(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】機器管理システムおよび冷媒量推定方法
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20241210BHJP
F24F 11/38 20180101ALI20241210BHJP
F24F 11/48 20180101ALI20241210BHJP
【FI】
F25B49/02 520Z
F25B49/02 520H
F25B49/02 A
F25B49/02 570Z
F24F11/38
F24F11/48
(21)【出願番号】P 2023573707
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2022000849
(87)【国際公開番号】W WO2023135696
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】加藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】矢野 裕信
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017161(WO,A1)
【文献】特開2017-026262(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111114(WO,A1)
【文献】特開2013-250038(JP,A)
【文献】実公昭46-035331(JP,Y1)
【文献】国際公開第2010/021101(WO,A1)
【文献】特開2010-048433(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174767(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/113804(WO,A1)
【文献】特開2009-079842(JP,A)
【文献】特開平11-063745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F24F 11/38
F24F 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を有する機器と、
前記機器内の冷媒温度、前記機器の電気的な特性、および前記機器の周囲の環境情報の測定結果を示す測定情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した測定情報と、予め設定された前記機器に関する機器情報および前記機器の設置環境に関する機器設置情報とに基づいて、前記機器内の冷媒量を推定
し、前記機器情報および前記機器設置情報と、推定した前記機器の冷媒量とに基づいて、前記機器の性能を推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記機器の性能に基づいて、前記機器に対して予冷または予暖の運転をさせる処理部と、
を備
える、
機器管理システム。
【請求項2】
前記機器情報には、前記機器内で冷媒が流れ得る空間の容積および前記機器が有する冷媒種に関する情報が少なくとも含まれる、
請求項1に記載の機器管理システム。
【請求項3】
前記推定部は、
前記機器内で冷媒が流れ得る空間の容積と、前記機器内の冷媒温度および前記冷媒種に基づいて求まる冷媒密度とに基づいて前記機器内の冷媒量を算出する、
請求項2に記載の機器管理システム。
【請求項4】
前記推定部は、
さらに前記機器内で使用される冷凍機油へ溶解している冷媒量と液滞留部分の冷媒量とを前記算出した冷媒量に加えて、前記機器内の冷媒量を算出する、
請求項3に記載の機器管理システム。
【請求項5】
前記機器は、圧縮機、室外熱交換器、および膨張弁を備える室外機と、室内熱交換器を備える室内機とが冷媒が流れる接続配管で接続されており、
前記機器設置情報には、少なくとも前記接続配管の容積に関する情報が含まれる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の機器管理システム。
【請求項6】
前記機器の周囲の環境情報には、少なくとも前記機器の周囲温度に関する情報が含まれる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の機器管理システム。
【請求項7】
前記取得部は、
複数の前記機器のそれぞれから前記測定情報を取得し、
前記推定部は、
前記取得部が複数の前記機器のそれぞれから取得した前記測定情報と、前記機器情報および前記機器設置情報とに基づいて、複数の前記機器における冷媒の総量を算出する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の機器管理システム。
【請求項8】
前記推定部は、
前記機器情報に基づいて、冷媒種ごとの基準となる冷媒量を示す冷媒管理値を算出する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の機器管理システム。
【請求項9】
前記推定部は、
推定した前記機器内の冷媒量と前記冷媒管理値との比較により前記機器内の冷媒量の過不足を判定する、
請求項8に記載の機器管理システム。
【請求項10】
前記機器情報には、前記機器の出荷前に特定の検査条件下における前記機器の検査データまたはカタログ情報が含まれ、
前記推定部は、
推定した前記機器の性能と、前記機器情報、前記検査データ、または前記カタログ情報とを比較する、
請求項
1に記載の機器管理システム。
【請求項11】
前記機器と通信可能な外部端末または演算処理装置群、
を備え、
前記取得部および前記推定部が、前記外部端末または前記演算処理装置群に備えられている、
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の機器管理システム。
【請求項12】
前記推定部による推定結果に基づいて、外部機器を介して視覚的または聴覚的に案内或いは警告する情報を出力する出力部、
を備える請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の機器管理システム。
【請求項13】
前記推定部による推定結果に基づいて、外部機器を介して前記機器の故障またはメンテナンスに関する情報を出力する出力部、
を備える請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の機器管理システム。
【請求項14】
冷媒を有する機器内の冷媒量を推定する冷媒量推定方法であって、
取得部が、前記機器内の冷媒温度、前記機器の電気的な特性、および前記機器の周囲の環境情報の測定結果を示す測定情報を取得するステップと、
推定部が、前記取得部が取得した測定情報と、予め設定された前記機器に関する機器情報および前記機器の設置環境に関する機器設置情報とに基づいて、前記機器内の冷媒量を推定
し、前記機器情報および前記機器設置情報と、推定した前記機器の冷媒量とに基づいて、前記機器の性能を推定するステップと、
処理部が、前記推定部が推定した前記機器の性能に基づいて、前記機器に対して予冷または予暖の運転をさせるステップと、
を含
む、
冷媒量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機器管理システムおよび冷媒量推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象空間の温度が所定の判定温度条件を満たすように温度調節を行って安定条件下にて冷媒温度を測定することにより、機器内の冷媒量を推定する空気調和機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている従来技術では、室外機及び室内機の空調負荷が一定でかつ、圧縮機周波数が一定となり冷凍サイクルが安定した場合には冷媒量を推定することが可能である。しかしながら、1日を通して外気温が一定でないこと、室内にいる人の人数、または室内にいる人の活動状態などによって室内機にかかる空調負荷が変化するため、空調負荷が一定となる環境は現実的にはない。よって、従来技術では、実使用環境における冷媒量の推定が困難であり、冷媒量を推定するためには特殊な運転が必要であった。
【0005】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、特殊な運転を必要とせず実使用環境において精度よく機器内の冷媒量を推定する機器管理システムおよび冷媒量推定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る機器管理システムは、冷媒を有する機器と、前記機器内の冷媒温度、前記機器の電気的な特性、および前記機器の周囲の環境情報の測定結果を示す測定情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した測定情報と、予め設定された前記機器に関する機器情報および前記機器の設置環境に関する機器設置情報とに基づいて、前記機器内の冷媒量を推定し、前記機器情報および前記機器設置情報と、推定した前記機器の冷媒量とに基づいて、前記機器の性能を推定する推定部と、前記推定部が推定した前記機器の性能に基づいて、前記機器に対して予冷または予暖の運転をさせる処理部と、を備える。
