(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20241210BHJP
F04B 23/06 20060101ALI20241210BHJP
F04B 43/04 20060101ALI20241210BHJP
F04B 45/047 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F04B43/02 F
F04B23/06
F04B43/04 B
F04B45/047 C
(21)【出願番号】P 2023128645
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2021515941の分割
【原出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019084139
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】岡口 健二朗
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073642(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135206(WO,A1)
【文献】特開2012-47172(JP,A)
【文献】特開2004-169706(JP,A)
【文献】特開平7-301182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
F04B 23/06
F04B 43/04
F04B 45/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプの下流側に前記第1圧電ポンプと直列に接続された第2圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプ
に交流の入力電力を供給する第1駆動部と、前記第2圧電ポンプに交流の入力電力
を供給する
第2駆動部と、を備える駆動部と、
前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプのそれぞれの前記入力電力を制御する制御部と、
前記駆動部に電力を供給する電源部と、
前記第1駆動部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、
前記第2駆動部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、を備え、
前記制御部は、前記第1圧電ポンプの入力電力よりも前記第2圧電ポンプの入力電力の方を大きく
し、
前記制御部は、前記第2電流検出部で検出される電流値を前記第1電流検出部で検出される電流値に近づけるように、前記第2圧電ポンプの駆動電圧のHighとLowの時間が1対1になるように近づける、
ポンプ装置。
【請求項2】
第1圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプの下流側に前記第1圧電ポンプと直列に接続された第2圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプ
に交流の入力電力を供給する第1駆動部と、前記第2圧電ポンプに交流の入力電力
を供給する
第2駆動部と、を備える駆動部と、
前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプのそれぞれの前記入力電力を制御する制御部と、
前記駆動部に電力を供給する電源部と、
前記第1駆動部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、
前記第2駆動部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、を備え、
前記制御部は、前記第1圧電ポンプの入力電力よりも前記第2圧電ポンプの入力電力の方を大きく
し、
前記制御部は、前記第2電流検出部で検出される電流値を前記第1電流検出部で検出される電流値に近づけるように、前記第2駆動部へ供給する電圧を上げる、
ポンプ装置。
【請求項3】
第1圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプの下流側に前記第1圧電ポンプと直列に接続された第2圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプ
に交流の入力電力を供給する第1駆動部と、前記第2圧電ポンプに交流の入力電力
を供給する
第2駆動部と、を備える駆動部と、
前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプのそれぞれの前記入力電力を制御する制御部と、
前記駆動部に電力を供給する電源部と、
前記第1駆動部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、
前記第2駆動部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、を備え、
前記制御部は、前記第1圧電ポンプの入力電力よりも前記第2圧電ポンプの入力電力の方を大きく
し、
前記制御部は、前記電源部から前記第1駆動部へ供給する電力よりも、前記電源部から前記第2駆動部へ供給する電力を大きくし、
前記制御部は、前記第1電流検出部で検出される電流値を前記第2電流検出部で検出される電流値に近づけるように、前記第1駆動部へ供給する電圧を下げる、
ポンプ装置。
【請求項4】
第1圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプの下流側に前記第1圧電ポンプと直列に接続された第2圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプ
