IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両 図1
  • 特許-車両 図2
  • 特許-車両 図3
  • 特許-車両 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20241210BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20241210BHJP
   F02B 39/10 20060101ALI20241210BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20241210BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20241210BHJP
   F02M 26/64 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
F02D29/02 321C
F01N13/08 B
F02B39/10
F02D9/02 S
F02M26/50 321
F02M26/64
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023136213
(22)【出願日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 聖
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-184435(JP,A)
【文献】特開2014-111918(JP,A)
【文献】特開2014-238049(JP,A)
【文献】特開2015-203309(JP,A)
【文献】特開2019-052579(JP,A)
【文献】特開2021-042724(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110500186(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 13/00
F02B 39/10
F02D 9/02
F02D 23/00
F02D 29/00
F02D 41/00-45/00
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンへの吸気が流れる吸気通路と、
前記エンジンの排気の流れる排気通路と、
前記排気通路に設けられたセンサと、
前記排気通路において前記センサよりも上流の部分から、前記吸気通路において前記エンジン側の部分に、前記排気を還流させる還流通路と、
前記排気通路において前記センサよりも下流側に設けられた第1弁と、
前記吸気通路に設けられた第2弁と、
前記吸気通路において前記第2弁よりも上流側に設けられた過給機と、
前記エンジンの停止時に、吸気を前記還流通路を経由して前記排気通路へ流すように、前記第1弁、前記第2弁および前記過給機を制御する掃気制御を行う制御部と、
を備え
前記制御部は、前記掃気制御を開始してから、動作時間が経過したことに応じて、前記掃気制御を停止し、
前記エンジンの停止前の前記エンジンの動作状態を取得する取得部を更に備え、
前記制御部は、前記取得部が取得した前記動作状態に応じて、前記動作時間を設定する、車両。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンへの吸気が流れる吸気通路と、
前記エンジンの排気の流れる排気通路と、
前記排気通路に設けられたセンサと、
前記排気通路において前記センサよりも上流の部分から、前記吸気通路において前記エンジン側の部分に、前記排気を還流させる還流通路と、
前記排気通路において前記センサよりも下流側に設けられた第1弁と、
前記吸気通路に設けられた第2弁と、
前記吸気通路において前記第2弁よりも上流側に設けられた過給機と、
前記エンジンの停止時に、吸気を前記還流通路を経由して前記排気通路へ流すように、前記第1弁、前記第2弁および前記過給機を制御する掃気制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記掃気制御を開始してから、動作時間が経過したことに応じて、前記掃気制御を停止し、
前記エンジンの停止前に前記エンジンに噴射した燃料噴射量を取得する取得部を更に備え、
