(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】第1の無線局、第2の無線局、無線端末、及びこれらにおける通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 76/15 20180101AFI20241210BHJP
H04W 16/32 20090101ALI20241210BHJP
H04W 72/0457 20230101ALI20241210BHJP
H04W 76/11 20180101ALI20241210BHJP
H04W 92/14 20090101ALI20241210BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20241210BHJP
【FI】
H04W76/15
H04W16/32
H04W72/0457 110
H04W76/11
H04W92/14
H04W92/20
(21)【出願番号】P 2024008633
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2022205464の分割
【原出願日】2013-06-14
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2012223177
(32)【優先日】2012-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】二木 尚
(72)【発明者】
【氏名】網中 洋明
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0275359(US,A1)
【文献】国際公開第2011/040041(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0140743(US,A1)
【文献】Ericsson,Addition of SRB and DRB radio bearer combinations to 36.508,3GPP TSG-RAN WG5#39bis R5-082091,2008年06月27日,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG5_Test_ex-T1/TSGR5_39bis_Paris/Tdoc/R5-082091.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセルを運用するよう構成された第1の無線局であって、
第2のセルを運用するように構成された第2の無線局に前記第2の無線局に対する第1の要求を送信する手段と、ここで前記第1の要求は、前記第1の無線局と無線端末との間の確立された第1の無線接続が前記第1のセルにおいて維持されている間に、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備を前記第2の無線局に要求するよう構成され、
前記第2のセルの無線リソース設定情報を前記第2の無線局から受信する手段と、
前記第2のセルの前記無線リソース設定情報を少なくとも含むRadio Resource Control (RRC) Connection Reconfigurationメッセージを前記無線端末に送信する手段と、
を備え、
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信のために、前記無線端末とServing Gateway (S-GW)との間のデータ経路を示すData Radio Bearer (DRB) Identity及びE-UTRAN Radio Access Bearer Identity (E-RAB ID)を含む、
第1の無線局。
【請求項2】
前記RRC Connection Reconfigurationメッセージは、前記無線端末と前記第1の無線局との間の前記確立された第1の無線接続が維持されている間に前記第2のセルを追加することを前記無線端末に引き起こす、
請求項1に記載の第1の無線局。
【請求項3】
前記無線端末と前記第2の無線局の少なくとも一方に、前記第2のセルにおいて第2の無線接続を確立するよう指示する手段をさらに備える、
請求項1又は2に記載の第1の無線局。
【請求項4】
前記第1の無線接続又は前記第2の無線接続の確立に関連する無線端末の端末個別情報、前記第1の無線接続又は前記第2の無線接続の確立に関連する無線接続設定情報、及び前記第1の無線接続又は前記第2の無線接続に関連する無線アクセス情報、のうち少なくとも1つを前記第2の無線局に通知する手段をさらに備える、
請求項3に記載の第1の無線局。
【請求項5】
前記第2の無線局から、前記第1の無線接続または前記第2の無線接続に関連する無線アクセス情報を受信する手段をさらに備える、
請求項3に記載の第1の無線局。
【請求項6】
前記端末個別情報は、(a)無線端末能力情報、(b)無線端末識別子情報、(c)選択ネットワーク情報、(d)ベアラ情報、(e)無線リソース制御情報、(f)無線端末移動履歴情報、および(g)サービス情報、のうち少なくとも1つを含む、
請求項4に記載の第1の無線局。
【請求項7】
前記無線接続設定情報は、(a)サービングセル情報、(b)システム情報、(c)無線リソース設定情報、(d)測定設定情報、(e)移動制御情報、および(f)セキュリティ設定情報、のうち少なくとも1つを含む、
請求項4に記載の第1の無線局。
【請求項8】
前記無線アクセス情報は、(a)無線アクセス識別子情報および(b)無線アクセスリソース情報のうち少なくとも一方を含む、
請求項4に記載の第1の無線局。
【請求項9】
前記指示する手段は、前記無線端末が前記第1のセル及び前記第2のセルを信号受信又は送信のために同時に使用することを可能にするために、前記第2の無線接続を確立するように前記第2の無線局に指示するよう構成される、
請求項3に記載の第1の無線局。
【請求項10】
前記データ経路は前記第2の無線局を通過する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の第1の無線局。
【請求項11】
前記データ経路はユーザデータ用のデータ経路である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の第1の無線局。
【請求項12】
第2のセルを運用するよう構成された第2の無線局であって、
第1のセルを運用するよう構成された第1の無線局から前記第2の無線局に対する第1の要求を受信する手段と、ここで前記第1の要求は、前記第1の無線局と無線端末との間の確立された第1の無線接続が前記第1のセルにおいて維持されている間に、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備を前記第2の無線局に要求するよう構成され、
前記第2のセルの無線リソース設定情報を前記第1の無線局に送信する手段と、
を備え、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの前記無線リソース設定情報を少なくとも含むRadio Resource Control (RRC) Connection Reconfigurationメッセージを前記無線端末に送信するように構成され
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信のために、前記無線端末とServing Gateway (S-GW)との間のデータ経路を示すData Radio Bearer (DRB) Identity及びE-UTRAN Radio Access Bearer Identity (E-RAB ID)を含む、
第2の無線局。
【請求項13】
前記第2のセルにおいて第2の無線接続を確立するよう前記無線端末に指示する手段をさらに備える、
請求項12に記載の第2の無線局。
【請求項14】
前記第1の無線局から、前記第1の無線接続または前記第2のセルにおける第2の無線接続の確立に関連する前記無線端末の端末個別情報を受信する手段をさらに備える、
請求項12又は13に記載の第2の無線局。
【請求項15】
前記端末個別情報に基づいて、上位ネットワークと前記第2の無線局との間で前記無線端末のユーザデータを転送するためのベアラの設定をトリガする手段をさらに備える、
請求項14に記載の第2の無線局。
【請求項16】
前記第1の無線局から、前記第1の無線接続又は前記第2のセルにおける第2の無線接続の確立に関連する無線接続設定情報および前記第1の無線接続又は前記第2の無線接続に関連する無線アクセス情報のうち少なくとも一方を受信する手段をさらに備える、
請求項12~15のいずれか1項に記載の第2の無線局。
【請求項17】
前記第1の無線接続又は前記第2のセルにおける第2の無線接続の確立に関連する無線接続設定情報及び前記第1の無線接続又は前記第2の無線接続に関連する無線アクセス情報のうち少なくとも一方を前記第1の無線局に通知する手段をさらに備える、
請求項12~15のいずれか1項に記載の第2の無線局。
【請求項18】
前記データ経路は前記第2の無線局を通過する、
請求項12~17のいずれか1項に記載の第2の無線局。
【請求項19】
前記データ経路はユーザデータ用のデータ経路である、
請求項12~18のいずれか1項に記載の第2の無線局。
【請求項20】
無線端末であって、
第1の無線局によって運用される第1のセルにおいて、前記第1の無線局と前記無線端末との間の第1の無線接続を確立する手段と、
前記第1の無線局から、第2の無線局によって運用される第2のセルの無線リソース設定情報を含むRadio Resource Control (RRC) Connection Reconfigurationメッセージを受信する手段と、
前記確立された第1の無線接続が前記第1のセルにおいて維持されている間に、前記第2のセルの前記無線リソース設定情報を使用して前記第2のセルを追加する手段と、
