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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/10 20060101AFI20241210BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G05D16/10 Z
F16K17/30 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022568039
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023588
(87)【国際公開番号】W WO2022123813
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2020205704
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 一志
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中野 哲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 和広
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 千生
(72)【発明者】
【氏名】木原 侑也
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-250239(JP,A)
【文献】特開2016-184260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/10
F16K 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路を有するボディと、
前記ガス流路の途中に設けられた弁座と、
前記ガス流路における前記弁座の下流側に設けられた弁体と、を備えた減圧弁であって、
前記ガス流路は、前記弁体の上流側に位置する一次側流路部と、前記弁体の下流側に位置する二次側流路部と、を含み、
前記一次側流路部は、前記弁体と前記弁座との間に形成される空間である圧力室を含み、
前記弁体は、前記弁座に対して離間する方向へ常時付勢されるとともに、前記一次側流路部の圧力と前記二次側流路部の圧力との差に応じて前記弁座を開閉するように構成され、
さらに、前記弁体は、
前記弁体の外周面に開口し、前記圧力室を前記二次側流路部に連通させる弁体流路と、
前記弁体の外周面に開口し、前記弁体と前記弁座との間の隙間に応じて前記圧力室に流入するガスが前記二次側流路部へ流出することを補助する補助流路と、を有し、
前記弁体流路と前記補助流路とは、前記弁体の外周面において互いに独立して開口し、
前記補助流路は、前記弁体流路よりも前記弁体の外周面における上流側に開口している減圧弁。
【請求項2】
前記補助流路は、前記圧力室を前記弁体流路の途中の部分に連通させている請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
前記弁体は、
前記弁座に当接する頭部と、
前記頭部の下流側に連続して設けられるテーパ部と、を有し、
前記テーパ部の外周面は、前記テーパ部の軸方向全域にわたり、前記弁体の軸線に対して傾斜している請求項1または請求項2に記載の減圧弁。
【請求項4】
前記補助流路は、前記テーパ部の外周面に開口する開口部を有し、
前記補助流路は、前記開口部が前記頭部から離れるように、前記弁体の軸線に対して傾斜した方向に延びる請求項3に記載の減圧弁。
【請求項5】
前記弁体流路は、
前記弁体における前記弁座寄りの位置において前記弁体の軸線に対して交わる方向に延び前記圧力室に開口する横穴と、
前記弁体の軸線に沿って延び前記横穴を前記二次側流路部に連通させる縦穴と、を有し、
前記補助流路は、前記弁体の軸線に沿って延び、前記縦穴の直下で該縦穴を前記圧力室に連通させている請求項2または請求項3に記載の減圧弁。
【請求項6】
前記補助流路の寸法は、前記弁体が前記弁座に対する全開状態であるときの前記弁体と前記弁座との間の隙間の寸法よりも大きい値に設定されている請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されるように、一次ポートから供給されるガスの圧力を減圧し、この減圧されるガスを二次ポートへ送出する減圧弁がある。減圧弁は、ボディ、弁座、弁体および付勢部材を有している。ボディの内部には、一次ポートと二次ポートとを互いに連通させる流路が設けられている。弁座は、流路の途中に設けられている。弁体は、弁座に対して接離可能に設けられている。付勢部材は、弁体を弁座から離間させる方向へ付勢する。流路は、弁体に対して一次ポートが位置する側の一次側流路部と、弁体に対して二次ポートが位置する側の二次側流路部と、を含む。弁体は、一次側流路部の圧力と二次側流路部の圧力との差圧、および付勢部材の付勢力に応じて移動する。弁体の位置に応じて減圧弁の開度が変化することにより二次圧が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-126269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の減圧弁においては、つぎのようなことが懸念される。たとえば減圧弁が開弁した状態において、ガスが一次ポートから急激に入り込む際、一次側流路部の圧力が急激に上昇する。このため、一次側流路部の圧力と二次側流路部の圧力との差がより大きくなることによって、弁体の閉弁動作が遅れるおそれがある。この閉弁動作の遅れに起因して二次圧が設定された圧力の値を超えることが懸念される。
