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特許7601123軸受の軌道輪のはく離進展解析方法、はく離解析装置、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】軸受の軌道輪のはく離進展解析方法、はく離解析装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20190101AFI20241210BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01M13/04
F16C33/58
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023002416
(22)【出願日】2023-01-11
(65)【公開番号】P2024098750
(43)【公開日】2024-07-24
【審査請求日】2024-09-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 康
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-143936(JP,A)
【文献】特許第6844764(JP,B2)
【文献】特開2020-143947(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117752(WO,A1)
【文献】特開2014-142324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/04
F16C 33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械に使用される、内外軌道輪と当該内外軌道輪間の転動体を有する転がり軸受の軌道輪のはく離の進展を予測するはく離進展解析方法であって、
はく離状況取得手段によって前記軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得する工程と、
少なくとも取得されたはく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、および前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転動体が前記軌道輪の前記はく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する工程と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する工程と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する工程と、
を備え、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される、転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
【請求項2】
前記転動体の逃げ量は、動的FEM(Finite Element Method)解析により特定される、請求項1に記載の転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
【請求項3】
前記はく離の進展速度は、
【数1】

da/dN:き裂進展速度
ΔK:応力拡大係数変動幅
C、m:実験定数
:転動体の最大面圧(集中面圧)
a:周方向のき裂長さ
:比例係数
π:円周率
を用いて算出される、請求項1または2に記載の転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
【請求項4】
所定のはく離部の形状になるまでの残存時間を残存寿命として出力する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
【請求項5】
回転機械に使用される、内外軌道輪と当該内外軌道輪間の転動体を有する転がり軸受の軌道輪のはく離の進展を予測するはく離進展解析装置であって、
前記軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得するはく離状況取得手段と、
少なくとも取得された前記はく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転動体が前記軌道輪のはく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する荷重算出部と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する進展速度算出部と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する演算部と、
を備え、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される、転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析装置。
