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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 7/00 20060101AFI20241210BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241210BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F25B7/00 D
F25B1/00 399Y
F25B13/00 351
F25B1/00 361A
F25B1/00 371Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023058632
(22)【出願日】2023-03-31
(65)【公開番号】P2024145985
(43)【公開日】2024-10-15
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博俊
(72)【発明者】
【氏名】前間 慶成
(72)【発明者】
【氏名】兼井 一樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 好亮
(72)【発明者】
【氏名】煎谷 晴輝
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179352(JP,A)
【文献】特開2016-125808(JP,A)
【文献】特開2011-252621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
F25B 1/00
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外熱交換器、第1の圧縮機、カスケード熱交換器、第1の減圧手段および第1の室内熱交換器を有し、第1の冷媒が循環する低元冷媒回路と、
第2の圧縮機、水冷媒熱交換器、第2の減圧手段および前記カスケード熱交換器を有し、前記カスケード熱交換器において前記第1の冷媒と熱交換する第2の冷媒が、前記第2の圧縮機が駆動することにより循環する高元冷媒回路と、
循環ポンプ、第2の室内熱交換器および前記水冷媒熱交換器を有し、前記水冷媒熱交換器において前記第2の冷媒と熱交換する水が循環する水回路と、
蓄熱材を有し、前記水回路に接続されて前記蓄熱材と前記水とを熱交換させる蓄熱装置と、
前記蓄熱装置を介することなく前記水をバイパスするバイパス流路と、
前記蓄熱装置と、前記バイパス流路とに流れる前記水の流路を切り替える流路切替弁と、
前記第1の圧縮機、前記第1の減圧手段、前記第2の圧縮機、前記第2の減圧手段、前記循環ポンプおよび前記流路切替弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第2の室内熱交換器の室内機による暖房運転時において、前記水を前記蓄熱装置と前記バイパス流路のうち前記バイパス流路のみに流す第1の暖房運転、または、前記水を前記蓄熱装置と前記バイパス流路の両方に流す第2の暖房運転、または、前記水を前記蓄熱装置と前記バイパス流路のうち前記蓄熱装置のみに流して前記蓄熱装置が蓄熱した熱を放熱させて、前記水を加温させる第3の暖房運転に切り替えるとともに、前記第2の暖房運転では、前記第2の室内熱交換器の室内機および前記蓄熱装置の要求能力に基づいて前記第2の圧縮機の回転数を決定し、
前記制御装置は、
前記第1の暖房運転と前記第2の暖房運転とにおいて、前記高元冷媒回路に前記第2の冷媒が循環するように、前記第2の圧縮機を駆動させ、
前記第3の暖房運転において、前記高元冷媒回路に前記第2の冷媒が循環しないように、前記第2の圧縮機を停止させる、
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記低元冷媒回路は、前記制御装置の制御のもと、前記第1の室内熱交換器の室内機による暖房運転と冷房運転とで前記第1の冷媒の循環する経路を切り替える切替弁を有し、
前記制御装置は、前記第1の室内熱交換器の室内機による暖房運転時であり、かつ、前記第2の室内熱交換器の室内機による暖房運転が前記第1の暖房運転である場合、前記第2の室内熱交換器の室内機の要求能力が所定値未満になった場合に前記第1の暖房運転から前記第2の暖房運転に切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記低元冷媒回路における前記第1の冷媒の凝縮圧力に基づき、前記所定値を変更する、
ことを特徴とする請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記流路切替弁は、前記蓄熱装置と、前記バイパス流路とに流れる前記水の量を調整可能な調整弁であり、
前記制御装置は、前記第2の暖房運転において、前記第2の室内熱交換器の室内機の要求能力と、前記蓄熱装置の要求能力との比率に基づいて前記調整弁の開度を調節し、前記蓄熱装置と前記バイパス流路に流れる前記水の比率を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記蓄熱装置の要求能力は、前記所定値から前記第2の室内熱交換器の室内機の要求能力を減じて算出される余剰能力である、
ことを特徴とする請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記第2の室内熱交換器に流入する前記水の第1の温度と、前記蓄熱装置の第2の温度とを検出する温度検出手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2の暖房運転において、前記第1の温度と、前記第2の温度との温度差が所定温度差未満となった場合、前記第3の暖房運転に切り替える、