に交流の入力電力を供給する第1駆動部と、前記第2圧電ポンプに交流の入力電力
を供給する
第2駆動部と、を備える駆動部と、
前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプのそれぞれの前記入力電力を制御する制御部と、
前記駆動部に電力を供給する電源部と、
前記第1駆動部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、
前記第2駆動部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、を備え、
前記制御部は、前記第1圧電ポンプの入力電力よりも前記第2圧電ポンプの入力電力の方を大きく
し、
前記制御部は、前記電源部から前記第1駆動部へ供給する電力よりも、前記電源部から前記第2駆動部へ供給する電力を大きくし、
前記制御部は、前記第1電流検出部で検出される電流値と前記第2電流検出部で検出される電流値とを相対的に近づけるように、前記第1駆動部へ供給する電圧を下げ、前記第2駆動部へ供給する電圧を上げる、
ポンプ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2圧電ポンプの駆動電圧のデューティ比を制御する、
請求項1から
4のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプの駆動周波数を制御する、
請求項1から
4のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記第1圧電ポンプに流れる電流と、前記第2圧電ポンプに流れる電流との電流比が、0.8以上1.2以下の範囲内である、
請求項1から
6のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記第1駆動部に流れる電流と、前記第2駆動部に流れる電流との電流比が、0.8以上1.2以下の範囲内である、
請求項
1から7のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記第1圧電ポンプの吸入口、または、前記第2圧電ポンプの吐出口に接続される容器を備える、
請求項1から
5のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関し、特に圧電ポンプを備えるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電ポンプを備えるポンプ装置が流体の吸引装置または加圧装置として用いられている。圧電ポンプは圧電素子の振動によりポンプ駆動される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているポンプ装置は、複数の圧電ポンプを直列に接続したポンプ装置である。当該ポンプ装置は、複数の圧電ポンプにおいて隣接する圧電ポンプ同士の入力電力に位相差をつけて各圧電ポンプを駆動する。これにより、複数の圧電ポンプを直列に接続した場合の圧力の脈動を緩和する。
【0004】
特許文献1のポンプ装置に用いられる圧電ポンプは、圧電素子を金属板に貼り合わせた構造を有し、これらに交流電力を供給することによりユニモルフモードの屈曲変形を生じさせて、空気の輸送を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電ポンプを直列に接続して用いると、それぞれの圧電ポンプの吸入口と吐出口の圧力差が異なる。これにより、それぞれの圧電ポンプの圧電素子の振幅に差が発生し、ポンプ装置全体の電力効率が低下する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、直列に接続された圧電ポンプの電力効率を向上させたポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のポンプ装置は、
第1圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプの下流側に前記第1圧電ポンプと直列に接続された第2圧電ポンプと、
前記第1圧電ポンプに交流の入力電力を供給する第1駆動部と、前記第2圧電ポンプに交流の入力電力を供給する第2駆動部と、を備える駆動部と、
前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプのそれぞれの前記入力電力を制御する制御部と、
前記駆動部に電力を供給する電源部と、
前記第1駆動部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、
前記第2駆動部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、を備え、
前記制御部は、前記第1圧電ポンプの入力電力よりも前記第2圧電ポンプの入力電力の方を大きくし、
前記制御部は、前記第2電流検出部で検出される電流値を前記第1電流検出部で検出される電流値に近づけるように、前記第2圧電ポンプの駆動電圧のHighとLowの時間が1対1になるように近づける。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポンプ装置によれば、直列に接続された圧電ポンプの電力効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】圧電ポンプの駆動電流と圧電素子の振幅との関係を示すグラフ
【
図3】圧電ポンプの駆動電圧と圧電素子の振幅との関係を示すグラフ
【
図4】実施形態1におけるポンプ装置の概略構成を示す図
【
図5】実施形態1における駆動部、電圧検出部および電源部の回路図
【
図8】実施形態1における到達圧力と時間との関係を示すグラフ
