(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】保護膜形成用組成物、保護膜、保護膜の形成方法、及び基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20241210BHJP
C08L 61/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/312 A
C08L61/00
(21)【出願番号】P 2022555398
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2021035840
(87)【国際公開番号】W WO2022075144
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020170483
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高梨 和憲
(72)【発明者】
【氏名】宮内 裕之
(72)【発明者】
【氏名】奥村 奈央
(72)【発明者】
【氏名】河津 智晴
(72)【発明者】
【氏名】出井 慧
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124354(JP,A)
【文献】特開2007-115834(JP,A)
【文献】米国特許第9482957(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0064669(US,A1)
【文献】特開2010-153575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
C08L 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部のみに保護膜を形成するための保護膜形成用組成物であって、
芳香環を有する化合物と、
溶媒と
を含有し、
上記溶媒は、標準沸点が156℃以上300℃未満である第1溶媒を含む、
保護膜形成用組成物。
【請求項2】
上記溶媒における上記第1溶媒の含有割合は、20質量%以上100質量%以下である、
請求項1に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項3】
上記溶媒における上記第1溶媒の含有割合は、40質量%以上60質量%以下である、請求項1又は2に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項4】
上記第1溶媒は、エステル類、アルコール類、エーテル類、カーボネート類又はこれらの組み合わせである、請求項1~3のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項5】
上記第1溶媒の標準沸点は、205℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項6】
上記溶媒は、エーテル類及びカーボネート類から選ばれる少なくとも1つの上記第1溶媒を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項7】
上記エーテル類は、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類である、請求項6に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項8】
上記保護膜形成用組成物に含まれる全成分に対する上記溶媒の含有割合は、10質量%以上90質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項9】
上記溶媒は、さらに標準沸点が156℃未満である第2溶媒を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項10】
上記第2溶媒は、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類又はこれらの組み合わせである、請求項
9に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項11】
上記芳香環を有する化合物は、ノボラック樹脂、スチレン樹脂、アセナフチレン樹脂又はこれらの組み合わせである、請求項1~10のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項12】
上記第1溶媒の相対蒸発速度の値は、酢酸ブチルの値を100としたとき0.01以上10以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物から形成される保護膜。
【請求項14】
基板の周縁部のみに、直接又は間接に、請求項1~12のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物を塗工する工程、
を含む、保護膜の形成方法。
【請求項15】
基板の周縁部のみに、直接又は間接に、請求項1~12のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成された保護膜を有する基板に、直接又は間接に、レジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程と
を含む、パターニングされた基板の製造方法。
【請求項16】
上記レジストパターン形成工程より前に、
上記塗工工程により形成された保護膜を有する基板に対して、直接又は間接に、有機下層膜を形成する工程
をさらに含む、請求項15に記載のパターニングされた基板の製造方法。
【請求項17】
上記レジストパターン形成工程より前に、上記塗工工程により形成された保護膜を有する基板に、直接又は間接に、ケイ素含有膜を形成する工程
をさらに含む請求項15又は請求項16に記載のパターニングされた基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用組成物、保護膜、保護膜の形成方法、及びパターニングされた基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造にあっては、例えば、基板上に有機下層膜、ケイ素含有膜などのレジスト下層膜を介して積層されたレジスト膜を露光及び現像してレジストパターンを形成する多層レジストプロセスが用いられている。このプロセスでは、このレジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクとしてさらに基板をエッチングすることで、基板に所望のパターンを形成し、パターニングされた基板を得ることができる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、基板の周縁部に保護膜を形成することが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】特開2016-136572号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の周縁部の保護膜には、塗工性に優れる保護膜形成用組成物が要求される。
【0006】
本発明の目的は、塗工性に優れる保護膜形成用組成物、保護膜、保護膜の形成方法、及びパターニングされた基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一実施形態において、
基板の周縁部のみに保護膜を形成するための保護膜形成用組成物であって、
芳香環を有する化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)と、
溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう)と
を含有し、
上記[A]溶媒は、標準沸点が156℃以上300℃未満である[B]溶媒を含む、
保護膜形成用組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、一実施形態において、保護膜形成用組成物から形成される保護膜に関する。
【0009】
一方、本発明は、一実施形態において、