【0005】
本開示の目的は、ガスの圧力をより適切に調整することができる減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る減圧弁は、ガス流路を有するボディと、前記ガス流路の途中に設けられた弁座と、前記ガス流路における前記弁座の下流側に設けられた弁体と、を備えている。前記ガス流路は、前記弁体の上流側に位置する一次側流路部と、前記弁体の下流側に位置する二次側流路部と、を含み、前記一次側流路部は、前記弁体と前記弁座との間に形成される空間である圧力室を含む。前記弁体は、前記弁座に対して離間する方向へ常時付勢されるとともに、前記一次側流路部の圧力と前記二次側流路部の圧力との差に応じて前記弁座を開閉するように構成されている。さらに、前記弁体は、前記圧力室を前記二次側流路部に連通させる弁体流路と、前記弁体と前記弁座との間の隙間に応じて前記圧力室に流入するガスが前記二次側流路部へ流出することを補助する補助流路と、を有している。
【0007】
本開示の一態様に係る減圧弁は、ガス流路を有するボディと、前記ガス流路の途中に設けられた弁座と、前記ガス流路における前記弁座の下流側に設けられた弁体と、を備えている。前記ガス流路は、前記弁体の上流側に位置する一次側流路部と、前記弁体の下流側に位置する二次側流路部と、を含み、前記一次側流路部は、前記弁体と前記弁座との間に形成される空間である圧力室を含む。前記弁体は、前記弁座に対して離間する方向へ常時付勢されるとともに、前記一次側流路部の圧力と前記二次側流路部の圧力との差に応じて前記弁座を開閉するように構成されている。さらに、前記弁体は、前記圧力室を前記二次側流路部に連通させる弁体流路を有している。前記減圧弁は、前記弁体と前記弁座との間の隙間に応じて前記圧力室に流入するガスの流量を絞る絞り部をさらに備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態の減圧弁をその軸線に沿って切断した断面図。
図2図1の減圧弁における弁体および弁座の近傍を拡大して示す断面図。
図3図1の減圧弁における弁体および弁座の近傍を拡大して示す断面図。
図4】第1の実施の形態の変形例の減圧弁における弁体および弁座の近傍を拡大して示す断面図。
図5】第2の実施の形態の減圧弁における弁体および弁座の近傍を拡大して示す断面図。
図6】第3の実施の形態の減圧弁における弁体および弁座の近傍を拡大して示す断面図。
図7】第4の実施の形態の減圧弁における弁体および弁座の近傍を拡大して示す断面図。
図8】他の実施の形態の減圧弁における弁体および弁座の近傍を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
以下、減圧弁を具体化した第1の実施の形態を説明する。
【0010】
図1に示すように、減圧弁1は、一例として、燃料電池自動車に搭載される水素ガスのガスタンク2と燃料電池3とをつなぐ流体回路の途中に設けられる。減圧弁1は、ガスタンク2から一次ポート4を介して供給される水素ガスの圧力を設定圧力以下の圧力に減圧し、この減圧されたガスを二次ポート5を介して燃料電池3に供給する。一次ポート4から供給される水素ガスの圧力である一次圧は、たとえば87.5MPa程度の高圧である。設定圧力は、減圧弁1により減圧された圧力である二次圧の目標値であり、たとえば1.2MPa程度である。
【0011】
減圧弁1は、ボディ11と、弁座12と、弁体13と、付勢部材14と、第1シール部材15と、第2シール部材16とを備えている。
【0012】
ボディ11は、一次ポート4と二次ポート5とを互いに連通し、高圧ガスが流通するガス流路17を有している。なお、以下の説明において、「上流側」および「下流側」は、ガス流路17における水素ガスの流通方向を基準として定義される。弁座12は、ガス流路17に配置されている。弁体13は、ガス流路17における弁座12の下流側に配置されている。付勢部材14は、弁体13を弁座12から離間させる開弁方向に付勢する。第1シール部材15および第2シール部材16は、弁体13の外周面に装着されている。弁体13は、一次圧と二次圧との差圧および付勢部材14の付勢力に応じて弁座12に対して接離する。弁体13の位置に応じて減圧弁1の開度が変化することにより、二次圧が設定値以下の圧力に調整される。
【0013】
ボディ11は、継ぎ手部材21と、第1ハウジング部材22と、第2ハウジング部材23とを備えている。継ぎ手部材21、第1ハウジング部材22および第2ハウジング部材23は、金属製である。継ぎ手部材21、第1ハウジング部材22、および第2ハウジング部材23はこの順で、上流側から水素ガスの流通方向に並んでいる。これらの部材21,22,23が相互連結されることにより、ボディ11が組み立てられている。組み立て後のボディ11において、継ぎ手部材21、第1ハウジング部材22および第2ハウジング部材23は、共通の軸線L上に配置されている。
【0014】
継ぎ手部材21の形状は、概ね段付きの円柱状である。継ぎ手部材21における大径部31の外周面は、雄ねじを有している。継ぎ手部材21は、ガス流路17の一部である継ぎ手流路32を有している。継ぎ手流路32は、軸線Lに沿って直線状に延びており、継ぎ手部材21の両端に開口している。継ぎ手流路32の上流側の開口が一次ポート4として機能する。継ぎ手部材21は、フィルタ33を備えている。フィルタ33は、継ぎ手流路32の下流側の開口に設けられている。
【0015】
第1ハウジング部材22の形状は、概ね円柱状である。第1ハウジング部材22の外径は、継ぎ手部材21の外径よりも大きい。
【0016】
