(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】故障判定装置、故障判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/18 20060101AFI20241210BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01N3/18 C
F01N11/00
(21)【出願番号】P 2023212888
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸小 鉄平
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-327392(JP,A)
【文献】特開2009-216077(JP,A)
【文献】特開2008-180123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 11/00
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの負荷の状態を特定する特定部と、
排気流路に設けられた浄化装置の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出する検出部と、
前記エンジンの負荷が第1状態以上である際に前記検出部が検出した第1差圧と、前記エンジンの負荷が、前記第1状態よりも小さい第2状態である際に前記検出部が検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定する判定部と、
を有
し、
前記特定部は、前記エンジンを備える車両が高速道路と異なる道路を走行する際の前記エンジンの負荷の前記第1状態と、前記車両がアイドリング状態である際の前記エンジンの負荷の前記第2状態と、を特定する、
故障判定装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記エンジンの回転数、トルク、排ガス流量及び燃料噴射量のうち少なくとも2つに基づいて、前記エンジンの負荷を特定する、
請求項
1に記載の故障判定装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記エンジンの回転数と、前記エンジンのトルク又は燃料噴射量と、に対応する前記エンジンの負荷を特定する、
請求項
1に記載の故障判定装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記浄化装置の上流側に設けられた第1センサが検出した第1排気圧と、前記浄化装置の下流側に設けられた第2センサが検出した第2排気圧と、の差圧を検出する、
請求項1に記載の故障判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記エンジンの負荷が前記第1状態以上である時刻毎に検出した前記第1差圧の合計が第1合計値以上であり、かつ前記エンジンの負荷が前記第2状態である時刻毎に検出した前記第2差圧の合計が、前記第1合計値より小さい第2合計値以上である場合に、前記浄化装置に異常があるか否かを判定する、
請求項1に記載の故障判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、複数の前記第1差圧の統計量と、複数の前記第2差圧の統計量と、の差が前記閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定する、
請求項
5に記載の故障判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記浄化装置が捕集した粒子状物質を燃焼する処理が終了した時刻から所定の時間が経過した後に、前記浄化装置に異常があるか否かを判定する、
請求項1に記載の故障判定装置。
【請求項8】
プロセッサが実行する、
エンジンの負荷の状態を特定する特定工程と、
排気流路に設けられた浄化装置の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出する検出工程と、
前記エンジンの負荷が第1状態以上である際に前記検出工程において検出した第1差圧と、前記エンジンの負荷が、前記第1状態よりも小さい第2状態である際に前記検出工程において検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定する判定工程と、
を有
し、
前記特定工程において、前記エンジンを備える車両が高速道路と異なる道路を走行する際の前記エンジンの負荷の前記第1状態と、前記車両がアイドリング状態である際の前記エンジンの負荷の前記第2状態と、を特定する、
故障判定方法。
【請求項9】
プロセッサに、
エンジンの負荷の状態を特定するステップと、
排気流路に設けられた浄化装置の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出するステップと、
前記エンジンの負荷が第1状態以上である際に前記差圧を検出するステップにおいて検出した第1差圧と、前記エンジンの負荷が、前記第1状態よりも小さい第2状態である際に前記差圧を検出するステップにおいて検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定するステップと、