基板の周縁部のみに、直接又は間接に、請求項1~12のいずれか1項に記載の保護膜形成用組成物を塗工する工程、
を含む、保護膜の形成方法に関する。
【0010】
他方、本発明は、一実施形態において、
基板の周縁部のみに、直接又は間接に、請求項1~12のいずれか1項に記載の保護膜形成組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成された保護膜を有する基板に、直接又は間接に、レジストパターンを形成する工程)と、
上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程と
を含む、パターニングされた基板の製造方法に関する。
【0011】
また、当該製造方法は、別の実施形態において、
上記レジストパターン形成工程より前に、
上記塗工工程により形成された保護膜を有する基板に対して、直接又は間接に、有機下層膜を形成する工程
をさらに含むことができる。
【0012】
また、当該製造方法は、別の実施形態において、
上記レジストパターン形成工程より前に、上記基板に直接又は間接に、ケイ素含有膜を形成する工程
をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保護膜形成用組成物によれば、基板の周縁部において塗工性に優れる保護膜を形成することができる。本発明の保護膜は、基板の周縁部において塗工性に優れる。本発明の保護膜の形成方法によれば、基板の周縁部において塗工性に優れる保護膜を得ることができる。本発明のパターニングされた基板の製造方法によれば、基板の周縁部において塗工性に優れる保護膜を得ることができるので、優れたパターン形状を有する基板を得ることができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る保護膜形成用組成物、保護膜、保護膜の形成方法、及びパターニングされた基板の製造方法について詳説する。
【0015】
<保護膜形成組成物>
基板の周縁部のみに保護膜を形成するための保護膜形成組成物としての当該保護膜形成組成物は、[A]化合物と[B]溶媒とを含有する。当該保護膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、標準沸点が156℃未満である溶媒である第2溶媒(以下、「[C]溶媒」ともいう)、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0016】
当該保護膜形成組成物は、基板の周縁部のみに保護膜を形成するために用いられる。
【0017】
上記基板の周縁部とは、例えば、基板の外周端部から基板の中心への長さが3.0cm以内である基板の外周部分をいう。上記基板の外周端部から基板の中心への長さは、2.0cm、1.0cm、0.5cmとすることができる。
【0018】
基板としては、例えば、シリコン基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、クロム基板、モリブデン基板、タングステン基板、銅基板、タンタル基板、チタン基板等の金属又は半金属基板等が挙げられ、これらの中でもシリコン基板が好ましい。上記基板は、窒化ケイ素膜、アルミナ膜、二酸化ケイ素膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜等が形成された基板でもよい。
【0019】
[[A]化合物]
[A]化合物は、溶媒以外の芳香環を有する化合物である。[A]化合物としては、芳香環を有するものであれば特に限定されず用いることができる。[A]化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記芳香環としては、例えば、
ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、インデン環、ピレン環、フルオレニリデンビフェニル環、フルオレニリデンビナフタレン環等の芳香族炭素環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ホスホール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等の芳香族複素環等をあげることができる。これらの中で、芳香族炭素環が好ましい。
【0021】
[A]化合物としては、例えば、主鎖に芳香環を有する樹脂、主鎖に芳香環を有さず側鎖に芳香環を有する樹脂等の樹脂、分子量が300以上3,000以下の芳香環含有化合物等をあげることができる。
【0022】
ここで、「樹脂」とは、構造単位を2つ以上有する化合物をいう。「芳香環含有化合物」とは、構造単位を1つ有する化合物をいう。「主鎖」とは、樹脂における原子により構成される鎖のうち最も長いものをいう。「側鎖」とは、樹脂における原子により構成される鎖のうち最も長いもの以外をいう。
【0023】
樹脂としては、例えば、重縮合化合物、重縮合以外の反応により得られる化合物等をあげることができる。
【0024】
樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、スチレン樹脂、アセナフチレン樹脂、トリアジン樹脂等をあげることができる。
【0025】
(ノボラック樹脂)
ノボラック樹脂は、フェノール性化合物と、アルデヒド類又はジビニル化合物等とを酸性触媒を用いて反応させて得られる樹脂である。複数のフェノール性化合物と、アルデヒド類又はジビニル化合物等を混合して反応させてもよい。
【0026】
フェノール性化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノールA、p-tert-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフェノール類、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシナフチル)フルオレン等のナフトール類、9-アントロール等のアントロール類、1-ヒドロキシピレン、2-ヒドロキシピレン等のピレノール類等をあげることができる。
【0027】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、1-ホルミルピレン等のアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のアルデヒド源等をあげることができる。
【0028】
ジビニル化合物類としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニルノボルナ-2-エン、ジビニルピレン、リモネン、5-ビニルノルボルナジエン等をあげることができる。
【0029】
ノボラック樹脂としては、例えば、ジヒドロキシナフタレン及びホルムアルデヒドに由来する構造単位を有する樹脂、フルオレンビスフェノール及びホルムアルデヒドに由来する構造単位を有する樹脂、フルオレンビスナフトール及びホルムアルデヒドに由来する構造単位を有する樹脂、ヒドロキシピレン及びホルムアルデヒドに由来する構造単位を有する樹脂、フェノール化合物及びホルミルピレンに由来する構造単位を有する樹脂、これらの樹脂のフェノール性水酸基の水素原子の一部又は全部をプロパルギル基等で置換した樹脂等をあげることができる。
【0030】
(レゾール樹脂)
レゾール樹脂は、フェノール性化合物と、アルデヒド類とをアルカリ性触媒を用いて反応させて得られる樹脂である。
【0031】
(スチレン樹脂)
スチレン樹脂は、芳香環及び重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物に由来する構造単位を有する樹脂である。スチレン樹脂は、上記構造単位以外にも、アクリル系単量体、ビニルエーテル類等に由来する構造単位を有していてもよい。
【0032】
スチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリフェニル(メタ)アクリレート、これらを組み合わせた樹脂等をあげることができる。
【0033】
(アセナフチレン樹脂)
アセナフチレン樹脂は、アセナフチレン骨格を有する化合物に由来する構造単位を有する樹脂である。
【0034】
アセナフチレン樹脂としては、保護膜の塗工性をより高める観点から、アセナフチレンとヒドロキシメチルアセナフチレンとの共重合体が好ましい。
