(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両のテールゲート構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20241210BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B60J5/10 H
(21)【出願番号】P 2023509196
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013156
(87)【国際公開番号】W WO2022202810
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2021048275
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】原田 綱太
(72)【発明者】
【氏名】菊地 剛
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-030391(JP,A)
【文献】特開2017-128296(JP,A)
【文献】特開平09-060372(JP,A)
【文献】特開2020-050312(JP,A)
【文献】特開2010-163023(JP,A)
【文献】特開2010-143536(JP,A)
【文献】特開2009-166540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部の車体パネルに設けられた開口部と、
前記開口部の下縁を形成しストライカが設けられた前記車体パネルの下縁部と、
インナパネルを含んで構成され前記開口部を開閉する跳ね上げ式のテールゲートと、
前記インナパネルに取り付けられ前記ストライカに係合されるラッチ機構と、
前記ラッチ機構が設けられる前記インナパネルの箇所を補強するラッチリンフォースと、
を備える車両のテールゲート構造であって、
前記テールゲートにより前記開口部を閉塞した状態で前記車体パネルの下縁部に近接する前記インナパネルの箇所は、前記ラッチ機構が取り付けられるベース面部と、前記ベース面部の車両後端から車両後方に至るにつれて次第に下方に変位するシール面部と、前記シール面部の車両後端から車両後方に延在する接続面部と、を備え、
前記ラッチリンフォースは、前記ベース面部に上方から結合されるリンフォース本体板部と、前記リンフォース本体板部の車両後端から車両後方に至るにつれて次第に下方に変位し前記シール面部の車両後方で前記シール面部に対向するリンフォース傾斜板部と、前記リンフォース傾斜板部の車両後端に接続され前記接続面部に上方から接合されるリンフォース後板部と、を備え、
車幅方向から見て、前記インナパネルの前記シール面部と前記ラッチリンフォースの前記リンフォース傾斜板部との間に閉塞断面構造が形成され、
前記リンフォース本体板部と前記リンフォース傾斜板部にわたって上方に凸状で車両前後方向に沿って延在する第1リンフォース側ビードが、前記ラッチリンフォースの車幅方向の中間部に、間隔をおいて複数設けられて
おり、
前記リンフォース本体板部の車幅方向の両側から上方に起立し車幅方向外側に延在するステップ板部が形成され、
前記第1リンフォース側ビードは、前記リンフォース本体板部上において前記ステップ板部に挟まれた位置に形成されている、
ことを特徴とする車両のテールゲート構造。
【請求項2】
車幅方向から見ると、前記リンフォース本体板部上において前記第1リンフォース側ビードと前記ステップ板部とは重複している、
ことを特徴とする請求項
1記載の車両のテールゲート構造。
【請求項3】
前記第1リンフォース側ビードは、前記リンフォース傾斜板部から前記リンフォース後板部の車両後端まで延在している、
ことを特徴とする請求項
1または
2記載の車両のテールゲート構造。
【請求項4】
前記リンフォース後板部が接合される前記接続面部の箇所に上方に凸状で車両前後方向に延在するインナパネル側ビードが車幅方向に間隔をおいて複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1から
3の何れか1項記載の車両のテールゲート構造。
【請求項5】
前記リンフォース後板部に、上方に凸状で車両前後方向に延在する第2リンフォース側ビードが車幅方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記インナパネル側ビードの箇所と、前記第2リンフォース側ビードを除くリンフォース後板部の箇所とが溶接により接合されている、
ことを特徴とする請求項
4記載の車両のテールゲート構造。
【請求項6】
前記第2リンフォース側ビードは、前記リンフォース後板部に形成された前記第1リンフォース側ビードの延在部分を含む、
ことを特徴とする請求項
3を引用する請求項
