(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体チップの試験方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20241210BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20241210BHJP
【FI】
G01R31/26 H
G01R31/52
(21)【出願番号】P 2024556303
(86)(22)【出願日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2024021392
【審査請求日】2024-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日坂 隆行
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-175778(JP,A)
【文献】特開昭58-195166(JP,A)
【文献】特開2008-157934(JP,A)
【文献】特開平03-277981(JP,A)
【文献】特開平03-089183(JP,A)
【文献】特開昭58-092967(JP,A)
【文献】特開2007-225496(JP,A)
【文献】特開平07-227270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 31/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温恒湿槽の内部で蒸発器が純水と水溶液の混合液から水蒸気を発生させる工程と、
前記水蒸気が発生した前記恒温恒湿槽の内部に半導体チップを配置して前記半導体チップにバイアスを印加し前記半導体チップが短絡故障したかどうかを判定する工程とを備え、
前記水蒸気の導電率を導電率計により測定し、前記導電率が一定となるように前記蒸発器に供給する純水の量と水溶液の量を制御することを特徴とする半導体チップの試験方法。
【請求項2】
前記水溶液はイオンを発生する物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの試験方法。
【請求項3】
前記水溶液はハロゲンイオンを発生する物質を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体チップの試験方法。
【請求項4】
前記水溶液は樹脂成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの試験方法。
【請求項5】
前記水蒸気を飽和蒸気圧以下に冷却して結露させて結露水を生成し、前記導電率計は前記結露水に電気を流すことで前記水蒸気の導電率を測定することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の半導体チップの試験方法。
【請求項6】
前記導電率計は、基板と、前記基板に形成された対向電極とを有し、前記対向電極に流れるリーク電流を測定することで前記水蒸気の導電率を測定することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の半導体チップの試験方法。
【請求項7】
恒温恒湿槽の内部に樹脂材料を配置して蒸発器が水蒸気を発生させる工程と、
前記水蒸気が発生した前記恒温恒湿槽の内部に半導体チップを
樹脂パッケージに実装せずに配置して前記半導体チップが短絡故障したかどうかを判定する工程とを備え、
前記樹脂材料は前記半導体チップとは分離されていることを特徴とする半導体チップの試験方法。
【請求項8】
貫通孔を有する試験用パッケージの中に前記半導体チップと前記樹脂材料を搭載して前記恒温恒湿槽の内部に配置することを特徴とする請求項7に記載の半導体チップの試験方法。
【請求項9】
前記恒温恒湿槽の内部の温度を第1のヒーターにより設定し、
前記樹脂材料を前記第1のヒーターとは異なる第2のヒーターで加熱し、
前記水蒸気の導電率を導電率計により測定し、前記導電率が一定となるように前記第2のヒーターの温度を制御することを特徴とする請求項7に記載の半導体チップの試験方法。
