IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許7601283分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム
<>
  • 特許-分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム 図1
  • 特許-分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム 図2
  • 特許-分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム 図3
  • 特許-分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム 図4
  • 特許-分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム 図5
  • 特許-分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】分離膜の分離性能計算方法および計算プログラム
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/10 20060101AFI20241210BHJP
   G01N 15/08 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
B01D61/10
G01N15/08 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024516513
(86)(22)【出願日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2024008271
【審査請求日】2024-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2023037302
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 義之
(72)【発明者】
【氏名】小西 亮太
(72)【発明者】
【氏名】下田 真也
(72)【発明者】
【氏名】高畠 寛生
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-062255(JP,A)
【文献】特開平05-345181(JP,A)
【文献】特開2007-038136(JP,A)
【文献】特開2001-327967(JP,A)
【文献】国際公開第2009/054506(WO,A1)
【文献】DALE, M. C.,Reverse Osmosis Membrane Performance as Affected by Temperature and Pressure,Insustrial & Engineering Chemistry. Product Research and Development,米国,American Chemical Society,1983年,Vol.22 No.3,p.452-456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
G01N 15/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液体から処理液体を得る液体処理に用いる分離膜の分離性能の計算方法であって、前記分離膜の初期分離性能SP(0)と、前記液体処理の運転期間Dと、前記運転期間Dにおける被処理液体の温度T(t)(tは前記運転期間Dのある時間)と、被処理液体の圧力P(t)を用いて、下記工程によって前記分離膜の分離性能を計算することを特徴とする分離膜の分離性能計算方法。
工程1:前記運転期間D経過時点において圧密化によって変化した前記分離膜の分離性能をSP(D)とし、
前記運転期間Dにおける任意の時間をtとするとき、
前記被処理液体の温度T(t)が前記tにおける前記被処理液体の温度T(t)一定であると仮定した場合に、前記分離性能がSP(D)となる相当運転期間D’を決定する工程。
工程2:前記被処理液体の温度T(t)と、前記tにおける前記被処理液体の圧力P(t)を用いて、圧密化の進行速度を表す圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する工程。
工程3:前記相当運転期間D’と、前記圧密化係数m(T(t),P(t))を用いて前記初期分離性能SP(0)に対する前記分離性能SP(D)の割合に相当する分離性能補正係数M(D)を算出する工程。
工程4:前記分離性能補正係数M(D)と、前記初期分離性能SP(0)を用いて前記分離性能SP(D)を算出する工程。
【請求項2】
前記tが前記運転期間Dにおける高温期の中のある時間であって、
前記運転期間Dにおける低温期の中のある時間をtとするとき、