【0007】
また、本開示に係る、冷媒を有する機器内の冷媒量を推定する冷媒量推定方法は、取得部が、前記機器内の冷媒温度、前記機器の電気的な特性、および前記機器の周囲の環境情報の測定結果を示す測定情報を取得するステップと、推定部が、前記取得部が取得した測定情報と、予め設定された前記機器に関する機器情報および前記機器の設置環境に関する機器設置情報とに基づいて、前記機器内の冷媒量を推定し、前記機器情報および前記機器設置情報と、推定した前記機器の冷媒量とに基づいて、前記機器の性能を推定するステップと、処理部が、前記推定部が推定した前記機器の性能に基づいて、前記機器に対して予冷または予暖の運転をさせるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、特殊な運転を必要とせず実使用環境において精度よく機器内の冷媒量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図。
【
図2】第1の実施形態に係る機器の冷媒回路の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る
図2に示す温度の測定点の測定箇所の説明図。
【
図4】第1の実施形態に係るマルチ型空気調和機の冷媒回路の一例を示す図。
【
図5】第1の実施形態に係る起動直後のモリエル線図の一例を示す図。
【
図6】第1の実施形態に係る安定時のモリエル線図の一例を示す図。
【
図7】第1の実施形態に係る機器の電気回路の一例を示す図。
【
図8】第1の実施形態に係る機器取得データのデータ項目の一例を示す図。
【
図9】第1の実施形態に係る機器が送信する機器取得データの一例を示す図。
【
図10】第1の実施形態に係る機器情報のデータ項目の一例を示す図。
【
図11】第1の実施形態に係る機器設置情報のデータ項目の一例を示す図。
【
図12】第1の実施形態に係る機器管理装置の構成の一例を示す概略ブロック図。
【
図13】第1の実施形態に係る冷媒量推定処理の一例を示すフローチャート。
【
図14】第1の実施形態に係る推定冷媒量の算出方法の一例を示す説明図。
【
図15】第2の実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図。
【
図16】第3の実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図。
【
図17】第3の実施形態に係る機器管理装置が保持する時系列データの一例を示す図。
【
図18】第3の実施形態に係る機器管理装置が保持する複数の機器それぞれの時系列データの一例を示す図。
【
図19】第4の実施形態に係る冷媒量と機器の性能の関係の一例を示す図。
【
図20】第4の実施形態に係る機器の性能と気温との関係についてカタログ値との比較例を示す図。
【
図21】第5の実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図。
【
図22】第5の実施形態に係る汎用デバイスに表示される表示例を示す図。
【
図23】第6の実施形態に係る汎用デバイスに表示される表示例を示す図。
【
図24】変形例としての給湯器の冷媒回路の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。
[機器管理システムの概要]
図1は、本実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図である。この図に示す機器管理システムSYSは、冷媒を有する機器1と、機器1と通信可能な機器管理装置2とを備えている。機器1は、例えば、室外機100と室内機200とを備える空気調和機である。機器管理装置2は、機器1からの通信データを保存するデータの管理先であるとともに、機器1内の冷媒量を推定する。ここでは、機器管理装置2として、外部端末3およびクラウド4を例示している。
【0011】
外部端末3は、スマートフォン、PC(Personal Computer)などの端末装置である。外部端末3は、機器1との通信の他、クラウド4と通信し、機器1からの通信データをクラウド4へ送信しても良い。クラウド4は、公衆回線等の通信ネットワークを介した演算処理装置群である。機器管理装置2は、外部端末3であっても良いし、クラウド4であっても良い。
【0012】
機器管理システムSYSにおいては、機器1で取得される機器取得データ10と、機器1に関する機器情報20と、機器1が設置されている設置環境に関する機器設置情報30とに基づいて、機器1と通信接続される外部端末3またはクラウド4などの機器管理装置2が機器1内の冷媒量を推定する。
【0013】
例えば、機器取得データ10には、機器1内の冷媒温度の測定値(以下、「冷媒温度11」と称する)と、機器1内の電気的な特性の測定値(以下、「電気入力12」と称する)と、機器1の周囲の温度または湿度などの環境情報の測定値(以下、「環境情報13」と称する)などの測定情報とが含まれる。機器1は、機器取得データ10を機器管理装置2へ送信する。
【0014】
機器管理装置2、機器1から送信された機器取得データ10を取得する。また、機器管理装置2は、予め設定された機器情報20および機器設置情報30を有する。機器情報20には、出荷前の検査データが含まれる。例えば、機器情報20には、特定の検査条件下における機器1内の冷媒温度、機器1内の電気的な特性、または環境情報の検査データ(定常データまたは時系列データ)と、検査条件と、検査時点の機器1の仕様(構成)とが含まれる。機器設置情報30には、機器が設置されている場所の環境または設置状態などが含まれる。機器取得データ10、機器情報20、および機器設置情報30の詳細については後述する。
【0015】
[機器1の冷媒回路の構成]
図2は、本実施形態に係る機器の冷媒回路の一例を示す図である。室外機100と室内機200とは、内外接続配管301、302によって接続されている。内外接続配管301には、ガス(気体)状態の冷媒が通る。内外接続配管302には、液体状態の冷媒が通る。室外機100内に備えられた四方弁101を切り替えて冷媒の循環方向を切り替えることにより、暖房運転と冷房運転とが切り替わる。実線の矢印の向きが冷房運転時の冷媒の流れの向きを示しており、破線の矢印の向きが暖房運転時の冷媒の流れの向きを示している。
【0016】
暖房運転の場合、室外機100の圧縮機102により圧縮されたガス(気体)状態の冷媒が、四方弁101および内外接続配管301を通って室内機200の室内熱交換器201に流れる。室内熱交換器201内の冷媒は周囲の空気と熱交換して周囲の空気を暖める。熱交換によって液体状態となった冷媒は、内外接続配管302を通って室外機100の膨張弁103に流れ、膨張弁103を通って室外熱交換器104に流入する。室外熱交換器104内の冷媒は周囲の空気と熱交換する。熱交換によってガス(気体)状態となった冷媒が四方弁101を通って圧縮機102に戻る。
【0017】
冷房運転の場合、室外機100の圧縮機102により圧縮されたガス(気体)状態の冷媒が、四方弁101を通って室外熱交換器104に流入する。室外熱交換器104内の冷媒は周囲の空気と熱交換する。熱交換により液体状態となった冷媒は膨張弁103および内外接続配管302を通って室内機200の室内熱交換器201に流入する。室内熱交換器201内の冷媒は周囲の空気と熱交換して周囲の空気を冷やす。熱交換によりガス(気体)状態となった冷媒は、内外接続配管301および四方弁101を通って室外機100の圧縮機102に戻る。
【0018】
室外機100及び室内機200には、冷媒温度を測定するための温度センサが各部に設けられている。
図3は、
図2に示す温度の測定点T1~T8の測定箇所の説明図である。圧縮機102の出口側と入口側のそれぞれに温度センサが設けられており、出口側の測定点T1が吐出温度、入り口側の測定点T8が吸入温度の測定点である。
【0019】
また、室外機100の膨張弁103および室外熱交換器104と、室内機200の室内熱交換器201とのそれぞれには、出口側、入り口側、および出口と入口の間の中間の3か所に温度センサが設けられている。室外熱交換器104は、冷房運転時には凝縮器として機能する。測定点T2、T2-3、T3のそれぞれは、冷房運転時の凝縮器の入口温度、中間温度、出口温度の測定点となる。一方、室外熱交換器104は、暖房運転時には蒸発器として機能する。測定点T2、T2-3、T3のそれぞれは、暖房運転時の蒸発器の出口温度、中間温度、入口温度の測定点となる。
【0020】
室内熱交換器201は、冷房運転時には蒸発器として機能する。測定点T6、T6-7、T7のそれぞれは、冷房運転時の蒸発器の入口温度、中間温度、出口温度の測定点となる。一方、室内熱交換器201は、暖房運転時には凝縮器として機能する。測定点T6、T6-7、T7のそれぞれは、暖房運転時の凝縮器の出口温度、中間温度、入口温度の測定点となる。
【0021】
また、測定点T4は、冷房運転時には膨張弁103の入口温度、暖房運転時には膨張弁103の出口温度の測定点となる。測定点T5は、冷房運転時には膨張弁103の出口温度、暖房運転時には膨張弁103の入口温度の測定点となる。