【請求項10】
恒温恒湿槽の内部で蒸発器が
有機酸、ハロゲン、Na
+
を含有する樹脂成分を含む水溶液から水蒸気を発生させる工程と、
前記水蒸気が発生した前記恒温恒湿槽の内部に半導体チップを配置して前記半導体チップが短絡故障したかどうかを判定する工程とを備えることを特徴とする半導体チップの試験方法。
【請求項11】
恒温恒湿槽の内部で蒸発器が水蒸気を発生させる工程と、
前記恒温恒湿槽の内部でハロゲンイオンを含む水溶液を電気分解してハロゲンガスを発生させる工程と、
前記水蒸気と前記ハロゲンガスが発生した前記恒温恒湿槽の内部に半導体チップを配置して前記半導体チップが短絡故障したかどうかを判定する工程とを備え
、
前記水蒸気の発生量と前記ハロゲンガスの発生量を独立して制御することを特徴とする半導体チップの試験方法。
【請求項12】
前記水蒸気の導電率を導電率計により測定し、前記導電率が一定となるように前記ハロゲンガスの発生量を制御することを特徴とする請求項11に記載の半導体チップの試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体チップの試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の低コスト化の要求から安価な非気密パッケージが採用されているため、半導体チップ自体に耐湿性を確保することが要求されている。恒温恒湿槽内の高湿度、高温環境で半導体チップにバイアスを印加して耐湿性試験が行われる。このような恒温恒湿槽では高湿度を得るために純水を用いることが一般的である。ただし、チップが実装される環境から発生した不純物又は樹脂成分による劣化が生じる問題があるため、不純物を含む環境下で試験を行うことが検討されている。例えばNaCl、KCl等の腐食性物質を蒸留水に加えた水溶液を用いて半導体チップを短時間で劣化させることで加速した耐湿性試験が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐湿性試験において半導体チップの表面が高湿度雰囲気に直接曝される。従って、恒温恒湿槽内の水蒸気に含まれる不純物が半導体チップの劣化に大きく影響する。しかし、従来技術は水溶液の不純物濃度を制御するが、恒温恒湿槽内の水蒸気の不純物濃度を制御することはできなかった。また、恒温恒湿槽内に不純物が残留するために試験毎に水蒸気の不純物濃度が変化してしまう。従って、従来技術では半導体チップの故障時間(寿命)を精度よく評価することは困難である。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は半導体チップの故障時間を精度よく評価することができる半導体チップの試験方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体チップの試験方法は、恒温恒湿槽の内部で蒸発器が純水と水溶液の混合液から水蒸気を発生させる工程と、前記水蒸気が発生した前記恒温恒湿槽の内部に半導体チップを配置して前記半導体チップにバイアスを印加し前記半導体チップが短絡故障したかどうかを判定する工程とを備え、前記水蒸気の導電率を導電率計により測定し、前記導電率が一定となるように前記蒸発器に供給する純水の量と水溶液の量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、恒温恒湿槽の内部で蒸発器が純水と水溶液の混合液から水蒸気を発生させ、導電率計が測定した水蒸気の導電率が一定となるように蒸発器に供給する純水の量と水溶液の量を制御する。これにより、恒温恒湿槽の内部の水蒸気の不純物濃度を一定に制御することができるため、半導体チップの故障時間を精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る耐湿試験装置を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る導電率計を示す図である。
【
図3】槽内の水蒸気の導電率と半導体チップの故障時間の関係を示す図である。
【
図4】実施の形態2に係る導電率計を示す図である。
【
図8】実施の形態2に係る半導体チップの変形例を示す断面図である。