前記相当運転期間D’を、前記被処理液体の温度T(t)と、前記tにおける前記被処理液体の温度T(t)との差分または変化率に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の分離膜の分離性能計算方法。
【請求項3】
前記T(t)、前記T(t)、前記tにおける前記被処理液体の圧力P(t)、前記tにおける前記被処理液体の圧力P(t)のいずれか1つ以上に基づいて、前記工程1にて決定された前記相当運転期間D’をさらに補正することを特徴とする請求項2に記載の分離膜の分離性能計算方法。
【請求項4】
前記tが、前記T(t)が前記運転期間Dにおける前記被処理液体の最高温度を取るように定めたt1-Tmaxであり、
前記tが、前記T(t)が前記運転期間Dにおける前記被処理液体の最低温度を取るように定めたt2-Tminであることを特徴とする請求項2に記載の分離膜の分離性能計算方法。
【請求項5】
前記圧密化係数m(T(t)、P(t))、前記分離性能補正係数M(D)、前記分離性能SP(D)が、式(15)、式(16)、式(17)のいずれか1つ以上に基づき算出されることを特徴とする請求項1に記載の分離膜の分離性能計算方法。
【数1】
【請求項6】
前記分離性能SP(D)が溶媒透過係数または溶質透過係数であることを特徴とする請求項1に記載の分離膜の分離性能計算方法。
【請求項7】
被処理液体から処理液体を得る液体処理に用いる分離膜の分離性能を計算するためにコンピュータを、
少なくとも、前記分離膜の初期分離性能SP(0)と、前記液体処理における運転期間Dと、前記運転期間Dにおける被処理液体の温度T(t)(tは前記運転期間Dのある時間)と、被処理液体の圧力P(t)を含む運転情報を入力する運転情報入力手段、
前記運転情報を記憶する運転情報記憶手段、
前記運転情報記憶手段から前記運転情報を取り出す運転情報取り出し手段、
前記運転情報を用いて、下記工程で前記分離膜の分離性能を計算する分離性能計算手段、
前記分離性能を分離性能記憶手段に記憶させる分離性能保存手段、
前記分離性能記憶手段、
として機能させるための分離膜の分離性能計算プログラム。
工程1:前記運転期間D経過時点において圧密化によって変化した前記分離膜の分離性能をSP(D)とし、
前記運転期間Dにおける任意の時間をtとするとき、
前記被処理液体の温度T(t)が前記tにおける前記被処理液体の温度T(t)一定であると仮定した場合に、前記分離性能がSP(D)となる相当運転期間D’を決定する工程。
工程2:前記被処理液体の温度T(t)と、前記tにおける前記被処理液体の圧力P(t)を用いて、圧密化の進行速度を表す圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する工程。
工程3:前記相当運転期間D’と、前記圧密化係数m(T(t),P(t))を用いて前記初期分離性能SP(0)に対する前記分離性能SP(D)の割合に相当する分離性能補正係数M(D)を算出する工程。
工程4:前記分離性能補正係数M(D)と、前記初期分離性能SP(0)を用いて前記分離性能SP(D)を算出する工程。
【請求項8】
前記tが前記運転期間Dにおける高温期の中のある時間であって、
前記運転期間Dにおける低温期の中のある時間をtとするとき、
前記相当運転期間D’を決定する前記工程1が、
前記運転情報記憶手段に記録される情報から、前記被処理液体の温度T(t)と、前記tにおける前記被処理液体の温度T(t)との差分または変化率を演算する情報演算手段に基づいて、
前記相当運転期間D’を決定する手段を有することを特徴とする請求項7に記載の分離膜の分離性能計算プログラム。
【請求項9】
前記相当運転期間D’を決定する前記工程1が、
前記運転情報記憶手段に記憶される情報から、前記T(t)、前記T(t)、前記tにおける前記被処理液体の圧力P(t)、前記tにおける前記被処理液体の圧力P(t)のいずれか1つ以上を用いて前記相当運転期間D’をさらに補正する相当運転期間補正手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の分離膜の分離性能計算プログラム。
【請求項10】
前記tが、前記T(t)が前記運転期間Dにおける前記被処理液体の最高温度を取るように定めたt1-Tmaxであり、
前記tが、前記T(t)が前記運転期間Dにおける前記被処理液体の最低温度を取るように定めたt2-Tminであることを特徴とする請求項8に記載の分離膜の分離性能計算プログラム。
【請求項11】
前記工程2が、式(15)に基づいて前記圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する圧密化係数決定手段を有し、
前記工程3が、式(16)に基づいて分離性能補正係数Mを算出する分離性能補正係数算出手段を有し、
前記工程4が、式(17)に基づいて前記分離性能SP(D)を算出する分離性能算出手段を有することを特徴とする請求項7に記載の分離膜の分離性能計算プログラム。
【数2】
【請求項12】