を備え、
前記RRC Connection Reconfigurationメッセージは、前記第2の無線局に対する第1の要求に基づいて送信され、
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備を前記第2の無線局に要求するよう構成され、
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信のために、前記無線端末とServing Gateway (S-GW)との間のデータ経路を示すData Radio Bearer (DRB) Identity及びE-UTRAN Radio Access Bearer Identity (E-RAB ID)を含む、
無線端末。
【請求項21】
前記第1のセルはプライマリセルであり、
前記第2のセルはセカンダリセルであり、
前記第2のセルの上り物理制御チャネルを使用してレイヤ1制御情報及びレイヤ2制御情報の少なくとも一方を送信する手段をさらに備える、
請求項20に記載の無線端末。
【請求項22】
前記データ経路は前記第2の無線局を通過する、
請求項20又は21に記載の無線端末。
【請求項23】
前記データ経路はユーザデータ用のデータ経路である、
請求項21~22のいずれか1項に記載の無線端末。
【請求項24】
第1のセルを運用するよう構成された第1の無線局における通信制御方法であって、
第2のセルを運用するように構成された第2の無線局に前記第2の無線局に対する第1の要求を送信すること、ここで前記第1の要求は、前記第1の無線局と無線端末との間の確立された第1の無線接続が前記第1のセルにおいて維持されている間に、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備を前記第2の無線局に要求するよう構成され;
前記第2のセルの無線リソース設定情報を前記第2の無線局から受信すること;及び
前記第2のセルの前記無線リソース設定情報を少なくとも含むRadio Resource Control (RRC) Connection Reconfigurationメッセージを前記無線端末に送信すること、
を備え、
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信のために、前記無線端末とServing Gateway (S-GW)との間のデータ経路を示すData Radio Bearer (DRB) Identity及びE-UTRAN Radio Access Bearer Identity (E-RAB ID)を含む、
通信制御方法。
【請求項25】
前記データ経路は前記第2の無線局を通過する、
請求項24に記載の通信制御方法。
【請求項26】
前記データ経路はユーザデータ用のデータ経路である、
請求項24又は25に記載の通信制御方法。
【請求項27】
第2のセルを運用するよう構成された第2の無線局における通信制御方法であって、
第1のセルを運用するよう構成された第1の無線局から前記第2の無線局に対する第1の要求を受信すること、ここで前記第1の要求は、前記第1の無線局と無線端末との間の確立された第1の無線接続が前記第1のセルにおいて維持されている間に、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備を前記第2の無線局に要求するよう構成され;及び
前記第2のセルの無線リソース設定情報を前記第1の無線局に送信すること、
を備え、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの前記無線リソース設定情報を少なくとも含むRadio Resource Control (RRC) Connection Reconfigurationメッセージを前記無線端末に送信するように構成され
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信のために、前記無線端末とServing Gateway (S-GW)との間のデータ経路を示すData Radio Bearer (DRB) Identity及びE-UTRAN Radio Access Bearer Identity (E-RAB ID)を含む、
通信制御方法。
【請求項28】
前記データ経路は前記第2の無線局を通過する、
請求項27に記載の通信制御方法。
【請求項29】
前記データ経路はユーザデータ用のデータ経路である、
請求項27又は28に記載の通信制御方法。
【請求項30】
無線端末における通信制御方法であって、
第1の無線局によって運用される第1のセルにおいて、前記第1の無線局と前記無線端末との間の第1の無線接続を確立すること;
前記第1の無線局から、第2の無線局によって運用される第2のセルの無線リソース設定情報を含むRadio Resource Control (RRC) Connection Reconfigurationメッセージを受信すること;及び
前記確立された第1の無線接続が前記第1のセルにおいて維持されている間に、前記第2のセルの前記無線リソース設定情報を使用して前記第2のセルを追加すること、
を備え、
前記RRC Connection Reconfigurationメッセージは、前記第2の無線局に対する第1の要求に基づいて送信され、
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備を前記第2の無線局に要求するよう構成され、
前記第1の要求は、前記第2のセルでの前記無線端末との通信のために、前記無線端末とServing Gateway (S-GW)との間のデータ経路を示すData Radio Bearer (DRB) Identity及びE-UTRAN Radio Access Bearer Identity (E-RAB ID)を含む、
通信制御方法。
【請求項31】
前記データ経路は前記第2の無線局を通過する、
請求項30に記載の通信制御方法。
【請求項32】
前記データ経路はユーザデータ用のデータ経路である、
請求項30又は31に記載の通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線局と無線端末が複数のセルを利用して通信を行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のモバイルトラフィックの急激な増大による通信品質の低下の改善、及びさらなる高速通信の実現のため、3GPP(登録商標) LTE(Long Term Evolution)では無線基地局(eNode B: eNB)と無線端末(User Equipment: UE)が複数のセルを使用して通信を行うキャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation: CA)機能の仕様化が行われている。なお、UEがCAで使用可能なセルは、1つのeNBのセル(つまり、eNBが運用するセル)に限定される。
【0003】
図17を用いてCAの手順を説明する(非特許文献1)。
図17は、UEがeNBによって運用される第1のセル(Cell1)及び第2のセル(Cell2)をCAする例を示している。ステップS1では、UEとeNBが第1のセルにおいて無線接続を確立する(RRC Connection Establishment)。ステップS2では、UEが第1のセルにおいてeNBから下りデータを受信する(Downlink data on Cell1)。ここで、当該UEにとって第1のセルがプライマリセル(Primary cell: PCell) となる。
【0004】
ステップS3では、eNBは、UEにセカンダリセル(Secondary cell: SCell)を設定する必要があると判断し、PCellにおいて第2のセルをSCellとして設定する(RRC Connection Reconfiguration on Cell1 (including Configuration of Cell2(Secondary cell: SCell))。ステップS4では、UEは、第2のセルの設定が完了したこと、つまり第2のセルを使用する準備が完了したこと、に応じて、eNBに完了通知を送信する(RRC Connection Reconfiguration Complete)。
【0005】
ステップS5では、eNBは、第2のセルの使用開始通知をUEに送信する(Cell2 Activation)。ステップS6では、UEは、第1及び第2のセルを同時に利用して下りデータを受信する(DL data on Cell1 and Cell2)。なお、ステップS6におけるUEは、第1及び第2のセルを下りデータ受信のために同時に使用可能であればよい。言い換えると、UEは、第1及び第2のセルの両方において常に下りデータを受信する必要はない。下りデータ受信のために第1及び第2のセルのいずれか一方を使用するか又は両方を使用するかは、例えば、下りデータ量又はUEが利用するサービスに基づいて決定される。第2のセルでUEが上りデータを送信する場合も、基本的に
図17に示したのと同様の手順で実現可能である。
【0006】
CAを行うUEは、Physical layerとMAC (Medium Access Control) layer の機能の少なくとも一部を統合されるセル毎に持つが、RLC (Radio Link Control) layer以上の構成はCAを行わない場合と同じである。そのため、コアネットワーク(Evolved Packet Core: EPC)は、UEがCAしているか否かを意識しない。
【0007】
また、ヘテロジーニアス・ネットワーク(Heterogeneous Network: HetNet)環境において、異なるeNBによって運用される複数のセルを統合するInter-eNB CAのコンセプトが提案されている(非特許文献2)。例えば、Inter-eNB CAでは、マクロ基地局(Macro eNB: MeNB)により運用されるマクロセル(Macro cell)とピコ基地局(Pico eNB: PeNB)によって運用されるピコセル(Pico cell)を使用することが考えられている。