ことを特徴とする請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1の室内熱交換器の室内機の要求能力と、前記第2の室内熱交換器の室内機の要求能力と、前記蓄熱装置の要求能力との合計に基づいて前記第1の圧縮機の回転数を決定し、
前記第3の暖房運転において、前記第2の室内熱交換器の室内機の要求能力を0に置き換えて前記第1の圧縮機の回転数が決定される、
ことを特徴とする請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の冷媒が循環する低元側冷媒回路と、低元側冷媒回路と接続されて、第1の冷媒と熱交換する第2の冷媒が循環する高元側冷媒回路とを有し、2元冷凍サイクルを形成する冷凍サイクル装置がある(特許文献1)。
【0003】
この冷凍サイクル装置において、室外機に温水生成ユニットと室内機が並列に接続されて低元側冷媒回路が構成される。また、温水生成ユニットにおいて高元側冷媒回路が構成され、高元側冷媒回路に水が循環する水回路が接続される。そして、温水生成ユニットにおいて、第2の冷媒と水が熱交換することで温水が生成される。これにより、冷凍サイクル装置では、低元側冷媒回路と接続された室内機で使用者の居室を空調すると同時に、温水生成ユニットで生成した温水による給湯や、温水を用いた室内機による空調が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-179352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、温水生成ユニットで生成すべき温水の温度が低く、温水生成ユニットの熱的な負荷が小さい場合に、高元側冷媒回路が有する圧縮機における圧縮比が小さくなりやすくなる。これにより、圧縮機のローラの動きにベーンが追従できない、いわゆるベーン飛び現象が発生するなど、高元側冷媒回路の圧縮機の信頼性が悪化するという問題がある。信頼性が悪化しないように高元側冷媒回路の圧縮機の回転数を上げて圧縮比を高めた場合には、第2の冷媒により過剰に水を加熱することになり、温水の利用者の快適性が損なわれてしまうこととなる。
【0006】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による冷凍サイクル装置は、低元冷媒回路と、高元冷媒回路と、水回路と、蓄熱装置と、バイパス流路と、流路切替弁と、制御装置とを備える。低元冷媒回路は、室外熱交換器、第1の圧縮機、カスケード熱交換器、第1の減圧手段および第1の室内熱交換器を有し、第1の冷媒が循環する。高元冷媒回路は、第2の圧縮機、水冷媒熱交換器、第2の減圧手段およびカスケード熱交換器を有し、カスケード熱交換器において第1の冷媒と熱交換する第2の冷媒が、第2の圧縮機が駆動することにより循環する。水回路は、循環ポンプ、第2の室内熱交換器および水冷媒熱交換器を有し、水冷媒熱交換器において第2の冷媒と熱交換する水が循環する。蓄熱装置は、蓄熱材を有し、水回路に接続され、蓄熱材と水の熱とを熱交換間を放熱させる。バイパス流路は、蓄熱装置を介することなく水をバイパスする。流路切替弁は、蓄熱装置と、バイパス流路とに流れる水流路切り替える。制御装置は、第1の圧縮機、第1の減圧手段、第2の圧縮機、第2の減圧手段、循環ポンプおよび流路切替弁を制御する。制御装置は、第2の室内熱交換器の室内機による暖房運転時において、水をバイパス流路のみに流す第1の暖房運転、または、水蓄熱装置とバイパス流路の両方に流す第2の暖房運転、または、前記水を前記蓄熱装置と前記バイパス流路のうち前記蓄熱装置のみに流して前記蓄熱装置が蓄熱した熱を放熱させて、前記水を加温させる第3の暖房運転に切り替えるとともに、第2の暖房運転では、第2の室内熱交換器の室内機および蓄熱装置の要求能力に基づいて第2の圧縮機の回転数を決定し、制御装置は、第1の暖房運転と第2の暖房運転とにおいて、高元冷媒回路に第2の冷媒が循環するように、第2の圧縮機を駆動させ、第3の暖房運転において、高元冷媒回路に第2の冷媒が循環しないように、第2の圧縮機を停止させる。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、冷凍サイクル装置の信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の一例を示す説明図である。
図2図2は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の制御例を示すフローチャートである。
図3図3は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図4図4は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の冷凍サイクルを説明するp-h線図である。
図5図5は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の変形例1を説明する説明図である。
図6図6は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の変形例1の制御例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の変形例2を説明する説明図である。
図8図8は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の変形例2の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる冷凍サイクル装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する冷凍サイクル装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0011】
