IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-寸法測定装置 図1
  • 特許-寸法測定装置 図2
  • 特許-寸法測定装置 図3
  • 特許-寸法測定装置 図4
  • 特許-寸法測定装置 図5
  • 特許-寸法測定装置 図6
  • 特許-寸法測定装置 図7
  • 特許-寸法測定装置 図8
  • 特許-寸法測定装置 図9
  • 特許-寸法測定装置 図10
  • 特許-寸法測定装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】寸法測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/1069 20200101AFI20241210BHJP
   G01B 5/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01B3/1069
G01B5/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023518557
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2021017405
(87)【国際公開番号】W WO2022234624
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 麦平
(72)【発明者】
【氏名】古屋敷 亘
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特公平08-012041(JP,B2)
【文献】特開2016-098063(JP,A)
【文献】特開2003-075268(JP,A)
【文献】特開2021-051031(JP,A)
【文献】特開平07-110230(JP,A)
【文献】実開平05-092603(JP,U)
【文献】実開昭57-089901(JP,U)
【文献】特開2016-070868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/10-3/1094
G01B 5/00-5/30
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が測定対象物の寸法測定に使用する寸法測定装置であって、
前記測定対象物は、エレベーターのレールを固定するための既設の複数のレールブラケットを含み、
本体ケースに設けられた引出口から引き出し可能なワイヤーと、
前記ワイヤーの引き出し量に応じた電気信号を出力する測長センサと、
前記電気信号に基づいて前記引き出し量に対応する測長値を演算する演算装置と、
前記測長値を表示する表示装置と、
前記測定対象物の1又は複数の測定箇所の情報を含む測定内容情報が格納されたメモリと、
前記メモリと結合されたプロセッサと、を備え、
前記測定内容情報は、
前記複数のレールブラケットの各レールブラケットを特定するための情報、前記各レールブラケットの測定箇所を特定するための情報、及び前記測定箇所の測定順序を定めた情報を含み、
前記演算装置と前記プロセッサとは、協働により、
前記測定内容情報の中から次に測定する測定箇所の情報を抽出した測定指示情報を前記表示装置に表示し、作業者による前記ワイヤーの操作を受けて前記測長値を演算し、前記測長値を前記測定指示情報に関連付けた測定結果情報を前記メモリに格納するように構成され、
前記寸法測定装置は、
前記ワイヤーと、前記測長センサと、前記演算装置と、前記表示装置と、を前記本体ケースに格納した測定端末と、
前記測定端末と通信ネットワークで接続され、前記プロセッサと、前記メモリと、を含む管理装置と、を含み、
前記管理装置は、移動端末表示装置を備えた持ち運び可能な移動端末であり、
前記プロセッサは、前記測定結果情報に基づいて、前記複数のレールブラケットの各レールブラケットの評価のための演算を行う評価処理を実行し、前記評価処理の評価結果を含んだ評価結果情報を前記メモリに格納し、前記評価結果情報を前記移動端末表示装置に表示するように構成され
前記プロセッサは、前記評価処理において、前記複数のレールブラケットの各レールブラケットの強度計算を行うように構成される
ことを特徴とする寸法測定装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記測定指示情報を前記測定端末に送信する送信処理を実行し、
前記演算装置は、受信した前記測定指示情報を前記表示装置に表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の寸法測定装置。
【請求項3】
前記測定端末は、作業者が操作するスイッチを備え、
前記演算装置は、前記スイッチが操作されたときの前記測長値を用いて前記測定結果情報を生成し、生成された前記測定結果情報を前記管理装置に送信し、
前記プロセッサは、受信した前記測定結果情報を前記メモリに格納する格納処理を実行する
ことを特徴とする請求項に記載の寸法測定装置。
【請求項4】
前記送信処理において、前記プロセッサは、前記測定結果情報を受信したことを受けて、前記測定指示情報を生成し、生成された前記測定指示情報を前記測定端末に送信する
ことを特徴とする請求項又は請求項に記載の寸法測定装置。
【請求項5】
前記引出口は、先端に向かって先細りの形状を有していることを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載の寸法測定装置。
