(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】共振装置の製造方法、及び、共振装置
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20241210BHJP
H03H 9/24 20060101ALI20241210BHJP
H03H 3/007 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03H9/24 B
H03H3/007 M
(21)【出願番号】P 2023510201
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039315
(87)【国際公開番号】W WO2022208959
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2021059090
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】福光 政和
(72)【発明者】
【氏名】矢谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】河合 良太
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 史也
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-147666(JP,A)
【文献】特開2016-149599(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/02
H03H 9/24
H03H 3/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振子と前記共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋とを有する共振装置の製造方法であって、
前記共振子の振動空間を構成する凹部を前記上蓋及び前記下蓋の少なくとも一方の対象物に形成する工程を含み、
前記対象物に前記凹部を形成する工程は、
枠体状をなす周縁部と、前記周縁部から前記周縁部の内側に向けて延びるストッパー形成部とを有するマスクにより前記対象物を被覆した状態で、等方性エッチングにより前記対象物をエッチングする第1工程と、
前記第1工程において等方性エッチングによりエッチングされた前記対象物を、前記マスクを被覆した状態で異方性エッチングによりエッチングして、前記対象物の平面視において、前記凹部の底面において前記ストッパー形成部に重なる位置に、前記凹部の底面に対する前記共振子の衝突を規制するストッパー部を形成する第2工程と、
を含む、
共振装置の製造方法。
【請求項2】
前記マスクは、前記ストッパー形成部に連結され、前記対象物の平面視において前記ストッパー形成部よりも面積の大きいピラー形成部をさらに有する、
請求項1に記載の共振装置の製造方法。
【請求項3】
前記ストッパー形成部は、前記マスクの前記周縁部から一方向に延びており、
前記対象物の平面視において、前記ストッパー形成部の長手方向と交差する幅方向における前記ピラー形成部の寸法は、同方向における前記ストッパー形成部の寸法よりも大きい、
請求項2に記載の共振装置の製造方法。
【請求項4】
前記ストッパー形成部は、メッシュ状をなしている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の共振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振装置の製造方法、及び、共振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器において計時機能を実現するためのデバイスとして、圧電振動子等の共振子が上蓋及び下蓋により挟まれ、上蓋及び下蓋の各々に形成された凹部により共振子の振動空間が構成された共振装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上蓋及び下蓋の各々の凹部がエッチングより形成された共振装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、上蓋に対して上方から衝撃が加わると、共振子が大きく湾曲して下蓋の凹部の底部に衝突するまで変位することで、共振子が破損するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、共振子の破損を抑制することができる共振装置の製造方法及び共振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る共振装置の製造方法は、共振子と前記共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋とを有する共振装置の製造方法であって、共振子の振動空間を構成する凹部を上蓋及び下蓋の少なくとも一方の対象物に形成する工程を含み、対象物に凹部を形成する工程は、枠体状をなす周縁部と、周縁部から周縁部の内側に向けて延びるストッパー形成部とを有するマスクにより対象物を被覆した状態で、等方性エッチングにより対象物をエッチングする第1工程と、第1工程において等方性エッチングによりエッチングされた対象物を、マスクを被覆した状態で異方性エッチングによりエッチングして、対象物の平面視において、凹部の底面においてストッパー形成部に重なる位置に、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するストッパー部を形成する第2工程と、を含む。
【0008】