図1は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置1の一例を示す説明図である。図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、低元冷媒回路10、高元冷媒回路20、水回路30、蓄熱装置33、流路切替弁としての第1流路調整弁34a、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cおよび制御装置50を備える。
【0012】
低元冷媒回路10は、室外熱交換器11、低元側圧縮機12、カスケード熱交換器13、膨張弁14a、14b(第1の減圧手段)、室内熱交換器15(第1の室内熱交換器)、操作弁16a、16bおよび四方弁17を有し、冷媒(第1の冷媒)が循環する。
【0013】
室外熱交換器11は、室外に設けられた室外機11aにおいて外気と、低元冷媒回路10を循環する冷媒との間で熱交換を行う。
【0014】
低元側圧縮機12は、制御装置50の制御のもと、例えば、インバータにより回転数が制御される図示しないモータの駆動に応じて、運転容量を可変できる圧縮機である。低元側圧縮機12は、制御装置50により制御された回転数で駆動することで、低元冷媒回路10を循環する冷媒を圧縮する第1の圧縮機の一例である。
【0015】
カスケード熱交換器13は、低元冷媒回路10を循環する冷媒と、高元冷媒回路20を循環する冷媒(第2の冷媒)との間で熱交換を行う。
【0016】
膨張弁14a、14bは、制御装置50の制御のもと、図示しないパルスモータで駆動する電子膨張弁である。膨張弁14a、14bは、パルスモータに与えられるパルス数に応じて開度が調整されることで、カスケード熱交換器13、室内熱交換器15に流入する冷媒の流量を調整する。
【0017】
室内熱交換器15は、室内に設けられた低元側室内機15aにおいて室内の空気と、低元冷媒回路10を循環する冷媒との間で熱交換を行う。
【0018】
操作弁16a、16bは、手動で開閉を切り替える弁である。操作弁16a、16bは、その開閉により、室内熱交換器15に冷媒を流すか否かを切り替えるものであり、低元側室内機15aを部屋に設置した後に室内熱交換器15に冷媒を流すときや、低元側室内機15aを取り外す場合に室内熱交換器15への冷媒の流入を止めるときなどに使用される。
【0019】
四方弁17は、制御装置50の制御のもと、低元冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切替えるための弁である。具体的には、四方弁17は、冷房運転時には室内熱交換器15を蒸発器、室外熱交換器11を凝縮器とし、暖房運転時には室内熱交換器15を凝縮器、室外熱交換器11を蒸発器とするように、冷媒の流れを切り替える。
【0020】
高元冷媒回路20は、高元側圧縮機21、水冷媒熱交換器22、膨張弁23(第2の減圧手段)およびカスケード熱交換器13を有し、カスケード熱交換器13において低元冷媒回路10を循環する冷媒(第1の冷媒)と熱交換する冷媒(第2の冷媒)が循環する。
【0021】
高元側圧縮機21は、制御装置50の制御のもと、例えば、インバータにより回転数が制御される図示しないモータの駆動に応じて、運転容量を可変できる圧縮機である。高元側圧縮機21は、制御装置50により制御された回転数で駆動することで、高元冷媒回路20を循環する冷媒を圧縮する第2の圧縮機の一例である。
【0022】
水冷媒熱交換器22は、高元冷媒回路20を循環する冷媒と、水回路30を循環する水との間で熱交換を行う。
【0023】
膨張弁23は、制御装置50の制御のもと、図示しないパルスモータで駆動する電子膨張弁である。膨張弁23は、パルスモータに与えられるパルス数に応じて開度が調整されることで、カスケード熱交換器13に流入する冷媒の流量を調整する。
【0024】
水回路30は、循環ポンプ31、室内熱交換器32(第2の室内熱交換器)、蓄熱装置33、第1流路調整弁34a~第3流路調整弁34cおよびバイパス流路40を有し、水冷媒熱交換器22において高元冷媒回路20を循環する冷媒(第2の冷媒)と熱交換する水が循環する。
【0025】
循環ポンプ31は、制御装置50の制御のもと、例えば、インバータにより回転数が制御される図示しないモータの駆動に応じて、運転容量を可変できるポンプである。循環ポンプ31は、制御装置50により制御された回転数で駆動することで、低元冷媒回路10を循環する水の流量を調整可能である。
【0026】
室内熱交換器32は、室内に設けられた高元側室内機32aにおいて室内の空気と、水回路30を循環する水との間で熱交換を行う。
【0027】
蓄熱装置33は、水回路30を循環する水と熱交換を行うことで吸熱し蓄熱する蓄熱材33aを備える。つまり、蓄熱装置33は水回路30を循環する水の熱を放熱させる。熱交換により水の熱を吸熱した蓄熱材33aは、加熱され、熱を蓄える。また、蓄熱装置33と並列にバイパス流路40が接続される。バイパス流路40に水回路30を循環する水を流すことで、蓄熱装置33を介することなく水が循環可能となっている。
【0028】
第1流路調整弁34a~第3流路調整弁34cは、制御装置50の制御のもと、図示しないパルスモータで駆動する開度を調整可能な調整弁である。第1流路調整弁34a~第3流路調整弁34cは、パルスモータに与えられるパルス数に応じて弁を閉じた状態から開いた状態までの間の開度が調整されることで、蓄熱装置33とバイパス流路40に流れる水の流路および流量を調整可能である。
【0029】
なお、蓄熱装置33については、蓄熱材33aを備えず、単に水の熱を放熱する放熱装置33b(図5参照)であってもよい。また、蓄熱装置33(放熱装置33b)は、高元冷媒回路側に設けられ、バイパス流路によって高元冷媒回路の冷媒をバイパス可能に接続される構成であってもよい(図7参照)。すなわち、蓄熱装置33(放熱装置33b)は、高元冷媒回路20または水回路30の少なくとも一方に、バイパス流路40によって高元冷媒回路20の冷媒または水回路30の水をバイパス可能に接続される構成であってもよい。
【0030】