を実行させ
、
前記特定するステップにおいて、前記エンジンを備える車両が高速道路と異なる道路を走行する際の前記エンジンの負荷の前記第1状態と、前記車両がアイドリング状態である際の前記エンジンの負荷の前記第2状態と、を特定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障判定装置、故障判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のハイブリッド車両は、排気路に設けられた浄化装置の上流側の排気圧と当該浄化装置の下流側の排気圧との差圧が所定の差圧未満である場合に、浄化装置に異常があると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浄化装置の上流側及び下流側の排気圧の差圧には、排気圧を検出するセンサ毎の誤差(いわゆる、バラつき)及び各センサの劣化に起因する誤差を含む。したがって、従来のハイブリッド車両においては、浄化装置の異常を検出する精度を高めるために、差圧に含まれる誤差の割合を少なくすることが望ましい。差圧に含まれる誤差の割合を少なくするためには、エンジンの負荷を大きい状態(いわゆる、高負荷の状態)にすることにより、差圧が大きい状態にすることが考えられるが、浄化装置の異常の有無を判定する際のエンジンの負荷の状態が限定されてしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、浄化装置の異常の有無を判定できるエンジンの負荷の範囲を広くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る故障判定装置は、エンジンの負荷の状態を特定する特定部と、排気流路に設けられた浄化装置の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出する検出部と、前記エンジンの負荷が第1状態以上である際に前記検出部が検出した第1差圧と、前記エンジンの負荷が、前記第1状態よりも小さい第2状態である際に前記検出部が検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定する判定部と、を有する。
【0007】
前記特定部は、前記エンジンを備える車両が高速道路と異なる道路を走行する際の前記エンジンの負荷の前記第1状態と、前記車両がアイドリング状態である際の前記エンジンの負荷の前記第2状態と、を特定してもよい。
【0008】
前記特定部は、前記エンジンの回転数、トルク、排ガス流量及び燃料噴射量のうち少なくとも2つに基づいて、前記エンジンの負荷を特定してもよい。
【0009】
前記特定部は、前記エンジンの回転数と、前記エンジンのトルク又は燃料噴射量と、に対応する前記エンジンの負荷を特定してもよい。
【0010】
前記検出部は、前記浄化装置の上流側に設けられた第1センサが検出した第1排気圧と、前記浄化装置の下流側に設けられた第2センサが検出した第2排気圧と、の差圧を検出してもよい。
【0011】
前記判定部は、前記エンジンの負荷が前記第1状態以上である時刻毎に検出した前記第1差圧の合計が第1合計値以上であり、かつ前記エンジンの負荷が前記第2状態である時刻毎に検出した前記第2差圧の合計が、前記第1合計値より小さい第2合計値以上である場合に、前記浄化装置に異常があるか否かを判定してもよい。
【0012】
前記判定部は、複数の前記第1差圧の統計量と、複数の前記第2差圧の統計量と、の差が前記閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定してもよい。
【0013】
前記判定部は、前記浄化装置が捕集した粒子状物質を燃焼する処理が終了した時刻から所定の時間が経過した後に、前記浄化装置に異常があるか否かを判定してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る故障判定方法は、プロセッサが実行する、エンジンの負荷の状態を特定する特定工程と、排気流路に設けられた浄化装置の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出する検出工程と、前記エンジンの負荷が第1状態以上である際に前記検出工程において検出した第1差圧と、前記エンジンの負荷が、前記第1状態よりも小さい第2状態である際に前記検出工程において検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定する判定工程と、を有する。
【0015】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、プロセッサに、エンジンの負荷の状態を特定するステップと、排気流路に設けられた浄化装置の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出するステップと、前記エンジンの負荷が第1状態以上である際に前記差圧を検出するステップにおいて検出した第1差圧と、前記エンジンの負荷が、前記第1状態よりも小さい第2状態である際に前記差圧を検出するステップにおいて検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、前記浄化装置に異常があると判定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、浄化装置の異常の有無を判定できるエンジンの負荷の範囲を広くするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