第1ハウジング部材22は、ガス流路17の一部である第1取付穴41および第2取付穴42を有している。第1取付穴41および第2取付穴42の形状は、丸穴状である。第1取付穴41は、第1ハウジング部材22の上流側の端面に開口している。第2取付穴42は、第1取付穴41の下流側に連続している。第1取付穴41および第2取付穴42は、同一の軸線L上に設けられている。第1取付穴41の内周面は、雌ねじを有している。継ぎ手部材21は、その大径部31が第1取付穴41に締め付けられることにより、第1ハウジング部材22に連結されている。第2取付穴42の内径は、第1取付穴41の内径よりも小さい。第2取付穴42には、弁座12が取り付けられている。すなわち、弁座12はガス流路17の途中に設けられている。
【0017】
第1ハウジング部材22は、ガス流路17の一部である収容穴43を有している。収容穴43は、概ね丸穴形状である。収容穴43は第2取付穴42に連通するとともに、第1ハウジング部材22の下流側の端面に開口している。収容穴43は、軸線L上に設けられている。第1ハウジング部材22は、収容穴43と第2取付穴42とを互いから仕切る隔壁44を有している。隔壁44の形状は、軸線Lに沿った方向からみて円環状である。隔壁44の内径は、上流側へ向かうにつれて徐々に小さくなる。収容穴43内には、弁体13の一部が収容される。すなわち、弁体13は、ガス流路17における弁座12の下流側に設けられている。
【0018】
第1ハウジング部材22は、円環状の設置溝46を有している。設置溝46は、収容穴43の周囲に位置している。設置溝46は、収容穴43と同様に、第1ハウジング部材22の下流側に開口している。設置溝46は、第1ハウジング部材22に設けられた円筒状の内壁47と円筒状の外壁48との間の隙間として設けられている。内壁47は、設置溝46の内郭を規定する。外壁48は、設置溝46の外郭を規定する。外壁48は、内壁47よりも下流側に突出している。外壁48の外周面は、第1ハウジング部材22の外周面の一部を構成する。外壁48の外周面には、雄ねじが設けられている。この雄ねじは、設置溝46と対応する位置に設けられている。なお、第1ハウジング部材22は、設置溝46の内部とボディ11の外部とを互いに連通させる連通路49を有している。
【0019】
第2ハウジング部材23の形状は、概ね円柱状である。第2ハウジング部材23の外径は、第1ハウジング部材22の外径よりもやや大きい。第2ハウジング部材23は、連結穴51を有している。連結穴51は、第2ハウジング部材23の上流側の端面に開口している。連結穴51の形状は、丸穴状である。連結穴51の内周面には、雌ねじが設けられている。この雌ねじは連結穴51の開口端寄りに位置している。連結穴51に外壁48を挿入しつつ締め付けることにより、第1ハウジング部材22が第2ハウジング部材23に連結されている。なお、外壁48の外周面には、たとえばOリングなどの第3シール部材52が装着されている。
【0020】
また、第2ハウジング部材23は、ガス流路17の一部であるハウジング流路53を有している。ハウジング流路53は、軸線Lに沿って直線状に延びている。ハウジング流路53は、連結穴51の底面に上流側の開口を有し、第2ハウジング部材23の下流側の端面に下流側の開口を有している。ハウジング流路53の下流側の開口が二次ポート5として機能する。
【0021】
弁座12は、樹脂製である。弁座12の形状は、円環状である。弁座12は、第1ハウジング部材22の第2取付穴42に配置されている。そして、弁座12は、第1取付穴41に取り付けられた継ぎ手部材21によって第2取付穴42の底面に押さえつけられている。弁座12は、弁孔61を有している。弁孔61は、軸線Lに沿って直線状に延びており、軸線Lに沿った方向における弁座12の両端面に開口している。弁孔61の下流側の領域において、弁孔61の内周面は下流側に向かうほど内径がより大きくなるように傾斜している。
【0022】
弁体13は、金属製である。図2に示すように、弁体13は、頭部71と、本体部72と、受圧部73とを有している。頭部71、本体部72および受圧部73は、上流側からこの順で一体に形成されている。頭部71および本体部72は、第1ハウジング部材22の収容穴43に収容されている。受圧部73は、内壁47から下流側へ突出していて外壁48の内側に収容されている。弁体13は、ボディ11の内部において軸線Lに沿って移動可能である。また、弁体13は、弁座12に対して接離可能である。
【0023】
頭部71の形状は、概ね円柱状である。頭部71は、先端側、すなわち上流側に向かって先細となるテーパ形状を有している。頭部71のテーパ形状は、弁孔61の下流側の領域における傾斜に対応して傾斜している。
【0024】
本体部72の形状は、概ね段付きの円柱状である。本体部72は、先端部81と、中間部82と、基端部83とを有している。先端部81、中間部82および基端部83は、上流側からこの順で一体に形成されている。頭部71は、先端部81における上流側の端面に設けられている。本体部72の外径は、先端部81、中間部82、基端部83の順に、より大きい値に設定されている。基端部83の外周面は、第1装着溝84を有している。第1装着溝84は、基端部83の全周にわたって延びる円環状に設けられている。
【0025】
先端部81の外径は、第1ハウジング部材22の隔壁44の内径よりも小さく、先端部81と隔壁44との間の隙間はガス流路の17の一部として機能する。中間部82の外径は、先端部81の外径よりも大きい。基端部83の外径は、収容穴43の内径よりもわずかに小さい。基端部83の外周面は、収容穴43の内周面に対して摺動可能である。
【0026】