【0035】
(トリアジン樹脂)
トリアジン樹脂は、トリアジン骨格を有する化合物に由来する構造単位を有する樹脂である。
【0036】
トリアジン骨格を有する化合物としては、例えば、メラミン化合物、シアヌル酸化合物等をあげることができる。
【0037】
[A]化合物がノボラック樹脂、レゾール樹脂、スチレン樹脂、アセナフチレン樹脂又はトリアジン樹脂の場合、[A]化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、2,000を超えることが好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。また、上記Mwとしては、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。
【0038】
(カリックスアレーン樹脂)
カリックスアレーン樹脂は、ヒドロキシ基が結合する芳香環が炭化水素基を介して複数個環状に結合した環状オリゴマー又はこのヒドロキシ基、芳香環及び炭化水素基が有する水素原子の一部若しくは全部が置換されたものである。
【0039】
カリックスアレーン樹脂としては、例えば、フェノール、ナフトール等のフェノール化合物とホルムアルデヒドとから形成される環状4~12量体、フェノール、ナフトール等フェノール化合物とベンズアルデヒド化合物とから形成される環状4~12量体、これらの環状体が有するフェノール性水酸基の水素原子をプロパルギル基等で置換した樹脂等をあげることができる。
【0040】
(分子量が300以上3,000以下の芳香環含有化合物)
芳香環含有化合物は、芳香環を有し、かつ分子量が300以上3,000以下の化合物である。芳香環含有化合物が分子量分布を有する場合、芳香環含有化合物の分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)である。
【0041】
上記芳香環含有化合物としては、例えば、フルオレンビスフェノール骨格を有する化合物、スピロインデン骨格を有する化合物、トルクセン骨格を有する化合物、トリフェニルベンゼン骨格を有する化合物等をあげることができる。
【0042】
当該組成物における[A]重合体の含有割合の下限としては、[A]重合体及び[B]溶媒の合計質量中、2質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、6質量%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、[A]重合体及び[B]溶媒の合計質量中、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、18質量%が特に好ましい。
【0043】
[[A]化合物の合成方法]
[A]化合物は、公知の方法に従って合成してもよく、商業的に入手可能な市販品を用いてもよい。
【0044】
[溶媒]
本発明の溶媒は、[A]化合物及び必要に応じて含有される任意成分を溶解又は分散する。上記溶媒は、標準沸点が156℃以上300℃未満である第1溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう)を含む。また、上記溶媒は、さらに標準沸点が156℃未満である第2溶媒(以下、「[C]溶媒」ともいう)を含むことができる。上記溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、[B]溶媒及び[C]溶媒以外のその他の溶媒を含んでいてもよい。上記[B]溶媒、[C]溶媒及びその他の溶媒の各成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下、各成分について詳述する。
【0045】
例えば、当該保護膜形成用組成物における上記溶媒の含有割合は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%とすることもできうる。
【0046】
[[B]溶媒]
[B]溶媒は、標準沸点が156℃以上300℃未満である溶媒である。上記溶媒が高沸点成分である[B]溶媒を含むことで、塗膜の加熱時における溶媒の蒸発が抑制されて溶媒を含む塗膜の構成成分の流動性が向上する。その結果、当該保護膜の塗工性を改善することができる。
【0047】
[B]溶媒の標準沸点の下限としては、170℃が好ましく、180℃がより好ましく、200℃がさらに好ましく、210℃が特に好ましい。[B]第1溶媒の標準沸点を上記下限以上とすることで、保護膜の塗工性をより効果的に改善することができる。
【0048】
例えば、[B]溶媒の標準沸点は、205℃以上であるものが、好ましい。
【0049】
[B]溶媒の標準沸点の上限としては、250℃が好ましく、240℃がより好ましく、230℃が特に好ましい。上記[B]第1溶媒の標準沸点を上記上限以下とすることで、保護膜形成後の溶媒の残渣を低減することができ、溶媒耐性をより向上させることができる。
【0050】
[B]溶媒の成分としては、例えば、エステル類、アルコール類、エーテル類、カーボネート類、ケトン類、アミド系溶媒等をあげることができる。以下に例示する各溶媒の( )中の温度(℃)は、標準沸点の値を示す。
【0051】
上記エステル類としては、例えば、
カルボン酸エステル類として、酢酸2-エチルブチル(160℃)、酢酸2-エチルヘキシル(199℃)、酢酸ベンジル(212℃)、酢酸シクロヘキシル(172℃)、酢酸メチルシクロヘキシル(201℃)、酢酸n-ノニル(208℃)等の酢酸エステル、アセト酢酸メチル(169℃)、アセト酢酸エチル(181℃)等のアセト酢酸エステル、プロピオン酸iso-アミル(156℃)等のプロピオン酸エステル、シュウ酸ジエチル(185℃)、シュウ酸ジ-n-ブチル(239℃)等のシュウ酸エステル、乳酸n-ブチル(185℃)等の乳酸エステル、マロン酸ジエチル(199℃)等のマロン酸エステル、フタル酸ジメチル(283℃)等のフタル酸エステル、β-プロピオラクトン(162℃)、γ-ブチロラクトン(204℃)、γ-バレロラクトン(207℃)、γ-ウンデカラクトン(286℃)等のラクトン、1,6-ジアセトキシヘキサン(260℃)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(232℃)等のアルキレングリコールジアセテート等をあげることができる。
【0052】
上記アルコール類としては、例えば、
モノアルコール類として、3-メトキシブタノール(157℃)、n-ヘキサノール(157℃)、n-オクタノール(194℃)、sec-オクタノール(174℃)、n-ノニルアルコール(215℃)、n-デカノール(228℃)、フェノール(182℃)、シクロヘキサノール(161℃)、ベンジルアルコール(205℃)等が、
多価アルコール類として、エチレングリコール(197℃)、1,2-プロピレングリコール(188℃)、1,3-ブチレングリコール(208℃)、2,4-ペンタンジオール(201℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(196℃)、2,5-ヘキサンジオール(216℃)、トリエチレングリコール(165℃)、ジプロピレングリコール(230℃)、グリセリン(290℃)等が、