【請求項6】
コンピュータに、
はく離状況取得手段によって、転がり軸受の軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得する工程と、
少なくとも取得されたはく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、および前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転がり軸受の転動体が前記軌道輪の前記はく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する工程と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する工程と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する工程と、
を実行させ、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の軌道輪のはく離進展解析方法、はく離解析装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受は様々な装置にて利用されている。軸受を利用する装置の例として、風力発電装置がある。風力発電装置用軸受のような大型軸受の場合、その設置や交換が容易ではないため、仮に部品などの異常が発生した場合でも一定期間はその部品のまま動作を継続することがありうる。
【0003】
例えば、軸受が荷重を受けて回転すると、内輪と外輪の軌道面及び転動体の転動面は絶えず繰返し荷重を受けるため、材料の疲れによってはく離と呼ばれるうろこ状の微小な損傷が現れることがある。一般的にこのはく離によって使用不能に至るまでを軸受寿命として定義している。軸受の動作が行われる中ではく離が発生したとしても、交換部品の調達や設置ができるまでの期間、発電量を制限するなどの動作負荷を抑制することで運転を継続することが行われている。しかしながら、交換時期が遅れて、軸受内でのはく離が急速に進んでしまうと、当初は軽微な異常であったとしても、対象のはく離片がギヤなどの部品に噛み込んだり、内外輪が割れたりする。その結果、最悪の場合、装置全体が停止するような致命的な損傷を与える危険性がある。また、そのような損傷が生じた場合には、長期間に亘って装置を停止するようなメンテナンス作業が必要となる場合がある。
【0004】
このような事態を避けるために、例えば、特許文献1では、微小はく離発生後に、一定期間にわたって安全な状態で装置を利用できるように、微小はく離発生後のはく離の拡大とその時間を予測する解析方法が開示されている。また、特許文献2では、破壊力学手法を用いて転がり軸受の残存寿命予測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6844764号公報
【文献】特開2017-219469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、初期はく離の軸方向幅は、転動体の軸方向長さと同じと仮定して予測を行っている。そのため、はく離の軸方向幅が転動体の軸方向長さと異なる場合には、予測精度の低下、すなわち残存寿命が短くなる傾向が生じ得る。また、特許文献2では、運転に伴って変化していくはく離の形状を考慮していないため、はく離の進展速度に誤差が生じてしまう。
【0007】
上記課題を鑑み、本発明は、従来よりも予測精度を向上させた、軸受のはく離進展解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、回転機械に使用される、内外軌道輪と当該内外軌道輪間の転動体を有する転がり軸受の軌道輪のはく離の進展を予測するはく離進展解析方法は、
はく離状況取得手段によって前記軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得する工程と、
少なくとも取得されたはく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、および前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転動体が前記軌道輪の前記はく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する工程と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する工程と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する工程と、
を有し、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される。
【0009】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、回転機械に使用される、内外軌道輪と当該内外軌道輪間の転動体を有する転がり軸受の軌道輪のはく離の進展を予測するはく離進展解析装置は、