【0022】
なお、機器1は、1台の室外機100に複数の室内機200が接続されるマルチ型空気調和機(所謂、パッケージエアコン)であってもよい。
【0023】
図4は、マルチ型空気調和機の冷媒回路の一例を示す図である。この
図4では、室外機100に2台の室内機200が接続されている場合の冷媒回路の例を示している。この
図4において、
図2の各部に対応する構成には同一の符号を付している。図示する冷媒回路の構成は、室内機200の数が異なる点を除いて、
図2に示す冷媒回路の例と同様である。なお、室内機200の数は、2台に限られるものではない。
【0024】
マルチ型空気調和機は、室内機200が複数であるため、例えば、室内機200に対して1号機、2号機、・・・といったように号機の設定がされる。そして、「1号機の吐出温度、凝縮器の入口温度、・・・」、「2号機の吐出温度、凝縮器の入口温度、・・・」といったように号機を付与し、号機ごとに冷媒温度が区別されて取り扱われる。
【0025】
なお、本実施形態では、室内機200が1台であっても複数であっても、機器1の数は、基本的に1台の室外機100に対して1台とする。
【0026】
図5及び
図6に冷房運転時のモリエル線図の一例を模式的に示す。
図5は、起動直後(運転初期)のモリエル線図の一例を示す図である。
図6は、安定時のモリエル線図の一例を示す図である。一般に、運転初期は、測定点T1~T8においてすべて気液二相域(二相域)内にある(
図5参照)。その後、徐々に、圧縮機102によって冷媒ガスが圧縮されることにより、凝縮器と蒸発器間の圧力差が拡大し、吐出温度の測定点T1ではガス化し気相域内に遷移する(
図6参照)。また、凝縮器の出口温度の測定点T3では凝縮器による空気との熱交換によって、エンタルピーが減少する。冷媒ガス量と凝縮器の熱交換量が十分であれば、測定点T3では液相域内に遷移する(
図6参照)。一方で、冷媒ガス量が十分でない場合は、凝縮器および蒸発器における熱交換が不十分となる。
【0027】
[機器1の電気回路の構成]
次に、
図7を参照して、機器1の主要な電気回路の一例について説明する。
図7は、本実施形態に係る機器1の電気回路の一例を示す図である。この
図7において、
図2の各部に対応する構成には同一の符号を付している。
【0028】
室外機100は、室外機制御部110を備えている。室外機制御部110は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、室外機100の各部の制御、および室外機100に設けられている各種センサの測定値を取得する。例えば、室外機制御部110は、
図2及び
図3で説明した冷媒温度の測定点T1、T2、T2-3、T3、T4、T5、T8のそれぞれに設けられた温度センサの測定値を取得する。
【0029】
また、室外機制御部110は、四方弁101における冷媒の流れ方向の切り替え制御、圧縮機102の制御、膨張弁103の開度の制御、室外熱交換器104に対して送風する室外ファン105の回転制御などを行う。
【0030】
圧縮機102は、圧縮部102aと、圧縮機モータ102bとを備えている。圧縮部102aは、ロータリ式またはスクロール式などの圧縮機構を有し、入口側から吸入された冷媒を圧縮して出口側から吐出する。圧縮機モータ102bは、インバータ120による回転制御が可能な三相モータを備え、圧縮部102aの圧縮機構を駆動する。室外機制御部110は、インバータ120を制御することにより、圧縮機モータ102bの回転を制御して圧縮部102aの圧縮機構を制御する。
【0031】
室内機200は、室内機制御部210を備えている。室内機制御部210は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、室内機200の各部の制御、および室内機200に設けられている各種センサの測定値を取得する。例えば、室内機制御部210は、
図2及び
図3で説明した冷媒温度の測定点T6、T6-7、T7のそれぞれに設けられた温度センサの測定値を取得する。また、室内機制御部210は、室内熱交換器201に対して送風する室内ファン202の回転制御などを行う。
【0032】
また、室内機200は、無線機器220を備えている。無線機器220は、例えば、室内機200にオプションとして追加される機器付随デバイスの一つである。無線機器220は、無線通信により無線LAN(Local Area Network)またはインターネットなどの通信ネットワークに接続し、機器管理装置2(外部端末3またはクラウド4)とデータ通信を行う。
【0033】
室内機制御部210は、室外機制御部110と内外通信線310で接続されている。室内機制御部210は、内外通信線310を介して室外機制御部110から取得したデータと、室内機制御部210自身が取得したデータとに基づいて機器取得データ10を生成する。そして、室内機制御部210は、無線機器220を介して機器管理装置2(外部端末3またはクラウド4)へ機器取得データ10を送信する。
【0034】
ここで、従来の空気調和機では、圧縮機の周波数を固定し、なおかつ、冷凍サイクルが安定しているときの各種冷媒温度または圧力を空気調和機より取得する必要がある。これは、冷媒量を推定する際に、液相域および冷媒の気液二相域の質量を正確に推定するため、冷凍サイクルの特性上、凝縮器の気液二相域における圧力と、凝縮器の出口側のサブクール域を把握する必要があるためである。
【0035】
すなわち、従来の空気調和機は、室外機および室内機の空調負荷が一定でかつ、圧縮機周波数が一定となり冷凍サイクルが安定した状態では、冷媒量を推定することが可能であった。
【0036】
しかしながら、空気調和機は、試験室のように室外機および室内機の空調負荷が一定となる環境は、現実的にはない。例えば、室外機に着目した場合、1日を通して外気温が一定でないことによって、室外機にかかる空調負荷が変化する。また、室内機に着目した場合、室内にいる人の人数、またはその人の活動状態によって、室内機にかかる空調負荷が変化する。
【0037】
したがって、一般に、室内の温度一定(または湿度一定)とするように、空気調和機の圧縮機を制御する場合、圧縮機周波数が可変に遷移する動作となるため、実使用環境を考慮した場合、冷媒量を推定することは困難であった。そのため、冷媒量を推定するためには特殊な運転が必要であった。
【0038】
また、従来技術において、冷媒量を推定するためには、実験または数値シミュレーション等によって、パラメータを定義する必要があるが、機器の仕様の数に応じて、全数評価する必要がある。そのため、開発コストが増加してしまう課題もある。一方で、機器の仕様を汎用的に共通のモデルとなるように定義した場合、冷媒量の推定精度が低下してしまうという課題もあった。
【0039】
そこで、
図1を参照して説明したように、本実施形態では、機器取得データ10と、機器情報20と機器設置情報30とに基づいて、機器1と通信接続される機器管理装置2(外部端末3またはクラウド4)が機器1内の冷媒量を推定する。これにより、機器管理システムSYSは、特殊な運転を必要とせず実使用環境において精度よく機器1内の冷媒量を推定することができる。以下、詳細に説明する。
【0040】
[機器取得データの具体例]
まず、機器取得データ10に含まれるデータ項目の具体例について説明する。
図8は、本実施形態に係る機器取得データ10のデータ項目の一例を示す図である。前述したように、機器取得データ10には、冷媒温度11と電気入力12と環境情報13とが含まれる。
【0041】
冷媒温度11には、例えば、吐出温度、凝縮器および蒸発器の入口から出口までの任意の箇所の温度(例えば、入口温度、中間温度、出口温度)、膨張弁103の温度(例えば、入口温度、出口温度)、吸入温度等が含まれる。なお、冷媒温度11には、上記の全ての箇所の温度が含まれてもよいし、一部が含まれてもよい。冷媒温度11に、上記の一部が含まれる場合、少なくとも吐出温度が含まれることが好ましい。また、冷媒温度11に、凝縮器および蒸発器の入口温度、中間温度、および出口温度の全てが含まれない場合には、少なくとも中間温度が含まれることが好ましい。
【0042】
なお、内外接続配管301、302にも温度センサを設け、内外接続配管301の温度(例えば、入口温度、出口温度)が冷媒温度11に含まれてもよい。また、冷媒温度11には、上記の箇所の温度に限らず、機器1が取得可能な任意の箇所の冷媒温度が含まれてもよい。より多くの箇所の冷媒温度の測定値が冷媒温度11に含まれるほど、冷媒量の推定精度がより高くなる。
【0043】
電気入力12には、例えば、室外ファン105および室内ファン202の電圧(母線電圧、線間電圧、相電圧)、電流(母線電流、線間電流、相電流)、回転数(現在回転数、司令回転数)、消費電力等が含まれる。また、電気入力12には、例えば、圧縮機102の電圧(母線電圧、線間電圧、相電圧)、電流(母線電流、線間電流、相電流)、周波数(現在周波数、司令周波数)、消費電力等が含まれる。また、電気入力12には、例えば、膨張弁103の開度(現在開度、司令開度)、消費電力等が含まれる。また、電気入力12には、例えば、電源側の電圧(一次電圧)および電流(一次電流)、機器付随デバイス(例えば、無線機器220、ヒータ、空気清浄デバイスなど)の消費電力が含まれる。
