(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法及び金属箔付き樹脂シート
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20241210BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241210BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241210BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
B32B15/08 J
H05K1/02 J
H05K3/46 G
(21)【出願番号】P 2023025418
(22)【出願日】2023-02-21
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 郁巳
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-262506(JP,A)
【文献】特開2008-246858(JP,A)
【文献】特開2016-74788(JP,A)
【文献】特開平8-18196(JP,A)
【文献】特開2001-313455(JP,A)
【文献】特開2001-9389(JP,A)
【文献】特開2006-269614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Y)第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む金属箔付き樹脂シートを、該樹脂組成物層の第2の主面が基材と接合するように、基材に積層する工程を含む、回路基板の製造方法であって、
工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm
2以下である、方法。
【請求項2】
工程(Y)において、金属箔付き樹脂シートを1.5MPa以下の圧力にて基材に積層する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(Z)モディファイドセミアディティブ法又はセミアディティブ法により配線を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(Z)において、配線間距離が35μm以下である配線を形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該金属箔付き樹脂シートのプラスチックフィルム側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm
2以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
支持基材付き金属箔における金属箔の厚さが5μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
支持基材付き金属箔における支持基材がプラスチックフィルム又はキャリア金属箔である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
樹脂組成物層が、該樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%としたとき、無機充填材を40質量%以上含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む金属箔付き樹脂シートであって、
該金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm
2以下である、金属箔付き樹脂シート。
【請求項10】
該金属箔付き樹脂シートのプラスチックフィルム側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm
2以下である、請求項9に記載の金属箔付き樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に関する。さらには、該回路基板の製造方法に用いられる金属箔付き樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器用マザーボード、システムインパッケージ基板、チップスケールパッケージ基板などの回路基板は、これまで、繊維強化されたプリプレグと銅箔をコア基材にビルドアップすることで製造されてきた。
【0003】
昨今、各電子機器の高機能化ならびに低背化にともない、これら回路基板においても微細配線化に対応することが求められており、金属箔付き樹脂シートを用いた回路基板の製造が検討されている。この金属箔付き樹脂シートは、金属箔と支持基材を含む支持基材付き金属箔と、該支持基材付き金属箔の金属箔と接合している樹脂組成物層を備える(例えば、特許文献1)。該樹脂組成物層のもう一方の面には、保護フィルム等としてプラスチックフィルムを備える構成が想定され、回路基板の製造において該金属箔付き樹脂シートを基材に積層するに先立ち、該プラスチックフィルムを剥離して樹脂組成物層を露出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属箔付き樹脂シートに関しては、プリプレグのように繊維基材が存在しないため、回路基板の製造において基材に積層する際の加熱加圧条件下では、プリプレグに比べて樹脂フロー性が高くなり、その結果、膜厚が均一な絶縁層を得ることが困難となる傾向にある。この点、樹脂フロー性を抑制するために、樹脂組成物に含まれる樹脂の分子量や配合量を大きくするといったことも考えられるが、熱硬化後の架橋密度の低下等、得られる絶縁層の物性への影響が課題となる。
【0006】
一方、樹脂組成物の設計の自由度を維持しつつ、樹脂フロー性を抑制する方法として、基材への積層を低い圧力条件下で実施することが考えられる。しかしながら、低圧条件下で金属箔付き樹脂シートを基材に積層すると、配線間の絶縁抵抗値が低下し歩留まりが低下してしまう現象が生じることを本発明者らは見出した。とりわけ、金属箔をめっきシード層として利用するモディファイドセミアディティブ法、又は、金属箔を除去した後の絶縁層の露出表面プロファイルを利用するセミアディティブ法により配線を形成する回路基板の製造において、配線間距離が35μm以下である配線を形成する場合に、上記の歩留まり低下の問題が顕著となる傾向にあることを見出した。
【0007】
本発明は、低圧条件下で金属箔付き樹脂シートを基材に積層して微細配線を形成する場合であっても、配線間の絶縁抵抗値の低下を抑制し良好な歩留まりを実現することのできる新規な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を有する回路基板の製造方法および金属箔付き樹脂シートにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1]
(Y)第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む金属箔付き樹脂シートを、該樹脂組成物層の第2の主面が基材と接合するように、基材に積層する工程を含む、回路基板の製造方法であって、
工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である、方法。
[2]
工程(Y)において、金属箔付き樹脂シートを1.5MPa以下の圧力にて基材に積層する、[1]に記載の方法。
[3]
(Z)モディファイドセミアディティブ法又はセミアディティブ法により配線を形成する工程をさらに含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
工程(Z)において、配線間距離が35μm以下である配線を形成する、[3]に記載の方法。
[5]
該金属箔付き樹脂シートのプラスチックフィルム側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である、[1]~[4]の何れかに記載の方法。
[6]
支持基材付き金属箔における金属箔の厚さが5μm以下である、[1]~[5]の何れかに記載の方法。
[7]
支持基材付き金属箔における支持基材がプラスチックフィルム又はキャリア金属箔である、[1]~[6]の何れかに記載の方法。
[8]
樹脂組成物層が、該樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%としたとき、無機充填材を40質量%以上含有する、[1]~[7]の何れかに記載の方法。
[9]
第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む金属箔付き樹脂シートであって、
該金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である、金属箔付き樹脂シート。
[10]
該金属箔付き樹脂シートのプラスチックフィルム側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である、[9]に記載の金属箔付き樹脂シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低圧条件下で金属箔付き樹脂シートを基材に積層して微細配線を形成する場合であっても、配線間の絶縁抵抗値の低下を抑制し良好な歩留まりを実現することのできる新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、金属箔付き樹脂シートの概略端面図である。
【
図2a】
図2aは、本発明の金属箔付き樹脂シートの製造方法を説明するための模式図(1)である。
【
図2b】
図2bは、本発明の金属箔付き樹脂シートの製造方法を説明するための模式図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0013】
[回路基板の製造方法]
本発明の回路基板の製造方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう。)は、
(Y)第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む金属箔付き樹脂シートを、該樹脂組成物層の第2の主面が基材と接合するように、基材に積層する工程を含み、
工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下であることを特徴とする。
【0014】
先述のとおり、金属箔付き樹脂シートに関しては、プリプレグのように繊維基材が存在しないため、回路基板の製造において基材に積層する際の加熱加圧条件下では、プリプレグに比べて樹脂フロー性が高くなり、その結果、膜厚が均一な絶縁層を得ることが困難となる傾向にある。この点、樹脂フロー性を抑制するために、樹脂組成物に含まれる樹脂の分子量や配合量を大きくするといったことも考えられるが、熱硬化後の架橋密度の低下等、得られる絶縁層の物性への影響が課題となる。
【0015】
一方、樹脂組成物の設計の自由度を維持しつつ、樹脂フロー性を抑制する方法として、基材への積層を低い圧力条件下で実施することが考えられる。しかしながら、低圧条件下で金属箔付き樹脂シートを基材に積層すると、配線間の絶縁抵抗値が低下し歩留まりが低下してしまう現象が生じることを本発明者らは見出した。とりわけ、金属箔をめっきシード層として利用するモディファイドセミアディティブ法、又は、金属箔を除去した後の絶縁層の露出表面プロファイルを利用するセミアディティブ法により配線を形成する回路基板の製造において、配線間距離が35μm以下である配線を形成する場合に、上記の歩留まり低下の問題が顕著となる傾向にあることを見出した。
【0016】