多価アルコール部分エーテル類として、エチレングリコールモノブチルエーテル(171℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(244℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(207℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(231℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271℃)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(161℃)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(220℃)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(208℃)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(259℃)、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(229℃)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(272℃)、エチレングリコールモノアリルエーテル(159℃)、ジエチレングリコールモノフェニルエ-テル(283℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(256℃)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(302℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(187℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(242℃)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(212℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(170℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(231℃)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(243℃)等をあげることができる。
【0053】
上記エーテル類としては、例えば、
ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(213℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(247℃)等が、
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(172℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(188℃)等が、
ジアルキレングリコールジアルキルエーテル類として、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(176℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(189℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(255℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)等が、
トリアルキレングリコールジアルキルエーテル類として、トリエチレングリコールジメチルエーテル(216℃)等が、
テトラアルキレングリコールジアルキルエーテル類として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(275℃)等が、
ジ炭化水素基エーテル類として、ジイソペンチルエーテル(171℃)、アニソール(155℃)、エチルベンジルエーテル(189℃)、ジフェニルエーテル(259℃)、ジベンジルエーテル(297℃)、ジヘキシルエーテル(226℃)等が、
環状エーテル類として、1,8-シネオール(176℃)等をあげることができる。
【0054】
上記カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(244℃)、プロピレンカーボネート(242℃)等をあげることができる。
【0055】
上記ケトン類としては、例えば、エチルアミルケトン(167℃)、ジブチルケトン(186℃)、ジアミルケトン(228℃)等をあげることができる。
【0056】
上記アミド系溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン(204℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(165℃)、ホルムアミド(210℃)、N-エチルアセトアミド(206℃)、N-メチルアセトアミド(206℃)等をあげることができる。
【0057】
その他の(A2)溶媒として、例えば、フルフラール(162℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)、スルホラン(287℃)、スクシノニトリル(265℃)、ニトロベンゼン(211℃)等をあげることができる。
【0058】
これらの中で、エステル類、アルコール類、エーテル類、カーボネート類又はこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸エステル類、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコール部分エーテル類、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類及びジアルキレングリコールジアルキルエーテル類がより好ましく、γ-ブチロラクトン、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びプロピレンカーボネートがさらに好ましく、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0059】
[B]1溶媒を上記溶媒とすることで、保護膜の塗工性を向上することができる。
【0060】
[B]溶媒の相対蒸発速度の値の下限としては、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたとき0.01が好ましく、0.05がより好ましく、0.1がさらに好ましい。[B]溶媒の相対蒸発速度の値を上記下限以上とすることで、保護膜形成後の溶媒の残渣を低減することができる。
【0061】
また、[B]溶媒の相対蒸発速度の値の上限としては、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたとき10が好ましく、8がより好ましく、6がさらに好ましく、4が特に好ましい。[B]溶媒の相対蒸発速度を上記上限以下とすることで、塗膜の加熱時における溶媒の蒸発が抑制されて[B]溶媒を含む塗膜の構成成分の流動性がより向上するので、塗工性をより向上させることができる。
【0062】
なお、「相対蒸発速度」とは、25℃、1atmの条件下においてASTM-D3539に準拠して測定される蒸発速度の値をいう。
【0063】
上記範囲の相対蒸発速度の値を有する[B]溶媒(以下、各溶媒の( )中の数値は、酢酸ブチルを100としたときの相対蒸発速度の値を示す)としては、例えば、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(21)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(7)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1.5)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(1)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(1未満)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(3)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(1)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(1未満)、γ-ブチロラクトン(1未満)等をあげることができる。
【0064】
[B]溶媒の粘度としては、0.8mPa・s以上10.0mPa・s以下が好ましい。[B]第1溶媒の粘度を上記範囲とすることで、塗膜の加熱時における[B]溶媒を含む塗膜構成成分の流動性がより向上するので、塗工性をより向上させることができる。
【0065】
