(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両の運転制御方法及び運転制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/08 20200101AFI20241210BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20241210BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W40/105
(21)【出願番号】P 2023512631
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015050
(87)【国際公開番号】W WO2022215259
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰久
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0161092(US,A1)
【文献】特開2005-067322(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/014012(JP,A1)
【文献】特開2016-175613(JP,A)
【文献】特開2018-099919(JP,A)
【文献】特開2019-172112(JP,A)
【文献】特開2020-032949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転制御装置に用いられ、前記車両の自律運転制御と運転者による前記車両の手動運転制御との制御モードの切り替え制御を含む前記車両の運転制御方法において、
前記運転制御装置のプロセッサは、
前記運転者の入力操作によって入力された入力指令の入力態様
から判断された前記入力指令が入力された入力系統の操作数を
カウントし、
前記車両の車速を取得し、
前記車速と前記入力指令の入力態様情報
としての前記入力系統の操作数の評価閾値とが
、前記車速が高いほうが前記制御モードの前記切り替え制御を実行させるために要求される前記入力系統の操作数の評価閾値が高くなるように、予め対応づけられた切替条件を参照して、前記
カウントされた前記入力態様
としての前記入力系統の操作数が
、前記取得された前記車速に対応づけられた
前記入力系統の操作数の評価閾値に基づく前記切替条件を充足するか否かを判定し、
前記入力系統の操作数が前記車速に応じた前記評価閾値以上である場合には、前記切替条件を充足すると判定し、
前記入力指令の前記入力態様が前記切替条件を充足すると判定された場合には、前記車両の前記制御モードを前記自律運転制御から前記手動運転制御へ切り替え、
前記手動運転制御により前記車両の運転を実行する運転制御方法。
【請求項2】
前記入力態様は、前記入力指令が入力された
前記入力系統の種別であり、
前記プロセッサは、前記入力指令の前記入力系統の種別を判断し、前記入力系統の種別が前記車速に応じた
所定種別を含む場合には、前記切替条件を充足すると判定する請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記入力系統の操作数を
前記カウントし、前記車速に応じた前記入力系統の操作数の評価閾値が前記入力態様情報として定義された前記切替条件を参照し、前記入力系統の操作数が前記車速に応じた評価閾値以上である場合には、前記切替条件を充足すると判定する請求項1又は2に記載の運転制御方法。
【請求項4】
前記切替条件は、所定の車速閾値以上の前記車速に対応づけられた前記入力系統の操作数の第1評価閾値が、前記所定の車速閾値未満の前記車速に対応づけられた前記入力系統の操作数の第2評価閾値よりも高い値となるように定義される請求項3に記載の運転制御方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、地図データベースを参照し、前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が走行している又は走行予定のレーンにおけるレーンキープ走行の困難度を算出し、前記レーンキープ走行の困難度が所定閾値以上であると判断された場合には、前記車速に対応づけられた前記切替条件を緩和させる補正をする請求項1~4の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項6】
前記プロセッサは、地図データベースを参照し、前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が走行している又は走行予定のレーンのカーブ曲率を算出し、前記車両が走行している又は走行予定のレーンのカーブ曲率がカーブ閾値以上であると判断された場合には、前記車速に対応づけられた前記切替条件を緩和させる補正をする請求項1~5の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項7】
前記プロセッサは、地図データベースを参照し、前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が走行している又は走行予定レーンのレーン幅を算出し、前記車両が走行している又は走行予定のレーン幅が幅員閾値未満であると判断された場合には、前記車速に対応する前記切替条件を緩和させる補正をする請求項1~6の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項8】
