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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光照射装置および導光部材保持具
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61N5/067
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023529254
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023494
(87)【国際公開番号】W WO2022269729
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮宏
(72)【発明者】
【氏名】馬場 晶子
(72)【発明者】
【氏名】右田 かよ
(72)【発明者】
【氏名】島崎 幹朗
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-19217(JP,A)
【文献】特開平1-218443(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104383645(CN,A)
【文献】特開昭63-21068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06 - A61N 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための光照射装置であって、
治療光を発生する光源部と、
前記光源部に接続される入射端と、前記入射端に入射した光を出射する出射端とを含むケーブル状の導光部材と、
前記導光部材の前記出射端を保持する一端部と、前記一端部とは反対の他端部とを有し、前記一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、
構造物に取り付け可能に設けられ、前記保持部の前記他端部を支持するベース部と、を備え
前記一端部は棒状形状を有し、
前記保持部は、前記一端部が延びる方向に沿って前記導光部材を案内するガイド部を有する、光照射装置。
【請求項2】
光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための光照射装置であって、
治療光を発生する光源部と、
前記光源部に接続される入射端と、前記入射端に入射した光を出射する出射端とを含むケーブル状の導光部材と、
前記導光部材の前記出射端を保持する一端部と、前記一端部とは反対の他端部とを有し、前記一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、
構造物に取り付け可能に設けられ、前記保持部の前記他端部を支持するベース部と、を備え、
前記ベース部は、
前記構造物に接触可能な接触面と、
前記接触面を前記構造物に押圧することにより前記接触面を前記構造物に固定する固定状態と、前記押圧を解除する解除状態と、に切り替える操作部と、
を含む、光照射装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記一端部と前記他端部との間に、直列で接続された複数の関節機構を含む、請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記関節機構は、棒状のリンクと、前記リンクを回動可能に保持する関節とを含む、請求項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記関節は、球面関節により構成されている、請求項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記一端部の外表面に形成された溝または突起であり、前記導光部材の一部を配置可能な案内面を有する、請求項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記保持部は、外力により曲げ変形可能かつ形状を維持可能な変形可能部材を有し、
前記変形可能部材が前記保持部の前記一端部を構成している、請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記光源部は、それぞれ前記導光部材が接続可能な複数の光出力ポートを含み、
前記ベース部は、それぞれ前記保持部を着脱可能な複数の取付部を含む、請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記保持部は、第1長さを有する第1保持部と、前記第1長さよりも大きい第2長さを有する第2保持部と、を含む、請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項10】
光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための出射端を含むケーブル状の導光部材を保持する導光部材保持具であって、
前記導光部材の前記出射端を保持する一端部と、前記一端部とは反対の他端部とを有し、前記一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、
構造物に取り付け可能に設けられ、前記保持部の前記他端部を支持するベース部と、を備え
前記一端部は棒状形状を有し、
前記保持部は、前記一端部が延びる方向に沿って前記導光部材を案内するガイド部を有する、導光部材保持具。
【請求項11】
光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための出射端を含むケーブル状の導光部材を保持する導光部材保持具であって、
前記導光部材の前記出射端を保持する一端部と、前記一端部とは反対の他端部とを有し、前記一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、
構造物に取り付け可能に設けられ、前記保持部の前記他端部を支持するベース部と、を備え、
前記ベース部は、
前記構造物に接触可能な接触面と、
前記接触面を前記構造物に押圧することにより前記接触面を前記構造物に固定する固定状態と、前記押圧を解除する解除状態と、に切り替える操作部と、
を含む、導光部材保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置および導光部材保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射することにより治療を行う治療手法に用いる光照射装置が知られている。このような光照射装置は、たとえば、特表2020-522745号公報に開示されている。
【0003】
上記特表2020-522745号公報には、レーザー放射を発生させるための光源と、導光ファイバとを備えた医療装置が開示されている。医療装置は、光線力学的治療(PDT)に用いられる。レーザー放射が、ファイバを通って治療領域に誘導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2020-522745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特表2020-522745号公報には開示されていないが、レーザー光を治療対象部位に照射する治療は、医師が光ファイバの先端付近を手で把持して光ファイバの先端の位置および向きを手作業で制御することにより行われていた。
【0006】