【0044】
なお、機器付随デバイスの消費電力は、室外ファン105、室内ファン202、または圧縮機102における電圧、電流、または電力を直接的に取得できない場合に、当該取得できない電圧、電流、または電力を機器1の全体の総和から間接法にて推定するために用いられる。
【0045】
なお、電気入力12には、上記の全てのデータ項目が含まれてもよいし、一部が含まれてもよい。例えば、電気入力12には、少なくとも、室外ファン105および室内ファン202の回転数(現在回転数)と、圧縮機102の母線電流および現在周波数と、膨張弁103の現在開度と含まれることが好ましい。
【0046】
なお、電気入力12には、上記のデータ項目の他、機器1が取得可能な機器1内の任意の電気的な特性が含まれてもよい。より多くのデータ項目が電気入力12に含まれるほど、冷媒量の推定精度がより高くなる。
【0047】
環境情報13には、例えば、室外機100および室内機200が取得する周囲の温度(室外温度、室内温度)と湿度(室外湿度、室内湿度)とが含まれる。なお、環境情報13には、上記の全てのデータ項目が含まれてもよいし、一部が含まれてもよい。例えば、環境情報13には、少なくとも室内温度が含まれることが好ましい。
【0048】
なお、環境情報13には、上記のデータ項目の他、機器1が取得可能な環境情報が含まれてもよい。より多くのデータ項目が環境情報13に含まれるほど、冷媒量の推定精度がより高くなる。
【0049】
機器1は、
図8を参照して説明した機器取得データ10を、機器管理装置2へ送信する。
図9は、機器1が送信する機器取得データ10の一例を示す図である。例えば、機器1は、
図9に示すように、一定の時間間隔で測定した機器取得データ10の時系列データを送信する。なお、機器1は、機器取得データ10の送信の際に、ある条件下における定点のデータを送信してもよい。
【0050】
[機器情報の具体例]
次に、機器情報20に含まれるデータ項目の具体例について説明する。
図10は、本実施形態に係る機器情報20のデータ項目の一例を示す図である。前述したように、機器情報20には、出荷前の検査データと、検査条件と、検査時点の機器1の仕様(構成)とが含まれる。
【0051】
この
図10において、共通項目には、検査時点の機器1の仕様(構成)などが含まれる。例えば、共通項目には、検査日時(No.1)、検査に使用した試験室(No.2)、検査した機器1の製造情報および製品仕様などが含まれる。製造情報には、ロット番号(No.3)、製造年度(No.6)などが含まれる。製品仕様には、機器1の機種(No.4)、能力(No.5)の他、電源仕様、冷媒種と封入量、冷凍機油の種類と油量、圧縮機102の型式、ストロークボリューム、圧縮機モータ102bの仕様、圧縮機102の内容積、室外熱交換器104の内容積、室内熱交換器201の内容積、レシーバの内容積(No.7~No.18)などが含まれる。
【0052】
なお、レシーバは、例えば室外機100の膨張弁103と内外接続配管302との接続部分の近傍に設けられている。このレシーバは、冷房運転と暖房運転とで必要冷媒量に差異が出るため、余剰冷媒を貯めるために設けられている。一般に、内容積は室外機100の方が室内機200よりも大きく、暖房運転時に、凝縮器となる室内機200内の冷媒量が冷房運転時の室外機100のときに比べ減少する。
【0053】
また、出荷前の検査データは、特定の検査条件下における機器1内の冷媒温度、機器1内の電気的な特性、または環境情報の検査データ(定常データまたは時系列データ)などである。
【0054】
この
図10において、検査データの項目のうちNo.1~No.5の項目は、機器1の種類によらず共通の検査条件である。この共通の検査条件には、試験条件(例えば、冷房標準または暖房標準)と、室外DB(Dry Bulb)、室外WB(Wet Bulb)、室内DB、および室内WBなどが含まれる。
【0055】
また、検査データの項目のうちNo.8~No.11の項目は、機器毎、または機器の能力帯毎などの個々で異なる検査条件であり、圧縮機102の司令周波数、室内ファン202および室外ファン105の司令回転数、膨張弁103の司令開度などの、個々で異なる検査時の機器の制御設定が含まれる。
【0056】
また、検査データの項目のうちNo.6~No.7及びNo.12~No.19の項目は、上記の検査条件下における検査データ(定常データまたは時系列データ)である。例えば、検査データには、室内機200の能力(室内能力)、消費電力、室外熱交換器104および室内熱交換器201の熱特性、吐出温度、凝縮器および蒸発器の入口温度と出口温度、吸入温度などが含まれる。
【0057】
なお、機器情報20には、上記の全てのデータ項目が含まれてもよいし、一部が含まれてもよい。例えば、機器情報20には、少なくとも冷媒種および冷媒が流れ得る空間の容積が含まれることが好ましい。冷媒が流れ得る空間の容積とは、圧縮機102の内容積、室外熱交換器104の内容積、室内熱交換器201の内容積、レシーバの内容積などのことである。なお、冷媒が流れ得る空間の容積には、圧縮機102の内容積、室外熱交換器104の内容積、室内熱交換器201の内容積、レシーバの内容積の一部が含まれても良いし、全部が含まれても良い。
【0058】
なお、機器情報20には、上記のデータ項目の他、検査時点における測定可能な任意の情報が含まれてもよい。より多くのデータ項目が機器情報20に含まれるほど、冷媒量の推定精度がより高くなる。
【0059】
また、一般に製品出荷にあたって全数検査の他、抜き取り検査が行われるが、抜き取り検査においては、例えば、直近のロットを代表値として用いる。
【0060】
[機器設置情報の具体例]
次に、機器設置情報30に含まれるデータ項目の具体例について説明する。
図11は、本実施形態に係る機器設置情報30のデータ項目の一例を示す図である。前述したように、機器設置情報30には、機器1の設置場所または設置環境などの情報が含まれる。
【0061】
例えば、機器設置情報30には、機器1の設置場所の位置(緯度、経度)、建物仕様、設置方角(北向き、南向きなど)、室外機100の設置方法(屋根上、地面置き、天吊り、壁面など)、室内機200の高さ(床面からの高さ)、室内空間の広さ、室外機100と室内機200とを接続する内外接続配管301、302の長さおよび径、室外機100と室内機200との高低差(室内外高低差)などが設置場所または設置環境などの情報として含まれる。ここで、建物の仕様は、例えば、木造、鉄筋コンクリート、マンション、または一軒家といった建物自体の断熱性能を定義するために必要な要素であって、室内機200への負荷計算に必要なパラメータとする。また、室内外高低差は、内外接続配管301、302が室外機100に接続されている位置と、内外接続配管301、302が室内機200に接続されている位置との高低差である。
【0062】
なお、機器設置情報30には、上記の全てのデータ項目が含まれてもよいし、一部が含まれてもよい。例えば、機器設置情報30には、冷媒が流れ得る空間の容積に関係する内外接続配管301、302の長さおよび径が含まれることが好ましい。
【0063】
なお、機器設置情報30には、設置場所の環境または設置状態について、上記のデータ項目の他の任意の情報が含まれてもよい。より多くのデータ項目が機器設置情報30に含まれるほど、冷媒量の推定精度がより高くなる。
【0064】
例えば、ユーザによって、機器1の設置場所または設置環境などが異なる。設置場所または設置環境などが異なると、冷媒量の推定にも影響する。例えば、機器1の設置場所に関して、室外機100が一階に設置された場合に、室内機200が一階に設置されたときと、室内機200が三階に設置されたときでは、室外機100に対する室内機200の高さが一般的に5mほど異なる。そのため、内外接続配管301、302を除く機器1内の冷媒量が同等であったとしても、内外接続配管301、302の長さが異なるため、冷凍サイクル上、異なる挙動を示すことが想定される。よって、機器1の設置場所によって、冷媒量の推定に影響を与えることが考えられる。
【0065】
なお、室外機100と室内機200との高低差が同等としても、内外接続配管301、302の長さが異なる場合がある。その場合、内外接続配管301、302内に冷媒が分布するため、内外接続配管301、302の長さ分の追加冷媒充填がされていない場合には内外接続配管を除く機器1内の冷媒量が総じて減少しガス不足になることが考えられる。また、機器1の設置環境に関して、室外機100が天吊りの場合と、地面置きの場合と、屋根置きの場合とでは、内外接続配管301、302の長さが異なる。また、室外機100が同じ地面置きの場合でも、南向きに設置されて直射日光があたる場合と、北向きに設置されて日陰の場合とでは空調負荷が異なるため、冷凍サイクルに影響する。よって、機器1の設置環境によっても同様に、冷媒量の推定に影響を与えることが考えられる。
【0066】
また、機器1の設置環境に関して、機器1が設置される建物が木造であるか、或いは鉄筋コンクリートであるかによって断熱性能が異なる。例えば、木造で断熱性が低い場合には空調負荷が大きくなるため、冷凍サイクルに影響し、冷媒量の推定にも影響を与えることが考えられる。
【0067】
