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特許7601209電子通貨システム、電子通貨価値決定装置、方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電子通貨システム、電子通貨価値決定装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20241210BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023510008
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013808
(87)【国際公開番号】W WO2022208712
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】辻 佑機
(72)【発明者】
【氏名】知久 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】福士 直子
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽子
(72)【発明者】
【氏名】尾形 一気
(72)【発明者】
【氏名】小林 航生
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慶
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-033864(JP,A)
【文献】特開2016-071652(JP,A)
【文献】特開2017-215792(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測する混雑度計測手段と、
前記混雑度計測手段で計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する価値決定手段とを備え
前記電子通貨は、貨幣に換算可能なポイントとして発行されており、
前記価値決定手段は、
単位ポイントあたりの貨幣換算レートを、前記電子通貨の利用価値として決定し、
前記混雑度が第1のしきい値より高い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が前記第1のしきい値より低い場合の貨幣換算レートより低下させ、
前記エリア内に存在する施設の特性に応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる、電子通貨価値決定装置。
【請求項2】
価値決定手段は、前記エリア内に存在する施設が、屋外の施設であるか否か、飲食を伴う施設であるか否か、及び客同士が会話する施設であるか否かの少なくとも1つに応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる請求項に記載の電子通貨価値決定装置。
【請求項3】
前記価値決定手段は、前記エリア内に存在する施設が感染症対策が取られている施設であるか否に応じて、及び/又は前記エリア内に存在する施設における感染症対策の度合いに応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる請求項1又は2に記載の電子通貨価値決定装置。
【請求項4】
前記価値決定手段は、前記混雑度が第2のしきい値より低い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が第2のしきい値より高い場合の貨幣換算レートより増加させる請求項から何れか1項に記載の電子通貨価値決定装置。
【請求項5】
ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測する混雑度計測手段と、前記混雑度計測手段で計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する価値決定手段とを有する電子通貨価値決定装置と、
前記ユーザに、前記電子通貨価値決定装置が決定した利用価値で前記電子通貨を使用させる決済サーバとを備え
前記電子通貨は、貨幣に換算可能なポイントとして発行されており、
前記価値決定手段は、
単位ポイントあたりの貨幣換算レートを、前記電子通貨の利用価値として決定し、
前記混雑度が第1のしきい値より高い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が前記第1のしきい値より低い場合の貨幣換算レートより低下させ、
前記エリア内に存在する施設の特性に応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる、電子通貨システム。
【請求項6】
コンピュータが、ユーザに対して、貨幣に換算可能なポイントとして発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測し、