5記載の車両のテールゲート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のテールゲート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の後部に荷室が設けられ、荷室に対して荷物の出し入れを行なうための開口部が車両後部に設けられ、開口部を開閉する跳ね上げ式のテールゲートが設けられた車両が提供されている。
テールゲートは、インナパネルとアウタパネルとが接合されて構成されており、インナパネルには、開口部に設けられたストライカに係合されるラッチ機構が設けられると共に、ラッチ機構が取り付けられるインナパネルの箇所を補強するラッチリンフォースが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のモデルチェンジに伴ってテールゲートの仕様が変更され、ラッチ機構が取り付けられるインナパネルの箇所の近傍におけるインナパネルの車両前後方向の寸法が従来よりも大きく設定される場合がある。
この場合、ラッチ機構が取り付けられるインナパネルの箇所の寸法が大きく確保されることで、インナパネルの強度、剛性が従来に比較して低下することになり、そのため、インナパネルが変形しやすくなる。
また、インナパネルの箇所の寸法が大きく確保されることで、テールゲートの重量が従来に比較して増加し、縁石乗り上げ時にテールゲートに生じる慣性力が大きくなることからラッチ機構を介してインナパネルおよびラッチリンフォースに入力する荷重が増加する。
したがって、インナパネルがより変形しやすくなった状態で縁石乗り上げ時の荷重入力が増加することにより、従来のラッチリンフォースを用いていたのでは、インナパネルおよびラッチリンフォースの強度、剛性が不足することとなり、縁石乗り上げ時におけるインナパネルおよびラッチリンフォースの変形を抑制する上で不利がある。
そこで、ラッチ機構が取り付けられたインナパネルの箇所の近傍にラッチリンフォースとは別の補強部材を設け、縁石乗り上げ時の荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの変形を抑制することが考えられるが、その場合は、部品点数の増加を招く不利がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたもので、本発明の目的は、部品点数の増加を招くこと無く、インナパネルおよびラッチリンフォースの縁石乗り上げ時の荷重入力に対する強度、剛性の向上を図る上で有利な車両のテールゲート構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、車両後部の車体パネルに設けられた開口部と、前記開口部の下縁を形成しストライカが設けられた前記車体パネルの下縁部と、インナパネルを含んで構成され前記開口部を開閉する跳ね上げ式のテールゲートと、前記インナパネルに取り付けられ前記ストライカに係合されるラッチ機構と、前記ラッチ機構が設けられる前記インナパネルの箇所を補強するラッチリンフォースと、を備える車両のテールゲート構造であって、前記テールゲートにより前記開口部を閉塞した状態で前記車体パネルの下縁部に近接する前記インナパネルの箇所は、前記ラッチ機構が取り付けられるベース面部と、前記ベース面部の車両後端から車両後方に至るにつれて次第に下方に変位するシール面部と、前記シール面部の車両後端から車両後方に延在する接続面部とを備え、前記ラッチリンフォースは、前記ベース面部に上方から結合されるリンフォース本体板部と、前記リンフォース本体板部の車両後端から車両後方に至るにつれて次第に下方に変位し前記シール面部の車両後方で前記シール面部に対向するリンフォース傾斜板部と、前記リンフォース傾斜板部の車両後端に接続され前記接続面部に上方から接合されるリンフォース後板部とを備え、車幅方向から見て、前記インナパネルの前記シール面部と前記ラッチリンフォースの前記リンフォース傾斜板部との間に閉塞断面構造が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、ラッチリンフォースに、インナパネルのベース面部に上方から結合されるリンフォース本体板部と、インナパネルのシール面部の車両後方でシール面部に対向するリンフォース傾斜板部と、インナパネルの接続面部に上方から接合されるリンフォース後板部とを設け、車幅方向から見て、インナパネルのシール面部とラッチリンフォースのリンフォース傾斜板部との間に閉塞断面構造を形成した。
そのため、ラッチ機構が取り付けられる箇所のインナパネルおよびラッチリンフォースの強度、剛性を高める上で有利となる。
したがって、インナパネルの接続面部の車両前後方向に沿った寸法が長く設定されることで、インナパネルの強度、剛性が低下し、テールゲートの重量が増加している場合であっても、部品点数の増加を招くことなく、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの強度、剛性の向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両のテールゲート構造が適用された車両を車両後方から見た斜視図である。
【