前記軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得するはく離状況取得手段と、
少なくとも取得された前記はく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転動体が前記軌道輪のはく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する荷重算出部と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する進展速度算出部と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する演算部と、
を備え、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される。
【0010】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、プログラムは、
コンピュータに、
はく離状況取得手段によって、転がり軸受の軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得する工程と、
少なくとも取得されたはく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、および前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転がり軸受の転動体が前記軌道輪の前記はく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する工程と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する工程と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する工程と、
を実行させ、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来よりも予測精度を向上させた、軸受のはく離進展解析方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るはく離進展解析装置の概略構成を示すブロック図。
図2】はく離の進展を説明するための図。
図3】従来の解析方法を用いた解析結果を説明するためのグラフ図。
図4】ころの逃げと集中面圧の発生を説明するための図。
図5】転動体の慣性を考慮した動的FEM解析を説明するための図。
図6】動的FEM解析の結果の例を示す分解図。
図7】本発明の一実施形態に係る解析方法を用いた解析結果を説明するためのグラフ図。
図8】本発明の一実施形態に係る処理のフローチャート。
図9A】はく離発生前における転動体荷重の大きさを示す概念図。
図9B】はく離発生後における転動体荷重の大きさの変化を示す概念図。
図10A】はく離部と転動体との関係を示す拡大図。
図10B】はく離部と転動体との関係を示す拡大図。
図11A】はく離部の出口部を転動体が通過する状態を示す要部拡大図。
図11B】はく離部の形状を考慮したFEM解析による応力分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一実施形態であり、本発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法及びはく離進展解析装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[装置構成]
図1に示すように、本実施形態の軌道輪のはく離進展解析装置1は、機械設備20に組み込まれた転がり軸受10の内外軌道輪(即ち、内輪11または外輪12)に発生したはく離部を解析する。はく離進展解析装置1は、制御装置30、および出力装置40を備えている。はく離進展解析装置1は、解析対象である機械設備20に、データ伝送手段22を介して接続される。
【0016】
はく離状況取得手段21は、転がり軸受10のはく離の有無および形状を取得する。はく離状況取得手段21は、機械設備20に予め設置されてもよいし、機械設備20に着脱可能に構成され、解析時に機械設備20に取り付けられるような構成であってもよい。演算処理部31は、はく離状況取得手段21で取得した信号をデータ伝送手段22を介して受信し、信号処理を行って転がり軸受10の軌道輪のはく離の有無、及びはく離進展解析を行う。なお、本実施形態では、本実施形態に係る解析処理を実行する主体を演算処理部31としてまとめて示しているが、各処理工程ごとに別個の処理部として分けて構成してもよい。制御部32は、機械設備20を駆動制御する。なお、機械設備20の動作を制御する部位は、異なる装置にて行われてもよく、その場合には、制御装置30の制御部32は、その装置から制御に係るパラメータを取得するような構成であってよい。記憶部33は、解析に係る各種データやプログラム、解析結果などを記憶する。出力装置40は、モニタや警報機等からなり、はく離進展解析結果や転がり軸受10の残存寿命を出力する。
【0017】
