(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】いびき判定システム、いびき判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20241210BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/16 130
(21)【出願番号】P 2023190085
(22)【出願日】2023-11-07
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一星 彰
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-549966(JP,A)
【文献】特開2016-047156(JP,A)
【文献】特表2020-513908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0119303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベル又は音圧レベルの推移を測定する測定手段と、
前記騒音レベル又は前記音圧レベルの推移の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得手段と、
前記周波数スペクトルに基づき、複数の周波数ピークを同定するピーク同定手段と、
前記複数の周波数ピークのうち、強度が最も大きな第1のピークと、次に強度が大きな第2のピークと、の強度比に基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する判定手段と、
を含む、いびき判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のいびき判定システムにおいて、
前記判定手段は、前記第1のピークの強度の大きさに基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する、いびき判定システム。
【請求項3】
請求項1に記載のいびき判定システムにおいて、
前記測定手段は騒音計である、いびき判定システム。
【請求項4】
請求項1に記載のいびき判定システムにおいて、
前記被測定者の胸部の動きを示すドップラデータを取得するドップラセンサをさらに含み、
前記判定手段は、前記ドップラデータと、前記騒音レベル又は音圧レベルの推移と、に基づいて、前記ドップラデータの波形と前記騒音レベル又は音圧レベルの波形とが同期しているか否かを判断し、同期しているか否かに基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する、いびき判定システム。
【請求項5】
請求項4に記載のいびき判定システムにおいて、
前記判定手段は、前記ドップラデータの波形の極値点のタイミングと、前記騒音レベル又は音圧レベルの波形の極値点のタイミングと、のずれに基づいて、それらの波形が同期しているか否かを判断する、いびき判定システム。
【請求項6】
請求項4に記載のいびき判定システムにおいて、
前記判定手段は、前記ドップラデータの周波数スペクトルに基づいて算出される呼吸数と、前記騒音レベル又は音圧レベルの推移の周波数スペクトルに基づいて算出される呼吸数と、の差が所定閾値未満である場合に、前記被測定者によるいびきが有ると判定する、いびき判定システム。
【請求項7】
請求項1に記載のいびき判定システムにおいて、
前記被測定者の睡眠深度を取得する睡眠深度取得手段をさらに含み、
前記判定手段は、前記被測定者の睡眠深度にさらに基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する、いびき判定システム。
【請求項8】
睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベル又は音圧レベルの推移を測定する測定ステップと、
前記騒音レベル又は前記音圧レベルの推移の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得ステップと、
前記周波数スペクトルに基づき、複数の周波数ピークを同定するピーク同定手段と、
前記複数の周波数ピークのうち、強度が最も大きな第1のピークと、次に強度が大きな第2のピークと、の強度比に基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する判定ステップと、
を含む、いびき判定方法。
【請求項9】
睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベル又は音圧レベルの推移を取得する手段、
前記騒音レベル又は前記音圧レベルの推移の周波数スペクトルを取得する手段、
前記周波数スペクトルに基づき、複数の周波数ピークを同定する手段、及び