治療対象部位に治療光を照射する治療手法において、所望の治療効果を得るためには、治療対象部位に対する治療光の照射範囲、治療光の単位面積当たりの照射強度、などを精度良く制御することが重要である。単位面積当たりの照射強度は、光ファイバの出射端と治療対象部位との間の距離に依存する。光ファイバなどの導光部材を手で把持する場合、予め設定された照射時間の間、継続して導光部材を同じ位置に保持し続ける作業による疲労や、保持中の手元位置のブレなどに起因して、出射端の位置および向きを精度良く維持することが困難であるという問題点がある。しかし、光ファイバなどの導光部材は柔軟であり容易に曲がるため、所望の位置および向きに固定することが容易ではない。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、治療対象部位に治療光を照射する治療手法において、導光部材の出射端の位置および向きを精度良く維持することが可能な光照射装置および導光部材保持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による光照射装置は、光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための光照射装置であって、治療光を発生する光源部と、光源部に接続される入射端と、入射端に入射した光を出射する出射端とを含むケーブル状の導光部材と、導光部材の出射端を保持する一端部と、一端部とは反対の他端部とを有し、一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、構造物に取り付け可能に設けられ、保持部の他端部を支持するベース部と、を備え、一端部は棒状形状を有し、保持部は、一端部が延びる方向に沿って導光部材を案内するガイド部を有する。
また、この発明の第2の局面による光照射装置は、光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための光照射装置であって、治療光を発生する光源部と、光源部に接続される入射端と、入射端に入射した光を出射する出射端とを含むケーブル状の導光部材と、導光部材の出射端を保持する一端部と、一端部とは反対の他端部とを有し、一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、構造物に取り付け可能に設けられ、保持部の他端部を支持するベース部と、を備え、ベース部は、構造物に接触可能な接触面と、接触面を構造物に押圧することにより接触面を構造物に固定する固定状態と、押圧を解除する解除状態と、に切り替える操作部と、を含む。
【0009】
この発明の第の局面による導光部材保持具は、光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための出射端を含むケーブル状の導光部材を保持する導光部材保持具であって、導光部材の出射端を保持する一端部と、一端部とは反対の他端部とを有し、一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、構造物に取り付け可能に設けられ、保持部の他端部を支持するベース部と、を備え、一端部は棒状形状を有し、保持部は、一端部が延びる方向に沿って導光部材を案内するガイド部を有する。
また、この発明の第4の局面による導光部材保持具は、光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための出射端を含むケーブル状の導光部材を保持する導光部材保持具であって、導光部材の出射端を保持する一端部と、一端部とは反対の他端部とを有し、一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、構造物に取り付け可能に設けられ、保持部の他端部を支持するベース部と、を備え、ベース部は、構造物に接触可能な接触面と、接触面を構造物に押圧することにより接触面を構造物に固定する固定状態と、押圧を解除する解除状態と、に切り替える操作部と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記のように、導光部材の出射端を保持する一端部と、一端部とは反対の他端部とを有し、一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、構造物に取り付け可能に設けられ、保持部の他端部を支持するベース部と、を設ける。これにより、治療時に被検体の周囲に存在する構造物にベース部を固定し、ベース部から延びるアーム状の保持部によって導光部材の出射端を保持することができる。そして、アーム状の保持部において、出射端を保持する一端部の位置および角度を調整することによって、導光部材の出射端の位置および向きを調整できる。この結果、治療対象部位に治療光を照射する治療手法において、導光部材の出射端の位置および向きを精度良く維持することができる。なお、出射端の位置および向きの調整により、治療対象部位に対する治療光の照射範囲と、治療対象部位と出射端との間の距離(すなわち、治療光の単位面積当たりの照射強度)が制御できる。その結果、所望の治療効果を得るための治療精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による光照射装置の概略図である。
図2】導光部材を示した模式図である。
図3】導光部材保持具の構成例を示した斜視図である。
図4】関節機構の構成例の拡大斜視図である。
図5】ガイド部を説明するための保持部の一端部の模式的な斜視図である。
図6】一端部に導光部材が保持された状態を示した斜視図である。
図7図3に示したベース部の構造を説明するための模式的な断面図である。
図8図3に示したベース部を構造物に取り付けた状態を示した斜視図である。
図9】第1変形例による導光部材保持具を示した模式的な斜視図である。
図10図9に示したベース部の構造を説明するための模式的な断面図である。
図11】第1変形例による導光部材保持具により導光部材を保持した状態を示した斜視図である。
図12】ガイド部の変形例を示した模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1図8を参照して、一実施形態による光照射装置100の構成について説明する。
【0014】
図1に示す光照射装置100は、光感受性物質を含む薬剤102が投与された被検体の治療対象部位101aに治療光80を照射するための光照射装置である。本実施形態では、光免疫療法に用いる光照射装置100について説明する。
【0015】
光免疫療法は、光化学反応を起こす蛍光物質と、がん細胞に選択的に結合する抗体とを含む薬剤をがん患者の体内に投与し、蛍光物質に応じた特定の波長帯の治療光をがん細胞に照射することにより、光化学反応を発生させてがん細胞を破壊する治療手法である。
【0016】
光免疫療法では、治療前にがん患者101の体内に薬剤102が投与される。薬剤102は、蛍光を発する蛍光物質と、抗体との結合体を含む。がん患者101は、請求の範囲の「被検体」の一例である。また、がん患者101は、人間以外の動物を対象としてもよい。
【0017】
蛍光物質は、特定の波長帯の光が照射され続けることにより、光化学反応を起こす物質である。光免疫療法による治療(蛍光物質を含む薬剤102に特定の波長帯の光を照射することに基づいてがん細胞を死滅させる治療)においては、蛍光物質の種類に応じた特定の波長帯の治療光80が、光照射装置100により、がん患者101の治療対象部位101aに対して照射される。治療対象部位101aは、たとえば、頭頸部、胸部、腹部、背中、体内の臓器(たとえば消化管、肝臓、副腎など)などであるが、特に限定されない。
【0018】
また、蛍光物質は、治療光80が照射されることにより、励起して蛍光を発する物質である。蛍光物質は、たとえば、IRDye(登録商標) 700DX(以下、「IR700」という)などの化学物質である。IR700は、波長600nm以上700nm以下の光によって励起して、波長700nmまたは770nm程度の光を蛍光として発する。
【0019】
治療光80は、治療に用いられる薬剤102の蛍光物質が光化学反応を起こす波長帯の光である。波長は、治療に用いられる薬剤102の蛍光物質の種類に応じて異なる。蛍光物質にIR700が用いられる場合には、治療光80は、波長600nm以上700nm以下の光、たとえば、波長が690nm程度の非熱性赤色光(近赤外光)である。
【0020】
薬剤102に含まれる抗体は、がん細胞の抗原(がん細胞に発現している特定のたんぱく質)に選択的に結合する。したがって、抗体は、治療の対象となるがん細胞の抗原に合わせて選択される。抗体は、たとえば、セツキシマブなどである。
【0021】