本発明者らは、配線間の絶縁抵抗値が低下し歩留まりの低下が生じた回路基板について、回路配線の状態を確認したところ、本来の回路形成部とは異なる箇所に導体が存在し、これが配線間の絶縁抵抗値を低下させている原因の一つであることを確認した。金属箔付き樹脂シートを用いて回路基板を製造するにあたっては、後述のとおり、該シートの金属箔をめっきシード層として利用するモディファイドセミアディティブ法や、該金属箔を除去した後の絶縁層の露出表面プロファイルを利用するセミアディティブ法により配線を形成することができるが、前者の場合であれば金属箔の露出表面に、後者の場合であれば絶縁層の露出表面に、面内寸法において数μmから数百μmサイズの凹部や凸部が存在する場合のあること、また、斯かる凹部や凸部が存在する場合に歩留まりが低下することも併せて確認した。金属箔に凹部が存在すると、モディファイドセミアディティブ法において回路形成部以外の金属箔を除去する際に、凹部に存在する金属箔は除去され難く残存し易い。絶縁層の露出表面に凹部が存在する場合にも、セミアディティブ法において無電解めっきにて形成したシード層のうち凹部に存在するシード層は除去され難く残存し易い。このように、回路形成部以外に導体が残存してしまい、これが配線間の絶縁抵抗値を低下させたものと推察した。配線間距離が小さい配線を備える回路基板においては、斯かる残存導体による影響は相対的に増し、先述のように配線間距離が35μm以下である配線を形成する場合に歩留まり低下の問題が顕著となったものと考えられる。また、凸部が存在すると、モディファイドセミアディティブ法やセミアディティブ法においてめっきレジストの密着が不良となり、電解めっきの際に意図しない箇所にめっき導体の潜り込みが生じたり、凸部において電解めっき厚が不足し局所的に配線厚さが不足したり断線したりすることから、所期の配線デザインを達成するにあたり障害となる。これらの中でも、凹部が存在すると、回路基板の製造において歩留まりの低下が生じ易い。
【0017】
本発明者らは、このような金属箔や絶縁層(樹脂組成物層)の凹部や凸部が、回路基板の製造に使用する金属箔付き樹脂シートに元から存在していることを見出した。上記のとおり、回路基板の製造において低圧条件下で金属箔付き樹脂シートを基材に積層する場合には、これら凹部や凸部が十分に平坦化されず、配線を形成する段階でも残存したものと考える。また、これら凹部や凸部が生じる原因につき検討したところ、それらが金属箔付き樹脂シートの製造において、第1の樹脂シートと支持基材付き金属箔とを、あるいは、第2の樹脂シートとプラスチックフィルムとを積層する過程で、意図せず形成されていることを見出した。積層に用いる圧着ロールの表面に付着した異物が積層時に打痕として支持基材付き金属箔やプラスチックフィルムに凹部を形成し、これが金属箔側や樹脂組成物層の第1の主面側でみると、凹部(積層時に支持基材付き金属箔と接するロール表面に付着した異物が原因)や凸部(積層時にプラスチックフィルムと接するロール表面に付着した異物が原因)を形成したと推察される。なお、後述のとおり、金属箔付き樹脂シートの製造に用いられる「第1の樹脂シート」とは、樹脂組成物層と該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとからなり、また「第2の樹脂シート」とは、樹脂組成物層と該樹脂組成物層の第1の主面に金属箔側で接合している支持基材付き金属箔とからなる。
【0018】
これに対し、金属箔付き樹脂シートと基材とを積層する工程(工程(Y))において、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である金属箔付き樹脂シートを用いる本発明の回路基板の製造方法によれば、基材への積層を低圧条件下で実施する場合であっても、配線の形成対象面に凹部や凸部が生じることを減じ、良好な歩留まりを達成することができる。このように、本発明は、金属箔付き樹脂シートにおける樹脂組成物の設計の自由度を維持しつつ、微細な配線を備えた回路基板の製造において良好な歩留まりを実現することができ、回路基板の微細配線化に著しく寄与するものである。
【0019】
工程(Y)において、第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む金属箔付き樹脂シートを、該樹脂組成物層の第2の主面が基材と接合するように、基材に積層する。
【0020】
工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートを構成する樹脂組成物層、支持基材付き金属箔、プラスチックフィルムに関しては、それらの好適な例を含め後述することとするが、本発明の方法は、工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下であることを特徴とする。
【0021】
図1に、工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートの概略端面図を示す。金属箔付き樹脂シート10は、第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層1と、該樹脂組成物層の第1の主面(
図1における下側主面)と金属箔3a側で接合している支持基材付き金属箔3と、該樹脂組成物層の第2の主面(
図1における上側主面)と接合しているプラスチックフィルム2とを含む。また、支持基材付き金属箔3は、金属箔3aと、該金属箔と剥離可能な状態で接合している支持基材3bとからなる。
【0022】
基材への積層を低圧条件下で実施する場合であっても、良好な歩留まりを達成する観点から、工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面(
図1における下側表面)における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の個数は、5個/cm
2以下であり、好ましくは4.5個/cm
2以下、より好ましくは4個/cm
2以下である。特に上記凹部又は凸部の個数が4個/cm
2以下であると、モディファイドセミアディティブ法やセミアディティブ法により配線を形成する回路基板の製造において、配線間距離が35μm以下である配線を形成する場合であっても、良好な歩留まりを達成し得るため好適である。モディファイドセミアディティブ法やセミアディティブ法により微細な配線を形成する場合であってもいっそう良好な歩留まりを達成し得る観点から、工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の個数は、3.5個/cm
2以下であることがさらに好ましく、3個/cm
2以下、2.5個/cm
2以下又は2個/cm
2以下であることがさらにより好ましい。
【0023】
本発明において金属箔付き樹脂シートの表面凹凸についていう「最大径」とは、金属箔付き樹脂シートの表面の面方向における凹凸の最大寸法をいい、表面を真上からみた場合に凹凸が真円であればその直径が、凹凸が真円以外の形状であればその形状における面内方向の最大寸法を指す。また、「最大高低差」とは、金属箔付き樹脂シートの表面に垂直な方向(厚さ方向)における凹凸の最高高さと最低高さの差をいう。
【0024】
本発明において、金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の個数は、該表面を顕微鏡で観察し、同定された凹凸を段差計により解析し、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の数をカウントすることにより求めることができる。表面観察に用いる顕微鏡としては、デジタルマイクロスコープを用いればよく、例えば、キーエンス社製「VHX-900」が挙げられる。凹凸解析に用いる段差計としては、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部を解析し得る限り特に限定されないが、接触式段差計を用いればよく、例えば、Bruker社製触針式プロファイリングシステム「DektakXT」が挙げられる。
【0025】
本発明における最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の数は、後述の「(1-4)金属箔付き樹脂シートの表面凹凸の観察」欄に記載するとおり、金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面15cm×15cmの中で1cm2のエリアを無作為に10点選択して観察・解析し、10点のエリアについて求めた最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の数の算術平均値(個/cm2)に基づくものである。表面凹凸の個数を上記のとおり決定することにより、基材への積層を低圧条件下で実施する場合であっても、良好な歩留まりを達成するのに好適な、表面凹凸に係る条件の成否を精度良く判定することができる。
【0026】
金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の個数の下限は、特に限定されず0個/cm2であってよい。
【0027】
金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、凹部又は凸部の最大径の上限は、例えば、100,000μm以下、10,000μm以下、5,000μm以下、2,000μm以下、1,000μm以下などであり、最大高低差の上限は、例えば、5μm以下、4μm以下、3μm以下などである。
【0028】
基材への積層を低圧条件下で実施する場合であっても、いっそう良好な歩留まりを達成する観点から、工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートのプラスチックフィルム側の表面(
図1における上側表面)における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部の個数は、好ましくは5個/cm
2以下であり、より好ましくは4.5個/cm
2以下、さらに好ましくは4個/cm
2以下、3.5個/cm
2以下又は3個/cm
2以下である。プラスチックフィルム側の表面における上記凹部又は凸部の個数は、支持基材付き金属箔側の表面における凹部又は凸部の個数について先述した方法と同様にして求めればよい。金属箔付き樹脂シートのプラスチックフィルム側の表面における、凹部又は凸部の最大径の上限は、金属箔側の表面について先述したとおりである。
【0029】
工程(Y)において、金属箔付き樹脂シートを積層する「基材」としては、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また回路基板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「基材」に含まれる。回路基板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した基板を使用すればよい。
【0030】
なお、工程(Y)に先立ち、金属箔付き樹脂シートからプラスチックフィルムを剥離して樹脂組成物層の表面(すなわち、第2の主面)を露出させる。そして、樹脂組成物層の第2の主面が基材と接合するように、金属箔付き樹脂シートを基材に積層する。
【0031】
先述のとおり、本発明の方法によれば、樹脂フロー性を抑制すべく基材への積層を低圧条件下で実施する場合であっても、配線の形成対象面に凹部や凸部が生じることを減じ、良好な歩留まりを達成することができる。
【0032】
したがって一実施形態において、本発明の方法は、工程(Y)において、金属箔付き樹脂シートを1.5MPa以下の圧力にて基材に積層する工程を含む。本発明の方法によれば、後述のとおり、積層時の圧力をさらに低くする場合であっても、良好な歩留まりを達成することができる。
【0033】
工程(Y)において、金属箔付き樹脂シートと基材との積層は、減圧雰囲気下で実施することが好ましく、例えば、真空熱プレス処理又は真空ラミネート処理により実施することが好ましい。以下、真空熱プレス処理によって積層する実施形態を「第1実施形態」、真空ラミネート処理によって積層する実施形態を「第2実施形態」という。
【0034】
-第1実施形態-
第1実施形態において、回路基板は、真空熱プレス装置を用いて以下の手順で製造することが好適である。
【0035】