【0008】
さらに、カバレッジの広いマクロセルをUEの移動管理などの制御系の信号の送受信に用い、相対的に通信品質が良好なピコセルをユーザーデータなどのデータ系の信号の送受信に用いる方法も提案されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】3GPP TS 36.331 V11.0.0, "Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Radio Resource Control (RRC); Protocol specification", セクション 5.3.5, July 2012
【文献】3GPP RWS-120046, Samsung Electronics, "Technologies for Rel-12 and Onwards", 3GPP TSG RAN Workshop on Rel-12 and Onwards Ljubljana, Slovenia, 11-12 June 2012
【文献】3GPP RWS-120010, NTT DOCOMO, "Requirements, Candidate Solutions & Technology Roadmap for LTE Rel-12 Onward", 3GPP TSG RAN Workshop on Rel-12 and Onwards Ljubljana, Slovenia, 11-12 June 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のキャリアアグリゲーション(CA)では、無線端末(UE)は1つの無線局(eNB)によって運用される複数のセルを使用して通信を行うため、UEは複数のセルを設定することができた。一方、異なるeNBによって運用される複数のセルのキャリアアグリゲーション(Inter-eNB CA)では、UEは、異なるeNBによって運用される複数のセルを同時に使用できるようにするために、通信を行うためのセル設定(例えば、RRC Connection Setup若しくはRRC Connection Reconfiguration又はこれら両方)をそれぞれのセルにおいて行う必要がある。しかし、現在のLTEの仕様では、UEが1つのeNBのセルにおいて無線接続を確立している場合、他のeNBのセルにおいて無線接続を確立することができない。
【0011】
従って、本件発明の目的の1つは、異なる無線局によって運用される複数セルのキャリアアグリゲーションを実現するために、1つの無線端末が複数の無線局のセルにおいて無線接続を確立することが可能な無線通信システム、無線局、無線端末、通信制御方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、無線通信システムは、第1のセルを運用する第1の無線局、及び第2のセルを運用する第2の無線局を含む。前記第1の無線局は、前記第1のセルでの無線端末との第1の無線接続が確立されている間に、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備をするよう前記第2の無線局に要求又は指示するよう構成されている。さらに、前記第1の無線局は、前記第1の無線接続を維持したまま前記第2のセルでの前記第2の無線局と前記無線端末との第2の無線接続を確立するよう前記無線端末又は前記第2の無線局に指示するよう構成されている。
【0013】
第2の態様では、第1のセルを運用する第1の無線局は、前記第1のセルにおいて第1の無線接続が確立されている無線端末との通信を制御する通信制御部を含む。前記通信制御部は、前記第1のセルでの前記無線端末との第1の無線接続が確立されている間に、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備をするよう前記第2の無線局に要求又は指示するよう構成されている。さらに、前記通信制御部は、前記第1の無線接続を維持したまま前記第2のセルでの前記第2の無線局と前記無線端末との第2の無線接続を確立するよう前記無線端末又は前記第2の無線局に指示するよう構成されている。
【0014】
第3の態様では、第2のセルを運用する第2の無線局は、無線端末との通信を制御する通信制御部を含む。前記通信制御部は、第1の無線局により運用される第1のセルで前記無線端末との第1の無線接続が確立されている間に、前記第1の無線局からの指示又は要求に応答して、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備をするよう構成されている。さらに、前記通信制御部は、前記第1の無線局からの指示に応答して、前記第1の無線接続が維持されたまま、前記第2のセルでの前記第2の無線局と前記無線端末との第2の無線接続を確立するよう構成されている。
【0015】
第4の態様では、無線端末は、無線通信部および制御部を含む。前記制御部は、上述の第1、第2、又は第3の態様に係る前記第1の無線局又は前記第2の無線局からの指示に応答して、前記第1の無線局との第1の無線接続を維持したまま前記第2のセルを設定するよう構成されている。
【0016】
第5の態様では、第1のセルを運用する第1の無線局における通信制御方法は、
(a)前記第1のセルでの前記第1の無線局と無線端末との第1の無線接続が確立されている間に、第2の無線局により運用される第2のセルでの前記無線端末との通信の準備をするよう前記第2の無線局に要求又は指示すること、及び
(b)前記第1の無線接続を維持したまま前記第2のセルでの前記無線端末との第2の無線接続を確立するよう前記無線端末又は前記第2の無線局に指示すること、
を含む。
【0017】
第6の態様では、第2のセルを運用する第2の無線局における通信制御方法は、
(a)第1の無線局により運用される第1のセルで無線端末との第1の無線接続が確立されている間に、前記第1の無線局からの指示又は要求に応答して、前記第2のセルでの前記無線端末との通信の準備をすること、及び
(b)前記第1の無線局からの指示に応答して、前記第1の無線接続が維持されたまま、前記第2のセルでの前記第2の無線局と前記無線端末との第2の無線接続を確立すること、
を含む。
【0018】
第7の態様では、無線端末における通信制御方法は、上述の第1、第2、又は第3の態様に係る前記第1の無線局又は前記第2の無線局からの指示に応答して、前記第1の無線局との第1の無線接続を維持したまま前記第2のセルを設定することを含む。
【0019】
第8の態様では、プログラムは、上述した第5の態様に係る第1の無線局における通信制御方法をコンピュータに行わせるための命令群を含む。
【0020】
第9の態様では、プログラムは、上述した第6の態様に係る第2の無線局における通信制御方法をコンピュータに行わせるための命令群を含む。
【0021】
第10の態様では、プログラムは、上述した第7の態様に係る無線端末における通信制御方法をコンピュータに行わせるための命令群を含む。
【発明の効果】
【0022】
上述した態様によれば、異なる無線局によって運用される複数セルのキャリアアグリゲーションを実現するために、無線端末が複数の無線局のセルにおいて無線接続を確立することが可能な無線通信システム、無線局、無線端末、通信制御方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る第1の無線局の構成例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る第2の無線局の構成例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る無線端末の構成例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る第1の無線局の動作例を示すフローチャートである(手順例1)。
【
図6】第1の実施形態に係る第2の無線局の動作例を示すフローチャートである(手順例1)。
【
図7】第1の実施形態に係る無線端末の動作例を示すフローチャートである(手順例1)。
【
図8】第1の実施の形態に係る無線通信システムにおける通信制御方法の一例を示すシーケンス図である(手順例1)。
【
図9】第1の実施形態に係る第1の無線局の動作例を示すフローチャートである(手順例2)。
【
図10】第1の実施形態に係る第2の無線局の動作例を示すフローチャートである(手順例2)。
【
図11】第1の実施形態に係る無線端末の動作例を示すフローチャートである(手順例2)。
【
図12】第1の実施形態に係る無線通信システムにおける通信制御方法の一例を示すシーケンス図である(手順例2)。
【
図13】第2の実施形態に係る無線通信システムにおける通信制御方法の一例を示すシーケンス図である(手順例3)。
【
図14】第2の実施形態に係る無線通信システムにおける通信制御方法の一例を示すシーケンス図である(手順例4)。
【
図15】第3の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図16】第3の実施形態に係る無線通信システムにおける通信制御方法の一例を示すシーケンス図である。
【
図17】LTEのキャリアアグリゲーション手順を示すシーケンス図である(背景技術)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示している。本実施形態に係る無線通信システムは、第1の無線局1、第2の無線局2、及び無線端末3を含む。無線局1及び2は、第1のセル10及び第2のセル20をそれぞれ運用する。無線局1及び2は、例えば、無線基地局、又は基地局制御局である。無線端末3は、第1のセル10における第1の無線接続を維持したまま、第2のセル20における第2の無線接続を確立することができるよう構成されている。これにより、無線端末3は、信号(例えば、ユーザーデータ又は制御情報)の送信又は受信のために複数のセル(例えば、セル10及び20)を同時に使用することができる。言い換えると、無線端末3は、異なる無線局によって運用される複数のセルのキャリアアグリゲーションをサポートする。