【
図9】実施の形態2に係る導電率計の変形例を示す断面図である。
【
図10】実施の形態3に係る耐湿試験装置を示す図である。
【
図11】実施の形態4に係る耐湿試験装置を示す図である。
【
図12】実施の形態5に係る耐湿試験装置を示す図である。
【
図13】実施の形態6に係る耐湿試験装置を示す図である。
【
図14】実施の形態7に係る耐湿試験装置を示す図である。
【
図15】実施の形態8に係る耐湿試験装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る半導体チップの試験方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1
図1は、実施の形態1に係る耐湿試験装置を示す図である。恒温恒湿槽1の内部にヒーター2と蒸発器3が設けられている。恒温恒湿槽1の内部の温度はヒーター2により85~130℃に設定される。恒温恒湿槽1の内部の湿度は水蒸気を発生する蒸発器3により85%に設定される。
【0011】
恒温恒湿槽1の外部に純水用タンク4と水溶液用タンク5が設けられている。純水用タンク4に収容された純水を純水用ポンプ6が蒸発器3に供給する。水溶液用タンク5に収容されたNaCl水溶液を水溶液用ポンプ7が蒸発器3に供給する。蒸発器3は、容器に溜めた純水と水溶液の混合液をヒーターにより加熱して水蒸気を発生させる。ただし、蒸発器3は超音波振動で水蒸気を発生させてもよい。
【0012】
半導体チップ8を試験用パッケージ9に搭載して恒温恒湿槽1の中に配置する。試験用パッケージ9は、金属製のパッケージ本体9aと、端子9b,9cと、パッケージ本体9aと端子9b,9cを絶縁分離する絶縁セラミック9dとを有する。半導体チップ8はパッケージ本体9aに載せられ、半導体チップ8の入力電極8aが端子9bにワイヤ接続され、出力電極8bが端子9cにワイヤ接続される。試験用パッケージ9には樹脂材料が使用されていないため、半導体チップ8を劣化させる不純物は試験用パッケージ9からほとんど発生しない。
【0013】
バイアス印加用の電源装置10が恒温恒湿槽1の外側に設けられている。電源装置10は、端子9bを介して半導体チップ8にバイアスを印加し、半導体チップ8の出力電流を端子9cを介してモニタして半導体チップ8が短絡故障したかどうかを判定する。具体的には、電源装置10は半導体チップ8の出力が所定値以下になると半導体チップ8が故障したと判定する。半導体チップ8が故障した場合、半導体チップ8の配線金属がマイグレーションして短絡すると半導体チップ8が動作しなくなる。または、半導体チップ8の構造によっては配線金属が腐食して高抵抗になり、半導体チップ8の出力が出なくなる場合もある。なお、恒温恒湿槽1での試験中に故障判定することは必須ではなく、半導体チップ8を恒温恒湿槽1から取出してから故障判定してもよい。
【0014】
水溶液に含まれる不純物はNaClに限らずKCl、NaBr等でもよい。これらは、ハロゲン、Naイオン、Clイオン、Kイオン、Brイオン等のイオンを発生する物質である。このうちハロゲンイオンは、金属の腐食又はイオンマイグレーションを引き起こす腐食性物質であり、半導体チップ8の故障に最も影響する。ただし、Naイオン、Clイオン、Kイオン、Brイオンは導電率を増大させ、電極間のリーク電流が腐食を促進するので、ハロゲンイオンに限らず全てのイオンが故障に影響する。
【0015】
水蒸気に含まれる不純物イオン濃度が増加すると水蒸気の導電率が増加する。水蒸気の導電率を測定することで水蒸気の不純物濃度を間接的に測定できる。そこで、導電率計11が恒温恒湿槽1の内部の水蒸気の導電率を計測する。制御部12は、導電率計11の計測結果に応じて純水用ポンプ6と水溶液用ポンプ7をそれぞれ制御して蒸発器3に供給する純水とNaCl水溶液の量を制御する。具体的には、制御部12は、導電率計11が測定した水蒸気の導電率が一定となるように蒸発器3に供給する純水の量と水溶液の量を制御する。これにより、恒温恒湿槽1の内部の水蒸気の不純物濃度を一定に制御することができる。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る導電率計を示す図である。蒸気採取プレート13の内部に冷却水を流して冷却し、水蒸気を飽和蒸気圧以下に冷却して結露させて結露水14を生成する。その結露水14を蒸気採集用皿15に溜める。導電率計11は、結露水14に浸した電極を介して結露水14に電気を流すことで水蒸気の導電率を測定する。溜まった結露水14は蒸気採集用皿15から溢れて新しく結露した結露水14と入れ替わる。これにより、恒温恒湿槽1の内部の水蒸気の導電率の変化を計測することができる。