前記入力態様は、前記入力指令を入力した前記入力操作の入力トルクを含み、
前記プロセッサは、前記入力操作の前記入力トルクを取得し、前記車速に応じた前記入力トルクのトルク閾値が前記入力態様情報として定義された前記切替条件を参照し、前記入力トルクが前記車速に応じた前記トルク閾値以上である場合には、前記入力操作が入力されたと判断する請求項1~7の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項9】
前記切替条件は、所定の車速閾値以上の前記車速に対応づけられた前記入力トルクの第1トルク閾値が、前記所定の車速閾値未満の前記車速に対応づけられた前記入力トルクの第2トルク閾値よりも小さくなるように定義される請求項8に記載の運転制御方法。
【請求項10】
前記切替条件は、相対的に高い第1車速域VR1(VX1≧V2)と、第2車速域VR2(V2>VX2≧V1)と、第3車速域VR3(V1>VX3≧V0)と、第4車速域VR4(V0>VX4)とが設定され、前記車速が高い車速域のほうが前記制御モードの前記切り替え制御を実行させるために要求される前記入力系統の操作数の評価閾値が高くなるように、前記第1車速域VR1に第1評価閾値AT1(>AT2)が対応づけられ、前記第2車速域VR2に第2評価閾値AT2(>AT3)が対応づけられ、前記第3車速域VR3に第3評価閾値AT3(>AT4)が対応づけられ、前記第4車速域VR4に第4評価閾値AT4(=1)が対応づけられる請求項1~9の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項11】
車両の自律運転制御と運転者による前記車両の手動運転制御との制御モードの切り替え制御を実行する前記車両の運転制御装置であって、
前記運転制御装置のプロセッサは、
前記運転者の入力操作によって入力された入力指令の入力態様
から判断された、前記入力指令が入力された入力系統の操作数を
カウントする処理と、
前記車両の車速を取得する処理と、
前記車速と前記入力指令の入力態様情報
としての前記入力系統の操作数の評価閾値とが
、前記車速が高いほうが前記制御モードの前記切り替え制御を実行させるために要求される前記入力系統の操作数の評価閾値が高くなるように、予め対応づけられた切替条件を参照して、前記
カウントされた前記入力態様
としての前記入力系統の操作数が前記車速に対応づけられた
前記入力系統の操作数の評価閾値に基づく前記切替条件を充足するか否かを判定する処理と、
前記入力系統の操作数が、前記取得された前記車速に応じた前記評価閾値以上である場合には、前記切替条件を充足すると判定する処理と、
前記入力指令の前記入力態様が、前記車速に応じた前記切替条件を充足すると判定された場合には、前記車両の前記制御モードを前記自律運転制御から前記手動運転制御へ切り替える処理と、
前記手動運転制御により前記車両を運転する処理と、を実行させる運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律運転制御と手動運転制御が実行可能な車両の運転制御方法及び運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自律運転走行中に行われた操舵介入操作が、運転者の意思に基づくオーバーライド指令であるのか又は誤操作であるのかを、低速時におけるハンドルタッチセンサを介して得た操舵遷移パターンに基づいて判定する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、低速時における操作が誤操作であるか否かを判定できるものの、低速時以外における操作に対する運転者の意図を判定できない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自律運転制御から手動運転制御への切り替えを要求する運転者の入力操作の意図を車速に応じて適切に判定する運転制御方法及び運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力指令の入力態様を判断し、車速と入力指令の入力態様情報とが予め対応づけられた切替条件を参照し、入力指令の入力態様が車速に対応づけられた切替条件を充足する場合には、車両の制御モードを自律運転制御から手動運転制御へ切り替えて車両の運転を実行することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車速に応じた切替条件に基づいて、入力指令を入力した運転者の意図を速度に応じて判定するので、運転制御の主導権を運転者に引き継ぐ際の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】運転制御装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【
図3】入力装置の組み合わせの一例を示す図である。
【
図5】車速と入力系統の操作数に係る評価閾値とを対応づけた切替条件の一例を示す図である。
【
図6】車速とトルク閾値とを対応づけた切替条件の一例を示す図である。
【