【0026】
なお、
図1は、HetNet環境を示している。具体的に述べると、
図1に示された第1のセル10は、第2のセル20に比べて広いカバレッジを有する。また、
図1は、第1のセル10内に第2のセル20が配置された階層化セル構成を示している。しかしながら、
図1に示されたセル構成は一例に過ぎない。例えば、第1及び第2のセル10及び20は、同程度のカバレッジを有してもよい。言い換えると、本実施形態に係る無線通信システムは、ホモジーニアス・ネットワーク(Homogeneous Network)環境に適用されてもよい。
【0027】
異なる無線局1及び2によって運用されるセル10及び20を信号の受信又は送信のために無線端末3において同時に利用できるようにするために、本実施形態の無線通信システムは、無線端末3との無線接続をセル10及びセル20のそれぞれにおいて確立する必要がある。そのために、本実施形態の無線通信システムは、以下のように動作する。すなわち、無線局1は、セル10及び20を信号の受信又は送信のために無線端末3において同時に利用できるようにするために、セル10での無線端末3との第1の無線接続が確立されている間に、セル20での無線端末3との通信を準備するよう無線局2に要求又は指示するよう構成されている。さらに、無線局1は、第1の無線接続を維持したまま、セル20での無線端末3との第2の無線接続を確立するよう無線端末3又は無線局2に指示するよう構成されている。これにより、本実施形態は、異なる無線局1及び2によって運用されるセル10及び20のキャリアアグリゲーションを実現するために、無線端末3が複数のセル10及び20において無線接続を確立することができる。尚、上述の「複数のセルを同時に使用する」とは、実際に複数のセルで信号を同時に受信又は送信することに限定はされず、複数のセルの両方において信号を受信又は送信することが可能な状態になっているが実際にはいずれかのセルで信号を受信又は送信すること、複数のセルそれぞれで種類の異なる信号を受信又は送信すること、或いは、複数のセルそれぞれを信号の受信又は送信のいずれかに使用すること、などを含む。
【0028】
手順例1では、無線局1は、セル20での第2の無線接続の確立を無線端末3に指示する。そして、無線端末3は、無線局1からの指示に応答して、セル20を設定する。これにより、無線端末3は、セル20での無線局2との間の第2の無線接続を確立できる。ここで、無線局1は、セル10における無線局1と無線端末3の間の制御コネクション(例えば、制御チャネル、又はシグナリング無線ベアラ(Signaling Radio Bearer: SRB))を介して無線端末3への指示を送ればよい。これにより、無線端末3は、無線局1と通信(つまり、ユーザーデータなどを乗せた信号の送信若しくは受信又はこれら両方)しながら、無線局2のセル20を使用して通信するための準備を容易に行うことができる。
【0029】
手順例2では、無線局1は、セル20での第2の無線接続の確立を無線局2に指示する。無線局2は、無線局1からの指示に応答して、セル20での第2の無線接続の確立を無線端末3に指示する。そして、無線端末3は、無線局1からの指示に応答して、セル20を設定する。これにより、無線端末3は、セル20での無線局2との間の第2の無線接続を確立できる。ここで、無線局1から無線局2への第2の無線接続の確立の指示は、セル20での無線端末3との通信準備の指示(又は要求)と同時に送信されてもよいし、通信準備の指示(又は要求)と兼用されてもよい。言い換えると、セル20での無線端末3との通信準備の指示(又は要求)のメッセージは、無線局1から無線局2への第2の無線接続の確立の指示を明示的又は暗示的に示してもよい。つまり、無線局2は、無線端末3との通信準備の指示(又は要求)を受信したことに応じて、無線端末3との通信の準備をするとともに、第2の無線接続の確立を無線端末3に指示してもよい。無線局2から無線端末3への指示は、セル10における無線局1と無線端末3の間の制御コネクション(例えば、制御チャネル、又はシグナリング無線ベアラ)を介して無線局2から無線端末3に送ればよい。また、無線局2から送られる指示を無線端末3が受信できるようにするために、無線局1は、セル20での受信に必要な無線リソース設定情報をセル10における制御コネクションを介して無線端末3に通知してもよい。
【0030】
なお、本明細書において、「無線接続の確立」とは、例えば、無線端末と無線局が通信可能な状態になること、或いは、無線端末と無線局が通信に必要な情報を共有している状態になること、に相当する。また、「無線端末においてセルを設定する」とは、例えば、無線端末においてセルが使用可能な状態になること、或いは、無線端末においてセルを使用する準備が完了した状態になること、に相当する。また、「無線局において無線端末との通信の準備をする」とは、例えば、無線端末との間の無線接続に必要な情報を保持している状態になること、無線端末との間の無線接続に必要な情報を生成すること、無線端末との間の無線接続を許可している状態になること、或いは、無線端末との通信を受け入れ可能な状態になること、に相当する。
【0031】
上述の手順例1及び手順例2において、無線局1から無線局2に、又は無線局2から無線局1に、第1の無線接続の確立又は第2の無線接続の確立に関連する無線端末3の端末個別情報を送るようにしてもよい。また、手順例1及び手順例2において、無線局2から無線局1に、又は無線局1から無線局2に、第1の無線接続の確立又は第2の無線接続の確立に関連する無線接続設定情報および無線アクセス情報のうち少なくとも1つを送るようにしてもよい。
【0032】
第1の無線接続の確立又は第2の無線接続の確立に関連する無線端末3の端末個別情報は、以下に列挙する情報要素のうち少なくとも1つを含んでもよい。
・無線端末能力情報
・無線端末識別子情報
・選択ネットワーク情報
・ベアラ情報
・無線リソース制御情報
・無線端末移動履歴情報
・サービス情報
【0033】
第1の無線接続の確立又は第2の無線接続の確立に関連する無線接続設定情報は、以下に列挙する情報要素のうち少なくとも1つを含んでもよい。
・サービングセル情報
・システム情報
・無線リソース設定情報
・測定設定情報
・移動制御情報
・セキュリティ設定情報
【0034】
第1の無線接続の確立又は第2の無線接続の確立に関連する無線アクセス情報は、以下に列挙する情報要素のうち少なくとも1つを含んでもよい。
・無線アクセス識別子情報
・無線アクセスリソース情報
【0035】
これら手順例1及び手順例2の適用先としては、第1の無線局1が比較的カバレッジの大きいセルを運用(管理)する無線局であり、第2の無線局2がカバレッジの小さいセルを運用(管理)する低電力無線局(Low Power Node: LPN)である場合が考えられるが、これに限定はされない。LPNとしては、例えば無線局1と同様の機能を持つ無線局や、無線局1に比べ機能が少ない新しい種類のネットワークノード(New Node)である場合が考えられる。また、第2のセルは、従来とは異なる新しい種類のキャリア(New Carrier Type)を構成要素とする従来とは異なる新しい種類のセル(New Cell Type)であっても良い。
【0036】
続いて以下では、本実施形態に係る無線局1及び2、並びに無線端末3の構成例について説明する。
図2は、第1の無線局1の構成例を示すブロック図である。無線通信部11は、無線端末3から送信された上り信号(uplink signal)をアンテナを介して受信する。受信データ処理部13は、受信された上り信号を復元する。得られた受信データは、通信部14を経由して他のネットワークノード、例えば上位ネットワークのデータ中継装置若しくはモビリティ管理装置、又は他の無線局に転送される。例えば、無線端末3から受信された上りユーザーデータは、上位ネットワークのデータ中継装置に転送される。また、無線端末3から受信された制御データのうち非アクセス層(Non-Access Stratum(NAS))の制御データは、上位ネットワークのモビリティ管理装置に転送される。さらに、受信データ処理部13は、無線局2に送信される制御データを通信制御部15から受信し、これを通信部14を経由して無線局2に送信する。
【0037】
送信データ処理部12は、無線端末3宛てユーザーデータを通信部14から取得し、誤り訂正符号化、レートマッチング、インタリービング等を行なってトランスポートチャネルを生成する。さらに、送信データ処理部12は、トランスポートチャネルのデータ系列に制御情報を付加して送信シンボル列を生成する。無線通信部11は、送信シンボル列に基づく搬送波変調、周波数変換、信号増幅等の各処理を行って下り信号(downlink signal)を生成し、これを無線端末3に送信する。さらに、送信データ処理部12は、無線端末3に送信される制御データを通信制御部15から受信し、これを無線通信部11を経由して無線端末3に送信する。
【0038】
通信制御部15は、セル10及び20をユーザーデータの受信又は送信のために無線端末3において同時に利用できるようにするために、無線局2及び無線端末3とシグナルする。すなわち、通信制御部15は、セル20での無線端末3との通信の準備を要求又は指示するメッセージを、通信部14を介して無線局2に送信する。また、セル20での第2の無線接続の確立を指示するメッセージを、無線通信部11又は通信部14を介して、無線端末3又は無線局2に送信する。また、上述した手順例1の場合、通信制御部15は、無線局2のセル20に関する無線接続設定情報を無線端末3に送信する。無線接続設定情報は、無線接続の確立指示と同じメッセージで送信されてもよいし、別々のメッセージで送信されてもよい。上述した手順例2の場合、通信制御部15は、無線局2のセル20に関する無線リソース設定情報を無線端末3に送信してもよい。