【請求項6】
前記ワイヤーは、先端に先端部材を有し、
前記先端部材は、着磁されていることを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載の寸法測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、寸法測定装置に係り、特にエレベーターの改修時における寸法の測定に用いられる寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鋼製巻尺の読み取りを可能とした鋼製巻尺読み取り器に関する技術が開示されている。この技術では、パルス測長器によって計測された鋼製巻尺の取り出し量に相当する信号を受けて、測定寸法が演算される。演算された測定寸法は、コンピュータに転送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開平8-285542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターの改修工事では、レールブラケットの強度評価を行うために、既設の複数のレールブラケットの寸法を測定することがある。作業員がコンベックススケール等を用いて複数のレールブラケットの寸法を測定する場合、測定値を測定物の測定箇所と関連付けて記憶する作業を行う必要があり、作業員の負担が大きいという課題がある。特許文献1に記載された技術は、計測値を機械が読み取るという点では作業者の負担軽減に繋がるものの、測定箇所との関連付けを行う作業は作業者が行う必要があり、依然として作業者の負担が大きい。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、作業者に測定箇所を明示することにより作業者の作業負担を軽減することのできる寸法測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の寸法計測装置は、作業者が測定対象物の寸法測定に使用する寸法測定装置である。測定対象物は、エレベーターのレールを固定するための既設の複数のレールブラケットを含む。寸法測定装置は、本体ケースに設けられた引出口から引き出し可能なワイヤーと、ワイヤーの引き出し量に応じた電気信号を出力する測長センサと、電気信号に基づいて引き出し量に対応する測長値を演算する演算装置と、測長値を表示する表示装置と、測定対象物の1又は複数の測定箇所の情報を含む測定内容情報が格納されたメモリと、メモリと結合されたプロセッサと、を備える。測定内容情報は、複数のレールブラケットの各レールブラケットを特定するための情報、各レールブラケットの測定箇所を特定するための情報、及び測定箇所の測定順序を定めた情報を含む。演算装置とプロセッサとは、協働により、測定内容情報の中から次に測定する測定箇所の情報を抽出した測定指示情報を表示装置に表示し、作業者によるワイヤーの操作を受けて測長値を演算し、測長値を測定指示情報に関連付けた測定結果情報をメモリに格納する。寸法測定装置は、ワイヤーと、測長センサと、演算装置と、表示装置と、を本体ケースに格納した測定端末と、測定端末と通信ネットワークで接続され、プロセッサと、メモリと、を含む管理装置と、を含み、管理装置は、移動端末表示装置を備えた持ち運び可能な移動端末であり、プロセッサは、測定結果情報に基づいて、複数のレールブラケットの各レールブラケットの評価のための演算を行う評価処理を実行し、評価処理の評価結果を含んだ評価結果情報をメモリに格納し、評価結果情報を移動端末表示装置に表示するように構成される。また、プロセッサは、評価処理において、複数のレールブラケットの各レールブラケットの強度計算を行うように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の寸法計測装置によれば、作業者が使用する寸法計測装置の表示装置に、次に測定する測定箇所を明示した測定指示情報が表示される。このような制御によれば、作業者は表示装置を参照しながら、次に測定する測定箇所の測定を効率よく行うことができる。また、測定結果は、測定指示情報に関連付けられてメモリに格納されるので、作業者が別途記録する必要がない。このように、本開示の寸法計測装置によれば、測定対象物の寸法測定において作業者の作業負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る寸法測定装置の構成図である。
図2】測定端末の内部構成の一例を示すブロック図である。
図3】表示装置の表示の一例を示す図である。
図4】管理装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
図5】管理装置のプロセッサがプログラムを実行することによって実現される機能を示す機能ブロック図である。
図6】表示装置に表示された強度計算処理画面の一例である。
図7】エレベーターのレールブラケットの測定方法を説明するための図である。
図8】測定作業において測定端末によって実行される処理のルーチンを示すフローチャートである。
図9】作業者が測定端末を用いて測定箇所の測定を行う方法を説明するための図である。
図10】測定作業において管理装置によって実行される処理のルーチンを示すフローチャートである。
図11】制御装置のハードウェア資源の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態.