前記複数の周波数ピークのうち、強度が最も大きな第1のピークと、次に強度が大きな第2のピークと、の強度比に基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はいびき判定システム、いびき判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、睡眠中の被測定者のいびきを抑制し、快適な眠りを提供することができる安眠装置が開示されており、この安眠装置は、被測定者の近傍に設置されたマイクによって音声信号を取得し、該音声信号からいびきを検知する検知装置を備えている。具体的には、検知装置では、音声信号の包絡線を抽出し、包絡線の周期性が一定時間継続する場合に、睡眠中の被測定者がいびきを発していると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクにより睡眠中の被測定者から取得される音声信号には様々な周波数成分が含まれており、いびきの際、理想的に包絡線の周期性が一定時間継続するとは限らない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、被測定者による音声信号からいびきの有無を好適に判定できるいびき判定システム、いびき判定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るいびき判定システムは、睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベル又は音圧レベルの推移を測定する測定手段と、前記騒音レベル又は前記音圧レベルの推移の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得手段と、前記周波数スペクトルに基づき、複数の周波数ピークを同定するピーク同定手段と、前記複数の周波数ピークのうち、強度が最も大きな第1のピークと、次に強度が大きな第2のピークと、の強度比に基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する判定手段と、を含む。
【0007】
(2)(1)に記載のいびき判定システムにおいて、前記判定手段は、前記第1のピークの強度の大きさに基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定してよい。
【0008】
(3)(1)又は(2)に記載のいびき判定システムにおいて、前記測定手段は騒音計であってよい。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載のいびき判定システムにおいて、前記被測定者の胸部の動きを示すドップラデータを取得するドップラセンサをさらに含んでよい。前記判定手段は、前記ドップラデータと、前記騒音レベル又は音圧レベルの推移と、に基づいて、前記ドップラデータの波形と前記騒音レベル又は音圧レベルの波形とが同期しているか否かを判断してよい。また、同期しているか否かに基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定してよい。
【0010】
(5)(4)に記載のいびき判定システムにおいて、前記判定手段は、前記ドップラデータの波形の極大点のタイミングと、前記騒音レベル又は音圧レベルの波形の極大点のタイミングと、のずれに基づいて、それらの波形が同期しているか否かを判断してよい。
【0011】
(6)(4)に記載のいびき判定システムにおいて、前記判定手段は、前記ドップラデータの周波数スペクトルに基づいて算出される呼吸数と、前記騒音レベル又は音圧レベルの推移の周波数スペクトルに基づいて算出される呼吸数と、の差が所定閾値未満である場合に、前記被測定者によるいびきが有ると判定してよい。
【0012】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載のいびき判定システムにおいて、前記被測定者の睡眠深度を取得する睡眠深度取得手段をさらに含み、前記判定手段は、前記被測定者の睡眠深度にさらに基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定してよい。
【0013】
(8)本発明に係るいびき判定方法は、睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベル又は音圧レベルの推移を測定する測定ステップと、前記騒音レベル又は前記音圧レベルの推移の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得ステップと、前記周波数スペクトルに基づき、複数の周波数ピークを同定するピーク同定手段と、前記複数の周波数ピークのうち、強度が最も大きな第1のピークと、次に強度が大きな第2のピークと、の強度比に基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する判定ステップと、を含む。
【0014】
(9)本発明に係るプログラムは、睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベル又は音圧レベルの推移を取得する手段、前記騒音レベル又は前記音圧レベルの推移の周波数スペクトルを取得する手段、前記周波数スペクトルに基づき、複数の周波数ピークを同定する手段、及び前記複数の周波数ピークのうち、強度が最も大きな第1のピークと、次に強度が大きな第2のピークと、の強度比に基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。このプログラムは、半導体メモリや光磁気ディスクなどのコンピュータ可読情報記憶媒体に格納されてよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被測定者による音声信号からいびきの有無を好適に判定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係るいびき判定システムの構成図である。