請求項7から11のいずれかに記載の分離膜の分離性能計算プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液体から処理液体を得る液体処理に用いる分離膜の分離性能計算方法および計算プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機塩や有機塩などの溶質が溶解した液体の浄化技術には様々なものがあり、その中でも省エネルギー、省スペース、及び処理水質向上等の特長を有することから、近年は膜分離法の利用が様々な分野に拡大している。
【0003】
膜分離方法の一例である逆浸透法によれば、塩分等の溶質を含んだ被処理液体を、該液体の浸透圧以上の圧力をもって逆浸透膜に透過させることで、溶質分が低減された処理液体と濃縮液体とに分離することができる。この技術は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水から飲料水レベルの水を得ることも可能であり、また、工業用超純水の製造、排液体処理、有価物の回収などにも用いられている。
【0004】
分離膜の種類、被処理液体の水質、運転方法などに依って程度こそ異なるものの、分離膜は経時的に膜性能が低下する。そのため、液体処理装置の設計や、安定操業の実現には、分離膜の分離性能の経時変化を可能な限り正確に知ることが望ましい。
【0005】
分離膜の分離性能の経時変化が生じる原因は、洗浄に伴う化学的な損傷、無機塩のスケール蓄積、微生物由来のファウリングなど様々あり、その中の一つとして、被処理液体と処理液体との間の圧力差によって生じる分離膜の不可逆的な圧密化が知られている。
【0006】
非特許文献1には、圧密化による分離膜の分離性能の経時変化が、膜の素材や仕様、運転時間、被処理液体の温度、被処理液体の圧力に依存することが記載されており、非特許文献2には、圧密化による分離膜の分離性能の経時変化を圧密化係数(m値)によって表す方法が記載されている。
【0007】
非特許文献2に記載の経験式では運転条件が一定であればm値を一定として扱うが、実際の液体処理装置では季節による被処理液体の水温変化や、それに伴う被処理液体の圧力変化が生じるため、m値は必ずしも一定とならない。非特許文献3には、被処理液体の温度及び被処理液体の圧力の経時変化に基づく逐次的な計算によって、所定時間経過後のm値をより正確に推算する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Bernard Baum,1 Stanley A. Margosiak, and William H. Holley, Jr., Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Dev., vol. 11, No. 2, 195 (1972)
【文献】木村 尚史, 膜, 第6巻, 第3号, 83 (1981)
【文献】Naohiko UKAWA, Ikuo NAKATANI and Hideo IWAHASHI, 日本海水学会誌, 第43巻, 第4号, 218 (1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献3に記載の方法によれば、被処理液体の温度及び被処理液体の圧力の経時変化に基づく逐次計算を必要とするため、被処理液体の温度及び被処理液体の圧力の経時変化そのものを予測しなければならない、液体処理装置の設計においては、適用が困難な場合があった。加えて、液体処理装置の運転時間に応じて計算量が増大し、計算に多大な時間を要することとなるため、必ずしも実用的な方法とは言えなかった。
【0010】
そこで本発明は、液体処理装置に用いる分離膜の圧密化による分離性能の経時変化を簡便かつ精度よく計算する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、本開示は、
被処理液体から処理液体を得る液体処理に用いる分離膜の分離性能の計算方法であって、分離膜の初期分離性能SP(0)と、液体処理の運転期間Dと、運転期間Dにおける被処理液体の温度T(t)(tは運転期間Dのある時間)と、被処理液体の圧力P(t)を用いて、下記工程によって分離膜の分離性能を計算することを特徴とする分離膜の分離性能計算方法、を提供する。
工程1:運転期間D経過時点において圧密化によって変化した分離膜の分離性能をSP(D)とし、
運転期間Dにおける任意の時間をtとするとき、
被処理液体の温度T(t)がtにおける被処理液体の温度T(t)一定であると仮定した場合に、分離性能がSP(D)となる相当運転期間D’を決定する工程。
工程2:被処理液体の温度T(t)と、tにおける被処理液体の圧力P(t)を用いて、圧密化の進行速度を表す圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する工程。
工程3:相当運転期間D’と、圧密化係数m(T(t),P(t))を用いて初期分離性能SP(0)に対する分離性能SP(D)の割合に相当する分離性能補正係数M(D)を算出する工程。