がん患者101に投与された薬剤102は、血流によりがん患者101の体内を循環しながら、抗体によって、治療対象部位101aに存在するがん細胞の抗原に選択的に結合する。薬剤102の蛍光物質は、治療対象部位101aに照射された治療光80を吸収することにより、光化学反応を起こして、蛍光物質の化学構造が変化する。この蛍光物質の化学構造の変化によって、抗体の立体構造の変化が引き起こされる。そして、がん細胞に結合した抗体の立体構造の変化が、結合したがん細胞の細胞膜に損傷を与える。その結果、がん細胞の細胞膜の損傷箇所から侵入した水によって、がん細胞が膨張して、破裂することにより、がん細胞は破壊される(死滅する)。なお、蛍光物質は、光化学反応による化学構造の変化を起こした後は蛍光を発しなくなる。
【0022】
本実施形態では、特に、蛍光物質として近赤外光に感受性を有するIR700を用いた薬剤102を用い、治療光80として近赤外光線を用いる近赤外光免疫療法(Near Infrared Photoimmunotherapy;NIR-PIT)について説明するが、光免疫療法はこれに限られない。
【0023】
(光照射装置の構成)
光照射装置100は、図1に示すように、光免疫療法に用いられる薬剤102に含まれる蛍光物質に応じた特定の波長帯の治療光80を出力するように構成されている。光照射装置100は、光源部10と、導光部材20と、導光部材保持具30とを備える。導光部材保持具30は、導光部材20の出射端22を保持する保持部31と、保持部31を支持するベース部32と、を備えている。また、光照射装置100は、制御部15と、入力操作部16とをさらに備えている。
【0024】
光源部10は、治療光80を発生する。光源部10は、発生した治療光80を導光部材20に出射する。
【0025】
光源部10は、少なくとも1つの光源ユニット11を含む。1つの光源ユニット11が1つの光出力ポート12を有する。これにより、光源部10は、導光部材20が接続される少なくとも1つの光出力ポート12を含む。光源部10は、光出力ポート12から、治療光80を出射可能に構成されている。図1の例では、光源部10が、4つの光源ユニット11を備えている。したがって、光源部10は、4つの光出力ポート12を含む。
【0026】
治療光80は、がん患者101の体内に投与された薬剤102に含まれる蛍光物質の吸収波長帯域に含まれる所定波長の光である。
【0027】
光出力ポート12は、治療光80の出射口であるとともに、導光部材20の接続口である。1つの光出力ポート12には、1つの導光部材20が接続される。光出力ポート12の数は、1つでも複数でもよい。複数の光出力ポート12の各々は、その光出力ポート12に接続された導光部材20の入射端21に対して治療光80を出射するように構成されている。
【0028】
各光源ユニット11は、治療光80を発生する光源13を含む。複数(4つ)の光源ユニット11は、互いに独立して、治療光80を出射することが可能である。このように、光源部10は、複数の光出力ポート12の各々からの治療光80の出射および出射停止を個別に切替可能である。
【0029】
導光部材20は、光源部10のいずれかの光出力ポート12に接続されることにより、光出力ポート12から出射される光を治療対象部位101aまで導く機能を有する。複数の導光部材20が、それぞれ複数の光出力ポート12に1つずつ接続されるケーブル状の部材である。導光部材20は、使い捨て可能な消耗品である。光源部10に同時接続可能な導光部材20の最大数が、光出力ポート12の数となる。治療内容に応じて、同時に使用される光出力ポート12の数(すなわち、導光部材20の数)が決定される。図1では、便宜的に、導光部材20を1つだけ示している。
【0030】
導光部材20は、光源部10に接続される入射端21と、入射端21に入射した光を出射する出射端22とを含む。入射端21と出射端22とは、光ファイバケーブル23により接続されている。入射端21は、光出力ポート12に接続するためのアタッチメントを含む。出射端22は、光拡散部材(ライトディフューザ)により構成される。図2に示すように、出射端22は、出射端22の端面に垂直な前方向へ向けて、所定の照射角度で光を拡散させることにより、光をコーンビーム状(または多角錐状)に出射する前方出射型のライトディフューザである。
【0031】
図1に示したように、前方出射タイプの導光部材20は、がん患者101の体外から体表面に向けて治療光80を照射する用途で利用される。光免疫療法において、所望の治療効果を得るためには、治療対象部位101aに対する治療光80の照射範囲(図1のハッチング部)、治療光80の単位面積当たりの照射強度、などを精度良く制御することが重要である。出射端22から治療対象部位101aに照射される治療光80の照射範囲は、出射端22と治療対象部位101aとの間の距離と、治療対象部位101aに対する出射端22の光軸の角度(すなわち、出射端22の向き)とに依存する。治療対象部位101aにおける単位面積当たりの照射強度は、出射端22からの治療光80の出射強度と、出射端22と治療対象部位101aとの間の距離とに依存する。
【0032】
そのため、治療対象部位101aに対する出射端22の位置および向きを精度良く設定し、かつ、治療中(治療光80を出力する間)に出射端22の位置および向きを維持し続けることが重要となる。本実施形態では、導光部材保持具30によって、出射端22の位置および向きが調整および維持される。
【0033】
図1に示すように、制御部15は、光源部10を制御するように構成されたコンピュータである。制御部15は、光免疫療法の治療時に、導光部材20の出射端22から治療光80を出射させるように光源部10を制御する。制御部15は、複数の光源ユニット11を個別に制御することにより、複数の光出力ポート12の各々に対して、治療光80の照射の開始および治療光80の照射の停止(治療光80の照射のON・OFFの切り替え)を個別に制御できる。
【0034】
制御部15は、プロセッサと、記憶部とを含むコンピュータにより構成される。プロセッサは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などにより構成される。記憶部は、たとえば揮発性メモリと、フラッシュメモリまたはハードディスクドライブなどの不揮発性メモリとを含む。記憶部には、プロセッサを光照射装置100の制御部15として機能させるためのプログラム、および、光照射を行うための各種の設定情報が記憶されている。
【0035】
入力操作部16は、制御部15に接続され、治療光80の照射開始、照射停止の操作入力を受け付けるように構成されている。入力操作部16は、たとえば、フットスイッチまたはハンドスイッチなどの入力装置により構成されている。制御部15は、入力操作部16を介して受け付けた操作入力に応じて、光出力ポート12から治療光80を出力させる。
【0036】
光免疫療法に使用する光出力ポート12の数は、がん患者101に対する治療内容に応じて、医師等により制御部15に予め設定される。具体的には、制御部15には、治療光80の照射条件が、設定情報として予め設定される。治療光80の照射条件は、治療光80の照射時間、治療光80の総エネルギー量、治療光80の出力強度、などの設定情報を含みうる。総エネルギー量は、設定された治療時間の間、設定された出力強度の治療光80が治療対象部位101aへ照射されることによる治療光80のエネルギーの合計であり、単位面積当たりのエネルギー量(J/cm)で表現される。光免疫療法では、治療対象部位101aの単位面積当たりのエネルギー量を所望の値にすることで、治療効果がコントロールされる。
【0037】
導光部材保持具30は、光感受性物質を含む薬剤102が投与された被検体(がん患者101)の治療対象部位101aに治療光80を照射するための出射端22を含むケーブル状の導光部材20を保持する保持具である。
【0038】
導光部材保持具30は、導光部材20の出射端22を保持する一端部31aと、一端部31aとは反対の他端部31bとを有するアーム状の保持部31を備える。保持部31は、一端部31aの位置および角度を調節可能に設けられている。保持部31は、好ましくは、一端部31aと他端部31bとの間に関節機構40を含み、関節機構40によって一端部31aの位置および角度が調節可能である。保持部31は、1つまたは複数、設けられる。