まず、樹脂組成物層と基材とが接合するように、基材の片面又は両面に金属箔付き樹脂シートを配置した積層構造を準備し、該積層構造を真空熱プレス装置にセットする。
【0036】
積層構造は、クッション紙、ステンレス板(SUS板)等の金属板、離型フィルムなどを介して真空熱プレス装置にセットすることが好ましい。積層構造は、例えば、基材の両面に金属箔付き樹脂シートを配置する場合、クッション紙/金属板/離型フィルム/積層構造(すなわち、金属箔付き樹脂シート/基材/金属箔付き樹脂シート)/離型フィルム/SUS板/クッション紙の順に積層されて真空熱プレス装置にセットされる。ここで記号「/」はこれを挟むように示されている構成要素同士が互いに接するように配置されていることを意味している(本明細書における積層構造の説明等において同様である。)。
【0037】
次いで、減圧条件下で積層構造を加熱圧着する真空熱プレス処理を行う。
【0038】
真空熱プレス処理は、加熱されたSUS板等の金属板によって積層構造をその両面側から押圧する従来公知の真空熱プレス装置を用いて実施することができる。市販されている真空熱プレス装置としては、例えば、名機製作所社製の「MNPC-V-750-5-200」、北川精機社製の「VH1-1603」等が挙げられる。
【0039】
真空熱プレス処理は、1回のみ実施してもよく、2回以上繰り返して実施してもよい。
【0040】
真空熱プレス処理において、圧着圧力(押圧力)は、樹脂フロー性を抑制して膜厚の均一な絶縁層を得る観点から、上記のとおり好ましくは1.5MPa以下であり、より好ましくは1.4MPa以下、さらに好ましくは1.2MPa以下又は1MPa以下である。その下限は、金属箔付き樹脂シートと基材との積層を実施し得る限り特に限定されないが、例えば0.2MPa以上、0.3MPa以上、0.4MPa以上などとし得る。
【0041】
真空熱プレス処理において、雰囲気の圧力、すなわち、処理対象の積層構造が格納されるチャンバ内の減圧時の圧力は、好ましくは3×10-2MPa以下、より好ましくは1×10-2MPa以下である。
【0042】
真空熱プレス処理において、加熱温度(T)は、樹脂組成物層の組成によっても異なるが、通常130℃以上であり、好ましくは140℃以上、150℃以上、又は160℃以上である。加熱温度(T)の上限は特に限定されないが、通常、240℃以下などとし得る。
【0043】
真空熱プレス処理は、クラックや歪み等を抑制する観点から、温度を段階的に若しくは連続的に上昇させながら、及び/又は温度を段階的に若しくは連続的に下降させながら、実施することが好ましい。斯かる場合、最高到達温度が、上記所望の温度条件を満たすことが好ましい。
【0044】
真空熱プレス処理は、例えば、常温から加熱温度(T)まで昇温速度S1で昇温し、加熱温度(T)にて所定時間保持した後、降温速度S2で加熱温度(T)から常温まで降温する加熱条件で実施してよい。昇温速度S1及び降温速度S2は、通常0.5℃/分~30℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、より好ましくは2℃/分~8℃/分である。加熱温度(T)にて保持する時間は、樹脂組成物層の組成により適宜決定してよいが、通常1分間~180分間、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは10分間~120分間である。
【0045】
真空熱プレス処理によって、樹脂組成物層は硬化して絶縁層を形成する。したがって、得られる積層板は、上記のように基材の両面に金属箔付き樹脂シートを積層した場合、支持基材付き金属箔(支持基材/金属箔)/絶縁層/基材/絶縁層/支持基材付き金属箔(金属箔/支持基材)の層構成を有する。
【0046】
-第2実施形態-
第2実施形態において、回路基板は、真空ラミネート処理を用いて下記工程(I)及び(II)を含む方法により製造することが好適である。
(I)樹脂組成物層と基材とが接合するように、基材の片面又は両面に本発明の製造方法より得られた金属箔付き樹脂シートを配置し、真空ラミネート処理する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0047】
工程(I)において、樹脂組成物層と基材とが接合するように、基材の片面又は両面に本発明の製造方法より得られた金属箔付き樹脂シートを配置し、真空ラミネート処理する。
【0048】
真空ラミネート処理は、支持基材付き金属箔側から金属箔付き樹脂シートを基材に加熱圧着することにより行うことができる。金属箔付き樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を金属箔付き樹脂シートに直接プレスするのではなく、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0049】
真空ラミネート処理において、加熱温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。圧着圧力は、樹脂フロー性を抑制して膜厚の均一な絶縁層を得る観点から、上記のとおり好ましくは1.5MPa以下であり、より好ましくは1.4MPa以下、さらに好ましくは1.2MPa以下又は1MPa以下であり、その下限は、金属箔付き樹脂シートと基材との積層を実施し得る限り特に限定されないが、例えば0.1MPa以上、0.2MPa以上、0.3MPa以上などとし得る。圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。真空ラミネート処理は、好ましくは26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0050】
真空ラミネート処理は、市販の真空ラミネーターを用いて行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製の2ステージビルドアップラミネーター、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン社製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0051】
真空ラミネート処理の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を指示基材付き金属箔側からプレスすることにより、積層された金属箔付き樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理の加熱圧着条件は、上記真空ラミネート処理の加熱圧着条件と同様の条件としてよい。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0052】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0053】
熱硬化の条件は特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0054】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物層の組成によっても異なるが、硬化温度は120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~210℃の範囲、より好ましくは170℃~190℃の範囲)、硬化時間は5分間~90分間の範囲(好ましくは10分間~75分間、より好ましくは15分間~60分間)としてよい。
【0055】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)予備加熱してもよい。
【0056】
工程(II)により、樹脂組成物層が硬化して絶縁層が形成される。したがって得られる積層板は、基材の両面に金属箔付き樹脂シートを積層した場合、支持基材付き金属箔(支持基材/金属箔)/絶縁層/基材/絶縁層/支持基材付き金属箔(金属箔/支持基材)の層構成を有する。
【0057】
第1実施形態及び第2実施形態の別を問わず、穴あけする工程、デスミア処理を行う工程、配線を形成する工程をさらに実施してよい。
【0058】
穴あけする工程において、絶縁層にビアホール等を形成することができる。当該工程は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物層の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用する公知の手順で実施してよい。
【0059】
穴あけする工程において形成されたビアホール内部には、一般に、絶縁層由来の樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、層間の電気接続不良の原因となるため、スミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
【0060】
デスミア処理の手順、条件は特に限定されず、回路基板の製造において通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に実施してデスミア処理を行うことができる。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホールの形成された積層板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の積層板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の積層板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0061】
次いで、絶縁層の表面に配線を形成する。先述のとおり、本発明の方法によれば、金属箔をめっきシード層として利用するモディファイドセミアディティブ法、あるいは、金属箔を除去した後の絶縁層の露出表面プロファイルを利用するセミアディティブ法により、配線間距離が小さい配線を形成する場合であっても、良好な歩留まりを達成することができる。
【0062】
したがって一実施形態において、本発明の回路基板の製造方法は、
(Z)モディファイドセミアディティブ法又はセミアディティブ法により配線を形成する工程を含む。
【0063】
工程(Z)に先立ち、積層板から支持基材(すなわち、支持基材付き金属箔由来の支持基材)を除去する。後述のとおり、支持基材は、金属箔に剥離可能な状態で接合していることから、容易に剥離除去することができる。こうして、金属箔を露出させることができる。例えば、上記のように基材の両面に金属箔付き樹脂シートを積層した場合、支持基材を剥離することで、金属箔/絶縁層/基材/絶縁層/金属箔の層構成を有する積層板を得ることができる。
【0064】
-モディファイドセミアディティブ法による配線の形成-
モディファイドセミアディティブ法(MSAP)においては、金属箔の非回路形成部をめっきレジストにより保護し、電解めっきにより回路形成部に銅等の金属を厚付けした後、めっきレジストを除去し、回路形成部以外の金属箔をエッチングで除去して、回路を形成する。モディファイドセミアディティブ法による回路形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、モディファイドセミアディティブ法による回路形成は、i)金属箔の表面にめっきレジストを設けること、ii)めっきレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)めっきレジストを介して電解めっきすること、iv)めっきレジストを除去すること、v)回路形成部以外の金属箔をエッチングして除去すること、を含む方法により実施することができる。なお、金属箔付き樹脂シート由来の金属箔が厚い場合には、上記i)の前に、金属箔が所望の厚さ(通常5μm以下、4μm以下、又は3μm以下)となるようにエッチング等により金属箔全面を薄化してもよい。
【0065】
-セミアディティブ法による配線の形成-