【
図2】実施形態1に係る信号処理装置の動作を示すフロー図である。
【
図3】被測定者がいびきを発していない場合の音データの周波数スペクトルを示す図である。
【
図4】被測定者がいびきを発している場合の音データの周波数スペクトルを示す図である。
【
図5】実施形態2に係るいびき判定システムの構成図である。
【
図6】被測定者の睡眠中の音データ及びドップラデータを示す図である。
【
図7】実施形態2に係る信号処理装置の動作を示すフロー図である。
【
図8】実施形態3に係る信号処理装置の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るいびき判定システムの構成図である。同図に示す、いびき判定システム1は、例えば寝室においてベッドの側に配置されるものであり、ベッドで就寝中の被測定者が発する呼吸音から、当該被測定者がいびきを発しているか否かを判定するものである。
【0019】
同図に示すように、このいびき判定システム1は、収音部2及び信号処理装置3を含んでいる。収音部2は、睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の音データを取得するためのものであり、例えばマイク又は騒音計を用いて構成される。マイクを用いる場合、取得される呼吸音の生データから、音圧レベル(音の大きさ)の推移を示す時系列データを生成し、それを音データとして用いる。マイクにより取得される呼吸音の生データから音データを生成するのは、例えば収音部2自体が行ってもよいし、或いは信号処理装置3が行ってもよい。
【0020】
これに対し、騒音計を用いる場合、騒音計により取得される音データは、被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベルの推移を示すもの(時系列データ)となる。プライバシー保護の観点からは、収音部2としてマイクよりも騒音計を採用することが望ましい。以下では、収音部2が騒音計であるものとして説明を続ける。なお、騒音計は、計量法に定める法定計量器であり、普通騒音計と精密騒音計の2種類があり、収音部2としてはいずれの騒音計を採用してもよい。
【0021】
信号処理装置3は、収音部2から騒音レベルの推移を示す音データを取得し、該音データに基づいて被測定者がいびきを発しているか否かを判定する。この際、一定期間の音データが示す騒音レベルの推移の周波数スペクトルを計算し、この周波数スペクトルに基づいていびきの有無を判定する。信号処理装置3は、例えばCPUやメモリを含む、公知のコンピュータを用いて構成されてもよい。
【0022】
図2は、信号処理装置3の具体的動作を示すフロー図である。同図に示す動作は、コンピュータである信号処理装置3において、本実施形態に係る信号処理プログラムが実行されることにより実現されるものである。信号処理プログラムは、定期的に、例えば一日一回、被測定者の起床時等に実行される。
【0023】
信号処理装置3では、まず収音部2から音データを取得する(S201)。例えば、この音データは、入眠時から起床時までの間の被測定者の呼吸音の騒音レベルの変化を示している。次に、こうして取得される音データから所定時間ウィンドウ(例えば1分間)の音データを切出し、切り出された音データに対してFFT(Fast Fourier Transform)を実行する。これにより時間ウィンドウの音データについて周波数スペクトルを得る。この処理を、音データの最初から最後まで、すなわち入眠時から起床時までに設定されるすべての時間ウィンドウに対して実行する(S202)。そして、各時間ウィンドウの周波数スペクトルに含まれるピークを特定する。具体的には、周波数スペクトルに含まれる各ピークの周波数及び強度を特定する。そして、最も大きな強度のピーク(第1ピーク)の周波数及びその強度、次に大きな強度のピーク(第2ピーク)の周波数及びその強度を特定する(S203)。
【0024】
その後、各時間ウィンドウについてS204~S206の処理を繰り返す。すなわち、第1ピークの強度が閾値以上であるかを判断する(S204)。第1ピークの強度が閾値未満であれば、当該時間ウィンドウに係る時間帯には被測定者はいびきを発していなかったと考えられることから、次の時間ウィンドウの処理に移る。一方、第1ピークの強度が閾値以上であれば、次に第1ピークの強度が第2ピークの強度のα倍以上であるか否かを判断する(S205)。ここでαは1より大きな値であり、例えば1.8~2.0程度の値であってよい。
【0025】
図3は、被測定者がいびきを発していない場合の音データの周波数スペクトルを示す図であり、
図4は、被測定者がいびきを発している場合の音データの周波数スペクトルを示す図である。
図3において、第1ピーク20の強度と第2ピーク21の強度の差は小さく、本実施形態において、このような場合には被測定者がいびきを発していないと判定する。一方、