【0039】
導光部材保持具30は、保持部31の他端部31bを支持するベース部32を備える。ベース部32は、構造物110に取り付け可能に設けられている。ベース部32は、1つまたは複数の保持部31を、支持するように構成される。
【0040】
構造物110は、がん患者101に対する治療を行う治療現場に存在する構造物であれば特に限定されない。構造物110は、たとえば、がん患者101が配置された寝台120に取り付けられるサポートバーや設置台などの、治療に使用される各種の器具を支持する部材でありうる。構造物110は、点滴バッグを取り付けるためのスタンド部材などでもよい。構造物110は、光照射装置100とともに治療に用いられる機器の支持部材であってもよい。光照射装置100とともに治療に用いられる機器は、たとえば、後述する蛍光撮像装置200(図11参照)である。ベース部32は、蛍光撮像装置200を支持するための支持機構210(図11参照)を構造物110として利用してもよい。
【0041】
(導光部材保持具)
次に、導光部材保持具30の詳細な構成について説明する。図3では、1つのベース部32に、複数(2つ)の保持部31が個別に取り付けられた構成の例を示している。
【0042】
(保持部)
図3に示すように、保持部31は、一端部31aと他端部31bとの間に、直列で接続された複数の関節機構40を含む。図3の例では、1つの保持部31が、3つの関節機構40を含んでいる。3つの関節機構40は同じ構成を有する。3つの関節機構40を区別する場合、他端部31b側から一端部31a側へ向けて順番に、関節機構40a、40b、40cとする。
【0043】
それぞれの関節機構40は、棒状のリンク41と、リンク41を回動可能に保持する関節42とを含む。リンク41は、所定の長さで直線状に延びる棒状部材である。図4に示すように、リンク41の両端には、それぞれ、関節42との接続部41aが形成されている。接続部41aは、関節42の構造に合わせた形状を有する。リンク41は、通常の使用条件では曲げ変形を生じない十分な剛性を有する。関節機構40を構成する各部品(リンク41、関節42など)は、好ましくは、滅菌処理が可能な金属材料により構成される。滅菌処理が可能な金属材料は、たとえばステンレス鋼、アルミニウム(またはアルミニウム合金)などである。
【0044】
関節42は、一端部31a側の一方のリンク41と、他端部31b側の他方のリンク41とを、互いに回動可能に連結している。したがって、関節42は、リンク41の接続部41aをそれぞれ回動可能に保持する一対の受容部を有する。関節42は、ユーザから加えられる外力によってリンク41の回動角度を調節可能であり、かつ、調節されたリンク41の角度を維持することが可能に構成されている。つまり、リンク41の回動に必要なトルクが、重力の作用により関節42に自然に作用するトルクよりも大きい。
【0045】
図4に示すように、関節42は、球面関節により構成されている。図4の例では、関節42は、一対の保持板43a、43bと、一対の保持板43a、43bを締結する締結部材45と、を含む。
【0046】
一対の保持板43a、43bの各々は、リンク41の接続部41aの一部を受け入れる凹部44を有する。凹部44は、保持板43aまたは43bを厚み方向に貫通する貫通孔であるが、非貫通の凹部でもよい。保持板43a、43bには、それぞれ、長辺方向の両端に1つずつ、2つの凹部44が形成されている。一対の保持板43a、43bは、両端の2つの凹部44が互いに対向するように配置される。
【0047】
一端側で互いに対向する1組の凹部44により1つの受容部が構成され、他端側で互いに対向する他の1組の凹部44により他の1つの受容部が構成される。凹部44のペアにより構成された受容部に、リンク41の接続部41aが係合する。
【0048】
具体的には、一対の保持板43a、43bの間に、リンク41の接続部41aが配置されている。接続部41aは、球状形状を有する。球状形状の接続部41aの一部が保持板43aの凹部44内に配置され、接続部41aの他の一部が保持板43bの凹部44内に配置されている。この結果、リンク41の接続部41aが、一対の保持板43a、43bの1組の凹部44内にそれぞれ嵌った状態で、一対の保持板43a、43bの間に挟み込まれている。これにより、接続部41aは、対向する1組の凹部44(受容部)において、一対の保持板43a、43bとそれぞれ回動可能に係合している。その結果、関節42は、接続部41aを任意の方向に回動可能に保持している。一対の保持板43a、43bの他の1組の凹部44(受容部)にも、同様に、他のリンク41の接続部41aが配置されている。
【0049】
関節42は、接続部41aを中心に、一対の保持板43a、43bの表面に沿った方向へのリンク41(接続部41a)の回動を許容する。関節42は、接続部41aを中心に、一対の保持板43a、43bが対向する方向へのリンク41の回動を許容する。関節42は、リンク41の中心軸周りのリンク41の回動を許容する。
【0050】
締結部材45は、一対の保持板43a、43bを互いに近付く方向に締結する。つまり、締結部材45は、一対の保持板43a、43bをそれぞれ接続部41aに向けて押圧している。
【0051】
具体的には、締結部材45は、ボルト45aとナット45bとを含んでいる。それぞれの保持板43a、43bの中央部(一端の凹部44と他端の凹部44との間)に、ボルト45aの軸部を通過させるための貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0052】
ボルト45aが保持板43a、43bの貫通孔を通過することによって、一対の保持板43a、43bを互いに結合している。ボルト45aとナット45bとによって、一対の保持板43a、43bが相互に連結されるとともに両外側から締め付けられている。
【0053】
締結部材45の締め付け量を調整することにより、接続部41aを回動させるのに必要なトルクの大きさが調整できる。締結部材45により、リンク41が所望の回動角度に向くようにリンク41の位置合わせをした後で、リンク41が自然に回動しないようにリンク41が関節42に固定される。
【0054】
〈変形可能部材〉
図3に示すように、本実施形態では、保持部31は、外力により曲げ変形可能かつ形状を維持可能な変形可能部材50を有する。変形可能部材50は、保持部31の一端部31aを構成している。つまり、変形可能部材50は、保持部31のうち、最も一端部31a側に配置されている。図3では、他端部31b側(ベース部32側)から一端部31a側へ向けて、関節機構40a(1組目の関節42およびリンク41)、関節機構40b(2組目の関節42およびリンク41)、関節機構40c(3組目の関節42およびリンク41)、変形可能部材50が、この順で配置されている。変形可能部材50は、関節機構40cのリンク41の端部(接続部41a)に接続されている。変形可能部材50の先端が、保持部31の一端部31aである。
【0055】
変形可能部材50は、ワイヤ状部材である。変形可能部材50は、金属製である。変形可能部材50を構成する金属は、たとえばステンレス鋼やアルミニウム(またはアルミニウム合金)などである。変形可能部材50は、たとえば導光部材20の光ファイバケーブル23よりも大きい直径(外径)を有する。変形可能部材50は、ユーザが手で外力を加えることにより、任意の形状に曲げることができる。変形可能部材50は、変形可能部材50自体の剛性によって、曲げられた形状を維持する。リンク41と異なり、変形可能部材50が自由に曲げられるので、一端部31aの位置、向き、および一端部31aに至る経路をユーザが自由に調整できる。
【0056】
〈ガイド部〉
図5に示すように、本実施形態では、保持部31は、導光部材20を案内するガイド部55を有する。図6に示すように、ガイド部55は、一端部31aが延びる方向に沿って導光部材20を案内する。一端部31aが延びる方向とは、棒状形状の一端部31aの中心軸線31eの延びる方向である。ガイド部55は、導光部材20の出射端22の向き(出射端22からの光軸方向)が一端部31aが延びる方向に沿うように、導光部材20を案内する。