前記コンピュータが、前記計測された混雑度に基づいて、単位ポイントあたりの貨幣換算レートを、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値として決定し、
前記コンピュータが、前記混雑度が第1のしきい値より高い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が前記第1のしきい値より低い場合の貨幣換算レートより低下させ、
前記コンピュータが、前記エリア内に存在する施設の特性に応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる電子通貨価値決定方法。
【請求項7】
ユーザに対して、貨幣に換算可能なポイントとして発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測し、
前記計測された混雑度に基づいて、単位ポイントあたりの貨幣換算レートを、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値として決定し、
前記混雑度が第1のしきい値より高い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が前記第1のしきい値より低い場合の貨幣換算レートより低下させ、
前記エリア内に存在する施設の特性に応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子通貨システム、電子通貨価値決定装置、方法、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子的に決済が可能な電子通貨システムが知られている。電子通貨システムにおいて、電子通貨は、例えば貨幣価値に換算可能なポイントとして与えられる。電子通貨が使用可能な地域を限定し、地域内で使用できる電子通貨(地域通貨)を地域活性化に利用する取り組みも存在する。
【0003】
関連技術として、特許文献1は、電子マネーサーバを開示する。電子マネーサーバは、送金元の口座から送金先口座へ、電子マネー(バリュー)を送金する。電子マネーサーバは、電子バリューを送金するとき、第三者が適用条件を指定した電子チケットを、送金先ユーザに関連付ける。電子チケットは電子ギフトであり、適用条件は、利用可能な地域、利用可能な時期、及び利用可能な時間帯を含む。電子マネーサーバは、送信先口座のユーザが電子バリューを利用した場合で、かつ上記適用条件が満たされている場合、利用額の少なくとも一部を上記第三者に負担させるための処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/103046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、送金先のユーザは、第三者が指定した適用条件の範囲において、電子ギフト(バリュー)を使用できる。例えば、飲食店の場合、昼食時間帯以外の時間帯のみ使用可能という条件が適用条件として設定される。その場合、電子ギフトを使用したいユーザは、混雑する昼食時間帯を避けて飲食店に来店する。このため、そのような適用条件が設定された電子ギフトは、飲食店の効率的な経営に貢献することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、店舗の実際の混雑状況は考慮されない。特許文献1では、適用条件として指定された利用可能時間帯であれば、実際には店舗が混んでいる場合でも、ユーザは電子ギフトを使用できてしまい、混雑状況を緩和できない場合がある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑み、混雑状況の緩和を可能にする電子通貨システム、電子通貨価値決定装置、方法、及びコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、第1の態様として、電子通貨価値決定装置を提供する。電子通貨価値決定装置は、ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測する混雑度計測手段と、前記混雑度計測手段で計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する価値決定手段とを備える。
【0009】
本開示は、第2の態様として、電子通貨システムを提供する。電子通貨システムは、電子通貨価値決定装置と、決済サーバとを有する。電子通貨価値決定装置は、ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測する混雑度計測手段と、前記混雑度計測手段で計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する価値決定手段とを有する。決済サーバは、前記ユーザに、電子通貨価値決定装置が決定した利用価値で前記電子通貨を使用させる。