また、本体部72は、複数(たとえば4つ)の横穴86と、1つの縦穴87とを有している。各横穴86は、軸線Lと直交する方向に沿って直線状に延びている。各横穴86は、中間部82の外周面に開口している。複数の横穴86は、本体部72の周方向に等角度間隔で設けられている。縦穴87は、軸線Lに沿って直線状に延びている。縦穴87は、本体部72における頭部71と反対側の端面に開口している。すなわち、縦穴87の下流側の端部は、ガス流路17における弁体13の下流側に開口している。縦穴87の上流側の端部は、複数の横穴86のそれぞれに連通している。複数の横穴86および縦穴87は、弁体流路を構成する。
【0027】
受圧部73の形状は、概ね段付きの円環状である。受圧部73は、本体部72の下流側の端部から径方向における外側に延出されている。受圧部73の外径は、第1ハウジング部材22の外壁48の内径よりもわずかに小さい。受圧部73の外周面は、外壁48の内周面に対して摺動可能である。受圧部73の軸線Lに沿った方向における厚みは、径方向における外側部分の方が径方向における内側部分よりも厚い。受圧部73の外周面は、第2装着溝88を有している。第2装着溝88は、受圧部73の全周にわたって延びる円環状に設けられている。
【0028】
付勢部材14には、たとえば圧縮コイルばねが採用されている。付勢部材14は、設置溝46に収容されている。付勢部材14は、設置溝46において、設置溝46の底面と弁体13の受圧部73との間で軸線Lに沿って圧縮されている。付勢部材14は、弁体13を弁座12から離間する開弁方向、すなわち水素ガスの流通方向における下流側へ向けて付勢する。
【0029】
第1シール部材15および第2シール部材16には、リップシールが採用されている。第1シール部材15は第1装着溝84に装着され、第2シール部材16は第2装着溝88に装着されている。第1シール部材15は、本体部72の外周面と収容穴43の内周面との間を密封する。第2シール部材16は、受圧部73の外周面と外壁48の内周面との間を密封する。これにより、減圧された水素ガスが設置溝46および連通路49を介して外部に放出されることが抑制される。
【0030】
つぎに、減圧弁1の動作について説明する。
【0031】
一次ポート4から高圧の水素ガスが供給される前の初期状態において、弁体13は付勢部材14の付勢力により下流側に移動した状態に維持される。すなわち、減圧弁1は、弁体13が弁座12から離間した開弁状態に維持される。
【0032】
一次ポート4から供給される一次圧の水素ガスは、ガス流路17である継ぎ手流路32を通り、弁孔61と弁体13の頭部71との間の隙間を介して収容穴43内に流入する。水素ガスは、弁孔61と頭部71との間の隙間を通過する際に、当該隙間の大きさに応じて減圧される。減圧された水素ガスは、横穴86および縦穴87を介してガス流路17であるハウジング流路53に流入し、二次ポート5から送出される。このように弁孔61を介して流入する水素ガスが増加することで、二次圧が上昇する。
【0033】
弁体13は、付勢部材14の付勢力および弁孔61を介して頭部71が受ける一次圧に応じた付勢力によって、下流側である開弁方向へ付勢される。これに対し、弁体13は、主に受圧部73が受ける二次圧に応じた付勢力によって、上流側である閉弁方向へ付勢される。弁体13は、このような上流側へ向けた付勢力と下流側へ向けた付勢力との大小関係に応じて移動する。
【0034】
弁体13は、二次圧の上昇に応じて弁座12に接近し、二次圧が設定圧力に達すると、弁座12に着座する。すなわち、減圧弁1は閉弁した状態となる。
【0035】
この後、燃料電池3において水素ガスが消費されることによって二次圧が低下すると、この二次圧の低下に伴い弁体13が下流側へ向けて移動する。やがて減圧弁1が再び開弁した状態になると、一次ポート4から水素ガスが流入する。このように一次圧と二次圧との差圧に応じて弁体13が移動することにより、設定圧力に調整された水素ガスが減圧弁1から燃料電池3へ供給される。
【0036】
ここで、ガス流路17における弁体13の上流側、すなわち弁体13に対して一次ポート4が設けられている側を一次側として参照し、ガス流路17における弁体13の下流側、すなわち弁体13に対して二次ポート5が設けられている側を二次側として参照する。ガス流路17は、弁体13の上流側に位置する一次側流路部と、弁体13の下流側に位置する二次側流路部とを含む。また、収容穴43における基端部83を基準とする一次側の空間を圧力室43Aとして参照する。すなわち、一次側流路部は、弁体13と弁座12との間に形成される空間である圧力室43Aを含む。
【0037】
このように構成した減圧弁1においては、つぎのようなことが懸念される。たとえば減圧弁1が開弁した状態において、多量の水素ガスが一次ポート4から急激に流入する際、ガス流路17における一次側流路部の圧力、より具体的には圧力室43Aの圧力が急激に上昇することが考えられる。この場合、一次側流路部の圧力と二次側流路部の圧力との差がより大きくなることによって、弁体13の閉弁動作が遅れるおそれがある。この弁体13の閉弁動作の遅れに起因して二次圧が設定圧力の値を超えることが懸念される。
【0038】
そこで、本実施の形態では、弁体13としてつぎの構成を採用している。
【0039】
図3に示すように、弁体13は、複数(たとえば4つ)の補助流路89を有している。これら補助流路89は、弁体13の先端部81に頭部71の周囲を囲むかたちで設けられている。補助流路89は、頭部71の周方向において等間隔に設けられている。各補助流路89は、軸線Lに沿って直線状に延びている。各補助流路89は、縦穴87の上流側における直下で縦穴87を圧力室43Aに連通させている。換言すると、各補助流路89は、縦穴87の上流側の内端面に開口している。各補助流路89は、先端部81と隔壁44との間の空間である圧力室43Aと、縦穴87の内部、すなわち弁体流路の途中の部分とを互いに連通させている。補助流路89の寸法である内径D1は、たとえば減圧弁1が全開状態であるときの弁座12と弁体13の頭部71との間の隙間の長さD2よりも大きく設定される。長さD2は、弁体13と弁座12との間の隙間の寸法、すなわち弁体13と弁座12との間の距離である。