【
図9】比較例における到達圧力と時間との関係を示すグラフ
【
図11】実施形態2における駆動部、電圧検出部および電源部の回路図
【
図12】実施形態3における駆動電圧のデューティ比の変更を示す図
【
図13】実施形態4におけるポンプ装置の概略構成を示す図
【
図14】実施形態4における駆動部の自励振回路を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様のポンプ装置は、第1圧電ポンプと、前記第1圧電ポンプの下流側に前記第1圧電ポンプと直列に接続された第2圧電ポンプと、前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプに交流の入力電力をそれぞれ供給する駆動部と、前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプのそれぞれの前記入力電力を制御する制御部と、前記駆動部に電力を供給する電源部と、を備え、前記制御部は、前記第1圧電ポンプの入力電力よりも前記第2圧電ポンプの入力電力の方を大きくする。
【0012】
このような構成によれば、上流側の第1圧電ポンプのポンプ圧力よりも下流側の第2圧電ポンプのポンプ圧力が高くなっても、第1圧電ポンプの入力電力よりも第2圧電ポンプの入力電力の方が大きいので、第2圧電ポンプの圧電素子の振幅が低減するのを防止することができる。この結果、第1圧電ポンプおよび第2圧電ポンプのそれぞれの圧電素子の振幅が近いので、直列に接続された圧電ポンプの全体の電力効率を向上させることができる。
【0013】
また、前記駆動部は、前記第1圧電ポンプに交流の入力電力を供給する第1駆動部と、前記第2圧電ポンプに交流の入力電力を供給する第2駆動部と、を備え、前記制御部は、前記電源部から前記第1駆動部へ供給する電力よりも、前記電源部から前記第2駆動部へ供給する電力を大きくしてもよい。これにより、圧電ポンプに対して個別に駆動部が設けられているので、圧電ポンプを精度よく駆動することができる。さらに、第1駆動部よりも第2駆動部へ供給する電力を大きくすることで、第2圧電ポンプの入力電力を大きくしやすくなる。
【0014】
また、前記第1駆動部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記第2駆動部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、を備え、前記制御部は、前記第2電流検出部で検出される電流値を前記第1電流検出部で検出される電流値に近づけるように、前記第2駆動部が前記第2圧電ポンプへ供給する入力電力を制御してもよい。第2駆動部に流れる電流値を第1駆動部に流れる電流値に近づけることで、高圧領域においても、第2圧電ポンプの振幅を第1圧電ポンプの振幅に近づけることができるので、より電力効率を高めることができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記第2圧電ポンプの駆動電圧のデューティ比を制御してもよい。これにより、第2圧電ポンプの駆動電流を容易に制御することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記第1圧電ポンプおよび前記第2圧電ポンプの駆動周波数を制御してもよい。これにより、電力効率をより向上させることができる。
【0017】
また、前記第1圧電ポンプに流れる電流と、前記第2圧電ポンプに流れる電流との電流比が、0.8以上1.2以下の範囲内でもよい。第1圧電ポンプに流れる電流と、第2圧電ポンプに流れる電流とが近い値の範囲内であるので、第1圧電ポンプおよび第2圧電ポンプの振幅を近づけることができ、電力効率を高めることができる。
【0018】
また、前記第1駆動部に流れる電流と、前記第2駆動部に流れる電流との電流比が、0.8以上1.2以下の範囲内でもよい。第1駆動部に流れる電流と、第2駆動部に流れる電流とが近い値の範囲内であるので、第1圧電ポンプおよび第2圧電ポンプの振幅を近づけることができ、電力効率を高めることができる。
【0019】
また、第1圧電ポンプの吸入口、または、前記第2圧電ポンプの吐出口に接続される容器を備えてもよい。
【0020】
なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものであり、本発明がこの構成に限定されるものではない。また、以下の実施形態において具体的に示される数値、形状、構成、ステップ、ステップの順序などは、一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、全ての実施形態において、各変形例における構成も同様であり、各変形例に記載した構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【0021】
まず、本発明の課題についてさらに詳細に説明する。
図1に示すように、ポンプ装置に用いられる圧電ポンプは、背圧の圧力Pが高くなればなるほど、流量Qが小さくなる特性を有する。これは、圧力が高くなるほど、圧電ポンプの圧電素子の振幅が小さくなるからである。そこで、この高圧領域において流量Qを増加させるために、圧電ポンプの圧電素子に流れる電流を増加することが考えられる。
【0022】
図2に示すように、圧電ポンプの駆動電流と圧電素子の振動の振幅とは高い相関関係を有する。駆動電流が大きくなるほど圧電素子の振幅も大きくなる。しかしながら、駆動電流値I1が圧電素子に流れると、圧電素子にクラックが発生するなど圧電素子が破壊される振幅の上限値A1が存在する。したがって、圧電素子の振幅が上限値A1以下の状態で圧電ポンプを使用する必要がある。
【0023】
同じポンプ能力を有する2つの圧電ポンプPu、Pwを直列に接続した場合、それぞれのポンプが駆動されて圧力が上昇すると、