【0010】
本開示は、第3の態様として、電子通貨価値決定方法を提供する。電子通貨価値決定方法は、ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測し、前記計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定することを含む。
【0011】
本開示は、第4の態様として、コンピュータ可読媒体を提供する。コンピュータ可読媒体は、ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測し、前記計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納する。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係るは、電子通貨システム、電子通貨価値決定装置、方法、及びコンピュータ可読媒体は、ユーザが混雑を避けて電子通貨を利用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1実施形態に係る電子通貨システムを示すブロック図。
図2】電子通貨が利用可能な地域を示す図。
図3】電子通貨価値決定装置における動作手順を示すフローチャート。
図4】本開示の第2実施形態に係る電子通貨システムで用いられる電子通貨価値決定装置を示すブロック図。
図5】特性情報記憶部に記憶される特性情報の具体例を示す図。
図6】コンピュータ装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る電子通貨システムを示す。電子通貨システム100は、電子通貨価値決定装置110と、決済サーバ120とを有する。電子通貨価値決定装置110は、混雑度計測部(混雑度計測手段)111、及び価値決定部(価値決定手段)112を有する。電子通貨価値決定装置110は、例えば、プロセッサとメモリとを有するコンピュータ装置(サーバ装置)として構成される。電子通貨価値決定装置110の各部の機能の少なくとも一部は、プロセッサがメモリから読み出したプログラムに従って動作することで実現され得る。
【0015】
本実施形態において、ユーザには、電子通貨が発行される。電子通貨は、所定の地域で使用可能な地域通貨であってよい。電子通貨は、例えば貨幣価値に換算可能なポイントとして発行される。
【0016】
混雑度計測部111は、上記所定の地域に含まれる複数のエリア(サブエリア)のそれぞれにおける混雑度を計測する。混雑度計測部111は、ユーザが所持する端末装置から送信されたビーコンなどの信号を複数のエリアのそれぞれにおいて集計し、各エリアの混雑度を計測してもよい。あるいは、混雑度計測部111は、各エリアに設置されたカメラの映像に対して映像解析を行い、各エリアの混雑度を計測してもよい。混雑度の計測手法は任意であり、特に限定されない。混雑度計測部111は、例えば周期的に混雑度を計測し、各エリアの混雑度を周期的にアップデートする。
【0017】
価値決定部112は、混雑度計測部111で計測された混雑度に基づいて、各エリア内における電子通貨の利用価値を決定する。価値決定部112は、例えば、ポイントとして発行される電子通貨の、単位ポイントあたりの貨幣換算レートを、電子通貨の利用価値として決定する。価値決定部112は、例えば、各エリアの混雑度を複数のレベルに分類する。例えば、価値決定部112は、各エリアの混雑度を、混雑度「高」、混雑度「中」、及び混雑度「低」の3つのレベルに分類する。価値決定部112は、分類した混雑度のレベルに応じて、電子通貨の利用価値を決定してもよい。
【0018】
価値決定部112は、例えば、混雑度が第1のしきい値より高いか否かを判断する。価値決定部112は、あるエリアの混雑度が第1のしきい値より高い場合、そのエリアの混雑度を「高」に分類する。価値決定部112は、例えば、混雑度が第2のしきい値より低いか否かを判断する。第2のしきい値は、第1のしきい値よりも低い混雑度を示す。価値決定部112は、あるエリアの混雑度が第2のしきい値より低い場合、そのエリアの混雑度を「低」に分類する。価値決定部112は、あるエリアの混雑度が第1のしきい値以下で、かつ混雑度が第2のしきい値以上の場合、そのエリアの混雑度を「中」に分類する。
【0019】
価値決定部112は、混雑度が高いエリアで電子通貨が使用される場合、1ポイントあたりの貨幣価値を、混雑していない場合に比べて低下させてもよい。価値決定部112は、混雑度が「高」に分類されるエリアにおいて、電子通貨の貨幣換算レートを、混雑度が「中」に分類されるエリアにおける貨幣換算レートより低下させる。その場合、混雑しているエリアにおいて、電子通貨の利用価値は、混雑していないエリアにおける利用価値より低下する。
【0020】