【0017】
図3は、槽内の水蒸気の導電率と半導体チップの故障時間の関係を示す図である。試験を開始してから半導体チップ8が故障するまでの時間は槽内の水蒸気の導電率に強く依存している。本実施の形態では水蒸気の導電率を一定に制御するため、その条件における半導体チップ8の故障時間を正確に評価することができる。
【0018】
以上説明したように、本実施の形態では、恒温恒湿槽1の内部で蒸発器3が純水と水溶液の混合液から水蒸気を発生させ、導電率計11が測定した水蒸気の導電率が一定となるように蒸発器3に供給する純水の量と水溶液の量を制御する。これにより、恒温恒湿槽1の内部の水蒸気の不純物濃度を一定に制御することができるため、半導体チップ8の故障時間を精度よく評価することができる。また、水蒸気の不純物濃度と半導体チップ8の故障時間との関係を調べることもできる。また、不純物濃度を高くすることで半導体チップ8が故障に至る時間が早くなる加速試験を行うことができる。この加速試験の結果から実際の動作環境の寿命を予測することができる。
【0019】
実施の形態2
図4は、実施の形態2に係る導電率計を示す図である。
図5は、
図4のI-IIに沿った断面図である。基板16の上にSiN膜17が形成され、SiN膜17の上に櫛形の対向電極18,19が形成されている。なお、実施の形態1の蒸気採取プレート13のような水蒸気を結露させる装置は存在しない。
【0020】
不純物イオンを含む水分が基板16の表面に付着することで対向電極18,19にリーク電流が流れる。イオン量が増えるほど導電率が高くなりリーク電流が増大する。そこで、本実施の形態の導電率計11は、対向電極18,19間に電圧を印加して対向電極18,19に流れるリーク電流を測定することで水蒸気の導電率を測定する。制御部12は、導電率計11が測定したリーク電流が一定となるように蒸発器3に供給する純水の量と水溶液の量を制御する。また、測定したリーク電流と、電源装置10による半導体チップ8の評価結果との関係を調べる。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0021】
対向電極18,19は1対の電極でもよいが、対向電極18,19を櫛形にすることで対向する電極の長さを確保してリーク電流の検出感度を向上できる。また、対向電極18,19に半導体チップ8の電極8a,8bと同じ電圧を印加してもよいし、対向電極18,19に印加する電圧を大きくして検出感度を上げてもよい。
【0022】
プラス電極の金属は電気化学反応によりプラスイオンになる。プラスイオンはマイナス電極に移動して電子を失い金属が析出する。マイナス電極で金属の析出物が増えるとプラス電極と短絡する。そこで、対向電極18,19間に印加する電圧を交流としてもよい。これにより金属の析出が起こり難くなるため、対向電極18,19の腐食による短絡を防ぐことができる。
【0023】
図6は、半導体チップを示す上面図である。
図7は
図6のI-IIに沿った断面図である。半導体チップ8では、半導体基板20の上にゲート電極21、ソース電極22、ドレイン電極23が形成されている。これらの電極を覆うように半導体基板20の表面をSiN膜24が保護している。Au電極25,26がSiN膜24の上に形成され、SiN膜24を貫通するビアを介してそれぞれソース電極22とドレイン電極23に接続されている。
【0024】
半導体チップ8の故障を引き起こすリーク電流は、SiN膜24の表面を介してAu電極25,26間に流れるため、素子表面と表面電極に依存する。そこで、対向電極18,19を半導体チップ8のAu電極25,26と同じ材質にし、同じプロセスで形成する。基板16の表面のSiN膜17を半導体チップ8の表面のSiN膜24と同じ材質にし、同じプロセスで形成する。これにより導電率計11の表面に吸着する水分は半導体チップ8の表面と同様となるため、導電率計11の表面で半導体チップ8の表面のリーク電流を再現することができる。導電率計11がSiN膜17の表面を介して対向電極18,19間に流れるリーク電流を測定することで、半導体チップ8の故障時間を更に精度よく評価することができる。