前記制御部は、前記燃料噴射量に応じて、前記動作時間を設定する、車両。
【請求項3】
前記還流通路には開閉可能な第3弁が設けられており、
前記制御部は、前記エンジンの停止時に、前記第1弁、前記第2弁及び前記第3弁を開状態にし、かつ前記過給機を動作させて、前記掃気制御を行う、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
エンジンと、
前記エンジンへの吸気が流れる吸気通路と、
前記エンジンの排気の流れる排気通路と、
前記排気通路に設けられたセンサと、
前記排気通路において前記センサよりも上流の部分から、前記吸気通路において前記エンジン側の部分に、前記排気を還流させる還流通路と、
前記排気通路において前記センサよりも下流側に設けられた第1弁と、
前記吸気通路に設けられた第2弁と、
前記吸気通路において前記第2弁よりも上流側に設けられた過給機と、
前記エンジンの停止時に、吸気を前記還流通路を経由して前記排気通路へ流すように、前記第1弁、前記第2弁および前記過給機を制御する掃気制御を行う制御部と、
を備える、車両であって、
前記エンジンが停止した際の前記車両の周囲の状況から、前記エンジンが停止する停止時間を推定する推定部を更に備え、
前記制御部は、前記推定部が推定した前記停止時間が所定時間よりも長い場合に、前記掃気制御を行う、車両。
【請求項5】
前記車両を走行させるモータに電力を供給するバッテリーを更に備え、
前記エンジンは、前記バッテリーの残量が第1閾値よりも少ないと充電のために運転を行い、
前記制御部は、前記バッテリーの残量が前記第1閾値よりも大きい第2閾値よりも多い場合に、前記掃気制御を行う、
請求項1に記載の車両。
【請求項6】
エンジンと、
前記エンジンへの吸気が流れる吸気通路と、
前記エンジンの排気の流れる排気通路と、
前記排気通路に設けられたセンサと、
前記排気通路において前記センサよりも上流の部分から、前記吸気通路において前記エンジン側の部分に、前記排気を還流させる還流通路と、
前記排気通路において前記センサよりも下流側に設けられた第1弁と、
前記吸気通路に設けられた第2弁と、
前記吸気通路において前記第2弁よりも上流側に設けられた過給機と、
前記エンジンの停止時に、吸気を前記還流通路を経由して前記排気通路へ流すように、前記第1弁、前記第2弁および前記過給機を制御する掃気制御を行う制御部と、
を備える、車両であって、
前記車両を走行させるモータに電力を供給するバッテリーと、
前記バッテリーを充電するために、外部の充電装置に接続される充電プラグと、を更に備え、
前記制御部は、前記充電プラグが前記充電装置に接続された場合に、前記掃気制御を行う、車両。
【請求項7】
前記排気通路において前記センサと前記第1弁の間に設けられ、前記排気のNOxを浄化するための浄化装置を更に備え、
前記センサは、セラミックス素子を有するNOxセンサである、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンでは、エンジンの排気が排気通路を流れる。排気通路には、例えば、排気のNOxを浄化するために、NOxを検出するセンサ等が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-21457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジン停止時には、排気通路内に水分濃度が高い排気が残留する。その後、温度が低下すると、残留した排気から凝縮水が発生し、凝縮水がセンサの素子に付着することがある。凝縮水がセンサに付着していると、センサの劣化が促進するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、凝縮水のセンサへの付着を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、エンジンと、前記エンジンへの吸気が流れる吸気通路と、前記エンジンの排気の流れる排気通路と、前記排気通路に設けられたセンサと、前記排気通路において前記センサよりも上流の部分から、前記吸気通路において前記エンジン側の部分に、前記排気を還流させる還流通路と、前記排気通路において前記センサよりも下流側に設けられた第1弁と、前記吸気通路に設けられた第2弁と、前記吸気通路において前記第2弁よりも上流側に設けられた過給機と、前記エンジンの停止時に、吸気を前記還流通路を経由して前記排気通路へ流すように、前記第1弁、前記第2弁および前記過給機を制御する掃気制御を行う制御部と、を備える、車両を提供する。
