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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20241210BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16H25/22 B
F16H25/24 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024556665
(86)(22)【出願日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2024020910
【審査請求日】2024-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2023121466
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 篤
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175406(JP,A)
【文献】特開2013-24321(JP,A)
【文献】実開昭58-52359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に内周軌道面が設けられたナットと、
前記ナットを貫通し、外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸と、
前記外周軌道面と前記内周軌道面との間の軌道に配置された複数のボールと、
前記ボールを循環させる少なくとも1つ以上のコマと、
を備え、
前記ねじ軸の外周面には、径方向内側に窪み、前記コマを収容する凹部が少なくとも1つ以上設けられ、
前記凹部は、径方向外側を向く第1底面を有し、
前記第1底面の少なくとも一部は、平面となっており、
前記コマは、
前記第1底面と当接する第2底面と、
前記第2底面から径方向外側に窪み、内部空間が循環路を構成する循環用溝面と、
前記循環路を径方向内側に向かって開口させる底部開口と、
前記循環路を周方向に開口させ、前記循環路と前記軌道とを接続する一対のコマ側開口と、
前記軌道から前記循環路に進入した前記ボールを径方向内側に案内する一対のタングと、
を有し、
前記第1底面のうち前記底部開口を閉塞する部分は、前記循環路を移動する前記ボールの転動面となっているボールねじ装置。
【請求項2】
前記第1底面の全てが平面となっている
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記ねじ軸と平行な軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在し、
前記第1底面の前記交差方向の中央部に、径方向内側に窪む凹面が設けられ、
前記凹面の交差方向の両側に、平面が設けられている
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記タングには、径方向外側に突出するリブが設けられている
請求項に記載のボールねじ装置。
【請求項5】
前記ねじ軸と平行な軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在し、
前記凹部は、前記コマの周囲を囲む環状の内周面を有し、
前記内周面は、前記交差方向の両側から前記コマを挟む一対の側面を有している
請求項に記載のボールねじ装置。
【請求項6】
前記ねじ軸の中心から前記ナットのねじ山までの距離とRとし、
前記ボールの直径をDwとし、
前記コマの外径面のうち前記ナットのねじ山と対向する部分と、前記ナットの前記ねじ山と、の距離が0.2mm以上1.5mm以下であり、かつ、
前記コマの外径面のうち前記ナットのねじ山と対向する部分から前記循環用溝面までの肉厚が0.3mm以上1.0mm以下であり、かつ、
前記循環路の径方向の隙間が0.05×Dw以上0.25×Dw以下であり、
前記第1底面と前記ねじ軸の中心との距離hが以下の式(1)を満たす
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【数1】
【請求項7】
前記ねじ軸と平行な軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在し、
前記凹部は、前記交差方向に開口する開口部を少なくとも1つ有し、
前記コマは、前記第1底面に沿って前記交差方向に移動可能となっている
請求項に記載のボールねじ装置。
【請求項8】
前記凹部は、前記開口部を2つ有し、
2つの前記開口部は、
前記交差方向の一方に開口する前記開口部と、
前記交差方向の他方に開口する前記開口部と、である
請求項7に記載のボールねじ装置。
【請求項9】
前記凹部は、前記軸方向に対向する一対の対向面を有し、
前記コマは、前記軸方向を向き、一対の前記対向面と対向する一対の側面を有し、
一対の前記対向面のうち少なくとも一方には、前記軸方向に窪み、かつ前記交差方向に延在する溝が形成され、
一対の前記側面のうち少なくとも一方には、前記軸方向に突出し、前記溝に収容する突起が形成されている
請求項に記載のボールねじ装置。
【請求項10】
前記溝は、一対の前記対向面の両方に形成され、
前記突起は、一対の前記側面の両方に形成されている
請求項9に記載のボールねじ装置。
【請求項11】
前記凹部は、前記軸方向に対向する一対の対向面を有し、
前記コマは、一対の前記対向面に対し締め代を有し、一対の前記対向面に挟持されている