したがって、機器管理装置2は、機器設置情報30を用いることにより、機器1の設置場所または設置環境などを固定しなくとも、機器1の設置場所または設置環境などに応じて、冷媒量を推定することができる。
【0068】
次に、機器管理装置2の構成および冷媒量を推定する冷媒量推定処理の動作について説明する。
図12は、本実施形態に係る機器管理装置2の構成の一例を示す概略ブロック図である。機器管理装置2は、前述したように、外部端末3またはクラウド4であり、例えば記憶部401と、通信部402と、処理部403とを備えている。
【0069】
記憶部401は、機器管理装置2の各部を制御する制御プログラムおよび各種データなどを記憶する。例えば、記憶部401は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などを含んで構成されている。記憶部401には、例えば、機器情報20(
図10参照)および機器設置情報30(
図11参照)が予め記憶される。
【0070】
通信部402は、無線通信により機器1または他の機器などとデータ通信を行う。例えば、通信部402は、無線通信により無線LAN(Local Area Network)またはインターネットなどの通信ネットワークに接続し、機器1または他の機器などとデータ通信を行う。する。なお、通信部402は、有線通信にも対応しても良い。
【0071】
処理部403は、記憶部401に記憶されている制御プログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することにより、冷媒量を推定する冷媒量推定処理を行う機能構成として、取得部404と、推定部405と、出力部406とを備える。取得部404は、通信部402を介して機器1(例えば、室内機200)から機器取得データ10(
図8参照)を取得し、記憶部401に記憶させる。推定部405は、機器1内の冷媒量を推定する。ここでは、推定した冷媒量のことを「推定冷媒量40」と称する。例えば、推定部405は、取得部404により取得された機器取得データ10と、記憶部401に記憶されている機器情報20および機器設置情報30とに基づいて、機器1内の推定冷媒量40を算出する。出力部406は、推定部405による冷媒量の推定結果を出力する。
【0072】
次に、
図13を参照して、機器管理システムSYSにおいて実行される冷媒量推定処理の動作について詳しく説明する。
図13は、本実施形態に係る冷媒量推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0073】
機器1(例えば、室内機200)は、機器管理装置2に対し、機器1が自発的もしくは機器1を操作するユーザによって受動的に、定期的に(例えば5分おきに)機器取得データ10を送信する。機器管理装置2は、機器1から送信された機器取得データ10を受信する(ステップS101)。
【0074】
機器管理装置2は、機器1から送信される機器取得データ10を受信すると、受信する度に機器取得データ10を取得して記憶部401に保存して蓄積する(ステップS103)。
【0075】
また、機器管理装置2は、内部の定期処理の他、任意のタイミングで機器1内の冷媒量を推定する。機器管理装置2は、冷媒量の推定タイミングであるか否かを判定する(ステップS105)。冷媒量の推定タイミングでない場合(NO)、ステップS101に戻り、機器管理装置2は、機器1から定期的に機器取得データ10を受信する(ステップS103)。
【0076】
冷媒量の推定タイミングである場合(YES)、機器管理装置2は、機器1内の冷媒量を推定する(ステップS107)。具体的には、機器管理装置2は、蓄積した機器取得データ10と、予め内部で保持する機器情報20および機器設置情報30とに基づいて、推定冷媒量40を算出する。そして、機器管理装置2は、推定した冷媒量(推定冷媒量40)を出力する(ステップS109)。
【0077】
ここで、
図14を参照して、推定冷媒量40の算出方法について詳しく説明する。
図14は、本実施形態に係る推定冷媒量の算出方法の一例を示す説明図である。この図に示すように、機器管理装置2は、例えば、換算冷媒量41と溶解冷媒量42と滞留冷媒量43との和により推定冷媒量40を算出する。なお、推定冷媒量40は、算出値の他、冷媒充填作業等から判別可能な場合、直接設定しても構わない。
【0078】
換算冷媒量41は、機器1を構成する各部品において、その部品内における主となる冷媒状態の冷媒量である。例えば、凝縮器入口の気相と液相の体積比率が95:5とするとき、換算冷媒量41は気相部分の冷媒量を示す。一方、凝縮器入口の気相と液相の体積比率が5:95とするとき、換算冷媒量41は気相部分の冷媒量を示す。また、凝縮器入口の気相と液相の体積比率が同比率の場合には、換算冷媒量41は二相平均密度を用いた冷媒量を示す。例えば、換算冷媒量41は、機器1の各部品の内容積と冷媒密度との積により算出される。例えば
図14に示すように、換算冷媒量41は、機器設置情報30(内外接続配管301、302の長さおよび径)により求まる内外接続配管301、302の内容積31と、機器情報20に含まれる機器1内の各部品の内容積51と、各部品における冷媒密度50との積により算出される。
【0079】
ここで、各部品における冷媒密度は、機器取得データ10の冷媒温度から圧力換算することにより、圧力と密度の関係から求めることができる。圧力と密度の関係は冷媒種によって決まっている。なお、機器1から冷媒圧力のデータを直接的に取得できる場合には、取得した冷媒圧力または圧力のデータをもとに求めることができる。ここで説明する各部品とは、機器1を構成する部品のうち冷媒が流れ得る空間を有する部品であって、例えば、圧縮機102、室外熱交換器104、室内熱交換器201、レシーバ、内外接続配管301、302などである。
【0080】
溶解冷媒量42は、機器1内で使用される冷凍機油へ溶解している冷媒量である。例えば
図14に示すように、溶解冷媒量42は、各部品の滞留油量52と各部品の油溶解比率53との部品ごとの積の総和により算出される。ここで機器1内の油量の総量は、
図10に示す機器情報20の油量の値である。機器1内の油量のうち各部品のそれぞれに滞留している滞留油量52は、機器取得データ10と機器情報20と機器設置情報30とに基づいて、運転条件(冷房、暖房、など)ごとに、実験または数値計算によって求まる。例えば、この実験または数値計算によって求められた各部品の滞留油量52が機器情報20にさらに含まれている。
【0081】
また、各部品の油溶解比率53は、実験的手法による温度および圧力に応じた冷凍機油への冷媒溶解量を示すダニエルチャートを用いて算出することができる。例えば、機器取得データ10に含まれる各部品の冷媒温度の測定値とダニエルチャートとを用いて、現在の各部品の油溶解比率53を算出することができる。ダニエルチャートを用いて求める際には近似式で算出しても構わない。
【0082】
なお、各部品の滞留油量52は、各部品の中で内容積が大きく冷凍機油が滞留しやすい部品のみを対象とし、冷凍機油の滞留が少ない部品は除外しても良い。例えば、冷凍機油は圧縮機102、室外熱交換器104、および室内熱交換器201に滞留しやすく多く存在する。
【0083】
滞留冷媒量43は、気液二相域において各部品(レシーバ、内外接続配管301、302など)に液体で滞留している冷媒量である。各部品の冷媒流路の断面積が小さければ冷媒流速が早くなり、その分、滞留しにくくなり、断面積が大きければ冷媒流速が遅くなり、その分、滞留しやすくなる。そのため、例えば
図14に示すように、滞留冷媒量43は、機器取得データ10と機器情報20と機器設置情報30とに基づいて、各部品の冷媒流路の断面積と機器1内を循環する冷媒流量とに応じて実験または数値計算によって求めることができる。
【0084】
なお、主に高低差のある各部品のうち下流部に多く液滞留があるため、それ以外の部品は除外しても構わない。また、滞留冷媒量43は、冷凍サイクルにおいて、過渡現象を対象としており、冷凍サイクルが安定した状態では無視して構わない。
【0085】
また、機器1内を循環する冷媒流量は、圧縮機102の周波数と、吸入冷媒密度によって決定される。吸入冷媒密度は、機器1内の凝縮器と蒸発器の熱交換量によって一意に求めることができる。なお、機器1で取得した吸入温度または圧力からも求めることができる。
【0086】
さらに、凝縮器と蒸発器の熱交換量は、室外または室内の環境負荷によって決定され、このとき、機器取得データ10と機器設置情報30とから求めることができる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る機器管理システムSYSにおいて、機器管理装置2は、機器1内の冷媒温度、機器1の電気入力(電気的な特性)、および機器1の周囲の環境情報の測定結果を示す機器取得データ10(測定情報)を取得する。そして、機器管理装置2は、取得した機器取得データ10と、予め設定された機器情報20および機器設置情報30とに基づいて推定冷媒量40を算出し、機器1内の冷媒量を推定する。なお、例えば、この冷媒量の推定を、外部端末3が行ってもよいし、クラウド4が行ってもよいし、外部端末3を介してクラウド4が行ってもよい。
【0088】
これにより、機器管理システムSYSは、従来のような冷媒量の推定と異なり、通常運転の中で、機器1内の冷媒量を推定することができる。即ち、機器管理システムSYSは、特殊な運転を必要とせず実使用環境において精度よく機器内の冷媒量を推定することができる。