本発明の一側面に係る共振装置の製造方法は、共振子と共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋とを有する共振装置の製造方法であって、共振子の振動空間を構成する凹部を上蓋及び下蓋の少なくとも一方の対象物に形成する工程は、ピラー形成部を有するマスクにより被覆した対象物を等方性エッチングによりエッチングする第1工程と、第1工程において等方性エッチングによりエッチングされた対象物を、マスクを被覆した状態で異方性エッチングによりエッチングして、対象物の平面視において、凹部の底面においてピラー形成部に重なる位置に、凹部の底面に向けて次第に幅広となるテーパ部であって、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するテーパ部を有するピラー部を形成する第2工程とを含む。
【0009】
本発明の一側面に係る共振装置は、共振子と、共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋と、を備え、上蓋及び下蓋の少なくとも一方は、共振子の振動空間を構成する凹部を有し、凹部の底面には、凹部の内側面から延び、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するストッパー部が形成されている。
【0010】
本発明の一側面に係る共振装置は、共振子と、共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋と、を備え、上蓋及び下蓋の少なくとも一方は、共振子の振動空間を構成する凹部を有し、凹部の底面には、凹部の底面に向けて次第に幅広となるテーパ部であって、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するテーパ部を有するピラー部が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、共振子の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る共振装置の外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る共振装置の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【
図6A】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図6B】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図7A】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図7B】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図8A】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図8B】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図9A】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図9B】第1実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図10A】第1実施形態に係る共振装置の動作を示す図である。
【
図10B】第1実施形態に係る共振装置の動作を示す図である。
【
図11A】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図11B】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図12A】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図12B】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図13A】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図13B】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図14A】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図14B】第2実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図15】第3実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図16】第3実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図17】第3実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図18】第3実施形態に係る共振装置による処理を示す図である。
【
図19】第3実施形態に係る共振装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、添付の図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る共振装置1の外観を概略的に示す斜視図である。また、
図2は、本発明の第1実施形態に係る共振装置1の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【0014】
共振装置1は、共振子10と、上蓋30と、下蓋20とを備えている。上蓋30および下蓋20は、共振子10を挟んで互いに対向するように設けられている。すなわち、共振装置1は、下蓋20と、共振子10と、上蓋30とがこの順で積層されて構成されている。