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項12】
前記軸方向と前記交差方向の両方に直交する方向を直交方向とし、
前記直交方向のうち、前記第1底面から視て前記ねじ軸の中心が配置される方向を第1直交方向とし、
前記コマの前記交差方向の両端部のうち少なくとも一方には、前記第1底面よりも前記第1直交方向に突出する加締め部が形成されている
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項13】
前記軸方向と前記交差方向の両方に直交する方向を直交方向とし、
前記直交方向のうち、前記第1底面から視て前記ねじ軸の中心が配置される方向と反対方向を第2直交方向とし、
前記ねじ軸には、前記コマの前記交差方向の両側のうち少なくとも一方に配置され、前記第1底面よりも前記第2直交方向に突出する加締め部が形成されている
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項14】
前記第1底面には、1つ以上の穴が形成され、
前記第2底面には、前記穴に入り込む突起が形成されている
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置は、ナットと、ナットを貫通するねじ軸と、ナットとねじ軸との間に配置された複数のボールと、循環部品と、を備えている。ナットの内周面には、内周軌道面が形成されている。ねじ軸の外周面には、内周軌道面と対向する外周軌道面が形成されている。内周軌道面と外周軌道面との間は、螺旋状の軌道を構成している。複数のボールは、軌道に配置され、軌道に沿って螺旋方向に移動する。循環部品は、軌道の一端から軌道の他端に移動したボールを軌道の一端に戻す。循環部品の一つとして、ボールを1リード戻すコマが挙げられる。
【0003】
下記特許文献のボールねじ装置では、ねじ軸の外周面に径方向内側に窪む凹部が形成されている。凹部にコマが挿入され、ねじ軸にコマが取り付けられている。また、コマは、径方向外側を向く外径面と、外径面から径方内側に窪む循環用溝面と、を有している。循環用溝面は、径方向外側から視てS字状を成す循環用溝面となっている。ボールは、コマの循環用溝面内で径方向内側に移動し、ナットのねじ山を乗り越えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-225770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献のコマによれば、ボールが径方向内側に移動する際、循環用溝面とナットの内周軌道面との間でボールが挟まる場合がある。よって、ボールの円滑な転動が確保されていない。また、ボールが挟まれると、循環用溝面の溝肩が破損する可能性がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、ボールの円滑な転動とコマの破損防止を図るボールねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るボールねじ装置は、内周面に内周軌道面が設けられたナットと、前記ナットを貫通し、外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸と、前記外周軌道面と前記内周軌道面との間の軌道に配置された複数のボールと、前記ボールを循環させる少なくとも1つ以上のコマと、を備えている。前記ねじ軸の外周面には、径方向内側に窪み、前記コマを収容する凹部が少なくとも1つ以上設けられている。前記凹部は、径方向外側を向く第1底面を有している。前記第1底面の少なくとも一部は、平面となっている。前記コマは、前記第1底面と当接する第2底面と、前記第2底面から径方向外側に窪み、内部空間が循環路を構成する循環用溝面と、前記循環路を径方向内側に向かって開口させる底部開口と、前記循環路を周方向に開口させ、前記循環路と前記軌道とを接続する一対のコマ側開口と、前記軌道から前記循環路に進入した前記ボールを径方向内側に案内する一対のタングと、を有している。前記第1底面のうち前記底部開口を閉塞する部分は、前記循環路を移動する前記ボールの転動面となっている。
【0008】
本開示のボールねじ装置によれば、ボールはタングにより径方向内側に案内される。このため、ボールが循環用溝面と内周軌道面との間に挟まれる、ということが回避される。つまり、ボールの転動が円滑となり、かつ循環用溝面の溝肩の破損も回避される。また、凹部の第1底面の平面を基準面として凹部の深さを測定することができ、凹部の寸法管理が容易となる。また、コマの循環路が径方向内側に開口している。つまり、金型を用いてコマを製造する際、循環路(循環用溝面)を成形する金型を径方向内側に移動(離型)させることができる。よって、循環路の径方向内側が閉塞している場合よりもコマを製造し易い。
【0009】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記第1底面の全てが平面となっている。
【0010】
前記構成によれば、第1底面の全てが平面となっており、第1底面を形成し易い。また、軸方向から視て、循環路が直線状となり、ボールの転動が円滑となる。また、ボールは軌道から循環路に進入する際、軌道の延長線よりも径方向内側に進路を変える。つまり、ボールの進路は、軌道から径方向内側に折れ曲がる。仮に第1底面が凹面となっている場合、ボールの進路の折れ曲がり角度が大きい。一方、本開示によれば、第1底面が平面となっているため、ボールの進路の折れ曲がり角度が小さい。よって、外周軌道面と循環路との間をボールが円滑に移動(転動)する。