なお、「粘度」とは、物質の液体(流体)の流れにくさを表わし、粘性率ともいう。粘度は、「溶剤ハンドブック」等に記載される25℃で測定された値を参照することができる。上記溶剤ハンドブックに記載のない溶媒の粘度としては、JIS-Z8803:2011に記載の方法により、25℃において測定した値である。
【0066】
[B]溶媒の粘度の下限としては、1.0mPa・sが好ましく、1.5mPa・sがより好ましい。
また、[B]溶媒の粘度の上限としては、8.0mPa・sが好ましく、6.0mPa・sがより好ましく、5.0mPa・sがさらに好ましく、3.5mPa・sが特に好ましい。[B]溶媒の粘度を上記範囲とすることで、[B]溶媒の流動性がより向上するので、塗工性をより向上させることができる。
【0067】
上記範囲の粘度を有する[B]溶媒としては(以下、各溶媒の( )中の数値は、25℃における粘度の値を示す)は、例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1.7mPa・s)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(2.5mPa・s)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(3.1mPa・s)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(1.0mPa・s)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(3.6mPa・s)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(4.5mPa・s)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(5.3mPa・s)、γ-ブチロラクトン(1.8mPa・s)、プロピレンカーボネート(2.3mPa・s)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(3.8mPa・s)、1,6-ジアセトキシヘキサン(3.9mPa・s)、ジプロピレングリコール(20mPa・s)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(2.9mPa・s)等をあげることができる。
【0068】
当該保護膜形成組成物中の溶媒における[B]溶媒の含有割合としては、例えば、0.1質量%以上100質量%未満とすることができる。上記含有割合の下限としては、10質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、40質量%が特に好ましく、45質量%がさらに特に好ましい。[B]溶媒の含有割合を上記下限以上とすることで、塗工性をより向上させることができる。また、上記含有割合の上限としては、80質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、60質量%が特に好ましく、55質量%がさらに特に好ましい。[B]溶媒の含有割合を上記上限以下とすることで、塗工性をより向上させることができる。
【0069】
[[C]溶媒]
[C]溶媒は、標準沸点が156℃未満である溶媒である。
【0070】
[C]溶媒の標準沸点の上限としては、155℃が好ましく、147℃がより好ましい。[C]溶媒の標準沸点を上記上限以下とすることで、[A]化合物の溶解性を向上させることができる。[C]溶媒の標準沸点の下限としては、100℃が好ましく、120℃がより好ましい。[C]溶媒の標準沸点を上記下限以上とすることで、[A]化合物やその他の任意成分の溶解性を向上させることができ、当該保護膜形成組成物の保存安定性を向上することができる。
【0071】
[C]溶媒(( )中の温度(℃)は標準沸点の値を示す)としては、例えば、
モノアルコール類として、メタノール(65℃)、エタノール(78℃)、n-プロパノール(97℃)、iso-プロパノール(82℃)、n-ブタノール(117℃)、iso-ブタノール(108℃)、sec-ブタノール(99℃)、tert-ブタノール(82℃)、n-ペンタノール(138℃)、iso-ペンタノール(132℃)、2-メチルブタノール(136℃)、sec-ペンタノール(118℃)、tert-ペンタノール(102℃)、2-メチルペンタノール(148℃)、2-エチルブタノール(146℃)等が、
カルボン酸エステル類として、プロピオン酸iso-ブチル(138℃)等のプロピオン酸エステル、乳酸エチル(151℃)等の乳酸エステル等が、
アルキレングリコールモノアルキルエーテル類として、エチレングリコールモノメチルエーテル(125℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(135℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(121℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(133℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(149.8℃)等が、
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(145℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(146℃)等をあげることができる。
【0072】
[A]化合物の溶解性をより向上させることができる観点から[C]溶媒としては、これらの中で、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類又はこれらの組み合わせが好ましく、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。
【0073】
当該保護膜形成組成物中の溶媒における[C]溶媒の含有割合の下限としては、10質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、40質量%が特に好ましく、45質量%がさらに特に好ましい。また、上記含有割合の上限としては、80質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、60質量%が特に好ましく、55質量%がさらに特に好ましい。[C]溶媒の含有割合を上記範囲とすることで、塗工性をより向上させることができる。
【0074】
[[D]その他の任意成分]
当該保護膜形成組成物は、[A]化合物、[B]溶媒、[C]溶媒以外の他の成分として、例えば、酸発生剤、高分子添加剤、界面活性剤、架橋剤等を含有することができる。
【0075】
酸発生剤は、放射線の照射及び/又は加熱により酸を発生する化合物である。当該保護膜形成組成物は、1種又は2種以上の酸発生剤を含有することができる。
【0076】
酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。
【0077】
高分子添加剤としては、例えば(ポリ)オキシアルキレン系高分子化合物、含フッ素系高分子化合物、非フッ素系高分子化合物等が挙げられる。
【0078】
(ポリ)オキシアルキレン系高分子化合物としては、例えば(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類、ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、炭素数12~14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3-メチル-1-ブチン-3-オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類、ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類、(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類などが挙げられる。
【0079】
含フッ素系高分子化合物としては、例えばフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、2以上(好ましくは5以上)のアルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位とを含む化合物等が挙げられる。