【
図3】記憶部61に記憶された負荷状態マップを示す図である。
【
図4】浄化装置30の異常の有無を判定する動作を説明するための図である。
【
図5】差圧の合計値を算出する動作を示す図である。
【
図6】故障判定装置60における処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図1に示す車両Sは、エンジン10、複数のインジェクタ11(11a、11b、11c及び11d)、吸気路12、排気路13、クランクシャフト20、クランクプーリ21、浄化装置30、触媒31、フィルタ32、昇温装置33、第1排圧センサ40、第2排圧センサ41、回転数センサ42、吸気圧センサ43、車両制御装置50、報知装置51及び故障判定装置60を備える。車両Sは、浄化装置30の異常の有無を判定する機能を有する。本実施形態における浄化装置30の異常は、例えば、浄化装置30が収容するフィルタ32が、故障した状態、破損した状態、又は取り外された状態の少なくともいずれかである。
【0019】
エンジン10は、燃料と吸気(空気)の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。複数のインジェクタ11は、燃料タンク(不図示)内の燃料をエンジン10内の燃焼室に噴射するための部品である。吸気路12は、エンジン10に供給される空気(吸気)が流れる通路である。排気路13は、エンジン10の下流に設けられた、エンジン10の排気が流れる通路である。
【0020】
クランクシャフト20は、エンジン10内のピストン(不図示)の往復運動を回転運動に変えるための軸である。クランクプーリ21は、クランクシャフト20の先端に取り付けられた滑車である。クランクプーリ21は、オルタネータ等の補機に取り付けられた他のプーリ(不図示)とクランクプーリ21とに巻き掛けされたベルトを回転させることにより、クランクシャフト20の回転運動を当該補機に伝達する。
【0021】
浄化装置30は、エンジン10の排気を浄化するための装置であり、触媒31とフィルタ32とを収容する。触媒31は、例えば、排気路13に設けられた酸化触媒であり、エンジン10の排気に含まれる炭化水素と一酸化炭素とを浄化する。具体的には、触媒31は、炭化水素を水と二酸化炭素とに酸化し、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。触媒31は、尿素水溶液又はアンモニアの供給を受けて窒素酸化物を窒素と水に還元する還元触媒を含んでもよい。
【0022】
フィルタ32は、排気路13において触媒31の下流に設けられ、エンジン10の排気に含まれるPM(粒子状物質;Particulate Matter)を捕集するためのフィルタである。フィルタ32は、昇温装置33が昇温させた、排気路13を流れる排気により、フィルタ32が捕集したPMを燃焼して二酸化炭素に変換する。昇温装置33は、排気路13において触媒31の上流に設けられ、浄化装置30に流入する排気を加熱させる装置である。昇温装置33は、例えば、排気路13に燃料を噴射するための排気路インジェクタ(不図示)を備える場合、排気路インジェクタが噴射した燃料の酸化熱により排気を加熱させる。昇温装置33が排気路インジェクタを備えない場合、昇温装置33は、インジェクタ11に噴射させた燃料の酸化熱により排気を加熱させてもよい。この場合、昇温装置33は、エンジン10に含まれる。また、昇温装置33は、バッテリ(不図示)から供給された電気により加熱されたヒータ(不図示)と、排気路13を流れる排気とを熱交換させることにより、排気を加熱させてもよい。
【0023】
第1排圧センサ40は、排気路13において触媒31の下流かつフィルタ32の上流に設けられ、フィルタ32に流入する排気の排圧を検出するセンサである。第1排圧センサ40は、排気路13において触媒31の上流かつ昇温装置33の下流に設けられていてもよい。第2排圧センサ41は、排気路13においてフィルタ32の下流に設けられ、フィルタ32を通過した排気の排圧を検出するセンサである。第2排圧センサ41は、排気路13において浄化装置30の下流に設けられていてもよい。
【0024】
回転数センサ42は、エンジン10の回転数を検出するセンサである。一例として、回転数センサ42は、クランクプーリ21に近接して設けられており、単位時間(例えば、1秒)における、クランクプーリ21の回転に伴う磁力の変化の回数を検出する。回転数センサ42は、検出した磁力の変化の回数に基づいてクランププーリ21の回転数を特定し、クランクプーリ21の回転数をエンジン10の回転数として出力する。吸気圧センサ43は、吸気路12に設けられ、エンジン10に流入される吸気(空気)の吸気圧を検出するセンサである。
【0025】