【0007】
また、前記制御部は、前記掃気制御を開始してから、動作時間が経過したことに応じて、前記掃気制御を停止することとしてもよい。
【0008】
また、前記エンジンの停止前の前記エンジンの動作状態を取得する取得部を更に備え、前記制御部は、前記取得部が取得した前記動作状態に応じて、前記動作時間を設定することとしてもよい。
【0009】
また、前記エンジンの停止前に前記エンジンに噴射した燃料噴射量を取得する取得部を更に備え、前記制御部は、前記燃料噴射量に応じて、前記動作時間を設定することとしてもよい。
【0010】
また、前記還流通路には開閉可能な第3弁が設けられており、前記制御部は、前記エンジンの停止時に、前記第1弁、前記第2弁及び前記第3弁を開状態にし、かつ前記過給機を動作させて、前記掃気制御を行うこととしてもよい。
【0011】
また、前記エンジンが停止した際の前記車両の周囲の状況から、前記エンジンが停止する停止時間を推定する推定部を更に備え、前記制御部は、前記推定部が推定した前記停止時間が所定時間よりも長い場合に、前記掃気制御を行うこととしてもよい。
【0012】
また、前記車両を走行させるモータに電力を供給するバッテリーを更に備え、前記エンジンは、前記バッテリーの残量が第1閾値よりも少ないと充電のために運転を行い、前記制御部は、前記バッテリーの残量が前記第1閾値よりも大きい第2閾値よりも多い場合に、前記掃気制御を行うこととしてもよい。
【0013】
また、前記車両を走行させるモータに電力を供給するバッテリーと、前記バッテリーを充電するために、外部の充電装置に接続される充電プラグと、を更に備え、前記制御部は、前記充電プラグが前記充電装置に接続された場合に、前記掃気制御を行うこととしてもよい。
【0014】
また、前記排気通路において前記センサと前記第1弁の間に設けられ、前記排気のNOxを浄化するための浄化装置を更に備え、前記センサは、セラミックス素子を有するNOxセンサであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、凝縮水のセンサへの付着を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一の実施形態に係る車両1の構成を示す模式図である。
図2】制御装置100の詳細構成を示すブロック図である。
図3】掃気制御を行う際の吸気の流れを示す模式図である。
図4】制御装置100の動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<車両の構成>
図1は、一の実施形態に係る車両1の構成を示す模式図である。車両1は、一例としてトラックである。車両1は、図1に示すように、エンジン10と、吸気通路20と、排気通路30と、EGR通路50と、モータ60と、バッテリー62と、充電プラグ64と、制御装置100を有する。
【0018】
エンジン10は、燃料と吸気の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。エンジン10は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン10のシリンダヘッドには、燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射部と、吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁が設けられている。エンジン10は、車両1を走行させる動力源としての機能を有する。エンジン10により発生した駆動力が車両1の不図示の駆動輪に伝達されることにより、車両1を走行させることが可能である。また、エンジン10は、後述するモータ60による駆動力のアシストを受けて、車両1を走行させるための駆動力を発生させるものであってもよい。
【0019】
吸気通路20は、エンジン10に吸気を導入する通路である。吸気通路20には、過給機22と、吸気スロットル24が設けられている。
【0020】
過給機22は、吸気(空気)を圧縮してエンジン10に向かって供給する。過給機22は、ここでは電動式の過給機であり、モータ23の駆動によって吸気を圧縮する。過給機22は、電動式であるため、エンジン10が停止している際にも吸気を過給可能である。過給機22は、吸気通路20において吸気スロットル24よりも上流側に設けられている。