【0089】
例えば、機器情報20には、機器1内で冷媒が流れ得る空間の容積および機器1が有する冷媒種に関する情報が少なくとも含まれる。これにより、機器管理システムSYSは、機器1内で冷媒が流れ得る空間内の冷媒量を、冷媒種に応じて推定することができる。
【0090】
また、機器管理装置2は、機器1内で冷媒が流れ得る空間の容積と、機器1内の冷媒温度および冷媒種に基づいて求まる冷媒密度とに基づいて機器1内の冷媒量を算出する。これにより、機器管理システムSYSは、機器1内の冷媒量を精度よく推定することができる。
【0091】
また、機器管理装置2は、さらに機器1内で使用される冷凍機油へ溶解している冷媒量(溶解冷媒量42)と液滞留部分の冷媒量(滞留冷媒量43)とを、機器1内で冷媒が流れ得る空間の容積と冷媒密度とにより算出した冷媒量(換算冷媒量41)に加えて、機器内1の冷媒量を算出する。つまり、機器管理装置2は、換算冷媒量41と溶解冷媒量42と滞留冷媒量43との和により推定冷媒量40を算出する。これにより、機器管理システムSYSは、過渡現象においても、機器1内の冷媒量を精度よく推定することができる。
【0092】
また、機器1は、圧縮機102、室外熱交換器104、および膨張弁103を備える室外機100と、室内熱交換器201を備える室内機200とが冷媒が流れる内外接続配管301、302を用いて接続されている。そして、機器設置情報30には、少なくとも内外接続配管301、302の容積(例えば、内外接続配管301、302の径および長さ)に関する情報が含まれる。これにより、機器管理システムSYSは、室外機100と室内機200との接続部分も含めて、機器1内の冷媒量を精度よく推定することができる。
【0093】
また、機器1の周囲の環境情報には、少なくとも機器1の周囲温度に関する情報が含まれる。例えば、周囲温度とは、室内機200が設置されている環境(室内)の温度(室内温度)または室外機100が設置されている環境(室外)の温度(室外温度)である。これにより、機器管理システムSYSは、機器1の周囲温度を考慮して、機器1内の冷媒量を精度よく推定することができる。
【0094】
また、機器管理システムSYSは、機器管理装置2は、機器1と通信可能な外部端末3またはクラウド4を機器管理装置2として備えている。これにより、機器管理システムSYSは、機器1に冷媒量の推定に必要な機能を持たせる必要が無いため、様々な機器1に容易に適用することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る機器管理システムSYSにおいて、冷媒を有する機器1内の冷媒量を推定する冷媒量推定方法は、機器管理装置2が、機器1内の冷媒温度、機器1の電気入力(電気的な特性)、および機器1の周囲の環境情報の測定結果を示す機器取得データ10(測定情報)を取得するステップと、取得した機器取得データ10と、予め設定された機器情報20および機器設置情報30とに基づいて、機器1内の冷媒量を推定するステップと、を含む。
【0096】
これにより、機器管理システムSYSは、従来のような冷媒量の推定と異なり、通常運転の中で、機器1内の冷媒量を推定することができる。即ち、機器管理システムSYSは、特殊な運転を必要とせず実使用環境において精度よく機器内の冷媒量を推定することができる。
【0097】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
本実施形態における基本的な構成は、第1の実施形態と同様であって、機器管理装置2に接続される機器1が複数である点が異なる。
【0098】
図15は、本実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図である。この図に示す機器管理システムSYSは、冷媒を有する複数の機器1と、各機器1と通信可能な機器管理装置2とを備えている。なお、この図では、機器1が3台の例を示しているが、2台であっても良いし、4台以上であっても良い。
【0099】
機器管理システムSYSにおける冷媒量推定処理の構成および動作は、第1の実施形態と同様である。例えば、機器管理装置2において、取得部404は、複数の機器1のそれぞれから機器取得データ10を取得する。推定部405は、取得部404が取得した機器取得データ10と、予め設定された機器情報20および機器設置情報30とに基づいて複数の機器1における冷媒量(冷媒の総量)を算出する。
【0100】
このように、機器管理システムSYSは、複数の機器1のそれぞれの機器取得データ10と機器情報20と機器設置情報30とを一括管理することにより、複数の機器1の全体の冷媒量(冷媒の総量)を推定することができる。また、機器管理システムSYSは、複数の機器1それぞれの冷媒量も個別に推定することもできる。
【0101】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な構成は、第1、2の実施形態と同様である。また、本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な動作は、第1、2の実施形態と同様であるが、冷媒管理値を使用する点が異なる。
【0102】
機器1において使用される冷媒種によって、地球環境へ与える影響が異なり、一般に、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が高いものが段階的に、市場での使用を削減する傾向となっている。例えば、市場で使用されている冷媒種としてR410aとR32があるが、R410aのGWPは2090であって、R32のGWPは675である。つまり、R410aはR32に対して3倍ほど温暖化への影響が高い冷媒種である。したがって、R410aを使用する場合には、R32を使用する場合の冷媒量に対して3分の1の冷媒量に制限させることにより、地球環境(温暖化)への影響が同等になる。
【0103】
冷媒種ごとに機器1で使用が制限される冷媒量(冷媒種ごとの基準となる冷媒量)を、上述の冷媒管理値とする。例えば、冷媒管理値は、機器1の出荷時点の充填冷媒量と機器1に必要となる追加充填冷媒量との和により算出される。
【0104】
図16は、本実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図である。
機器管理装置2は、機器取得データ10と機器情報20と機器設置情報30とに基づいて機器1内の冷媒量を推定するとともに、推定した冷媒量(推定冷媒量40)の値と冷媒管理値とを比較し、機器1内の冷媒量の過不足を判定することができる。
【0105】
例えば、機器管理装置2において、内部の定期処理の他、任意のタイミングで機器1内の冷媒量を推定する構成のため、
図17に示すような時系列データを保持することができる。例えば、推定部405は、機器1の出荷時点の充填冷媒量と機器1に必要となる追加充填冷媒量との和により機器1の冷媒管理値を算出する。そして、推定部405は、機器1内の推定冷媒量値と機器1の冷媒管理値との比較を行い、機器内の冷媒量の過不足を判定する。
【0106】
図17は、機器管理装置が保持する時系列データの一例を示す図である。この図は、各時刻における冷媒管理値と推定冷媒量値との時系列データを示している。時刻t0からt1における推定冷媒量値は、設置時点に機器1に封入されている冷媒量の推定値であり、機器1の出荷時点の充填冷媒量に相当する。次に、時刻t1からt2において、機器に必要となる追加充填冷媒量を機器1へ充填したとすると、時刻t2において推定冷媒量値は冷媒管理値の近傍となる。その後、時刻t3以降に、外的要因等によって機器1内の冷媒量が減少した場合、時刻t3以降における推定冷媒量値は減少し、その後、時刻t4以降において、ある一定の値に推定冷媒量値は安定する。
【0107】
機器管理装置2は、
図17に示すような時系列データに基づいて冷媒管理値と推定冷媒量値の差異を比較することにより、機器1内の冷媒量の過不足を判定することができる。
【0108】
なお、機器1内の冷媒量が不足していると判定された場合は、冷媒ガスは漏洩し減少しているものとし、一方で、機器1内の冷媒量が過多の場合は、過充填であるものとする。例えば、機器管理装置2は、推定冷媒量値が継続的に減少している場合、冷媒ガスが漏洩していることを把握することができる。
【0109】
また、機器管理装置2は、機器1内の冷媒量の過不足の判定を、判定精度が高い任意のタイミング(例えば、機器1の起動後30分経過した後など)、或いは周期的(例えば、1分おき)にサンプリングすることで行い、瞬時値または時系列データとして出力する。
【0110】
例えば、機器管理装置2は、1台の機器1に対して冷媒量の過不足を判定する場合には、単に機器1内の冷媒量の過不足の判定を行う。一方、機器管理装置2は、複数の機器1に対して冷媒量の過不足を判定する場合は、市場での冷媒使用量の管理を行うこともできる。
【0111】
例えば、機器管理システムSYSが複数の機器1を備えている場合には、機器管理装置2は、
図18に示すような複数の機器1それぞれの各時刻における冷媒管理値と推定冷媒量値との時系列データを得ることができる。