図3】テールゲートにより後部開口部が閉塞された状態で、ラッチ機構が取り付けられたインナパネル、インナパネルに接合されたラッチリンフォース、後部開口部を形成する車体パネルの下縁部を車両後方から見た斜視図である。
【
図8】インナパネルに接合されたラッチリンフォースを車両後方の斜め下方から見た図である。
【
図9】
図8をA-A線断面で破断した断面斜視図である。
【
図10】ラッチリンフォースを車両後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の図面において、符号UPは車両上方を示し、符号FRは車両前方を示し、符号HLは車幅方向を示す。
図1に示すように、車両10の車室内の後部に荷室12が設けられ、荷室12に対して荷物の出し入れを行なうための後部開口部14が車両10の後部の車体パネル18に設けられている。
後部開口部14は、後部開口部14の上縁部にヒンジ(不図示)を介して揺動可能に支持された跳ね上げ式のテールゲート16によって開閉される。
図2に示すように、テールゲート16は、後部開口部14を閉塞した状態で荷室12側に位置するインナパネル20と、インナパネル20の外側に対向して配置されたアウタパネル22と、テールゲート16の上半部に設けられたリアウインドウガラス24と、を備えている。
テールゲート16は、リアウインドウガラス24の周囲に中空状に設けられ、アウタパネル22の外縁全周はヘミング加工によりインナパネル20の外縁全周に折り返されて連結されている。
【0009】
図4に示すように、後部開口部14の下縁は、車体パネル18の車体側下縁部18Aで形成されている。
車体側下縁部18Aは、車両前部に位置するベース面部1802と、ベース面部1802の車両後端から車両後方に至るにつれて下方に変位する傾斜面部1804と、傾斜面部1804の車両後端から車両後方に延在する接続面部1806と、を含む。
ベース面部1802には、ストライカ26が設けられる。傾斜面部1804には、後部開口部14の全周に延在するウェザーストリップ30の部分が設けられる。ウェザーストリップ30の車体後部で下方に、リアバンパ32の上部が位置している。
テールゲート16のインナパネル20に、ストライカ26に係脱するラッチ機構28が設けられている。
【0010】
図3、
図4に示すように、テールゲート16により後部開口部14を閉塞した状態で車体側下縁部18Aに近接するインナパネル20の箇所は、インナパネル本体部34と、ベース面部36と、シール面部38と、接続面部40と、ヘム面部42と、インナパネル側ビード44と、を含む。
【0011】
ベース面部36は、車体側下縁部18Aの車両前部に近接している。
ベース面部36は、テールゲート16が後部開口部14を閉塞した状態で、ほぼ水平面に沿って車幅方向に延在し、車体側下縁部18Aの車両前部に対向している。
図4に示すように、ベース面部36の車幅方向の中間部には、ラッチ機構28を配設するための矩形状のインナパネル側貫通孔H1が設けられる。ベース面部36には、ラッチ機構28が取り付けられている。
インナパネル本体部34は、ベース面部36の車両前端から起立し、アウタパネル22に対向している。
【0012】
図4に示すように、シール面部38は、ベース面部36の車両後端にインナパネル側前曲げ部3802を介して接続され、車両後方に至るにつれて次第に下方に変位する傾斜で延在している。
テールゲート16で後部開口部14を閉塞した状態で、ウェザーストリップ30がシール面部38に弾接することにより荷室12内への雨水の侵入を阻止している。
【0013】
図5に示すように、接続面部40は、シール面部38の車両後端にインナパネル側後曲げ部3804を介して接続されて車両後方に延在し、本実施の形態では、接続面部40は、車両後方に至るにつれて次第に下方に変位する傾斜で延在している。接続面部40の傾斜は、シール面部38の傾斜よりも緩やかである。
【0014】
図4に示すように、ヘム面部42は、接続面部40の車両後端から下方に延在する。アウタパネル22の縁部22Aが、ヘミング加工により折り返されてヘム面部42に接合され連結されている。
【0015】
図3、
図8に示すように、インナパネル側ビード44は、接続面部40の車幅方向の中間部に位置する部分に設けられている。
本実施の形態では、6つのインナパネル側ビード44が車幅方向に間隔をおいて、
図5に示すように接続面部40の車両前端から車両後端にわたり車両前後方向に延在して設けられる。それらインナパネル側ビード44は、上方に凸状に設けられている。
図3、
図4、
図8に示すように、ラッチ取り付け部46は、インナパネル本体部34と、ベース面部36と、シール面部38と、接続面部40と、インナパネル側ビード44と、それらの箇所にわたって取り付けられたラッチリンフォース48と、を含む。
【0016】
図3、
図4、
図8に示すように、ラッチリンフォース48は、ラッチ機構28が設けられるインナパネル20の箇所を補強する部材である。ラッチリンフォース48は、詳細には、インナパネル本体部34と、ベース面部36と、シール面部38と、接続面部40と、インナパネル側ビード44と、を補強する部材である。
図8、