制御装置50は、冷凍サイクル装置1全体を制御する制御部51と、各種情報を記憶する記憶部52と、冷凍サイクル装置1内の各部の温度を検出する温度検出部53(温度検出手段)とを有する。
【0031】
制御部51は、暖房または冷房運転時において、低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33等に関する要求能力を受け付ける。制御部51は、受け付けた低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33等の要求能力に従って、暖房または冷房運転時における各部の動作を制御する。なお、低元側室内機15aの要求能力は、例えば、低元側室内機15aに対するユーザの設定温度と室温との差に基づく値である。また、高元側室内機32aの要求能力は、例えば、高元側室内機32aに対するユーザの設定温度と室温との差に基づく値である。また、蓄熱装置33の要求能力は、閾値A(詳細は後述)から高元側室内機32aの要求能力を減じて算出された余剰能力としてもよい。
【0032】
例えば、制御部51は、低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33全ての要求能力の合計に従って低元側圧縮機12の回転数を決定し、決定した回転数で低元側圧縮機12を駆動させる。また、制御部51は、高元側室内機32aおよび蓄熱装置33の要求能力の合計に従って高元側圧縮機21の回転数を決定し、決定した回転数で高元側圧縮機21を駆動させる。また、制御部51は、膨張弁14a、14bの開度調整により、室内熱交換器15およびカスケード熱交換器13に流れる冷媒が効率よく熱交換を行えるように冷媒の流量を調整する。具体的には、制御部51は、温度検出部53が検出した室内熱交換器15における冷媒の温度に基づいて膨張弁14aを調整し、温度検出部53が検出したカスケード熱交換器13における冷媒の温度に基づいて膨張弁14bを調整する。例えば、制御部51は、暖房運転においては室内熱交換器15およびカスケード熱交換器13を流出する冷媒の過冷却度、冷房運転においては室内熱交換器15およびカスケード熱交換器13を流出する冷媒の過熱度が予め定められた目標値なるように膨張弁14a、14bを調整する。また、制御部51は、後述する第2の暖房運転において、高元側室内機32aの要求能力と、蓄熱装置33の要求能力との比率に基づいて、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cの開度を調節し、蓄熱装置33とバイパス流路40に流れる水の比率を調整してもよい。
【0033】
また、制御部51は、室内熱交換器32の高元側室内機32aによる暖房運転時において、水回路30の水を蓄熱装置33とバイパス流路40のうちバイパス流路40のみに流す暖房運転(第1、第3の暖房運転)、または、水回路30の水を蓄熱装置33とバイパス流路40の両方に流す暖房運転(第2の暖房運転)に切り替える。具体的には、制御部51は、第1流路調整弁34a~第3流路調整弁34cの開閉を切り替えることで、上記の暖房運転の切り替えを行う(詳細は後述)。
【0034】
記憶部52には、例えば、暖房または冷房運転時における、低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33等の要求能力に対応して低元側圧縮機12、高元側圧縮機21等の回転数を定めた回転数テーブルが予め記憶されている。制御部51は、記憶部52に記憶された回転数テーブルを参照することで、要求能力に従った低元側圧縮機12、高元側圧縮機21等の回転数を決定できる。また、記憶部52には、制御の切り替えに用いる各種の閾値に関する情報が予め記憶されている。なお、記憶部52には、低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33等の要求能力に対応して低元側圧縮機12、高元側圧縮機21を制御する目標圧力が予め記憶されていてもよい。具体的には、暖房運転時における目標凝縮圧力、冷房運転時における目標蒸発圧力が記憶されていてもよい。この場合にも、目標圧力に応じて低元側圧縮機12および高元側圧縮機21の回転数が調整されることから、低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33等の要求能力に基づいて低元側圧縮機12および高元側圧縮機21の回転数が決定されていると言える。
【0035】
温度検出部53は、冷凍サイクル装置1内の各部に設けられた温度センサ(図示しない)の検出値を取得し、各部の温度を検出する。例えば、温度検出部53は、室内熱交換器32に流入する水の温度(第1の温度)と、蓄熱材33aの温度(第2の温度)とを検出する。なお、温度検出部53は、冷凍サイクル装置1内の各部に設けられた圧力センサ(図示しない)の検出値を取得し、各部の圧力を検出する圧力検出部であってもよいし、各部の温度と圧力の両方を検出する検出部であってもよい。
【0036】
図2は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置1の制御例を示すフローチャートである。具体的には、図2は、室内熱交換器32の高元側室内機32aによる暖房運転時における制御例を示すフローチャートであり、低元側室内機15aは停止中でもよいがこの制御例では暖房運転中とする。すなわち、低元側圧縮機12については、低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33全ての要求能力の合計に従って回転数が決定され、その回転数で駆動中であるものとする。
【0037】
図2に示すように、処理が開始されると、制御部51は、第1流路調整弁34a、第2流路調整弁34bをCLOSE(閉)、第3流路調整弁34cをOPEN(開)として、水回路30の水をバイパス流路40のみに流す暖房運転(第1の暖房運転)とする。また、制御部51は、高元側室内機32aおよび蓄熱装置33の要求能力の合計に従って高元側圧縮機21の回転数を決定し、決定した回転数で高元側圧縮機21を運転させる(S1)。