図3に示すように、上流側に配置された圧電ポンプPuよりも下流側に配置された圧電ポンプPwの圧電素子の振幅が小さくなる。圧電ポンプの駆動電圧で上限値を決めると、下流側の圧電ポンプPwの圧電素子の振幅が小さくなり目標圧力に到達するまでの時間を多く必要とする。そこで、このような課題を解決する本願発明の実施形態を順に説明する。
【0024】
(実施形態1)
以下に、本発明の実施形態1にかかるポンプ装置について説明する。
図4は、実施形態1におけるポンプ装置1の概略構成を示す図である。
【0025】
図4に示すポンプ装置1は、第1圧電ポンプ3と、第2圧電ポンプ5と、駆動部7と、電源部8と、制御部15とを備える。実施形態1のポンプ装置1は、例えば、排気ポンプ装置として例示する。
【0026】
第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5は互いに直列に接続されたポンプである。第1圧電ポンプ3が上流側に配置され、第2圧電ポンプ5が下流側に配置されている。
【0027】
実施形態1における第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5はともに、圧電素子を用いた圧電ポンプである(「マイクロブロア」、「マイクロポンプ」等と称してもよい。)。具体的には、圧電素子(図示せず)を金属板(図示せず)に貼り合わせた構造を有し、圧電素子および金属板に交流電力を供給することにより、ユニモルフモードの屈曲変形を生じさせて流体の輸送を行う。流体には、気体および液体が含まれる。
【0028】
実施形態1ではさらに、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5として、同じ仕様の圧電ポンプを用いてもよい。同じ仕様の第1圧電ポンプ3と第2圧電ポンプ5は、定格出力(すなわち単位時間当たりの流量)およびサイズ等のパラメータも同じである。
【0029】
駆動部7は、例えば、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5を交流電力により駆動する駆動回路である。駆動部7は、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5に対して交流電力を供給する。実施形態1では、駆動部7は、第1圧電ポンプ3に交流電力を供給する第1駆動部7aと、第2圧電ポンプ5に交流電力を供給する第2駆動部7bとを有する。以下の記載において、第1駆動部7aおよび第2駆動部7bの両方を意味する場合、単に駆動部7と称する。
【0030】
電源部8は、例えば、駆動部7へ電力を供給する電源回路である。電源部8は、第1駆動部7aへ直流の電力を供給する第1電源部8aと、第2駆動部7bへ直流の電力を供給する第2電源部8bとを有する。
【0031】
駆動部7には制御部15が接続されている。制御部15は、第1駆動部7aおよび第2駆動部7bのそれぞれから第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5のそれぞれへ出力する電力、電圧、電流、駆動周波数などを制御する。したがって、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5のそれぞれの入力電流は制御部15によって制御される。また、制御部15は、電源部8から駆動部7への出力電圧を制御する。制御部15は例えば、MCU(Micro Controller Unit)、プロセッサ、等の演算装置から構成される。なお、制御部は、メモリ、SDD等の記憶装置も含んでもよい。
【0032】
容器11は、ポンプ装置1の第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5によって流体が吸引される対象物である。容器11とポンプ装置1とを含めた吸引器として、例えば、搾乳器、鼻水吸引器、口腔ケア器、ドレナージなどであるが、その他の任意の吸引器であってもよい。容器11と第1圧電ポンプ3とはパイプ9を介して接続され、第1圧電ポンプ3と第2圧電ポンプ5とはパイプ10を介して接続されている。
【0033】
第1圧電ポンプ3は、流体を吸入する吸入口3aと流体を吐出する吐出口3bとを有する。吸入口3aはパイプ9と接続され、吐出口3bはパイプ10と接続されている。また、第2圧電ポンプ5は、流体を吸入する吸入口5aと流体を吐出する吐出口5bとを有する。吸入口5aはパイプ10と接続され、吐出口5bは大気開放されている。
【0034】
ポンプ装置1によって容器11から、例えば、空気を吸引することで、容器11の内部に負圧が生じる。このような構成を有するポンプ装置1はいわゆる「負圧ポンプ」として機能する。
【0035】
上述したポンプ装置1の構成によれば、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5に対して、第1駆動部7aおよび第2駆動部7bからそれぞれ交流電力が供給される。交流電力の供給によって第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5がそれぞれ駆動され、圧電素子が高速で屈曲変形を起こし、空気が輸送される。
【0036】
第1圧電ポンプ3は、容器11から空気を吸引する。第1圧電ポンプ3は、吸引した空気を第2圧電ポンプ5へ排気するとともに、内部でさらに減圧して第2圧電ポンプ5へ輸送する。第2圧電ポンプ5は、吸引した空気を吐出口5bから大気中へ排気するとともに、内部でさらに減圧して吐出口5bから大気中へ排気する。
【0037】
次に、
図5を参照して、駆動部7および電源部8の回路の一例を説明する。駆動部7は、例えば、Hブリッジ回路である。駆動部7は第1FET61、第2FET62、第3FET63、および第4FET64の4つのFETを有する。制御部15から第1FET61~第4FET64への駆動信号により、各FETがスイッチング駆動され、第1、第2圧電ポンプ3、5へ予め定められた周波数の交流電圧が印加される。