【0011】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在している。前記第1底面の前記交差方向の中央部に、径方向内側に窪む凹面が設けられている。前記凹面の交差方向の両側に、平面が設けられている。
【0012】
第1底面のうち交差方向の端部が平面となっており、ボールの進路の折れ曲がり角度が小さい。よって、前記構成によっても、外周軌道面と循環路との間をボールが円滑に移動(転動)する。また、第1底面の交差方向の中央部に凹面が設けられている。このため、第1底面の交差方向の両端部(平面)は、第1底面が全て平面となっている場合よりも、径方向外側に配置される。この結果、外周軌道面は凹部によって切り欠かれる範囲が小さくなり、ボールねじ装置の耐荷重が向上する。
【0013】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記タングには、径方向外側に突出するリブが設けられている。
【0014】
前記構成によれば、リブによりタングの強度が向上する。
【0015】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記凹部は、前記コマの周囲を囲む環状の内周面を有している。前記内周面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向の両側から、前記コマを挟む一対の側面を有している。
【0016】
前記構成によれば、コマは一対の側面に挟まれる。よって、コマが交差方向に移動して凹部からコマが脱落する、ということが回避される。
【0017】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記ねじ軸の中心から前記ナットのねじ山までの距離とRとし、前記ボールの直径をDwとし、前記コマの外径面のうち前記ナットのねじ山と対向する部分と、前記ナットの前記ねじ山と、の距離が0.2mm以上1.5mm以下であり、かつ、前記コマの外径面のうち前記ナットのねじ山と対向する部分から前記循環用溝面までの肉厚が0.3mm以上1.0mm以下であり、かつ、前記循環路の径方向の隙間が0.05×Dw以上0.25×Dw以下であり、前記第1底面と前記ねじ軸の中心との距離hが以下の式(1)を満たす。
【0018】
【数1】
【0019】
前記構成によれば、第1底面が径方向外側寄りに配置される。よって、軌道が長くなり、ボールねじ装置の耐荷重が向上する。
【0020】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記ねじ軸と平行な軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在している。前記凹部は、前記交差方向に開口する開口部を少なくとも1つ有している。前記コマは、前記第1底面に沿って前記交差方向に移動可能となっている。若しくは、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記凹部は、前記開口部を2つ有している。2つの前記開口部は、前記交差方向の一方に開口する前記開口部と、前記交差方向の他方に開口する前記開口部と、である。
【0021】
前記構成によれば、凹部の交差方向からコマを取り付けることができる。また、凹部の径方向外側からもコマを取り付けることができる。このため、コマを取り付ける方向の選択肢が増え、コマの取り付け性が向上する。
【0022】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記凹部は、前記軸方向に対向する一対の対向面を有している。前記コマは、前記軸方向を向き、一対の前記対向面と対向する一対の側面を有している。一対の前記対向面のうち少なくとも一方には、前記軸方向に窪み、かつ前記交差方向に延在する溝が形成されている。一対の前記側面のうち少なくとも一方には、前記軸方向に突出し、前記溝に収容する突起が形成されている。若しくは、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記溝は、一対の前記対向面の両方に形成されている。前記突起は、一対の前記側面の両方に形成されている。
【0023】
前記構成によれば、コマに径方向外側への荷重が作用した場合、突起が溝に引っ掛かる。よって、コマの径方向外側への移動が規制される。
【0024】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記凹部は、前記軸方向に対向する一対の対向面を有している。前記コマは、一対の前記対向面に対し締め代を有し、一対の前記対向面に挟持されている。
【0025】
前記構成によれば、コマは、径方向外側及び交差方向に移動し難くなる。よって、凹部からコマが脱落する、ということが規制される。
【0026】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記軸方向と前記交差方向の両方に直交する方向を直交方向とする。前記直交方向のうち、前記第1底面から視て前記ねじ軸の中心が配置される方向を第1直交方向とする。前記コマの前記交差方向の両端部のうち少なくとも一方には、前記第1底面よりも前記第1直交方向に突出する加締め部が形成されている。
【0027】
前記構成によれば、コマに交差方向への荷重が作用した場合、突起がねじ軸の外周面に引っ掛かる。よって、コマの交差方向への移動が規制される。