車両制御装置50は、例えば、1又は複数の、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサを含む装置である。車両制御装置50は、例えば、車両Sの運転者が操作したアクセルの踏込量に対応するインジェクタ11の燃料噴射量を決定することにより、車両Sの速度を制御する。車両制御装置50は、例えば、エンジン10の排気を昇温装置33に昇温させることにより、フィルタ32が捕集したPMの燃焼(いわゆる、フィルタ再生)を制御する。車両制御装置50は、第1排圧センサ40及び第2排圧センサ41それぞれが検出した排気圧、回転数センサ42が検出したエンジン10の回転数、及び吸気圧センサ43が検出した吸気圧を故障判定装置60に出力する。なお、車両制御装置50は、故障判定装置60に含まれていてもよい。
【0026】
報知装置51は、車両Sの運転者に車両Sの状態を報知するための装置である。車両Sの状態は、例えば、浄化装置30の異常の有無である。報知装置51は、例えば、ディスプレイを有し、浄化装置30に異常があることを示す画像を当該ディスプレイに表示させる。報知装置51は、例えば、スピーカを有し、当該異常があることを示す音を当該スピーカから出音させる。
【0027】
故障判定装置60は、電子部品を含む筐体又は電子部品が実装されたプリント基板であり、第1排圧センサ40が検出した排気圧と第2排圧センサ41が検出した排気圧との差である差圧に基づいて浄化装置30の異常の有無を判定する処理を実行する。例えば、浄化装置30に異常がある状態における差圧は、浄化装置30に異常がない状態における差圧よりも小さくなるため、故障判定装置60は、差圧が所定の差圧以上であるか否かに基づいて浄化装置30の異常の有無を判定することができる。また、差圧は、第1排圧センサ40及び第2排圧センサ41それぞれを製造する過程で生じた誤差(いわゆる、バラつき)と、第1排圧センサ40及び第2排圧センサ41それぞれの劣化に起因する誤差と、を含む。
【0028】
ところで、故障判定装置60は、差圧に含まれる誤差の割合を少なくすることで浄化装置30の異常を検出する精度を高められる。具体的には、故障判定装置60は、誤差がない状態において判定可能な所定の差圧に各種の誤差に起因する差圧を加算した加算値よりも大きい差圧を検出できる状態において、浄化装置30の異常の有無を判定する精度を高められる。差圧の大きさは、エンジン10の負荷が大きいほど大きいため、エンジン10の負荷が大きい(いわゆる、高負荷)状態においては、加算値よりも大きい差圧を検出できる。しかしながら、エンジン10の負荷が高負荷ではない状態においては、加算値よりも大きい差圧を検出できないため、浄化装置30の異常の有無を判定する精度が低下する。
【0029】
そこで、故障判定装置60は、エンジン10の負荷が、高負荷よりも小さい第1状態以上における第1差圧と、エンジン10の負荷が第1状態よりも小さい第2状態における第2差圧と、の差に基づいて浄化装置30の異常の有無を判定する。第1差圧及び第2差圧に含まれる、第1排圧センサ40及び第2排圧センサ41それぞれに起因する誤差は、同値又は近似値であるため、第1差圧と第2差圧との差に含まれないと考え得る。したがって、故障判定装置60が上記のように動作することで、差圧に含まれる誤差の割合が大きい場合であっても、浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できる。すなわち、故障判定装置60は、エンジン10の負荷が高負荷ではなくても浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できるため、浄化装置30の異常の有無を判定できるエンジン10の負荷の範囲を広くすることができる。
【0030】
なお、以下の説明においては、エンジン10の第1状態を「中負荷」、エンジン10の第2状態を「低負荷」、エンジン10の第3状態を「高負荷」という場合がある。第1状態(中負荷)、第2状態(低負荷)及び第3状態(高負荷)の詳細は、後述する。
以下、故障判定装置60の構成及び動作を詳細に説明する。
【0031】
<故障判定装置60の構成>
図2は、故障判定装置60の構成を示す図である。故障判定装置60は、記憶部61及び制御部62を有する。制御部62は、取得部621、検出部622、特定部623、判定部624及び報知部625を有する。
【0032】
記憶部61は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部61は、制御部62が実行するプログラムを記憶している。記憶部61は、浄化装置30の異常の有無を検出するための各種の情報を記憶している。
【0033】
制御部62は、例えば、CPU又はECU等のプロセッサである。制御部62は、記憶部61に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部621、検出部622、特定部623、判定部624及び報知部625として機能する。なお、制御部62は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部62により実現される各部の構成を説明する。
【0034】