【0021】
吸気スロットル24は、開閉可能な弁である。吸気スロットル24は、開度を調整することで、エンジン10へ向かう吸気の流量が調整される。吸気スロットル24は、吸気通路20において過給機22とエンジン10の間に位置している。
【0022】
排気通路30は、エンジン10の排気を大気に導く通路である。排気通路30には、センサ32と、尿素水噴射部34と、後処理装置36と、排気スロットル38が設けられている。
【0023】
センサ32は、排気通路30に設けられており、排気通路30を流れる排気に接する。センサ32は、セラミックス素子を有する。センサ32は、ここでは、排気中のNOxの濃度を検出するNOxセンサである。ただし、これに限定されず、センサ32は、セラミック素子を有する空燃比センサであってもよい。
【0024】
尿素水噴射部34は、排気通路30に尿素水を噴射する。尿素水噴射部34は、センサ32と後処理装置36の間に設けられている。尿素水噴射部34が噴射した尿素水は、排気通路30を流れる排気の熱によって加水分解し、アンモニアが生成される。アンモニアは、排気中のNOxの還元反応を起こすために用いられる。尿素水噴射部34は、排気通路30において、センサ32よりも下流側に設けられているとする。
【0025】
後処理装置36は、排気通路30を流れる排気を浄化する浄化装置である。後処理装置36は、ここでは排気中のNOxを浄化する。後処理装置36は、排気通路30においてセンサ32と排気スロットル38の間に位置している。後処理装置36は、SCR触媒37aと、ASC37bを有する。
【0026】
SCR触媒37aは、アンモニアとNOxの還元反応を促進させる還元触媒である。SCR触媒37aには、尿素水噴射部34が噴射した尿素水から生成されたアンモニアが吸着される。SCR触媒37aは、吸着したアンモニアによってNOxを無害な窒素と水に還元し、NOxの排出を低減させる。
ASC37bは、SCR触媒37aから脱離したアンモニアを分解する触媒である。ASC37bが、例えばアンモニアを窒素や水に変換することで、アンモニアの排出を抑制できる。
【0027】
排気スロットル38は、開閉可能な弁である。排気スロットル38は、開度を調整することで、大気に導かれる排気の流量が調整される。排気スロットル38は、排気通路30においてセンサ32よりも下流側に設けられている。
【0028】
EGR通路50は、排気通路30と吸気通路20とを繋いでいる。EGR通路50は、排気の一部(EGRガスとも呼ぶ)を、吸気通路20に還流させる還流通路である。EGR通路50は、排気通路30においてセンサ32よりも上流の部分から、吸気通路20において吸気スロットル24よりもエンジン10側の部分に、EGRガスを還流させる。EGR通路50を流れたEGRガスは、吸気通路20において吸気スロットル24とエンジン10の間に合流し、エンジン10へ導かれる。
【0029】
EGR通路50には、EGR弁52が設けられている。EGR弁52は、開閉可能な弁である。EGR弁52は、開度を調整することで、EGR通路50を流れるEGRガスの流量が調整される。なお、上記では、EGR通路50にEGR弁52が設けられていることとしたが、これに限定されず、EGR弁52が設けられていなくてもよい。
本実施形態では、排気スロットル38が第1弁に該当し、吸気スロットル24が第2弁に該当し、EGR弁52が第3弁に該当する。
【0030】
モータ60は、車両1を走行させる動力源としての機能を有する。すなわち、モータ60は、エンジン10の代わりに、車両1を走行させる。モータ60は、エンジン10に燃料が噴射されていない状態で、エンジン10のクランクシャフトを回転させることができる。
【0031】
バッテリー62は、充電及び放電が可能な蓄電池である。バッテリー62は、車両1を走行させるモータ60に電力を供給する。また、バッテリー62は、過給機22を動作させるモータ23に電力を供給可能である。
【0032】
充電プラグ64は、バッテリー62を充電するためのプラグである。車両1がプラグインハイブリッド車両である場合には、充電プラグ64が外部の充電装置に接続されることで、バッテリー62に充電装置から電力が供給されてバッテリー62が充電される。
【0033】
制御装置100は、車両1の動作を制御する。例えば、制御装置100は、吸気スロットル24、排気スロットル38及びEGR弁52の開閉を制御する。また、制御装置100は、過給機22により吸気を過給させる。