【0040】
この構成を採用することにより、つぎのような作用および効果が得られる。
【0041】
(1-1)弁体13は、補助流路89有しているため、圧力室43Aに流入する水素ガスは、補助流路89を介してガス流路17の二次側流路部へ流出することが補助される。このため、多量の水素ガスが圧力室43Aに急激に供給される場合であれ、圧力室43Aの圧力が急激に上昇することが抑えられる。ひいては、弁体13を基準とする一次側の圧力と二次側の圧力との差が低減されるため、弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を行う。したがって、二次側の圧力をより適切に調整することができる。
【0042】
詳しくは、減圧弁1が開弁した状態において、一次ポート4から供給される水素ガスは、弁座12と弁体13の頭部71との間の隙間を介して収容穴43の内部、より具体的には圧力室43Aに流入する。収容穴43の内部に流入する水素ガスの一部は、複数の補助流路89を介して縦穴87の内部に即時にかつ直接的に流入する。収容穴43の内部に流入する水素ガスの残りの一部は、弁体13の先端部81を迂回するかたちで先端部81と隔壁44との間の隙間を下流側へ移動しつつ横穴86を介して縦穴87の内部に流入する。したがって、一次ポート4から供給される水素ガスの一部、すなわち補助流路89を介して縦穴87に流入する水素ガスは、横穴86を介して縦穴87に流入する水素ガスに先立って燃料電池3に供給される。このため、減圧弁1が開弁した状態において多量の水素ガスが一次ポート4から急激に流入する場合であれ、一次側流路部の一部である圧力室43Aの圧力が急激に上昇することが抑制される。また、水素ガスの一部が補助流路89を介していち早く燃料電池3へ供給されることにより、二次側流路部の圧力もより早く上昇し始める。したがって、一次側流路部の一部である圧力室43Aの圧力と二次側流路部の圧力との差が、より迅速に低減される。これにより、二次側流路部の圧力の上昇に伴い弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を開始する。したがって、二次側流路部の圧力が設定圧力を超えることが抑制される。減圧弁1によれば、水素ガスの圧力をより適切に調整することができる。
【0043】
(1-2)補助流路89は、圧力室43Aを弁体流路である縦穴87の途中の部分に連通させている。この構成によれば、圧力室43Aから縦穴87へのガスの流入が補助される。これにより、圧力室43Aからガス流路17の二次側流路部へ向けた水素ガスの流出が促される。
【0044】
なお、各補助流路89は圧力室43Aを横穴86の途中の部分(弁体流路の途中の部分)に連通させるように設けられてもよい。このようにしても、圧力室43Aから横穴86、ひいては縦穴87への水素ガスの流入が補助される。これにより、圧力室43Aからガス流路17の二次側流路部へ向けた水素ガスの流出が促される。
【0045】
また、第1の実施の形態によれば、さらに以下の効果を得ることもできる。
【0046】
(1-3)補助流路89は、弁体13の軸線Lに沿って延び、縦穴87の直下で縦穴87を圧力室43Aに連通させている。この構成によれば、縦穴87に対する水素ガスの流入が補助される。これにより、圧力室43Aからガス流路17の二次側流路部へ向けた水素ガスの流出が促される。
【0047】
(1-4)補助流路89の内径D1は、減圧弁1が全開状態であるときの弁座12と弁体13の頭部71との間の隙間の長さD2よりも長い。このため、圧力室43Aから縦穴87、ひいてはガス流路17の二次側流路部へ向けたより多くの水素ガスの流出が促される。
【0048】
<第1の実施の形態の変形例>
つぎに、減圧弁の第1の実施の形態の変形例を説明する。本変形例は、基本的には先の図1図3に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。説明の便宜上、同一の構成については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図4に示すように、弁体13の先端部81a全体の形状は、テーパ状である。先端部81aは頭部71の下流側に連続して設けられている。つまり、先端部81aは、テーパ部を構成する。先端部81aの外周面は、先端部81aの軸方向全域にわたり、弁体13の軸線Lに対して傾斜している。換言すると、先端部81aの外周面は、弁体13の軸線Lと直交する平面を含まない。一例として、先端部81aの外周面が軸線Lに対して一定角度をなすように、先端部81aの外周面の外径が下流側から上流側に向かって線形的に小さくなっている。
【0050】
各補助流路89aは、先端部81aの外周面に開口する第1開口部89bと、縦穴87の内端面に開口する第2開口部89cと、を有している。各補助流路89aは、弁体13の軸線Lに対して傾斜した方向に直線的に延びている。これにより、各第1開口部89bは、頭部71から径方向外側に離れた位置に設けられている。複数の補助流路89aの軸線Lに対する傾斜角は同一である。なお、補助流路89aの内径は、上記第1の実施の形態の補助流路89の内径D1と等しい。
【0051】
この構成を採用することにより、上記第1の実施の形態の作用および効果に加え、つぎのような作用および効果が得られる。
【0052】
(1-5)弁体13は、頭部71の下流側に連続して設けられる先端部81aを有し、先端部81aの外周面は、先端部81aの軸方向全域にわたり、弁体13の軸線Lに対して傾斜している。つまり、先端部81aの外周面が弁体13の軸線Lと直交する平面を含まない。そのため、先端部81aが軸線Lと直交する平面を含む場合に比べ、流入した水素ガスが溜まって高圧となる部分、いわゆる圧だまりが先端部81aの上流側に発生することを抑制できる。これにより、ガス流路17の一次側流路部の圧力と二次側流路部の圧力との差が低減されるため、弁体13が適切なタイミングで閉弁動作を行うようになる。