【0015】
共振子10と下蓋20とが接合され、かつ、共振子10と上蓋30とが接合されることで、共振子10が封止されている。共振子10、下蓋20、および上蓋30の各々は、Si基板を用いて形成されている。共振子10、下蓋20、および上蓋30は、Si基板同士が互いに接合されている。共振子10および下蓋20は、SOI基板を用いて形成されてもよい。
【0016】
共振子10は、MEMS技術を用いて製造されるMEMS共振子である。なお、本実施形態においては、共振子10はシリコン基板を用いて形成されるものを例として説明する。以下、共振装置1の各構成について詳細に説明する。
【0017】
(1.上蓋30)
上蓋30は、底板32と、側壁33とを備えている。底板32は、矩形板状をなしており、XY平面に沿って設けられている。側壁33は、底板32の周縁部からZ軸方向(すなわち、上蓋30と共振子10との積層方向)に延びている。上蓋30には、底板32の表面と側壁33の内面とによって形成される凹部31が設けられている。凹部31は、上蓋30における共振子10と対向する面に設けられている。凹部31は、共振子10の振動空間の一部を形成している。
【0018】
(2.下蓋20)
下蓋20は、底板22と、側壁23とを備えている。底板22は、矩形板状をなしており、XY平面に沿って設けられている。側壁23は、底板22の周縁部からZ軸方向(すなわち、下蓋20と共振子10との積層方向)に延びている。下蓋20には、底板22の表面と側壁23の内面とによって形成される凹部21が設けられている。凹部21は、下蓋20における共振子10と対向する面に設けられている。凹部21は、共振子10の振動空間の一部を形成している。共振子10の振動空間は、上述した上蓋30と下蓋20とによって気密状に封止されることで、真空状態が維持されている。共振子10の振動空間には、例えば不活性ガス等の気体が充填されてもよい。下蓋20の底板22には、下蓋20の底板22に対する共振子10の衝突を規制するストッパー部40が形成されている。ストッパー部40は、下蓋20の底板22から突出しており、下蓋20の側壁23の内側面からX軸方向に沿うように直線状に延びている。下蓋20の底板22には、ストッパー部40と下蓋20の側壁23とを連結する連結部41が形成されている。連結部41は、下蓋20の底板22から突出しており、ストッパー部40の長手方向の途中位置と下蓋20の側壁23との間をY軸方向に沿うように直線状に延びている。ストッパー部40は、下蓋20の平面視において、後述する複数の振動腕135の基端部をX軸方向に横切るように配置されている。下蓋20の底板22には、ストッパー部40に連結されたピラー部42が形成されている。ピラー部42は、下蓋20の底板22から突出しており、下蓋20の平面視において、ストッパー部40よりも面積が大きい。例えば、下蓋20の平面視において、ストッパー部40の長手方向と交差する方向におけるピラー部42の寸法は、同方向におけるストッパー部40の寸法よりも大きい。
【0019】
(3.共振子10)
図3は、本実施形態に係る共振子10の構造を概略的に示す平面図である。
【0020】
図3に示すように、共振子10は、振動部120と、保持部140と、保持腕150とを備えている。
【0021】
(a)振動部120
振動部120は、
図3に示す直交座標系におけるXY平面に沿って広がる矩形の輪郭を有している。振動部120は、保持部140の内側に設けられ、振動部120と保持部140との間には空間が形成されている。
図3に示す例では、振動部120は、音叉型振動子であり、基部130と4本の振動腕135A,135B,135C,135D(まとめて「振動腕135」とも呼ぶ)とを有している。なお、振動腕の数は、4本に限定されず、例えば3本以上の任意の数に設定される。本実施形態において、各振動腕135と、基部130とは、一体に形成されている。
【0022】
基部130は、平面視において、X軸方向に長辺131a,131bを有し、Y軸方向に短辺131c,131dを有する。長辺131aは、基部130の前端の面131A(以下、「前端131A」とも呼ぶ)の一つの辺であり、長辺131bは基部130の後端の面131B(以下、「後端131B」とも呼ぶ)の一つの辺である。基部130において、前端131Aと後端131Bとは互いに対向している。基部130の前端131Aは振動腕135に接続され、基部130の後端131Bは保持腕150に接続されている。
【0023】
振動腕135は、Y軸方向に延びており、同一のサイズを有している。振動腕135は、基部130と保持部140との間にY軸方向に平行に設けられている。振動腕135は、一端が基部130の前端131Aと接続されて固定端となっており、他端が開放端となっている。また、振動腕135は、X軸方向に所定の間隔で並列して設けられている。なお、振動腕135は、例えばX軸方向の幅が50μm程度であり、Y軸方向の長さが465μm程度である。
【0024】
振動部120の表面(上蓋30に対向する面)には保護膜235が形成されている。振動腕135における保護膜235の表面の一部には、周波数調整膜236が形成されている。保護膜235及び周波数調整膜236は、振動部120の共振周波数の調整に用いられている。なお、保護膜235は、必ずしも振動部120の全面を覆う必要はないが、周波数調整における下地の電極膜及び圧電薄膜へのダメージを保護するために振動部120の全面を覆うことが好ましい。
【0025】
周波数調整膜236は、保護膜235の上面に設けられている。周波数調整膜236の表面は、振動部120における振動による変位が比較的大きい領域において露出している。例えば、周波数調整膜236の表面は、振動腕135の先端において露出している。
【0026】
(b)保持部140