図10に示すように、ラッチリンフォース48は、リンフォース本体板部50と、リンフォース前板部52と、一対のステップ板部54と、リンフォース傾斜板部56と、リンフォース後板部58と、第1リンフォース側ビード60と、第2リンフォース側ビード62と、を含む。
【0017】
図3、
図4に示すように、リンフォース本体板部50は、ベース面部36に上方から重ね合わされて結合される箇所である。
リンフォース本体板部50には、ベース面部36のインナパネル側貫通孔H1と合致する矩形状のリンフォース側貫通孔H2が設けられている。
図4に示すように、ラッチ機構28は、ストライカ26に係脱可能なラッチ28Aと、ラッチ28Aをストライカ26に係脱させる駆動機構28Bと、取り付け板28Cと、を備える。ラッチ28Aがストライカ26に係合することで、テールゲート16の閉塞状態がロックされる。
ラッチ機構28は、下方からインナパネル側貫通孔H1とリンフォース側貫通孔H2に挿入され取り付け板28Cがインナパネル側貫通孔H1の周囲のベース面部36の下面に重ね合わされた状態で、それらリンフォース本体板部50、ベース面部36、取り付け板28Cを貫通するボルトB1にナットN1が螺合することでベース面部36に取り付けられている。これによりリンフォース本体板部50はベース面部36に結合されている。
なお、ラッチ機構28の取付構造は実施の形態に限定されるものではなく、従来公知の様々な取付構造が採用可能である。
【0018】
図4、
図10に示すように、リンフォース前板部52は、リンフォース本体板部50の前端に位置している。
図10に示すように、リンフォース前板部52は、中間凸部52Aと、一対の接合部52Bと、一対の外側凸部52Cと、を備えている。
中間凸部52Aは、リンフォース前板部52の車幅方向の中間に設けられ、リンフォース本体板部50の前端中央から起立する中央板部5202と、両側の傾斜板部5204と、で平面視車両後方に凸状に設けられている。
一対の接合部52Bは、中間凸部52Aの両側のリンフォース本体板部50の前端から起立する側板部5206と、側板部5206の車幅方向外側に接続される傾斜板部5208と、を備え、側板部5206の車幅方向内側は傾斜板部5204に接続されている。側板部5206と両側の傾斜板部5204、5208とは、平面視車両前方に凸状に設けられている。
一対の外側凸部52Cは、一対の接合部52Bの傾斜板部5208にそれぞれ接続される。一対の外側凸部52Cと傾斜板部5208とは、平面視車両後方に凸状に設けられている。
そして、
図3、
図6、
図8、
図10に示すように、一対の接合部52Bがベース面部36寄りのインナパネル本体部34に車両後方から重ね合わされ、一対の接合部52Bの側板部5206が、スポット溶接によりインナパネル本体部34に接合されており、
図3、
図8、
図10において、記号*はスポット溶接の箇所を示す。
なお、
図4、
図7に示すように、インナパネル本体部34に対して中間凸部52Aおよび一対の外側凸部52Cとの間には車両前後方向に隙間が設けられている。
【0019】
図10に示すように、一対のステップ板部54はリンフォース本体板部50の車幅方向の両側に設けられている。
一対のステップ板部54は、リンフォース本体板部50の車幅方向両側から車幅方向外側に至るにつれて次第に上方に変位する傾斜部54Aと、傾斜部54Aの上端から車幅方向外側に延在する延在部54Bと、を備える。延在部54Bの車両前端は外側凸部52Cの下端に接続されている。
なお、
図7に示すように、インナパネル20のベース面部36に対してステップ板部54との間には上下方向に隙間が設けられている。
また、
図10に示すように、傾斜部54Aの車両前端5402と、リンフォース前板部52の接合部52Bの傾斜板部5208とは、リンフォース本体板部50の車両前端両側の傾斜面5002に接続されている。
【0020】
図5、
図9、
図10に示すように、リンフォース傾斜板部56は、リンフォース本体板部50およびステップ板部54の車両後端にリンフォース側前曲げ部5602を介して接続され、車両後方に至るにつれて次第に下方に変位する傾斜で延在している。
リンフォース傾斜板部56は、インナパネル20のシール面部38の車両後方でシール面部38と間隔をおいて対向している。
なお、本明細書において、リンフォース傾斜板部56とシール面部38とが対向するとは、リンフォース傾斜板部56とシール面部38とが間隔をおいて互いに向かい合っている状態を示し、リンフォース傾斜板部56とシール面部38とが平行している状態に限定されるものではない。
図5に示すように、リンフォース側前曲げ部5602は、インナパネル側前曲げ部3802とほぼ同一の高さに位置する。また、リンフォース側前曲げ部5602は、インナパネル側前曲げ部3802に対して車両後方に離間した箇所に設けられている。
【0021】
図5、
図9、
図10に示すように、リンフォース後板部58は、リンフォース傾斜板部56の車両後端にリンフォース側後曲げ部5604を介して接続され、接続面部40に上方から接合される箇所であり、本実施の形態では、リンフォース後板部58は、接続面部40に設けられたインナパネル側ビード44に上方から接合される箇所である。