工程4:分離性能補正係数M(D)と、初期分離性能SP(0)を用いて分離性能SP(D)を算出する工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分離膜の分離性能計算方法によれば、液体処理装置に用いる分離膜の圧密化による分離性能の経時変化を簡便かつ精度よく計算することが可能となり、液体処理装置の正確な設計や安定操業に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る液体処理装置の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係る計算方法の一例を示すフロー図である。
図3】本発明の一実施形態に係る運転時間、被処理液体温度、分離性能補正係数の関係の一例を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係る運転時間、被処理液体温度、分離性能補正係数の関係の別の一例を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態に係る相当運転期間と運転期間の比D’/D、高温期と低温期の被処理液体温度の差分ΔTの関係の一例を示すグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係る一構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す実施態様に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下では、逆浸透膜を用いた水処理装置を例に説明するが、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0015】
図1は、原水1を逆浸透膜4の膜処理法で処理して生産水5を得るような水処理装置の一例である。なお、水処理プロセスにおいては、水流として、原水、生産水および排水の3種類が必ず存在し、原水を各水処理装置で処理して、最終的に生産水と排水に分離される。原水は水処理プロセスで処理する溶液のことであり、河川水、地下水、海水、下水処理水、工場廃水、培養液などが例として挙げられる。
【0016】
逆浸透膜は、逆浸透膜エレメントとして加工され装置に設置され、平膜状の膜を集水管の周囲に巻囲したスパイラル型エレメントや、プレート型支持板の両面に平膜を貼ったものをスペーサーを介して一定の間隔で積層してモジュール化したプレート・アンド・フレーム型エレメント、さらには、管状膜を用いたチューブラー型エレメント、中空糸膜を束ねてケースに収納した中空糸膜エレメントがある。エレメントの形態としては、いずれの形態であってもよいが、操作性や互換性の観点からはスパイラル型エレメントを使用することが好ましい。なお、エレメント本数は、膜性能に応じて任意に設定することができる。
【0017】
逆浸透膜の素材としては例えば、ポリアミド系、ポリピペラジンアミド系、ポリエステルアミド系、あるいは水溶性のビニルポリマーを架橋したものなどを使用することができ、その膜構造としては、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片面の膜に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有するもの(非対称膜)や、このような非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有するもの(複合膜)などを使用することができる。しかしながら、高造水量のためには複合膜であることが好ましく、中でも、透過水量、耐薬品性等の点からポリアミド系複合膜が、さらにはピペラジンポリアミド系複合膜が好ましい。
【0018】
原水1は、原水ポンプ2で送液され、高圧ポンプ3で昇圧されてから逆浸透膜4に供給される。逆浸透膜法においては、有効な浸透圧を得るため原水の塩濃度に応じて高圧ポンプ3で供給圧を十分に昇圧する必要があり、一例として原水が海水など高塩濃度であれば8MPa程度まで昇圧する。このとき、一般に大気圧開放される生産水5との間に大きな圧力差が生じるため、逆浸透膜4は圧密化が生じることとなる。
【0019】
図2は、被処理液体から処理液体を得る液体処理に用いる分離膜の分離性能の計算方法の一例を示すフロー図であって、分離膜の初期分離性能SP(0)と、液体処理の運転期間Dと、運転期間Dにおける被処理液体の温度T(t)(tは運転期間Dのある時間)と、被処理液体の圧力P(t)を用いて、下記工程によって分離膜の分離性能を計算する方法であり、工程1:運転期間D経過時点において圧密化によって変化した分離膜の分離性能をSP(D)とし、運転期間Dにおける任意の時間をtとするとき、被処理液体の温度T(t)がtにおける被処理液体の温度T(t)一定であると仮定した場合に、分離性能がSP(D)となる相当運転期間D’を決定する工程と、工程2:被処理液体の温度T(t)と、tにおける被処理液体の圧力P(t)を用いて、圧密化の進行速度を表す圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する工程と、工程3:相当運転期間D’と、圧密化係数m(T(t),P(t))を用いて初期分離性能SP(0)に対する分離性能SP(D)の割合に相当する分離性能補正係数M(D)を算出する工程と、工程4:分離性能補正係数M(D)と、初期分離性能SP(0)を用いて分離性能SP(D)を算出する工程と、を備えるものである。