【0038】
第1FET61および第3FET63のドレインに電源部8から入力電圧Vcが印加される。第1FET61のソースは、第2FET62のドレインおよび圧電ポンプの外部接続端子と接続される。第3FET63のソースは、第4FET64のドレインおよび圧電ポンプの外部接続端子と接続される。第2FET62のソースおよび第4FET64のソースとは、電圧検出回路13に接続される。電圧検出回路13は、圧電ポンプと電気的に接続されるインピーダンス素子を備える。インピーダンス素子として、例えば、抵抗器Rsを用いる。
【0039】
電源部8から供給される直流の入力電圧Vcは、第1FET61、圧電ポンプ、第4FET64および抵抗器Rsにより分圧されるか、第3FET63、圧電ポンプ、第2FET62により分圧される。ここで、第1FET61~第4FET64での電圧降下は無視できるほど小さい。したがって、第1、第2圧電ポンプ3、5と抵抗器Rsとの分圧により出力電圧Voが決まる。
【0040】
電圧検出回路13は、例えば、抵抗器Rsである。抵抗器Rs間の電圧を検出することで、駆動回路12の出力電圧Voを検出することができる。また、電圧検出回路13が検出した電圧値を基に制御部15が駆動回路に流れる電流値を算出することができる。抵抗器Rsに流れる駆動電流IcがIoのときに、第1、第2圧電ポンプ3、5の電力効率が最大となる。電流Ioは、Io=Vo/Rsにより求められる。抵抗器Rsは回路損失になるので、例えば1Ωなど小さい値の低抵抗が望ましい。入力電圧Vcと出力電圧Voとの差が圧電ポンプ3、5の印加電圧(駆動電圧)となる。抵抗器Rsの一端側は、制御部15のI/Oポート66に接続されているので、出力電圧Voが制御部15によって読み取られる。本願発明の電流検出部は、電圧検出回路13と制御部15とで構成される。また、制御部15は本願発明の制御部にも相当する。
【0041】
制御部15は、出力電圧Voに応じてフィードバック信号を電源部8へ送ることで供給される電圧Vcを制御する。ポンプ装置1が吸引装置である場合、制御部15は、上流側の第1圧電ポンプ3を駆動する第1駆動部7aへ供給する電圧Vcを、下流側の第2圧電ポンプ5を駆動する第2駆動部7bへ供給する電圧Vcよりも相対的に下げる。
【0042】
電源部8は、昇圧制御回路122と、スイッチ素子Q1と、インダクタLと、ダイオードD2と、コンデンサC2と、を備える。昇圧制御回路122は
図5に示すように、制御信号である電圧Vuに基づいて、例えば、電池から入力される入力電源電圧Vb(例えばDC1.5V)をスイッチ素子Q1に対するスイッチング制御により昇圧する。電源部8は、昇圧したDC電源電圧Vc(例えば、DC30V)を出力する。電源部8から出力されたDC電源電圧Vcは、駆動部7に供給される。
【0043】
出力電圧Voは、一定値でもよいし、上限値のみが定めてあってそれ以下で変動する変動値であってもよい。また、出力電圧Voは、圧電ポンプ3、5の動作中に書き換えられてもよい。
【0044】
次に、
図6を参照して、圧電ポンプ3、5および駆動部7の電流と電力の求め方を説明する。駆動部7の駆動回路へ流入される直流電流Ic、および、駆動部7の駆動回路へ印加される直流電力Pcは次式により求められる。
Ic=Vc/Rc ・・・(1)式
Pc=Vc×Ic ・・・(2)式
【0045】
また、圧電ポンプ3、5へ流入する電流Id、および、圧電ポンプ3、5へ流入する電力Pdは次式により求められる。
Id=Vd/Rd ・・・(3)式
Pd=Vd×Id×cosθ・・・(4)式
なお、(4)式においてθは圧電ポンプ3、5の入力電圧Vdと入力電流Idとの位相差である。
【0046】
求められる駆動回路への電流は瞬時値または平均値である。また、求められる駆動回路の電力も瞬時値または平均値である。圧電ポンプ3、5の電力は圧電素子の振動の1周期の積分値でもよい。
【0047】
次に、
図7を参照して、求められる電流値の範囲について説明する。同じ製品の圧電ポンプ3、5を用いたとしても個体差があるので、圧電素子が同振幅のときも電流値にばらつきが発生する。例えば、理想の電流値を100とした場合、±20%の値をもつ電流値が同じ電流値として扱われる。すなわち、80~120の範囲の電流値は同じ電流値として扱われる。つまり、第1圧電ポンプ3に流れる電流と、第2圧電ポンプ5に流れる電流との電流比が、0.8以上1.2以下の範囲内である。また、第1駆動部7aに流れる電流と、第2駆動部7bに流れる電流との電流比が、0.8以上1.2以下の範囲内である。
【0048】
実施形態1のポンプ装置1による効果を
図8および
図9を参照して説明する。
図8は、実施形態1における到達圧力と時間との関係を示すグラフである。
図9は、比較例における到達圧力と時間との関係を示すグラフである。
図8に示すように、容器11内の陰圧が大きくなるにつれて第1圧電ポンプ3の
駆動電圧Vp1よりも第2圧電ポンプ5の
駆動電圧Vp2の方を大きくすることで、第2圧電ポンプ5の圧電素子の振幅の低減を減らすことができる。したがって、第2圧電ポンプ5のポンプ能力を維持することができ、例えば、時刻t1に容器11内の圧力がPm減少する。
【0049】
図9に示す様に、比較例として、容器11内の陰圧が大きくなるにつれて第2圧電ポンプ5の
駆動電圧Vp2よりも第1圧電ポンプ3の
駆動電圧Vp1の方を大きくすると、時刻t1までの第1圧電ポンプ3と第2圧電ポンプ5への入力電力の合計値が
図8と同じであっても、目標となる減少圧力Pmに例えば時刻t2で到達し、目標圧力に到達するまでの時間をより多く必要とする。したがって、実施形態1によれば、目標圧力により早く到達することができる。
【0050】
また、
図10に示すように、最適な駆動電流Ioで第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5を駆動することで、高効率なポンプ装置1を実現することができる。