図18は、機器管理装置2が保持する複数の機器1(ここでは、機器A、機器B、機器C)それぞれの時系列データの一例を示す図である。
【0112】
機器管理装置2は、複数の機器1のそれぞれを設置した時点の時刻t0の各推定冷媒量値の和を求めることにより、設置した時点における複数の機器1の全体の冷媒量を把握することができる。また、
図18に示す例では、機器Aのみ追加の冷媒充填が時刻t1からt2の間あり、その機器Aは時刻t3から時刻t4の間に冷媒ガスが減少しているため冷媒漏洩が発生していることがわかる。同様に、機器Cは時刻t2から時刻t3の間に冷媒漏洩が発生していることがわかる。さらに、時刻t4の時点で、機器A~Cを撤去したとすると、機器Aと機器Cの冷媒漏洩分を除く残りの冷媒を回収できたことがわかる。
【0113】
したがって、冷媒漏洩分は環境に影響を与えるが、冷媒回収分に関しては同等の冷媒量を有する新規の機器1で代替しても環境に影響がないことがわかる。これにより、持続的に、冷媒を有する機器1を使用できるという効果を得られる。なお、新規の機器1において、冷媒種が異なる機器であっても、冷媒種に応じた冷媒管理値を適用することで、環境に影響なく代替することができる。
【0114】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な構成は、第1、2の実施形態と同様である。また、本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な動作は、第1、2の実施形態と同様であるが、推定冷媒量40をもとに機器1の性能を推定する点と、推定した運転性能を機器1の機器情報20、公開される検査データ、またはカタログ情報などと比較する点とが異なる。カタログ情報は、機器1のメーカのカタログに記載されている情報であり、例えば、機器1の仕様に関する数値が含まれる。
【0115】
図19は、本実施形態に係る冷媒量と機器の性能との関係の一例を示す図である。
図20は、本実施形態に係る機器の性能と気温との関係についてカタログ値との比較例を示す図である。ここで、機器1の性能とは、例えば、冷房、暖房、除湿、冷凍等の運転性能を指す。なお、機器1の性能は、機器1の消費電力としても良い。
【0116】
機器管理装置2は、
図19に示すような特性を有する機器1の推定冷媒量40を算出し、算出した推定冷媒量40からその機器1の性能を求める。そして、機器管理装置2は、算出したその機器1の性能を、
図20に示すような特性としてまとめる。なお、
図19に示す冷媒量と機器1の性能の関係は、機器情報20および機器設置情報30に基づいて数値計算により決定されるものである。同様に、
図20に示す例も、機器情報20、公開される検査データ、またはカタログ情報に基づいて数値計算により決定されるものである。なお、公開される検査データまたはカタログ情報は、機器情報20に含まれる。
【0117】
このように、本実施形態に係る機器管理システムSYSは、機器情報20および機器設置情報30と、推定した冷媒量とに基づいて機器1の性能を推定することにより、その機器1の性能を把握することができる。また、機器管理システムSYSは、複数の機器1を有する場合には、個々の機器1の性能の他、複数の機器1の全体の性能を把握することができる。さらに、機器管理システムSYSは、推定した個々の機器1の性能、または複数の機器1の全体の性能を、機器情報20、公開される検査データ、またはカタログ情報と比較することにより、機器1の性能を評価することができ、例えば機器1の性能の妥当性を把握することができる。
【0118】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。
本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な構成は、第1、2の実施形態と同様であるが、さらに、汎用デバイスを備える点が異なる。
【0119】
図21は、本実施形態に係る機器管理システムの一例を示す概略構成図である。この図において、機器管理装置2は、汎用デバイス5と通信可能な構成である。ここで、汎用デバイス5は、外部機器の一例であって、表示画面を有する機器(例えば、スマートフォン、PC)または音を発する機器(例えば、ワイヤレスイヤホン)等である。
【0120】
本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な動作は実施形態1~4と同様であるが、機器管理装置2が算出する機器1の推定冷媒量40または性能に基づく情報を汎用デバイス5から出力することにより、ユーザに対して視覚的または聴覚的に案内或いは警告を行う点が異なる。
【0121】
例えば、機器管理装置2は、機器1の推定冷媒量40または性能の情報を、汎用デバイス5に送信することにより汎用デバイス5に表示させる。また、機器管理装置2は、機器1の推定冷媒量40の値と冷媒管理値との比較結果に基づいて判定した機器1内の冷媒量の過不足についての情報を、汎用デバイス5に送信することにより汎用デバイス5に表示させてもよい。また、機器管理装置2は、機器1の性能と、機器情報20、公開される検査データ、またはカタログ情報との比較に基づく判定結果の情報を、汎用デバイス5に送信することにより汎用デバイス5に表示させてもよい。
【0122】
具体的には、機器管理装置2の出力部406は、機器1の推定冷媒量40または性能の情報を通信部402へ出力することにより、汎用デバイス5へ送信する。汎用デバイス5は、機器管理装置2から送信された機器1の推定冷媒量40または性能の情報を取得して、汎用デバイス5の表示画面に表示させる。また、出力部406は、機器1内の冷媒量の過不足についての情報を通信部402へ出力することにより、汎用デバイス5へ送信する。汎用デバイス5は、機器管理装置2から送信された機器1内の冷媒量の過不足についての情報を取得して、汎用デバイス5の表示画面に表示させる。なお、汎用デバイス5は、これらの機器管理装置2から送信される情報を音声によって出力しても良い。
【0123】
図22は、本実施形態に係る汎用デバイス5に表示される表示例を示す図である。この図では、推定冷媒量40の値、機器1内の冷媒量の不足、冷媒が漏洩していること、性能の判定結果などを案内または警告する情報の表示例を示している。なお、この図に示す表示例は一例であって、これに限られるものではない。
【0124】
なお、視覚的または聴覚的に案内或いは警告は、例えば、継続的に、機器1内の冷媒量が不足していることが判断された場合に行われる。この場合、冷媒ガスは漏洩していると考えられるため、冷媒ガスの漏洩の影響を最小限にするように、機器1の管理者または修理業者への連絡をユーザに促す、或いは機器1の運転中であれば停止または冷媒漏洩を遮断するモードへ移行させる操作をユーザに促すことを目的としている。
【0125】
ここで、ある環境条件または機器1の運転条件において、冷媒量以外のその他条件が一致するとしたとき、機器1の性能は、冷媒量をパラメータとする関数で表すことができる。消費電力を機器1の性能の例とした場合、冷媒量が不足している場合には、その減少量に応じて、熱交換器での交換熱量が減少するため、消費電力が減少していく。冷房、暖房、除湿、または冷凍の運転性能についても、同様の傾向がみられる。
【0126】
したがって、機器管理装置2は、推定した冷媒量に基づいて機器1の性能を求めることができ、その結果を、機器1を使用するユーザまたは管理者などに対し、汎用デバイス5を介して視覚的または聴覚的に案内或いは警告を行う。また、機器管理装置2は、複数の機器1が接続されている場合においても、それぞれの機器1について推定した冷媒量に基づいて、機器1のそれぞれの性能を求めることができる。なお、機器管理装置2は、このとき得られる機器1それぞれの性能を客観的判断できるよう、機器情報20、公開される検査データ、またはカタログ情報と比較する。
【0127】
また、機器管理装置2は、機器1の冷媒管理値に対して機器1内の冷媒量が不足し機器1の性能の低下がみられた場合、冷媒ガス量が不足していることにより性能が低下していることを、視覚的または聴覚的に案内或いは警告を行う。
【0128】
このように、本実施形態に係る機器管理システムSYSは、機器1の冷媒量または性能の推定結果に基づいて、汎用デバイス5を介して視覚的または聴覚的に案内或いは警告する情報を出力する。これにより、機器管理システムSYSは、機器1を使用するユーザまたは機器1のメンテナンスを行う作業者または修理業者、管理者などの様々な人(例えば、不特定多数の人)がその機器1の状態を容易に把握することができる。
【0129】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について説明する。
本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な構成および動作は第5の実施形態と同様であり、機器管理装置2から汎用デバイス5へ情報を送信して表示させる。本実施形態では、汎用デバイス5に表示させる内容が第5の実施形態と異なる。
【0130】
機器管理装置2は、算出した機器1の冷媒量または性能、機器取得データ10、機器情報20、機器設置情報30などに基づいて、機器1の故障またはメンテナンスに関する情報を汎用デバイス5へ送信することにより汎用デバイス5に表示させる。故障またはメンテナンスに関する情報とは、例えば、故障またはメンテナンスの作業において補助となる情報であって作業者に有益な情報である。