【0020】
ここで、分離膜の初期分離性能SP(0)及び分離性能SP(D)は、圧密化の影響を受ける膜性能であり、溶媒透過係数、溶質透過係数、分離選択性などが挙げられるが、特に圧密化の影響が大きい溶媒透過係数または溶質透過係数に本発明を適用すると効果的である。
【0021】
初期分離性能SP(0)の決定方法は特に限定されるものではないが、分離膜の製品企画、分離膜の生産時試験結果、液体処理の運転開始時の運転状態などから後述の方法で算出される分離性能を使用することができる。
【0022】
分離性能の算出方法の一例として、逆浸透膜の溶媒透過係数及び溶質透過係数を算出する方法を説明する。
【0023】
分離膜における透過物質は溶媒および溶質からなり、溶媒は圧力差によって逆浸透膜を透過し、溶質は濃度差によって逆浸透膜を透過する。式(1)に示すように、溶媒透過流束Jは、逆浸透膜に固有な溶媒透過係数Lと有効圧力差ΔPとの積で表され、また、式(2)に示すように、溶質透過流束Jは、逆浸透膜に固有な溶質透過係数Pと膜間濃度差(C-C)との積で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、Cは被処理液体側膜表面の溶質濃度、Cは処理液体中の溶質濃度、Cは平均溶質濃度、π(C)は濃度Cにおける浸透圧、σは反射率である。
【0027】
ここでは、脱塩率の高い膜を用いることを想定しており、反射率σは1に極めて近く、溶媒透過流束Jおよび溶質透過流束Jは式(3)(4)で与えられる。
【0028】
【数3】
【0029】
【数4】
【0030】
また、Cは式(5)で与えられる。
【0031】
【数5】
【0032】
被処理液体側膜表面の溶質濃度Cは、濃度分極現象(膜面への溶質の蓄積によって被処理液体側膜表面の塩濃度が被処理液体バルクの塩濃度より高くなる現象)を考慮することが望ましい。
【0033】
この濃度分極現象は、例えば、溶媒透過流束に伴う溶質の移動J・Cと、被処理液体側膜表面における溶質の拡散D・dC/dxと、膜を透過した溶質量J・Cという3つの物質収支式を用いて式(6)で表すことができる。
【0034】
【数6】
【0035】
ここで、Dは溶質の拡散係数である。物質収支を表す式(6)を積分して、濃度分極の式(7)を得る。
【0036】
【数7】
【0037】
ここで、k=D/δであり、kは物質移動係数、δは物質移動が行われる層の厚みを表す。
【0038】
物質移動係数kは例えば、以下のとおり求めることが出来る。
【0039】
物質移動相関式(Sh=a・Re・Sc)は、逆浸透膜の利用形態(例えば、スパイラル型逆浸透膜エレメント)の流動特性を示す式であり、シャーウッド数(ヌッセルト数)Shとレイノルズ数Reとシュミット数Scとの関係を表す。シャーウッド数Shは、物質移動係数kと物質移動が行われる層の流路厚みdとの積を溶質拡散係数Dで除した無次元量であり、溶質の移動の容易さを表す。レイノルズ数Reは、被処理液体の流速uと密度ρと代表長さdとの積を粘性係数ηで除したものであり、被処理液体流速の影響を表す。シュミット数Scは、粘性係数ηを密度ρと溶質拡散係数Dとの積で除したものであり、被処理液体物性の影響を表す。
【0040】
【数8】
【0041】
【数9】
【0042】
【数10】
【0043】
本実施形態では、物質移動相関式におけるレイノルズ数Reおよびシュミット数Scのそれぞれのべき指数b、cは所定の固定値に設定される。例えば、配管などの物質移動相関式として知られているダイスラー式(Deissler式)に従って、べき指数bおよびcは、たとえば0.875および0.25にそれぞれ設定される。
【0044】
この場合、物質移動相関式は式(11)となり、さらに式(8)及び式(11)より式(12)を得る。
【0045】
【数11】
【0046】
【数12】
【0047】
ここで、式(12)における未知の係数aは、逆浸透膜の利用形態に応じて被処理液体流速uを変化させる実験を行うことにより求めることができる。
【0048】
逆浸透膜に固有な溶媒透過係数L及び溶質透過係数Pは、温度、圧力などの影響により可逆的に変化することが知られている。上記可逆的変化の補正方法は任意であるが、例えば、変化後の溶媒透過係数及び溶質透過係数をそれぞれL’、P’とし、被処理液体の粘度をμ、被処理液体の25℃での粘度をμ25、被処理液体の温度をT、被処理液体の圧力をP、標準的な運転圧力(例えば製品カタログに記載された標準的な運転圧力)をPとし、膜種毎に固有の定数をc,c,d,dとすると、下記式(13)(14)によって決定することができる。
【0049】
【数13】
【0050】
【数14】