【0051】
以上のように、ポンプ装置1は、第1圧電ポンプ3と、第1圧電ポンプ3の下流側に第1圧電ポンプ3と直列に接続された第2圧電ポンプ5と、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5に交流の入力電力をそれぞれ供給する駆動部7と、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5のそれぞれの入力電力を制御する制御部15と、駆動部7に電力を供給する電源部8とを備える。制御部15は、第1圧電ポンプ3の入力電力よりも第2圧電ポンプ5の入力電力の方を大きくする。これだけの構成により、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5が駆動されて第1圧電ポンプ3の吸入口3aおよび吐出口3b間の差圧よりも下流側の第2圧電ポンプ5の吸入口5aおよび吐出口5b間の差圧の方が大きくなっても、第1圧電ポンプ3の入力電力よりも第2圧電ポンプ5の入力電力の方が大きいので、第2圧電ポンプ5の圧電素子の振幅を第1圧電ポンプ3の圧電素子の振幅に近づけることができる。したがって、直列に接続された圧電ポンプ3、5の電力効率を向上させることができる。
【0052】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2のポンプ装置について
図11を参照して説明する。
図11は、実施形態2におけるポンプ装置1Aの駆動部7Aを示す図である。
【0053】
実施形態1のポンプ装置1は、制御部15を用いて圧電ポンプに流れる電流を制御していた。これに対して、実施形態2のポンプ装置1Aは、駆動部7Aに自励振回路81を有することで、駆動部7Aが圧電ポンプ3、5の最適な駆動周波数を決定する。
【0054】
実施形態2のポンプ装置1Aは、実施形態1のポンプ装置1と同じ構成要素を備える。したがって、実施形態2におけるポンプ装置1Aは、以下に記載した事項以外の構成は、実施形態1のポンプ装置1と共通である。
【0055】
駆動部7Aは、自励振回路81と電圧検出回路13とを備える。自励振回路81は、第1差動増幅回路81aと、反転増幅回路81bと、電流センシング部81cと、第2差動増幅回路81dと、アクティブバンドフィルタ81eと、中間電位生成回路81fと、を備える。
【0056】
電流センシング部81cの抵抗R11は、圧電ポンプの圧電素子に直列に接続する。抵抗R11の両端は、第2差動増幅回路81dの入力端子に接続されている。第2差動増幅回路81dは、圧電素子に流れる駆動電流により生じる抵抗R11の両端電圧を差動増幅し、電圧信号を出力する。
【0057】
第2差動増幅回路81dの出力端子は、アクティブバンドフィルタ81eの入力端子に接続する。アクティブバンドフィルタ81eは、入力された電圧信号を所定ゲインで増幅し、出力する。アクティブバンドフィルタ81eのバンドパスフィルタの通過帯域は、圧電素子の所定振動モードの共振周波数が通過帯域内となるように設定されている。
【0058】
アクティブバンドフィルタ81eの出力端子は、第1差動増幅回路81aの入力端子に接続するとともに、反転増幅回路81bの入力端子に接続する。第1差動増幅回路81aの出力端子は、抵抗R11に接続する。反転増幅回路81bの出力端子は圧電素子に接続する。
【0059】
第1差動増幅回路81aは、電源部8から出力されるDC電源電圧Vcに基づいて第1駆動信号を生成する。第1差動増幅回路81aの出力信号はデューティ比50%の矩形波となる。
【0060】
反転増幅回路81bは、電源部8から出力されるDC電源電圧Vcに基づいて第2駆動信号を生成する。反転増幅回路81bの出力信号は、第1差動増幅回路81aの出力信号に対して位相が反転したデューティ比50%の矩形波となる。
【0061】
第1差動増幅回路81aの出力は圧電ポンプ3、5の上側に入力され、反転増幅回路81bの出力が圧電ポンプ3、5の下側に入力されることで、圧電ポンプ3、5の上下で逆相の電流が流れる。
【0062】
圧電ポンプ3、5の駆動開始時において、上流側の第1駆動部7Aaと下流側の第2駆動部7Abにおける駆動回路電圧Vcは共通である。駆動後、上流側の第1駆動部7Aaに流れる駆動電流Icになるまで下流側の圧電ポンプ5の駆動回路電圧Vcを上昇する。電源回路と駆動部7とは1:1でなくてもよい。例えば、減衰器を使用してもよい。
【0063】
実施形態2のポンプ装置1Aの構成でも、実施形態1のポンプ装置1と同様に、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5が駆動されて第1圧電ポンプ3のポンプ圧力よりも下流側の第2圧電ポンプ5のポンプ圧力の方が大きくなっても、第1圧電ポンプ3の入力電力よりも第2圧電ポンプ5の入力電力の方が大きいので、第2圧電ポンプ5の圧電素子の振幅を第1圧電ポンプ3の圧電素子の振幅に近づけることができる。したがって、直列に接続された圧電ポンプ3、5の電力効率を向上させることができる。
【0064】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3のポンプ装置について
図12を参照して説明する。
図12は、実施形態3におけるポンプ装置の制御を示す図である。
図12(a)は、デューティ比=1の電圧制御を示す。
図12(b)は、デューティ比<1の電圧制御を示す。
図12(c)は、デューティ比>1の電圧制御を示す。
【0065】
実施形態1のポンプ装置1は、制御部15を用いて圧電ポンプに流れる電流を制御していた。これに対して、実施形態3のポンプ装置1の制御部15は、圧電ポンプの駆動電圧のデューティ比を制御することで、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5に流れる駆動電流を制御する。