【0039】
図3は、第2の無線局2の構成例を示すブロック図である。
図3に示された無線通信部21、送信データ処理部22、受信データ処理部23、及び通信部24の機能及び動作は、
図2に示された無線局1の対応する要素、すなわち無線通信部11、送信データ処理部12、受信データ処理部13、及び通信部14と同様である。
【0040】
無線局2の通信制御部25は、セル20での無線端末3との通信の準備を要求又は指示するメッセージを無線局1から受信し、当該メッセージに基づいて無線通信部21を設定することでセル20での無線端末3との通信の準備を行う。上述した手順例2の場合、通信制御部25は、無線局2のセル20に関する無線接続設定情報を無線端末3に送信する。無線接続設定情報は、無線接続の確立指示と同じメッセージで送信されてもよいし、別々のメッセージで送信されてもよい。
【0041】
図4は、無線端末3の構成例を示すブロック図である。無線通信部31は、異なる無線局によって運用される複数のセルのキャリアアグリゲーションをサポートし、信号の送信又は受信のために複数のセル(例えば、セル10及び20)を同時に使用することができる。具体的には、無線通信部31は、アンテナを介して、無線局1若しくは無線局2又はこれら両方からダウンリンク信号を受信する。受信データ処理部32は受信されたダウンリンク信号から受信データを復元してデータ制御部33に送る。データ制御部33は、受信データをその目的に応じて利用する。また、送信データ処理部34及び無線通信部31は、データ制御部33から供給される送信データを用いてアップリンク信号を生成し、無線局1若しくは無線局2又はこれら両方に向けて送信する。
【0042】
無線端末3の通信制御部35は、セル10及び20を無線通信部31において同時に利用できるようにするために、無線局1又は無線局2からの指示に応答してセル20を設定する。これにより、無線端末3は、無線局1と通信(つまり、ユーザーデータなどを乗せた信号の送信若しくは受信又はこれら両方)しながら、無線局2とも通信可能となる。
【0043】
続いて以下では、セル10及び20を無線端末3において同時に利用できるようにするために、複数セル10及び20において無線端末3との無線接続を確立する手順の具体例について説明する。始めに、上述した手順例1について
図5~8を用いて説明し、その後に手順例2について
図9~12を用いて説明する。
【0044】
(手順例1)
図5は、手順例1における無線局1の動作を示すフローチャートである。ステップS101では、無線局1(通信制御部15)は、自セル10に帰属する無線端末3がセル20において通信(つまり、ユーザーデータなどを乗せた信号の送信若しくは受信又はこれら両方)を行うための準備を無線局2に要求又は指示する。ステップS102では、無線局1は、ステップS101での要求又は指示に対する無線局2からの肯定応答を受信したかを判定する。既に述べたように、手順例1では、セル20での第2の無線接続の確立を無線局1が直接的に無線端末3に指示する。したがって、肯定応答を受信した場合(ステップS102でYES)、無線局1は、第2の無線接続の確立の指示を無線端末3に送信する(ステップS103)。一方、肯定応答が得られない場合(ステップS102でNO)、無線局1は、第2の無線接続の確立を指示することなく、
図5の処理を終了する。
【0045】
図6は、手順例1における無線局2の動作を示すフローチャートである。ステップS201では、無線局2(通信制御部25)は、セル10に帰属する無線端末3とセル20において通信を行うための準備を指示又は要求するメッセージを無線局1から受信する。ステップS202では、無線局2は、無線局1からの指示又は要求を許諾するか否かを判定する。例えば、無線局2は、セル20の負荷が高いために無線端末3と通信するための十分な無線リソースを確保できない場合に、無線局1からの指示又は要求を拒絶してもよい。無線局2は、無線局1からの指示又は要求を拒絶する場合に否定応答を無線局1に送信し(ステップS203)、許諾する場合に肯定応答を無線局1に送信する(ステップS204)。無線局1からの指示又は要求を許諾した場合、無線局2は、無線端末3とのセル20での通信の準備を行う。
【0046】
図7は、手順例1における無線端末3の動作を示すフローチャートである。ステップS301では、無線端末3(通信制御部35)は、第2の無線接続の確立の指示を第1の無線局1から受信する。ステップS302では、無線端末3は、ステップS301での指示に応答して、セル20を設定し、セル20での無線局2との第2の無線接続を確立する。ステップS303では、無線端末3は、セル20での第2の無線接続の確立完了を無線局1に報告する。
【0047】
図8は、手順例1の全体を示すシーケンス図である。ステップS401では、第1の無線局1及び無線端末3は、第1のセル10において第1の無線接続を確立する。ステップS402では、無線局1は無線端末3とセル10において通信する。
図8の例では、無線局1は、無線端末3宛ての下りデータをセル10において送信する。
【0048】
ステップS403~S406は、セル10で通信する無線端末3のために第2の無線接続をセル20において確立する手順である。すなわち、ステップS403では、無線局1は、無線端末3とのセル20での通信の準備を無線局2に要求又は指示する。ステップS404では、無線局2は、ステップS403の要求又は指示に対する応答を無線局1に送信する。当該応答は、肯定応答又は否定応答である。ステップS404にて肯定応答を送信する場合、無線局2は、無線局1からの要求又は指示に基づいて、無線端末3とのセル20での通信の準備を行う。ステップS405では、肯定応答の受信に応じて、無線局1は、セル20における第2の無線接続の確立の指示をセル10において無線端末3に送信する。ステップS406では、無線端末3は、無線局1からの指示に基づいてセル20を設定する。これにより、無線局2と無線端末3の間の無線接続がセル20において確立される。
【0049】
ステップS406の完了によって、無線端末3は、セル10及び20を同時に利用できる。したがって、ステップS407では、例えば、無線端末3は、セル10及び20の両方において下りデータを受信する。なお、ステップS407における無線端末3は、セル10及び20を通信(ユーザーデータなどを乗せた信号の受信若しくは送信又はこれら両方)のために同時に使用可能であればよい。言い換えると、無線端末3は、第1及び第2のセルの両方において常に下りデータを受信する必要はなく、常に上りデータを送信する必要もない。ユーザーデータの受信又は送信のためにセル10及び20のいずれか一方を使用するか又は両方を使用するかは、例えば、ユーザーデータ量又は無線端末3が利用するサービスに基づいて決定される。
【0050】
例えば、無線局2が無線端末3と通信を行うための基本的な機能を備えている無線局、つまり無線局1と同様に単独で無線端末3と通信を行うことが可能な無線局である場合、
図8のステップS403では、無線局1は通信準備の要求(request)を行なってもよい。一方、例えば無線局2が無線端末3と通信を行うための機能の一部(のみ)を備えている無線局である場合、ステップS403では、無線局1は通信準備の指示(instruction)行なってもよい。ここで、「要求」と「指示」は以下のように区別される。「要求」は、当該要求を受けた側で当該要求を受け入れるか否かの判定が行われる場合に使用される。「指示」は、当該指示を受けた側は当該指示を受け入れる場合に使用される。また、無線端末3と通信を行うための機能の一部(のみ)を備えている無線局とは、例えば、無線端末3及び上位ネットワークとの間でユーザーデータのみを通信する無線局、又は、無線端末3及び上位ネットワークとの間で制御系の信号のみを通信する無線局、が考えられる。或いは、無線端末3と通信を行うための機能の一部(のみ)を備えている無線局の他の例として、無線端末3との通信を行う機能は有するが、上位ネットワークと通信を行う機能を有していない無線局が考えられる。
【0051】
図8のステップS403において、第1の無線局1は、当該要求又は当該指示を行う際に以下の情報を送信してもよい。これらの情報は当該要求又は当該指示と共に(つまり、同じメッセージで)送信されてもよいし、別のメッセージで送信されてもよい。
・無線接続設定情報:例えば、サービングセル情報;
・端末個別情報:例えば、無線端末能力情報、無線端末識別子情報、選択ネットワーク識別子情報、ベアラ情報、無線リソース制御情報、無線端末移動履歴情報、若しくはサービス情報、又はこれらの任意の組み合わせ;
・無線アクセス情報:例えば、無線アクセス識別子情報。
【0052】
無線局2は、無線局1からの当該要求又は当該指示を受け入れる場合に、
図8のステップS404において以下の情報を送信してもよい。これらの情報は当該要求又は当該指示への応答と共に(つまり、同じメッセージで)送信されてもよいし、別のメッセージで送信されてもよい。
・無線接続設定情報:例えば、システム情報、無線リソース設定情報、測定設定情報、移動制御情報、若しくはセキュリティ設定情報、又はこれらの任意の組み合わせ;
・無線アクセス情報:例えば、無線アクセス識別子情報、若しくは無線アクセスリソース情報、又はこれらの組み合わせ。
【0053】
(手順例2)
図9は、手順例2における無線局1の動作を示すフローチャートである。
図9のステップS101及びS102における処理は、
図5に示した手順例1のステップS101及びS102と同様である。既に述べたように、手順例2では、無線局1は、セル20での第2の無線接続の確立を無線局2に指示する。また、無線局1から無線局2への第2の無線接続の確立の指示は、ステップS101における通信準備の指示(又は要求)と兼用されてもよい。
図9の手順は、第2の無線接続の確立の指示がステップS101における通信準備の指示と兼用される場合を示している。つまり、ステップS101における通信準備の指示(又は要求)のメッセージは、第2の無線接続の確立の指示を明示的又は暗示的に示す。したがって、