図8】運転制御処理の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る車両の運転制御装置1を含む運転制御システム100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両の運転制御システム100は、運転制御装置1と、センサ11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、車載機器14と、入力装置15と、提示装置16と、駆動制御装置17とを備える。運転制御装置1は、プロセッサ10と、通信装置20を備える。これらの装置は、相互に情報の送受信を行うために、例えばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。本実施形態の車両の運転制御装置1は、本発明に係る車両の運転制御方法を実施する装置の一形態である。
【0010】
センサ11は、車両の運転制御に用いられる自車両の走行状態を検出する。センサ11として、自車両の前方・側方・後方を撮像する一又は複数のカメラ、自車両の前方・側方・後方の障害物を検出する一又は複数のレーダー・レーザースキャナ・超音波ソナー、自車両の車速を検出する車速センサ、ステアリングホイールの回転方向を検出するセンサ、ステアリングホイールに印加される操舵トルク(入力トルク)を検出するセンサ、自車両のアクセル又はブレーキの踏み込みトルク(入力トルク)を検出するセンサ、運転者がハンドルを持っているか否かを検出するタッチセンサ(静電容量センサ)、運転者がタッチパネル式のディスプレイ画面上に配置されたタッチスイッチに接触したことを検出するタッチセンサ、運転者及びその動作を撮像する車内カメラなどが挙げられる。上述した複数のセンサ11のうち1つ又は、2種類以上のセンサ11を組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ11の検出結果は、所定周期でプロセッサ10に出力される。
【0011】
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成されている。自車位置検出装置12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、運転制御の対象となる自車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、自車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12により検出された自車両の位置情報は、所定周期でプロセッサ10に出力される。
【0012】
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む高精度地図情報などの地図情報を読み込み可能に記憶する。高精度地図情報は、レーン識別情報を含み、レーンごとの道路形状(たとえば曲率又は曲率半径)、レーン又は道路の属性(レーン幅、車両専用道路であるか否か、制限速度)、レーンの合流地点・分岐地点・車線数の減少位置、標識の位置・内容、路肩などの道路構造物の位置、料金所などの施設の位置などの「静的情報」と、各レーンの渋滞情報、レーンを含む領域の現在又は将来の天候などの「動的情報」とがレーン識別情報に関連付けられた情報である。
【0013】
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、運転者により操作されることで動作する。このような車載機器14としては、ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクションを含む。車載機器14が運転者により操作された場合には、その情報がプロセッサ10に出力される。
【0014】
入力装置15は、複数の入力装置15(第1入力装置15-1、第2入力装置15-2・・第N入力装置15-N:N≠1)を含む。入力装置15は、車載機器14に対する運転者の入力操作を受け付ける。入力装置15は、たとえば、運転者の操作による入力が可能なボタンスイッチ、タッチパネル式のディスプレイ画面上に配置されたタッチスイッチ、ステアリング操作により入力が可能なスイッチ、ブレーキ踏込操作により入力が可能なスイッチ、又は運転者の音声による入力が可能なマイクなどの装置である。なお、車両の駆動を制御する駆動機構171のアクセルペダル、制動機構172のブレーキペダル、又は車両の進行方向を制御する操舵機構173のステアリングホイールは、入力装置15として機能する。ステアリングホイールの操舵操作を介して入力された入力トルク、ブレーキペダル又はアクセルペダルの踏み込み操作を介して入力された入力トルクは、プロセッサ10に出力される。
【0015】
図2は、本実施形態の入力装置15の一例を示す図である。入力装置15は、ステアリングホイールのスポーク部などに配置されたボタンスイッチ群15Aと、ステアリングホイールの回転により入力指令の入力が可能なステアリングスイッチ15Bと、提示装置16としてのディスプレイの表示面に設けられたタッチスイッチ15Cと、ボタンスイッチ群15Aとは異なる位置に設けられたスイッチ群15Dとを含む。スイッチ群15Dは、ステアリングホイールのスポーク部、センターコンソール、インストルメントパネルに設けることができる。スイッチは、音声入力を受け付けるマイクとしてもよい。図示する入力装置15のボタンスイッチ群15Aの一例では、プロセッサ10が備える自律運転の制御モードである自律速度制御機能及び自律操舵制御機能のON/OFFを設定する際に使用するボタン式のスイッチであり、メインスイッチ151と、リジューム・アクセラレートスイッチ152と、セット・コーストスイッチ153と、自律走行制御を解除するキャンセルボタン154と、車間調整スイッチ155と、車線変更支援スイッチ156とを備える。