【0080】
非フッ素系高分子化合物としては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐状のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(-(CH2CH2O)n-構造を有する、n=1~17)(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー等に由来する繰り返し単位を1種又は2種以上含む化合物等が挙げられる。
【0081】
界面活性剤の市販品としては、例えば「Newcol 2320」、「Newcol 714-F」、「Newcol 723」、「Newcol 2307」、「Newcol 2303」(以上、日本乳化剤(株)社製)、「パイオニンD-1107-S」、「パイオニンD-1007」、「パイオニンD-1106-DIR」、「ニューカルゲンTG310」、「ニューカルゲンTG310」、「パイオニンD-6105-W」、「パイオニンD-6112」、「パイオニンD-6512」(以上、竹本油脂(株)社製)、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール2502」(以上、日本エアープロダクツ(株)社製)、「メガファックF171」、「同F172」、「同F173」、「同F176」、「同F177」、「同F141」、「同F142」、「同F143」、「同F144」、「同R30」、「同F437」、「同F475」、「同F479」、「同F482」、「同F562」、「同F563」、「同F780」、「同R-40」、「同DS-21」、「同RS-56」、「同RS-90」、「同RS-72-K」(以上、DIC(株)社製)、「フロラードFC430」、「同FC431」(以上、住友スリーエム(株)社製)、「アサヒガードAG710」、「サーフロンS-382」、「同SC-101」、「同SC-102」、「同SC-103」、「同SC-104」、「同SC-105」、「同SC-106」(以上、AGC(株)社製)、「FTX-218」、「NBX-15」((株)ネオス社製)等が挙げられる。
【0082】
架橋剤は、熱や酸の作用により、[A]化合物等の成分同士の架橋結合を形成する成分である。当該保護膜形成組成物は、[A]化合物が分子間結合形成基を有している場合であっても、さらに架橋剤を含有することで、保護膜の硬度を高めることができる。架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、2-ヒドロキシメチル-4,6-ジメチルフェノール、4,4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシ-3,5-ビス(メトキシメチル)フェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビス(2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール)等のヒドロキシメチル基置換フェノール化合物、メトキシメチル基含有フェノール化合物、エトキシメチル基含有フェノール化合物等のアルコキシアルキル基含有フェノール化合物、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル等のアルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物等をあげることができる。
【0084】
当該保護膜形成組成物がその他の任意成分を含有する場合、その他の任意成分の含有量の下限としては、[A]化合物100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。
【0085】
[保護膜形成用組成物の調製方法]
保護膜形成組成物は、[A]化合物、[B]溶媒、及び必要に応じて、[C]溶媒、[D]その他の任意成分等を所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.1μm以下のメンブランフィルター等で濾過することにより調製できる。
【0086】
<保護膜>
本発明の保護膜は、当該保護膜形成組成物から形成される。当該保護膜は、塗工性に優れる。
【0087】
<保護膜の形成方法>
本発明の保護膜の形成方法は、
基板の周縁部のみに、直接又は間接に、当該保護膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)を含む。
【0088】
当該保護膜の形成方法によれば、上記塗工工程において当該保護膜形成用組成物を用いるため、塗工性に優れる保護膜を形成することができる。
【0089】
当該保護膜の形成方法は、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに含むことが好ましい。
【0090】
以下、各工程について説明する。
【0091】
[塗工工程]
【0092】
本工程では、基板の周縁部のみに、直接又は間接に、当該保護膜形成用組成物を塗工する。上記塗工方法は回転塗工で実施することができる。基板を回転させ、基板の周縁部に当該保護膜形成用組成物を吐出することこより塗工膜が形成され、この塗工膜に含まれる[A]化合物の架橋反応及び上記溶媒の揮発等が起こることにより保護膜が形成される。
【0093】
[加熱工程]
本工程では、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する。これにより保護膜の形成が促進される。
【0094】
上記塗工膜の加熱は、通常、大気下で行われるが、窒素雰囲気下で行ってもよい。加熱における温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。上記温度の上限としては、600℃が好ましく、400℃がより好ましい。加熱における時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、1,200秒が好ましく、600秒がより好ましい。
【0095】
形成される保護膜の平均厚みとの下限としては、30nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、3,000nmが好ましく、2,000nmがより好ましく、500nmがさらに好ましい。なお、保護膜の平均厚みは、基板の中央に保護膜形成組成物を吐出して、回転塗工法により、基板全体に保護膜形成組成物により形成された膜を、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社製の「M2000D」)を用いて、基板の中心を含む5cm間隔の任意の9点の位置で膜厚を測定し、それらの膜厚の平均値を算出した値である。
【0096】
<パターニングされた基板の製造方法>
当該パターニングされた基板の製造方法は、
基板の周縁部のみに、直接又は間接に、当該保護膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、
上記塗工工程により形成された当該保護膜を有する基板に、直接又は間接に、レジストパターンを形成する工程(以下、「レジストパターン形成工程」ともいう)と、
上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程(以下、「エッチング工程」ともいう)とを含む。
【0097】
当該パターニングされた基板の製造方法によれば、上記塗工工程において塗工性に優れる当該保護膜が形成されるため、良好なパターン形状を有するパターニングされた基板を製造することができる。
【0098】
当該パターニングされた基板の製造方法は、必要に応じて、上記レジストパターン形成工程より前に、上記塗工工程により形成された当該保護膜を有する基板に、直接又は間接に、有機下層膜を形成する工程(以下、「有機下層膜形成工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。
【0099】