1.実施の形態の寸法測定装置の構成
図1は、実施の形態に係る寸法測定装置の構成図である。寸法測定装置100は、ハンディタイプの測定端末20を用いて測定対象物の寸法を測定する装置である。測定対象物は、エレベーターの改修工事において、作業員によって測定される既設のレールブラケットが例示される。測定端末20は、通信ネットワーク10を介して管理装置40に接続される。典型的には、通信ネットワーク10は、ブルートゥース(登録商標)又はWi-Fi(登録商標)等の近距離無線通信が例示される。管理装置40は、測定端末20による測定対象物の寸法測定を総合的に管理する。このような管理装置40としては、例えばタブレット、スマートホン等が例示される。
【0011】
エレベーターの改修工事を行う場合、レールブラケットの強度計算を行うために、既設の複数のレールブラケットの寸法を測定することが求められる。エレベーターには、かご用の複数のレールと、つり合い錘用の複数のレールとが存在する。それぞれのレールは、それぞれ複数のレールブラケットによって壁面等に固定されている。測定対象物が1又は複数のレールブラケットである場合、管理装置40には、測定対象物である各レールブラケットの測定内容を含んだ測定内容情報が予め格納されている。測定内容情報は、測定対象物である各レールブラケットを特定するための情報、各レールブラケットの測定箇所を特定するための情報、及び各測定箇所の測定順序を定めた情報が含まれている。典型的には、測定内容情報は、レールの種類を特定するレール区分、レールブラケットを特定するID、レールブラケットの種類を特定する区分、及び測定箇所を示す寸法名を含む。管理装置40は、測定内容情報の中から、次に測定する測定箇所の情報を抽出した測定指示情報を測定端末20に送信する。
【0012】
また、管理装置40は、測定対象物の測定結果を含んだ測定結果情報を測定端末20から受信して格納する。測定結果情報は、測定結果に測定指示情報が対応付けられた情報を含んでいる。典型的には、測定結果情報は、測定指示情報に含まれるレール区分、ID、区分、寸法名に加えて、当該測定箇所に対応する測定結果を含む。以下、測定端末20及び管理装置40の構成及び機能について、更に詳しく説明する。
【0013】
2.実施の形態の測定端末の構成
測定端末20は、本体ケース21を有している。本体ケース21は、作業員が片手で把持して作業可能な大きさを有している。測定端末20は、長手方向の一端面にワイヤー24の引出口22が設けられている。典型的には、引出口22は、先端に向かって先細りの円錐台形状を有している。ワイヤー24は、作業者が寸法測定を行う際に引き出される尺材である。ワイヤー24は、本体ケース21内に配置されたワイヤー送り出し回転機構29に引き出し可能に巻き回されている。ワイヤー送り出し回転機構29はワイヤー24を巻き回し方向に付勢する付勢機構を備えていてもよい。また、ワイヤー送り出し回転機構29は、引き出したワイヤー24を保持する保持機構を備えていてもよい。
【0014】
ワイヤー24の先端には先端部材26が設けられている。先端部材26は、平面で構成された先端面を有している。先端部材26は、先端面が測定対象物の金属面に張り付くように着磁されていてもよい。作業者が先端部材26を引っ張ることによってワイヤー24が引き出される。典型的には、先端部材26の先端面26aから引出口22の先端部22aまでの引出幅が、実際に測定される測長値に相当する。作業者は、先端面26aを測定対象物の測定場所の一端に合わせ、先端部22aを測定場所の他端側に合わせることで測定を行う。
【0015】
図2は、測定端末の内部構成の一例を示すブロック図である。測定端末20は、測長センサ23、演算装置25、通信装置27、送信スイッチ28、及び表示装置30を有している。
【0016】
測長センサ23は、本体ケース21の内部において、ワイヤー送り出し回転機構29に取り付けられている。測長センサ23は、ワイヤー送り出し回転機構29の回転に応じた電気信号であるパルス信号を出力するロータリーエンコーダを含む。作業者がワイヤー24を引き出すと、測長センサ23は引き出し量、つまり測長値に応じたパルス信号を出力する。出力されたパルス信号は演算装置25に送られる。
【0017】
演算装置25は、測定端末20に搭載されたコンピュータである。演算装置25には、測長センサ23、通信装置27、送信スイッチ28、及び表示装置30が接続されている。演算装置25は、1つ又は複数のプロセッサ25aとプロセッサ25aに結合された1つ又は複数のメモリ25bとを備えている。メモリ25bには、プロセッサ25aで実行可能な1つ又は複数のプログラム25cが記憶されている。
【0018】