【0022】
図3、
図6、
図8、
図10に示すように、第1リンフォース側ビード60は、ラッチリンフォース48の車幅方向の中間部に車幅方向に間隔をおいて複数設けられ、本実施の形態では、2つ設けられている。
第1リンフォース側ビード60は、上方に凸状を呈し、リンフォース本体板部50の車両後部からリンフォース側前曲げ部5602、リンフォース傾斜板部56、リンフォース側後曲げ部5604を通りリンフォース後板部58の後端まで車両前後方向に沿って延在している。
また、
図9、
図10に示すように、車幅方向から見ると、リンフォース本体板部50上において第1リンフォース側ビード60とステップ板部54とは重複している。詳細には、車幅方向から見ると、リンフォース本体板部50上において第1リンフォース側ビード60の車両前方の部分とステップ板部54の車両後方の部分とは重複している。
【0023】
図3、
図4、
図10に示すように、第2リンフォース側ビード62は、リンフォース後板部58に、上方に凸状で車両前後方向に延在しており、車幅方向に間隔をおいて複数設けられ、本実施の形態では、3つ設けられている。
また、
図3、
図6、
図10に示すように、第2リンフォース側ビード62は、リンフォース後板部58に形成された2つの第1リンフォース側ビード60の延在部分60Aを含む。第2リンフォース側ビード62は、合計5つ設けられている。
そして、
図3、
図8、
図10に示すように、インナパネル側ビード44と、第2リンフォース側ビード62を除くリンフォース後板部58の箇所と、が溶接により接合されている。
【0024】
したがって、
図5、
図9に示すように、ラッチリンフォース48のリンフォース側前曲げ部5602がインナパネル20のインナパネル側前曲げ部3802に対して車両後方に離間した箇所に位置し、車幅方向から見た場合に、インナパネル20のシール面部38とラッチリンフォース48のリンフォース傾斜板部56との間に上下方向に対して斜めで細長の閉塞断面構造が形成されている。
【0025】
次に作用効果について説明する。
従来、インナパネル20のシール面部38の後端に接続される接続面部40の車両前後方向の寸法は極めて短く、ラッチリンフォース48の車両後端は、インナパネル20のシール面部38までしか延在していない。
ここで、車両10のモデルチェンジに伴うテールゲート16の仕様変更により、インナパネル20の接続面部40の車両前後方向の寸法が従来に比較して長く設定された場合、インナパネル20の強度、剛性が低下して変形しやすくなり、また、テールゲート16の重量が増加する。
テールゲート16の重量が増加すると、車両10の縁石乗り上げ時に生じるテールゲート開閉方向の慣性力が大きくなり、ラッチ機構28を介してインナパネル20およびラッチリンフォース48に加わる荷重、すなわち、インナパネル20およびラッチリンフォース48を変形させる方向に入力する荷重も増加する。縁石乗り上げ時に入力する荷重は、テールゲート16の開閉時にインナパネル20およびラッチリンフォース48に入力する荷重に比較して極めて大きい。
このような荷重入力の増加に対応してインナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性を確保するためには、ラッチ機構28が取り付けられたインナパネル20の箇所の近傍にラッチリンフォース48とは別の補強部材を設けて、インナパネル20およびラッチリンフォース48の変形を抑制することが考えられるが、部品点数の増加を招く不利がある。
【0026】
そこで、本実施の形態では、ラッチリンフォース48に、ベース面部36に上方から結合されるリンフォース本体板部50と、リンフォース本体板部50の車両後端から車両後方に至るにつれて次第に下方に変位しシール面部38の車両後方でシール面部38に対向するリンフォース傾斜板部56と、リンフォース傾斜板部56の車両後端に接続され接続面部40に上方から接合されるリンフォース後板部58と、を設け、車幅方向から見て、インナパネル20のシール面部38とラッチリンフォース48のリンフォース傾斜板部56との間に閉塞断面構造を形成した。
そのため、ラッチ機構28が取り付けられる箇所のインナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性を高める上で有利となる。
また、ラッチリンフォース48のリンフォース側前曲げ部5602とインナパネル20のインナパネル側前曲げ部3802とが車両前後方向において同じ位置にある場合は、それら曲げ部5602、3802の箇所でラッチリンフォース48およびインナパネル20が変形しやすい。
これに対して本実施の形態では、ラッチリンフォース48のリンフォース側前曲げ部5602がインナパネル20のインナパネル側前曲げ部3802に対して車両後方に離間した箇所に位置し、車幅方向から見た場合に、インナパネル20のシール面部38とラッチリンフォース48のリンフォース傾斜板部56との間に閉塞断面構造が形成される。