図2に示すボタンスイッチ群以外にも、ブレーキペダル、方向指示器、照明やその他の車載機器14のスイッチを入力装置15として用いることができる。入力装置15のうちの所定のスイッチを運転者の意思確認のために操作させる確認スイッチとして機能させてもよい。入力装置15は、入力指令を受け付けた入力系統の種別の情報(入力装置15―Nの識別情報)、入力装置15(N)への入力トルクを含む入力態様を示す情報をプロセッサ10へ送出する。
【0016】
各スイッチは、他の一又は二以上のスイッチと組み合わせて入力操作に用いることができる。
図3は、第1入力装置15-1と第N入力装置15-Nの組み合わせの一例を示す図である。各入力装置15及びその組み合わせは任意に定義できる。キャンセルボタン154とスイッチ群15Dの確認スイッチとの組み合わせC12が検出された場合には、入力系統の種別は「キャンセルボタン154」及び「確認スイッチ」であり、操作数は2となる。本例では、共通する入力装置15を介して入力がされた場合には、入力系統の操作数をカウントアップしない。このため、C12及びC13が検出された場合の入力系統の操作数は3となる。一方、同じ入力装置15に対する一度目の入力と二度目の入力に異なる識別情報を付与して、複数回の入力操作の数を操作数としてカウントアップすることも可能である。
【0017】
提示装置16は、乗員に情報を伝える装置であり、たとえば、ナビゲーション装置が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、オーディオ装置が備えるスピーカー、および振動体が埋設された座席シート装置などの情報提示装置である。プロセッサ10の制御に従い、提示装置16は、切替指令の受付・拒否、制御モードの切り替えを運転者に報知する。
【0018】
駆動制御装置17は、後述するプロセッサ10の指示に従い、自車両の運転を制御する。駆動制御装置17は、自車両を設定速度で定速走行させる自律速度制御機能、及び自車両を先行車に追従走行させる自律追従走行制御機能を備える。これらの機能の実現のために、駆動制御装置17は、自車両の加減速度および走行速度を実現するための駆動機構171の動作、制動機構の動作を制御する。さらに、駆動制御装置17は、自車両が走行するレーンのレーンマーカを検出し、自車両がそのレーン内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ運転機能、先行車の追い越し・車線変更走行・交差点での右左折を自律的に自車両に実行させる走行支援機能を有する。これらの機能の実現のために、駆動制御装置17は、加減速度および走行速度を実現するための駆動機構171及び制動機構172の動作に加えて、操舵機構173のステアリングアクチュエータの動作を制御することで自車両の操舵制御を実行する。駆動制御装置17による運転制御方法(自律運転制御及び手動運転制御の方法)の内容は特に限定されず、本願出願時の技術を適用することができる。
【0019】
運転制御装置1のプロセッサ10は、自律運転システムによって実行される自律運転制御モードAと、運転者の操作入力によって実行される手動運転制御モードBとによって車両の運転を制御するとともに、これらの制御モードの切り替え制御を行う。自律運転制御から手動運転制御へ制御モードの切り替え制御は、いわゆるテイクオーバー(Take Over)処理ともいわれる。プロセッサ10は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。プロセッサ10は、通信装置20を介して情報を送受信する。
【0020】
プロセッサ10は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行を自律制御する自律運転制御機能と、運転者の入力操作によって入力された入力指令の入力態様を判断する入力態様判断機能と、入力指令の入力態様が車速に対応づけられた切替条件を充足するか否かを判定する条件判定機能と、車両の制御モードを自律運転制御から手動運転制御へ切り替える切替機能とを実現する。さらに、プロセッサ10は、切替条件を補正する補正機能、及び/又は入力操作が入力されたか否かを判断する入力判断機能を備えてもよい。以下、各機能について説明する。
【0021】
まず、入力態様判断機能について説明する。プロセッサ10は、運転者の入力操作によって入力された入力指令の入力態様を判断する。入力態様は、入力指令が入力された入力系統の種別、入力系統の操作数、及び入力指令の入力操作の入力トルクのうちのいずれか一つ以上又は複数の組み合わせを含む。
【0022】
プロセッサ10は、複数の入力指令の情報から入力系統を示す入力装置15の識別情報を抽出し、入力系統の種別を判断する。プロセッサ10は、抽出された入力装置15の識別情報を比較し、非同一の識別情報の数に基づいて運転者が入力操作をした入力装置15の数をカウントし、入力系統の操作数を判断する。
【0023】
プロセッサ10は、車両の駆動を制御する各機構のセンサから得た検出情報に基づいて、ユーザにより入力指令が入力されたときの入力操作の入力トルク(量)を取得する。入力トルクは、ステアリングホイールの操舵量、又はブレーキペダルの踏み込み量である。ステアリングホイールに印加される運転者の操舵トルクは操舵機構173のトルクセンサにより検出される。ブレーキペダルに印加されるブレーキ踏み込みトルクは、制動機構172のトルクセンサにより検出される。