【0038】
ついで、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が所定の閾値A以下であるか否かを判定する(S2)。この閾値Aは、高元側圧縮機21において信頼性を確保するために十分な圧縮比を確保可能な圧縮機回転数になる最低要求能力に対応して設定されるものである。つまり、高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下でない場合、要求能力に応じた圧縮機回転数で高元側圧縮機21が駆動すれば、高元側圧縮機21の信頼性を確保するために十分な圧縮比が確保可能である。また、高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下である場合、要求能力に応じた圧縮機回転数で高元側圧縮機21が駆動すると、高元側圧縮機21の信頼性を確保するために十分な圧縮比が確保できない可能性がある。
【0039】
高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下でない場合(S2:No)、制御部51は、S1へ処理を戻す。高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下である場合(S2:Yes)、制御部51は、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cをOPEN(開)とする(S3)。これにより、制御部51は、水回路30の水を蓄熱装置33とバイパス流路40の両方に流す暖房運転(第2の暖房運転)に切り替える(S4)。第2の暖房運転は、蓄熱装置33に冷媒を流すことで高元冷媒回路20にかかる負荷を上げ、圧縮比が確保可能な圧縮機回転数を確保する運転である。
【0040】
ついで、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が所定の閾値A以下であるか否かを判定する(S5)。これは、S2と同様の処理であるが、後述するようにS4からS6の処理は繰り返し行われるため、その間に要求能力が変化する可能性があるためである。高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下でない場合(S5:No)、制御部51は、S1へ処理を戻す。これにより、閾値A以下でない場合は、第2の暖房運転から第1の暖房運転へ切り替えられる。
【0041】
高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下である場合(S5:Yes)、制御部51は、温度検出部53の検出結果をもとに、室内熱交換器32に流入する水の温度(第1の温度)と、蓄熱装置33の温度(第2の温度)との温度差が第1所定温度以下であるか否かを判定する(S6)。ここで、第1所定温度は、第1の温度と第2の温度が近付いたと判定できる十分に小さい値に設定され、例えば2.0degである。温度差が第1所定温度以下でない場合(S6:No)、制御部51は、S4へ処理を戻し、第2の暖房運転を継続する。
【0042】
温度差が第1所定温度以下である場合(S6:Yes)、水回路30を循環する水が蓄熱材33aによってほとんど吸熱されていないことを意味し、蓄熱材33aへの蓄熱がほとんど行われなくなったことを意味する。そこで、制御部51は、高元側圧縮機21の運転を停止させるとともに、第1流路調整弁34aをOPEN(開)、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cをCLOSE(閉)とする(S7)。これにより、制御部51は、水回路30の水を蓄熱装置33のみに流し、蓄熱装置33が蓄熱した熱を放熱(放熱による水の加温)させる、すなわち蓄熱装置33の温度を利用した暖房運転(第3の暖房運転)に切り替える(S8)。第3の暖房運転は、蓄熱装置33が蓄熱した熱を放熱させることで、高元側圧縮機21を停止させ、高元側圧縮機21の圧縮比の問題を生じさせることなく暖房を可能とする運転である。
【0043】
ついで、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が所定の閾値A以下であるか否かを判定する(S9)。これは、S2と同様の処理であるが、後述するようにS8からS10の処理は繰り返し行われるため、その間に要求能力が変化する可能性があるためである。高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下でない場合(S9:No)、制御部51は、S1へ処理を戻す。これにより、閾値A以下でない場合は、第3の暖房運転から第1の暖房運転へ切り替えられる。
【0044】
高元側室内機32aの要求能力が閾値A以下である場合(S9:Yes)、制御部51は、温度検出部53の検出結果をもとに、室内熱交換器32に流入する水の温度(第1の温度)と、蓄熱装置33の温度(第2の温度)との温度差が第2所定温度以上であるか否かを判定する(S10)。ここで、第2所定温度 は、第1の温度と第2の温度が乖離したと判定できる十分に大きい値に設定され、例えば5度である。温度差が第2所定温度以上でない場合(S10:No)、制御部51は、S8に処理を戻して第3の暖房運転を継続する。温度差が第2所定温度以上である場合(S10:Yes)、蓄熱材33aに蓄熱された熱が十分に使われたことを意味する。そこで、制御部51は、高元側圧縮機21の運転を開始させ(S11)、S1へ処理を戻す。
【0045】