保持部140は、XY平面に沿って矩形の枠状に形成されている。保持部140は、平面視において、XY平面に沿って振動部120の外側を囲むように設けられている。保持部140は、振動部120の周囲の少なくとも一部に設けられていればよく、枠状の形状に限定されない。例えば、保持部140は、振動部120を保持し、上蓋30及び下蓋20と接合できる程度に振動部120の周囲に設けられていればよい。
【0027】
保持部140は、角柱形状の枠体140a~140dが一体形成されている。枠体140aは、振動腕135の開放端に対向しており、枠体140aの長手方向はX軸方向と一致している。枠体140bは、基部130の後端131Bに対向しており、枠体140bの長手方向はX軸方向と一致している。枠体140cは、基部130の側端(短辺131c)及び振動腕135Aに対向しており、枠体140cの長手方向はY軸方向と一致している。枠体140cは、一端が枠体140aに接続されており、他端が枠体140bに接続されている。枠体140dは、基部130の側端(短辺131d)及び振動腕135Dに対向しており、枠体140dの長手方向はY軸方向と一致している。枠体140dは、一端が枠体140aに接続されており、他端が枠体140bに接続されている。
【0028】
(c)保持腕150
保持腕150は、保持部140の内側に設けられ、基部130の後端131Bと枠体140cとを接続する。保持腕150は、X軸方向における基部130の後端131Bの中央位置から枠体140bに向かう方向(-Y方向)に延びている。また、保持腕150は、枠体140cに向かう方向(-X方向)に屈曲し、同方向に延びている。また、保持腕150は、枠体140aに向かう方向(+Y方向)に屈曲し、同方向に延びている。また、保持腕150は、枠体140cに向かう方向(-X方向)に屈曲し、枠体140cに接続されている。
【0029】
(4.積層構造)
次に、共振装置1の積層構造について説明する。
図4は、
図1のAA´断面を模式的に示す概略図である。
図5は、
図1のBB´断面を模式的に示す概略図である。
【0030】
下蓋20の底板22及び側壁23は、Si(シリコン)ウエハS1により一体的に形成されている。また、下蓋20は、側壁23の上面によって、共振子10の保持部140と接合されている。SiウエハS1は、縮退されていないシリコンから形成されている。
【0031】
ストッパー部40は、下蓋20の側壁23からX軸方向に沿うように延びている。ストッパー部40は、例えば、下蓋20の凹部21におけるX軸方向の中央位置まで延びており、振動腕135C及び振動腕135DをX軸方向に横切っている。
【0032】
上蓋30は、所定の厚みのSi(シリコン)ウエハS2により形成されている。上蓋30の側壁33は、共振子10の保持部140と接合されている。上蓋30における共振子10に対向する表面及び裏面は、酸化ケイ素層S2’により覆われていることが好ましい。上蓋30の側壁33と保持部140との間には接合部Hが形成されている。接合部Hは、例えば、Al(アルミニウム)膜やGe(ゲルマニウム)膜などの金属膜によって形成されている。接合部Hは、Au(金)膜やSn(錫)などの金属膜によって形成されてもよい。
【0033】
共振装置1は、保持部140、基部130、振動腕135、および、保持腕150が同一プロセスで一体的に形成されている。共振装置1は、Si(シリコン)基板F2、金属層E1、圧電薄膜F3、金属層E2、保護膜235、周波数調整膜236がこの順で積層されている。
【0034】
Si基板F2は、例えば、厚さ6μm程度の縮退したn型Si半導体から形成されている。Si基板F2は、n型ドーパントとしてP(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)などを含んでもよい。Si基板F2に用いられる縮退したn型半導体の抵抗値は、例えば1.6mΩ・cm未満であり、より好ましくは1.2mΩ・cm以下である。Si基板F2の下面には、酸化ケイ素層F21が形成されている。これにより、Si基板F2の温度特性が向上している。
【0035】
金属層E1、E2は、例えば厚さ0.1~0.2μm程度のMo(モリブデン)やAl(アルミニウム)等を用いて形成されている。
【0036】
金属層E1は、振動部120の下部電極として機能する。また、金属層E1は、共振子10の外部に設けられた交流電源に下部電極を接続するための配線としても機能する。
【0037】
金属層E2は、振動部120の上部電極として機能する。また、金属層E2は、共振子10の外部に設けられた回路に上部電極を接続するための配線としても機能する。
【0038】
圧電薄膜F3は、印加された電圧を振動に変換する圧電薄膜であり、例えば、AlN(窒化アルミニウム)等の窒化物や酸化物を主成分としている。圧電薄膜F3は、例えば、ScAlN(窒化スカンジウムアルミニウム)により形成されている。ScAlNは、窒化アルミニウムにおけるアルミニウムの一部をスカンジウムに置換したものである。圧電薄膜F3の厚さは、例えば1μmであり、0.2μmから2μm程度であってもよい。
【0039】
圧電薄膜F3は、金属層E1、E2によって圧電薄膜F3に印加される電界に応じて、XY平面の面内方向に伸縮する。振動腕135は、圧電薄膜F3の伸縮に伴って、振動腕135の開放端を下蓋20および上蓋30の内面に向けて変位させ、面外の屈曲振動モードで振動する。
【0040】
保護膜235は、金属層E2を保護する絶縁体の層であり、例えば、AlNやSiN(窒化ケイ素)等の窒化膜やTa2O5(5酸化タンタル)やSiO2等の酸化膜により形成されている。保護膜235は、振動部120の金属層E2における上蓋30に対向する面を覆うように設けられている。
【0041】