電子通貨の利用価値を低下させることは、電子通貨の利用を不可にすることを含む。価値決定部112は、混雑度が「高」に分類される場合、そのエリアにおける電子通貨の貨幣換算レートをゼロにしてもよい。その場合、ユーザは、混雑しているエリアにおいて、電子通貨を使用することができない。その結果、ユーザが、混雑度が高いエリアから混雑度が低いエリアに移動して電子通貨を使用することが期待できる。
【0021】
上記とは逆に、価値決定部112は、混雑度が低いエリアで電子通貨が使用される場合、1ポイント当たりの貨幣価値を、混雑度が中程度の場合に比べて増加させてもよい。価値決定部112は、混雑度が「低」に分類されるエリアにおいて、電子通貨の貨幣換算レートを、混雑度が「中」に分類されるエリアにおける貨幣換算レートより増加させる。その場合、人が少ないエリアにおいて、電子通貨の利用価値は、混雑度が「中」に分類されるエリアにおける利用価値より増加する。その結果、ユーザが、混雑度が低いエリアに移動して電子通貨を使用することが期待できる。
【0022】
決済サーバ120は、ユーザに、電子通貨価値決定装置110が決定した利用価値で、電子通貨を使用させる。決済サーバ120は、混雑度に応じてエリアごとに決定された電子通貨の利用価値で、ユーザに電子通貨を使用させる。決済サーバ120は、例えば各ユーザの電子通貨のポイントを管理しており、店舗に設置されたPOS(Point of sale system)端末と連動して、決定された電子通貨の利用価値で、ユーザに電子通貨を使用させる。
【0023】
図2は、電子通貨が利用可能な地域を示す。ここでは、ユーザが電子通貨を利用可能な地域として、エリアA1-A12を含む地域を考える。混雑度計測部111は、エリアA1-A12のそれぞれについて、混雑度を計測する。図2において、エリアA1、A2及びA11は、混雑度が「高」に分類されるエリアであるとする。また、エリアA9及び10は、混雑度が「低」に分類されるエリアであるとする。エリアA3-A8、及びA12は、混雑度が「中」に分類されるエリアであるとする。
【0024】
価値決定部112は、混雑度が「高」に分類されるエリアA1、A2及びA11において、電子通貨の利用価値を、通常時の利用価値に比べて低下させる。価値決定部112は、混雑度が「中」に分類されるエリアA3-A8、A11、及びA12において、電子通貨の利用価値を、通常時の利用価値から変更しない。価値決定部112は、混雑度が「低」に分類されるエリアA91及びA10において、電子通貨の利用価値を、通常時の利用価値に比べて増加させる。価値決定部112は、決定した各エリアにおける電子通貨の利用価値を、ユーザが所持する端末装置に送信してもよい。あるいは、価値決定部112は、決定した各エリアにおける電子通貨の利用価値を、webページなどにおいて公開してもよい。
【0025】
例えば、エリアA1にいるユーザは、エリアA1において、電子通貨を、通常時の利用価値より低い利用価値でしか利用できないか、或いは電子通貨が使用できない。その場合、ユーザは、自発的に、エリアA1から、電子通貨を通常時の利用価値で利用できる他のエリア、例えばエリアA5に移動する。ユーザは、移動先のエリアA5において、通常時の利用価値で電子通貨を利用できる。ユーザが混雑度が「低」に分類されるエリアA9まで移動した場合、ユーザは、通常時の利用価値よりも高い利用価値で、電子通貨を利用することができる。仮に、エリアA1の混雑度が低下し、エリアA1の混雑度が「中」になった場合、ユーザは、エリアA1において、通常時の利用価値で電子通貨を利用できる。
【0026】
次いで、動作手順を説明する。図3は、電子通貨価値決定装置110における動作手順(電子通貨価値決定方法)を示す。混雑度計測部111は、各エリアにおける混雑度を計測する(ステップA1)。混雑度計測部111は、各エリアについて、例えば単位面積あたりの人の数を、混雑度を示す指標として計測する。価値決定部112は、計測された混雑度に基づいて、各エリアにおける電子通貨の利用価値を決定する(ステップA2)。価値決定部112は、例えば混雑しているエリアにおける電子通貨の利用価値を、混雑していないエリアにおける電子通貨の利用価値よりも低下させる。
【0027】
本実施形態では、価値決定部112は、混雑度計測部111が計測した混雑度に応じて、電子通貨価値の利用価値を決定する。別の言い方をすると、電子通貨価値決定装置110は、各エリアの混雑度に連動して、各エリアにおける電子通貨の利用価値を決定する。このようにすることで、本実施形態は、ユーザを、電子通貨の利用価値が低いエリアから、電子通貨の利用価値が低くないエリアに誘導できる。従って、本実施形態は、ユーザが混雑を避けて電子通貨を利用すること可能にする。
【0028】
続いて、本開示の第2実施形態を説明する。図4は、本開示の第2実施形態に係る電子通貨システムで用いられる電子通貨価値決定装置を示す。本実施形態において、電子通貨価値決定装置110aは、図1に示される第1実施形態に係る電子通貨価値決定装置110の構成要素に加えて、施設特性取得部113を有する。
【0029】