【0028】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記軸方向と前記交差方向の両方に直交する方向を直交方向とする。前記直交方向のうち、前記第1底面から視て前記ねじ軸の中心が配置される方向と反対方向を第2直交方向とする。前記ねじ軸には、前記コマの前記交差方向の両側のうち少なくとも一方に配置され、前記第1底面よりも前記第2直交方向に突出する加締め部が形成されている。
【0029】
前記構成によれば、コマに交差方向への荷重が作用した場合、加締め部がコマに対し交差方向から引っ掛かる。よって、コマの交差方向への移動が規制される。
【0030】
また、前記したボールねじ装置の好ましい態様として、前記第1底面には、1つ以上の穴が形成されている。前記第2底面には、前記穴に入り込む突起が形成されている。
【0031】
前記構成によれば、コマに交差方向への荷重が作用した場合、突起が穴に引っ掛かる。よって、コマの径方向外側への移動が規制される。
【発明の効果】
【0032】
本開示のボールねじ装置によれば、ボールの円滑な転動が確保される。また、循環用溝面の溝肩の破損も回避される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施形態1のブレーキキャリパーの断面図である。
図2図2は、実施形態1のボールねじ装置のコマ及び凹部を斜視した斜視図である。
図3図3は、実施形態1の凹部を斜視した斜視図である。
図4図4は、実施形態1の凹部とコマを径方向外側から視た拡大図である。
図5図5は、実施形態1のコマ及びねじ軸を循環路に沿って切った断面を模式的に示す図であり、詳細には、図4のV-V線矢視断面図である。
図6図6は、実施形態1のコマ及びねじ軸を軸方向に沿って切った断面を模式的に示す図であり、詳細には図4のVI-VI矢視断面図である。
図7図7は、実施形態1のコマを第2底面の方から視た平面図である。
図8図8は、実施形態1と比較例のボールねじ装置を軌道と循環路に沿って切った断面を模式化した模式図である。
図9図9は、実施形態2のボールねじ装置の凹部を径方向から視た平面図である。
図10図10は、実施形態2のボールねじ装置を軌道及び循環路に沿って切った断面図である。
図11図11は、実施形態3のボールねじ装置のコマと凹部を軸方向及び径方向に切った断面図である。
図12図12は、実施形態4のボールねじ装置のコマと凹部を軸方向及び径方向に切った断面図である。
図13図13は、実施形態5の凹部及びコマの斜視図である。
図14図14は、実施形態5のねじ軸の凹部の斜視図である。
図15図15は、実施形態5の凹部を交差方向から視た図である。
図16図16は、図15のXVI-XVI線矢視断面図である。
図17図17は、実施形態5のコマを第2底面の方から視た図である。
図18図18は、実施形態5の凹部及びコマを軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には、図15のXVIII-XVIII線で凹部及びコマを切った場合の断面図である。
図19図19は、変形例1の凹部及びコマを交差方向から視た図である。
図20図20は、変形例1のねじ軸の凹部の斜視図である。
図21図21は、変形例2の凹部及びコマを交差方向から視た図である。
図22図22は、変形例3の凹部及びコマを交差方向から視た図である。
図23図23は、変形例4の凹部及びコマを軸方向と直交する方向に切った断面図である。
図24図24は、変形例5のコマを第2底面の方から視た図である。
図25図25は、変形例5のボールねじ装置を軸方向と直交する方向に切った断面図である。
図26図26は、変形例6の凹部の斜視図である。
図27図27は、変形例6のコマを第2底面の方から視た図である。
図28図28は、図26のXXVIII-XXVIII線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0035】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のブレーキキャリパーの断面図である。図1に示すように、ブレーキキャリパー100は、図示しない車輪と供回りするブレーキディスク101を2つのブレーキパッド102、103で挟み、車輪の回転運動を抑制するための装置である。ブレーキキャリパー100は、ブレーキディスク101と、2つのブレーキパッド102、103と、ブレーキパッド102を作動させる電動アクチュエータ104と、ハウジング120と、を備えている。
【0036】
電動アクチュエータ104は、回転運動を生成するモータ110と、回転運動を直線運動に変換するボールねじ装置1と、を備えている。以下、ボールねじ装置1のねじ軸2の中心O1と平行な方向を軸方向と称する。また、軸方向のうち、ボールねじ装置1から視てブレーキディスク101が配置される方を第1方向X1と称し、第1方向X1と反対方向を第2方向X2と称する。
【0037】
モータ110は、ハウジング120の内周面に固定されたステータ111と、ステータ111の内周側に配置されたロータ112と、ハウジング120に回転自在に支持された出力軸113と、を備えている。ステータ111とロータ112と出力軸113は、それぞれ、中心O1を中心に同心円状に配置されている。ロータ112の内周側に出力軸113が嵌合している。ステータ111に電力が供給されて回転磁界が発生し、ロータ112及び出力軸113が中心軸Oを中心に回転する。また、出力軸113の第1方向X1の端面には、ねじ軸2が嵌合する凹部114が形成されている。
【0038】
ボールねじ装置1は、ねじ軸2と、ナット6と、ボール4(図1で不図示。図5参照)と、複数のコマ5と、を備えている。
【0039】