周波数調整膜236は、振動部120の共振周波数を調整するための膜であり、例えば、モリブデン、タングステン、金、白金、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属により形成されている。周波数調整膜236は、振動部120における振動による変位が比較的大きい領域に設けられている。周波数調整膜236は、例えば、振動腕135の先端の保護膜235を覆うように設けられている。
【0042】
次に、第1実施形態に係る共振装置1の下蓋20に対するストッパー部40の形成処理について説明する。なお、共振装置1の上蓋30に対してストッパー部を形成する場合にも、同様の処理を経る。
【0043】
まず、
図6Aに示すように、下蓋20にレジストを塗布することで、マスクMにより下蓋20の上面を被覆する。
図6Bは、
図6Aに示す工程におけるマスクMの平面視形状を示している。
図6Bに示すように、マスクMは、枠体状をなす周縁部M1と、周縁部M1から周縁部M1の内側に向けて延びるストッパー形成部M2と、ストッパー形成部M2に連結され、下蓋20の平面視においてストッパー形成部M2よりも面積の大きいピラー形成部M3と、ストッパー形成部M2とマスクMの周縁部M1の短辺との間を連結する連結形成部M4とを有している。周縁部M1は、矩形環状をなしており、周縁部M1の内縁の一部には延出部M1aが形成されている。延出部M1aは、周縁部M1の一つの角部から長辺の略中央位置まで延出している。ストッパー形成部M2は、延出部M1aの内縁から周縁部M1の短辺の略中央位置まで直線状に延びている。ストッパー形成部M2の先端には、ピラー形成部M3が設けられている。ピラー形成部M3は、下蓋20の平面視においてストッパー形成部M2よりも面積が大きく、ストッパー形成部M2の先端から周縁部M1に対して遠ざかるように周縁部M1の長辺に沿う方向に延びている。下蓋20の平面視において、ストッパー形成部M2の長手方向と交差する幅方向におけるピラー形成部M3の寸法は、同方向におけるストッパー形成部M2の寸法よりも大きい。
【0044】
次に、
図7Aに示すように、マスクMにより下蓋20の上面を被覆した状態で、等方性エッチングにより下蓋20をエッチングする。
図7Bは、
図7Aに示す工程において等方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアを示す図である。等方性エッチングとは、プラズマに晒されている物質が放射方向にエッチングを行う現象を示している。そのため、
図7Bに示すように、
図7Aに示す工程において等方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアは、ピラー形成部M3の一部を除く下蓋20のエリアとなっている。すなわち、等方性エッチングにおいては、下蓋20のエリアのうち、マスクMにより被覆されていないエリアだけでなく、マスクMにより被覆されたエリアについても、上方から回り込むようにエッチングが行われる。これにより、下蓋20の上面には、深さが比較的浅い凹部が形成される。
図7Aに示す工程は、第1工程の一例である。
【0045】
次に、
図8Aに示すように、マスクMにより下蓋20の上面を被覆した状態で、異方性エッチングにより下蓋20をエッチングする。
図8Bは、
図8Aに示す工程において異方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアを示す図である。異方性エッチングとは、プラズマに晒されている物質が一定の方向にのみエッチングを行う現象を示している。そのため、
図8Bに示すように、
図8Aに示す工程において異方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアは、ピラー形成部M3、ストッパー形成部M2、及び、連結形成部M4を除く下蓋20のエリアとなっている。すなわち、異方性エッチングにおいては、マスクMにより被覆されていないエリアに限ってエッチングが行われ、マスクMにより被覆されたエリアについてエッチングは行われない。これにより、下蓋20の上面には、
図7Aに示す工程において、下蓋20の上面に形成された比較的浅い凹部の底面のうち、ピラー形成部M3、ストッパー形成部M2、及び、連結形成部M4を除く下蓋20のエリアに対し、上方から直線状にエッチングが行われ、下蓋20の凹部の底面にピラー部42、ストッパー部40、連結部41が形成される。
図8Aに示す工程は、第2工程の一例である。
【0046】
次に、
図9Aに示すように、下蓋20の上面からマスクMを除去した後、下蓋20の上面に共振子10を積層する。これにより、
図9Bに示すように、共振装置1は、下蓋20の平面視において、振動腕135C及び振動腕135Dの各々の基端部の下方にストッパー部40が配置され、下蓋20の凹部21の底面に対する振動腕135C及び振動腕135Dの各々の衝突がストッパー部40により規制される。
【0047】
次に、第1実施形態に係る共振装置1の動作について説明する。
【0048】
図10Aに示すように、共振装置1は、共振子10の振動が停止しているときには、振動腕135の長手方向が水平方向と一致しており、下蓋20の凹部21の底面に形成されたストッパー部40と振動腕135との間には隙間が介在している。
【0049】
ここで、
図10Bに示すように、共振装置1は、上蓋30に外力が加わった場合には、その衝撃が上蓋30から共振子10に伝達される。この場合、図示は省略するが、共振子10は、保持腕150が水平方向に対して斜めに傾く。特に、本実施形態では、保持腕150が保持部140と基部130とを局所的に保持する構成であるため、保持腕150と基部130との接続部位を支点として、共振子10が水平方向に対して斜めに傾きやすい。そして、