図3は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の動作の一例を示すタイミングチャート(横軸を時刻t0~t13、期間T1:時刻t0~t1、期間T2:時刻t1~t2、…、期間T13:時刻t12~t13)である。図3におけるタイミングチャートでは、上から順に、低元側圧縮機12の回転数、低元側室内機15aの要求能力、高元側圧縮機21の回転数、高元側室内機32aと蓄熱装置33の合計要求能力、高元側室内機32aの要求能力、蓄熱装置33の温度、蓄熱装置33の要求能力、第1流路調整弁34a、第2流路調整弁34bおよび第3流路調整弁34cの開閉を縦軸に示している。
【0046】
図3に示すように、当初の期間(T1~T3)は、制御部51は、第1流路調整弁34a、第2流路調整弁34bをCLOSE(閉)、第3流路調整弁34cをOPEN(開)として、水回路30の水をバイパス流路40のみに流す暖房運転(第1の暖房運転)とする。このとき、水回路30を循環する水は、蓄熱装置33側では放熱を行わず、高元側室内機32a側のみで放熱を行う。これにより、期間(T1~T3)では、室内の暖房が効率よく行われて室内が温まることから、高元側室内機32aの要求能力が低下する。
【0047】
ついで、時刻t3において高元側室内機32aの要求能力が閾値Aを下回る、すなわち、圧縮比が確保可能な圧縮機回転数になる最低要求能力を下回るため、制御部51は、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cをOPEN(開)とする。これにより、制御部51は、水回路30の水を蓄熱装置33とバイパス流路40の両方に流す暖房運転を行うことから、水回路30を循環する水が蓄熱装置33で放熱する分だけ高元冷媒回路20にかかる負荷が上がる。したがって、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が閾値Aよりさらに下がり続けても、圧縮比が確保可能な圧縮機回転数を確保でき、高元側圧縮機21の信頼性が悪化することを抑止できる。
【0048】
なお、制御装置50は、閾値Aについて、低元冷媒回路10における冷媒の圧力状態(凝縮圧力)に基づいて変動させる。
【0049】
図4は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置1の冷凍サイクルを説明するp-h線図である。図4において、冷凍サイクルC1は低元冷媒回路10の冷凍サイクル、グラフG1は低元冷媒回路10の冷媒の飽和液線・飽和蒸気線を示している。同様に、冷凍サイクルC2は高元冷媒回路20の冷凍サイクル、グラフG2は高元冷媒回路20の冷媒の飽和液線・飽和蒸気線を示している。図4に示すように、冷凍サイクルC1における凝縮圧力が点線位置C1aから実線位置まで上昇すると、冷凍サイクルC2における蒸発圧力も点線位置C2aから実線位置まで上昇する。その結果、冷凍サイクルC2における圧縮比が小さくなる。
【0050】
したがって、冷凍サイクルC1における凝縮圧力の上昇に伴い、高元側圧縮機21において圧縮比確保に必要な回転数は大きくなることから、冷凍サイクルC1における凝縮圧力の上昇に応じて閾値Aの値を増加させる。冷凍サイクルC1における凝縮圧力は、例えば、低元冷媒回路10を循環する冷媒のカスケード熱交換器13における凝縮温度を検出し、飽和圧力に換算することで求められる。あるいは、低元冷媒回路10の高圧部、すなわち低元側圧縮機12の出口から膨張弁14aまたは14bまでの間に圧力センサを設けて検出してもよい。そして、制御部51は、凝縮圧力と閾値Aとの対応関係を示すテーブルなどを参照することで、凝縮圧力に対応した閾値Aの値を求める。
【0051】
また、制御装置50は、蓄熱装置33の要求能力を、閾値Aから高元側室内機32aの要求能力を減じて算出された余剰能力としてもよい。この場合、冷凍サイクル装置1では、高元側圧縮機21において圧縮比確保のための回転数で運転した場合に余剰となる暖房能力分を蓄熱装置33に蓄熱でき、電力を無駄に消費することなく、高元側圧縮機21が低圧縮比となる運転を回避できる。
【0052】
図3に戻り、期間T4~T8において、水回路30の水を蓄熱装置33とバイパス流路40の両方に流す暖房運転を続けることで、蓄熱装置33の温度が上がる。これにより、室内熱交換器32に流入する水の温度(第1の温度)と、蓄熱装置33の温度(第2の温度)との温度差が所定の閾値以下となるまで蓄熱装置33の温度が上がる(時刻t8)。
【0053】
第1の温度と第2の温度との温度差が所定の閾値以下となると、制御部51は、高元側圧縮機21の運転を停止させるとともに、第1流路調整弁34aをOPEN(開)、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cをCLOSE(閉)とすることで、蓄熱装置33の温度を利用した暖房運転に切り替える。このとき、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力を0に置き換える。すなわち、制御部51は、低元側圧縮機12について、低元側室内機15a、高元側室内機32a、蓄熱装置33全ての要求能力の合計に従って回転数を決定する際に、高元側室内機32aの要求能力を0とする。蓄熱装置33の温度を利用した暖房運転時は、高元側室内機32aでは蓄熱装置33に蓄熱された熱を利用して暖房が行われ、高元側圧縮機21は停止している。そのため、高元冷媒回路20に基づいて低元側圧縮機12の回転数を決める必要がない。したがって、上記のように高元側室内機32aの要求能力を0に置き換えることにより、制御部51は、低元側圧縮機12の回転数を低元側室内機15aの要求能力のみに基づいて決定することができる。これにより、制御部51は、低元側圧縮機12の回転数を、蓄熱装置33の温度を利用した暖房運転に合わせた適切なものとすることができ、二元冷凍サイクル全体で信頼性の高い運転を実施できる。
【0054】
ついで、室内熱交換器32に流入する水の温度(第1の温度)と、蓄熱装置33の温度(第2の温度)との温度差が所定の閾値以上となったところで(時刻t12)、制御部51は、高元側圧縮機21の運転を開始させ、第1流路調整弁34aをCLOSE(閉)、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cをOPEN(開)とした暖房運転に切り替える。