転がり軸受10は、機械設備20の回転軸に外嵌される内輪11、ハウジング14等に内嵌される外輪12、内輪11及び外輪12との間で転動可能に配置された複数の転動体13、および、転動体13を転動自在に保持する保持器(不図示)を有する。
【0018】
はく離状況取得手段21は、はく離状況の取得方法に応じて、任意のものが選択される。例えば、はく離状況取得手段21をファイバースコープやカメラとして、はく離部の形状を直接観察してもよい。或いは、はく離状況取得手段21は、振動センサ、荷重センサ、変位センサなどが用いられてもよい、さらに、はく離状況取得手段21は、温度や、潤滑油中の鉄粉量(濃度)などを検出するものであってもよい。なお、振動センサ、荷重センサ、変位センサは、転がり軸受10の固定輪である外輪12が取り付けられたハウジング14の負荷圏に固定される。また、はく離状況取得手段21は、1の取得手段により構成されることに限定するものではなく、複数の種類の取得手段を組み合わせて構成されてもよい。
【0019】
制御装置30の演算処理部31や制御部32は、例えば、マイクロコンピュータ(ICチップ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等)により構成されており、後述する各処理をこのマイクロコンピュータのプログラムにより実行する。
【0020】
制御装置30は、演算処理部31で解析された転がり軸受10のはく離部の解析結果を、記憶部33に記憶すると共に、機械設備20の動作を制御部32へ出力し、解析結果に応じた機械設備20を駆動する制御信号を機械設備20の動作にフィードバック(回転数を落とすなどの安全運転動作)する。さらに、制御装置30は、有線又はネットワークを考慮した無線を利用したデータ伝送手段34により解析結果を出力装置40に送る。記憶部33は、揮発性や不揮発性の記憶装置から構成され、本実施形態に係る各種プログラムやデータを記憶および参照可能に構成される。記憶部33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などから構成されてよく、その構成は特に限定されるものではない。
【0021】
出力装置40は、転がり軸受10の解析結果をモニタ等にリアルタイムで表示する。また、異常が検出された場合に、ライトやブザー等の警報機を用いてオペレータに異常であることの注意を促すようにしてもよい。また、信号のデータ伝送手段22は、はく離状況取得手段21からの信号を的確に送受信可能であればよいので、有線でもよいし、ネットワークを考慮した無線を利用してもよい。
【0022】
[解析方法]
本実施形態に係る解析方法について説明する。まず、本実施形態に係る解析方法の比較対象となる従来方法と、その改善点について説明する。
【0023】
図2は、転がり軸受10を構成する回転輪である内輪11の軌道面において発生するはく離の進展状況の例を説明するための図である。図2(a)は、転がり軸受10の内輪11のみを取り出した外観斜視図である。ここでは、位置200において発生したはく離の進展について説明する。ここでは、転動体がたる形をしている自動調心ころ軸受の例を示す。はく離は、内輪11と転動体13との間で接触が生じる軌道面にて生じ、転がり軸受10の使用に伴って進展する。図2(b)~(e)に示す画像210~240は、はく離の進展状況を示す。画像210~240において、左右方向が軸方向に対応し、上下方向が周方向に対応する。画像210~240に示すように、はく離が進展することで、その範囲(軸方向および周方向)が徐々に大きくなる。
【0024】
図3は、従来の方法によるはく離の進展の予測結果と、実際の進展結果との対応関係を説明するためのグラフ図である。ここでは、従来の方法として、上記の特許文献1および特許文献2を用いて説明する。図3において、縦軸は回転輪の回転方向(周方向)におけるはく離の長さ[mm]を示し、横軸ははく離が発生してからの時間[h]の経過を示す。また、グラフ内に示すプロットの参照番号と、図2の各画像の参照番号は対応している。また、dは、転動体であるころ間のピッチを示す。
【0025】
ここでは2回の試験の計測結果と、従来の方法による予測結果とを比較して説明する。各試験において、内輪の軌道面にころによるはく離が生じ、おおよその状態は、図2の各画像にて示したものと同様である。直線301は、従来の方法としての特許文献1の方法に基づくはく離の進展の予測結果を示す。また、直線302は、従来の方法としての特許文献2の方法に基づくはく離の進展の予測結果を示す。
【0026】
図4は、はく離が生じた場合の転動体13(本例では、たる形のころ)の軸方向の逃げおよび集中面圧の発生を説明するための図である。図4(a)に示すように、軌道面にはく離が発生している場合、軸方向に転動体13の移動(以下、「逃げ」と称する)が生じる。ここでの逃げ量は、はく離の状態(形状等)に応じて変動する。そして、転動体13の逃げが生じた状態において、回転輪および転動体13が回転することで、転動体13がそのはく離の領域から脱出する際には、はく離の領域とそれ以外の領域との境界周辺にて、集中面圧が発生する。
【0027】