ねじ軸2は、軸受117に回転自在に支持された連結部10と、連結部10に対し第1方向X1に配置されたねじ軸本体11と、を備えている。連結部10は、第2方向X2の端部10aが凹部114に嵌合している。また、連結部10と出力軸113とは、相対回転不能に連結している。よって、出力軸113が回転すると、ねじ軸2も回転する。ねじ軸本体11の外周面には、螺旋方向に延在する外周軌道面13と、径方向内側に窪む複数の凹部14と、が設けられている。
【0040】
ナット6は、筒状に形成されている。また、ナット6には、ナット6の第1方向X1の開口を閉塞する蓋部7が設けられている。ナット6の内周面には、外周軌道面13に対向する内周軌道面6aが設けられている。外周軌道面13と内周軌道面6aとの間は、螺旋状の軌道8を構成している。この軌道8には、複数のボール4が配置されている。
【0041】
ナット6の外周面は、ハウジング120の支持面121に当接している。ナット6の外周面と支持面121は、それぞれ中心O1を中心に円形状を成している。ナット6の外周面と支持面121との間には、微小の隙間が設けられている。これにより、ナット6は、支持面121に対し軸方向に摺動自在となっている。ナット6の外周面には、図示しない回り止め部材が設けられている。この回り止め部材により、ナット6は、中心O1を中心に回転しないように規制されている。
【0042】
蓋部7は、ナット6の第1方向X1の開口を閉塞している。また、蓋部7の第1方向X1を向く面7aは、ブレーキパッド102に接している。
【0043】
以上から、ねじ軸2の回転によりナット6が第1方向X1に移動すると、ブレーキパッド102が第1方向X1に移動する。ブレーキパッド102は、ブレーキディスク101を第1方向X1に押圧し、ブレーキディスク101がブレーキパッド103に接触する。これにより、ブレーキディスク101は、ブレーキパッド102、103に挟持され、図示しない車輪の回転が規制される。
【0044】
コマ5は、軌道8のうち1リード分を移動したボール4を、1リード分戻す循環装置である。また、1つの凹部14に対し、1つのコマ5が取り付けられている。なお、本開示において、凹部14へのコマ5の固定方法について特に問わない。つまり、凹部14にコマ5を固定してもよいし、固定しなくてもよい。よって、本開示では、凹部14にコマ5を遊嵌させてもよい。または、コマ5に締め代を設けて凹部14に嵌合してもよい。若しくは、コマ5を凹部14に接着してもよい。そのほか、加締めによりコマ5を凹部14に固定してもよい。このようにコマ5の固定の有無については特に問わない。
【0045】
そのほか、特に図示しないが、複数のコマ5(複数の凹部14)を軸方向から視た場合、複数のコマ5は、それぞれ、中心O1から異なる方向に配置されている。これにより、ボール4を介してナット6からねじ軸2に作用する荷重は、周方向に均等に分散される。なお、複数のコマ5は、周方向に等間隔で配置されている方がより好ましい。
【0046】
図2は、実施形態1のボールねじ装置のコマ及び凹部を斜視した斜視図である。図2に示すように、コマ5は、内部に循環路30が形成された部品である。コマ5を形成する材料として金属、樹脂等が挙げられるが、本開示は特にこれらに限定されない。コマ5には、循環路30と、循環路30と軌道8(外周軌道面13)を接続する一対のコマ側開口31(図2で1つのみ図示)と、一対のタング40、40と、を有している。以下、凹部14とコマ5の詳細を説明する。
【0047】
図3は、実施形態1の凹部を斜視した斜視図である。図3に示すように、ねじ軸2の外周軌道面13の一部を径方向外側から切り欠くことで、凹部14が形成されている。凹部14は、コマ5の周囲を囲む内周面15と、径方向外側を向く第1底面16と、を有している。以下の説明において、図5に示すように、第1底面16に対する垂線であり、かつ中心O1と直交する仮想上の線を仮想線K1と称する。
【0048】
図4は、実施形態1の凹部とコマを径方向外側から視た拡大図である。なお、図4の仮想線Zは、外周軌道面13の溝幅の中央部を通る仮想線であり、螺旋方向に延在している。以下、仮想線Zと平行な方向を螺旋方向と称する。また、図4の仮想線Wは、循環路30の溝幅の中央部を通る仮想線である。以下、循環路30に沿った経路を循環路30の長さ方向と称する場合がある。
【0049】
図4に示すように、凹部14は、径方向外側から視て、矩形状(四角形状)となっている。なお、実施形態の凹部14は、径方向外側から視て、矩形状(四角形状)となっているが、本開示は、例えば小判型であってもよく、実施形態で示した例に限定されない。凹部14の内周面15は、軸方向に互いに対向する一対の第1対向面17、17と、交差方向Yに互いに対向する一対の第2対向面18、18と、を有している。なお、交差方向Yとは、図5に示すように、軸方向から視て中心O1(図5で不図示)から径方向外側に延在する仮想線K1と交差(直交)する方向である。
【0050】
第1対向面17は、外周軌道面13のねじ山13aの一部を切り欠くことで形成されている。このため、ねじ山13aの一部には、厚み(螺旋方向に対し直交する方向の厚み)H1が小さい肉薄部19が設けられている。
【0051】
第1対向面17は、螺旋方向に沿って延在している。つまり、肉薄部19の厚みH1は、肉薄部19が延在する方向(螺旋方向)の全体に亘って均一となっている。よって、本実施形態の肉薄部19は、比較的、強度が弱い部分がなく、ねじ山13a(肉薄部19)の変形が抑制される。なお、本開示は、第1対向面17が交差方向Yに延在してもよく、実施形態で示した例に限定されない。
【0052】