図9の例では、無線局1は、第2の無線接続の確立の指示を示す独立したメッセージを無線局2に送信しなくてもよい。ステップS503では、無線局1(通信制御部15)は、第1のセル10において、第2のセル20の情報の受信を無線端末3に指示する。ステップS504では、無線局1は、無線局2からの第2の無線接続の確立の完了通知の受信を判定し、完了通知の受信を条件として
図9の手順を終了する。
【0054】
図10は、手順例2における無線局2の動作を示すフローチャートである。
図10のステップS201~S204における処理は、
図6に示した手順例2のステップS201~S204と同様である。ステップS605では、無線局2(通信制御部25)は、セル20での第2の無線接続の確立を無線端末3に指示する。そして、無線局2は、第2の無線接続の確立完了に応じて、完了通知を無線局1に送信する(ステップS606及びS607)。
【0055】
図11は、手順例2における無線端末3の動作を示すフローチャートである。ステップS701では、無線端末3(通信制御部35)は、第1のセル10において、第2のセル20の情報の受信の指示を第1の無線局1から受信する。無線端末3は、無線局1の指示に基づいて、第2のセル20における受信動作を行う。ステップS702では、無線端末3は、第2の無線接続の確立の指示を第2の無線局2から受信する。ステップS703では、無線端末3は、ステップS701での指示に応答して、セル20を設定し、セル20での無線局2との第2の無線接続を確立する。ステップS704では、無線端末3は、セル20での第2の無線接続の確立完了を無線局2に報告する。
【0056】
図12は、手順例2の全体を示すシーケンス図である。
図12のステップS401~S404における処理は、
図8に示した手順例1のステップS401~S404と同様である。ステップS805では、無線局1は、第1のセル10において、第2のセル20の情報の受信を無線端末3に指示する。ステップS805での指示は、無線端末2が第2のセル20において受信動作を行うために必要な、第2のセル20の無線リソース設定情報を含む。さらに、ステップS805において、無線局1は、無線端末3がセル20において受信動作を行うためのギャップ期間を定める情報(例えば、ギャップパターン)を通知してもよい。また、ギャップ期間が予め規定されている場合、無線端末3は、第2のセル20の無線リソース設定情報を無線局1から受信したことに応じて、自発的にギャップ期間を設定してもよい。ここで、ギャップ期間とは、第2のセル20での情報の受信のために、無線端末3に対する第1のセル10での送信が停止される期間、又は無線端末3が第1のセルで自身への信号を受信しなくてよい期間を意味する。
【0057】
ステップS806では、無線局1は、セル20での無線端末3との第2の無線接続の確立を無線局2に指示する。既に述べたように、ステップS806での指示は明示的に行われなくてもよい。ステップS807では、無線局2は、セル20において、第2の無線接続の確立を無線端末3に指示する。ステップS808では、無線端末3は、無線局2からの指示に基づいてセル20を設定する。これにより、無線局2と無線端末3の間の無線接続がセル20において確立される。ステップS809では、無線局2は、第2の無線接続の確立完了を無線局1に通知する。ステップS808の完了によって、無線端末3は、セル10及び20を同時に利用できる。したがって、ステップS810では、例えば、無線端末3は、セル10及び20の両方において下りデータを受信する。
【0058】
<第2の実施形態>
本実施形態では、上述した第1の実施形態を3GPP LTEシステムに適用する例について説明する。本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1と同様とすればよい。ただし、無線局1及び2はeNBに相当し、無線端末3はUEに相当する。また、無線局間(つまり、eNB間)の情報の送受信は、直接インターフェースであるX2を用いても良いし、コアネットワークを経由するインターフェースであるS1を用いても良いし、或いは、新たに規定されるインターフェース(例えば、X3)でも良い。無線端末(UE)3は、異なる無線局(eNB)によって運用される複数のセルのキャリアアグリゲーション(Inter-eNB CA)をサポートする。尚、ここでの「Inter-eNB CA」とは、実際に異なるeNBのセルで信号を同時に受信又は送信することに限定はされず、異なるeNBのセルの両方において信号(例えば、ユーザーデータ又は制御情報)を受信又は送信することが可能な状態になっているが実際にはいずれかのeNBのセルで信号を受信又は送信すること、異なるeNBのセルそれぞれで種類の異なる信号を受信又は送信すること、或いは、異なるeNBのセルそれぞれを信号の受信又は送信のいずれかに使用すること、などを含む。以下では、無線局1及び2をeNB1及び2、無線端末3をUE3として説明する。
【0059】
本実施形態においてセル10及び20の各々とUE3の無線接続を確立する手順は、第1の実施形態と同様とすればよい。すなわち、eNB1は、セル10でのUE3との第1の無線接続が確立されている間に、セル20でのUE3との通信を準備するようeNB2に要求又は指示する。さらに、eNB1は、第1の無線接続を維持したまま、セル20でのUE3との第2の無線接続を確立するようUE3又はeNB2に指示する。第2の無線接続の確立をeNB2に指示する場合、eNB2に対する指示は、暗示的に行われてもよい。これにより、本実施形態は、異なるeNB1及び2によって運用されるセル10及び20のキャリアアグリゲーションを実現するために、UE3が複数のセル10及び20において無線接続を確立することができる。
【0060】
ここで、下りユーザーデータ送信のためにeNB1及び2のどちらを使用するかは、例えば、サービスの種類や必要なQoS(又はQCI)に応じて決定されてもよい。さらに、制御系の信号(Control Plane (CP) signal)はeNB1から送信され、ユーザーデータ系の信号(User Plane (UP) signal)はeNB2から送信されるようにしてもよい。
【0061】
手順例3は、第1の実施形態の手順例1に対応する。手順例3では、eNB1は、セル20での第2の無線接続の確立をUE3に指示する。この場合、eNB1は、セル20における無線接続に関連する無線接続設定情報(RRC Connection Reconfiguration information)をUE3に通知すればよい。そして、UE3は、eNB1からの指示に応答して、セル20を設定する。これにより、UE3は、セル20でのeNB2との間の第2の無線接続を確立できる。
【0062】
手順例4は、第2の実施形態の手順例1に対応する。手順例4では、eNB1は、セル20での第2の無線接続の確立をeNB2に指示する。eNB2は、eNB1からの指示に応答して、セル20での第2の無線接続の確立をUE3に指示する。eNB2は、セル20における無線接続に関連する無線接続設定情報(RRC Connection Reconfiguration information)をUE3に通知すればよい。そして、UE3は、eNB2からの指示に応答して、セル20を設定する。これにより、UE3は、セル20でのeNB2との間の第2の無線接続を確立できる。
【0063】
上述の手順例3及び手順例4において、eNB1からeNB2に、又はeNB2からeNB1に、第2の無線接続の確立に関連するUE3の端末個別情報(UE Context information)の少なくとも一部を送るようにしてもよい。また、手順例3及び手順例4において、eNB2からeNB1に、又はeNB1からeNB2に、第1の無線接続の確立又は第2の無線接続の確立に関連する無線接続設定情報(RRC Connection Reconfiguration information)および無線アクセス情報(Radio Access information)のうち少なくとも1つを送るようにしてもよい。
【0064】
端末個別情報(UE Context information)は、以下に列挙する情報要素のうち少なくとも1つを含んでもよい。
・無線端末能力情報(UE capability information):例えば、 UE radio access capability、 UE network capability、若しくはUE security capability、又はこれらの任意の組み合わせ;
・無線端末識別子情報(UE identification information):例えば、C-RNTI、 (S-)TMSI、若しくは shortMAC-I、又はこれらの任意の組み合わせ;
・選択ネットワーク情報(UE selected network information):例えば、GUMMEI (Globally Unique MME Identifier)、eNB UE S1AP ID、MME UE S1AP ID、若しくはCSG ID、又はこれらの任意の組み合わせ;
・ベアラ情報(Bearer information):例えば、E-RAB ID、E-RAB Level QoS Parameters、若しくはUL GTP Tunnel Endpoint ID、又はこれらの任意の組み合わせ;
・無線リソース制御情報(RRC context information): AS-Config、AS-Context、 ue-ConfigRelease、若しくはue-RadioAccessCapabilityInfo、又はこれらの任意の組み合わせ;
・無線端末移動履歴情報(UE history information):例えば、Last Visited Cell Information;
・サービス情報(Service information):例えば、QCI、 QoS、若しくはMBMS information)、又はこれらの任意の組み合わせ。
【0065】