【0024】
条件判定機能について説明する。プロセッサ10は、入力指令の入力態様が車速に対応づけられた切替条件を充足するか否かを判定する。
図4は、切替条件Cの一例を示す。切替条件Cは、ROMなどの記憶装置に格納される。この切替条件Cは、車速(車速域を含む)と入力指令の入力態様情報とが予め対応づけられた条件である。本例の入力態様情報は、入力系統の種別、入力系統の操作数の評価閾値、入力系統の入力操作の順序、入力トルク閾値を含む。
【0025】
図4に示す切替条件Cは、車速を第1車速域VR1~第4車速域VR4の4つの車速域を定義する。切替条件Cは、車速域のそれぞれに対して、制御モードの切替指令を実行させるために要求される入力指令について、一又は複数の「入力系統の種別」を定義する。例えば、最も高い車速域(VX1≧V2)として定義された第1車速域VR1には、(1)メインスイッチ151、(2)キャンセルボタン154、(3)タッチスイッチ15C、(4)ブレーキペダル操作の4つの種別の入力系統が対応づけられる。切替条件Cは、操作するスイッチの操作の順序を定義してもよい。上記の番号の順序(1)~(4)に従い入力操作を求めてもよい。切替条件Cは、車両が第1車速域VR1の範囲の速度で走行している場合に、制御モードの切替処理の実行のために(1)~(4)の入力系統を介した入力操作を要求する。この切替条件Cにおいて、相対的に高い第1車速域VR1(例えばV2以上)に対応づけられた入力系統の種別の数は、第1車速域VR1よりも低い第2車速域VR2(例えばV2未満)に対応づけられた入力系統の種別の数よりも多い。相対的に高い車速においては、運転者の意図を確認するために高い入力負荷を課す。より多くの種類の入力系統を介した入力を運転者に求めて、運転者の意思を正確に判断する。
【0026】
また、
図4に示す切替条件Cは、車速域のそれぞれに対して、制御モードの切替指令を実行させるために要求される入力指令について、「入力系統の操作数の評価閾値AT」を定義する。この切替条件Cにおいて、相対的に高い第1車速域VR1(例えばV2以上)に対応づけられた入力系統の操作数の第1評価閾値AT1は、第1車速域VR1よりも低い第2車速域VR2(例えばV2未満)に対応づけられた入力系統の操作数の第2評価閾値AT2よりも高い(大きい)値である。
図5は、車速Vと入力系統の操作数の評価閾値ATとの関係を示す。高い車速に対応づけられた評価閾値ATは、相対的に低い車速に対応づけられた評価閾値AT´よりも高い値であり、車速が高いほうが制御モードの切替指令を実行させるために要求される入力系統の操作数が多い。相対的に高い車速においては、運転者の意図を確認するために高い入力負荷を課す。より多くの操作を運転者に求めて、運転者の意思を正確に判断する。
図5の実線で示すように車速域が高いほど評価閾値が段階的に高くなるように評価閾値を設定してもよいし、同図の破線で示すように車速が高くなるほど評価閾値が高くなるように設定してもよい。評価閾値は、車両性能などに基づいて実験的に設定する。特に限定されないが、第2車速域VR2の閾値である下限車速V1を20-50km/h、好ましくは30-40km/hとしてもよい。咄嗟のブレーキ操作でも車両を停止させることができる極低速域の第4車速域VR4におけるV0を5-10km/hとしてもよい。本例の第4車速域VR4では、入力系統の種別はブレーキペダルのみとし、操作数の評価閾値は「1」とする。
【0027】
切替条件Cは、
図4に示すように、車速に応じた入力トルクのトルク閾値を入力態様情報として定義する。トルク閾値は、車両の駆動・制動・操舵を制御するための入力操作がされたときに、その入力指令の入力が実行されたか否かの判断基準となるトルク閾値を定義する。切替条件Cは、車速域のそれぞれに対して、車両の駆動・制動・操舵を制御する入力操作ごとに、トルク閾値をそれぞれ定義する。トルク閾値は、ブレーキペダルの踏み込み量、アクセルペダルの踏み込み量、ステアリングホイールの操舵量に基づいて定義される。
【0028】
この切替条件Cにおいて、相対的に高い第1車速域VR1(例えばV2以上)に対応づけられたブレーキペダルの踏み込み量に対する第1トルク閾値TT1は、第1車速域VR1よりも低い第2車速域VR2(例えばV2未満)に対応づけられたトルク閾値TT2よりも低い値である。
図6は、車速Vと入力トルクのトルク閾値TTとの関係を示す。同図に示すように、高い車速に対応づけられた入力トルク閾値TTは、相対的に低い車速に対応づけられた入力トルク閾値TT´よりも低い値であり、車速が高いほうが制御モードの切替指令を実行させるために要求される入力操作におけるトルク量が低くなる。
図6の実線で示すように車速域が高いほどトルク閾値が段階的に低くなるようにトルク閾値を設定してもよいし、同図の破線で示すように車速が高くなるほどトルク閾値が低くなるように設定してもよい。トルク閾値は、車両性能などに基づいて実験的に設定する。
【0029】
ここで、入力判断機能について説明する。プロセッサ10は、入力操作が入力されたか否かを判断する。プロセッサ10は、切替条件Cにおいて車速に対応付けて定義されたトルク閾値TTを参照する。プロセッサ10は、入力トルクが車速に応じたトルク閾値TT以上である場合には、入力指令が「入力された」と判断する。入力指令が入力されたと判断された場合には、上述した入力態様判断機能により、その入力指令の種別、又は操作数を入力態様として取得する。プロセッサ10は、その入力態様に基づいて車速に応じた切替条件Cを充足するか否かを判断する。入力操作ごとに車速に応じたトルク閾値を設定し、トルク閾値以上の場合に入力操作があったと判断することにより、入力指令の入力の有無を正確に判断することができ、運転者の意図を高い精度で判断できる。