【0057】
図5に戻り、ガイド部55は、保持部31の一端部31aに設けられている。ガイド部55は、一端部31aの外表面に形成された溝または突起(図12参照)である。図5の例では、ガイド部55が溝である。一端部31aは、丸棒状のチップ部材により構成されている。一端部31aの外表面に、ガイド部55を構成するV字状の溝が形成されている。
【0058】
ガイド部55は、導光部材20(図6参照)の一部を配置可能な案内面55aを有する。すなわち、案内面55aに導光部材20の外周面が接触する。案内面55aにより、導光部材20が方向付けられる。溝状のガイド部55では、溝の内表面が案内面55aである。すなわち、ガイド部55は、V字状に形成された一対の案内面55aを有している。
【0059】
図6に示すように、一端部31aにおいて、導光部材20は、溝状のガイド部55の内部に嵌り込むように配置される。導光部材20の外周面が、一対の案内面55aに接触することにより、導光部材20がガイド部55に沿うように案内される。この状態で、導光部材20が一端部31aに固定される。
【0060】
図5および図6の例では、保持部31は、リング状の固定部材56を有する。固定部材56の内径は、棒状の一端部31aの外径と同じか僅かに大きい。ガイド部55に導光部材20が嵌った一端部31aが固定部材56の内側に配置されることにより、導光部材20が一端部31aに保持される。固定部材56は、シリコンゴムなどの、弾性変形可能な樹脂材料からなる。固定部材56は、一端部31aと導光部材20とを束ねて、導光部材20を案内面55aに付勢しつつ保持する。
【0061】
これにより、図6に示したように、保持部31の一端部31aの向き(一端部31aの中心軸線31e)と、導光部材20の出射端22の向きとが、一致する。そのため、一端部31aを治療対象部位101aに向けることによって、出射端22から出射される治療光80の出射方向を精度良く治療対象部位101aに向けることができる。
【0062】
〈保持部の数および種類〉
ここで、図3の例では、複数個の保持部31が、ベース部32に設けられ得る。本実施形態では、保持部31は、第1長さL1を有する第1保持部31-1と、第1長さL1よりも大きい第2長さL2を有する第2保持部31-2と、を含む。本明細書では、「第1長さ」、「第2長さ」は、保持部31の全長であり、具体的には他端部31bから一端部31aまでの経路長(各関節機構40a~40cおよび変形可能部材50の長さの合計)である。
【0063】
第1保持部31-1と第2保持部31-2とは、たとえば関節機構40の数、構成部材の寸法、の少なくともいずれかが異なることにより、長さが異なっている。図3では、第1保持部31-1と第2保持部31-2とにおいて、関節機構40の数は同一であるが、1番目の関節機構40aのリンク41の寸法が異なっている例を示している。第2保持部31-2の1組目(関節機構40a)のリンク41の長さが、第1保持部31-1の1組目(関節機構40a)のリンク41の長さよりも大きい。これにより、第1長さL1より第2長さL2が大きくなっている。
【0064】
なお、保持部31の長さを異ならせる手法としては、たとえば保持部31を構成する関節機構40の数を異ならせてもよい。たとえば保持部31を構成する変形可能部材50の長さを異ならせてもよい。たとえば第1保持部31-1には変形可能部材50を設けない一方、第2保持部31-2には変形可能部材50を設けることにより、保持部31の長さを異ならせてもよい。なお、同じ長さの保持部31を複数設けてもよい。
【0065】
本実施形態では、関節42が一対の保持板43a、43b(図4参照)と締結部材45とによって構成されているので、関節機構40は分解および組立可能に構成されている。このため、保持部31は、分解および組立により、関節機構40の数を変更可能に構成されている。また、保持部31は、長さの異なる複数種類のリンク41(図3参照)を付け替えることより、保持部31の長さが自由に設定可能である。関節機構40の数を変更することにより関節42に作用する重量が変化しても、重力により自然にリンク41が回動しないように、関節42における締結部材45の締結力(リンク41の回動に必要なトルクの大きさ)を調整できる。
【0066】
〈ベース部〉
図3に示すように、ベース部32は、構造物110に対して着脱可能な本体部32aを備える。図3の例では、ベース部32は、複数の保持部31を保持可能である。ベース部32は、1つ1つの保持部31を着脱可能に保持するように構成されている。つまり、保持部31を、使用する導光部材20の数に応じた数だけベース部32に取り付けることができ、使用しない保持部31をベース部32から取り外すことができる。
【0067】
ベース部32は、それぞれ保持部31を着脱可能な複数の取付部32bを含む。複数の取付部32bは、それぞれ、1つの保持部31を受け入れて支持する。具体的には、取付部32bは、本体部32aに形成されたねじ穴によって構成されている。図3では、4つの取付部32bが本体部32aに形成され、そのうち2つの取付部32bにそれぞれ保持部31が取り付けられている状況を例示している。
【0068】
図7に示すように、保持部31の他端部31bは、保持部31をベース部32に取り付けるためのアタッチメントにより構成されている。他端部31bは、保持部31のリンク41の接続部41aと同じ形状の接続部31cと、ベース部32の取付部32bに装着されるねじ部(雄ねじ)31dとを有する。他端部31bの接続部31cが、1組目の関節42の受容部に接続されている。ねじ部31dが、ねじ穴(雌ねじ)である取付部32bに係合する。ねじ部31dと取付部32bとの締結によって、保持部31がベース部32に取り付けられる。ねじ部31dと取付部32bとの締結を解除すれば、保持部31をベース部32から取り外せる。
【0069】
次に、ベース部32を構造物110に取り付けるための構造を説明する。
【0070】
図7は、柱状の構造物110に取り付け可能な本体部32aの例を示す。具体的には、図7の例では、本体部32aが、2つのブロック60a、60bに分割されており、2つのブロック60a、60bの間に構造物110を挟み込むように構成されている。2つのブロック60a、60bは、ボルト61によって互いに結合されている。
【0071】
ベース部32は、構造物110に接触可能な接触面32cを備える。すなわち、2つのブロック60a、60bのそれぞれの結合面(互いに対向し合う面)には、構造物110を挿通するための凹状の接触面32c(凹部)が形成されている。ブロック60a、60bのそれぞれの接触面32cによって、本体部32aを貫通する貫通孔62が構成される。この貫通孔62の内部を通過するように、柱状の構造物110が配置される。
【0072】
図8の例では、構造物110が、がん患者101が配置される寝台120に取り付けられたサポートバーである。サポートバーは、第1部分121と第2部分122とを含む。第1部分121は、寝台120の下部から上方に立ち上がり、寝台120の側方を通過して寝台120よりも上方位置まで延びる。第2部分122は、寝台120の上方を横切るように、第1部分121の上端から水平方向に延びる。ベース部32の本体部32aは、このサポートバーの第2部分122に取り付けられている。本体部32aの貫通孔62(図7参照)には、構造物110であるサポートバーの第2部分122が挿通されている。
【0073】
図7に示すように、ブロック60aの凹状の接触面32cと、ブロック60bの凹状の接触面32cとが、それぞれ構造物110(第2部分122)と接触しうる。
【0074】
また、ベース部32は、ベース部32を構造物110に対して固定したり固定を解除したりする切替操作をするための操作部65を備えている。操作部65は、接触面32cを構造物110に押圧することにより接触面32cを構造物110に固定する固定状態と、押圧を解除する解除状態とに、ベース部32の状態を切り替える。
【0075】