第2対向面18は、径方向外側から視て、軸方向に延在している。図3に示すように、第2対向面18の一部は、外周軌道面13により切り欠かれている。つまり、第2対向面18には、ねじ軸側開口13bが設けられている。よって、第2対向面18は、第2対向面18の軸方向の中央部に位置するねじ山13aの端面13cと、第2対向面18の軸方向の両端部に位置するねじ山13aの部分端面13dと、により構成されている。
【0053】
なお、ねじ山13aの端面13cは、ねじ山13aの断面形状と同一である。ねじ山13aの部分端面13dは、交差方向Yから視た場合、ねじ山13aの端面13cを軸方向に2分割したうちの一方と同じ形状となっている。図4に示すように、径方向外側から視ると、ねじ山13aの部分端面13dは、円弧状(R形状)となっている。
【0054】
図4に示すように、一対の第2対向面18は、交差方向Yの両側からコマ5を挟む一対の側面となっている。これにより、コマ5の交差方向Yへの移動が規制される。
【0055】
図3に示すように、第1底面16の一部に凹面などが形成されていない。つまり、第1底面16の全てが平面となっている。本実施形態によれば、平面(第1底面16)を基準面として凹部14の深さを測定することができる。仮に第1底面16が凹面となっていると、第1底面16における測定位置によって凹部14の深さが異なり、凹部14の深さを測定することが容易でない。このような理由から、本実施形態によれば、凹部14の寸法管理が容易であり、凹部14の製造が簡易となる。
【0056】
図5は、実施形態1のコマ及びねじ軸を循環路に沿って切った断面を模式的に示す図であり、詳細には、図4のV-V線矢視断面図である。図6は、実施形態1のコマ及びねじ軸を軸方向に沿って切った断面を模式的に示す図であり、詳細には図4のVI-VI矢視断面図である。
【0057】
図5に示すように、軸方向から視て、第1底面16は、交差方向に直線状に延在している。図6に示すように、交差方向から視て、第1底面16は、軸方向に直線状に延在している。つまり、第1底面16は、交差方向及び軸方向に延在する平面である。図6に示すように、第1対向面17は、第1底面16に対し直角となっている。図5に示すように、第2対向面18(図5では部分端面13dのみ図示)は、第1底面16に対し直角となっている。
【0058】
図5に示すように、第1底面16の交差方向の中央部16aは、第1底面16の交差方向の両端部16bよりも、中心O1(図5で不図示)からの距離が小さい。第1底面16の交差方向の両端部16bの深さH2は、外周軌道面13の溝幅の中央部(溝底)と同じ深さとなっている。このため、図3に示すように、第1底面16は、外周軌道面13の溝幅の中央部(溝底)と段差なく接続している。
【0059】
図4に示すように、コマ5は、中心C(図4参照)を点対称に形成されている。コマ5は、中心Cを中心に環状を成す外周面24を有している。外周面24は、一対の第1対向面17、17と対向する一対の第1側面25、25と、一対の第2対向面18、18と対向する一対の第2側面26、26と、を有している。
【0060】
コマ5の循環路30は、径方向外側から視てS字状に形成されている。この循環路30をボール4が移動すると、1リード戻る。なお、実施形態の循環路30は、径方向外側から視てS字状となっているが、本開示は、ねじ軸側開口13b同士を結ぶ直線状となっていてもよく、特に限定されない。第2側面26には、コマ側開口31が設けられている。これにより、ねじ軸2の外周軌道面13を転動するボール4は、コマ側開口31を介して、コマ5の循環路30に進入する。
【0061】
図2に示すように、コマ5には、径方向外側を向く外径面41が設けられている。この外径面41には、2つの突出部42が設けられている。突出部42は、螺旋方向に延在している。2つの突出部42は、互いに軸方向に離隔している。よって、2つの突出部42の間には、径方向内側に窪み、かつ螺旋方向に延在する溝面43が設けられている。
【0062】
図6に示すように、突出部42の断面形状は、半円となっている。突出部42は、ナット6の内周軌道面6aの内部に収容されている。突出部42と内周軌道面6aは離隔している。また、溝面43の内部には、ナット6のねじ山6bが収容されている。溝面43とねじ山6bは離隔している。以上から、ナット6とコマ5が干渉しないようになっている。
【0063】
図2に示すように、タング40は、突出部42から螺旋方向に突出している。タング40の幅方向の大きさH3(図7参照)は、タング40の先端部40aに向かって次第に小さくなり、先細り形状となっている。
【0064】
図5に示すように、タング40は、ナット6の内周軌道面6aの内部に収容されている。タング40は、ナット6の内周軌道面6aと離隔し、接触しないようになっている。また、先端部40aは、軌道8を転動するボール4の中心O4同士を接続して成る仮想曲線Mよりも径方向外側に位置している。さらに、本実施形態では、内周軌道面6aの溝底と先端部40aとの段差量H4が小さい。
【0065】
上記したタング40によれば、コマ側開口31から循環路30に進入したボール4は、タング40の先端部40aと接触する。また、ボール4においてタング40の先端部40aは、ボール4(図5に示す複数のボール4のうちボール4Aを参照)の中心O4よりも径方向外側の部分に接触する。このため、ボール4には径方向内側への荷重が作用する。この結果、ボール4の進路は、軌道8(螺旋方向)よりも径方向内側となり、ボール4が循環路30に円滑に進入する。また、先端部40aの段差量H4が小さいため、ボール4は、先端部40aとの接触時、引っ掛かることなく円滑に移動する。
【0066】