プロセッサ25aがプログラム25cを実行することにより、プロセッサ25aによる各種処理が実現される。プログラム25cには、例えば、測長センサ23のパルス信号から測長値を演算するための演算プログラムが含まれる。演算装置25は、演算プログラムを実行することによりパルス信号から随時測長値を演算する。典型的には、演算装置25は、パルス信号の変化に基づいてワイヤー24の引き出し量の変化量を0.1mm単位で算出し、測長値の現在値として保持する。なお、測定端末20による測定範囲は、例えば0.0mmから1000.0mmの範囲である。
【0019】
送信スイッチ28は、測長値を管理装置40に送信する際に作業員が操作するスイッチである。送信スイッチ28は、例えば本体ケース21の上面に設置される。送信スイッチ28を押下したときのON信号は、演算装置25に送られる。演算装置25は、ON信号を受信したときの測長値に測定指示情報を関連付けた測定結果情報を生成し、管理装置40に送信する。
【0020】
通信装置27は、測定端末20の外部との無線通信を制御する装置である。通信装置27は、通信ネットワーク10を介して管理装置40と通信を行う。演算装置25で処理された測定結果情報は、通信装置27を用いて管理装置40に送信される。また、管理装置40で処理された測定位置情報は、通信装置27を用いて演算装置25に取り込まれる。
【0021】
表示装置30は、LCD(Liquid Crystal Display)であり、例えば本体ケース21の上面に設置される。図3は、表示装置の表示の一例を示す図である。この図に示す例では、表示装置30は、演算装置25によって演算された測長値(mm)を表示する。また、表示装置30は、管理装置40から取り込んだ測定指示情報を表示する。
【0022】
3.実施の形態の管理装置の構成
図4は、管理装置の内部構成の一例を示すブロック図である。管理装置40は、持ち運び可能な移動端末であり、例えば測定端末20を所持する作業者によって所持される。管理装置40は、制御装置42と、通信装置46と、表示装置48と、を備える。
【0023】
通信装置46は、管理装置40の外部との通信を制御する装置である。通信装置46は、通信ネットワーク10を介して行われる管理装置40と測定端末20との通信を仲介する。また、通信装置46は、通信ネットワーク10を介して測定結果情報を受信する。管理装置40で処理された情報は、通信装置46を用いて測定端末20に送信される。測定端末20で処理された情報は、通信装置46を用いて管理装置40に取り込まれる。
【0024】
制御装置42は、1つ又は複数のプロセッサ42aとプロセッサ42aに結合された1つ又は複数のメモリ42bとを備えている。メモリ42bには、プロセッサ42aで実行可能な1つ又は複数のプログラム42cとそれに関連する種々のデータ42dとが記憶されている。メモリに格納されるデータ42dとしては、例えば、測定内容情報、測定結果情報、及び後述する評価結果情報が例示される。
【0025】
プロセッサ42aがプログラム42cを実行することにより、プロセッサ42aによる各種処理が実現される。図5は、管理装置のプロセッサがプログラムを実行することによって実現される機能を示す機能ブロック図である。図5に示すように、プロセッサ42aは、測定指示情報を送信するための送信処理部421と、測定結果情報を格納するための格納処理部422と、測定結果を用いてレールブラケットの評価を行うための評価処理部423と、を備える。以下、図1も参照しながら、作業員がレールブラケットの寸法測定を行う場合を例に、プロセッサ42aの機能について説明する。
【0026】
送信処理部421は、通信ネットワーク10を介して測定指示情報を測定端末20に送信する機能を有する機能ブロックである。測定指示情報は、作業者に次の測定箇所を明示するために必要な情報である。メモリ42bには、改修対象のエレベーターのレールブラケットの測定内容情報が予め格納されている。送信処理部421は、測定内容情報の中から次に測定する測定箇所の測定指示情報を測定端末20へ送信する。典型的には、送信処理部421は、測定端末20から測定結果情報を受信したことを受けて、次に測定すべき測定箇所の測定指示情報を、メモリ42bに格納されている測定内容情報から生成して送信する。
【0027】
格納処理部422は、測定端末20から受信した測定結果情報をメモリ42bに格納する機能を有する機能ブロックである。評価処理部423は、メモリ42bに格納された測定結果を用いて、レールブラケットの性能を評価する機能を有する機能ブロックである。典型的には、評価処理部423は、レールブラケットの強度計算を自動で行い、その評価結果を含む評価結果情報をメモリ42bに格納する。さらに、評価処理部423は、評価結果情報を表示装置48に表示する。図6は、表示装置に表示された強度計算処理画面の一例である。図6では、評価結果情報と評価結果情報とが表示されている例が図示されている。強度計算の計算手法に限定はない。すなわち、ここでの強度計算は、レールブラケットの測定結果を用いた公知の強度計算手法を採用することができる。