【0025】
図8は、実施の形態2に係る半導体チップの変形例を示す断面図である。
図9は、実施の形態2に係る導電率計の変形例を示す断面図である。半導体チップ8の最表面にポリイミド樹脂膜27が形成されている場合、ポリイミド樹脂膜27とSiN膜17の界面に不純物を含む水分量が多くなり、リーク電流が発生する場合がある。そこで、導電率計11の最表面にもポリイミド樹脂膜28を形成する。導電率計11の表面構造が半導体チップ8の表面構造と同じ構造であるため、導電率計11の表面で半導体チップ8の表面のリーク電流を再現することができる。
【0026】
実施の形態3
図10は、実施の形態3に係る耐湿試験装置を示す図である。実施の形態1,2では蒸発器3は純水と水溶液の混合液から水蒸気を発生させていたが、本実施の形態の蒸発器3は純水から水蒸気を発生させる。恒温恒湿槽1の内部に、半導体チップ8とは分離された樹脂材料29を配置する。樹脂材料29は半導体チップ8の近くに配置され、半導体チップ8と同じ温度、同じ湿度に曝される。
【0027】
恒温恒湿槽1の内部を高湿度高温条件にすると樹脂材料29から不純物が発生し、恒温恒湿槽1の内部の水蒸気に取り込まれる。半導体チップ8の表面が、不純物を含む水蒸気に曝されることで半導体チップ8の劣化が加速される。恒温恒湿槽1の内部の温度と湿度を調整することで、水蒸気の不純物量を調整することができる。
【0028】
樹脂材料29として、実際の製品に使用されるモールド樹脂又は樹脂基板と同じ材質を用いることにより、製品と同じ不純物の影響を調べることができる。樹脂材料29は有機酸、ハロゲン、Na+など複数の不純物を含有しており、どの物質が劣化に作用するか特定できていない場合に本実施の形態が効果的である。また、製品では半導体チップと樹脂材料が同じ温度、同じ湿度に曝されるため、本実施の形態は半導体チップ8と樹脂材料29を同じ温度に制御する場合に有効である。
【0029】
例えば開口した樹脂パッケージに半導体チップを実装して試験を行う場合、樹脂パッケージを形成する際にいろいろな影響を受けるため、樹脂の影響だけを調べることができない。これに対して、本実施の形態では、半導体チップ8を樹脂パッケージに実装せず、半導体チップ8とは分離された樹脂材料29と共に恒温恒湿槽1に導入して検査を行う。これにより、純粋に樹脂の影響だけを抽出できる。
【0030】
実施の形態4
図11は、実施の形態4に係る耐湿試験装置を示す図である。本実施の形態では貫通孔を有する試験用パッケージ9の中に半導体チップ8と樹脂材料29を搭載して恒温恒湿槽1の内部に配置する。
【0031】
試験用パッケージ9の貫通孔から水蒸気が取り込まれる。恒温恒湿槽1の内部を高湿度高温条件にすると樹脂材料29から不純物が発生する。試験用パッケージ9の内部は樹脂材料29から発生した不純物と貫通孔から取り込まれた水蒸気が混じった雰囲気となる。半導体チップ8の表面がこの雰囲気に曝される。これにより、半導体チップ8の使用環境の不純物の影響を模擬した試験を精度よく行うことができる。試験用パッケージ9は容積が小さいので、少量の樹脂材料29で不純物環境にすることができる。その他の構成及び効果は実施の形態3と同様である。
【0032】
表1はGaNHEMTチップを試験した結果である。恒温恒湿槽1の内部の温度130℃、湿度85%で96時間の試験を実施した。樹脂材料29が無い場合は短絡発生個所を確認できなかった。一方、本実施の形態では96時間の短時間で樹脂パッケージ製品と同じ配線マイグレーションによる短絡故障が再現できた。
[表1]
【0033】
実施の形態5
図12は、実施の形態5に係る耐湿試験装置を示す図である。実施の形態3との相違点として、本実施の形態では恒温恒湿槽1の内部で樹脂材料29をヒーター30で加熱する。その他の構成は実施の形態3と同様である。
【0034】