そのため、それら2つの曲げ部5602、3802が同じ位置にありそれらシール面部38とリンフォース傾斜板部56とが重ねられる場合に比較して変形しにくく、インナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性を高め、荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース48の変形を抑制する上で有利となる。
したがって、インナパネル20の接続面部40の車両前後方向に沿った寸法が長く設定されることで、インナパネル20の強度、剛性が低下し、テールゲート16の重量が増加している場合であっても、部品点数の増加を招くことなく、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性の向上を図る上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、リンフォース本体板部50とリンフォース傾斜板部56にわたって上方に向かって凸状で車両前後方向に沿って延在する第1リンフォース側ビード60が車幅方向に間隔をおいて複数設けられている。
したがって、第1リンフォース側ビード60によりインナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性を高める上でより有利となり、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性の向上を図る上でより有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、リンフォース本体板部50の車幅方向両側にステップ板部54を設け、車幅方向から見て、第1リンフォース側ビード60とステップ板部54とをリンフォース本体板部50上において重複させている。詳細には第1リンフォース側ビード60の車両前方の部分とステップ板部54の車両後方の部分とをリンフォース本体板部50上において重複させており、ラッチリンフォース48の前端から後端まで途切れることなく剛性が確保されている。
したがって、インナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性を高め、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性の向上を図る上でより有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、第1リンフォース側ビード60は、リンフォース傾斜板部56を通りリンフォース後板部58の車両後端まで延在している。
したがって、第1リンフォース側ビード60により、インナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性を高め、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース48の強度、剛性の向上を図る上でより有利となる。
【0030】
また、一般的にラッチリンフォース48の板厚は、ラッチリンフォース48が重ね合わされて接合されるインナパネル20の箇所の板厚に比較して大きな寸法で形成されており、ラッチリンフォース48の剛性とインナパネル20の剛性との間で剛性差が生じる。
このような剛性差が大きくなるほど、テールゲート16の開閉時にラッチ機構28を介して入力する荷重に対するラッチリンフォース48とインナパネル20との溶接箇所の耐久強度の低下が懸念される。
これに対して本実施の形態では、リンフォース後板部58が重ね合わされるインナパネル20の箇所(接続面部40)に、上方に凸状で車両前後方向に延在するインナパネル側ビード44が車幅方向に間隔をおいて複数設けられているので、リンフォース後板部58と、このリンフォース後板部58が重ね合わされて溶接されるインナパネル20の箇所の剛性差を低減させ、ラッチリンフォース48とインナパネル20との溶接箇所の耐久強度を高める上で有利となる。
また、溶接箇所の剛性を高め、テールゲート16の開閉時の荷重入力に対する溶接箇所の耐久強度を高める上で有利となることは無論のこと、縁石乗り上げ時の荷重入力に対するインナパネル20の変形を抑制する上でも有利となる。
【0031】
本出願は、2021年3月23日出願の日本特許出願2021-048275に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0032】
10 車両
12 荷室
14 後部開口部
16 テールゲート
18 車体パネル
18A 車体側下縁部
20 インナパネル
22 アウタパネル
26 ストライカ
28 ラッチ機構
34 インナパネル本体部
36 ベース面部
38 シール面部
3802 インナパネル側前曲げ部
40 接続面部
42 ヘム面部
44 インナパネル側ビード
46 ラッチ取り付け部
48 ラッチリンフォース
50 リンフォース本体板部
52 リンフォース前板部
54 ステップ板部
56 リンフォース傾斜板部
5602 リンフォース側前曲げ部
58 リンフォース後板部
60 第1リンフォース側ビード
60A 延在部分
62 第2リンフォース側ビード