施設特性取得部113は、特性情報記憶部115から、各エリア内に存在する施設の特性情報を取得する。本実施形態においては、各エリアに存在する店舗を、施設の一例として説明する。特性情報記憶部115は、各店舗の特性情報を記憶する。特性情報は、例えば、店舗が屋外の店舗であるか否かを示す情報、飲食を伴う店舗であるか否かを示す情報、及び客同士が会話する店舗であるか否かを示す情報の少なくとも1つを含む。特性情報は、店舗が感染症対策が取られている店舗であるか否を示す情報を含んでもよい。特性情報は、店舗における感染症対策の度合いを示す情報を含んでいてもよい。特性情報は、業種を示す情報を含んでもよい。特性情報は、電子通貨が使用される地域において、自治体や特定の団体から認定を受けた特定の店舗であるか否かを示す情報を含んでいてもよい。
【0030】
本実施形態において、価値決定部112は、混雑度計測部111が計測した混雑度に加えて、施設特性取得部113が取得した特性情報を用いて、電子通貨の利用価値を決定する。価値決定部112は、例えば、エリア内に存在する店舗の特性に応じて、エリア内の複数の店舗間で、混雑度の分類で使用される第1のしきい値を変化させてもよい。価値決定部112は、例えば、店舗が屋外の店舗であるか否か、飲食を伴う店舗であるか否か、及び客同士が会話する店舗であるか否かの少なくとも1つに基づいて、店舗ごとに第1のしきい値を決定してもよい。価値決定部112は、店舗が感染症対策が取られている店舗であるか否、及び/又は、店舗における感染症対策の度合いに応じて、第1のしきい値を決定してもよい。
【0031】
上記の場合、第1のしきい値が変化することで、同じ混雑度に対し、ある特性の店舗は混雑度「高」に分類されるのに対し、別の特性の店舗は混雑度「中」に分類されることがあり得る。価値決定部112は、混雑度「高」の分類の基準として使用される第1のしきい値を店舗の特性に応じて変化させることで、ある混雑度のエリアにおいて、店舗の特性に応じて、電子通貨の利用価値を変化させることができる。価値決定部112は、店舗が自治体などから認定を受けた特定の店舗である場合、混雑度が高い場合でも、電子通貨の利用価値を低下させないこととしてもよい。価値決定部112は、店舗の特性に応じて、混雑度「低」の分類の基準として使用される第2のしきい値を変化させてもよい。
【0032】
図5は、特性情報記憶部115に記憶される特性情報の具体例を示す。この例では、特性情報は、店舗ごとに、屋外/屋内の種別、飲食の有無、客同士の会話の有無、感染多少対策の有無、及び特定店舗と認定されているか否かを含む。価値決定部112は、特性情報における各項目の組み合わせに応じて、第1のしきい値を決定してもよい。
【0033】
価値決定部112は、例えば、店舗の特性から、混雑がある程度許容される店舗については、第1のしきい値を、比較的低めの値に決定する。例えば、価値決定部112は、屋内の店舗、飲食を伴う店舗、客同士が会話する店舗、及び感染症対策が取られてない店舗については、第1のしきい値を、比較的低めの値に決定する。一方、価値決定部112は、屋外の店舗、飲食を共な合わない店舗、客同士が会話しない店舗、及び感染症対策が取られている店舗については、第1のしきい値を、比較的大きな値に決定する。
【0034】
例えば、図5の例では、店舗A及び店舗Bは、屋内、飲食を伴う、及び客同士が会話するという特性を有する。また、店舗Aは感染症対策が取られてないという特性を有し、店舗Bは感染症対策が取られているという特性を有する。その場合、価値決定部112は、店舗Aの混雑度を分類する第1のしきい値を、店舗Bの混雑度を分類する第1のしきい値より、低い値に決定する。その場合、店舗Aの混雑度と店舗Bの混雑度とが同じ場合でも、店舗Aの混雑度は「高」に分類され、店舗Bの混雑度は「中」に分類される場合がある。この場合、価値決定部112は、店舗Aについては電子通貨の利用価値を低下させ、店舗Bについては電子通貨の利用価値を通常の利用価値とすることができる。
【0035】
本実施形態では、価値決定部112は、施設特性取得部113が取得した特性情報を用いて、電子通貨価値の利用価値を決定する。本実施形態では、混雑度だけでなく、店舗の特性を考慮して、電子通貨の利用価値を決定できる。価値決定部112は、例えば、店舗の特性に応じて第1のしきい値を変化することで、あるエリアにおいて、屋外の店舗は混雑度を「中」に分類し、屋内の店舗の混雑度を「高」に分類する。その場合、そのエリアにおいて、屋内の店舗の電子通貨の利用価値が低下する。本実施形態は、店舗の特性に応じて電子通貨の利用価値を変化させることで、例えば、屋外の店舗、或いは感染症対策が取られている店舗にユーザを誘導できる。
【0036】
上記各実施形態では、価値決定部112は、混雑度、及び特性情報に応じて電子通貨の利用価値を決定する例が説明された。上記各実施形態において、価値決定部112は、電子通貨を使用する人の属性に応じて、電子通貨の利用価値を決定してもよい。例えば、人の属性は、電子通貨が使用できる地域に住む住民、観光客、性別、及び年齢層を含む。価値決定部112は、例えば、地域に住む住民については、混雑度が高い場合でも利用価値を低下させず、観光客については利用価値を低下させることとしてもよい。あるいは、価値決定部112は、年齢層が高い人(老人)については混雑度が高い場合でも利用価値を低下させず、若年層については利用価値を低下させることとしてもよい。