また、車速が高いと入力トルク量に応じた車両の挙動量が大きくなるため、本切替条件Cは、車速が高いときに、切替制御のために大きい入力トルクを要求しない。このため、走行の安定性を確保しつつ、入力指令が入力されたか否かを正確に判断でき、運転者の意図を高い精度で判断できる。一方、車両を所定量だけ移動させるための入力トルクは車速が低いほど大きくなる。このため、
図4の第4車速域VR4のように極低速域においてトルク閾値を高く設定しても、運転者の操作負荷が切替条件Cによって加重されることはない。極低速域では、大きな入力トルク量を入力しても車両の挙動量を大きく変化させないので、相対的に大きな入力トルクを要求することで、運転者の意思確認を正確に行い、運転制御の主導権を運転者に確実に引き継ぐことができる。
【0030】
続いて、条件判定機能について説明する。プロセッサ10は、入力指令の入力態様が車速に対応づけられた切替条件を充足するか否かを判定する。プロセッサ10は、切替条件Cを参照し、入力指令の入力タイミングにおいて検出された車速VXが属する入力態様情報の閾値(入力系統の所定種別/操作数の評価閾値/トルク閾値)を抽出する。車速に応じた切替条件Cは、その車速において入力された入力指令が運転者の意思に基づくか否かを評価するための値である。プロセッサ10は、入力指令によって取得した入力態様情報が、その入力指令が入力されたときの車速に応じた切替条件Cを充足する場合において、制御モードの切替指令が運転者の意図が正確に反映された指令であると判断する。
【0031】
プロセッサ10は、取得した車速が属する車速域に対応づけられた切替条件Cを読み込み、入力指令の入力態様と切替条件Cにおける入力態様情報を比較し、車速が属する車速域に対応づけられた切替条件Cを充足するか否かを判定する。プロセッサ10は、入力指令の入力態様から判断された入力系統の種別を判断し、切替条件Cにおける車速に応じた入力系統の所定種別の全てを含む場合、つまり、車速に応じた切替条件Cにおいて定義された入力系統を介した入力指令が全て揃った(入力が確認できた)場合には、切替条件Cを充足すると判断する。例えば、
図4の切替条件Cにおいて、車速センサから取得した車速VXがVX2である場合に、プロセッサ10は、車速域VR2に対応づけられた切替条件Cを参照し、入力指令の入力態様とそれを比較し、(1)メインスイッチ151、(2)キャンセルボタン154、及び(3)ブレーキ操作の入力系統を介した入力指令が入力されたことが確認できた場合には、車速VX=VX2であるときの切替条件Cを充足すると判断する。このとき、入力系統の操作順序を考慮してもよい。
【0032】
また、プロセッサ10は、入力指令の入力態様から判断された入力系統の操作数をカウントし、切替条件Cにおける車速に応じた入力系統の評価閾値AT以上の入力系統を介して入力指令が入力された場合には、切替条件Cを充足すると判断する。たとえば、車速センサから取得した車速VXがVX2である場合に、プロセッサ10は、切替条件Cにおいて車速域VR2に対応づけられた評価閾値AT2を参照する。プロセッサ10は、入力指令が入力された入力系統の操作数が3以上であることが確認できた場合には、切替条件Cを充足すると判断する。カウントされる入力系統の操作数は、たとえば、切替指令に関するキャンセルボタン154などの予め定義された入力系統を介した入力指令が最初に検出されたタイミングG1から所定時間DT以内に入力された入力指令の数とすることができる。
【0033】
次に、切替条件Cの補正機能について説明する。プロセッサ10は、レーンキープ走行の困難度に応じて上述した切替条件Cを補正する。プロセッサ10は、自車両の現在位置の情報を自車位置検出装置12から取得し、地図データベース13を参照し、車両の現在位置に基づいて車両が走行している又は走行予定のレーンを特定し、そのレーンにおけるレーンキープ走行の困難度を算出する。レーンキープ走行の困難度は、車両が走行している又は走行予定のレーンのカーブ曲率及び/又はレーン幅に基づいて判断される。プロセッサ10は、地図データベース13を参照し、車両が走行している又は走行予定のレーンのカーブ曲率及び/又はレーン幅を算出する。レーンキープ走行の困難度は、レーンの検出精度、レーンの認識の正確性、天候(降雨・降雪)などに基づいて、出願時に知られた技術を用いて判断してもよい。レーンの検出精度などが、予め設定した標準値よりも低い/悪い場合には、レーンキープ走行の困難度は高くなる(より困難である)。困難度は、基準(所定の曲率・レーン幅)とするレーンを走行する場合のレーンキープ走行の困難性を100とし、対象とするレーンを走行する場合のレーンキープ走行の困難性を100に対する比率で表現してもよい。
【0034】