【0053】
(1-6)補助流路89aは、先端部81aの外周面に開口する第1開口部89bを有している。補助流路89aは、第1開口部89bが頭部71から離れるように、弁体13の軸線Lに対して傾斜した方向に延びている。このように第1開口部89bが頭部71から離れているため、補助流路89aを形成する際に頭部71を傷つけにくくなり、弁体13の加工が容易になる。
【0054】
なお、上記のように頭部71のテーパ形状が弁孔61の下流側の領域における傾斜に対応して傾斜していることで、頭部71の外周面は弁孔61の内周面に密着する。これにより、閉弁時に水素ガスが弁孔61を通過することを防止する。したがって、頭部71を傷つけずに補助流路89aを加工することは重要である。
【0055】
<第2の実施の形態>
つぎに、減圧弁の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1図3に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。説明の便宜上、同一の構成については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図5に示すように、第1ハウジング部材22は、収容穴43と第2取付穴42とを互いから仕切る隔壁91を有している。隔壁91は、軸線Lと直交する円環状の平板である。隔壁91は、嵌合孔92を有している。嵌合孔92は、収容穴43と第2取付穴42とを互いに連通させている。嵌合孔92は、大径部および小径部を有する二段の孔である。嵌合孔92の大径部は収容穴43が設けられた側に、嵌合孔92の小径部は第2取付穴42が設けられた側に位置している。嵌合孔92における大径部の内径は、弁体13の先端部81の外径よりもわずかに大きい。嵌合孔92の大径部には、弁体13の先端部81が嵌合されている。ただし、先端部81の外周面は、嵌合孔92の内周面に対して摺動可能である。
【0057】
ちなみに、減圧弁1が全開状態である場合であれ先端部81が嵌合孔92から抜けない程度に、先端部81および嵌合孔92の大きさなどが設定される。また、隔壁91における嵌合孔92の周縁部分と中間部82における上流側の端部とは、軸線Lに沿った方向において互いに対向している。頭部71が弁座12に着座するまで中間部82が隔壁91に当接しないように、中間部82と隔壁91との間の距離などが設定される。
【0058】
嵌合孔92の内部には、嵌合孔92と弁体13との嵌合によって圧力室43Aの一部が区画かつ分離された予備室93が設けられている。予備室93は、弁体13の先端部81、嵌合孔92の内周面、および弁座12により囲まれることによって形成される空間である。弁体13の先端部81に設けられた複数の補助流路89は、予備室93に開口している。すなわち、予備室93と縦穴87とは、補助流路89を介して互いに連通している。
【0059】
この構成によれば、つぎのような作用および効果が得られる。
【0060】
(2-1)弁体13は、補助流路89有しているため、圧力室43Aの一部である予備室93に流入する水素ガスは、補助流路89を介してガス流路17の二次側流路部へ流出することが補助される。このため、多量の水素ガスが圧力室43Aに急激に供給される場合であれ、圧力室43Aの圧力が急激に上昇することが抑えられる。ひいては、弁体13を基準とする一次側の圧力と二次側の圧力との差が低減されるため、弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を行う。したがって、二次側の圧力をより適切に調整することができる。
【0061】
詳しくは、減圧弁1が開弁した状態において、一次ポート4から供給される水素ガスは、弁座12と弁体13の頭部71との間の隙間を介して、いったん予備室93に流入する。予備室93に流入する水素ガスの一部は、複数の補助流路89を介して縦穴87の内部に即時にかつ直接的に流入する。予備室93から縦穴87の内部に流入する水素ガスの残りの一部は、横穴86を介して圧力室43Aに流入する。したがって、一次ポート4から供給される水素ガスの一部、すなわち補助流路89を介して縦穴87に流入する水素ガスは、横穴86を介して縦穴87に流入する水素ガスに先立って燃料電池3に供給される。このため、減圧弁1が開弁した状態において多量の水素ガスが一次ポート4から急激に流入する場合であれ、一次側流路部の一部である圧力室43Aの圧力が急激に上昇することが抑制される。また、水素ガスの一部が補助流路89を介していち早く燃料電池3へ供給されることにより、二次側流路部の圧力もいち早く上昇し始める。したがって、圧力室43Aの圧力と二次側流路部の圧力との差が、より迅速に低減される。これにより、二次側流路部の圧力の上昇に伴い弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を開始する。したがって、二次側流路部の圧力が設定圧力を超えることが抑制される。減圧弁1によれば、水素ガスの圧力をより適切に調整することができる。
【0062】
また、第2の実施の形態によれば、さらに以下の効果を得ることもできる。
【0063】
(2-2)弁体13が弁座にしっかりと着座した全閉状態において弁体13が弁座12に向かってさらに移動しようとするとき、中間部82における上流側の端部が隔壁91における嵌合孔92の周縁部分に当接する。弁体13の上流側へ向けたさらなる移動が規制されることにより、弁座12の過度な変形が抑制される。
【0064】