【0066】
実施形態3のポンプ装置1は、実施形態1のポンプ装置1と同じ構成要素を備える。したがって、実施形態3におけるポンプ装置1は、以下に記載した事項以外の構成は、実施形態1のポンプ装置1と共通である。
【0067】
第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5の駆動当初は、
図12(b)または
図12(c)に示すように、制御部15は、駆動電圧をデューティ比≠1の状態で制御する。背圧が高圧になるにつれて、
図12(a)に示すように、第2圧電ポンプ5を駆動する駆動電圧のデューティ比を1に近づける。これにより、第2圧電ポンプ5の圧電素子に流れる電流を大きくすることができ、振幅の低減を減らすことができる。なお、デューティ比=1まで制御した場合は、実施形態1のように、制御部15が、電源部8から駆動部7へ供給する電力を大きくすることで、第2圧電ポンプ5の駆動電圧を上げてもいい。また、デューティ制御の代わりに駆動電圧の周波数制御にしてもよい。また、駆動波形を台形波、正弦波などにしてもよい。
【0068】
実施形態3によれば、第2圧電ポンプ5の駆動電圧をより緻密に制御することができるので、直列に接続された圧電ポンプ3、5の電力効率をより向上させることができる。
【0069】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4のポンプ装置について
図13および
図14を参照して説明する。
図13は、実施形態4におけるポンプ装置1Bの概略構成を示す図である。
図14は、実施形態4におけるポンプ装置1Bの駆動部7Bの自励振回路91を示す図である。
【0070】
実施形態1では、第1圧電ポンプ3に容器11を接続してポンプ装置1を負圧ポンプとして用いているが、ポンプ装置はこのような場合に限らない。例えば、容器11の代わりに、第2圧電ポンプ5の吐出口5bにカフなどの加圧対象物を接続して加圧ポンプとして用いてもよい。加圧ポンプとして用いられる加圧器として、例えば、pMDI、血圧計、ネブライザなどが上げられる。なお、実施形態4のポンプ装置1Bは、加圧ポンプ装置であるネブライザとして説明する。
【0071】
実施形態1のポンプ装置1は、制御部15を用いて第1圧電ポンプ3及び第2圧電ポンプ5に流れる電流を制御していた。ポンプ装置1が加圧装置である場合、実施形態1において、制御部15は、上流側の第1圧電ポンプ3を駆動する第1駆動部7aへ供給する電圧Vcよりも、下流側の第2圧電ポンプ5を駆動する第2駆動部7bへ供給する電圧Vcを相対的に上げてもよい。これに対して、実施形態4のポンプ装置1Bは、駆動部7Bに自励振回路91を有することで、駆動部7Bが圧電ポンプ3、5のそれぞれに最適な駆動周波数を決定する。
【0072】
実施形態4のポンプ装置1Bは、実施形態1のポンプ装置1と同じ構成要素を備える。したがって、実施形態4におけるポンプ装置1Bは、以下に記載した事項以外の構成は、実施形態1のポンプ装置1と共通である。
【0073】
ポンプ装置1Bは、第1圧電ポンプ3と、第2圧電ポンプ5と、駆動部7Bと、電源部8と、電流制限部17とを備える。
【0074】
実施形態4の電源部8は、電流制限部17へ電力を供給する電源回路である。電流制限部17は、電源部8から電力を供給され、駆動部7Bへ供給する電流を制限する。電流制限部17は、第1駆動部7Baへ供給する電流を制限する第1電流制限部17aと、第2駆動部7Bbへ供給する電流を制限する第2電流制限部17bとを有する。第1電源部8aは第1電流制限部17aへ電力を供給し、第2電源部8bは第2電流制限部17bへ電力を供給する。
【0075】
第2圧電ポンプ5の吐出口5bは、パイプ33を介して薬液タンク31と連通している。第1圧電ポンプ3の吸入口3aと接続されるパイプ9Bの上流側の端部は、大気開放されている。空気がパイプ9Bの開放端から第1圧電ポンプ3へ吸引され、さらに、パイプ10を経て、第2圧電ポンプ5へ吸引される。第2圧電ポンプ5の吐出口5bとノズル35とがパイプ33を介して接続されている。第2圧電ポンプ5の吐出口5bから排出された空気は、薬液タンク31の薬液と混合され、薬液を含む加圧された空気がノズル35から大気中へ吐出される。
【0076】
駆動部7Bは、自励振回路91を備える。自励振回路91は、第1差動増幅回路91aと、第2差動増幅回路91bと、電流センシング部91cと、第3差動増幅回路91dと、アクティブバンドフィルタ91eと、中間電位生成回路81fと、Hブリッジ回路91gと、を備える。
【0077】
電流センシング部91cの抵抗R29は、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5の圧電素子に直列に接続する。抵抗R29の両端は、第3差動増幅回路91dの入力端子に接続されている。第3差動増幅回路91dは、圧電素子に流れる駆動電流により生じる抵抗R29の両端電圧を差動増幅し、電圧信号を出力する。
【0078】
第3差動増幅回路91dの出力端子は、アクティブバンドフィルタ91eの入力端子に接続する。アクティブバンドフィルタ91eは、入力された電圧信号を所定ゲインで増幅し、出力する。アクティブバンドフィルタ91eのバンドパスフィルタの通過帯域は、圧電ポンプの周波数をより安定化するために圧電素子の所定振動モードの共振周波数が通過帯域内となるように設定されている。
【0079】
アクティブバンドフィルタ91eの出力端子は、第1差動増幅回路91aの入力端子に接続するとともに、第2差動増幅回路91bの入力端子に接続する。第2差動増幅回路91bは、反転増幅回路である。第1差動増幅回路91aの出力端子は、Hブリッジ回路91gの入力ポートFinに接続する。第2差動増幅回路91bの出力端子はHブリッジ回路91gの入力ポートRinに接続する。
【0080】