プロセッサ10は、レーンキープ走行の困難度に応じて、車速に対応づけられた切替条件Cを補正する。プロセッサ10は、レーンキープ走行の困難度が相対的に高い場合の切替条件Cを、レーンキープ走行の困難度が相対的に低い場合の切替条件Cを緩和するように、(切替条件Cを)補正する。切替条件Cの緩和とは、制御モードの切り替え制御を実行する場合に車速に応じて要求される入力指令の入力負荷を軽減・低減させる変更である。具体的に、プロセッサ10は、切替条件Cにおける入力系統の所定の種別の一部を削除する補正をして切替条件Cを緩和できる。プロセッサ10は、切替条件Cにおける入力系統の操作数に関する評価閾値を低い値に補正して切替条件Cを緩和できる。プロセッサ10は、切替条件Cにおける入力操作の有無を判断するためのトルク閾値を低い値に補正して切替条件Cを緩和できる。
【0035】
図7は、切替条件Cの緩和とレーンキープ走行の困難度との関係の一例を示す。レーンキープ走行の困難度に対する切替条件Cの緩和係数を示す。緩和係数は、同じ車速(域)に応じた、基準とする「切替条件C」に対する補正後の「切替条件C´」の割合を示す。基準とする切替条件Cにおいて4つの入力系統の種別が定義されている場合に、そのうちの一つの入力系統の種別を削除するときの緩和係数は0.75となる。基準とする切替条件Cにおいて操作数の評価閾値が「4」と定義されている場合に、評価閾値を「2」と補正するときの緩和係数又は補正係数は0.50となる。なお、
図7の実線で示すように、緩和係数又は補正係数は、レーンキープ走行の困難度に応じて段階的に変化させてもよいし、同図の破線で示すように直線的に変化させてもよい。レーンキープ走行の制御の継続が困難な場面においては切替条件Cを緩和することにより、運転者に高い操作負荷を求めることなく相対的に簡易な操作で、制御モードを手動運転制御へ切り替えることができる。運転者はレーンキープ走行の継続が難しい場面において、負荷の低い操作で容易に手動運転制御へ切り替えることができる。
【0036】
プロセッサ10の切替機能について説明する。制御モードの切替機能は、前述の自律運転制御機能により自律運転制御が実行されているとき(実行中)に、自律運転制御から手動運転制御へ切り替える切替指令を含む入力指令がユーザの操作によって入力された場合に実行される。プロセッサ10は、入力指令の入力態様が、車速に応じた切替条件Cを充足すると判定した場合には、車両の制御モードを自律運転制御から手動運転制御へ切り替える。車両の挙動の変化量は速度に応じて異なるため、自律運転制御から手動運転制御への制御モードの変更に伴う制御権(制御責任)の引継ぎは、車速が高いほど正確・確実に行われることが求められる。車両の運転制御の主導権の引継ぎが正確に行われるとは、運転者が運転制御の主導権の引継ぎがされること及びそのタイミングを認識し、引き継がれた制御権を直ちに実行する(制御モードの切替処理の直後に手動運転制御の入力指令を運転者が入力する)ことである。
【0037】
本実施形態では、運転者の入力操作による入力態様が、車速に応じた切替条件Cを充足するか否かに応じて、制御モードの変更を実行するので、自律運転制御から手動運転制御への制御モードの切り替えを運転者の意思に即した制御を行うことができ、運転制御の主導権を運転者に確実に引き継ぐことができる。結果として、運転制御の主導権の移譲にタイムラグの発生を抑制できるので、高速走行時においては走行安定性を維持しつつ、低速走行時には過剰な操作負荷を運転者に負わせることなく、自律運転制御から手動運転制御への引継ぎを確実に実行することができる。車速に応じた切替条件Cを充足する入力態様の入力指令が取得された場合には、その車速で走行しているときに入力された切替を要求する入力指令が運転者の意思に基づくものであると高い精度で判断できる。これにより、自律運転制御から手動運転制御への切り替えを運転者の意思に沿って実行することができ、運転制御の主導権を運転者の意図に沿って引き継ぐことができる。
【0038】
また、車速が高いほど単位時間あたりの車両の挙動の変化量は大きいため、制御モードを手動運転制御へ変更する際の車速が高くなるほど運転者の意思確認の重要性は高くなる。本実施形態のプロセッサ10は、車速が相対的に高い場合において、制御モードを手動運転制御に切り替える場合に、車速が相対的に低い場合よりも入力系統の種別(の数)を多くする、又は入力系統の操作数の評価閾値を高くすることにより相対的に重い操作負荷を運転者に要求する。車速が高い場合には、制御モードの変更(Take Over)のために、低車速の場合よりも多くの入力系統を用いた操作を要求するので、運転者の意図を明確に操作(動作)に反映させることができる。
【0039】
他方、入力指令の入力態様が、車速に応じた切替条件Cを充足しないと判定した場合には、自律運転制御から手動運転制御へ制御モードの切り替えを禁止する。入力された入力指令が、予め十分な操作負荷を伴う入力操作を定義する切替条件Cを充足しない場合には、運転者の意思に基づく入力指令ではないと判断する。運転者の意思によらない切替指令によって制御モードが変更された場合に、運転者は、運転制御の主導権の引継ぎを予期しておらずに戸惑うため、自律運転制御の終了から運転者による手動運転制御の開始までに時間を要する。
【0040】
このように、運転者の意思によらない操作(誤操作)によって自律運転制御から手動運転制御に切り替えられると、運転者は自身が運転を主導しなければならない状況を把握できないため、運転者は運転を直ちに開始することができない。このため、自律運転制御の終了から運転者が手動運転制御を開始するまでにタイムラグが生じてしまう。高速走行中の車両の単位時間当たりの移動量は大きいため、高速走行中のテイクオーバー時におけるタイムラグの発生は短い時間であっても好ましくなく、その発生自体が抑制されるべきである。これに対し、本実施形態では入力指令が運転者の意思に基づくものであることを切替条件Cにより判断してから制御モードを手動運転制御へ変更するので、確認された運転者の意思の下に運転制御の主導権を運転者に直ちに引継ぐことができる。