セミアディティブ法(SAP)においては、金属箔をエッチング等により除去して絶縁層を露出させる。このとき、絶縁層の露出表面は金属箔に由来したプロファイルを有する。そして、絶縁層の露出表面にめっき等により回路を形成する。セミアディティブ法による回路形成は、絶縁層の露出表面プロファイルを利用することで従来の絶縁層表面の粗化処理を省いてもよいことを除いては、公知の手順に従って実施してよい。例えば、セミアディティブ法による回路形成は、i)絶縁層の露出表面に無電解めっきによりシード層を形成すること、ii)シード層にめっきレジストを設けること、iii)めっきレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iv)めっきレジストを介して電解めっきすること、v)めっきレジストを除去すること、vi)回路形成部以外のシード層をエッチングして除去すること、を含む方法により実施することができる。金属箔を除去した後の絶縁層の露出表面プロファイルの程度によっては、上記i)に先立ち、絶縁層表面を粗化処理してもよい。
【0066】
先述のとおり、本発明の方法によれば、配線の形成対象面(モディファイドセミアディティブ法においては金属箔表面、セミアディティブ法において絶縁層表面)に凹部や凸部が生じることを減じ、良好な歩留まりを達成することができる。これにより、配線間距離が小さい配線を形成する場合であっても、良好な歩留まりを達成することができる。例えば、工程(Z)において、配線間距離が35μm以下である配線を歩留まりよく形成することができ、さらには配線間距離が30μm以下又は25μm以下と小さい配線も歩留まりよく形成することができる。特に配線間距離が25μm以下である配線を形成する場合、従来の回路基板の製造方法においては、歩留まりの低下が顕著であるのに対し、本発明の方法によれば、良好な歩留まりを達成しつつ、より配線間距離の小さい配線を形成することができる。本発明の方法によれば、配線間距離が、例えば、20μm以下、15μm以下、14μm以下、12μm以下、10μm以下と小さい配線も歩留まりよく形成することが可能である。配線間距離の下限は、良好な歩留まりを達成し得る観点から、好ましくは5μm以上又は6μm以上である。
【0067】
[金属箔付き樹脂シート]
本発明の回路基板の製造方法は、先述のとおり、工程(Y)に用いる金属箔付き樹脂シートとして、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である金属箔付き樹脂シートを用いることを特徴とし、これにより、低圧条件下で金属箔付き樹脂シートを基材に積層して微細配線を形成する場合であっても、配線間の絶縁抵抗値の低下を抑制し良好な歩留まりを実現することができる。本発明は斯かる金属箔付き樹脂シートも提供する。
【0068】
本発明の金属箔付き樹脂シートは、第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む金属箔付き樹脂シートであって、該金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下であることを特徴とする。
【0069】
ここで、本発明の金属箔付き樹脂シートの層構成は、
図1を参照して先述したとおりであり、また、該金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における上記凹凸の個数やプラスチックフィルム側の表面における凹凸の個数の好適な範囲、該凹凸の個数の求め方に関しては、上記[回路基板の製造方法]欄において先述したとおりである。
【0070】
以下、本発明の金属箔付き樹脂シートを構成する「樹脂組成物層」、「プラスチックフィルム」、「支持基材付き金属箔」について説明する。
【0071】
<樹脂組成物層>
樹脂組成物層に使用される樹脂組成物は、その硬化物が十分な絶縁性を呈する限り特に限定されず、回路基板の絶縁層の形成に用いられる従来公知の樹脂組成物を用いてよい。
【0072】
先述のとおり、金属箔付き樹脂シートに関しては、プリプレグのように繊維基材が存在しないため、回路基板の製造において基材に積層する際の加熱加圧条件下では、プリプレグに比べて樹脂フロー性が高くなり、その結果、膜厚が均一な絶縁層を得ることが困難となる傾向にある。この点、樹脂フロー性を抑制するために、樹脂組成物に含まれる樹脂の分子量や配合量を大きくするといったことも考えられるが、熱硬化後の架橋密度の低下等、得られる絶縁層の物性への影響が課題となる。一方、樹脂組成物の設計の自由度を維持しつつ、樹脂フロー性を抑制する方法として、基材への積層を低い圧力条件下で実施することが考えられるものの、低圧条件下で金属箔付き樹脂シートを基材に積層すると、配線間の絶縁抵抗値が低下し歩留まりが低下してしまう現象が生じる。
【0073】
これに対し、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である本発明の金属箔付き樹脂シートによれば、樹脂フロー性を抑制すべく基材への積層を低圧条件下で実施する場合であっても、良好な歩留まりを達成することができ、それ故、該金属箔付き樹脂シートに用いる樹脂組成物(層)の設計の自由度を有利に維持することが可能である。
【0074】
例えば、樹脂組成物層を構成する樹脂組成物としては、(a)硬化性樹脂を含み、さらに必要に応じて、(b)硬化剤、(c)無機充填材、(d)熱可塑性樹脂、(e)硬化促進剤からなる群から選択される1種以上を含む樹脂組成物が挙げられる。以下、樹脂組成物に含有させ得る各成分について説明する。
【0075】
-(a)硬化性樹脂-
硬化性樹脂としては、回路基板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の硬化性樹脂を用いてよい。良好な絶縁性と耐熱性を併せて呈する硬化物をもたらすことができる観点から、硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0076】
熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂としては、回路基板の絶縁層を形成する際に使用される公知の樹脂を用いてよい。以下、硬化性樹脂として用いることのできる熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂について説明する。
【0077】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、良好な絶縁性と良好な耐熱性を併せて呈する硬化物をもたらすことができる観点から、硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0078】
エポキシ樹脂は、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のエポキシ基を有する限り、その種類は特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。本発明によれば、エポキシ樹脂の種類によらず、回路基板の製造において良好な歩留まりをもたらす金属箔付き樹脂シートを実現することができる。
【0079】
エポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)に分類し得るが、本発明に用いる樹脂組成物は、硬化性樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでもよい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含む場合、配合割合(液状:固体状)は質量比で20:1~1:20の範囲(好ましくは10:1~1:10、より好ましくは3:1~1:3)としてよい。
【0080】
エポキシ樹脂のエポキシ基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ基当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
【0081】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。エポキシ樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0082】
ラジカル重合性樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル重合性不飽和基を有する限り、その種類は特に限定されない。ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基として、マレイミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する樹脂が挙げられる。中でも、良好な絶縁性と良好な耐熱性を併せて呈する硬化物をもたらすことができる観点から、硬化性樹脂は、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0083】
マレイミド樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する限り、その種類は特に限定されない。マレイミド樹脂としては、例えば、「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもデジグナーモレキュールズ社(Designer molecules Inc.)製)などの、脂肪族骨格(好ましくは炭素原子数10以上の環状構造を含む脂肪族骨格、より好ましくはダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格)を含むマレイミド樹脂;発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」、「BMI-1000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
【0084】
(メタ)アクリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。ここで、「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。メタクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートモノマーのほか、例えば、「A-DOG」(新中村化学工業社製)、「DCP-A」(共栄社化学社製)、「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」(何れも日本化薬社製)などの、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0085】
スチリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のスチリル基又はビニルフェニル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。スチリル樹脂としては、スチレンモノマーのほか、例えば、「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(何れも三菱ガス化学社製)などの、スチリル樹脂が挙げられる。
【0086】
本発明に用いる樹脂組成物は、硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂のみ含んでもよく、ラジカル重合性樹脂のみ含んでもよく、熱硬化性樹脂とラジカル重合性樹脂を組み合わせて含んでもよい。
【0087】
良好な絶縁性と良好な耐熱性を併せて呈する硬化物をもたらす観点から、樹脂組成物中の硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上、14質量%以上又は15質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されず、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定すればよく、100質量%であってよいが、例えば、90質量%以下、80質量%以下、75質量%以下又は70質量%以下などとしてもよい。本発明において、樹脂組成物についていう「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する不揮発成分のうち、後述する無機充填材を除いた成分をいう。