【0034】
ところで、エンジン10の停止時には、排気通路30内に水分濃度が高い排気が残留する。排気中の水分濃度が高いのは、燃焼前の燃料中に水素が含まれているためである。その後、排気の温度が低下すると、排気通路30に残留した排気から凝縮水が発生し、凝縮水がセンサ32の素子に付着することがある。凝縮水がセンサ32に付着していると、センサ32の劣化が促進するおそれがある。例えば、センサ32が動作を開始する際に発熱すると、センサ32に付着した凝縮水が瞬間的に蒸発することで、センサ32が損傷し、劣化が促進するおそれがある。
これに対して、本実施形態の制御装置100は、詳細は後述するが、エンジン10の停止時に、吸気通路20の吸気をEGR通路50を経由して排気通路30へ流す掃気制御を行う。これにより、エンジン10の停止後に、吸気の流れで排気通路30から排気が排出されるので、排気通路30内に凝縮水が発生することを抑制できる。なお、排気通路30には吸気が残留することになるが、吸気中の水分は排気よりも少ないため、凝縮水が発生し難い。
【0035】
<制御装置の詳細構成>
図2は、制御装置100の詳細構成を示すブロック図である。制御装置100は、記憶部110と、制御部120とを有する。
【0036】
記憶部110は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部110は、制御部120が実行するためのプログラムや各種データを記憶する。
【0037】
制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部120は、記憶部110に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部122、推定部123、弁制御部124、過給制御部125及び掃気制御部127として機能する。
【0038】
取得部122は、エンジン10の動作状態を取得する。例えば、取得部122は、エンジン検出部80から、エンジン10の回転速度やトルク等を取得する。エンジン検出部80は、エンジン10の回転速度を検出する速度センサと、エンジン10のトルクを検出するトルクセンサを含む。エンジン検出部80は、エンジン10のイグニッションスイッチのオン・オフも検出する。
【0039】
取得部122は、エンジン10の停止前のエンジン10の動作状態を取得する。例えば、取得部122は、エンジン10の停止前にエンジン10に噴射した燃料噴射量を取得する。燃料噴射量は、例えば制御装置100が燃料噴射部に指示した制御量から特定されうる。
【0040】
推定部123は、エンジン10が停止する停止時間を推定する。推定部123は、エンジン10が停止した際の車両1の周囲の状況から、エンジン10が停止する停止時間を推定する。例えば、推定部123は、車両1が駐車場に停止した時刻が夜である場合には、停止した時刻から翌朝までの時間が停止時間であると推定する。
【0041】
弁制御部124は、吸気スロットル24、排気スロットル38及びEGR弁52の開閉を制御する。例えば、弁制御部124は、吸気の掃気制御を行う際に、吸気スロットル24、排気スロットル38及びEGR弁52を開状態にする。弁制御部124は、ここでは、吸気スロットル24、排気スロットル38及びEGR弁52を、同時に開状態にする。
【0042】
過給制御部125は、過給機22の動作を制御する。過給制御部125は、モータ23を駆動させて過給機22を動作させることで、吸気の過給を行う。例えば、過給制御部125は、吸気の掃気制御を行う際に、過給機22を動作させる。掃気制御の際に過給機22を動作させることで、吸気通路20の吸気が排気通路30に流れやすくなる。
【0043】
本実施形態では、弁制御部124及び過給制御部125が、協働して掃気制御を行う掃気制御部127として機能する。掃気制御部127は、エンジン10の停止時に、吸気通路20の吸気をEGR通路50を経由して排気通路30へ向かわせる掃気制御を行う。掃気制御部127は、エンジン10の停止直後に、掃気制御を行う。
【0044】