コマ5は、径方向内側を向く第2底面50を有している。第2底面50は、凹部14の第1底面16と当接している。第2底面50は、交差方向Yに直線状に延在している。図6に示すように、交差方向Yから視て、第2底面50は、軸方向に直線状に延在している。つまり、第2底面50は、交差方向Y及び軸方向に延在する平面である。
【0067】
図7は、実施形態のコマを第2底面の方から視た平面図である。図7に示すように、第2底面50には、第2底面50から径方向外側に窪む循環用溝面51が設けられている。循環用溝面51の内部空間が循環路30を構成している。図6に示すように、循環用溝面51を溝幅方向に切った断面形状はU字となっている。つまり、第2底面50には、循環路30を径方向内側に向かって開口させる底部開口53が設けられている。これによれば、コマ5を製造する際、循環路30(循環用溝面51)を成形する金型を径方向内側に移動(離型)させることができる。よって、循環路30の径方向内側が閉塞されている場合よりもコマ5を製造し易い。
【0068】
図5図6に示すように、底部開口53は、凹部14の第1底面16により閉塞される。このため、図3に示すように、第1底面16のうち底部開口53を閉塞する部分(図3の2つの仮想線K54の間を参照)は、循環路30を移動するボール4が転動する転動面54となっている。以上から、循環路30を移動するボール4は、循環用溝面51と転動面54とに囲まれ、ナット6のねじ山6bに接触しない。
【0069】
図5に示すように、第2底面50(第1底面16)からの循環用溝面51の深さH5は、循環路30の長さ方向に一定となっている。言い換えると、循環用溝面51の溝底は、軸方向から視て、第1底面16と平行となっている。よって、軸方向から視て、循環路30は、交差方向Yに直線状となっている。よって、ボール4の移動が円滑となる。
【0070】
次に、実施形態1のボールねじ装置1の効果を、図8を参照しながら説明する。図8は、実施形態1と比較例のボールねじ装置を軌道と循環路に沿って切った断面を模式化した模式図である。また、図8に示す仮想線K10は、軌道8(外周軌道面13)を転動するボール4の中心同士を結んだ曲線である。図8に示す仮想線K11は、循環路30(第1底面16)を転動するボール4の中心同士を結んだ線である。点K12は、仮想線K10と仮想線K11との交点である。仮想線K13は、点K12を通る仮想線K10の接線である。
【0071】
また、実施形態1の効果は、比較例と対比して説明する。比較例のボールねじ装置は、図8に示すように、底面1016が軸方向から視て凹状となっている点で、実施形態1と相違する。また、図8に示す仮想線K1011は、循環路(底面1016)を転動するボール4の中心同士を結んだ線である。点K1012は、仮想線K10と仮想線K1011との交点である。仮想線K1013は、点K1012を通る仮想線K10の接線である。仮想線K1014は、点K1012を通る仮想線K1011の接線である。
【0072】
実施形態1によれば、軌道8から循環路30に進入したボール4は、タング40(図8で不図示。図5参照)に接触する。これにより、ボール4は、タング40よりも径方向内側に進路を変え、循環路30に進入する。ここで、軸方向から視て、軌道8(外周軌道面13)を移動するボール4の軌跡(仮想線K10を参照)は、円弧状である。ボール4がタング40に接触すると、ボール4の進路は、仮想線K10よりも径方向内側に折れ曲がる。このボール4の進路の折れ曲がり角度はθ11である。
【0073】
一方、比較例によれば、ボール4が軌道8(外周軌道面13)から循環路(底面1016)に進入する折れ曲がり角度は、θ1011となる。比較例の折れ曲がり角度θ1011は、本実施形態の折れ曲がり角度θ11よりも大きい。これは、比較例では、底面1016の交差方向の両端部1016bが径方向内側に窪んでいるからである。以上から、本実施形態によれば、折れ曲がり角度θ11が小さいため、軌道8と循環路30との間のボール4の移動が円滑となる。
【0074】
以上、実施形態1のボールねじ装置1は、内周面に内周軌道面6aが設けられたナット6と、ナット6を貫通し、外周面に外周軌道面13が設けられたねじ軸2と、外周軌道面13と内周軌道面6aとの間の軌道8に配置された複数のボール4と、ボール4を循環させる少なくとも1つ以上のコマ5と、を備えている。ねじ軸2の外周面には、径方向内側に窪み、コマ5を収容する凹部14が少なくとも1つ以上設けられている。凹部14は、径方向外側を向く第1底面16を有している。第1底面16の少なくとも一部は、平面となっている。コマ5は、第1底面16と当接する第2底面50と、第2底面50から径方向外側に窪み、内部空間が循環路30を構成する循環用溝面51と、循環路30を径方向内側に向かって開口させる底部開口53と、循環路30を周方向に開口させ、循環路30と軌道8とを接続する一対のコマ側開口31と、軌道8から循環路30に進入したボール4を径方向内側に案内する一対のタング40と、を有している。第1底面16のうち底部開口53を閉塞する部分は、循環路30を移動するボール4の転動面54となっている。
【0075】
実施形態1によれば、ボール4はタング40により確実に径方向内側に案内される。よって、ボール4が循環用溝面51と内周軌道面6aとの間に挟まれる、ということが回避される。よって、ボール4の転動が円滑となり、かつ循環用溝面51の溝肩の破損が回避される。また、平面である第1底面16を基準面として寸法管理ができ、凹部14の製造が容易となる。また、コマ5の循環路30が径方向内側に開口しているため、金型を用いてコマ5を製造し易い。
【0076】
また、実施形態1では、第1底面16の全てが平面となっている。
【0077】
実施形態1によれば、第1底面16を形成し易い。また、循環路30に進入する場合のボール4の進路の折れ曲がり角度が小さい。よって、軌道8と循環路30との間をボール4が円滑に移動する。