取得部621は、フィルタ32に流入する排気の第1排圧、フィルタ32を通過した排気の第2排圧、エンジン10の回転数及びエンジン10に流入される吸気(空気)の吸気圧を取得する。取得部621は、例えば、第1排圧センサ40が検出した第1排圧、第2排圧センサ41が検出した第2排圧、回転数センサ42が検出したエンジン10の回転数及び吸気圧センサ43が検出した吸気圧を、車両制御装置50から取得する。取得部621は、エンジン10のトルク及びインジェクタ11の燃料噴射量を車両制御装置50から取得してもよい。取得部621は、上記の各種の値を所定の周期で取得する。所定の周期は、例えば、1秒未満の固定値である。所定の周期は、上記の各種の値毎に異なっていてもよい。
【0035】
検出部622は、排気路13に設けられた浄化装置30の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出する。検出部622は、例えば、取得部621が取得した、フィルタ32の上流側に設けられた第1排圧センサ40が検出した第1排圧と、フィルタ32の下流側に設けられた第2排圧センサ41が検出した第2排圧と、の差圧を検出する。検出部622は、浄化装置30の上流側に設けられた第1排圧センサ40が検出した第1排圧と、浄化装置30の下流側に設けられた第2排圧センサ41が検出した第2排圧と、の差圧を検出してもよい。
【0036】
特定部623は、エンジン10の負荷の状態を特定する。特定部623は、例えば、エンジン10を備える車両Sが高速道路と異なる道路を走行する際のエンジン10の負荷の第1状態(中負荷)を特定する。特定部623は、例えば、車両Sがアイドリング状態である際のエンジン10の負荷の第2状態(低負荷)を特定する。特定部623は、車両Sが高速道路を走行する際のエンジン10の負荷の第3状態(高負荷)を特定してもよい。
【0037】
特定部623は、エンジン10の回転数、トルク、排ガス流量及び燃料噴射量のうち少なくとも2つに基づいて、エンジン10の負荷を特定する。排ガス流量は、車両SがEGR(Exhaust Gas Recirculation)(不図示)を有する場合、エンジン10に流入される空気(新気)の新気量と、EGRにより還流されるEGRガスの還流量との合計である。車両SがEGRを有しない場合、排ガス流量は、エンジン10に流入される新気の新気量である。特定部623は、例えば、取得部621が取得した、エンジン10に流入される吸気の吸気圧に基づいて、エンジン10の排ガス流量を特定する。特定部623は、特定部623が特定した排ガス流量と、取得部621が取得した、エンジン10の回転数、エンジン10のトルク及びインジェクタ11の燃料噴射量と、のうち少なくとも2つに基づいて、低負荷、中負荷又は高負荷を特定する。
【0038】
一例として、特定部623は、エンジン10の回転数と、エンジン10のトルク又はインジェクタ11の燃料噴射量と、に対応するエンジン10の負荷を特定する。特定部623は、例えば、記憶部61に記憶された負荷状態マップを参照することにより、エンジン10の回転数と、エンジン10のトルク又はインジェクタ11の燃料噴射量と、に対応するエンジン10の負荷の状態を特定する。
【0039】
図3は、記憶部61に記憶された負荷状態マップを示す図である。
図3においては、一例として、エンジン10の回転数及びトルクに対応するエンジン10の負荷の状態を示す。
図3の横軸は、エンジン10の回転数を示し、
図3の縦軸は、エンジン10のトルクを示す。
図3においては、領域L1が中負荷の領域を示し、領域L2が低負荷の領域を示し、領域L3が高負荷の領域を示す。境界線MXは、エンジン10の回転数に対応するトルクの最大値を示す。境界線M0は、車両Sがアイドリング状態である際のエンジン10の回転数及びトルクの範囲を示す。境界線M1は、中負荷におけるエンジン10の回転数に対応するトルクの最小値を示す。境界線M2は、中負荷におけるエンジン10の回転数に対応するトルクの最大値を示す。
【0040】
境界線M1が示すトルクは、浄化装置30に異常がない状態において、第1差圧から所定範囲内の差圧を検出部622が検出した際のエンジン10の回転数に対応するトルクである。第1差圧は、車両Sの排ガス流量に応じた差圧であり、例えば、1kPaである。所定範囲は、例えば、±0.1kPaである。さらに、境界線M2が示すトルクは、浄化装置30に異常がない状態において、第2差圧から所定範囲内の差圧を検出部622が検出する際のエンジン10の回転数に対応するトルクである。第2差圧は、車両Sの排ガス流量に応じた差圧であり、例えば、2kPaである。
【0041】
したがって、中負荷は、浄化装置30に異常がない状態において、第1差圧(例えば、1kPa)以上かつ第2差圧(例えば、2kPa)未満の差圧を検出部622が検出した際のエンジン10の負荷といえる。さらに、高負荷は、浄化装置30に異常がない状態において、第2差圧(例えば、2kPa)以上の差圧を検出部622が検出した際のエンジン10の負荷といえる。
【0042】
図3に示すように、取得部621が回転数R1及びトルクN1を取得した場合、特定部623は、回転数R1及びトルクN1に対応する座標Z1が領域L2に含まれることを特定し、エンジン10の負荷を低負荷に特定する。同様に、取得部621が回転数R2及びトルクN2を取得した場合、特定部623は、回転数R2及びトルクN2に対応する座標Z2が領域L1に含まれることを特定し、エンジン10の負荷を中負荷に特定する。