図4において、第1ピーク22と第2ピーク23の強度の差は十分に大きく、本実施形態において、このような場合に被測定者がいびきを発していると判定する。
【0026】
図2に戻り、第1ピークの強度が第2ピークの強度のα倍以上でなければ、次の時間ウィンドウの処理に移る(S205)。一方、第1ピークの強度が第2ピークの強度のα倍以上であれば、当該時間ウィンドウの時間帯を、被測定者によりいびきが発せられていた区間としてファイルに記録し(S206)、次の時間ウィンドウの処理に移る。
【0027】
以上説明したいびき判定システム1によれば、騒音計を用いていびきの判定を行うので、プライバシー保護を実現できる。また、音データの周波数スペクトルを取得し、第1ピークと第2ピークとの強度比に基づいて、被測定者によるいびきの有無を判定するので、判定精度を向上させることができる。また、第1ピークの強度が閾値未満の場合には、いびきが発せられてないと判定することで、さらにいびきの判定精度を向上させることができる。
【0028】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係るいびき判定システムの構成図である。同図に示す、いびき判定システム10も、例えば寝室においてベッドの側に配置されるものであり、ベッドで就寝中の被測定者が発する呼吸音から、当該被測定者がいびきを発しているか否かを判定する。いびき判定システム10は、収音部2、ドップラセンサ40及び信号処理装置30を含んでいる。収音部2の構成は、実施形態1と同様である。ドップラセンサ40は、例えばベッド近傍において被測定者の胸部に向けて設置される。ドップラセンサ40からはマイクロ波が出射され、被測定者の胸部での反射波がドップラセンサ40で受信される。ドップラ効果により反射波は周波数シフトしており、これを観測することにより被測定者の呼吸数や心拍数を得ることができる。反射波は、送信波と同相成分であるI信号と直交成分であるQ信号とを含むドップラデータとして検出され、デジタル形式で信号処理装置30に出力される。ドップラデータは、被測定者の胸部の動きを示している。
【0029】
実施形態2に係る信号処理装置30も、実施形態1に係る信号処理装置3と同様、例えばCPUやメモリを含む、公知のコンピュータを用いて構成されてよい。特に信号処理装置30は、収音部2から取得する音データに加え、ドップラセンサ40から取得するドップラデータを用いて、さらに精度よく、被測定者がいびきを発しているか否かを判定するものである。
【0030】
なお、ドップラデータには、呼吸に由来する成分の他、体動に由来する成分や心拍に由来する成分を含んでいる。そこで、信号処理装置3では、いびきの判定処理を実行する前に、ドップラセンサ40から取得する生のドップラデータに対して所定の帯域制限フィルタ(呼吸の周波数帯域を抽出するバンドパスフィルタ)を適用している。
【0031】
図6は、被測定者の睡眠中の音データ及びドップラデータ(フィルタ適用後)を示す図である。同図の上側には、被測定者から得られた音データが示されており、縦軸は音データの振幅を示し、横軸は時間を示している。同図の下側には、同時に被測定者から得られたドップラデータが示されており、縦軸はドップラデータの振幅を示し、横軸は時間を示している。また、多数の二点鎖線の縦線は、音データの極大点を通っている。また、ドップラデータに描かれた一点鎖線の丸印はドップラデータの極大点を示している。
【0032】
同図に示すように、被測定者の睡眠中の音データと、被測定者の胸部の動きを示すドップラデータと、は通常は同期している。すなわち、二点鎖線の縦線の近傍には、ドップラデータの極大点が存在している。一方、音データとドップラデータとが同期していない場合は、例えば音データが示す音に被測定者に由来しない音が含まれていると考えられ、そのような場合にはいびきの判定精度が低下する。そこで、本実施形態2では、被測定者の睡眠中の音データと、被測定者の胸部の動きを示すドップラデータと、が同期しているか否かを判定し、その結果を加味して、被測定者によるいびきの有無を判定する。
【0033】
具体的には、音データにおける極大点のタイミングと、ドップラデータにおける極大点のタイミングと、のずれに基づいて、両データが同期しているか否かを判断する。例えば、音データの各極大点のタイミング(時刻)と、そのタイミングに最も近いドップラデータの極大点のタイミングと、のずれの大きさを計算する。そして、そのずれの平均値が所定閾値(例えば0.5秒)以下であれば、音データとドップラデータとが同期していると判断してよい。
【0034】
なお、ここでは音データの極小点のタイミングとドップラデータの極小点のタイミングとのずれに基づいて、或いは音データの極大点及び極小点(極値点)のタイミングとドップラデータの極大点及び極小点のタイミングとのずれに基づいて、両データが同期しているか否かを判断してもよい。
【0035】
図7は、信号処理装置30の動作を示すフロー図である。同図に示す動作は、コンピュータである信号処理装置30において、本実施形態に係る信号処理プログラムが実行されることにより実現されるものである。信号処理プログラムも、定期的に、例えば一日一回、被測定者の起床時等に実行される。同図において、S701~S705,S710の処理は、