図10Bに示すように、振動腕135が水平方向に対して斜めに傾く。この点、本実施形態では、振動腕135の基端部が凹部21の底面に形成されたストッパー部40に接触することで、凹部21の底面に対して衝突することが規制される。その結果、振動腕135が大きく変位して破損を生じることが抑えられる。
【0050】
ところで、特に、下蓋20の凹部21の深さが比較的深い場合には、下蓋20の上面に凹部21を形成した後に、凹部21の底面におけるストッパー部40が形成される位置にレジストを塗布しようとしても、下蓋20の上面と凹部21の底面との段差に起因して、液溜りや被覆不良といったレジストの塗布不良が発生するおそれがある。
【0051】
この点、本実施形態では、下蓋20の上面に所定パターンのレジストを塗布した後に、特性の異なる二種類のエッチング(等方性エッチング、異方性エッチング)を段階的に用いてストッパー部40を形成している。そのため、下蓋20の凹部21の深さが比較的深い場合であっても、凹部21の底面にストッパー部40が好適に形成される。
【0052】
第1実施形態に係る共振装置1の製造方法においては、共振子10の振動空間を構成する凹部21,31を上蓋30及び下蓋20の少なくとも一方の対象物に形成する工程は、枠体状をなす周縁部M1と、周縁部M1から周縁部M1の内側に向けて延びるストッパー形成部M2とを有するマスクMにより対象物を被覆した状態で、等方性エッチングにより対象物をエッチングする第1工程と、第1工程において等方性エッチングによりエッチングされた対象物を、マスクMを被覆した状態で異方性エッチングによりエッチングして、対象物の平面視において、凹部21,31の底面においてストッパー形成部M2に重なる位置に、凹部21,31の底面に対する共振子10の衝突を規制するストッパー部40を形成する第2工程とを含む。そのため、共振装置1は、対象物の凹部21,31の底面には、凹部21,31の内側面から延び、凹部21,31の底面に対する共振子10の衝突を規制するストッパー部40が形成される。これにより、例えば、共振装置1に対して外力が加わったとしても、振動腕135の基端部が凹部21,31の底面に形成されたストッパー部40に接触することで、凹部21,31の底面に対して衝突することが規制される。その結果、振動腕135が大きく変位して破損を生じることが抑えられる。
【0053】
また、第1実施形態に係る共振装置1の製造方法においては、対象物にマスクMを被覆した状態で、特性の異なる二種類のエッチングを段階的に用いて凹部21,31の底面にストッパー部40を形成しているため、凹部21,31の深さが比較的深かったとしても、凹部21,31の底面にストッパー部40を好適に形成することができる。
【0054】
また、第1実施形態に係る共振装置1の製造方法においては、マスクMは、ストッパー形成部M2が周縁部M1に連結されているため、エッチングの際に、ストッパー形成部M2が剥離、浮遊、再付着を生じにくい。そのため、エッチング不良が発生したり、剥離したストッパー形成部M2の断片により共振装置1の内部が汚染されたりすることを抑制できる。
【0055】
<第2実施形態>
第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0056】
第2実施形態に係る共振装置1の下蓋20に対するストッパー部40αの形成処理について説明する。なお、共振装置1の上蓋30に対してストッパー部を形成する場合にも、概ね同様の処理を経る。
【0057】
まず、
図11Aに示すように、下蓋20にレジストを塗布することで、マスクM
αにより下蓋20を被覆する。
図11Bは、
図11Aに示す工程におけるマスクM
αの平面視形状を示している。
図11Bに示すように、マスクMαのストッパー形成部M2αは、メッシュ状をなしている。また、マスクMαは、連結形成部M4が省略されている。
【0058】
次に、
図12Aに示すように、マスクMαにより下蓋20を被覆した状態で、等方性エッチングにより下蓋20をエッチングする。
図12Bは、
図12Aに示す工程において等方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアを示す図である。
図12Bに示すように、
図12Aに示す工程において等方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアは、ピラー形成部M3の一部を除く下蓋20のエリアとなっている。
図12Aに示す工程は、第1工程の一例である。
【0059】
次に、
図13Aに示すように、マスクMαにより下蓋20を被覆した状態で、異方性エッチングにより下蓋20をエッチングする。
図13Bは、図
13Aに示す工程において異方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアを示す図である。図
13Bに示すように、図
13Aに示す工程において異方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアは、ピラー形成部M3、及び、ストッパー形成部M2αを除く下蓋20のエリアとなっている。これにより、下蓋20の上面には、
図12Aに示す工程において、下蓋20の上面に形成された比較的浅い凹部の底面のうち、ピラー形成部M3、及び、ストッパー形成部M2αを除く下蓋20のエリアに対し、上方から直線状にエッチングが行われ、下蓋20の凹部の底面にピラー部42、及び、ストッパー部40αが形成される。
図13Aに示す工程は、第2工程の一例である。
【0060】
次に、
図14Aに示すように、下蓋20の上面からマスクMαを除去した後、下蓋20の上面に共振子10を積層する。これにより、
図14Bに示すように、共振装置1は、下蓋20の平面視において、振動腕135C及び振動腕135Dの各々の基端部の下方にストッパー部40αが配置され、下蓋20の凹部21の底面に対する振動腕135C及び振動腕135Dの各々の衝突がストッパー部40αにより規制される。