例えば、図2に示すように、はく離の初期段階(例えば、画像210)では、はく離は回転軸方向に進展する。このような段階では、図4(a)にて説明したような転動体13の逃げが生じ、更にはく離からの脱出の際に集中面圧が発生する。例えば、特許文献2の方法では、このような集中面圧に関連するはく離の形状を考慮していないため、図3の直線302に示すように、はく離の進展速度を過小評価してしまうという側面がある。
【0028】
また、特許文献1の方法では、はく離の形状を考慮して力の釣り合いを計算し、はく離の領域からの脱出の際の転動体の荷重を算出している。しかし、転動体の慣性を考慮した運動解析については提供していないため、はく離の進展に伴って、転動体の逃げと集中面圧が徐々に大きくなるという現象については予測できない。そのため、図3の直線301に示すように、はく離の進展速度を過大評価してしまうという側面がある。
【0029】
そこで、本実施形態に係る解析方法では、はく離の形状変化に伴う転動体の逃げおよび集中面圧を考慮した解析方法を提供する。本実施形態では、動的FEM(Finite Element Method)解析を用い、転動体の逃げ量および集中面圧のパラメータを特定し、解析結果に反映させる。
【0030】
図5は、本実施形態にて用いる、転動体の慣性を考慮した動的FEM解析を説明するための図である。図5(a)は、転がり軸受10としての自動調心ころ軸受の外観斜視図である。Faは、転がり軸受10に対するアキシアル荷重を示し、Frは転がり軸受10に対するラジアル荷重を示す。図5(b)は、図5(a)の領域500における回転輪の軌道面におけるはく離領域の画像である。図5(b)の画像において、左右方向が回転輪の回転方向に対応し、上下方向が回転軸方向に対応する。
【0031】
図5(c)は、領域500を拡大したモデル図である。外輪12と内輪11の間に転動体13(本例では、ころ)が配置されている。また、内輪11の軌道面には、はく離領域501が形成されている。そして、本実施形態では、動的FEM解析を行うことで、各部材間の接触による面圧を導出する。図5(c)の転動体13周りに示すグラデーションは、動的FEM解析で導出される面圧を示し、色が濃いほど面圧が高いことを示している。ここでは、転動体13と外輪12の間、および、転動体13と内輪11との間の接触による面圧が示されている。
【0032】
図6は、動的FEM解析に基づく、面圧の変遷および集中面圧の発生を説明するための図である。ここでは、はく離が発生した状態で転がり軸受10が動作している例を示す。図6(a)から図6(f)の順に変化し、図5(c)と同様、面圧をグラデーションにて示している。
【0033】
図6(a)は、転動体13がはく離領域外に位置する状態を示す。この状態では、転動体の逃げは生じていない。図6(b)は、転動体13がはく離領域に進入する直前の状態を示す。図6(c)は、転動体13がはく離領域の一部(図中右の狭い領域)から脱出する状態を示す。この場合、転動体13は図中左の広い領域側に逃げが生じていると想定されるため、脱出の際の面圧は比較的抑制される。逃げの発生により、外輪12と転動体13との間の面圧も抑制される。図6(d)および図6(e)は、図6(d)の状態から、更にはく離領域から脱出した状態を示す。このとき、徐々に転動体13と内輪11との間の面圧が上昇する。なお、転動体13と外輪12との間の面圧や接触範囲も変動する。図6(f)は、転動体13がはく離領域から完全に脱出した状態を示す。このとき、転動体13は図中左の広い領域側にて生じていた逃げが解消することに伴い、はく離領域とそれ以外の領域との境界周辺において、集中面圧が生じる。
【0034】
本実施形態では、動的FEM解析の結果に基づいて、軸方向の逃げ量および集中面圧のパラメータを導出し、予測の際に用いる。より詳細な導出方法については、処理フローと併せて後述する。
【0035】
図7は、本実施形態の方法によるはく離の進展の予測結果、従来の方法によるはく離の進展の予測結果、および、実際の進展結果の対応関係を説明するための片対数グラフ図である。ここでは、従来の方法は、図2と同様、特許文献1および特許文献2を用いて説明する。図7において、縦軸は回転輪の回転方向(周方向)におけるはく離の長さ[mm]を示し、横軸は試験時間[h]の経過を示す。また、グラフ内に示すプロットの参照番号と、図2の各画像の参照番号は対応している。また、dは、転動体であるころ間のピッチを示す。
【0036】
ここでは2回の試験の計測結果と、本実施形態の方法および従来の方法による予測結果とを比較して説明する。各試験において、内輪の軌道面にころによるはく離が生じ、おおよその状態は、図2の各画像にて示したものと同様である。曲線701は、従来の方法としての特許文献1の方法に基づくはく離の進展の予測結果を示す。曲線702は、従来の方法としての特許文献2の方法に基づくはく離の進展の予測結果を示す。曲線703は、本実施形態に係る方法に基づくはく離の進展の予測結果を示す。
【0037】
図7を参照すると、本実施形態に係る方法による予測結果(曲線703)は、従来の方法の予測結果(曲線701)と比較して、実際のはく離の発生タイミングにより近づくように予測することが可能となっている。また、本実施形態に係る方法による予測結果(曲線703)は、従来の方法の予測結果(曲線702)と比較して、実際のはく離の進展を表す変化度合い(曲率)をより正確に表現している。したがって、本実施形態に係る解析方法では、従来の方法に比べ、実際のはく離の進展状況をより正確に予測することが可能である。