【0055】
図5は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置1の変形例1を説明する説明図である。図5に示すように、水回路30aにおいて、蓄熱装置33は、放熱のみを行う放熱装置33bに変えてもよい。
【0056】
図6は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置の変形例1の制御例を示すフローチャートである。図6に示すように、処理が開始されると、制御部51は、第1流路調整弁34a、第2流路調整弁34bをCLOSE(閉)、第3流路調整弁34cをOPEN(開)として、水回路30aの水をバイパス流路40のみに流す暖房運転(第1の暖房運転)とする。また、制御部51は、高元側室内機32aおよび放熱装置33bの要求能力の合計に従って高元側圧縮機21の回転数を決定し、決定した回転数で高元側圧縮機21を運転させる(S21)。
【0057】
ついで、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が所定の閾値A以下であるか否かを判定する(S22)。閾値A以下でない場合(S22:No)、制御部51は、S21へ処理を戻す。閾値A以下である場合(S22:Yes)、制御部51は、第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cをOPEN(開)とする(S23)。これにより、制御部51は、水回路30aの水を放熱装置33bとバイパス流路40の両方に流す暖房運転(第2の暖房運転)に切り替える(S24)。
【0058】
ついで、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が所定の閾値A以下であるか否かを判定する(S25)。閾値A以下でない場合(S25:No)、制御部51は、S21へ処理を戻す。これにより、閾値A以下でない場合は、第2の暖房運転から第1の暖房運転へ切り替えられる。閾値A以下である場合(S25:Yes)、制御部51は、S24へ処理を戻し、第2の暖房運転を継続する。
【0059】
図7は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置1の変形例2を説明する説明図である。図7に示すように、放熱装置33bは、高元冷媒回路20aに設けられ、バイパス流路40aによって高元冷媒回路20aの冷媒をバイパス可能に接続される構成であってもよい。
【0060】
第1流路調整弁35a~第3流路調整弁35cは、制御装置50の制御のもと、図示しないパルスモータで駆動する開度を調整可能な調整弁である。第1流路調整弁35a~第3流路調整弁35cは、パルスモータに与えられるパルス数に応じて開度が調整されることで、放熱装置33bとバイパス流路40aに流れる冷媒の流量を調整可能である。
【0061】
図8は、実施形態にかかる冷凍サイクル装置1の変形例2の制御例を示すフローチャートである。図8に示すように、処理が開始されると、制御部51は、第1流路調整弁35a、第2流路調整弁35bをCLOSE(閉)、第3流路調整弁35cをOPEN(開)として、高元冷媒回路20aの冷媒をバイパス流路40aのみに流す暖房運転(第1の暖房運転)とする。また、制御部51は、高元側室内機32aおよび放熱装置33bの要求能力の合計に従って高元側圧縮機21の回転数を決定し、決定した回転数で高元側圧縮機21を運転させる(S31)。
【0062】
ついで、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が所定の閾値A以下であるか否かを判定する(S32)。閾値A以下でない場合(S32:No)、制御部51は、S31へ処理を戻す。閾値A以下である場合(S32:Yes)、制御部51は、第2流路調整弁35b、第3流路調整弁35cをOPEN(開)とする(S33)。これにより、制御部51は、高元冷媒回路20aの冷媒を放熱装置33bとバイパス流路40aの両方に流す暖房運転(第2の暖房運転)に切り替える(S34)。なお、制御部51は、第2の暖房運転において、高元側室内機32aの要求能力と、放熱装置33bの要求能力との比率に基づいて、第2流路調整弁35b、第3流路調整弁35cの開度を調節し、放熱装置33bとバイパス流路40aに流れる第2の冷媒の比率を調整してもよい。
【0063】
ついで、制御部51は、高元側室内機32aの要求能力が所定の閾値A以下であるか否かを判定する(S35)。閾値A以下でない場合(S35:No)、制御部51は、S31へ処理を戻す。これにより、閾値A以下でない場合は、第2の暖房運転から第1の暖房運転へ切り替えられる。閾値A以下である場合(S35:Yes)、制御部51は、S34へ処理を戻し、第2の暖房運転を継続する。
【0064】
以上のように、冷凍サイクル装置1は、低元冷媒回路10と、高元冷媒回路20と、水回路30と、放熱装置(蓄熱装置33、放熱装置33b)と、バイパス流路と、調整弁(34a、34b、34c、35a、35b、35c)と、制御装置50とを備える。低元冷媒回路10は、室外熱交換器11、低元側圧縮機12、カスケード熱交換器13、膨張弁14a、14bおよび室内熱交換器15を有し、第1の冷媒が循環する。高元冷媒回路20は、高元側圧縮機21、水冷媒熱交換器22、膨張弁23およびカスケード熱交換器13を有し、カスケード熱交換器13において第1の冷媒と熱交換する第2の冷媒が循環する。水回路30は、循環ポンプ31、室内熱交換器32および水冷媒熱交換器22を有し、水冷媒熱交換器22において第2の冷媒と熱交換する水が循環する。放熱装置は、高元冷媒回路20または水回路30の少なくとも一方に接続され、第2の冷媒または水の熱を放熱させる。バイパス流路は、放熱装置を介することなく第2の冷媒または水をバイパスする。調整弁は、放熱装置と、バイパス流路40とに流れる第2の冷媒または水の量を調整する。制御装置50は、低元側圧縮機12、膨張弁14a、14b、高元側圧縮機21、膨張弁23、循環ポンプ31および調整弁を制御する。制御装置50は、室内熱交換器32の高元側室内機32aによる暖房運転時において、第2の冷媒または水を放熱装置とバイパス流路40のうちバイパス流路40のみに流す第1の暖房運転、または、第2の冷媒または水を放熱装置とバイパス流路40の両方に流す第2の暖房運転に切り替える。制御装置50は、第2の暖房運転では、室内熱交換器32の高元側室内機32aおよび放熱装置の要求能力に基づいて高元側圧縮機21の回転数を決定する。