【0088】
-(b)硬化剤-
本発明に用いる樹脂組成物は、さらに硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、硬化性樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びアミン系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着強度(ピール強度)が良好な絶縁層を達成し得る観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0090】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0091】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物由来の活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましく、カルボン酸化合物と芳香族ヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がさらに好ましい。
【0092】
カルボン酸化合物としては、芳香族カルボン酸化合物及び脂肪族カルボン酸のいずれを用いてもよく、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0093】
芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、(i)1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状化合物とフェノール類との重付加反応物、(ii)各種ビスフェノール化合物、(iii)芳香環上の炭素原子に2個以上のヒドロキシ基が結合した芳香族ポリオール、(iv)芳香環上の炭素原子に1個のヒドロキシ基が結合した芳香族モノオール等が挙げられる。不飽和脂肪族環状化合物とフェノール類の重付加反応物としては、例えば、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ノルボルナジエン、リモネン、ビニルシクロヘキセン等の不飽和脂肪族環状化合物と、置換基を有していてもよいフェノール(例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、ハロフェノール等)との重付加反応物が挙げられ、具体的には例えば、ジシクロペタジエン-フェノール類重付加物等が挙げられる。ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールM等が挙げられる。芳香環上の炭素原子に2個以上のヒドロキシ基が結合した芳香族ポリオールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、フェノールノボラック等が挙げられる。芳香環上の炭素原子に1個のヒドロキシ基が結合した芳香族モノオールとしては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、ハロフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ジメチルナフトール、エチルナフトール、プロピルナフトール、ビニルナフトール、アリルナフトール、フェニルナフトール、ベンジルナフトール、ハロナフトール等が挙げられる。
【0094】
活性エステル系硬化剤の好適な具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンタレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0095】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB-9451」、「EXB-9460」、「EXB-9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「HPC-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HP-B-8151-62T」、「HP-C-8151-62T」(DIC社製);りん含有活性エステル樹脂として「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0096】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
【0097】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0098】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0099】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216g/eq.)、V-05(カルボジイミド基当量:262g/eq.)、V-07(カルボジイミド基当量:200g/eq.);V-09(カルボジイミド基当量:200g/eq.);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302g/eq.)が挙げられる。
【0100】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0101】
回路基板の製造においてより良好な歩留まりを達成し得る観点から、硬化剤は、活性エステル系硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤中の不揮発成分を100質量%としたとき、活性エステル系硬化剤の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上又は60質量%以上である。
【0102】
樹脂組成物が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。硬化剤の含有量の上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、又は40質量%以下である。
【0103】
-(c)無機充填材-
本発明に用いる樹脂組成物は、さらに無機充填材を含んでもよい。無機充填材を含有させることにより、線熱膨張率や誘電正接の低い絶縁層を実現することができる。
【0104】
無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」、「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-1」などが挙げられる。
【0106】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0107】
無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、3m2/g以上又は5m2/g以上である。該比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは80m2/g以下、さらに好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0108】
無機充填材は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物;シラザン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0110】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、好ましくは0.2~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0111】
樹脂組成物が無機充填材を含む場合、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、いっそう良好な誘電特性をもたらす樹脂組成物を実現し易い観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、60質量%以上、65質量%以上又は70質量%以上である。無機充填材の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば90質量%以下、85質量%以下などとし得る。
【0112】
-(d)熱可塑性樹脂-
本発明に用いる樹脂組成物は、さらに熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは20000以上又は30000以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下である。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算のMwは、GPC法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算のMwは、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0114】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7800BH40」、「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0115】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0116】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0117】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0118】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0119】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0120】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0121】
ポリスチレン樹脂としては、例えば、スチレンの単独重合体や、スチレンとジエン化合物(ブタジエン、イソプレン等)との共重合体及びその水添物が挙げられる。
【0122】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0123】
樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0124】
-(e)硬化促進剤-
本発明に用いる樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であり、下限は、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上などとし得る。
【0126】
本発明に用いる樹脂組成物は、さらに他の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、非イオン系などの光カチオン重合開始剤や光酸発生剤;ナフトキノンジアジド化合物などの感光剤;過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。斯かる添加剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよい。
【0127】