当該パターニングされた基板の製造方法は、必要に応じて、上記レジストパターン形成工程より前に、上記塗工工程により形成された当該保護膜を有する基板に、直接又は間接に、ケイ素含有膜を形成する工程(以下、「ケイ素含有膜形成工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。
【0100】
以下、各工程について説明する。
【0101】
[塗工工程]
本工程では、基板の周縁部のみに、直接又は間接に、当該保護膜形成用組成物を塗工する。本工程は、上述の当該保護膜の形成方法における塗工工程と同様である。
【0102】
[有機下層膜形成工程]
本工程では、当該保護膜を有する基板に、直接又は間接に、有機下層膜を形成する。
【0103】
有機下層膜は、有機下層膜形成用組成物の塗工等により形成することができる。有機下層膜を有機下層膜形成用組成物の塗工により形成する方法としては、例えば有機下層膜形成用組成物を当該保護膜を有する基板に直接又は間接に塗工して形成された塗工膜を加熱や露光を行うことにより硬化等させる方法等が挙げられる。上記有機下層膜形成用組成物としては、例えばJSR(株)社製の「HM8006」等を用いることができる。加熱や露光の諸条件については、用いる有機下層膜形成用組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0104】
[ケイ素含有膜形成工程]
本工程では、当該保護膜を有する基板に、直接又は間接に、ケイ素含有膜を形成する。
【0105】
当該保護膜を有する基板に間接にケイ素含有膜を形成する場合としては、例えば、当該保護膜上に保護膜の表面改質膜が形成された場合等をあげることができる。
【0106】
ケイ素含有膜は、ケイ素含有膜形成用組成物の塗工、化学蒸着(CVD)法、原子層堆積(ALD)等により形成することができる。ケイ素含有膜をケイ素含有膜形成用組成物の塗工により形成する方法としては、例えば、ケイ素含有膜形成用組成物を当該保護膜に、直接又は間接に、塗工して形成された塗工膜を、露光及び/又は加熱することにより硬化等させる方法等をあげることができる。上記ケイ素含有膜形成用組成物の市販品としては、例えば、「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」(以上、JSR(株)社製)等を用いることができる。化学蒸着(CVD)法又は原子層堆積(ALD)により、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸化窒化ケイ素膜、アモルファスケイ素膜を形成することができる。
【0107】
[レジストパターン形成工程]
本工程では、当該保護膜に対し、直接又は間接に、レジストパターンを形成する。本工程を行う方法としては、例えば、レジスト組成物を用いる方法、ナノインプリント法を用いる方法、自己組織化組成物を用いる方法等をあげることができる。当該保護膜に間接にレジストパターンを形成する場合としては、例えば、上記パターニングされた基板の製造方法が上記ケイ素含有膜形成工程を含む場合において、上記ケイ素含有膜上にレジストパターンを形成する場合等をあげることができる。
【0108】
上記レジスト組成物を用いる方法は、具体的には、形成されるレジスト膜が所定の厚みとなるようにレジスト組成物を塗工した後、プレベークすることによって塗工膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト膜を形成する。
【0109】
上記レジスト組成物としては、例えば、感放射線性酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とを含有するポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とを含有するネガ型レジスト組成物等をあげることができる。なお、本工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0110】
次に、選択的な放射線照射により上記形成されたレジスト膜を露光する。露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される感放射線性酸発生剤の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線等をあげることができる。これらの中で、遠紫外線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2エキシマレーザー光(波長157nm)、Kr2エキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)又は極端紫外線(波長13.5nm等、以下、「EUV」ともいう)がより好ましく、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光又はEUVがさらに好ましい。
【0111】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるためポストベークを行うことができる。このポストベークの温度及び時間は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0112】
次に、上記露光されたレジスト膜を現像液で現像してレジストパターンを形成する。この現像は、アルカリ現像であっても有機溶媒現像であってもよい。現像液としては、アルカリ現像の場合、アンモニア、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの塩基性水溶液が挙げられる。これらの塩基性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類などの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適量添加することもできる。また、有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば上述の当該組成物の[B]溶媒として例示した種々の有機溶媒等が挙げられる。
【0113】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0114】
[エッチング工程]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う。エッチングの回数としては1回でも、複数回、すなわちエッチングにより得られるパターンをマスクとして順次エッチングを行ってもよいが、より良好な形状のパターンを得る観点からは、複数回が好ましい。複数回のエッチングを行う場合、ケイ素含有膜、保護膜及び基板の順に順次エッチングを行う。エッチングの方法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング等をあげることができる。これらの中で、基板のパターンの形状をより良好なものとする観点から、ドライエッチングが好ましい。このドライエッチングには、例えば、酸素プラズマ等のガスプラズマ等が用いられる。上記エッチングにより、所定のパターンを有するパターニングされた基板が得られる。
【0115】
ドライエッチングとしては、例えば、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、マスクパターン、エッチングされる膜の元素組成等により適宜選択することができ、例えば、CHF3、CF4、C2F6、C3F8、SF6等のフッ素系ガス、Cl2、BCl3等の塩素系ガス、O2、O3、H2O等の酸素系ガス、H2、NH3、CO、CO2、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H4、C3H6、C3H8、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH3、BCl3等の還元性ガス、He、N2、Ar等の不活性ガス等をあげることができる。これらのガスは混合して用いることもできる。保護膜のパターンをマスクとして基板をエッチングする場合には、通常、フッ素系ガスが用いられる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0117】
[重量平均分子量(Mw)]