<第3の実施の形態>
つぎに、減圧弁の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図5に示される第2の実施の形態と同様の構成を有している。説明の便宜上、同一の構成については第2の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図6に示すように、隔壁91はガス流路17の一部である第3取付穴101を有している。第3取付穴101は、たとえば嵌合孔92の一部分として設けてもよい。第3取付穴101は、嵌合孔92における第2取付穴42が設けられた側、すなわち上流側の部分が拡径されるかたちで設けられている。第3取付穴101の形状は、丸穴状である。第3取付穴101は、軸線L上に位置している。第3取付穴101の内径は、第2取付穴42の内径よりも小さく、かつ嵌合孔92の内径よりも大きい。
【0066】
第3取付穴101には、ストッパ102が取り付けられている。ストッパ102は、たとえば座金であってもよい。ストッパ102における上流側の端面全体が弁座12に接触している。ストッパ102は、金属材料または合成樹脂材料製である。ストッパ102の形状は、円環状である。ストッパ102は、軸線Lに沿って直線状に延びる貫通孔103を有している。貫通孔103は、ストッパ102の軸線Lに沿った方向において互いに反対側に位置する2つの側面に開口している。貫通孔103の内径は、弁体13の頭部71の外径よりも大きく、かつ弁体13の先端部81の外径よりも小さい。
【0067】
ちなみに、弁体13の頭部71が弁座12に着座するタイミングで先端部81における上流側の端面がストッパ102に当接するように、先端部81における上流側の端面とストッパ102との間の距離などが設定される。また、本実施の形態では、弁体13の先端部81、嵌合孔92の内周面、ストッパ102の内周面、および弁座12により囲まれることによって形成される空間が予備室93として機能する。なお、圧力室43Aにおける予備室93以外の残りの部分を、主室94として参照することがある。
【0068】
ストッパ102は、複数の溝104を有している。これら溝104は、ストッパ102の下流側の側面に設けられている。複数の溝104は、ストッパ102の半径方向に沿って延びていて、ストッパ102の内周から外周までの全長にわたって設けられている。また、複数の溝104は、ストッパ102の円周方向において等角度間隔で設けられている。溝104の深さD3は、上記長さD2よりも短く設定される。すなわち、溝104に係る流路面積は、弁座12と弁体13との間の隙間に係る流路面積よりも小さい値に設定される。
【0069】
隔壁91は、複数の細孔105を有している。細孔105は、溝104と同じ数だけ設けられる。細孔105は、軸線Lに沿って延びている。細孔105は、圧力室43Aの主室94と第3取付穴101との間を連通している。細孔105の内径は、溝104の深さD3と同程度の大きさであってもよい。細孔105は、ストッパ102の溝104に対応するように、嵌合孔92の円周方向に沿って等角度間隔で設けられている。ストッパ102は、溝104が細孔105に対応するように第3取付穴101に取り付けられている。溝104と細孔105とは、互いに連通した状態に維持される。すなわち、溝104と細孔105とから、より狭いガス流路である複数の絞り流路106が構成される。これにより、圧力室43Aにおける主室94と予備室93とは、複数の絞り流路106を介して互いに連通している。絞り流路106の寸法は、上記長さD2よりも短く設定される。
【0070】
ちなみに、絞り流路106の寸法は、減圧弁1が全開状態であるときの弁座12と弁体13との間の隙間の寸法よりも小さい値に設定されている部分を有していればよい。すなわち、溝104および細孔105のいずれか一方の寸法が、長さD2よりも小さい値に設定されていればよい。
【0071】
また、ストッパ102は別部材として設けなくてもよい。たとえばストッパ102に相当する部分を第1ハウジング部材22に一体形成するようにしてもよい。この場合、加工性の観点から、溝104に代えて、たとえば圧力室43Aにおける主室94と予備室93との間を連通する斜状の孔を絞り流路106として設けてもよい。
【0072】
なお、嵌合孔92を含む隔壁91、および絞り流路106は、圧力室43Aの主室94に弁座12と弁体13との間の隙間に応じて流入する水素ガスの流量を絞る絞り部を構成する。
【0073】
この構成によれば、つぎのような作用および効果が得られる。
【0074】
(3-1)減圧弁1は、絞り部である絞り流路106を有している。この構成によれば、圧力室43Aの主室94に流入する水素ガスの流量が絞り流路106によって絞られる。このため、多量の水素ガスが圧力室43Aに急激に供給される場合であれ、主室94の圧力が急激に上昇することが抑えられる。ひいては、弁体13を基準とする一次側の圧力と二次側の圧力との差が低減されるため、弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を行う。したがって、二次側の圧力をより適切に調整することができる。
【0075】