操作部65は、レバー66と、レバー66の動作に応じて貫通孔62内に向けて進退可能な押圧部67と、を含む。レバー66は、本体部32aに回動可能に設けられ、ユーザが手で把持して操作可能である。押圧部67は、たとえば、本体部32aの外部から貫通孔62内まで貫通する孔内に配置されたねじ部材である。押圧部67は、レバー66に接続されるとともに、先端が貫通孔62の内部に向けて配置されている。押圧部67は、たとえば本体部32aに形成されたねじ溝(雌ねじ)に噛み合い、レバー66の回動によって貫通孔62に向けて進退する。
【0076】
レバー66を順方向に回動させると、押圧部67が貫通孔62に向けて進み、貫通孔62内の構造物110を押圧する。その結果、本体部32aの接触面32cが構造物110に押圧される。これにより、ベース部32が固定状態になる。
【0077】
レバー66を逆方向に回動させると、押圧部67が貫通孔62から離れる方向に進み、貫通孔62内の構造物110に対する押圧を解除する。その結果、ベース部32が解除状態になる。押圧力が作用しなくなるので、ベース部32は構造物110に対して移動可能となる。
【0078】
本実施形態の導光部材保持具30は、以上のように構成されている。
【0079】
(光照射装置による治療の流れ)
次に、光照射装置100による治療の流れの一例を説明する。
【0080】
まず、導光部材保持具30が準備される。治療計画に応じて、使用する導光部材20の数が決まるので、導光部材20の数と同数の保持部31がベース部32に取り付けられる。
【0081】
この際、図8に示したように、構造物110に対するベース部32の取付位置と、患者101の治療対象部位101a(図1参照)との相対位置、および、障害物の有無などを考慮して、ベース部32に取り付けるべき保持部31の長さが決定される。決定された長さに応じた保持部31がベース部32に取り付けられる。取り付けられる保持部31は、たとえば第1保持部31-1、第2保持部31-2のいずれかが選択される。また、本実施形態では、保持部31が分解および組立可能であるので、長さが適切に調整された保持部31がベース部32に取り付けられる。
【0082】
必要な数の保持部31がベース部32に取り付けられると、ベース部32が構造物110に取り付けられる。ユーザは、操作部65を操作することにより、ベース部32を開放状態から固定状態に切り替える。これにより、ベース部32が構造物110に固定される。なお、ベース部32を構造物110に固定してから、保持部31をベース部32に取り付けてもよい。
【0083】
次に、図6に示したように、ユーザは、保持部31の一端部31aに、導光部材20の出射端22を保持させる。導光部材20は、ガイド部55によって案内されることにより、一端部31aの延びる方向に出射端22の向きが合わされる。
【0084】
図8では導光部材20の図示を省略しているが、それぞれの保持部31の関節機構40や変形可能部材50が調整されることにより、それぞれの一端部31aの位置および向きが設定される。この結果、各保持部31に保持された各導光部材20の出射端22が、計画された照射位置に、治療対象部位101aに向けて正確に配置される。それぞれの保持部31は、設定された一端部31aの位置および向きを維持する。
【0085】
これにより、治療光80の照射の準備が整う。医師は、図1に示したように、入力操作部16に対する入力操作によって、光照射装置100を動作させる。入力操作部16からの信号に応じて、制御部15が、光源部10から治療光80を出射させる制御を行う。その結果、各保持部31に保持された各導光部材20の出射端22から治療対象部位101aに対して、治療光80が出射される。治療中、医師は、導光部材20の出射端22を手で保持する必要がない。予め設定された照射時間が経過すると、治療光80の照射が停止される。これにより、治療光80の照射が終了する。
【0086】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0087】
すなわち、本実施形態の光照射装置100は、上記のように、光感受性物質を含む薬剤102が投与された被検体(がん患者101)の治療対象部位101aに治療光80を照射するための光照射装置100であって、治療光80を発生する光源部10と、光源部10に接続される入射端21と、入射端21に入射した光を出射する出射端22とを含むケーブル状の導光部材20と、導光部材20の出射端22を保持する一端部31aと、一端部31aとは反対の他端部31bとを有し、一端部31aの位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部31と、構造物110に取り付け可能に設けられ、保持部31の他端部31bを支持するベース部32と、を備える。
【0088】
また、本実施形態の導光部材保持具30は、光感受性物質を含む薬剤102が投与された被検体(がん患者101)の治療対象部位101aに治療光80を照射するための出射端22を含むケーブル状の導光部材20を保持する導光部材保持具30であって、導光部材20の出射端22を保持する一端部31aと、一端部31aとは反対の他端部31bとを有し、一端部31aの位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部31と、構造物110に取り付け可能に設けられ、保持部31の他端部31bを支持するベース部32と、を備える。
【0089】
上記の構成により、治療時に被検体(がん患者101)の周囲に存在する構造物110にベース部32を固定し、ベース部32から延びるアーム状の保持部31によって導光部材20の出射端22を保持することができる。そして、アーム状の保持部31において、出射端22を保持する一端部31aの位置および角度を調整することによって、導光部材20の出射端22の位置および向きを調整できる。この結果、治療対象部位101aに治療光80を照射する治療手法において、導光部材20の出射端22の位置および向きを精度良く維持することができる。なお、出射端22の位置および向きの調整により、治療対象部位101aに対する治療光80の照射範囲と、治療対象部位101aと出射端22との間の距離(すなわち、治療光80の単位面積当たりの照射強度)が制御できる。その結果、所望の治療効果を得るための治療精度の向上を図ることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、更なる効果が得られる。
【0091】
具体的には、本実施形態では、保持部31は、一端部31aと他端部31bとの間に、直列で接続された複数の関節機構40を含む。このように構成すれば、導光部材20の出射端22が保持される一端部31aの位置および向きを、複数の関節機構40の各々によって調整できる。関節機構40の数が多いほど他端部31bから一端部31aまでの保持部31の姿勢の自由度が増大する。そのため、直列で接続された複数の関節機構40によって、たとえば患者の周囲に障害物(医療機器など)が存在する場合でも、障害物を避けつつ出射端22を所望の位置および向きに配置できる。
【0092】
また、本実施形態では、関節機構40は、棒状のリンク41と、リンク41を回動可能に保持する関節42とを含む。このように構成すれば、簡素かつ軽量な構造で、保持部31の各関節機構40を構成できる。
【0093】
また、本実施形態では、関節42は、球面関節により構成されている。このように構成すれば、関節42の回動方向に制約がなくなるので、各関節機構40において、リンク41を任意の方向に回動させることができる。そのため、他端部31bから一端部31aまでの保持部31の姿勢の自由度を効果的に増大させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、一端部31aは棒状形状を有し、保持部31は、一端部31aが延びる方向に沿って導光部材20を案内するガイド部55を有する。このように構成すれば、導光部材20の出射端22の向きを、保持部31の一端部31aが延びる方向(一端部31aの軸方向)に一致させることができる。そのため、柔軟なケーブル状の導光部材20でも、出射端22からの治療光80の出射方向を精度良く調整できる。
【0095】