重合体のMwは、東ソー(株)社製のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、及び「G4000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0118】
[保護膜の平均厚み]
保護膜の平均厚みは、基板の中央に保護膜形成組成物を吐出して、回転塗工法により、基板全体に保護膜形成組成物により形成された膜を、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社製の「M2000D」)を用いて、基板の中心を含む5cm間隔の任意の9点の位置で膜厚を測定し、それらの膜厚の平均値を算出した値である。
【0119】
<保護膜形成組成物の調製>
保護膜形成組成物の調製に用いた[A]化合物、[B]溶媒、[C]溶媒、[D]その他の任意成分を以下に示す。下記表1における「-」は、該当する[B]溶媒、[C]溶媒、[D]その他の任意成分を使用しなかったことを示す。
【0120】
[[A]化合物]
A-1:下記式(A-1)で表される構造単位を有する樹脂
A-2:下記式(A-2)で表される構造単位を有する樹脂
A-3:下記式(A-3)で表される構造単位を有する樹脂
A-4:下記式(A-4)で表される構造単位を有する樹脂
【0121】
【0122】
<[A]化合物の合成>
[A]化合物として、上記式(A-1)~(A-4)で表される重合体(以下、「重合体(A-1)~(A-4)」ともいう)を以下に示す手順により合成した。
【0123】
上記式(A-1)の構造単位に付した数字は、その構造単位の含有割合(モル%)を示す。上記式(A-4)中、*Rは、酸素原子に結合する部位を示す。
【0124】
[合成例1-1](重合体(A-1)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、m-クレゾール70g、p-クレゾール57.27g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液95.52g及びメチルイソブチルケトン381.82gを加えて溶解させた。得られた溶液を40℃に加熱した後、p-トルエンスルホン酸2.03gを加え、85℃で4時間反応させた。反応液を30℃以下に冷却し、この反応液をメタノール/水(50/50(質量比))の混合溶液中に投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して重合体(A-1)を得た。重合体(A-1)のMwは50,000であった。
【0125】
[合成例1-2](重合体(A-2)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、2,7-ジヒドロキシナフタレン150g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液76.01g及びメチルイソブチルケトン450gを加えて溶解させた。得られた溶液を40℃に加熱した後、p-トルエンスルホン酸1.61gを加え、80℃で7時間反応させた。反応液を30℃以下に冷却し、この反応液をメタノール/水(50/50(質量比))の混合溶液中に投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して重合体(A-2)を得た。重合体(A-2)のMwは3,000であった。
【0126】
[合成例1-3](重合体(A-3)の合成)
合成例1-4における4,4’-(α-メチルベンジリデン)ビスフェノール15.12g、1-ヒドロキシピレン7.63g、1-ナフトール12.6g及びパラホルムアルデヒド4.52gを、ビスフェノールフルオレン37.9g及びパラホルムアルデヒド2.86gに変更した以外は合成例1-4と同様にして重合体(A-3)を得た。重合体(A-3)のMwは4,500であった。
【0127】
[合成例1-4](重合体(A-4)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、合成例1-2で合成した重合体(A-2)20g、N,N-ジメチルアセトアミド80g及び炭酸カリウム22gを仕込んだ。次に、80℃に加温し、臭化プロパルギル19gを添加した後、6時間攪拌して反応を行った。その後、反応溶液にメチルイソブチルケトン40g及び水80gを添加して分液操作を行った後、得られた有機相を多量のメタノール中に投入し、得られた沈殿物をろ過により回収することによって重合体(A-4)を得た。重合体(A-4)のMwは3,200であった。
【0128】
[[B]溶媒]
B-1:1,6-ジアセトキシヘキサン(標準沸点:260℃)
B-2:プロピレンカーボネート(標準沸点:242℃)
B-3:ジプロピレングリコ-ルメチルエ-テルアセテ-ト(標準沸点:213℃)
B-4:ガンマブチロラクトン(標準沸点:204℃)
B-5:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(標準沸点:242℃)
B-6:3-エトキシプロピオン酸エチル(標準沸点:170℃)
【0129】
[[C]溶媒]
C-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(標準沸点:146℃)
C-2:乳酸エチル(標準沸点:154℃)
C-3:3-メトキシプロピオン酸メチル(標準沸点:142℃)
【0130】
[[D]その他の任意成分]
D-1:界面活性剤((株)ネオス社製の「NBX-15」)
D-2:界面活性剤(DIC(株)社製の「F563」)
D-3:ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)
【0131】
[実施例1](保護膜形成組成物(J-1)の調製)
[A]化合物としての(A-1)10質量部を[B]溶媒としての(B-1)100質量部に溶解した。この溶液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターでろ過して、保護膜形成組成物(J-1)を調製した。
【0132】
[実施例2~23、比較例1~4](保護膜形成組成物(J-2)~(J-23)及び(CJ-1)~(CJ-4)の調製)
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を使用したこと以外は実施例1と同様にして、各保護膜形成組成物を調製した。
【0133】
【0134】
<評価>
上記得られた保護膜形成組成物(J-1)~(J-23)及び(CJ-1)~(CJ-4)を用い、下記方法により塗工性をした。評価結果を下記表2に合わせて示す。
【0135】
[塗工性]
シリコン基板を、スピンコーター(東京エレクトロン(株)社製の「CLEAN TRACK ACT8」)を用いて、1,500rpmの条件で回転させ、この基板の外周端部から基板の中心への長さが1cmの位置から、上記調製した保護膜形成組成物(J-1)~(J-23)及び(CJ-1)~(CJ-4)を1秒あたり2mlの吐出量で5秒間、吐出した後、この基板を1,500rpm及び30秒間の条件で回転させた後、大気雰囲気下、250℃で60秒間加熱した後、23℃で60秒冷却することにより、保護膜が形成された保護膜付き基板を得た。塗工性について、形成された保護膜を光学顕微鏡で観察し、塗工ムラが見られない場合は「A」(良好)と、塗工ムラが見られる場合は「B」(不良)と評価した。
【0136】
【0137】
表2の結果から明らかなように、実施例の保護膜形成組成物から形成される保護膜は、塗工性の全ての評価項目において良好な結果が得られた。これに対して、比較例の保護膜形成組成物から形成される保護膜は、塗工性において劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の保護膜形成組成物によれば、基板の周縁部において塗工性に優れる保護膜を形成することができる。本発明の保護膜は、基板の周縁部において塗工性に優れる。本発明の保護膜の形成方法によれば、基板の周縁部において塗工性に優れる保護膜を得ることができる。本発明のパターニングされた基板の製造方法によれば、基板の周縁部において塗工性に優れる保護膜を得ることができるので、優れたパターン形状を有する基板を得ることができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。