【0037】
なお、上記各実施形態では、電子通貨が使用可能な施設が店舗である例を説明したが、本開示はこれには限定されない。本開示は、店舗に限られず、電子通貨が利用可能な他の施設にも適用できる。例えば、本開示は、電子通貨を利用して入場可能な公園、美術館、及び博物館など施設の利用に適用されてもよい。または、本開示は、電子通貨を利用可能な映画館やスポーツジムなどの施設にも適用できる。この場合でも、価値決定部112は、施設の特性に応じて、混雑度を分類する場合に使用されるしきい値(第1のしきい値、及び/又は第2のしきい値)を決定してもよい。
【0038】
本開示において、電子通貨価値決定装置110は、コンピュータ装置(サーバ装置)として構成され得る。図6は、電子通貨価値決定装置110として用いられ得るコンピュータ装置の構成例を示す。コンピュータ装置500は、制御部(CPU:Central Processing Unit)510、記憶部520、ROM(Read Only Memory)530、RAM(Random Access Memory)540、通信インタフェース(IF:Interface)550、及びユーザインタフェース560を有する。
【0039】
通信インタフェース550は、有線通信手段又は無線通信手段などを介して、コンピュータ装置500と通信ネットワークとを接続するためのインタフェースである。ユーザインタフェース560は、例えばディスプレイなどの表示部を含む。また、ユーザインタフェース560は、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどの入力部を含む。
【0040】
記憶部520は、各種のデータを保持できる補助記憶装置である。記憶部520は、必ずしもコンピュータ装置500の一部である必要はなく、外部記憶装置であってもよいし、ネットワークを介してコンピュータ装置500に接続されたクラウドストレージであってもよい。
【0041】
ROM530は、不揮発性の記憶装置である。ROM530には、例えば比較的容量が少ないフラッシュメモリなどの半導体記憶装置が用いられる。CPU510が実行するプログラムは、記憶部520又はROM530に格納され得る。記憶部520又はROM530は、電子通貨価値決定装置110内の各部の機能を実現するための各種プログラムを記憶する。
【0042】
上記プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータ装置500に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光ディスク媒体、及び半導体メモリを含む。磁気記録媒体は、例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、又はハードディスクなどの記録媒体を含む。光磁気記録媒体は、例えば光磁気ディスクなどの記録媒体を含む。光ディスク媒体は、CD(compact disc)、又はDVD(digital versatile disk)などのディスク媒体を含む。半導体メモリは、マスクROM、PROM(programmable ROM)、EPROM(erasable PROM)、フラッシュROM、又はRAMなどのメモリを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体を用いてコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバなどの有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0043】
RAM540は、揮発性の記憶装置である。RAM540には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)などの各種半導体メモリデバイスが用いられる。RAM540は、データなどを一時的に格納する内部バッファとして用いられ得る。CPU510は、記憶部520又はROM530に格納されたプログラムをRAM540に展開し、実行する。CPU510がプログラムを実行することで、電子通貨価値決定装置110内の各部の機能が実現され得る。CPU510は、データなどを一時的に格納できる内部バッファを有してもよい。
【0044】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に対して変更や修正を加えたものも、本開示に含まれる。
【0045】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0046】
[付記1]
ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測する混雑度計測手段と、