また、本実施形態では、ガイド部55は、一端部31aの外表面に形成された溝または突起であり、導光部材20の一部を配置可能な案内面55aを有する。このように構成すれば、導光部材20をガイド部55の案内面55aに接触させることにより、出射端22の向きを、容易かつ精度良く、保持部31の一端部31aが延びる方向に一致させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、保持部31は、外力により曲げ変形可能かつ形状を維持可能な変形可能部材50を有し、変形可能部材50が保持部31の一端部31aを構成している。このように構成すれば、変形可能部材50を曲げることにより、一端部31aの位置および向きを任意に調整できる。なお、導光部材20は極めて軽量のケーブル状部材であるので、導光部材20の先端の重量を支持可能な程度の剛性を有する変形可能部材50を用いることによって、調整済みの変形可能部材50の形状を変化させることなく、変形可能部材50の先端の一端部31aに導光部材20を保持させることができる。これにより、導光部材20の出射端22の位置および向きを極めて自由に調整できる。
【0097】
また、本実施形態では、光源部10は、それぞれ導光部材20が接続可能な複数の光出力ポート12を含み、ベース部32は、それぞれ保持部31を着脱可能な複数の取付部32bを含む。このように構成すれば、複数の導光部材20からそれぞれ治療光80を照射可能な構成において、使用する導光部材20の本数に合わせて、複数の保持部31をベース部32に取り付けることができる。導光部材20の本数を減らす場合には、使用しない保持部31をベース部32から取り外せるので、使用しない保持部31が治療の邪魔になることを防止できる。その結果、治療内容に応じて、治療に使用する導光部材20の本数が変化する場合に対応可能な高い利便性が得られる。
【0098】
また、本実施形態では、保持部31は、第1長さL1を有する第1保持部31-1と、第1長さL1よりも大きい第2長さL2を有する第2保持部31-2と、を含む。このように構成すれば、ベース部32から出射端22の配置位置(治療光80の出射位置)までの距離に応じて、長さの異なる保持部31を使い分けることができる。たとえばベース部32から近い側の照射位置には長さの小さい第1保持部31-1を使用し、ベース部32から遠い側の照射位置には長さの大きい第2保持部31-2を使用することで、長さが余ることにより保持部31が不必要にスペースを専有することを抑制できる。そのため、保持部31が治療従事者の作業の邪魔にならない。また、ベース部32から出射端22の配置位置までの間に障害物がある場合などに、長さの大きい第2保持部31-2を使用することで、障害物を迂回しつつ適切な位置に出射端22を保持できる。これらにより、治療の作業性を向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態では、ベース部32は、構造物110に接触可能な接触面32cと、接触面32cを構造物110に押圧することにより接触面32cを構造物110に固定する固定状態と、押圧を解除する解除状態と、に切り替える操作部65と、を含む。このように構成すれば、操作部65によって、構造物110に対するベース部32の固定および固定の解除を容易に行える。この結果、治療準備の作業や治療終了後の作業における作業性を効果的に向上させることができる。
【0100】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0101】
(第1変形例)
図9は、本実施形態の第1変形例を示す。第1変形例によるベース部132は、上記実施形態のベース部32(図3参照)とは、構造および取り付けられる構造物110が異なる。図9の例では、ベース部132が取り付けられる構造物110は、蛍光撮像装置200(図11参照)を支持するための支持機構210である。支持機構210は、矩形断面の梁状構造を有し、蛍光撮像装置200を移動可能に保持する。
【0102】
図9の例では、ベース部132は、被覆シート105を介して、構造物110に取り付け可能および取り外し可能に構成されている。被覆シート105は、滅菌された医療用ドレープである。ベース部132は、被覆シート105を介して構造物110(支持機構210)に接触可能な接触面32c(図10参照)を有する。ベース部132は、接触面32cを構造物110に対して押圧する押圧部材134を含む。
【0103】
図10に示すように、矩形断面の構造物110の外周面が、被覆シート105により覆われている。ベース部132は、構造物110の上面および一対の側面にそれぞれ沿った3つの平板部分133a、133b、133cを含む。これらの平板部分133a、133b、133cの内面が、接触面32cである。接触面32cは、被覆シート105を介して構造物110(支持機構210)と対向する。一対の平板部分133a、133cの下端部に、押圧部材134が設けられている。押圧部材134は、一対の平板部分133a、133cの下端部を、互いに近づける方向に付勢している。図10では、押圧部材134は、伸縮可能な帯状部材である。押圧部材134は、ボルトおよびナットからなる締結部材でもよい。押圧部材134の付勢力により、接触面32cが被覆シート105を介して構造物110に押圧され、ベース部132が構造物110に固定されている。
【0104】
第1変形例では、ベース部132が、被覆シート105を介して構造物110に接触可能な接触面32cを有することにより、滅菌処理が難しい大きな構造物や、室内などに固定設置された構造物にも、ベース部132を取り付けることができる。
【0105】
図11に示すように、蛍光撮像装置200は、レンズ部201ががん患者101の治療対象部位101aと向かい合うように配置される。なお、図11では、支持機構210により蛍光撮像装置200を支持する部分の図示を省略している。光免疫療法では、薬剤102に含まれる蛍光物質(IR700)が、治療光80によって励起され、治療光80の波長とは異なる波長の蛍光を発生する。蛍光撮像装置200は、治療対象部位101aから放出される蛍光を検出し、蛍光画像を生成する。蛍光画像により、治療の進行状況が確認できる。
【0106】
蛍光撮像装置200と導光部材20とは、共に治療対象部位101aに向けて配置されるため、互いに障害物となりうる。この第1変形例では、長さの異なる複数の保持部31(第1保持部31-1および第2保持部31-2)をベース部132に設けることによって、保持部31が障害物(蛍光撮像装置200)を迂回することができる。すなわち、相対的に長さの小さい第1保持部31-1は、ベース部132に近い側の照射位置で、導光部材20の出射端22を保持する。相対的に長さの大きい第2保持部31-2は、ベース部132から遠い側の照射位置へ、蛍光撮像装置200の視野範囲を迂回する態様で、導光部材20の出射端22を保持する。この結果、蛍光画像中に保持部31や導光部材20が写り込むことを抑制しつつ、適切な照射位置へ導光部材20の出射端22を配置できる。
【0107】
なお、図10ではベース部132の上側の平板部分133bに保持部31が取り付けられる例を示しているが、図11のように、ベース部132の側面側の平板部分133cに保持部31が取り付けられてもよい。
【0108】
(その他の変形例)
上記実施形態では、保持部31が、一端部31aと他端部31bとの間に、直列で接続された複数の関節機構40を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保持部31が関節機構40を含まなくてもよい。保持部31の全体を、曲げ変形可能な部材によって構成してもよい。これによっても、保持部31の一端部31aを任意の位置および角度に調節できる。しかし、保持部31の全体を曲げ変形可能にすると、保持部31の形状の自由度が多くなり過ぎて、一端部31aの位置および角度を決める作業が繁雑になる可能性がある。そのため、必要十分な数の関節機構40を保持部31に設けることが好ましい。
【0109】
上記実施形態では、関節機構40が、棒状のリンク41と、リンク41を回動可能に保持する関節42とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リンクを設けずに、複数の関節同士を直列に接続することによって、関節機構40を構築してもよい。
【0110】