【0028】
4.寸法測定装置の具体的な使用例
次に、本実施の形態の寸法測定装置100を用いてエレベーターのレールブラケットの寸法測定を行う具体例について説明する。図7は、エレベーターのレールブラケットの測定方法を説明するための図である。図7に示す例では、エレベーター50が備える複数のレール及びレールブラケットのうち、レール52を壁面に取り付けるためのレールブラケット54が図示されている。管理装置40のメモリ42bには、エレベーター50が備える複数のレールブラケットの測定を行う際の測定箇所及び測定順序が規定された測定内容情報が格納されている。管理装置40は、次に測定する測定箇所を明示する測定指示情報を生成して測定端末20に送信する。作業者は、管理装置40から送信される測定指示情報を測定端末20の表示装置30で確認しながら測定作業を進める。以下、フローチャートを参照して、レールブラケット54の測定作業において測定端末20によって行われる処理、及び管理装置40によって行われる処理についてそれぞれ説明する。
【0029】
図8は、測定作業において測定端末によって実行される処理のルーチンを示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、測定端末20の演算装置25のプロセッサ25aがプログラム25cを実行することによって実現される。
【0030】
図8に示すルーチンのステップS100では、演算装置25が測定指示情報を管理装置40から受信したかどうかを判定する。その結果、測定指示情報を受信した場合はステップS102に進み、測定指示情報を受信していない場合は本ルーチンの処理が終了される。
【0031】
ステップS102では、演算装置25は、受信した測定指示情報を表示装置30に表示する。典型的には、演算装置25は、図3に示すように、次の測定箇所を明示するための情報として、レール区分、ID、区分、寸法名が表示される。
【0032】
作業者は、表示装置30に表示された測定箇所を参照しながら測定を行う。図9は、作業者が測定端末20を用いて測定箇所の測定を行う方法を説明するための図である。図9では、レールブラケット54の寸法Aが測定箇所として指定された場合を例示している。作業者は、先端部材26の先端面26aを寸法Aの一端54aに合わせる。図9の例では、寸法Aの一端54aが壁面に接しているため、先端面26aを壁に接触させる。なお、壁面が金属である場合には、先端面26aは磁力によって壁面に固定される。次に作業者は、ワイヤー24を引き出して、引出口22の先端部22aを寸法Aの他端54bに合わせる。
【0033】
ステップS104では、演算装置25は、測長センサ23のパルス信号を用いて、ワイヤー24の引き出し量、つまり先端面26aから先端部22aまでの長さに対応する測長値を演算する。演算された測長値は表示装置30の画面に表示される。作業者は、測長値を決定する場合、送信スイッチ28を押下する。ステップS106では、送信スイッチ28が押下されたかどうかが判定される。ここでは、演算装置25は、送信スイッチのON信号を受信したかどうかを判定する。その結果、演算装置25がON信号を受信していない場合、未だ測定中であると判断されて、ステップS104の処理が再度実行される。一方、演算装置25がON信号を受信した場合、指定された測定箇所の測定が完了したと判断されて、ステップS108に進む。
【0034】
ステップS108では、演算装置25は、通信装置27を用いて測定結果情報を生成し、管理装置40に送信する。測定端末20では、図8に示すルーチンが繰り返し実行されることにより、指定された測定箇所の測定が順に行われる。
【0035】
図10は、測定作業において管理装置によって実行される処理のルーチンを示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、管理装置40の制御装置42のプロセッサ42aがプログラム42cを実行することによって実現される。
【0036】
図10に示すルーチンのステップS120では、制御装置42は、測定指示情報を測定端末20に送信する送信処理を実行する。測定内容情報には、レールブラケットの測定箇所を明示するための情報が、測定順序と関連付けられて格納されている。制御装置42は、測定内容情報に含まれる未測定の測定箇所の中から、測定順序の最も高い測定箇所の情報を抽出し、測定指示情報として送信する。ステップS120の処理が行われると、処理は次のステップS122に進む。
【0037】
