(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20241210BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H9/25 A
H03H9/145 D
(21)【出願番号】P 2022555499
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036793
(87)【国際公開番号】W WO2022075311
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2020171184
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 直
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/208426(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044203(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に配置された圧電層と、
前記圧電層上に配置された機能素子とを備え、
前記支持基板の法線方向から平面視した場合に、前記支持基板および前記圧電層は略矩形状を有しており、
前記圧電層の角部の少なくとも1つは外に凸の曲線状または多角形状になっている、弾性波装置。
【請求項2】
前記圧電層上に設けられ、前記機能素子に接続される電極パッドをさらに備え、
前記支持基板の法線方向から平面視した場合に、前記電極パッドにおいて前記圧電層の角部に面する部分は、曲線状または多角形状になっている、請求項
1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記支持基板の法線方向から平面視した場合に、前記圧電層は前記支持基板の外形よりも内側に配置されている、請求項1
または請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記支持基板の法線方向から平面視した場合に、前記支持基板の外形と前記圧電層の外形との間に設けられる樹脂層をさらに備える、請求項
3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記圧電層と前記支持基板との間に配置された中間層をさらに備える、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記中間層は、前記支持基板上に配置され、前記圧電層に伝搬するバルク波の速度よりも低速の弾性バルク波を伝搬する低音速層を含む、請求項
5に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記中間層は、前記支持基板上に配置され、前記圧電層に伝搬する弾性波の速度よりも高速の弾性バルク波を伝搬する高音速層を含む、請求項
5に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記中間層は、前記高音速層と前記圧電層との間に配置され、前記圧電層に伝搬するバルク波の速度よりも低速の弾性バルク波を伝搬する低音速層をさらに含む、請求項
7に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記中間層は、略矩形状を有しており、
前記中間層の角部の少なくとも1つは、曲線状または多角形状になっている、請求項
5~請求項
8のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項10】
支持体と、
前記支持体によって支持されるカバー部とをさらに備え、
前記機能素子は、前記支持体と前記カバー部によって構成される空間内に設けられる、請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記機能素子は、弾性表面波素子を含む、請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記支持基板は、シリコンを含む、請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項13】
支持基板と、
前記支持基板上に配置された圧電層と、
前記圧電層上に配置された機能素子と、
前記圧電層上に設けられ、前記機能素子に接続される電極パッドとを備え、
前記支持基板の法線方向から平面視した場合に、
前記支持基板および前記圧電層は略矩形状を有しており、
前記圧電層の角部の少なくとも1つは曲線状または多角形状になっており、
前記電極パッドにおいて前記圧電層の角部に面する部分は、曲線状または多角形状になっている、弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波装置に関し、より特定的には、WLP(Wafer Level Package)構造あるいはCSP(Chip Size Package)構造を有する弾性波装置における圧電層の剥離を抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話およびスマートフォンに代表される携帯端末などの通信装置においては、複数の周波数帯域の高周波信号を用いた通信が行なわれている。複数の周波数帯域の信号を処理する場合には、各周波数帯域の信号を選択的に通過させるためのフィルタが用いられる。
【0003】