【0051】
このようにして、溶媒透過流束J、及び溶質透過流束Jを算出することができ、つまり、被処理液体流量Q、処理液体流量Q、膜面積A、被処理液体の溶質濃度C、処理液体の溶質濃度C、被処理液体の圧力P、標準的な運転圧力P、被処理液体の温度Tの値が予め分かっていれば、それらからJ、Jを逆算し、さらにそのJ、Jを満たすL及びPを決定することができる。
【0052】
液体処理の運転期間Dは、運転開始からの任意の期間とすればよいが、交換によって分離膜の圧密化が初期化されることを考慮するために、当該液体処理における平均的な分離膜使用年数を運転期間Dとしてもよい。
【0053】
工程1は、運転期間D経過時点において圧密化によって変化した分離膜の分離性能をSP(D)とし、運転期間Dにおける任意の時間をt1とするとき、被処理液体の温度T(t)がtにおける被処理液体の温度T(t)一定であると仮定した場合に、分離性能がSP(D)となる相当運転期間D’を決定する工程である。
【0054】
上述のとおり逆浸透膜の素材はポリアミド等のポリマーであることが多く、このとき、圧密化には上述の被処理液体と処理液体との間の圧力差に加え、ポリマー自体の硬度に影響する被処理液体温度も重要なファクターとなり、被処理液体圧力が高ければ高いほど、被処理液体温度が高ければ高いほど、圧密化の進行速度は上昇する。
【0055】
一方、被処理液体温度が高いほど被処理液体の粘度が低下するため、一般に被処理液体圧力は低下する。つまり高温期の被処理液体圧力は低く、低温期の被処理液体圧力は高くなり、圧密化においてはトレードオフの関係となっている。
【0056】
そこで筆者らが鋭意検討したところ、圧密化の進行には圧力の影響よりも温度の影響が支配的であること、ある温度において圧密化が進行したとき、その温度よりも低い温度ではほとんど圧密化が進行しないことが判明した。つまり、運転期間D経過後の分離膜の膜性能SP(D)は概ね高温期の影響のみを受けたものとみなすことができ、運転期間Dにおける高温期の期間が相当運転期間D’に相当することとなる。
【0057】
相当運転期間D’の決定方法は限定されるものではないが、液体処理を実施する地域の自然水の温度変化のデータや、液体処理において測定された被処理液体の温度変化のデータに基づいて決定してもよく、被処理液体の温度及び被処理液体の圧力の経時変化に基づく逐次的な計算によって決定してもよく、運転期間Dにおける低温期の中のある時間をtとするとき、tにおける被処理液体の温度T(t)及びtにおける被処理液体の温度T(t)に基づいて決定することもできる。相当運転期間D’の決定方法の一例は後述する。
【0058】
工程2は、被処理液体の温度T(t)と、tにおける被処理液体の圧力P(t)を用いて、圧密化の進行速度を表す圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する工程である。
【0059】
圧密化係数mは膜の素材、仕様、被処理液体の温度、被処理液体の圧力などに基づいて経験的に決定される係数であり、広く用いられている圧密化係数mの定義によれば、圧密化係数mの取りうる値の範囲はm≦0であり、圧密化が進行しないときm=0、圧密化の進行速度の上昇に伴って圧密化係数mの絶対値が大きくなっていく。圧密化係数mの決定方法は特に限定されるものではないが、膜の素材及び仕様毎に、被処理液体の温度、被処理液体の圧力、圧密化係数mの関係性を示す図や式から決定することができる。
【0060】
圧密化係数mの決定式の一例として、例えば式(15)によって計算することができる。
【0061】
【数15】
【0062】
ここで、係数bは膜の素材や仕様などによって固有の値をとり、実験的に得られた被処理液体の圧力、運転期間、溶媒透過係数の相関から決定することができる。
【0063】
工程3は、相当運転期間D’と、圧密化係数m(T(t),P(t))を用いて初期分離性能SP(0)に対する分離性能SP(D)の割合に相当する分離性能補正係数M(D)を算出する工程である。
【0064】
ある時間tにおける分離性能補正係数M(t)は上述の定義より運転開始時点の初期値M(0)=1であり、圧密化の進行に伴って低下していく。t=Dにおける分離性能補正係数M(D)の算出方法は特に限定されるものではないが、圧密化の進行に伴って分離膜は密度が増し圧密化を受けにくくなるため、分離性能補正係数M(t)は運転時間tの増大に伴ってある値に漸近する曲線となることが予測され、それを満たす関数の一例としてM(D)は式(16)によって算出することが可能である。
【0065】
【数16】
【0066】
工程4は、分離性能補正係数M(D)と、初期分離性能SP(0)を用いて分離性能SP(D)を算出する工程である。
【0067】
上述の分離性能補正係数M(D)の定義から、分離性能SP(D)は式(17)によって算出することができる。
【0068】
【数17】
【0069】
以下、相当運転期間D’の決定方法の一例について説明する。
【0070】