本発明に用いる樹脂組成物は、揮発性成分として、さらに有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶媒;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
樹脂組成物は、上記の成分のうち必要な成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。
【0129】
本発明に用いる樹脂組成物層は、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて、後述する「第1の樹脂シート」を形成する場合にはプラスチックフィルム上に、あるいは、後述する「第2の樹脂シート」を形成する場合には支持基材付き金属箔の金属箔上に塗布し、更に乾燥させることにより形成することができる。
【0130】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0131】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0132】
樹脂組成物層の厚さは、回路基板の低背化の観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、又は20μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上などとし得る。
【0133】
<プラスチックフィルム>
本発明の金属箔付き樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の第2の主面はプラスチックフィルムと接合している(
図1参照;金属箔付き樹脂シート10において、樹脂組成物層1の第2の主面(
図1において上側の主面)は、プラスチックフィルム2と接合している)。
【0134】
プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0135】
プラスチックフィルムは、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、プラスチックフィルムとしては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付きプラスチックフィルムを使用してもよい。離型層付きプラスチックの離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。
【0136】
プラスチックフィルムは、市販品を用いてもよく、例えば、PETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0137】
プラスチックフィルムの厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付きプラスチックフィルムを使用する場合、離型層付きプラスチックフィルム全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0138】
<支持基材付き金属箔>
本発明の金属箔付き樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の第1の主面は、支持基材付き金属箔の金属箔側と接合している(
図1参照;金属箔付き樹脂シート10において、樹脂組成物層1の第1の主面(
図1において下側の主面)は、支持基材付き金属箔3の金属箔3aと接合している)。
【0139】
支持基材付き金属箔は、金属箔と、該金属箔と剥離が可能な状態で接合している支持基材とを含む。
図1を参照すると、支持基材付き金属箔10は、金属箔3aと、該金属箔と剥離が可能な状態で接合している支持基材3bとを含む。
【0140】
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されず、プラスチックフィルム又はキャリア金属箔であってよい。
【0141】
支持基材がプラスチックフィルムである場合、その材料としては、上記「<プラスチックフィルム>」について説明したものと同様としてよい。また支持基材がキャリア金属箔である場合、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、チタン合金箔、銅箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材としてキャリア金属箔を用いる場合、電解金属箔、圧延金属箔であってよく、中でも電解銅箔、電解銅金箔、圧延銅箔、圧延銅合金箔が好ましい。
【0142】
支持基材は、回路基板の製造にあたり、金属箔から剥離除去される。斯かる剥離を円滑に実施し得る観点から、支持基材は、金属箔と接合する面に剥離層を有する剥離層付き支持基材であってよい。剥離層は、金属箔から支持基材を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
【0143】
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
【0144】
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは7μm以上、より好ましくは9μm以上又は10μm以上であり、その上限は、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下又は150μm以下である。剥離層付き支持基材を使用する場合、剥離層付き支持基材全体の厚さが上記範囲にあることが好適である。
【0145】
支持基材付き金属箔において、金属箔の厚さは、微細配線形成性に寄与する観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下であり、その下限は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上又は1μm以上である。
【0146】
支持基材付き金属箔は、市販品を用いてもよく、例えば、極薄銅箔と該極薄銅箔と剥離が可能な状態で接合しているキャリア銅箔を含むものとして、三井金属社製の「MT18Ex」、「MT18SD-H」、「MT18FL」、「MT18GN」、JX金属社製の「JXUT-III箔」等が挙げられる。
【0147】
以下、本発明の金属箔付き樹脂シートを製造する方法について述べる。
【0148】
本発明の金属箔付き樹脂シートは、先述のとおり、第1及び第2の主面を有する樹脂組成物層と、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合している支持基材付き金属箔と、該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとを含む。斯かる層構成を有する金属箔付き樹脂シートは、樹脂組成物層と該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとからなる第1の樹脂シートに、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合するように支持基材付き金属箔を積層するか、又は、樹脂組成物層と該樹脂組成物層の第1の主面に金属箔側で接合している支持基材付き金属箔とからなる第2の樹脂シートに、該樹脂組成物層の第2の主面と接合するようにプラスチックフィルムを積層することによって製造することができる。そして本発明の金属箔付き樹脂シートは、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下であることを特徴とするが、これは、第1の樹脂シートと支持基材付き金属箔とを、あるいは、第2の樹脂シートとプラスチックフィルムとを積層する際に、支持基材付き金属箔の支持基材と接する積層用ロールに付着した異物を除去するためのロールを設けたり、積層後に金属箔付き樹脂シートの表面を平坦化する処理に付したりすることで実現することができる。
【0149】
<第1の樹脂シート>
一実施形態において、本発明の金属箔付き樹脂シートは、樹脂組成物層と該樹脂組成物層の第2の主面と接合しているプラスチックフィルムとからなる第1の樹脂シートに、該樹脂組成物層の第1の主面と金属箔側で接合するように支持基材付き金属箔を積層することにより製造される(
図2a参照;第1の樹脂シート5と支持基材付き金属箔3とを、樹脂組成物層と金属箔とが接合するように積層して、金属箔付き樹脂シート10を得る)。
【0150】
図1を参照すると、第1の樹脂シート5は、樹脂組成物層1と、該樹脂組成物層の第2の主面(
図1において上側の主面)と接合しているプラスチックフィルム2とからなる。第1の樹脂シートを構成する樹脂組成物層やプラスチックフィルムは、その好適な例を含め、先述したとおりである。
【0151】
第1の樹脂シートは、プラスチックフィルム上に、樹脂組成物層を設けて形成される。例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いてプラスチックフィルム上に塗布し、更に乾燥させることにより形成することができる。有機溶剤や乾燥の条件は先述したとおりである。
【0152】
<第2の樹脂シート>
他の一実施形態において、本発明の金属箔付き樹脂シートは、樹脂組成物層と該樹脂組成物層の第1の主面に金属箔側で接合している支持基材付き金属箔とからなる第2の樹脂シートに、該樹脂組成物層の第2の主面と接合するようにプラスチックフィルムを積層することにより製造される(
図2b参照;第2の樹脂シート6とプラスチックフィルム2とを、樹脂組成物層とプラスチックフィルムとが接合するように積層して、金属箔付き樹脂シート10を得る)。
【0153】
図1を参照すると、第2の樹脂シート6は、樹脂組成物層1と、該樹脂組成物層の第1の主面(
図1において下側の主面)と接合している支持基材付き金属箔3とからなり、支持基材付き金属箔の金属箔3aと樹脂組成物層とが接合している。第2の樹脂シートを構成する樹脂組成物層や支持基材付き金属箔は、その好適な例を含め、先述したとおりである。
【0154】
第2の樹脂シートは、支持基材付き金属箔の金属箔上に、樹脂組成物層を設けて形成される。例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持基材付き金属箔の金属箔上に塗布し、更に乾燥させることにより形成することができる。有機溶剤や乾燥の条件は先述したとおりである。
【0155】
一実施形態において、本発明の金属箔付き樹脂シートは、第1の樹脂シートと支持基材付き金属箔とを、又は、第2の樹脂シートとプラスチックフィルムとを、一対のロールA及びB間に挟んだ状態で、少なくとも一方のロールを他方のロール方向に押圧することで積層して製造することができる。斯かる積層工程において、支持基材付き金属箔と接するロールAの表面に付着した異物を除去するためのロールC1を設けることにより、支持基材付き金属箔側の表面に凹部が生じることを低減することができ、また、プラスチックフィルムと接するロールBの表面に付着した異物を除去するためのロールC2を設けることにより、支持基材付き金属箔側に凸部が生じることを低減することができる。
【0156】
図2aに、第1の樹脂シートと支持基材付き金属箔とを積層して金属箔付き樹脂シートを得る方法を説明するための模式図(1)を示す。以下、
図2aに示す積層工程を「工程(X-1)」ともいう。
【0157】
図2aに示す積層工程、すなわち工程(X-1)では、第1の樹脂シート5に、該第1の樹脂シートの樹脂組成物層と金属箔側で接合するように支持基材付き金属箔3を積層する。よって、
図2aにおいて、第1の樹脂シート5は、左側にプラスチックフィルム、右側に樹脂組成物層を含む。また
図2aにおいて、支持基材付き金属箔3は、左側に金属箔、右側に支持基材を含む。これら第1の樹脂シート5と支持基材付き金属箔3とが積層されて金属箔付き樹脂シート10が得られる。
【0158】
図2bに、第2の樹脂シートとプラスチックフィルムとを積層して金属箔付き樹脂シートを得る方法を説明するための模式図(2)を示す。以下、
図2bに示す積層工程を「工程(X-2)」ともいう。
【0159】