【0043】
なお、特定部623がエンジン10の回転数とインジェクタ11の燃料噴射量とに対応するエンジン10の負荷の状態を特定する場合、
図3に示す負荷状態マップにおいては、横軸がエンジン10の回転数を示し、縦軸がインジェクタ11の燃料噴射量を示す。そして、境界線MXは、エンジン10の回転数に対応する燃料噴射量の最大値を示す。境界線M0は、車両Sがアイドリング状態である際のエンジン10の回転数及びインジェクタ11の燃料噴射量の範囲を示す。境界線M1は、中負荷におけるエンジン10の回転数に対応する燃料噴射量の最小値を示す。境界線M2は、中負荷におけるエンジン10の回転数に対応する燃料噴射量の最大値を示す。
【0044】
さらに、境界線M1が示す燃料噴射量は、浄化装置30に異常がない状態において、第1差圧から所定範囲内の差圧を検出部622が検出した際のエンジン10の回転数に対応する燃料噴射量である。境界線M2が示す燃料噴射量は、浄化装置30に異常がない状態において、第2差圧から所定範囲内の差圧を検出部622が検出する際のエンジン10の回転数に対応する燃料噴射量である。つまり、
図3に示す縦軸が燃料噴射量である場合に境界線M1及び境界線M2において検出部622が検出する差圧は、縦軸がトルクである場合の差圧と同じである。したがって、特定部623が燃料噴射量を用いて特定する負荷の状態(低負荷、中負荷、高負荷)と、特定部623がトルクを用いて特定する負荷の状態とは、同じ状態を示すことができる。
【0045】
判定部624は、浄化装置30の異常の有無を判定する。判定部624は、エンジン10の負荷が中負荷以上(すなわち、中負荷又は高負荷)である際に検出部622が検出した第1差圧と、エンジン10の負荷が、中負荷よりも小さい低負荷である際に検出部622が検出した第2差圧と、を取得する。そして、判定部624は、第1差圧と第2差圧との差が閾値未満である場合に、浄化装置30に異常があると判定する。閾値は、第1排圧センサ40及び第2排圧センサ41に起因する誤差と異なる他の誤差を含む値であり、例えば、触媒31の圧力損失による誤差(一例として、0.5kPa)よりも大きい固定値である。
【0046】
図4は、浄化装置30の異常の有無を判定する動作を説明するための図である。
図4の横軸は、時刻を示し、
図4の縦軸は、検出部622が検出した差圧を示す。
図4においては、時刻T1から時刻T2までの時間において、特定部623がエンジン10の負荷を低負荷と特定し、時刻T3から時刻T4までの時間において、特定部623がエンジン10の負荷を中負荷と特定する。そして、判定部624は、例えば、時刻T3から時刻T4までの時間に検出部622が検出した第1差圧D2と、時刻T1から時刻T2までの時間に検出部622が検出した第2差圧D1と、の差である「D2-D1」を算出する。判定部624は、算出した差である「D2-D1」が閾値未満である場合、浄化装置30に異常があると判定し、算出した差である「D2-D1」が閾値以上である場合、浄化装置30に異常がないと判定する。
【0047】
判定部624がこのように動作することで、第1差圧に含まれる各排圧センサの誤差から第2差圧に含まれる各排圧センサの誤差を減算することができる。その結果、差圧に含まれる排圧センサの誤差の割合が大きくても、排圧センサの誤差を含めない値に基づいて判定できるため、判定部624は、エンジン10の負荷が高負荷ではない状態であっても、浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できる。具体的には、特定部623が高負荷と特定する状況(例えば、車両Sが高速道路を走行する状況)ではなく、特定部623が中負荷と特定する状況(例えば、車両Sが市街地を走行する状況)であっても、判定部624は、浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できる。これにより、浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できるエンジン10の負荷の範囲を広くすることができる。
【0048】
判定部624は、複数の時刻において検出部622が検出した複数の差圧に基づいて、エンジン10の負荷の状態毎の差圧の合計値を算出し、当該合計値に基づいて浄化装置30の異常の有無を判定してもよい。判定部624は、例えば、エンジン10の負荷が中負荷以上である時刻毎に検出した第1差圧の合計と、エンジン10の負荷が低負荷である時刻毎に検出した第2差圧の合計と、を算出する。そして、判定部624は、第1差圧の合計が第1合計値以上であり、かつ第2差圧の合計が、第1合計値より小さい第2合計値以上である場合に、浄化装置30に異常があるか否かを判定する。第1合計値及び第2合計値は、実験又はシミュレーションにより決められた値であり、記憶部61に記憶されている。
【0049】
図5は、差圧の合計値を算出する動作を示す図である。
図5の横軸は、時刻を示し、
図5の縦軸は、検出部622が検出した差圧、第1差圧の合計、及び第2差圧の合計を示す。
図5に示す時間A1、時間A2、時間A3及び時間A4は、特定部623がエンジン10の負荷を中負荷又は高負荷と特定した時間であり、時間B1、時間B2、時間B3及び時間B4は、特定部623がエンジン10の負荷を低負荷と特定した時間である。