図2におけるS201~S205,S206の処理とそれぞれ同じであり、ここでは説明を省略する。
【0036】
同図に示すように、S705において、第1ピークの強度が第2ピークの強度のα倍以上であると判断されると、本実施形態2では、現在処理中の時間ウィンドウの音データにおける極大点を特定する(S706)。また、現在処理中の時間ウィンドウと同じ時間ウィンドウのドップラデータを取得し(S707)、取得したドップラデータにおける極大点を特定する(S708)。
【0037】
そして、S706で特定した極大点とS708で特定した極大点とのずれを評価し、ずれが基準以下であるか否かを判断する(S709)。例えば、上述のように、ずれの大きさの平均値が閾値以下であるか否かを判断する。ずれが基準より大きい場合には、次の時間ウィンドウの処理に移る。一方、ずれが基準以下であれば、当該時間ウィンドウの時間帯をいきき区間として記録し(S710)、次の時間ウィンドウの処理に移る。
【0038】
以上説明した実施形態2によれば、ドップラデータを併用していびきの有無を判定するので、判定精度を向上させることができる。特に、音データに被測定者の呼吸音以外が含まれる場合に、誤っていびきを発していると判定してしまうことを防止できる。
【0039】
(実施形態3)
実施形態2においては、音データとドップラデータとが同期しているか否かを、両データの極値点を比較することにより判断した。その他、音データから算出される呼吸数とドップラデータから算出される呼吸数を比較することにより、音データとドップラデータとが同期しているか否かを判断してもよい。
【0040】
図8は、信号処理装置30の動作の変形例を示すフロー図である。同図に示す動作は、コンピュータである信号処理装置30において、本実施形態に係る信号処理プログラムが実行されることにより実現されるものである。信号処理プログラムも、定期的に、例えば一日一回、被測定者の起床時等に実行される。同図において、S801~S805,S810の処理は、
図2におけるS201~S205,S206の処理とそれぞれ同じであり、ここでは説明を省略する。
【0041】
同図に示すように、S805において、第1ピークの強度が第2ピークの強度のα倍以上であると判断されると、本実施形態3では、現在処理中の時間ウィンドウの音データの周波数スペクトルに含まれる第1ピークの周波数に基づいて被測定者の呼吸数を計算する(S806)。次に、現在処理中の時間ウィンドウのドップラデータを取得し(S807)、取得されたドップラデータに基づいて被測定者の呼吸数を計算する(S808)。具体的には、ドップラデータにFFT処理を施し、周波数スペクトルを得る。そして、周波数スペクトルに含まれる最も強度の大きなピークの周波数から呼吸数を取得する。
【0042】
その後、音データに基づく呼吸数とドップラデータに基づく呼吸数とが近似しているか否かを判断する(S809)。例えば、両呼吸数の差が閾値未満であれば、両呼吸数は近似していると判断する。両呼吸数が近似していなければ、次の時間ウィンドウの処理に移る。一方、両呼吸数が近似していれば、当該時間ウィンドウの時間帯をいきき区間として記録し(S810)、次の時間ウィンドウの処理に移る。
【0043】
以上説明した実施形態3においても、ドップラデータを併用していびきの有無を判定するので、判定精度を向上させることができる。特に、音データに被測定者の呼吸音以外が含まれる場合に、誤っていびきを発していると判定してしまうことを防止できる。
【0044】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例も可能であり、そのような変形例もまた本発明の範囲に含まれる。例えば、いびきは、所謂レム睡眠の間に発するので、被測定者の睡眠深度を取得し、取得される睡眠深度にさらに基づいて、被測定者によるいびきの有無を判定してよい。すなわち、レム睡眠でない場合には、被測定者がいびきを発しているとの判定を抑制ないし停止してよい。例えば被測定者の体動の有無を被測定者の動画像やベッドに設けた荷重センサを取得し、それらの情報から睡眠深度を判定してよい。また、ドップラデータから被測定者の心拍数を計算し、心拍数にさらに基づいて、睡眠深度を判定してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1,10 いびき判定システム、2 収音部、3,30 信号処理装置、40 ドップラセンサ。
【要約】
【課題】被測定者による音声信号からいびきの有無を好適に判定できるいびき判定システムを提供すること。
【解決手段】いびき判定システムは、睡眠中の被測定者から発せられる呼吸音の騒音レベル又は音圧レベルの推移を測定する測定手段(S201)と、前記騒音レベル又は前記音圧レベルの推移の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得手段(S202)と、前記周波数スペクトルに基づき、複数の周波数ピークを同定するピーク同定手段(S203)と、前記複数の周波数ピークのうち、強度が最も大きな第1のピークと、次に強度が大きな第2のピークと、の強度比に基づいて、前記被測定者によるいびきの有無を判定する判定手段(S205)と、を含む。
【選択図】
図2