【0061】
第2実施形態に係る共振装置1の製造方法においては、マスクMαのストッパー形成部M2αはメッシュ状をなしている。そのため、下蓋20の凹部21の底面に形成されるストッパー部40αの剛性を強化できるため、等方性エッチングによりマスクMαと下蓋20の上面との間に隙間が生じたとしても、マスクMαが破断することが抑えられる。
【0062】
<第3実施形態>
【0063】
第3実施形態に係る共振装置1の下蓋20に対するストッパー部の形成処理について説明する。なお、共振装置1の上蓋30に対してストッパー部を形成する場合にも、概ね同様の処理を経る。
【0064】
まず、
図15に示すように、下蓋20の上面にレジストを塗布することで、マスクMβにより下蓋20の上面を被覆する。本実施形態では、下蓋20におけるY軸方向の中央位置、および、下蓋20におけるY軸方向の両端位置を含む複数のエリアがマスクMβにより被覆されている。
【0065】
次に、
図16に示すように、マスクMβにより下蓋20の上面を被覆した状態で、等方性エッチングにより下蓋20をエッチングする。この場合、
図16に示す工程において等方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアは、マスクMβにより被覆されていないエリアとなっている。また、等方性エッチングにおいては、下蓋20のエリアのうち、マスクMβにより被覆されていないエリアだけでなく、マスクMβにより被覆されたエリアについても、上方から回り込むようにエッチングが行われる。これにより、下蓋20の上面には、上側が拡開した、深さが比較的浅い凹部が形成される。この凹部は、後述するテーパ部43として機能する。
図16に示す工程は、第1工程の一例である。
【0066】
次に、
図17に示すように、マスクMβにより下蓋20を被覆した状態で、異方性エッチングにより下蓋20をエッチングする。
図17に示す工程において異方性エッチングによりエッチングされる下蓋20のエリアは、マスクMβにより被覆されたエリアを除く下蓋20のエリアとなっている。これにより、下蓋20の上面には、
図16に示す工程において、下蓋20の上面に形成された比較的浅い凹部の底面のうち、マスクMβが被覆されていない下蓋20のエリアに対し、上方から直線状にエッチングが行われる。そして、下蓋20の平面視において、凹部21の底面においてピラー形成部M3βに重なる位置に、凹部21の底面に対する共振子10の衝突を規制するテーパ部43を有するピラー部42βが形成される。テーパ部43は、凹部21の底面に向けて次第に幅広となり、ストッパー部として機能する。
図17に示す工程は、第2工程の一例である。
【0067】
次に、
図18に示すように、下蓋20の上面からマスクM
βを除去した後、下蓋20の上面に共振子10を積層する。これにより、共振装置1は、下蓋20の平面視において、振動腕135B及び振動腕135Cの基端部の下方にピラー部42βのテーパ部43が配置され、下蓋20の凹部21の底面に対する振動腕135B及び振動腕135Cの衝突がテーパ部43により規制される。
【0068】
次に、第3実施形態に係る共振装置1の動作について説明する。
【0069】
図19に示すように、共振装置1は、上蓋30に外力が加わった場合には、その衝撃が上蓋30から共振子10に伝達される。図示は省略するが、共振子10は、振動腕135が水平方向に対して斜めに傾いて下方に移動する。特に、本実施形態では、保持腕150が保持部140と基部130とを局所的に保持する構成であるため、保持腕150と基部130との接続部位を支点として、振動腕135が水平方向に対して斜めに傾きやすい。この点、
図19に示すように、本実施形態では、振動腕135B及び振動腕135Cの各々の基端部がピラー部42βに形成されたテーパ部43に接触することで、凹部21の底面に対して衝突することが規制される。その結果、振動腕135B及び振動腕135Cが大きく変位して破損を生じることが抑えられる。
【0070】
第3実施形態に係る共振装置1の製造方法においては、共振子10の振動空間を構成する凹部21,31を上蓋30及び下蓋20の少なくとも一方の対象物に形成する工程は、ピラー形成部M3βを有するマスクMβにより被覆した対象物を等方性エッチングによりエッチングする第1工程と、第1工程において等方性エッチングによりエッチングされた対象物を、マスクMβを被覆した状態で異方性エッチングによりエッチングして、対象物の平面視において、凹部21,31の底面においてピラー形成部M3βに重なる位置に、凹部21,31の底面に向けて次第に幅広となるテーパ部であって、凹部21,31の底面に対する共振子10の衝突を規制するテーパ部43を有するピラー部42βを形成する第2工程とを含む。そのため、共振装置1は、上蓋30に外力が加わり、振動腕135が水平方向に対して斜めに傾いて下方に移動したとしても、振動腕135の基端部がピラー部42に形成されたテーパ部43に接触することで、凹部21,31の底面に対して衝突することが規制される。その結果、振動腕135が大きく変位して破損を生じることが抑えられる。
【0071】
また、第3実施形態に係る共振装置1の製造方法においては、マスクMβを架橋状に形成する必要がないため、マスクMβを架橋状に形成した場合と比較して、マスクMβが破断することが抑えられる。
【0072】
なお、上記各実施形態は、以下のような形態にて実施してもよい。
【0073】
上記各実施形態においては、上蓋30及び下蓋20の少なくとも一方の対象物にレジストを塗布してマスクM,Mα,Mβを形成する場合を例に挙げてしたが、マスクM,Mα,Mβの形成方法はこれに限らず、例えば、所定パターンが形成されたメタルマスクを用いてもよい。
【0074】