無線接続設定情報(RRC Connection Reconfiguration information)は、以下に列挙する情報要素のうち少なくとも1つを含んでもよい。
・サービングセル情報(Serving Cell information):例えば、Physical Cell ID (PCI)、 若しくはEUTRAN Cell Global ID(ECGI)、又はこれらの組み合わせ;
・システム情報(System information):例えば、MIB (Master Information Block)、若しくはSIB (System Information Block) x (x=1,2,..)、又はこれらの組み合わせ;
・無線リソース設定情報(Radio resource configuration information):例えば、PhysicalConfigDedicated、Mac-Mainconfig、RLC-Config、PDCP-Config、logicalChannelIdentity、drb-Identity、若しくはeps-BearerIdentity、又はこれらの任意の組み合わせ;
・測定設定情報(Measurement configuration information):例えば、MeasObject、若しくはReportConfig、又はこれらの組み合わせ;
・移動制御情報(Mobility control information):例えば、targetPhysCellId、carrierFreq、若しくはnewUE-Identity、又はこれらの任意の組み合わせ;
・セキュリティ設定情報(Security configuration information):例えば、SecurityAlgorithmConfig。
【0066】
無線アクセス情報(Radio Access information)は、以下に列挙する情報要素のうち少なくとも1つを含んでもよい。
・無線アクセス識別子情報(Radio access identification information):例えば、RACH preamble index;
・無線アクセスリソース情報(Radio access resource information):例えば、PRACH resource configuration。
【0067】
これら手順例3及び手順例4の適用先としては、eNB1が比較的カバレッジの大きいマクロセルを運用(管理)するマクロ無線基地局(Macro eNB:MeNB)であり、eNB2がカバレッジの小さいセルを運用(管理)する低電力無線局(Low Power Node: LPN)である場合が考えられるが、これに限定はされない。LPNとしては、例えばMeNBと同様の機能を持つピコ無線基地局(Pico eNB:PeNB)や、MeNBに比べ機能が少ない新しい種類のネットワークノード(New Node)である場合が考えられる。また、第2のセル(セル20)は、従来とは異なる新しい種類のキャリア(New Carrier Type)を構成要素とする従来とは異なる新しい種類のセル(New Cell Type)であっても良い。
【0068】
続いて以下では、上述した手順例3及び手順例4の具体例について説明する。
図13は手順例3の全体を示すシーケンス図であり、
図14は手順例4の全体を示すシーケンス図である。なお、
図13及び
図14において、第1のセル10はCELL1と表示され、第2のセル20はCELL2と表示されている。
【0069】
(手順例3)
ステップS901では、eNB1及びUE3は、セル10において第1の無線接続を確立する(RRC Connection Establishment)。ステップS902では、eNB1はUE3とセル10において通信する。
図13の例では、eNB1は、UE3宛ての下りデータをセル10において送信する。ステップS903では、UE3又はeNB1は、セル20の検出又は判定(secondary cell discovery or decision)を行う。ステップS904では、eNB1は、自セル(serving cell)10に帰属するUE3がセル20において通信(つまり、ユーザーデータなどを乗せた信号の送信若しくは受信又はこれら両方)を行うための準備を、セル20を運用するeNB2に要求又は指示する(Secondary Cell Preparation Request (or instruction))。ステップS905では、eNB2は、ステップS904の要求又は指示に対する応答をeNB1に送信する(Secondary Cell Preparation Request (or instruction) response)。ステップS905にて肯定応答(Acknowledgement)を送信する場合、eNB2は、eNB1からの要求又は指示に基づいて、UE3とのセル20での通信の準備を行う。
【0070】
ステップS906では、肯定応答の受信に応じて、eNB1は、セル20における第2の無線接続の確立の指示をセル10においてUE3に送信する(RRC Connection Reconfiguration)。当該指示は、第2のセル20の無線接続設定情報(Secondary Cell configuration)を含む。ステップS907では、UE3は、eNB1からの当該指示に基づいてセル20を設定する。これにより、eNB2とUE3の間の無線接続がセル20において確立される(RRC Connection Establishment)。
【0071】
ステップS908では、eNB1は、キャリアアグリゲーションを開始するために、セル20の活性化(つまり、利用開始)を示すメッセージを、第1のセル10においてUE3に送信する(Secondary Cell Activation)。ステップS909では、eNB1は、セル20、つまりキャリアアグリゲーションのためのセカンダリセルの設定が完了したことをeNB1に通知する(Secondary Cell Configuration Complete)。ステップS909の完了によって、UE3は、セル10及び20におけるキャリアアグリゲーションを行うことができる。したがって、ステップS910では、例えば、UE3は、セル10及び20の両方において下りデータを受信する。
【0072】
(手順例4)
図14のステップS901~S905における処理は、
図13のステップS901~S905と同様である。ステップS1006では、eNB1は、自セル(serving cell)10において、第2のセル20の情報の受信をUE3に指示する(Radio Resource Configuration of Second Cell)。ステップS1007では、eNB1は、セル20でのUE3との第2の無線接続の確立をeNB2に指示する(Secondary Cell Preparation Complete)。ステップS1008では、eNB2は、セル20において、第2の無線接続の確立をUE3に指示する(RRC connection Reconfiguration)。
【0073】
ステップS1009では、UE3は、eNB2からの指示に基づいてセル20を設定する。これにより、eNB2とUE3の間の無線接続がセル20において確立される(RRC Connection Establishment)。ステップS1010では、eNB2は、第2の無線接続の確立完了をeNB1に通知する(Secondary Cell Configuration Complete)。ステップS1010の完了によって、UE3は、セル10及び20におけるキャリアアグリゲーションを行うことができる。したがって、ステップS1011では、例えば、UE3は、セル10及び20の両方において下りデータを受信する。
【0074】
<第3の実施形態>
本実施形態では、上述した第2の実施形態の変形について説明する。本実施形態では、無線局1及び2と上位ネットワークの間のベアラ、及び上位ネットワーク内のベアラの設定について説明する。これらのベアラは、ユーザーデータの転送のために、第2の実施形態で説明した手順によって設定されるセル10及び20での第1及び第2の無線接続(つまり、データ無線ベアラ(Evolved Packet System Radio bearer:EPS RB))と対応付けられる。
【0075】
LTEシステムにおいて、無線局(eNB)1及び2と上位ネットワーク(Evolved Packet Core:EPC)の間のユーザーデータ転送のためのベアラは、S1ベアラである。S1ベアラは、上位ネットワーク内のデータ中継装置(つまり、Serving GW:S-GW)とeNBとの間に設定される。また、LTEシステムにおいて、EPC内の2つのデータ中継装置、つまりS-GWとP-GW(Packet Data Network Gateway)の間に設定されるベアラは、S5/S8ベアラである。EPS RB及びS1ベアラは、まとめて無線アクセスベアラ(E-UTRAN Radio Access Bearer:E-RAB)と呼ばれる。E-RABは、eNBを経由してUEとEPCの間でユーザーデータを転送するためのベアラである。さらに、E-RABとS5/S8ベアラを含むP-GWとUEの間のベアラは、EPSベアラと呼ばれる。EPSベアラは、UE毎に設定される。また、1つのUEが複数のEPSベアラを利用することもできる。この場合、1つのUEPSに関する複数のEPSベアラは、例えば、転送されるユーザーデータのQoSクラスによって区別される。
【0076】
EPSベアラ、E-RAB、及びS1ベアラの設定は、上位ネットワーク内のモビリティ管理装置(Mobility Management Entity:MME)によって制御される。S1ベアラについて述べると、MMEがS-GW及びeNBと通信し、MME、S-GW、及びeNBが互いのベアラコンテキスト(例えば、S-GWのIPアドレス、eNBのIPアドレス、S-GW及びeNBのエンドポイント識別子など)を共有することによってS1ベアラが設定される。
【0077】