図3は、本発明の一実施形態に係る運転時間、被処理液体温度、分離性能補正係数の関係の一例を示すグラフであり、図4は、本発明の一実施形態に係る運転時間、被処理液体温度、分離性能補正係数の関係の別の一例を示すグラフである。
【0071】
簡単のため図3及び図4においては被処理液体温度の経時変化を滑らかな波形で表現するとともに、分離性能補正係数M(t)は高温期のみ直線的に低下するものとし、加えて図3における高温期の温度T(t)と図4における高温期の温度T(t)は等しいものとする。
【0072】
高温期の温度T(t)が図3図4とで等しい一方で、図3における低温期の温度T(t)は図4における低温期の温度T(t)よりも低いものとするとき、図3における高温期の期間よりも図4における高温期の期間の方が長くなり、それに伴って図3におけるM(D)よりも図4におけるM(D)の方がより小さな値となる。つまり図3の場合よりも図4の場合の方が、運転期間Dに占める圧密化が進行する期間が長いことを示唆している。
【0073】
上述の関係性はT(t)の絶対値に依存するものではない。つまり、T(t)とT(t)の差分をΔTとするとき、ΔTと、相当運転期間D’と運転期間Dの比D’/Dとの関係は、図5のグラフに示すものとなることが推定される。従って、ΔTとD’/Dとの関係性さえ定めておけば、ΔTからD’を決定することが可能となる。なお、図5ではグラフの横軸をΔTとしたが、ΔTをT(t)とT(t)の変化率としてもよい。
【0074】
図5に示すΔTとD’/Dとの関係性を決定する方法は特に限定されるものではないが、世界各地の自然水の温度変化のデータや、液体処理において測定された被処理液体の温度変化のデータに加えて、液体処理において測定された運転結果から逆算して決定された分離性能補正係数M(D)に基づいて決定してもよく、複数の液体処理装置から得た被処理液体温度T(t)とM(D)の関係性をデータベースとし、そのデータベースに基づいて決定してもよい。
【0075】
図3から図5においては簡単のため被処理液体温度の経時変化を滑らかな波形で表現した場合に基づいて説明したが、実際の被処理液体温度は地域や気候に応じて日々変動するため、高温期の被処理液体温度も低温期の被処理液体温度も、ある程度の幅を持った値となり、一義的にtやtを定めることが難しい場合がある。このとき、tが、T(t)が運転期間Dにおける被処理液体の最高温度を取るように定めたt1-Tmaxであり、tが、T(t)が運転期間Dにおける被処理液体の最低温度を取るように定めたt2-Tminであると、一義的にt及びtを定めることができ好ましい。
【0076】
また、図3から図5においては簡単のため分離性能補正係数M(D)が直線的に低下する場合に基づいて説明したが、上述の通り、圧密化の進行に伴って分離膜は密度が増し圧密化を受けにくくなるため、分離性能補正係数M(t)は運転時間tの増大に伴ってある値に漸近する曲線となることが予測され、より圧密化係数mが小さい、すなわち圧密化の進行が早いとき、分離性能補正係数M(t)はより早くある値に漸近する。この漸近が遅い、すなわち直線的に分離性能補正係数M(t)が低下する場合は、図5のΔTとD’/Dとの関係性がそのまま適用可能であるが、漸近が早い、すなわちより曲線的に分離性能補正係数M(t)が低下する場合は、図5のΔTとD’/Dとの関係性をそのまま適用すると相当運転時間D’、ひいては分離性能SP(D)の算出精度が低下する恐れがある。
【0077】
上述のとおり圧密化係数mは膜の素材、仕様、被処理液体の温度、被処理液体の圧力などに基づいて決定されるものであり、その圧密化係数mを用いて算出される分離性能補正係数M(t)も、膜の素材、仕様、被処理液体の温度、被処理液体の圧力の影響を受ける。また、上述の通り圧密化の進行には圧力よりも温度が支配的であるものの、低温期における高圧運転が圧密化の進行に全く影響しないとは限らない。そのため、相当運転期間D’は、運転期間Dにおける液体処理装置の温度T(t)、被処理液体の圧力P(t)のいずれか1つ以上に基づいてさらに補正することができる。
【0078】
相当運転期間D’をさらに補正する方法については、特に限定されるものではないが、液体処理において測定された被処理液体の温度変化のデータ、被処理液体の圧力変化のデータ、液体処理において測定された運転結果から逆算して決定された分離性能補正係数M(D)のいずれか1つ以上に基づいて補正してもよく、複数の液体処理装置から得た被処理液体温度T(t)、被処理液体圧力P(t)、M(D)の関係性をデータベースとし、そのデータベースに基づいて補正してもよく、運転期間Dにおける高温または高圧のため圧密化進行速度への影響が比較的大きいT(t)、tにおける被処理液体の圧力P(t)、T(t)、tにおける被処理液体の圧力P(t)のいずれか1つ以上に基づいて補正してもよい。
【0079】
このように、工程1から工程4によって構成された分離膜の分離性能計算方法は、液体処理装置に用いる分離膜の圧密化による分離性能の経時変化を簡便かつ精度よく計算することができ、液体処理装置の正確な設計や安定操業に資することができる。
【0080】