上記第1及び第2実施形態において、上蓋30及び下蓋20の少なくとも一方の対象物の凹部21,31の底面に、ピラー部42を設けることなく、ストッパー部40,40αを設けてもよい。
【0075】
上記第1実施形態において、上蓋30及び下蓋20の少なくとも一方の対象物の側壁23,33とストッパー部40を連結する連結部41を省略してもよい。
【0076】
上記第1及び第2実施形態において、ストッパー部40,40αは、必ずしも、上蓋30及び下蓋20の少なくとも一方の対象物の側壁23,33から凹部21,31におけるX軸方向の略中央位置まで延びる必要はなく、対象物の平面視において、少なくとも一部の振動腕135の基端部を振動腕135の長手方向と交差する方向に横切る構成であればよい。
【0077】
上記第1及び第2実施形態において、ストッパー部40,40αは、必ずしも、上蓋30及び下蓋20の少なくとも一方の対象物の平面視において、振動腕135の基端部に重なる位置に配置する必要はなく、例えば、対象物の平面視において、振動腕135の中間部または先端部に重なる位置に配置してもよい。
【0078】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について説明する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0079】
本発明の一態様によれば、共振子と共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋とを有する共振装置の製造方法であって、共振子の振動空間を構成する凹部を上蓋及び下蓋の少なくとも一方の対象物に形成する工程を含み、対象物に凹部を形成する工程は、枠体状をなす周縁部と、周縁部から周縁部の内側に向けて延びるストッパー形成部とを有するマスクにより対象物を被覆した状態で、等方性エッチングにより対象物をエッチングする第1工程と、第1工程において等方性エッチングによりエッチングされた対象物を、マスクを被覆した状態で異方性エッチングによりエッチングして、対象物の平面視において、凹部の底面においてストッパー形成部に重なる位置に、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するストッパー部を形成する第2工程と、を含む、共振装置の製造方法が提供される。
【0080】
一態様として、マスクは、ストッパー形成部に連結され、対象物の平面視においてストッパー形成部よりも面積の大きいピラー形成部をさらに有する、共振装置の製造方法が提供される。
【0081】
一態様として、ストッパー形成部は、マスクの周縁部から一方向に延びており、対象物の平面視において、ストッパー形成部の長手方向と交差する幅方向におけるピラー形成部の寸法は、同方向におけるストッパー形成部の寸法よりも大きい、共振装置の製造方法が提供される。
【0082】
一態様として、ストッパー形成部は、メッシュ状をなしている、共振装置の製造方法が提供される。
【0083】
本発明の一態様によれば、共振子と共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋とを有する共振装置の製造方法であって、共振子の振動空間を構成する凹部を上蓋及び下蓋の少なくとも一方の対象物に形成する工程は、ピラー形成部を有するマスクにより被覆した対象物を等方性エッチングによりエッチングする第1工程と、第1工程において等方性エッチングによりエッチングされた対象物を、マスクを被覆した状態で異方性エッチングによりエッチングして、対象物の平面視において、凹部の底面においてピラー形成部に重なる位置に、凹部の底面に向けて次第に幅広となるテーパ部であって、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するテーパ部を有するピラー部を形成する第2工程とを含む、共振装置の製造方法が提供される。
【0084】
本発明の一態様によれば、共振子と、共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋と、を備え、上蓋及び下蓋の少なくとも一方は、共振子の振動空間を構成する凹部を有し、凹部の底面には、凹部の内側面から延び、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するストッパー部が形成されている、共振装置が提供される。
【0085】
一態様として、凹部の底面には、ストッパー部に連結され、上蓋及び下蓋の平面視において、ストッパー部よりも面積の大きいピラー部がさらに形成されている、共振装置が提供される。
【0086】
本発明の一態様によれば、共振子と、共振子を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋および下蓋と、を備え、上蓋及び下蓋の少なくとも一方は、共振子の振動空間を構成する凹部を有し、凹部の底面には、凹部の底面に向けて次第に幅広となるテーパ部であって、凹部の底面に対する共振子の衝突を規制するテーパ部を有するピラー部が形成されている、共振装置が提供される。
【0087】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、共振子の破損を抑制することができる。
【0088】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0089】
10 共振子
20 下蓋
30 上蓋
40 ストッパー部
40α ストッパー部
41 連結部
42 ピラー部
42β ピラー部
43 テーパ部
120 振動部
130 基部
135A~D 振動腕
140 保持部
140a~d 枠体
150 保持腕
M マスク
Mα マスク
Mβ マスク
M1 周縁部
M2 ストッパー形成部
M2α ストッパー形成部
M3 ピラー形成部
M3β ピラー形成部
M4 連結形成部