図5においては、第1合計値TH1及び第2合計値TH2も示されている。
【0050】
判定部624は、例えば、時刻TBおいて、第2差圧の合計が第2合計値TH2以上であることを特定し、時刻TAにおいて、第1差圧の合計が第1合計値TH1以上であることを特定する。そして、判定部624は、時刻TAにおいて、浄化装置30に異常があるか否かを判定する。一例として、判定部624は、時刻TAにおいて検出部622が検出した第1差圧と、時刻TB又は時刻TCにおいて検出部622が検出した第2差圧と、の差に基づいて、浄化装置30の異常の有無を判定する。他の例として、判定部624は、時刻T0から時刻TAにおいて検出部622が検出した各第1差圧の合計と、時刻T0から時刻TB又は時刻TBから時刻TCにおいて検出部622が検出した各第2差圧の合計と、の差に基づいて、浄化装置30の異常の有無を判定する。
【0051】
例えば、所定の周期毎に特定部623が特定したエンジン10の負荷のうち、1つの負荷が中負荷以上であり他の負荷が中負荷未満である場合、1つの中負荷以上の負荷に基づいて判定部624が判定すると、判定の精度が低下する場合がある。そこで、所定の時間(例えば、10秒間)連続してエンジン10の負荷が中負荷以上である場合に判定部624が浄化装置30の異常の有無を判定することで、判定の精度を向上させることができるが、判定をする頻度が低下する。これに対して、判定部624が上記のように動作することで、エンジン10の負荷が中負荷以上である状態を維持した時間が短くても、中負荷以上である時間の合計が所定の時間に達した際の、中負荷以上の時刻の差圧の合計値に基づいて、浄化装置30の異常の有無を判定できる。その結果、エンジン10の負荷が中負荷以上である状態を維持し続けなくても、浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できる。
【0052】
さらに、複数の時刻の差圧に基づいて浄化装置30の異常の有無を判定することで、判定部624は、エンジン10の負荷が中負荷以上である状態を特定部623が特定した時刻毎に浄化装置30の異常の有無を判定するよりも、当該判定をする頻度を低下させつつ、判定の精度を高めることができる。その結果、判定部624は、浄化装置30の異常の有無を判定するための処理量を小さくすることができる。
【0053】
さらに、判定部624は、複数の第1差圧の統計量と、複数の第2差圧の統計量と、の差が閾値未満である場合に、浄化装置30に異常があると判定してもよい。統計量は、例えば、平均値、中央値、又は最大値である。例えば、
図5において、判定部624は、時刻TAにおいて、時刻T0から時刻TAまでの時間に検出部622が検出した複数の第1差圧の統計量と、時刻T0から時刻TBまでの時間に検出部622が検出した複数の第2差圧の統計量と、を算出する。判定部624がこのように動作することで、判定部624は、エンジン10の負荷が中負荷以上である状態を維持し続けなくても、浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できるとともに、浄化装置30の異常の有無を判定する際のデータ量を小さくすることができる。
【0054】
ところで、車両制御装置50は、エンジン10の排気を昇温装置33に昇温させることにより、フィルタ32が捕集したPMを燃焼させる処理(いわゆる、フィルタ再生)を実行させる。フィルタ再生を終了した直後においては、第1排圧センサ40及び第2排圧センサ41自身とその近傍とが昇温した状態であることに起因して、検出部622が検出する差圧が大きくなるため、浄化装置30に異常があると判定部624が誤って判定する場合がある。
【0055】
そこで、判定部624は、例えば、浄化装置30が収容しているフィルタ32が捕集したPMを燃焼する処理が終了した時刻から所定の時間が経過した後に、浄化装置30に異常があるか否かを判定する。所定の時間は、フィルタ32の流入口の温度がフィルタ再生前の温度に戻るまでの時間であり、例えば、5分である。判定部624は、例えば、フィルタ再生を終了した時刻から5分後に検出部622が検出した差圧に基づいて、浄化装置30の異常の有無を判定する。判定部624がこのように動作することで、判定部624は、フィルタ再生による昇温に起因して浄化装置30の異常の有無を誤判定することを防げる。その結果、判定部624は、浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できる。
【0056】
報知部625は、判定部624が浄化装置30の異常の有無を判定した判定結果を報知装置51に報知させる。報知部625は、例えば、当該判定結果を示す判定情報を報知装置51に出力することにより、当該判定結果を報知装置51に報知させる。具体的には、報知部625は、例えば、浄化装置30に異常があることを示す判定情報を報知装置51に出力することにより、報知装置51が有するディスプレイに、浄化装置30に異常があることを示す画像を表示させる。報知部625は、浄化装置30に異常があることを示す判定情報を報知装置51に出力することにより、報知装置51が有するスピーカから、浄化装置30に異常があることを示す音を出音させてもよい。
【0057】