図2bに示す積層工程、すなわち工程(X-2)では、第2の樹脂シート6に、該第2の樹脂シートの樹脂組成物層と接合するようにプラスチックフィルム2を積層する。よって、
図2bにおいて、第1の樹脂シート6は、左側に樹脂組成物層、右側に支持基材付き金属箔を含み、支持基材付き金属箔の金属箔と樹脂組成物層が接合している。これら第2の樹脂シート6とプラスチックフィルム2とが積層されて金属箔付き樹脂シート10が得られる。
【0160】
なお、
図2aや
図2bには、樹脂シート等の積層対象部材を上側から下側に搬送しつつ左右方向から圧着して積層する態様を示しているが、樹脂シート等の積層対象部材を水平方向に搬送しつつ上下方向から圧着して積層してもよい。
【0161】
上記の工程(X-1)、(X-2)の別を問わず、ロールAは、支持基材付き金属箔の支持基材と接するように設けられており(
図2aや
図2bにおけるR
A)、ロールBは、プラスチックフィルムと接するように設けられている(
図2aや
図2bにおけるR
B)。
【0162】
ロールAとロールBのロール面長(
図2aや
図2bにおいてロールの奥行き方向の寸法)は、工程(X-1)であれば、使用する第1の樹脂シートや支持基材付き金属箔の幅(搬送方向に垂直な方向(TD方向)における寸法;以下、同様である。)に応じて、また、工程(X-2)であれば、使用する第2の樹脂シートやプラスチックフィルムの幅に応じて、互いに積層させて金属箔付き樹脂シートを製造し得るように適宜決定してよい。ロールAとロールBの材質は、樹脂シート等の各部材を互いに積層させて金属箔付き樹脂シートを製造し得る限り特に限定されず、ゴム製ロール、金属製ロール、金属製芯材とゴム製ライニングからなる複合材ロールの何れを使用してもよい。また、ロールAとロールBとしては、互いに同じ材質のロールを用いてもよく、異なる材質のロールを用いてもよい。ロールAとロールBとの間の圧着圧力(積層対象部材に加えられる圧力)は、樹脂シート等の各部材を互いに積層させて金属箔付き樹脂シートを製造し得る限り特に限定されず、例えば0.1MPa~3MPaの範囲にて適宜決定してよく、好ましくは0.2MPa~2.5MPaの範囲、0.3MPa~2MPaの範囲としてよい。後述する除塵ロールC1やC2を備えることにより、斯かる圧着圧力によらず、積層時に支持基材付き金属箔側に凹部や凸部が生じることを低減でき、それ故、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm
2以下である本発明の金属箔付き樹脂シートを製造することができる。ロールAとロールBにより圧着して積層する際の温度は、樹脂シート等の各部材を互いに積層させて金属箔付き樹脂シートを製造し得る限り特に限定されず、常温(25℃程度)であってもよく、加熱条件としてもよい。樹脂シート等の各部材を十分に密着させ得る観点から、加熱条件下で積層することが好ましく、その温度は、例えば50℃~130℃の範囲、好ましくは80℃~120℃の範囲としてよい。ロールAとロールBにより圧着して積層する際の、樹脂シート等の各部材の搬送速度(積層速度)は、樹脂シート等の各部材を互いに積層させて金属箔付き樹脂シートを製造し得る限り特に限定されず、例えば、0.1m/分~50m/分の範囲で適宜決定してよい。
【0163】
上記のとおり、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm
2以下である本発明の金属箔付き樹脂シートを製造するに際し、支持基材付き金属箔の支持基材と接するロールAの表面に付着した異物を除去するためのロールC1(以下、「除塵ロールC1」ともいう。)を設けることが好適である(
図2aや
図2bにおけるR
C1)。
【0164】
除塵ロールC1としては、ロールAの表面に付着した塵等の異物を除去する機能を有するロールを用いることができ、例えば、ロールAの表面に付着した異物を吸着することのできる吸着面を有するロールが挙げられる。斯かる吸着面は、ロールAの表面に付着した異物を吸着することができ、かつ、ロールAの表面に付着することのない材料からなることが好ましい。例えば、異物に対し吸着性を呈する粘着性若しくは非粘着性の高分子化合物(シリコン系ゴム、ノンシリコン系ゴムなど)からなる吸着面を有するロールを用いてよい。除塵ロールC1のロール面長は、使用する支持基材付き金属箔の幅に応じて、適宜決定してよい。また、ロールC1の径は、ロールAの表面に付着した異物を除去し得る限り特に限定されず適宜決定してよく、例えば、ロールC1の径は、当該ロールC1が接するロールAの径より小さくてよい。なお、
図2aや
図2bには、ロールAの表面に接して1個のロールC1を設けた態様を示しているが、ロールAに対し2個以上のロールC1を設けてもよい。ロールAとロールC1との間の圧着圧力は、ロールAの表面に付着した異物を除去し得る限り特に限定されず、例えば0.01MPa~0.1MPaの範囲にて適宜決定してよく、好ましくは0.02MPa~0.08MPaの範囲としてよい。除塵ロールC1は、市販品を用いてもよく、例えば、YanGo社製の高分子ゴム除塵ロール(RUSシリーズ、HSSシリーズ、LPSシリーズ、SRRシリーズなど)、TEKNEK社製の除塵ローラーが挙げられる。
【0165】
また上記のとおり、本発明の金属箔付き樹脂シートを製造するに際し、プラスチックフィルムと接するロールBの表面に付着した異物を除去するためのロールC2(以下、「除塵ロールC2」ともいう。)を設けてよい(
図2aや
図2bにおけるR
C2)。
【0166】
除塵ロールC2は、その好適な例を含め、除塵ロールC1と同様としてよい。また、ロールBとロールC2との間の圧着圧力は、ロールAとロールC1との圧着圧力と同様としてよい。
【0167】
本発明の金属箔付き樹脂シートを製造するに際し、除塵ロールC1の表面に付着した異物を除去するためのロールD1や、除塵ロールC2の表面に付着した異物を除去するためのロールD2を設けてもよい。ロールD1やD2は、除塵ロールC1やC2の表面に付着した異物を除去する機能を有する限り、その構成は特に限定されないが、表面に塵等の異物を吸着させるための粘着層を備えていることが好ましい。このようなロールD1やD2を備えることにより、積層工程において除塵ロールC1やC2の表面に異物が堆積して除塵ロールの吸着力が低下することを防止することができ、ロールAやBの表面に付着した異物をより確実に長時間安定して除去することができる。このようなロールD1やD2は、市販品を用いてもよく、例えば、YanGo社製の塵埃転写用粘着テープロールや「GaplessTMULT」、「GaplessTMSRR」、TEKNEK社製の粘着ロールが挙げられる。
【0168】
上記の除塵ロールC1やC2を用いることに加えて/代えて、第1の樹脂シートと支持基材付き金属箔とを、又は、第2の樹脂シートとプラスチックフィルムとを積層した後、得られた金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面を平滑化する処理に付して、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下である本発明の金属箔付き樹脂シートを製造してもよい。
【0169】
斯かる平滑化処理としては、金属箔付き樹脂シートの表面に異物の付着がない状態で(あるいは異物の付着量を減じた上で)、常圧下(大気圧下)、例えば、平滑な圧着部材を指示基材付き金属箔側からプレスすることにより実施してよい。平滑化処理の圧着条件は、上記[回路基板の製造方法]欄において述べた真空ラミネート処理の加熱圧着条件と同様の条件としてよい。
【0170】
本発明の金属箔付き樹脂シートは、その支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上かつ最大高低差0.7μm以上の凹部又は凸部が5個/cm2以下であり、それ故、回路基板の製造において基材への積層を低圧条件下で実施する場合であっても、配線の形成対象面に凹部や凸部が生じることを減じ、良好な歩留まりを達成することができる。したがって本発明の金属箔付き樹脂シートは、回路基板の製造に好適に用いることができ、該金属箔付き樹脂シートを低圧条件下(例えば1.5MPa以下の圧力;好適な圧力条件は先述のとおりである。)にて基材に積層する工程を含む回路基板の製造において好適に用いることができる。
【0171】
また、本発明の金属箔付き樹脂シートは、金属箔をめっきシード層として利用するモディファイドセミアディティブ法、あるいは、金属箔を除去した後の絶縁層の露出表面プロファイルを利用するセミアディティブ法により配線を形成する回路基板の製造において、配線間距離が小さい配線を形成する場合であっても、良好な歩留まりを達成することができる。したがって本発明の金属箔付き樹脂シートは、モディファイドセミアディティブ法又はセミアディティブ法により配線を形成する工程を含む回路基板の製造において好適に用いることができ、配線間距離が小さい(例えば35μm以下、30μm以下、25μm以下)回路基板の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0172】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0173】
[実施例1]
(1)金属箔付き樹脂シートの製造
(1-1)樹脂組成物1の調製
テトラメチルビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ基当量194g/eq.)8部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ基当量約271g/eq.)10部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000L」、エポキシ基当量約213g/eq.)2部、2官能エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658GS」、エポキシ基当量約133g/eq.)2部、トリアジン骨格及びクレゾールノボラック構造を有するフェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、フェノール当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、活性エステル樹脂(DIC社製「HP-C-8151-62T」、フェノール当量約238、固形分62%のトルエン溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7800BH40」、固形分40%のMEKならびにシクロヘキサン溶液)5部、及びアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理された無機充填材(アドマテックス社製「SO-C2」、表面処理量:無機充填材100質量%に対しアミノ系シランカップリング剤0.6質量%)40部、硬化促進剤(1,4-ジメチルアミノピリジン)の固形部5%のMEK溶液1部を添加して、樹脂組成物1を調製した。
【0174】
(1-2)第1の樹脂シートの作製
PETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)上に、上記(1-1)で調製した樹脂組成物1を、乾燥後の厚さが18μmになるように、ダイコーターにて均一に塗布した。その後、オーブンで乾燥させて、樹脂組成物層/PETフィルムの層構成を有する第1の樹脂シートを作製した。
【0175】
(1-3)金属箔付き樹脂シートの製造
支持基材付き金属箔(三井金属社製「MT18Ex(2um)」、極薄銅箔厚さ2μm、キャリア銅箔厚さ18μm)を用意した。そして、ロールラミネーター(大成ラミネーター社製「VA770」)を用いて、上記(1-2)で作製した第1の樹脂シートに、樹脂組成物層と極薄銅箔側で接合するように上記支持基材付き金属箔を積層した。詳細には、第1の樹脂シートと支持基材付き金属箔とを一対のロールA及びB間に挟んだ状態で、一方のロールを他方のロール方向に押圧することで積層した(支持基材付き金属箔の支持基材と接するロールをロールAとし、第1の樹脂シートのPETフィルムと接するロールをロールBと称する)。その際、異物を模した100μmメッシュの銅粉を、事前にロールAとロールBのロール面に意図的に付着させておき、ロールAの表面に付着した異物を除去するためのロールC1(Yango社製ノンシリコン系クリーニングロール「SRR-370」)を設けてクリーニングした。積層条件は、温度100℃、圧力0.3MPaとした。こうして、プラスチックフィルム/樹脂組成物層/支持基材付き金属箔(金属箔/支持基材)の層構成を有する金属箔付き樹脂シートを製造した。