図15は、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図である。上位ネットワークの具体例であるEPC4は、MME5及びS/P-GW6を含む。eNB1及び2の各々は、MME5と制御コネクション(S1-MME)を接続し、S/P-GW6との間にユーザーデータ転送のためのベアラ(S1ベアラ)を設定する。
【0078】
次に、本実施形態におけるS1ベアラ(又はE-RAB、EPSベアラ)の設定手順について
図16のシーケンス図を用いて説明する。なお、
図16において、第1のセル10はCELL1と表示され、第2のセル20はCELL2と表示されている。ステップ1101では、UE3、eNB1、MME5、及びS/P-GW6のシグナリングによって、セル10を経由してUE3とEPC4の間でユーザーデータを転送するためのEPSベアラが設定される。ステップS1102では、第2の実施形態で説明した手順に従って、UE3がセル10及び20のキャリアアグリゲーションを行うために、セル20がセカンダリセルとして設定される。ステップS1103では、eNB2は、セル20を経由してUE3とEPC4の間でユーザーデータを転送するためのベアラ(S1ベアラ、E-RAB、又はEPSベアラ)の設定をMME5に要求する。これにより、UE3、eNB2、MME5、及びS/P-GW6のシグナリングによって、ベアラ設定手順が実施される。eNB2は、当該ベアラ設定手順に従ってS1ベアラ(又はE-RAB)を設定する。ステップS1104及びS1106では、S/P-GW6は、UE3への下りユーザーデータをeNB1と関連付けられた第1のS1ベアラ又はeNB2と関連付けられた第2のS1ベアラに転送する。ステップS1105及びS1107では、eNB1及び2は、S1ベアラを通して受信した下りユーザーデータをUE3へ送信する。
【0079】
ここで、下りユーザーデータ送信のためにeNB1及び2のどちらを使用するかは、例えば、サービスの種類や必要なQoS(又はQCI)に応じて決定してもよい。さらに、制御系の信号(Control Plane (CP) signal)はeNB1から送信し、ユーザーデータ系の信号(User Plane (UP) signal)はeNB2から送信するようにしてもよい。
【0080】
なお、第2の実施形態で述べた手順例3又は手順例4において、セル20でのUE3の通信準備の要求(又は指示)の際にeNB1からeNB2へUE3の選択ネットワーク情報又及びベアラ情報の少なくとも一方を送信する例を示した。選択ネットワーク情報の具体例は、GUMMEI、eNB UE S1AP ID、MME UE S1AP ID、若しくはCSG ID、又はこれらの任意の組み合わせである。ベアラ情報の具体例は、E-RAB ID、E-RAB Level QoS Parameters、若しくはUL GTP Tunnel Endpoint ID、又はこれらの任意の組み合わせである。UE3の選択ネットワーク情報又及びベアラ情報の少なくとも一方をeNB2へ送信する利点の1つは、本実施形態において、セル20を経由してUE3のユーザーデータを転送するためのベアラ設定をeNB2がトリガーできることである。つまり、eNB2は、選択ネットワーク情報及びベアラ情報の少なくとも一方に基づいてベアラ設定要求を生成し、これをMME5に送信すればよい。これにより、本実施形態は、UE3における異なる無線基地局とのベアラ設定を行うことによる負荷を大きく軽減することができる。
【0081】
<その他の実施形態>
上述した第2及び第3の実施形態では、UE3は、セカンダリセル(セル20)において上り物理制御チャネル(physical uplink control channel:PUCCH)を用いてLayer 1若しくは Layer 2 又はこれらの両方の制御情報(L1/L2制御情報)を送信してもよい。具体的には、UE3は、セカンダリセル(セル20)での下り受信に対する応答(例えば、H-ARQ(Hybrid Automatic Repeat Request)ACK、CQI (Channel Quality Indicator)/PMI(Precoding Matrix Indicator)、又はRI(Rank Indicator))の返信に、セカンダリセル(セル20)のPUCCHを使用してもよい。
【0082】
なお、同一eNBが複数のセルを運用する通常のCAでは、PUCCHを使用するL1/L2制御情報は全てプライマリセルで送信される。しかしながら、Inter-eNB CAにおいて通常のCAと同様のアーキテクチャを採用すると、eNB1とeNB2の間のインターワーキングが必要であり、処理遅延や追加的なネットワーク負荷を招くおそれがある。これに対して、セカンダリセル(セル20)での下り受信に対する応答等のためにセカンダリセル(セル20)の上り物理制御チャネルを使用することで、eNB1とeNB2の間のインターワーキングが不要となる。
【0083】
また、第2及び第3の実施形態では、eNB1は、例えばランダムアクセス・プリアンブル識別子(RA preamble ID)、物理ランダムアクセスチャネル(Physical Random Access Channel:PRACH)で用いるマスク値(RA PRACH Mask)をeNB2に送信してもよい。これにより、第2のセルのアップリンクにおけるアクセス遅延を低減できる。
【0084】
また、第2及び第3の実施形態では、プライマリセル(セル10)とセカンダリセル(セル20)において、無線リンクの端末識別子(C-RNTI)を同一にしてもよい。
【0085】
また、第2及び第3の実施形態では、上り信号の同期を判定するための(つまり、同期管理をするための)Time Alignment (TA) Timerを、プライマリセル(セル10)とセカンダリセル(セル20)のそれぞれに対して保持してもよい。さらに、セカンダリセルが複数ある場合、それら複数のセカンダリセルに対しては1つのTA Timerを保持し、同期の判定を行うようにしてもよい。従って、プライマリセルとセカンダリセル(又は、セカンダリセル群)は異なるタイミンググループ(Timing Advance Group: TAG)に属するようにしてもよい。
【0086】
また、第2及び第3の実施形態では、eNB2は、MIB (Master Information Block)/SIB (System Information Block)情報、及びsecurity contextをeNB1に送信してもよい。これにより、UE3側においてセカンダリセル(セル20)を円滑に設定することができる。
【0087】
また、第1~第3の実施形態では、キャリアアグリゲーションの為に追加するセカンダリセル(セル20)が、下りコンポーネントキャリア(Component Carrier: CC)のみ、或いは、上りコンポーネントキャリア(CC)のみに使用されるようにしてもよい。
【0088】
また、第1~第3の実施形態では、プライマリセル(セル10)とセカンダリセル(セル20)が異なる複信モード(duplex mode)であっても良い。例えば、プライマリセル(セル10)がFDD (Frequency Division Duplex)で、セカンダリセル(セル20)がTDD (Time Division Duplex)であってもよい。
【0089】
また、第1~第3の実施形態で例示した図は、ヘテロジーニアス・ネットワーク(HetNet)環境を示した。しかしながら、これらの実施形態は、ホモジーニアス・ネットワーク(Homogeneous Network)にも適用が可能である。Homogeneous Networkの例としては、マクロ(又はマイクロ)基地局のマクロ(又はマイクロ)セルからなるセルラネットワークが考えられる。
【0090】
また、第1~第3の実施形態で述べた無線局1(通信制御部15)、無線局2(通信制御部25)、及び無線端末3(通信制御部35)による通信制御方法は、いずれもApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)を含む半導体処理装置を用いて実現されてもよい。また、これらの処理は、少なくとも1つのプロセッサ(e.g. マイクロプロセッサ、Micro Processing Unit(MPU)、Digital Signal Processor(DSP))を含むコンピュータシステムにプログラムを実行させることによって実現してもよい。具体的には、フローチャート及びシーケンス図に示されたアルゴリズムをコンピュータシステムに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを作成し、当該プログラムをコンピュータに供給すればよい。
【0091】
このプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0092】
また、第1~第3の実施形態では、主にLTEシステムに関して説明を行った。しかしながら、これらの実施形態は、LTEシステム以外の無線通信システム、例えば、3GPP UMTS (Universal Mobile Telecommunications System)、3GPP2 CDMA2000システム(1xRTT, HRPD (High Rate Packet Data))、GSM (Global System for Mobile Communications) システム、又はWiMAXシステム等に適用されてもよい。
【0093】
さらに、上述した実施形態は本件発明者により得られた技術思想の適用に関する例に過ぎない。すなわち、当該技術思想は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは勿論である。
【0094】
この出願は、2012年10月5日に出願された日本出願特願2012-223177を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0095】
1 第1の無線局
2 第2の無線局
3 無線端末
10 第1のセル
20 第2のセル
15 通信制御部
25 通信制御部
35 通信制御部