詳しくは、減圧弁1が開弁した状態において、一次ポート4から供給される水素ガスは、弁座12と弁体13の頭部71との間の隙間を介して、いったん予備室93に流入する。この予備室93に流入する水素ガスは、複数の絞り流路106を介して主室94に流入する。ただし、水素ガスは絞り流路106を通過する際、絞り流路106の流路面積に応じてさらに減圧される。つまり、予備室93に流入する水素ガスは絞り流路106を通過することにより流量が絞られて主室94へ供給される。このため、減圧弁1が開弁した状態において多量の水素ガスが一次ポート4から急激に流入する場合であれ、主室94の圧力が急激に上昇することが抑制される。また、主室94の圧力上昇速度がより緩やかに抑えられることにより、ガス流路17の二次側流路部の圧力もより緩やかに上昇する。このため、一次側流路部の圧力と二次側流路部の圧力との差がより小さくなる。これにより、二次側流路部の圧力の上昇に伴い弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を開始する。したがって、二次側流路部の圧力が設定圧力を超えることも抑制される。減圧弁1によれば、水素ガスの圧力をより適切に調整することができる。また、主室94の圧力上昇速度が抑えられることにより、弁体13はより円滑に閉弁動作および開弁動作を行うことができる。
【0076】
また、第3の実施の形態によれば、さらに以下の効果を得ることもできる。
【0077】
(3-2)絞り流路106の寸法は、長さD2よりも短い部分を有している。このため、予備室93から主室94へ流入する水素ガスの流量を好適に絞ることができる。
【0078】
(3-3)弁体13が弁座12に着座した状態からさらに弁座12へ向けて移動しようとするとき、先端部81における上流側の端面がストッパ102に当接する。弁体13の上流側へ向けたさらなる移動が規制されることにより、弁座12の過度な変形が抑制される。
【0079】
<第4の実施の形態>
つぎに、減圧弁の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図5に示される第2の実施の形態と同様の構成を有している。説明の便宜上、同一の構成については第2の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図7に示すように、弁体13は、複数(たとえば4つ)の絞り流路107を有している。複数の絞り流路107は、その内径が異なること以外、上記第2の実施の形態における複数の補助流路89と同様に構成されている。そのため、絞り流路107は、予備室93と縦穴87と互いに連通させている。絞り流路107の内径は、上記長さD2よりも短く設定されている。
【0081】
なお、嵌合孔92を含む隔壁91、および弁体13に設けられる絞り流路107は、圧力室43Aの主室94に弁座12と弁体13との間の隙間に応じて流入する水素ガスの流量を絞る絞り部を構成する。
【0082】
この構成によれば、つぎのような作用および効果が得られる。
【0083】
(4-1)減圧弁1は、絞り部である絞り流路107を有している。この構成によれば、圧力室43Aの主室94に流入する水素ガスの流量が絞り流路107によって絞られる。このため、多量の水素ガスが圧力室43Aに急激に供給される場合であれ、圧力室43Aの圧力が急激に上昇することが抑えられる。ひいては、弁体13を基準とする一次側の圧力と二次側の圧力との差が低減されるため、弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を行う。したがって、二次側の圧力をより適切に調整することができる。
【0084】
詳しくは、減圧弁1が開弁した状態において、一次ポート4から供給される水素ガスは、弁座12と弁体13の頭部71との間の隙間を介して、いったん予備室93に流入する。この予備室93に流入する水素ガスは、複数の絞り流路107および横穴86を介して圧力室43Aの主室94に流入する。ただし、水素ガスは絞り流路107を通過する際、絞り流路107の流路面積に応じてさらに減圧される。つまり、予備室93に流入する水素ガスは絞り流路107を通過することにより流量が絞られて主室94へ供給される。このため、減圧弁1が開弁した状態において多量の水素ガスが一次ポート4から急激に流入する場合であれ、主室94の圧力が急激に上昇することが抑制される。また、主室94の圧力上昇速度がより緩やかに抑えられることにより、二次側流路部の圧力もより緩やかに上昇する。このため、一次側流路部の圧力と二次側流路部の圧力との差がより小さくなる。これにより、二次側流路部の圧力の上昇に伴い弁体13はより適切なタイミングで閉弁動作を開始する。したがって、二次側流路部の圧力が設定圧力を超えることも抑制される。減圧弁1によれば、水素ガスの圧力をより適切に調整することができる。また、主室94の圧力上昇速度が抑えられることにより、弁体13はより円滑に閉弁動作および開弁動作を行うことができる。
【0085】
<他の実施の形態>
なお、第1~第4の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
【0086】
・第1の実施の形態の変形例において、補助流路89aの形状等は適宜変更可能である。例えば、第2開口部89cは、縦穴87の端面でなく、横穴86の内周面に開口してもよい。また、図8に示すように、各補助流路89aが弁体13の軸線Lに沿って直線状に延びていてもよい。この例では、第1開口部89bは、頭部71に対して径方向に隣接した位置に設けられている。
【0087】
・第1の実施の形態の変形例では、先端部81aの外周面が軸線Lに対して一定角度をなすように、先端部81aの外周面の外径が下流側から上流側に向かって線形的に小さくなったが、これに限らない。たとえば先端部81aの外周面の軸線Lに対する角度が徐々に小さくなるように、先端部81aの外周面の外径が下流側から上流側に向かって非線形的に小さくなってもよい。
【0088】
・各実施の形態では、付勢部材14として圧縮コイルばねを採用したが、これに限らず、たとえば皿ばねなどの他の弾性部材を採用してもよい。
【0089】
・各実施の形態では、減圧弁1を高圧の水素ガスを減圧する用途に用いたが、これに限らず、水素以外の高圧ガスを減圧する用途に用いてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8