【0131】
具体的には、機器管理装置2の出力部406は、機器1の故障またはメンテナンスに関する情報を通信部402へ出力することにより、汎用デバイス5へ送信する。汎用デバイス5は、機器管理装置2から送信された故障またはメンテナンスに関する情報を取得して、汎用デバイス5の表示画面に表示させる。なお、汎用デバイス5は、これらの機器管理装置2から送信される情報を音声によって出力しても良い。
【0132】
図23は、本実施形態に係る汎用デバイス5に表示される表示例を示す図である。この図に示す表示例には、機器1の情報として、運転開始日、機器名、および圧縮機の型式が表示されている。また、機器1の設置情報として、室外機の設置場所、室内機が設置されている高さについての情報が表示されている。また、機器1の推定冷媒量値および性能と、推定冷媒量値および冷媒管理値の時系列データのグラフが表示されている。これらの表示情報は、故障またはメンテナンスにおける作業の補助となる情報である。なお、この図に示す表示例は一例であって、これに限られるものではない。例えば、
図23に示す表示例によれば、瞬時値または時系列として機器1内の冷媒量を把握することができるとともに、機器1の故障またはメンテナンスにおける作業の補助となる情報を確認することができる。
【0133】
このように、本実施形態に係る機器管理システムSYSは、機器1の冷媒量または性能の推定結果に基づいて、汎用デバイス5を介して機器1の故障またはメンテナンスに関する情報を出力する。これにより、機器管理システムSYSは、機器1の故障またはメンテナンスにおける作業の補助となる情報を確認することができる。よって、本実施形態によれば、機器1の故障またはメンテナンスにおける作業者の負荷の低減と、作業の効率化を図ることができる。
【0134】
<第7の実施形態>
次に、第7の実施形態について説明する。
本実施形態に係る機器管理システムSYSの基本的な構成および動作は第4の実施形態と同様である。
【0135】
第4の実施形態で説明したように、機器管理装置2は、機器1内の冷媒量に基づいて機器1の性能を推定する。本実施形態では、機器管理装置2は、推定した機器1の性能に基づいて、機器1を使用する環境が機器1の保有する能力を超える可能性がある場合に、予冷または予暖にて事前に機器1を運転させる。
【0136】
例えば、正規の充填量(冷媒管理値を満たす冷媒量)の機器1に比較して、冷媒量が低下している機器1は、性能が低下しているため、圧縮機102の周波数を増加させる等の制御を行うが、周波数の増加による圧力上昇によって、保護動作により断続的に停止する場合がある。
【0137】
この場合、機器1は、例えば冷房運転において設定温度に到達するまでの時間が長くなり、機器1の保有する能力以上に室内の空調負荷が増加した場合には、室温が低下せず、上昇していくことが考えられる。そこで、機器管理装置2は、機器1に予冷を行わせることにより、室内の空調負荷を低減させ、性能が低下している機器1であっても、保護動作に入らないようにする。
【0138】
例えば、機器1において冷房または暖房の運転の予約がされている場合、機器管理装置2(処理部403)は、通信部402を介して機器1から予約時間を取得するとともに、現在の環境(例えば、温度)が、推定冷媒量値に基づいて求めた機器1の性能による冷房または暖房の能力を超える可能性があるか否かを判定する。処理部403は、現在の環境が機器1の性能による冷房または暖房の能力を超える可能性があると判定した場合、予約時間よりも事前に機器1を冷房または暖房運転させる指示を機器1へ通信部402を介して送信する。機器1は、この指示を受けることに応じて予冷または予暖の運転を行う。
【0139】
このように、本実施形態に係る機器管理システムSYSは、機器1の性能に基づいて、機器1に対して予冷または予暖の運転制御をさせる。これにより、機器管理システムSYSは、機器1を使用する環境が機器1の保有する能力を超える場合に、予冷または予暖を行わない場合に比較して、機器1を安定的に運転させることができる。
【0140】
例えば、環境が機器1の保有する能力を超える場合、機器1は、負荷に耐えられず機器1自体の保護のために運転を停止する、或いは運転を抑制するといった保護動作を行うことがある。機器1は、保護動作を行うと機器1を使用することができなくなるため、機器1を使用するユーザを不快にさせてしまうことがある。本実施形態によれば、機器1の性能に基づいて、機器1に対して予冷または予暖の運転制御をさせるため、このような機器1の保護動作が起きてしまうことを抑制することができる。例えば、汚損または風路閉塞による熱交換器の熱交換性能の低下、または冷媒ガスの不足といった要因により性能が低下している機器1であっても、使用上の影響を最小限にすることができる。
【0141】
なお、機器管理システムSYSは、冷房または暖房に限らず、除湿または冷凍の場合も同様に、機器1を使用する環境が機器1の保有する能力を超える場合に、予約時間よりも事前に機器1を除湿または冷凍運転させてもよい。
【0142】
以上、各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0143】
なお、上記実施形態において、機器1の例として冷房運転と暖房運転とを切り替え可能な空気調和機の例を説明したが、冷房専用機または暖房専用機としてもよい。冷房専用機の場合には、
図2において四方弁101を除いた冷房のみの冷媒回路となる。また、暖房専用機の場合には、
図2において四方弁101を除いた暖房のみの冷媒回路となる。
【0144】
また、機器1は、冷媒を有する機器であれば、空気調和機に限定されるものではない。例えば、機器1は、凝縮器と蒸発器とが一式となった冷蔵庫または冷凍庫などであっても良い。冷蔵庫または冷凍庫の場合も冷房のみの冷媒回路となる。
【0145】
また、例えば、機器1は、給湯器(ATW:Air To Water)であっても良い。
図24は、機器1が給湯器である場合の冷媒回路の一例を示す図である。この
図24において、
図2の各部に対応する構成には同一の符号を付している。機器1(給湯器)は、ガスクーラ205の熱交換量を試算する際、冷媒のガスクーラ205の出入口温度T6、T7の代わりに、水回路の出入口温度T6’、T7’を用いても良い。
【0146】
また、
図5及び
図6に示すモリエル線図の例は、冷媒種によって異なる。例えば、給湯器で用いられるCO2冷媒は、運転中に超臨界となるため液相~気相の区別がないが、圧力とエンタルピー変化の関係は、
図6に示す例と同様である。また、給湯器では、ガスクーラ205の部分の冷媒温度が測定できない場合、冷媒循環量、水回路の水量、水回路の出入口温度T6’、T7’、および熱交換効率から換算できる。
【0147】
また、上記実施形態では、機器管理装置2が外部端末3またはクラウド4である例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、機器管理装置2は、機器1に備えられてもよい。
【0148】
なお、機器管理装置2の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより機器管理装置2の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSおよび周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0149】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークまたは電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバまたはクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記のプログラムを所定のサーバに記憶させておき、他の装置からの要求に応じて、当該プログラムを通信回線を介して配信(ダウンロード等)させるようにしてもよい。
【0150】
また、機器管理装置2の機能の一部、または全部を、LSI(Large SCale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0151】
1 機器
2 機器管理装置
3 外部端末
4 クラウド
5 汎用デバイス
10 機器取得データ
11 冷媒温度
12 電気入力
13 環境情報
20 機器情報
30 機器設置情報
31 内外接続配管の内容積
40 推定冷媒量
41 換算冷媒量
42 溶解冷媒量
43 滞留冷媒量
50 冷媒密度
51 機器内の各部品の内容積
52 滞留油量
53 油溶解比率
100 室外機
101 四方弁
102 圧縮機
102a 圧縮部
102b 圧縮機モータ
103 膨張弁
104 室外熱交換器
105 室外ファン
110 室外機制御部
120 インバータ
200 室内機
201 室内熱交換器
202 室内ファン
210 室内機制御部
220 無線機器
301,302 内外接続配管
310 内外通信線
401 記憶部
402 通信部
403 処理部
404 取得部
405 推定部
406 出力部
SYS 機器管理システム