<故障判定装置60における処理シーケンス>
図6は、故障判定装置60における処理シーケンスの例を示す図である。
図6に示す処理シーケンスは、故障判定装置60が浄化装置30の異常の有無を判定する動作を示す処理シーケンスである。
【0058】
取得部621は、エンジン10の回転数とトルクとを車両制御装置50から取得する(S11)。特定部623は、記憶部61に記憶された負荷情報マップを参照することにより、取得部621が取得したエンジン10の回転数及びトルクに対応するエンジン10の負荷の状態を特定する(S12)。
【0059】
特定部623が特定したエンジン10の負荷が低負荷である場合(S13のYES)、検出部622は、第1排圧センサ40が検出した排圧と第2排圧センサ41が検出した排圧との差圧Pを検出する(S14)。そして、判定部624は、第2差圧の合計値U2に差圧Pを加算する(S15)。特定部623が特定したエンジン10の負荷が低負荷ではない場合(S13のNO)、特定部623は、エンジン10の負荷が中負荷以上であるか否かを判定する(S16)。
【0060】
特定部623が特定したエンジン10の負荷が、中負荷以上である場合(S16のYES)、検出部622は、第1排圧センサ40が検出した排圧と第2排圧センサ41が検出した排圧との差圧Pを検出する(S17)。そして、判定部624は、第1差圧の合計値U1に差圧Pを加算する(S18)。特定部623が特定したエンジン10の負荷が低負荷ではなく、かつ中負荷未満である場合(S16のNO)、故障判定装置60は、ステップS11に戻る。
【0061】
判定部624は、合計値U1が第1合計値TH1未満、又は合計値U2が第2合計値TH2未満である場合(S19のNO)、ステップS11に戻る。判定部624は、合計値U1が第1合計値TH1以上であり、かつ合計値U2が第2合計値TH2以上である場合(S19のYES)、合計値U1に含まれる複数の差圧P(第1差圧)の平均値C1及び合計値U2に含まれる複数の差圧P(第2差圧)の平均値C2を算出する(S20)。
【0062】
続いて、判定部624は、第1差圧の平均値C1から第2差圧の平均値C2を減算した減算値が閾値TH3未満である場合(S21のYES)、浄化装置30に異常があると判定する(S22)。判定部624は、当該減算値が閾値TH3以上である場合(S21のNO)、浄化装置30に異常がないと判定する(S23)。
【0063】
<故障判定装置60による効果>
以上説明したように、故障判定装置60は、エンジン10の負荷の状態を特定する特定部623と、排気路13に設けられた浄化装置30の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出する検出部622と、エンジン10の負荷が第1状態以上である際に検出部622が検出した第1差圧と、エンジン10の負荷が、第1状態よりも小さい第2状態である際に検出部622が検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、浄化装置30に異常があると判定する判定部624と、を有する。
【0064】
故障判定装置60がこのように構成されることで、故障判定装置60は、差圧の検出に用いる第1排圧センサ40及び第2排圧センサ41の誤差の影響を受けない「第1差圧と第2差圧との差」に基づいて、浄化装置30の故障の有無を判定できる。その結果、差圧を大きくして差圧に含まれる誤差の割合が小さくなることで、エンジン10を高負荷にすることが不要になるため、故障判定装置60は、浄化装置30の異常の有無を判定できるエンジン10の負荷の範囲を広くできる。具体的には、車両Sが高速道路と異なる道路(例えば、市街地に敷設された道路)を走行している状態であっても浄化装置30の異常の有無を高い精度で判定できる。そして、車両Sが高速道路と異なる道路を走行中に故障判定装置60が浄化装置30の異常の有無を判定することで、故障判定装置60は、浄化装置30の異常の有無を判定する頻度を高めることができる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0066】
10 エンジン
11 インジェクタ
11a インジェクタ
11b インジェクタ
11c インジェクタ
11d インジェクタ
12 吸気路
13 排気路
20 クランクシャフト
21 クランクプーリ
30 浄化装置
31 触媒
32 フィルタ
33 昇温装置
40 第1排圧センサ
41 第2排圧センサ
42 回転数センサ
43 吸気圧センサ
50 車両制御装置
51 報知装置
60 故障判定装置
61 記憶部
62 制御部
621 取得部
622 検出部
623 特定部
624 判定部
625 報知部
【要約】
【課題】浄化装置の異常の有無を判定できるエンジンの負荷の範囲を広くする。
【解決手段】故障判定装置60は、エンジン10の負荷の状態を特定する特定部623と、排気路13に設けられた浄化装置30の上流側及び下流側の排気圧の差である差圧を検出する検出部622と、エンジン10の負荷が第1状態以上である際に検出部622が検出した第1差圧と、エンジン10の負荷が、第1状態よりも小さい第2状態である際に検出部622が検出した第2差圧と、の差が閾値未満である場合に、浄化装置30に異常があると判定する判定部624と、を有する。
【選択図】
図2