前記導光板は、前記複数の受光素子にそれぞれ対応する複数の回折部を前記光学系側に有し、
前記複数の回折部の各々は、入射された前記波長帯域内の波長の光を対応する前記部位に向けて回折する、(19)又は(20)に記載の生体センサ。
(22)前記生体センサは、前記受光素子アレイと前記生体との間に配置される円偏光板を更に備える、(11)~(21)のいずれか1つに記載の生体センサ。
(23)前記生体の状態は、前記部位毎の発汗状況から推定される精神状態である、(1)~(22)のいずれか1つに記載の生体センサ。
(24)本技術は、水の吸収に関するピーク波長を含む波長帯域内の波長の光を含む照射光を生体に照射する工程と、
前記照射系から照射され前記生体の複数部位の各々で反射された光のうち前記波長帯域内の波長の光を個別に受光して前記部位毎の信号を出力する工程と、
前記出力する工程で出力された前記部位毎の信号に関する統計に基づいて、前記生体の状態を判別する工程と、
を含む、生体状態判別方法を提供する。
【符号の説明】
【0123】
10-1~10-23:生体センサ、100-1、100-4、100-5、100-11、100-13:照射系、110a、110b:光源、200-1、200-2、200-3、200-4、200-6、200-7、200-8、200-9、200-10、200-11、200-12、200-13、200-19、200-20、200-21、200-22、200-23:受光系、210、210-11、210-13:受光素子アレイ、210a:受光素子、220-1、220-2、220-3、220-4、220-6、220-7、220-8、220-9、220-10、220-19、220-20、220-21、220-22:光学系、220a:レンズアレイ(光学部材)、220a1:受光レンズ、220b:波長選択フィルタ、220c:円偏光板、220d:遮光部材(光学部材)、220f:レンズ(光学部材)、300-1、300-2:処理系、LB:生体、複数部位の各々:LB1~LB6、IL:照射光。