【0065】
これにより、冷凍サイクル装置1では、第2の暖房運転において、放熱装置で放熱する分だけ高元冷媒回路20にかかる負荷が上がるので、圧縮比を確保可能な回転数で高元側圧縮機21運転しても高元側室内機32aの能力が過剰になることを防止でき、使用者の快適性が損なわれることなく高元側圧縮機21の信頼性が悪化することを抑止できる。
【0066】
また、放熱装置は、第2の冷媒または水と熱交換を行い放熱させる蓄熱材33aを有する蓄熱装置33である。制御装置50は、室内熱交換器32の高元側室内機32aによる暖房運転時において、さらに、第2の冷媒または水を蓄熱装置33とバイパス流路40のうち蓄熱装置33のみに流して蓄熱装置33が蓄熱した熱を放熱させる第3の暖房運転に切り替える。これにより、冷凍サイクル装置1では、蓄熱装置33が蓄熱した熱を有効利用でき、電力を無駄に消費することなく高元側圧縮機21の圧縮比を確保できる。
【0067】
また、蓄熱装置33は、水回路30に設けられ、制御装置50は、第3の暖房運転において高元側圧縮機21を停止させる。これにより、蓄熱装置33が蓄熱した熱を放熱させる第3の暖房運転では、高元側圧縮機21を停止させるので、高元側圧縮機21における圧縮比の問題が生じず、高元側圧縮機21の信頼性が悪化することを抑止できる。
【0068】
また、低元冷媒回路10は、制御装置50の制御のもと、室内熱交換器15の低元側室内機15aによる暖房運転と冷房運転とで第1の冷媒の循環する経路を切り替える四方弁17を有する。制御装置50は、室内熱交換器15の低元側室内機15aによる暖房運転時であり、かつ、室内熱交換器32の高元側室内機32aによる暖房運転が第1の暖房運転である場合、室内熱交換器32の高元側室内機32aの要求能力が所定値未満になった場合に第1の暖房運転から第2の暖房運転に切り替える。これにより、冷凍サイクル装置1は、高元側室内機32aの要求能力が所定値未満となるような高元側圧縮機21が低圧縮比となりやすい場合に、第2の暖房運転に切り替えることで、高元側圧縮機21が低圧縮比となる運転を回避できる。
【0069】
また、制御装置50は、低元冷媒回路10における第1の冷媒の凝縮圧力に基づき、上記の所定値を変更する。これにより、冷凍サイクル装置1は、第1の冷媒の凝縮圧力によって高元側圧縮機21が低圧縮比となるような運転条件で適切に第2の暖房運転に切り替えることができ、高元側圧縮機21が低圧縮比となる運転を回避できる。
【0070】
また、制御装置50は、第2の暖房運転において、室内熱交換器32の高元側室内機32aの要求能力と、放熱装置(蓄熱装置33、放熱装置33b)の要求能力との比率に基づいて第2流路調整弁34b、第3流路調整弁34cの開度を調節し、放熱装置とバイパス流路40に流れる第2の冷媒または水の比率を調整する。これにより、冷凍サイクル装置1は、要求能力に応じた適切なバランスで冷媒または水を循環させることができる。
【0071】
また、冷凍サイクル装置1において、放熱装置33bの要求能力は、上記の所定値から室内熱交換器32の高元側室内機32aの要求能力を減じて算出される余剰能力である。これにより、冷凍サイクル装置1は、高元側室内機32aで余剰となる暖房能力分を蓄熱装置33に蓄熱でき、電力を無駄に消費することなく、高元側圧縮機21が低圧縮比となる運転を回避できる。
【0072】
また、冷凍サイクル装置1は、室内熱交換器32に流入する水の第1の温度と、蓄熱装置33の第2の温度とを検出する温度検出部53をさらに備える。制御装置50は、第2の暖房運転において、第1の温度と、第2の温度との温度差が所定温度差未満となった場合、第3の暖房運転に切り替える。これにより、冷凍サイクル装置1では、蓄熱材33aに水の放熱が行えなくなることにより水が過剰に加熱されることを抑止できる。
【0073】
また、制御装置50は、室内熱交換器15の低元側室内機15aの要求能力と、室内熱交換器32の高元側室内機32aの要求能力と、放熱装置33bの要求能力との合計に基づいて低元側圧縮機12の回転数を決定する。また、第3の暖房運転において、室内熱交換器32の高元側室内機32aの要求能力を0に置き換えて低元側圧縮機12の回転数が決定される。これにより、冷凍サイクル装置1は、低元側圧縮機12の回転数を、第2の暖房運転に合わせた適切なものとすることができ、二元冷凍サイクル全体で信頼性の高い運転を実施できる。
【符号の説明】
【0074】
1…冷凍サイクル装置
10…低元冷媒回路
11…室外熱交換器
11a…室外機
12…低元側圧縮機
13…カスケード熱交換器
14a、14b、23…膨張弁
15…室内熱交換器
15a…低元側室内機
16a、16b…操作弁
17…四方弁
20、20a…高元冷媒回路
21…高元側圧縮機
22…水冷媒熱交換器
30、30a、30b…水回路
31…循環ポンプ
32…室内熱交換器
32a…高元側室内機
33…蓄熱装置
33a…蓄熱材
33b…放熱装置
34a、35a…第1流路調整弁
34b、35b…第2流路調整弁
34c、35c…第3流路調整弁
40、40a…バイパス流路
50…制御装置
51…制御部
52…記憶部
53…温度検出部
A…閾値
C1、C2…冷凍サイクル
G1、G2…グラフ
t0~t13…時刻
T1~T13…期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8