【0038】
[処理フロー]
図8は、本実施形態に係る解析処理のフローチャートである。本処理は、はく離進展解析装置1の制御装置30により実行され、例えば、制御装置30が備える演算処理部31が本実施形態に係る処理を実現するためのプログラムを記憶部33から読み出して実行することにより実現されてよい。本処理は、転がり軸受10の運転開始に伴って開始されてもよいし、転がり軸受10が動作している最中にユーザの指示に基づいて開始されてもよい。また、本処理フローは、定期的に実行されるような構成であってもよい。
【0039】
S801にて、制御装置30は、はく離状況取得手段21によりはく離の有無及び形状を取得することではく離の監視を行う。例えば、はく離状況取得手段21がファイバースコープの場合、軌道面が直接観察される。なお、はく離の監視は、直接観察されることに限定するものではなく、転がり軸受10の諸元や運転条件に基づいて規定される指標に基づいて間接的に監視されてもよい。
【0040】
S802にて、制御装置30は、はく離状況取得手段21により取得した情報に基づいてはく離を検出したか否かを判定する。ここでのはく離の判定基準は予め規定されていてよい。例えば、図2(b)の状態よりも前の初期段階のはく離部が生じているか否かを判定してもよい。はく離を検出した場合(S802にてYES)、制御装置30の処理はS803へ進む。一方、はく離を検出していない場合(S802にてNO)、制御装置30の処理はS801へ戻り、監視を継続する。
【0041】
S803にて、制御装置30は、発生したはく離の形状、転がり軸受10の諸元、転がり軸受10の運転条件を入力パラメータとして特定し、本実施形態に係る演算プログラムに入力する。はく離の形状は、はく離状況取得手段21により取得した情報に基づいて特定され、例えば、はく離の面積、周方向長さ、軸方向長さなどが含まれてよい。転がり軸受10の諸元は、予め定義され、記憶部33などに保持されていてよい。運転条件は、予め設定されていてもよいし、不図示のセンサなどから得られる情報に基づいて設定されてもよい。そのほか、はく離と関連する情報が用いられてよく、例えば、振動、温度、潤滑剤中の鉄粉量(濃度)などが含まれてよい。
【0042】
運転条件の一つである軸受荷重としては、一定の軸受荷重、直接測定した軸受荷重、発電出力や軸の回転トルクなどから間接的に求めた軸受荷重などが用いられてよい。また、予め想定された運転荷重パターンを入力してもよい。また、回転速度としては、現在の回転速度で継続運転した場合を想定して、現在の回転速度が入力されてもよいし、初期はく離部が観察された時点で、運転速度を減速する場合には、減速した回転速度が入力されてもよい。
【0043】
S804にて、制御装置30は、転がり軸受10内に生じたはく離部のうち、はく離部の出口部を通過する転動体13の荷重Fを算出する。荷重は、S803にて入力された指標(例えば、初期はく離の形状、転がり軸受の諸元、運転条件など)に基づいて、算出されてよい。ここでは、ISO/TS16281に準じた計算方法により転動体13の荷重Fを計算する。より具体的には、図9Aに示すように軸荷重Pが内輪11を押して複数の転動体13を同時に押すため、力の釣り合いを解くことで、はく離部の出口部における転動体13の荷重Fを算出する。
【0044】
図9Aに示すように、軸荷重Pにより内輪11にラジアル軸受荷重が作用した状態で転がり軸受10が回転すると、負荷圏Qareaに位置する複数の転動体13それぞれには、転動体13の位置に応じた大きさの転動体荷重Fが発生する。
【0045】
一方、転動体13と内輪11の軌道面との接触面圧が最大となる負荷圏Qarea中央において、内輪11の軌道面にはく離が発生したとする。この場合、図9Bに示すように、はく離部15を通過している転動体13は軸受荷重を支持することができず、図9Aに示した負荷圏Qareaの転動体13よりも少ない数の転動体13で軸受荷重を支持する。そのため、その他の負荷圏Qareaに位置する転動体13に増大した転動体荷重Fが負荷される。したがって、図9Aにおける転動体13の転動体荷重Fの関係を用いて、図9Bにおける力のつりあい式を解くことで、初期はく離部が生じた状態での、はく離部の出口部の転動体荷重Fが算出される。具体的には、転動体荷重F及びFは、ISO/TS16281に準じた計算方法により求められる。また、はく離部15を通過している転動体13の転動体荷重Fは、荷重を受けないものとして計算される。
【0046】
また、負荷圏Qarea中央に生じた初期はく離部は、軌道面の円周方向(本実施形態に示した例においては転動体13の通過方向)に拡大していく。通常、はく離部15の出口部におけるき裂15a(図10A図10B図11A図11B参照)に転動体荷重が繰り返し負荷されることで、図11Bに示す矢印のように、き裂15aは円周方向に徐々に進展し、その後、所定の長さのはく離片15bが段階的に発生する。そして、図10Bに示すように、はく離部15の周方向長さAが、隣り合う2つの転動体13が同時に入る長さ(周方向長さA=転動体のピッチ間距離d)になると、はく離部15の出口部おける転動体荷重Fは増大して負荷されるようになる。