ステップS122では、制御装置42は、ステップS120において送信した測定指示情報に対応する測定結果情報を受信したかどうかを判定する。その結果、測定結果情報を受信していない場合、測定結果情報を受信するまでステップS122の処理が繰り返し実行される。
【0038】
一方、測定結果情報を受信した場合、処理はステップS124に進む。ステップS124では、制御装置42は、受信した測定結果情報をメモリ42bに格納する格納処理を実行する。格納された測定結果情報は、表示装置48の画面に表示される。ここでは、例えば図6に示すように、測定結果と測定箇所が関連付けられた情報が表示される。次のステップS126では、制御装置42は、測定結果に基づいてレールブラケットの評価を行う評価処理を実行する。評価処理は、例えばレールブラケットの強度計算が例示される。計算結果を含む評価結果情報は、メモリ42dに格納される。また、評価結果情報は、測定結果ととともに表示装置48の画面に表示される。ステップS126の処理が行われると、処理は次のステップS128に進む。
【0039】
ステップS128では、制御装置42は、測定内容情報に含まれる全ての測定箇所の測定が完了したかどうかを判定する。その結果、全ての測定が完了していない場合、処理は再びステップS120に進み、次の測定箇所を指定する情報を抽出した測定指示情報が送信される。一方、全ての測定が完了した場合、本ルーチンは終了される。
【0040】
以上説明した寸法測定装置100の動作によれば、測定箇所の情報が測定端末20の表示装置30に表示される。これにより、作業者は別途資料等を参照せずに作業を行うことができるので作業負担が軽減される。また、作業者は送信スイッチ28を押下する操作によって測定結果情報を自動で管理装置40へと送信することができる。また、管理装置40は、測定結果情報の受信を受けて次の測定箇所の情報を測定端末20へと自動で送信する。これにより、作業者は、送信スイッチ28を押下する操作のみによって、複数の測定を継続して行うことができる。
【0041】
5.変形例
本実施の形態の寸法測定装置100は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0042】
5-1.寸法測定装置100
寸法測定装置100は、管理装置40が備える機能の全て又は一部が測定端末20に配置されていてもよい。この場合、測定端末20の演算装置25と管理装置40の制御装置42とが協働して図8及び図10に示すルーチンを実行すればよい。
【0043】
5-2.測定端末20
レールブラケットの測定において、測定端末20のワイヤー24による測定が困難な測定不可寸法が存在する場合がある。このような場合、作業者は、他の測定器を用いて測定不可寸法を測定する。そして、作業者は、表示装置30の測長値が測定値となるように測定端末20のワイヤー24を引き出して送信スイッチ28を押下する。このような測定端末20の使用方法によれば、他の測定機器によって測定した測定結果であっても、測定箇所と関連付けて管理装置40に送信することが可能となる。
【0044】
測定端末20の形状に限定はない。すなわち、表示装置30、送信スイッチ28、引出口22、及び先端部材26の形状及び配置は、作業者の操作性を考慮した種々の形態を採用することができる。
5-3.制御装置
【0045】
図11は、制御装置42のハードウェア資源の変形例を示す図である。図11に示す例では、制御装置42は、例えばプロセッサ42a、メモリ42b、及び専用ハードウェア42eを含む処理回路42fを備えている。図11は、制御装置42が有する機能の一部を専用ハードウェア42eよって実現する例を示している。制御装置42が有する機能の全部を専用ハードウェア42eによって実現しても良い。専用ハードウェア42eとして、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【符号の説明】
【0046】
10 通信ネットワーク、20 測定端末、21 本体ケース、 22 引出口、 22a 先端部、 23 測長センサ、 24 ワイヤー、 25 演算装置、 25a プロセッサ、 25b メモリ、 25c プログラム、 26 先端部材、 26a 先端面、 27 通信装置、 28 送信スイッチ、 29 回転機構、 30 表示装置、 40 管理装置、 42 制御装置、 42a プロセッサ、 42b メモリ、 42c プログラム、 42d データ、 42e 専用ハードウェア、 42f 処理回路、 46 通信装置、 48 表示装置、 50 エレベーター、 52 レール、 54 レールブラケット、 100 寸法測定装置、 421 送信処理部、 422 格納処理部、 423 評価処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11