図3は、掃気制御を行う際の吸気の流れを示す模式図である。掃気制御部127は、掃気制御を行うために、吸気スロットル24、排気スロットル38、及びEGR弁52を開状態にする。ここでは、掃気制御部127は、吸気スロットル24、排気スロットル38及びEGR弁52を全開にする。そして、掃気制御部127は、モータ23を動作させて過給機22に吸気を過給させる。これにより、過給機22が圧縮した吸気は、図3において矢印で示すように、吸気通路20、EGR通路50、排気通路30の順に流れる。吸気が流れることで、それまで排気通路30に残留していた排気が、大気に排出される。言い換えれば、吸気が流れることで、それまで排気通路30に残留していた排気が、吸気に置換される。これにより、排気通路30に排気が残留しなくなり、排気通路30に凝縮水が発生することを抑制できる。なお、排気通路30には排気に代わって吸気が残留するが、吸気中の水分濃度は排気に比べて少ないため、凝縮水が発生し難い。
また、排気制御部127は、掃気制御を開始してから所定の動作時間が経過したことに応じて、過給機22を停止させて掃気を停止する。これにより、車両1の停止時に長時間にわたり過給機22を動作させて、バッテリー62の電力が低下することを抑制することができる。なお、所定の動作時間は、車両1の状態やエンジン10の動作状態に応じて、動的に設定するものであってもよい。
【0045】
エンジン10の動作状態(例えば、高回転又は低回転)によって、エンジン10からの排気の量が変化し、エンジン10の停止後の排気の残留量も変化する。そこで、掃気制御部127は、取得部122が取得したエンジン10の動作状態に応じて、掃気制御の際の過給機22の動作時間を変更する。このように掃気制御の際の過給機22の動作時間を変更することで、エンジン10の停止時に排気通路30に残留する排気を、吸気によって排出しやすくなる。
【0046】
例えば、掃気制御部127は、エンジン10への燃料噴射量に応じて、掃気制御の際の過給機22の動作時間を変更する。具体的には、掃気制御部127は、エンジン10への燃料噴射量が多いほど、掃気制御の際の過給機22の動作時間を長くする。燃料噴射量が多いほど、排気中の水分濃度も増えることで凝縮水が発生するリスクが高まる。そこで、燃料噴射量が多いほど掃気制御の際の過給機22の動作時間を長くすることで、排気をより確実に排出できるので、凝縮水の発生を効果的に抑制できる。
【0047】
掃気制御部127は、推定部123が推定したエンジン10の停止時間が所定時間よりも長い場合に、掃気制御を行う。エンジン10の停止時間が長い場合には、排気通路30内の温度が低下しやすいため、凝縮水が発生しやすくなる。そこで、掃気制御部127は、停止時間が長い場合には温度低下前に掃気制御を行うことで、凝縮水の発生を抑制し、この結果、凝縮水がセンサ32に付着することを抑制できる。例えば、所定時間は、エンジン10が停止してからの温度変化が所定の温度差になる時間として、あらかじめ実験やシミュレーションにより求められた値であるとする。例えば、所定時間は、5時間である。
【0048】
所定時間は、記憶部110に記憶されている。所定時間は、車両1やエンジン10の存在する環境温度や停止前のエンジン10の駆動状態などに応じてあらかじめ対応付けられているとする。所定時間は、停止前のエンジン10の燃料噴射量が大きいほど、短い時間として設定される。これは、停止前のエンジン10の燃料噴射量が大きいほど、排気に含まれる水分量が多く、短時間で凝縮水の発生が懸念されるためである。また、所定時間は、停止前の環境温度が低いほど、短い時間として設定される。これは、停止前の環境温度が低いほど、排気通路30内の温度低下が早く進行することから、短時間で凝縮水の発生が懸念されるためである。また、所定時間は、季節や標高などに応じて設定されていてもよい。
【0049】
また、掃気制御部127は、推定部123が推定したエンジン10の停止時間によらず、エンジン10が停止する度に、掃気制御を行ってもよい。これにより、エンジン10の停止後に排気通路30内に排気が残留することを抑制できるので、凝縮水の発生を抑制できる。
【0050】
車両1は、バッテリー62の残量によって、エンジン10での走行とモータ60での走行とを切り替えうる。例えば、バッテリー62の残量が第1閾値より少ない場合には、車両1は、バッテリー62の充電のためにエンジン10で走行する。一方で、バッテリー62の残量が第1閾値よりも大きい第2閾値よりも多い場合には、車両1は、エンジン10を停止した状態でモータ60によって走行する。エンジン10からモータ60による走行に切り替えた際には、それまでエンジン10で走行していたため、排気通路30に排気が残留している。掃気制御部127は、モータ60による走行時に、排気通路30に残留している排気を排出すべく掃気制御を行う。すなわち、掃気制御部127は、バッテリー62の残量が第2値よりも大きい場合に、掃気制御を行う。これにより、車両1がモータ60で走行している際に、それまで排気通路30に残留していた排気が排出されることで、排気通路30内に凝縮水が発生することを抑制できる。なお、第2値は、予め設定されており、例えば車両1がモータ60で1時間程度走行できる値である。第1値及び第2値は、記憶部110に記憶されている。