【0047】
S805にて、制御装置30は、S803にて算出された転動体荷重に基づいて、進行するはく離形状を考慮したき裂進展解析を行い、き裂の進展速度をはく離が拡大する速度(はく離進展速度V)として算出する。ここでの算出方法は、上述したように動的FEM解析の結果によって特定される集中面圧のパラメータを用いる。
【0048】
疲労現象におけるき裂進展挙動は、き裂長さとき裂に働く応力で表される線形破壊力学パラメータK(応力拡大係数)に支配され、き裂が安定して進展する領域では、応力拡大係数Kの変動範囲ΔK(応力拡大係数変動幅)と応力1サイクルあたりのき裂進展速度da/dNは両対数直線関係となることが、下記のParis則として知られている。
【0049】
da/dN=C(ΔK) ・・・(1)
ΔK:応力拡大係数変動幅
C、m:実験定数
【0050】
従って、上式(1)にΔKを代入することで、本実施形態では、き裂進展速度をはく離進展速度Vとして演算により求めることができる。本実施形態では、上述した集中面圧を考慮し、以下の式(2)を用いてΔKを定義する。
【0051】
【数1】
【0052】
:転動体の最大面圧(集中面圧)
a:周方向のき裂長さ
:比例係数
π:円周率
【0053】
上記の比例係数Fは、静的FEM解析の結果から予め求めることができる。より具体的には、ころがはく離縁部に接触した際に縁部の亀裂の先端の応力分布を静的FEM解析で算出し、その応力分布から、Fを求めるための応力拡大係数変動幅ΔKを予め導出することが可能である。図11Bでは、転動体とき裂の部位との接触位置周辺の応力分布の概念を示している。また、本実施形態では、集中面圧Pを逃げ量から算出し、上記の式(2)におけるPに代入することで、はく離進展速度の変化を残存寿命の推定結果に反映させている。なお、はく離進展速度(き裂進展速度)Vは、破壊力学で一般的なJ積分値を予め定式化して用いてもよい。この場合も、動的FEM解析から算出した転動体の逃げ量に基づく集中面圧を用いて定式化を行う。
【0054】
S806にて、制御装置30は、求められた応力1サイクルあたりのき裂進展速度da/dNに、転動体13の数などの軸受諸元、回転速度などの運転条件を適用して、運転時間とはく離サイズAとの関係を、下記の式(3)を用いた理論計算から算出する。
【0055】
A=A+da/dN×n ・・・(3)
:観察された時点のはく離部の周方向長さ
n:転動体が負荷圏内ではく離部の出口部を負荷する回数
【0056】
そして、制御装置30は、算出した関係に基づいて、S803にて入力されたはく離形状から所定のはく離形状(上記では、周方向長さ)になるまでの残存時間を転がり軸受10の残存寿命として算出する。所定のはく離形状は、予め指定されていてもよいし、本工程にて受け付けてもよい。また、所定のはく離形状に至る前にはく離が急激に拡大すると予測できる場合、すなわち、き裂進展速度が急激に速くなると予測できる場合には、急激に拡大する前のタイミングまでを残存時間として算出してもよい。これにより、転がり軸受10の挙動が急激に悪化しうるタイミングよりも前までを残存寿命として扱うことができる。
【0057】
S807にて、制御装置30は、S806にて算出した結果を出力する。そして、本処理フローを終了する。ここでの出力方法は特に限定するものではなく、解析結果を視覚的に出力装置40であるモニタにて表示してもよいし、警報機にて聴覚的に出力してもよい。また、他の処理にて解析結果のパラメータを転用するために外部装置に出力するなどしてよい。なお、本実施形態に係る解析処理は、算出した残存寿命が予め規定された閾値を下回った時点で報知と併せて終了してもよいし、転がり軸受10の動作が継続されている間、継続されてもよい。
【0058】
なお、上述した図4のフローチャートの手順は、各転がり軸受の諸元ごとに、所定の運転条件に対して、軸受寿命として想定される最大はく離部の長さまで予め計算しておき、その計算結果のデータをテーブル化して記憶部33に記憶しておいてもよい。これにより、解析時には一部の処理を省略でき、処理負荷を低減することが可能となる。
【0059】
以上、本実施形態により、従来よりも予測精度を向上させた、軸受のはく離進展解析が可能となる。
【0060】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 回転機械に使用される、内外軌道輪と当該内外軌道輪間の転動体を有する転がり軸受の軌道輪のはく離の進展を予測するはく離進展解析方法であって、
はく離状況取得手段によって前記軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得する工程と、
少なくとも取得されたはく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、および前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転動体が前記軌道輪の前記はく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する工程と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する工程と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する工程と、