【0176】
(1-4)金属箔付き樹脂シートの表面凹凸の観察
得られた金属箔付き樹脂シートについて、その支持基材付き金属箔側の表面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHX-900」)を用いて観察した。詳細には、支持基材付き金属箔側の表面について、15cm×15cmの中で1cm2のエリアを無作為に10点選択して観察した。そして、観察により同定された凹凸を、接触式段差計(Bruker社製触針式プロファイリングシステム「DektakXT」)を用いて解析し、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部の数を求めた。10点のエリアについて求めた上記凹部又は凸部の数の算術平均値を求め、該算術平均値の小数点以下第一位を四捨五入して得た整数値を、金属箔付き樹脂シートの支持基材付き金属箔側の表面における凹部又は凸部の数(個/cm2)とした。その結果、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部は4個/cm2であった。
【0177】
上記と全く同様にして、得られた金属箔付き樹脂シートについて、そのプラスチックフィルム側の表面における凹部又は凸部の数を求めた。その結果、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部は1個/cm2であった。
【0178】
(2)評価用回路基板の製造
(2-1)金属箔付き樹脂シートの基材への積層
得られた金属箔付き樹脂シートからPETフィルムを剥離して樹脂組成物層を露出させた。また、基材として銅張積層板(パナソニック電工社製「R1515A」、銅層の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm)を用意した。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製の2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、金属箔付き樹脂シートを、樹脂組成物層が銅張積層板と接するように、銅張積層板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を5hPa以下とし、温度100℃、圧力1.0MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、温度100℃、圧力0.55MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0179】
(2-2)樹脂組成物層の熱硬化
金属箔付き樹脂シートが積層された銅張積層板を、180℃のオーブンに投入後30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させ絶縁層を形成した。
【0180】
(2-3)配線の形成
次いで、以下の手順にしたがって、モディファイドセミアディティブ法(MSAP)により配線を形成した。
【0181】
(2-3-1)支持基材の除去
上記(2-2)で得られた積層体からキャリア銅箔を剥離し、極薄銅箔を露出させた。
【0182】
(2-3-2)めっきレジストの形成と露光・現像
極薄銅箔を露出させた後、めっきレジスト(昭和電工社製のパターン形成用ドライフィルム「RY5115」、厚さ15μm)を、基板の両面に積層した。次いで、配線パターン(詳細は以下に示す。)を形成した15cm角のガラスマスク(露光マスク)を、めっきレジスト上に配置して、ステッパー(ウシオ電機社製の投影露光装置「UX-2240」)により露光した(露光量210mJ)。その後、室温で30分間エージングを行った後に、スプレータイプの現像機を用いて、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液を30秒間噴射して、めっきレジストの現像(パターン形成)を行った。
【0183】
ガラスマスクの配線パターン:
陽極からの配線と陰極からの配線とが対抗した櫛歯パターン(配線幅20μm、配線間距離20μm、配線長10mm、16ライン)を25個有するガラスマスクを使用した。
【0184】
(2-3-3)電解めっき
次いで、アトテックジャパン社製の薬液を使用して電解銅めっきを行い、配線高さが10μmとなるように配線を形成した。
【0185】
(2-3-4)めっきレジストの除去
電解めっきの後、基板をレジスト剥離液(三菱ガス化学社製「R100S」)に50℃で120秒間、超音波処理を行いながら浸漬させて、めっきレジストを剥離した。
【0186】
(2-3-5)フラッシュエッチング
次いで、得られた基板をセミアディティブ法用めっきシード層エッチング剤(メルストリップSE-300)に25℃で浸漬させて、配線形成部以外の不要な銅めっき層を除去することにより、櫛歯配線を形成した。こうして評価用基板を得た。
【0187】
[実施例2]
支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部が2個/cm2である金属箔付き樹脂シートを製造した以外は、実施例1と同様にして櫛歯配線を有する評価用回路基板を得た。なお、支持基材付き金属箔側の表面凹凸の個数は、異物を模した100μmメッシュの銅粉の付着量を変更することにより調整した。
【0188】
[実施例3]
極薄銅箔をめっきシード層として利用するMSAPに代えて、絶縁層の露出表面プロファイルを利用するセミアディティブ法(SAP)により配線を形成した以外は、実施例1と同様にして櫛歯配線を有する評価用回路基板を得た。
【0189】
詳細には、実施例1の(2-3-1)に代えて、下記(2-3-1’(1))及び(2-3-1’(2))を実施してめっきシード層(無電解銅めっき層)を形成した以外は、実施例1と同様にして櫛歯配線を有する評価用回路基板を得た。
【0190】
(2-3-1’(1))支持基材付き金属箔の除去
樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成した後、キャリア銅箔を剥離し、極薄銅箔を露出させた。次いで、極薄銅箔を湿式エッチング処理(塩化第二鉄水溶液)により除去して絶縁層を露出させた。
【0191】
(2-3-1’(2))無電解めっき
絶縁層の露出表面に、下記1~6の工程を含むめっき工程(アトテックジャパン社製の薬液を使用した銅めっき工程)を行って導体層を形成した。
1.アルカリクリーニング(絶縁層の表面の洗浄と電荷調整)
Cleaning Cleaner Securiganth 902(商品名)を用いて60℃で5分間洗浄した。
2.ソフトエッチング(絶縁層の表面の洗浄)
硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で1分間処理した。
3.プレディップ(Pd付与のための絶縁層の表面の電荷の調整)
Pre. Dip Neoganth B(商品名)を用い、室温で1分間処理した。
4.アクティヴェーター付与(絶縁層の表面へのPdの付与)
Activator Neoganth 834(商品名)を用い、35℃で5分間処理した。
5.還元(絶縁層に付与されたPdを還元)
Reducer Neoganth WA(商品名)とReducer Acceralator 810 mod.(商品名)との混合液を用い、30℃で5分間処理した。
6.無電解銅めっき工程(Cuを絶縁層の表面(Pd表面)に析出)
Basic Solution Printganth MSK-DK(商品名)と、Copper solution Printganth MSK(商品名)と、Stabilizer Printganth MSK-DK(商品名)と、Reducer Cu(商品名)との混合液を用いて、35℃で20分間処理した。形成された無電解銅めっき層の厚さは0.8μmであった。
【0192】
[実施例4]
(1)支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部が2個/cm2である金属箔付き樹脂シートを製造した点、(2)櫛歯パターン(配線幅8μm、配線間距離8μm、配線長10mm、16ライン)を25個有するガラスマスクを使用した点以外は、実施例3と同様にして櫛歯配線を有する評価用回路基板を得た。
【0193】
[実施例5]
(1)実施例1の(1-1)に代えて、下記(1-1’)を実施して樹脂組成物2を調製し第1の樹脂シートを作製した点、(2)支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部が2個/cm2である金属箔付き樹脂シートを製造した点以外は、実施例1と同様にして櫛歯配線を有する評価用回路基板を得た。
【0194】
(1-1’)樹脂組成物2の調製
マレイミド樹脂(信越化学工業社製「SLK-6895-M90」、マレイミド当量345g/eq.固形分90wt%のMEK溶液)5部、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド当量393g/eq.固形分70wt%のMEKならびにトルエン溶液)10部、液状アクリレート樹脂(新中村化学工業社製「A-DOG」、ビニル基当量約163g/eq.)5部、共重合体エラストマー(旭化成社製「P2000」)の30wt%トルエン溶液2部、及びアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理された無機充填材(アドマテックス社製「SO-C2」、表面処理量:無機充填材100質量%に対しアミノ系シランカップリング剤0.6質量%)40部、過酸化物硬化促進剤(日油化学社製「パーヘキシン25B」)の固形部5%のトルエン溶液1部を添加して、樹脂組成物2を調製した。
【0195】
[比較例1]
支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部が8個/cm2である金属箔付き樹脂シートを製造した以外は、実施例1と同様にして櫛歯配線を有する評価用回路基板を得た。なお、支持基材付き金属箔側の表面凹凸の個数は、異物を模した100μmメッシュの銅粉の付着量を変更すると共に、ロールAの表面に付着した異物を除去するためのロールC1を省略することにより調整した。
【0196】
[比較例2]
(1)支持基材付き金属箔側の表面における、最大径0.8μm以上、最大高低差0.7μmである凹部又は凸部が8個/cm2である金属箔付き樹脂シートを製造した点、(2)櫛歯パターン(配線幅8μm、配線間距離8μm、配線長10mm、16ライン)を25個有するガラスマスクを使用した点以外は、実施例3と同様にして櫛歯配線を有する評価用回路基板を得た。なお、支持基材付き金属箔側の表面凹凸の個数は、異物を模した100μmメッシュの銅粉の付着量を変更すると共に、ロールAの表面に付着した異物を除去するためのロールC1を省略することにより調整した。
【0197】
<配線歩留まりの評価>
各実施例及び比較例で得た評価用回路基板について、櫛歯配線の絶縁抵抗値を、抵抗測定器(J-RAS社製「ECM-100」)を用いて測定した。絶縁抵抗値が1×107Ω以上である櫛歯配線の割合が60%以上(すなわち1×107Ω以上である櫛歯配線の数が15以上)の場合に「〇」、60%未満の場合に「×」と評価した。
【0198】
【符号の説明】
【0199】
1 樹脂組成物層
2 プラスチックフィルム
3 支持基材付き金属箔
3a 金属箔
3b 支持基材
5 第1の樹脂シート
6 第2の樹脂シート
10 金属箔付き樹脂シート
RA ロールA
RB ロールB
RC1 ロールC1
RC2 ロールC2