【0051】
掃気制御部127は、充電プラグ64が外部の充電装置に接続された場合に、掃気制御を行う。充電プラグ64の充電装置への接続は、車両1の走行が完了した後に行われるケースが多く、エンジン10を停止する時間が長くなりやすい。したがって、排気通路30の温度が低下して凝縮水の発生が懸念される。このため、充電プラグ64の充電装置に接続された場合に掃気制御部127が掃気制御を行うことで、その後に排気通路30に凝縮水が発生することを抑制できる。
【0052】
<制御装置の動作例>
図4は、制御装置100の動作例を説明するためのフローチャートである。図4のフローチャートに示す処理は、エンジン10が動作しているところから開始される。
【0053】
まず、制御装置100は、エンジン10が停止したか否かを判定する(ステップS102)。例えば、制御装置100は、エンジン検出部80がイグニッションスイッチのオフを検出すると、エンジン10が停止したと判定する。
【0054】
ステップS102でエンジン10が停止したと判定されると(Yes)、取得部122は、エンジン10の停止前のエンジン10の動作状態を取得する(ステップS104)。例えば、取得部122は、エンジン10の停止前にエンジン10に噴射された燃料噴射量を取得する。
【0055】
次に、掃気制御部127は、停止前のエンジン10の動作状態に基づいて、掃気制御中の過給機22の動作時間を設定する(ステップS106)。例えば、掃気制御部127は、エンジン10の停止前の燃料噴射量が多い程、過給機22の動作時間を長く設定する。
【0056】
次に、掃気制御部127は、掃気制御を実行する(ステップS108)。すなわち、掃気制御部127は、吸気スロットル24、排気スロットル38及びEGR弁52を開状態にし、かつ過給機22を動作させて、吸気通路20の吸気をEGR通路50を経由して排気通路30に向かわせる。この際、掃気制御部127は、ステップS106で設置した動作時間だけ、過給機22を動作させる。すなわち、掃気制御部127は、ステップS106で設定された動作時間が経過したことに応じて、掃気制御を停止させる。このように掃気制御を行うことで、吸気が排気通路30を流れる際に、排気通路30内に残留していた排気が大気へ排出される。
【0057】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の車両1は、エンジン10の停止時に、吸気通路20の吸気をEGR通路50を経由して排気通路30へ流すように、排気スロットル38、吸気スロットル24及び過給機22を制御する掃気制御を行う。
これにより、エンジン10の停止時に、排気通路30を流れる吸気によって排気通路30に残留していた排気が排出される。このため、排気通路30内で凝縮水が発生することを抑制でき、この結果、排気通路30内のセンサ32への凝縮水の付着を抑制できる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
10 エンジン
20 吸気通路
22 過給機
24 吸気スロットル
30 排気通路
32 センサ
38 排気スロットル
50 EGR通路
52 EGR弁
122 取得部
123 推定部
127 掃気制御部
【要約】
【課題】凝縮水のセンサへの付着を抑制する。
【解決手段】車両1は、排気通路30に設けられたセンサ32と、排気通路30においてセンサ32よりも上流の部分から、吸気通路20においてエンジン10側の部分に、排気を還流させるEGR通路50と、センサ32よりも下流側に設けられた開閉可能な排気スロットル38と、吸気通路20に設けられた開閉可能な吸気スロットル24と、吸気通路20において吸気スロットル24よりも上流側に設けられた過給機22と、エンジン10の停止時に、吸気をEGR通路50を経由して排気通路30へ流すように、排気スロットル38、吸気スロットル24および過給機22を制御する掃気制御を行う制御部を備える。
【選択図】図1


図1
図2
図3
図4