このようなフィルタとして、たとえば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子を用いたフィルタが知られている。国際公開第2015/098679号明細書(特許文献1)には、WLP構造あるいはCSP構造を有し、帯域フィルタとして用いられる弾性波装置が開示されている。国際公開第2015/098679号明細書(特許文献1)に開示された弾性波装置においては、外部接続端子に接合されるパッド電極部の下方に圧電薄膜を配置しない構成とすることによって、外部接続端子の接合時あるいは当該弾性波装置の実装時における、支持基板からの圧電薄膜の剥離および割れを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような弾性波装置においては、当該弾性波装置を実装基板に実装する際に、リフローあるいはその他の熱衝撃が加わると、その後の温度低下の過程において、支持基板と圧電層との熱膨張係数の差に起因して応力が生じてしまい、圧電層が支持基板から剥離してしまう場合が生じ得る。特に、圧電層の平面形状によっては、圧電層の角の部分に応力が集中してしまい、剥離が生じやすくなる可能性がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、WLP構造あるいはCSP構造を有する弾性波装置において、支持基板上に配置された圧電層の剥離を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る弾性波装置は、支持基板と、支持基板上に配置された圧電層と、圧電層上に配置された機能素子とを備える。支持基板の法線方向から平面視した場合に、支持基板および圧電層は略矩形状を有している。圧電層の角部の少なくとも1つは曲線状または多角形状になっている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る弾性波装置によれば、支持基板上に配置された略矩形状の圧電層の角部が曲線状または多角形状になっている。そのため、熱ストレスが加わった場合においても、当該角部への応力集中が緩和される。したがって、弾性波装置において、支持基板上に配置された圧電層の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る弾性波装置の断面図である。
【
図3】電極パッドの角部の形状を説明するための図である。
【
図5】
図1の弾性波装置の製造プロセスを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
(弾性波装置の構成)
図1および
図2を用いて、実施の形態に係る弾性波装置100の詳細な構成について説明する。
図2は弾性波装置100の平面図であり、
図1は、
図2における線I-Iにおける断面図である。
【0012】
図1および
図2を参照して、弾性波装置100は、支持基板110と、積層膜120と、機能素子130と、電極パッド140と、配線電極145と、支持体160と、支持体160内に設けられた接続電極150と、はんだバンプ170と、樹脂層180とを備える。積層膜120は、圧電層121と、低音速層122と、高音速層123とを含む。以下の説明においては、低音速層122および高音速層123をあわせて「中間層」とも称する。なお、以降の説明において、図中の積層方向のZ軸の正方向を上面側、負方向を下面側と称する場合がある。
【0013】
支持基板110は、シリコン(Si)で形成された半導体基板である。支持基板110は、法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に略矩形状を有している。支持基板110上には、Z軸の正方向に向かって、高音速層123、低音速層122および圧電層121が順に積層されている。なお、支持基板110の材料は、シリコンに限らず、炭化ケイ素(SiC)あるいは水晶であってもよい。
【0014】
圧電層121は、たとえば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、および水晶のような圧電単結晶材料、あるいは、LiTaO3、LiNbO3、または窒化アルミニウム(AlN)からなる圧電積層材料により形成される。
【0015】
圧電層121の上面(Z軸の正方向の面)には、複数の機能素子130が配置されている。機能素子130として、たとえばアルミニウム、銅、銀、金、チタン、タングステン、白金、クロム、ニッケル、モリブデンの少なくとも一種からなる単体金属、またはこれらを主成分とする合金などの電極材を用いて構成された一対のIDT電極(Interdigital Transducer)、および反射器が含まれる。圧電層121とIDT電極とによって弾性表面波(SAW)共振子が構成される。
【0016】
低音速層122は、当該低音速層122を伝播するバルク波音速が、圧電層121を伝播するバルク波音速よりも低速となる材料で形成されている。弾性波装置100においては、低音速層122は酸化ケイ素(SiO2)で形成されている。しかしながら、低音速層122は酸化ケイ素に限らず、たとえば、ガラス、酸窒化シリコン、酸化タンタルなどの他の誘電体、あるいは酸化ケイ素にフッ素、炭素、ホウ素などを加えた化合物などで形成されてもよい。
【0017】
また、高音速層123は、当該高音速層123を伝播するバルク波音速が、圧電層121を伝播する弾性波音速よりも高速となる材料で形成されている。弾性波装置100においては、高音速層123は窒化ケイ素(SiN)で形成されている。しかしながら、高音速層123は窒化ケイ素に限らず、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダイヤモンドなどの材料で形成されてもよい。
【0018】
圧電層121の下方に、低音速層122および高音速層123を積層する構成とすることによって、低音速層122および高音速層123は反射層(ミラー層)120として機能する。すなわち、圧電層121から支持基板110の方向に漏洩した弾性表面波は、伝播する音速の差によって高音速層123で反射され、低音速層122内に閉じ込められる。このように、中間層により伝播される弾性表面波の音響エネルギの損失が抑制されるため、効率よく弾性表面波を伝播することができる。
【0019】
なお、