本発明の別の実施形態としては、分離膜の分離性能計算プログラムであって図6のようにコンピュータ10を少なくとも分離膜の初期分離性能SP(0)と、液体処理における運転期間Dと、運転期間Dにおける被処理液体の温度T(t)(tは運転期間Dのある時間)と、被処理液体の圧力P(t)を含む運転情報を入力する運転情報入力手段11、運転情報を記憶する運転情報記憶手段12、運転情報記憶手段から運転情報を取り出す運転情報取り出し手段13、運転情報を用いて、下記工程で分離膜の分離性能を計算する分離性能計算手段14、分離性能を分離性能記憶手段に記憶させる分離性能保存手段、分離性能記憶手段として機能させるものである。ここで工程とは工程1は、運転期間D経過時点において圧密化によって変化した分離膜の分離性能をSP(D)とし、運転期間Dにおける任意の時間をt1とするとき、被処理液体の温度T(t)がtにおける被処理液体の温度T(t)一定であると仮定した場合に、分離性能がSP(D)となる相当運転期間D’を決定する工程である。工程2は、被処理液体の温度T(t)と、tにおける被処理液体の圧力P(t)を用いて、圧密化の進行速度を表す圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する工程である。工程3は、相当運転期間D’と、圧密化係数m(T(t),P(t))を用いて初期分離性能SP(0)に対する分離性能SP(D)の割合に相当する分離性能補正係数M(D)を算出する工程である。工程4は、分離性能補正係数M(D)と、初期分離性能SP(0)を用いて分離性能SP(D)を算出する工程である。t1が運転期間Dにおける高温期の中のある時間であって、運転期間Dにおける低温期の中のある時間をt2とするとき、相当期間D’を決定する工程1が、運転情報記憶手段に記録される情報から、被処理液体の温度T(t1)と、t2における被処理液体の温度T(t2)との差分または変化率を演算する情報演算手段に基づいて、相当運転期間D‘を決定しても良い。さらにT(t)、T(t)、tにおける被処理液体の圧力P(t)、tにおける被処理液体の圧力P(t)のいずれか1つ以上を用いて相当運転期間D’をさらに補正する相当運転期間補正手段として機能させることが好ましい。情報演算手段におけるt1、t2は、T(t1)が運転期間Dにおける被処理液体の最高温度を取るように定めたt1-Tmaxであり、t2が、T(t2)が運転期間Dにおける被処理液体の最低温度を取るように定めたt2-Tminとすることで一義的にt及びtを定めることができ好ましい。
【0081】
また、工程2において、式(15)に基づいて圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する圧密化係数決定手段を有し、工程3において、式(16)に基づいて分離性能補正係数Mを算出する分離性能補正係数算出手段を有し、工程4において、式(17)に基づいて分離性能SP(D)を算出する分離性能算出手段を有することを特徴としている。
【0082】
本発明の形態は、上述の通り分離膜の膜性能計算方法を、コンピュータで読み取れるプログラムとして、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存しても良い。その場合膜性能計算プログラムは、コンピュータのハードディスクなどの記録媒体に保存される。
【0083】
以上、各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0084】
なお、本出願は、2023年3月10日出願の日本特許出願(特願2023-37302)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0085】
1:原水
2:原水ポンプ
3:高圧ポンプ
4:逆浸透膜
5:生産水
6:排水
10:コンピュータ
11:運転情報入力手段
12:運転情報記憶手段
13:運転情報取り出し手段
14:分離性能計算手段
15:工程1
16:工程2
17:工程3
18:工程4
19:分離性能保存手段
20:分離性能記憶手段
21:分離性能出力手段
【要約】
分離膜の初期分離性能SP(0)と、液体処理の運転期間Dと、被処理液体の温度T(t)と、被処理液体の圧力P(t)を用いて、下記工程によって分離膜の分離性能を計算する。工程1:運転期間D経過時点において圧密化によって変化した分離膜の分離性能をSP(D)、任意の時間をtとするとき、被処理液体の温度T(t)がtにおける被処理液体の温度T(t)一定であると仮定した場合に、分離性能がSP(D)となる相当運転期間D’を決定する。工程2:被処理液体の温度T(t)と、tにおける被処理液体の圧力P(t)を用いて、圧密化係数m(T(t),P(t))を決定する。工程3:相当運転期間D’と、圧密化係数mを用いて初期分離性能に対する分離性能SP(D)の割合に相当する分離性能補正係数M(D)を算出する。工程4:分離性能補正係数M(D)と、初期分離性能を用いて分離性能SP(D)を算出する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6