を備え、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される、転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
この構成によれば、従来よりも予測精度を向上させた、軸受のはく離進展解析が可能となる。特に、はく離部の形状に応じて発生する転動体の軸方向の移動(逃げ)を踏まえた集中面圧を考慮して、より精度良くはく離の進展を予測することが可能となる。
【0061】
(2) 前記転動体の逃げ量は、動的FEM(Finite Element Method)解析により特定される、請求項1に記載の転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
この構成によれば、動的FEM解析の結果から転動体の逃げ量を適切に導出することが可能となる。
【0062】
(3) 前記はく離の進展速度は、
【数2】
【0063】
da/dN:き裂進展速度
ΔK:応力拡大係数変動幅
C、m:実験定数
:転動体の最大面圧(集中面圧)
a:周方向のき裂長さ
:比例係数
π:円周率
を用いて算出される、(1)または(2)に記載の転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
この構成によれば、はく離部の形状に応じて発生する転動体の軸方向の移動(逃げ)を踏まえた集中面圧を考慮して、より精度良くはく離の進展を予測することが可能となる。
【0064】
(4) 所定のはく離部の形状になるまでの残存時間を残存寿命として出力する工程をさらに備える、(1)から(3)のいずれかに記載の転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析方法。
この構成によれば、所望のはく離の形状までの残存時間を寿命として扱うことで、任意のはく離の形状になるまでの時間を予測することが可能となる。
【0065】
(5) 回転機械に使用される、内外軌道輪と当該内外軌道輪間の転動体を有する転がり軸受の軌道輪のはく離の進展を予測するはく離進展解析装置であって、
前記軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得するはく離状況取得手段と、
少なくとも取得された前記はく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転動体が前記軌道輪のはく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する荷重算出部と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する進展速度算出部と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する演算部と、
を備え、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される、転がり軸受の軌道輪のはく離進展解析装置。
この構成によれば、従来よりも予測精度を向上させた、軸受のはく離進展解析が可能となる。特に、はく離部の形状に応じて発生する転動体の軸方向の移動(逃げ)を踏まえた集中面圧を考慮して、より精度良くはく離の進展を予測することが可能となる。
【0066】
(6) コンピュータに、
はく離状況取得手段によって、転がり軸受の軌道輪のはく離の有無およびはく離部の形状を取得する工程と、
少なくとも取得されたはく離部の形状、前記転がり軸受の諸元、および前記転がり軸受の運転条件に基づいて、前記転がり軸受の転動体が前記軌道輪の前記はく離部の出口部を通過するときの、前記転動体に作用する転動体荷重を進行する前記はく離部の形状を考慮して算出する工程と、
前記はく離部の出口部における転動体荷重に基づいて、進行する前記はく離部の形状を考慮した前記はく離の進展速度を算出する工程と、
前記はく離の進展速度に基づいて、経過時間とはく離部の形状との関係を算出する工程と、
を実行させ、
前記はく離の進展速度は、前記はく離部の形状に応じて生じる軸方向の前記転動体の逃げ量から導出される、前記はく離部の出口部に対する面圧に基づいて算出される、プログラム。
この構成によれば、従来よりも予測精度を向上させた、軸受のはく離進展解析が可能となる。特に、はく離部の形状に応じて発生する転動体の軸方向の移動(逃げ)を踏まえた集中面圧を考慮して、より精度良くはく離の進展を予測することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1…はく離進展解析装置
10…転がり軸受
11…内輪
12…外輪
13…転動体
14…ハウジング
20…機械設備
22…データ伝送手段
30…制御装置
31…演算処理部
32…制御部
33…記憶部
34…データ伝送手段
40…出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B