図1においては、中間層として、低音速層122および高音速層123がそれぞれ1層配置される例について説明したが、中間層は複数の低音速層122および高音速層123が交互に配置された構成であってもよい。また、中間層は必須の構成ではなく、積層膜120として圧電層121のみが含まれる場合であってもよい。あるいは、中間層として低音速層122および高音速層123のいずれか一方が設けられる場合であってもよい。中間層として低音速層122のみが設けられる場合には、支持基板110が高音速層として機能する。
【0020】
圧電層121および中間層(低音速層122,高音速層123)を含む積層膜120は、支持基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、略矩形状を有しており、支持基板110の外形よりも内側に配置されている。支持基板110上において、積層膜120が配置されていない部分(すなわち、積層膜120の周囲)には、たとえばポリイミド、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ベンゾシクロブテン(BCB)、またはエポキシなどの材料を用いた樹脂層180が配置されている。なお、積層膜120は、必ずしも支持基板110よりも内側に配置されている必要はなく、後述のように、角部が直角ではなく、曲線状を有するものであれば、同じ外形の大きさであってもよい。
【0021】
圧電層121において機能素子130が配置される面には、複数の電極パッド140が配置されている。電極パッド140は、略矩形状の支持基板110の周囲に沿って配置されている。また、圧電層121の上面には、機能素子130同士の間、および、機能素子130と電極パッド140とを電気的に接続するための配線電極145が設けられている。
【0022】
接続電極150は、電極パッド140からZ軸の正方向に突出した柱状電極である。接続電極150は、はんだバンプ170と電極パッド140を電気的に接続する。弾性波装置100は、はんだバンプ170によって外部機器に実装される。
【0023】
支持体160は、機能素子130の周囲を囲む壁状となっており、圧電層121の上面からZ軸の正方向に突出している。支持体160は、エポキシあるいはポリイミドなどの絶縁性の樹脂および/または感光性樹脂材料で形成される。支持体160の一部は、接続電極150を覆っている。支持体160によって、機能素子130の周囲に空間が形成される。
【0024】
本実施の形態における弾性波装置100においては、
図2に示されるように、積層膜120の角部は直角ではなく、曲線状になっており、
図2の例においては所定の曲率半径(たとえば、25~200μm)を有する円弧状になっている。あるいは、積層膜120の角部は多角形状であってもよい。
【0025】
また、積層膜120の角部に面する電極パッド140の部分の形状も、圧電層121の角部の形状と同様に円弧状になっている(
図3(a))。あるいは、電極パッドの角部の形状は、
図3(b)の電極パッド140Aのように多角形状であってもよい。
【0026】
上述のように、弾性波装置100は、はんだバンプ170によって、外部機器(実装基板)に実装される。このとき、はんだバンプ170を溶融するリフローの工程において、弾性波装置100の全体に熱が加わり、支持基板110および積層膜120の温度が上昇する。
【0027】
その後、はんだバンプ170の固化のために弾性波装置100は冷却されるが、実装基板および支持基板110を構成する各材料の熱膨張係数の違いにより、冷却過程において弾性波装置100に応力が加わることになる。たとえば、実装基板がガラスエポキシの場合には熱膨張係数は約5~15×10
-5(1/K)であり、一方支持基板110がシリコンの場合には熱膨張係数は約2.5~3×10
-5(1/K)であるため、弾性波装置100には
図1の矢印AR1に示すような方向に力が加わる。
【0028】
そうすると、支持基板110と積層膜120との間、積層膜120が配置される各層間、および/または、圧電層121と電極パッド140との間において応力が生じて、各要素間で剥離が生じる可能性がある。ここで、
図4に示す比較例の弾性波装置100Xのように、積層膜120Xおよび電極パッド140Xの角部が直角または直角に近い形状である場合、当該角部の頂点に応力が集中しやすくなる傾向がある。そのため、比較例のような形状では、積層膜120Xあるいは電極パッド140Xの角部から剥離が生じやすくなる。
【0029】
一方で、本実施の形態の弾性波装置100においては、支持基板110上の積層膜120の角部、および、当該角部に面する電極パッド140の部分が曲線状(または多角形状)になっている。このような構成により、リフローなどの熱ストレスが加わった場合でも、当該角部への応力集中が緩和されるため、各要素間における剥離を抑制することができる。
【0030】
なお、積層膜120の角部のみを曲線状とし、電極パッド140の角部を直角のままとすることも可能であるが、その場合、電極パッド140を積層膜120の外縁部よりも内側に配置することが必要となるため、機能素子130を配置することができる領域の面積が狭められてしまう。曲線状の積層膜120の角部に面する電極パッド140の部分を曲線状にすることによって、電極パッド140を積層膜120の端部に接近して配置することができるので、機能素子130の配置可能領域を拡大することが可能となる。
【0031】
(製造プロセス)
次に、
図5を用いて、本実施の形態の弾性波装置100の製造プロセスについて説明する。なお、
図5においては、説明を容易にするために1つの弾性波装置を対象にして説明するが、実際には、1枚のシリコンウェハ(支持基板110)上に複数の弾性波装置が同時に形成され、ダイシングによって個々の弾性波装置に分割される。
【0032】
図5を参照して、まず
図5(a)の工程において、シリコンの支持基板110上に、高音速層123、低音速層122および圧電層121を順番に積層して、積層膜120を形成する。その後、
図5(b)のように、積層膜120において隣接する弾性波装置間の部分(
図5中の領域PG1)をエッチングにより除去する。このとき、