上記実施形態では、関節42が、球面関節である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、関節42が自在継手(ユニバーサルジョイント)であってもよい。この他、関節42は、リンクを特定の方向のみに回転可能な1自由度の回転関節でもよい。この場合、複数の関節の回転方向が互いに異なる方向になるように各関節を組み合わせることが好ましい。
【0111】
上記実施形態では、保持部31に、導光部材20を案内するガイド部55を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガイド部55を設けなくてもよい。
【0112】
上記実施形態では、ガイド部55が、一端部31aの外表面に形成された溝である例を示したが、本発明はこれに限られない。図12は、ガイド部55が、一端部31aの外表面に形成された突起である第2変形例を示す。図12では、一端部31aの外表面に、一端部31aの中心軸線に沿って延びるリブ状の突起からなるガイド部55が形成されている。突起の両側面が案内面55aである。いずれかの案内面55aに沿うように導光部材20を配置することによって、一端部31aの中心軸線の方向に向けて、出射端22を精度良く配置できる。
【0113】
上記実施形態では、リング状の固定部材56によって、保持部31の一端部31aに導光部材20を保持(固定)する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定部材56以外の固定手段によって、導光部材20を一端部31aに固定してもよい。固定手段は、たとえば、粘着テープ、ピンチ部材、結束バンドなどである。保持部31の一端部31aに導光部材20を係合させる係合構造を設けてもよい。
【0114】
上記実施形態では、保持部31が、外力により曲げ変形可能かつ形状を維持可能な変形可能部材50を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保持部31に変形可能部材50を設けなくてもよい。図11に示したように、リンク41の先端が一端部31aを構成してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、変形可能部材50が一端部31aを構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変形可能部材50を、一端部31aと他端部31bとの間の位置に配置してもよい。たとえば変形可能部材50を関節42の代わりに設けてもよい。
【0116】
上記実施形態では、複数の保持部31を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保持部31は1つだけでもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、保持部31が、第1長さL1を有する第1保持部31-1と、第1長さL1よりも大きい第2長さL2を有する第2保持部31-2と、を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の保持部31が同一の長さを有していてもよい。
【0118】
なお、上記実施形態では、関節42を分解および組立可能に構成することによって、保持部31が有する関節機構40の数や、関節42に接続するリンク41の長さを変更可能にした例を示したが、本発明はこれに限られない。関節機構40の数は変更不能であってよい。関節42に接続するリンク41が変更(取り替え)不能でもよい。つまり、保持部31は、予め決められた数の関節機構40を有し、かつ、構成部品を取り替え不能であってもよい。
【0119】
上記実施形態では、ベース部32に、保持部31を着脱可能な取付部32bを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベース部32に取付部32bを設けなくてもよい。つまり、ベース部32に、保持部31が取り外し不可能な形態で設けられていてもよい。たとえば保持部31の他端部31bを、ベース部32に対して、溶接、融接、接着などの不可逆的手法により接合してもよい。保持部31とベース部32とを一体形成してもよい。
【0120】
上記実施形態では、ベース部32に、接触面32cを構造物110に押圧する固定状態と、押圧を解除する解除状態と、に切り替える操作部65を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベース部32に操作部65を設けなくてもよい。ベース部32は、たとえば、ねじ止めや、接着(粘着力)などによって構造物110に取り付けられてもよい。また、たとえば磁力、圧力(空気圧)を用いてベース部32を構造物110に取り付けてもよい。
【0121】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0122】
(項目1)
光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための光照射装置であって、
治療光を発生する光源部と、
光源部に接続される入射端と、入射端に入射した光を出射する出射端とを含むケーブル状の導光部材と、
導光部材の出射端を保持する一端部と、一端部とは反対の他端部とを有し、一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、
構造物に取り付け可能に設けられ、保持部の他端部を支持するベース部と、を備える、光照射装置。
【0123】
(項目2)
保持部は、一端部と他端部との間に、直列で接続された複数の関節機構を含む、項目1に記載の光照射装置。
【0124】
(項目3)
関節機構は、棒状のリンクと、リンクを回動可能に保持する関節とを含む、項目2に記載の光照射装置。
【0125】
(項目4)
関節は、球面関節により構成されている、項目3に記載の光照射装置。
【0126】
(項目5)
一端部は棒状形状を有し、
保持部は、一端部が延びる方向に沿って導光部材を案内するガイド部を有する、項目1に記載の光照射装置。
【0127】
(項目6)
ガイド部は、一端部の外表面に形成された溝または突起であり、導光部材の一部を配置可能な案内面を有する、項目5に記載の光照射装置。
【0128】
(項目7)
保持部は、外力により曲げ変形可能かつ形状を維持可能な変形可能部材を有し、
変形可能部材が保持部の一端部を構成している、項目1に記載の光照射装置。
【0129】
(項目8)
光源部は、それぞれ導光部材が接続可能な複数の光出力ポートを含み、
ベース部は、それぞれ保持部を着脱可能な複数の取付部を含む、項目1に記載の光照射装置。
【0130】
(項目9)
保持部は、第1長さを有する第1保持部と、第1長さよりも大きい第2長さを有する第2保持部と、を含む、項目1に記載の光照射装置。
【0131】
(項目10)
ベース部は、
構造物に接触可能な接触面と、
接触面を構造物に押圧することにより接触面を構造物に固定する固定状態と、押圧を解除する解除状態と、に切り替える操作部と、
を含む、項目1に記載の光照射装置。
【0132】
(項目11)
光感受性物質を含む薬剤が投与された被検体の治療対象部位に治療光を照射するための出射端を含むケーブル状の導光部材を保持する導光部材保持具であって、
導光部材の出射端を保持する一端部と、一端部とは反対の他端部とを有し、一端部の位置および角度を調節可能に設けられたアーム状の保持部と、
構造物に取り付け可能に設けられ、保持部の他端部を支持するベース部と、を備える、導光部材保持具。
【符号の説明】
【0133】
10 光源部
12 光出力ポート
20 導光部材
21 入射端
22 出射端
30 導光部材保持具
31 保持部
31-1 第1保持部
31-2 第2保持部
31a 一端部
31b 他端部
32、132 ベース部
32b 取付部
32c 接触面
40(40a、40b、40c) 関節機構
41 リンク
42 関節
50 変形可能部材
55 ガイド部
65 操作部
80 治療光
100 光照射装置
101 がん患者(被検体)
101a 治療対象部位
102 薬剤
110 構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12