【0041】
本実施形態では、切替条件Cにおいて、車速が相対的に高い場合に相対的に高い操作負荷を規定することにより、負荷の高い入力操作を運転者に求める。車速が高いときに負荷の高い入力操作が実行されることにより、切替指令に対する運転者の意思を確認できる。運転者の認識に基づいて運転制御の主導権を受け渡すことにより、運転者は自律運転制御の終了直後に手動運転制御を開始できるので、運転者の意識と制御モードの変更にタイムラグを生じさせることなく、運転制御の主導権を運転者に引き継ぐことができる。
また、本実施形態では、切替条件Cにおいて、車速が相対的に低い場合に相対的に低い操作負荷を規定する。低速走行中においては、渋滞時の走行などのようにストップと発進を繰り返す場面が想定され、制御モードの切り替えが頻繁に行われる可能性がある。本例では、低速時においては、入力系統の種類や入力系統を介した操作数を高速時よりも低減するので、高速時においては操作負荷を加重して運転者の意思を確実に確認しつつ、進行/停止が繰り返される低速時における運転者の操作負荷を軽減できる。
【0042】
切替機能について説明する。プロセッサ10は、制御モードが手動運転制御に切り替えられた場合には、その旨の指令を駆動制御装置17へ送出して自律運転制御を解除するとともに、手動による運転操作に従う手動運転制御による運転を開始する。また、制御モードが手動運転制御に切り替えられた旨を、提示装置16に提示してもよい。
【0043】
図8は、本実施形態に係る運転制御の手順を示すフローチャートである。プロセッサ10は、所定周期で、自車位置検出装置12を介して現在位置を取得し(S1)、入力装置15を介して運転者からの入力指令を取得し(S1a)、センサ11を介して車速を取得し(S1b)、地図データベース13を参照して走行状況に関する情報を取得する(S1c)。プロセッサ10は、取得した情報に基づいて自車両が走行する経路を算出する(S2)。プロセッサ10は、自律運転制御が可能であるか否かを判断する(S3)。プロセッサ10は、走行経路の高精度地図情報が参照可能であること、レーンが正確に検出及び識別されること、運転者が覚醒状態であることなどの予め設定された自律運転実行条件を充足する場合には、自律運転制御が可能であると判断する。自律運転制御が可能であると判断された場合には、自律運転制御指令を算出し(S4)、駆動制御装置17に自律運転制御指令に基づく自律運転制御を実行させる(S5)。自律運転制御は、プロセッサ10の自律運転制御機能が実行する。自律運転制御が不可能である場合には、手動運転制御を継続しつつ上述のステップS1以降の処理を繰り返す。
【0044】
プロセッサ10は、S1aにて取得した入力指令の情報から入力態様情報を取得する(S6)。プロセッサ10は、入力態様情報として、入力指令が入力された入力系統の種別(識別情報)を取得する。プロセッサ10は、最初の入力指令の入力を検出されたタイミングから所定時間以内に入力された一連の入力指令の入力系統の種別をカウントし、入力系統の操作数を入力態様情報として取得する。
【0045】
プロセッサ10は、取得した車速に応じた切替条件Cを読み込む(S7)。プロセッサ10は、入力態様情報として、入力指令が入力されたときの入力操作の入力トルクを取得してもよい(S8)。プロセッサ10は、車速に応じた切替条件Cを参照し、入力操作の入力トルクが切替条件Cにおけるトルク閾値以上である場合には、入力指令が入力されたと判断する(S9:YES)。プロセッサ10は、トルク閾値以上の入力トルクで入力された入力指令を抽出し、切替条件Cの充足/非充足の判断対象とする。S9でNOである場合には、ステップS1に戻ってもよい。なお、ステップS8及びS9はスキップし、破線で示すフローに従いステップS7からステップS10に進んでも良い。
【0046】
プロセッサ10は、取得した入力指令の入力態様と、参照している車速に応じた切替条件Cの入力態様情報(入力系統の種別、操作数)とを比較する(S10)。比較の結果、プロセッサ10は、入力指令の入力態様が切替条件Cを充足するか否かを判断する(S11)。切替条件Cを充足すると判断された場合には(S11でYES)、切り替え制御を実行する(S12)。プロセッサ10は、自律運転制御から手動運転制御に制御モードを切り替え、手動運転制御より車両の運転を実行させる(S13)。手動運転制御から自律運転制御に再び戻すという判断がされた場合には、自律運転制御が実行される(S14)。ステップS1に戻り、手動運転制御への移行を待機する。
【0047】
ステップS7において、参照した車速に応じた切替条件Cを補正する処理を行ってもよい。プロセッサ10は、レーンキープ走行制御の継続の困難度、具体的には走行レーンのカーブ曲率及び/又はレーン幅を取得する(S21)。プロセッサ10は、車両が走行している又は走行予定のレーンにおけるレーンキープ走行の困難度に応じて、車速に対応づけられた切替条件Cの内容を補正する(S22)。プロセッサ10は、補正された切替条件Cを新たな基準として読み込む(S23)。ステップS21-S23は、スキップすることができる。
【符号の説明】
【0048】
100…運転制御システム、1…運転制御装置、10…プロセッサ、11…センサ、12…自車位置検出装置、13…地図データベース、14…車載機器、15…入力装置、16…提示装置、17…駆動制御装置、20…通信装置