前記混雑度計測手段で計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する価値決定手段とを備える電子通貨価値決定装置。
【0047】
[付記2]
前記電子通貨は、貨幣に換算可能なポイントとして発行されており、
前記価値決定手段は、単位ポイントあたりの貨幣換算レートを、前記電子通貨の利用価値として決定する付記1に記載の電子通貨価値決定装置。
【0048】
[付記3]
前記価値決定手段は、前記混雑度が第1のしきい値より高い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が前記第1のしきい値より低い場合の貨幣換算レートより低下させる付記2に記載の電子通貨価値決定装置。
【0049】
[付記4]
前記価値決定手段は、前記混雑度が前記第1のしきい値より高い場合、前記貨幣換算レートをゼロにする付記3に記載の電子通貨価値決定装置。
【0050】
[付記5]
前記価値決定手段は、前記エリア内に存在する施設の特性に応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる付記3又は4に記載の電子通貨価値決定装置。
【0051】
[付記6]
価値決定手段は、前記エリア内に存在する施設が、屋外の施設であるか否か、飲食を伴う施設であるか否か、及び客同士が会話する施設であるか否かの少なくとも1つに応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる付記3から5何れか1つに記載の電子通貨価値決定装置。
【0052】
[付記7]
前記価値決定手段は、前記エリア内に存在する施設が感染症対策が取られている施設であるか否に応じて、及び/又は前記エリア内に存在する施設における感染症対策の度合いに応じて、前記エリア内の複数の施設間で前記第1のしきい値を変化させる付記3から6何れか1つに記載の電子通貨価値決定装置。
【0053】
[付記8]
前記価値決定手段は、前記混雑度が第2のしきい値より低い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が第2のしきい値より高い場合の貨幣換算レートより増加させる付記2から7何れか1つに記載の電子通貨価値決定装置。
【0054】
[付記9]
前記価値決定手段は、更に、地域において認定を受けた特定の施設であるか否かに応じて、前記特定の施設における前記電子通貨の利用価値を決定する付記1から8何れか1つに記載の電子通貨価値決定装置。
【0055】
[付記10]
前記価値決定手段は、更に、前記電子通貨を使用する人の属性に応じて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する付記1から9何れか1つに記載の電子通貨価値決定装置。
【0056】
[付記11]
ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測する混雑度計測手段と、前記混雑度計測手段で計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する価値決定手段とを有する電子通貨価値決定装置と、
前記ユーザに、前記電子通貨価値決定装置が決定した利用価値で前記電子通貨を使用させる決済サーバとを備える電子通貨システム。
【0057】
[付記12]
前記電子通貨は、貨幣に換算可能なポイントとして発行されており、
前記価値決定手段は、単位ポイントあたりの貨幣換算レートを、前記電子通貨の利用価値として決定する付記11に記載の電子通貨システム。
【0058】
[付記13]
前記価値決定手段は、前記混雑度が第1のしきい値より高い場合、前記貨幣換算レートを、混雑度が第1のしきい値より低い場合の貨幣換算レートより低下させる付記12に記載の電子通貨システム。
【0059】
[付記14]
ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測し、
前記計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する電子通貨価値決定方法。
【0060】
[付記15]
ユーザに対して発行された電子通貨が使用可能な複数のエリアのそれぞれにおける混雑度を計測し、
前記計測された混雑度に基づいて、前記エリア内における前記電子通貨の利用価値を決定する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0061】
100:電子通貨システム
111:混雑度計測部
112:価値決定部
113:施設特性取得部
115:特性情報記憶部
120:決済サーバ
500:コンピュータ装置
510:CPU
520:記憶部
530:ROM
540:RAM
550:通信インタフェース
560:ユーザインタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6