第1差動増幅回路91aは、電流制限部17を介して電源部8から出力されるDC電源電圧Vcに基づいて第1駆動信号を生成する。第1差動増幅回路91aの出力信号はデューティ比50%の矩形波となる。
【0081】
第2差動増幅回路91bは、電流制限部17を介して電源部8から出力されるDC電源電圧Vcに基づいて第2駆動信号を生成する。第2差動増幅回路91bの出力信号は、第1差動増幅回路91aの出力信号に対して位相が反転したデューティ比50%の矩形波となる。
【0082】
Hブリッジ回路91gは、実施形態1の駆動部7のHブリッジ回路と同様の機能を有するICチップである。図示していないが、Hブリッジ回路91gは、内部に第1FET61~第4FET64を有する。第1差動増幅回路91aの出力及び第2差動増幅回路91bの出力はHブリッジ回路91gの第1FET61~第4FET64への駆動信号となる。これらの駆動信号により第1FET61~第4FET64がそれぞれスイッチング駆動され、実施形態1と同様にHブリッジ回路91gの出力が圧電ポンプ3、5の上側と下側にそれぞれ入力されることで、圧電ポンプ3、5の上側と下側で逆相の電流が流れる。
【0083】
なお、アクティブバンドフィルタ91eのバンドパスフィルタの通過帯域は、圧電素子の所定振動モードの共振周波数が通過帯域外であってもよい。また、第1差動増幅回路91a及び第2差動増幅回路91bの出力信号は圧電ポンプのデューティ比を可変するため50%以外の矩形波でもよい。
【0084】
図15を参照して電流制限部17の構成を説明する。
図15は、実施形態4における電流制限部の回路図である。電流制限部17は、圧電ポンプに流れる上限の駆動電流値I1以下で動作するように設定されている。電源部8の出力電圧は、圧電ポンプの温度やポンプ圧力など外的及び内的環境が変化しても十分に動作する電圧に設定される。その結果、圧電ポンプは、一定の駆動電流値で動作するように制御される。以下、より詳細に説明する。
【0085】
駆動部7Bの自励振回路91と電流制限部17の分圧により電圧Vgが決まる。電圧Vgは、抵抗R32とトランジスタQ12により定められた電圧以下の場合は駆動回路電圧Vcや駆動電流Icに対して線形に動作する。駆動電流Icが大きくなり抵抗R32に流れる電流が大きくなると、抵抗R32の両端の電圧がトランジスタQ12のベースエミッタ間をONに反転する。例えば、0.6V以上になるとトランジスタQ11のベース電圧が低下し、トランジスタQ11が一時的にOFFする。その結果、駆動電流Icはゼロとなるが、そのときトランジスタQ11のベース電圧は駆動回路電圧Vcに近くなるためトランジスタQ11はONし、再び駆動電流Icが流れる。それらを繰り返すことで、駆動電流IcはトランジスタQ12及び抵抗R32で定められた電流Io付近までは線形に動作するが、Io以上の電流が流れない電流制限回路として動作する。なお、電流制限部17のトランジスタQ11、Q12はバイポーラでもFETでもよい。
【0086】
圧電ポンプ3、5の駆動開始時において、上流側の第1駆動部7Baと下流側の第2駆動部7Bbにおける駆動回路電圧Vcは共通である。駆動後、上流側の第1駆動部7Baに流れる駆動電流Icになるまで下流側の圧電ポンプ5の駆動回路電圧Vcを上昇する。電源部8と駆動部7Bとは1:1でなくてもよい。例えば、減衰器を使用してもよい。
【0087】
実施形態4のポンプ装置1Bの構成でも、実施形態1のポンプ装置1と同様に、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5が駆動されて、第1圧電ポンプ3のポンプ圧力よりも下流側の第2圧電ポンプ5のポンプ圧力の方が大きくなっても、第1圧電ポンプ3の入力電力よりも第2圧電ポンプ5の入力電力の方が大きいので、第2圧電ポンプ5の圧電素子の振幅を第1圧電ポンプ3の圧電素子の振幅に近づけることができる。したがって、直列に接続された圧電ポンプ3、5の電力効率を向上させることができる。
【0088】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【0089】
また、上述した実施形態では、第1圧電ポンプ3および第2圧電ポンプ5という2つの圧電ポンプを設ける場合について説明したが、このような場合に限らず、3つ以上の圧電ポンプを設けてもよい。この場合、複数の圧電ポンプにおける任意の隣接する圧電ポンプの入力電力を上流側よりも下流側が大きくなるように設定すれば、同様の効果を奏することができる。このとき全ての隣接する圧電ポンプ同士の入力電力をこのように設定する必要はなく、少なくとも2つの隣接する圧電ポンプ同士の入力電力がこのような設定になっていれば、同様の効果を奏することができる。
【0090】
また、上述した実施形態では、第1駆動部7aおよび第2駆動部7bに対して共通の制御部15を割り当てる場合について説明したが、これに限らない。第1駆動部7aおよび第2駆動部7bのそれぞれに対して別々の制御部15が備えられていてもよい。
【0091】
また、上述したそれぞれの実施形態において、圧電ポンプのばらつきや状態に応じて、駆動電圧は駆動開始時においても適宜電圧差があってもよい。
【0092】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、圧電素子を用いたポンプ装置に有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 ポンプ装置
3 第1圧電ポンプ
3a 吸入口
3b 吐出口
5 第2圧電ポンプ
5a 吸入口
5b 吐出口
7、7A 駆動部
7a 第1駆動部
7b 第2駆動部
8 電源部
8a 第1電源部
8b 第2電源部
9 パイプ
10 パイプ
11 容器
13 電圧検出回路
15 制御部
17 電流制限部
17a 第1電流制限部
17b 第2電流制限部
31 薬液タンク
33 パイプ
35 ノズル
81 自励振回路
91 自励振回路