ヒーター30の温度により樹脂材料29から発生する不純物量を制御することができる。ヒーター2とヒーター30を別にすることで半導体チップ8の温度と不純物量を独立に制御することができる。
【0035】
水蒸気の導電率を導電率計11により測定し、導電率が一定となるようにヒーター30の温度を制御する。これにより、恒温恒湿槽1の内部の水蒸気の不純物濃度を一定に制御することができる。従って、半導体チップ8の故障時間を精度よく評価することができる。
【0036】
実施の形態6
図13は、実施の形態6に係る耐湿試験装置を示す図である。本実施の形態では樹脂成分を熱水抽出して蒸発器の給水用に用いる。恒温恒湿槽1の内部で蒸発器3が樹脂成分を含む水溶液から水蒸気を発生させる。水蒸気が発生した恒温恒湿槽1の内部に半導体チップ8を配置して半導体チップ8が短絡故障したかどうかを判定する。その他の構成は実施の形態3と同様である。
【0037】
製品に使用される樹脂のどの成分が耐湿性に影響するかわからない場合に、樹脂に含まれる成分で試験を行うことができる。また、樹脂成分を熱水抽出することで、水に溶けだす不純物成分だけを効率よく抽出することできる。
【0038】
実施の形態7
図14は、実施の形態7に係る耐湿試験装置を示す図である。本実施の形態では、実施の形態1の水溶液として樹脂成分を含む水溶液を用いる。ただし、実施の形態6の水溶液よりも樹脂成分の濃度が十分に高い。恒温恒湿槽1の内部で蒸発器3が純水と樹脂成分を含む水溶液の混合液から水蒸気を発生させる。導電率計11が測定した水蒸気の導電率が一定となるように蒸発器3に供給する純水の量と水溶液の量を制御する。これにより、水蒸気に含まれる樹脂成分の濃度を一定にして試験を行うことができる。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0039】
実施の形態8
図15は、実施の形態8に係る耐湿試験装置を示す図である。恒温恒湿槽1の内部で蒸発器3が純水から水蒸気を発生させる。恒温恒湿槽1の内部にハロゲンガス発生装置31が設けられている。ハロゲンガス発生装置31は、ハロゲンイオンを含む水溶液を電気分解してハロゲンガスを発生させる。例えば、NaCl又はKClを電気分解してCl
2ガスを発生させる。臭化ナトリウムNaBrを電気分解してBr
2を発生させてもよい。水溶液に陽極31aと陰極31bを入れて電流を流すと陽極31a側からハロゲンガスが発生する。水溶液がNaClの場合の陽極31a側の反応は2Cl
-→Cl
2+2e
-である。水溶液がNaBrの場合の陽極31a側の反応は2Br
-→Br
2+2e
-である。電気分解の電流によりハロゲンガスの発生量を制御することができる。
【0040】
ハロゲンガス発生装置31の上面に開口が複数設けられている。発生したハロゲンガスは、恒温恒湿槽1内に広がる。水蒸気とハロゲンガスが発生した恒温恒湿槽1の内部に半導体チップ8を配置する。ハロゲンイオンは、金属の腐食又はイオンマイグレーションを引き起こす腐食性物質である。従って、半導体チップ8の表面にClイオン又はBrイオンが吸着されることにより半導体チップ8の劣化が加速される。半導体チップ8が短絡故障したかどうかを判定する。水蒸気の導電率を導電率計11により測定し、制御部12は、導電率が一定となるようにハロゲンガス発生装置31によるハロゲンガスの発生量を制御する。これにより、実施の形態1と同様に恒温恒湿槽1の内部の水蒸気の不純物濃度を一定に制御することができるため、半導体チップ8の故障時間を精度よく評価することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 恒温恒湿槽、2,30 ヒーター、3 蒸発器、8 半導体チップ、9 試験用パッケージ、11 導電率計、16 基板、18,19 対向電極、29 樹脂材料
【要約】
恒温恒湿槽(1)の内部で蒸発器(3)が純水と水溶液の混合液から水蒸気を発生させる。水蒸気が発生した恒温恒湿槽(1)の内部に半導体チップ(8)を配置して半導体チップ(8)にバイアスを印加し半導体チップ(8)が短絡故障したかどうかを判定する。水蒸気の導電率を導電率計(11)により測定し、導電率が一定となるように蒸発器(3)に供給する純水の量と水溶液の量を制御する。