図2で示したように、各弾性波装置において、積層膜120の角部の部分が曲線状あるいは多角形状になるようにパターニングが行なわれる。
【0033】
次に、
図5(c)の工程において、積層膜120が除去された領域PG1の部分に樹脂層180が配置される。当該領域に樹脂層180を配置することによって、ダイシングにより個々の弾性波装置に分割する際に、積層膜120の端部における剥離および/または割れを抑制することができる。
【0034】
樹脂層の配置が完了すると、
図5(d)の工程において、圧電層121上に銅などの導電層が積層され、パターニングによって、機能素子130、電極パッド140および配線電極145が配置される。このとき、
図2および
図3で説明したように、積層膜120の角部に面する電極パッド140の部分が、曲線状あるいは多角形状となっている。
【0035】
その後、
図5(e)の工程において、機能素子130および電極パッド140を取り囲むように支持体160が配置される。そして、
図5(f)において、電極パッド140の上部に配置された支持体160の部分にレーザ等を用いて開口部V1が形成される。開口部V1は、電極パッド140が露出する深さまで形成されている。
【0036】
開口部V1が形成されると、
図5(g)の工程において、開口部V1内に銅などの導電体を注入することによって接続電極150が形成される。そして、接続電極150上にはんだバンプ170が配置される(
図5(h))。その後、隣接する弾性波装置との境界部分(
図5(b)の領域PG1)をダイシングすることにより、個々の弾性波装置に分割される。
【0037】
このように、
図5(b)および
図5(d)の工程において、積層膜120の角部、および当該角部に面する電極パッド140の部分を曲線状または多角形上にすることによって、熱ストレスが加わった場合に生じ得る、積層膜120および電極パッド140の剥離を抑制することができる。
【0038】
(変形例1)
図1で示した弾性波装置100においては、支持体160によって機能素子130の周囲に空間が形成されているが、はんだバンプ170のない部分においては、当該空間が装置外部と連通した構成となっている。そのため、弾性波装置100の周囲環境(たとえば、湿度、腐食性ガス等)の変化が機能素子130に影響を及ぼす場合がある。
【0039】
変形例1においては、支持体160の上部にカバー部を設けることにより、装置外部から隔絶された空間に機能素子130を配置して、周囲環境の変化の影響を低減する構成について説明する。
【0040】
図6は、変形例1の弾性波装置100Aの断面図である。
図6の弾性波装置100Aにおいては、
図1の弾性波装置100の構成にカバー部190が追加された構成となっている。
図6の説明において、
図1と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0041】
図6を参照して、弾性波装置100Aにおいては、支持体160の上部に、機能素子130を覆うカバー部190が配置されている。カバー部190は、たとえばエポキシなどの絶縁部材で形成されており、支持体160によって支持されている。支持体160およびカバー部190によって、カバー部190と圧電層121との間に中空空間200が形成される。中空空間200は密閉空間であり、弾性波装置100Aの周囲環境からは隔絶されている。そのため、弾性波装置100Aの周囲環境が変化した場合でも、機能素子130への影響を抑制することができる。
【0042】
また、このようなカバー部を有する構成においても、積層膜120の角部および当該角部に面する電極パッド140の部分の形状を曲線状または多角形状にすることによって、熱ストレスが加わった場合に生じ得る、積層膜120および電極パッド140の剥離を抑制することができる。
【0043】
(変形例2)
図7は、変形例2の弾性波装置100Bの断面図である。
図7の弾性波装置100Bは、回路基板等に表面実装可能な、いわゆるCSP部品である。
【0044】
図7を参照して、弾性波装置100Bは、概略的には、
図1で示した弾性波装置100における支持体160、接続電極150、および、はんだバンプ170の部分が、外部接続端子175に置き換わった構成となっている。
図7において、
図1の弾性波装置100と同じ要素の説明は繰り返さない。
【0045】
外部接続端子175は、たとえば金(Au)のような導電性部材で形成されたスタッドバンプであり、電極パッド140に電気的に接続されている。なお、外部接続端子175の材料として、Au以外の金属材料が用いられてもよい。
【0046】
回路基板等への実装の際には、外部接続端子175が回路基板上の端子に接続される。回路基板への実装の後に、必要に応じて弾性波装置100Bの周囲が樹脂等で封止される。
【0047】
このようなCSP部品として形成される弾性波装置100Bにおいても、積層膜120の角部および当該角部に面する電極パッド140の部分の形状を曲線状または多角形状にすることによって、熱ストレスが加わった場合に生じ得る、積層膜120および電極パッド140の剥離を抑制することができる。
【0048】
なお、上述の説明においては、機能素子としてSAW共振子が用いられる場合を例として説明したが、中空空間内に配置される機能素子であれば、バルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)共振子のような他の弾性波デバイスであってもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
100,100A,100B,100X 弾性波装置、110 支持基板、120,120X 積層膜、121 圧電層、122 低音速層、123 高音速層、130 機能素子、140,140A,140X 電極パッド、145 配線電極、150 接続電極、160 支持体、170 はんだバンプ、175 外部接続端子、180 樹脂層、190 カバー部、200 中空空間、V1 開口部。