【0078】
また、実施形態1のボールねじ装置1は、軸方向から視て、第1底面16がねじ軸2の中心O1から径方向外側に延在する仮想線K1に対し交差する交差方向Yに延在している。凹部14は、コマ5の周囲を囲む環状の内周面15を有している。内周面15は、交差方向Yの両側からコマ5を挟む一対の側面(第2対向面18)を有している。
【0079】
実施形態1によれば、コマ5が交差方向Yに移動して凹部14からコマが脱落する、ということが回避される。
【0080】
次に他の実施形態のボールねじ装置を説明する。なお、以下の説明では、実施形態1からの変更点のみに絞って説明する。
【0081】
(実施形態2)
図9は、実施形態2のボールねじ装置の凹部を径方向から視た平面図である。図10は、実施形態2のボールねじ装置を軌道及び循環路に沿って切った断面図である。なお、図10の仮想線K16は、実施形態1の第1底面16である。仮想線K51は、実施形態1の循環用溝面51である。よって、仮想線K16と仮想線K51との間が実施形態1の循環路30となる。
【0082】
図9に示すように、実施形態2のボールねじ装置1Aのねじ軸2の凹部14は、第1底面16に代えて第1底面16Aとなっている点で、実施形態1のボールねじ装置1と異なる。第1底面16Aは、交差方向Yの中央部16aに位置する凹面201と、凹面201の交差方向Yの両側に位置する2つの平面202と、を有している。
【0083】
図10に示すように、凹面201は、軸方向から視て円弧状に形成され、交差方向の中央部16aに近づくにつれて径方向内側に窪んでいる。また、凹面201の中央部は、仮想線K16と接している。つまり、凹面201の交差方向の中央部16aは、中心O1(図10で不図示)からの距離が、実施形態1の第1底面16と同じである。
【0084】
また、実施形態2のコマ5Aは、循環用溝面51Aの長さ方向の中央部に径方向外側に突出する凸部251が設けられている点で、実施形態1のコマ5と相違する。よって、循環用溝面51Aは、第1底面16Aに対応した形状となっている。そのほか、平面202は、実施形態1の第1底面16と同じように、軸方向及び交差方向に延在している。
【0085】
以上、実施形態2によれば、循環路30Aは、直線状でなく、長さ方向の中央部が径方向内側に沈んだ経路となる。言い換えると、第1底面16Aの平面202は、実施形態1の第1底面16(仮想線K16参照)よりも径方向外側に配置される。このため、外周軌道面13の長さは、実施形態1よりもL(図10参照)分だけ長くなり、ボールねじ装置1Aの耐荷重が向上する。
【0086】
そのほか、第1底面16Aの交差方向の両端部には、平面202が配置されている。よって、軌道8から循環路30Aへの進入する場合の折れ曲がり角度は、実施形態1と同様に、第1底面16全体が凹面となっている場合よりも実施形態2の方が小さい。よって、実施形態2においても、軌道8と循環路30との間をボール4が円滑に移動する。
【0087】
なお、実施形態2の凹面201は、軸方向から視て円弧状となっているが、本開示は、三角状となっていてもよく、実施形態で示した例に限定されない。
【0088】
(実施形態3)
図11は、実施形態3のボールねじ装置のコマと凹部を軸方向及び径方向に切った断面図である。図11に示すように、実施形態3のボールねじ装置1Bのコマ5Bは、突出部42の外周側のリブ60が設けられている点で、実施形態1と相違する。このリブ60は、螺旋方向に延在し、タング40の外周面にも設けられている。実施形態3によれば、リブ60によりタング40の強度が向上し、タング40が破損し難い。
【0089】
以上、各実施形態を説明したが、本開示は以下で示すボールねじ装置であってもよい。
【0090】
(実施形態4)
図12は、実施形態4のボールねじ装置のコマと凹部を軸方向及び径方向に切った断面図である。図12に示すように、実施形態4のボールねじ装置1Cにおいて、第1底面16Cと中心O1との距離をhとする。中心O1からナット6のねじ山6bまでの距離をRとする。ボール4の直径をDwとする。ねじ山6bと溝面43(コマ5Cの外径面41のうちナット6のねじ山6bと対向する部分)との距離L1が0.2mm以上1.5mm以下であり、かつ、コマ5Cの肉厚L2(コマ5Cの外径面41のうちナット6のねじ山6bと対向する部分(溝面43)から循環用溝面51までの肉厚)が0.3mm以上1.0mm以下であり、かつ循環路30の径方向の隙間L3が0.05×Dw以上0.25×Dw以下の場合、距離hは、以下の式(2)を満たしていることが望ましい。
【0091】
【数2】
【0092】
式(2)を満たす距離hであれば、距離hの値が比較的大きい。つまり、第1底面16Cが径方向外側寄りに配置されて軌道8が長くなる。よって、ボールねじ装置1Cの耐荷重が向上する。
【0093】
以上、実施形態1から実施形態4を説明した。また、実施形態1から実施形態4の凹部14は、交差方向Yの両側からコマ5を挟む一対の第2対向面18(図3図4参照)を有しているが、本開示はこのような凹部に限定されない。次の実施形態5では、一対の第2対向面18を有していない凹部について説明する。
【0094】
図13は、実施形態5の凹部及びコマの斜視図である。実施形態5のボールねじ装置1Dでは、ねじ軸2の凹部14Dから交差方向Yにコマ5Dが露出している点で、実施形態1と相違している。以下、詳細を説明する。
【0095】
図14は、実施形態5のねじ軸の凹部の斜視図である。実施形態5のボールねじ装置1Dのねじ軸2の凹部14Dは、交差方向Yの両側に開口する一対の開口部150、150を有している点で、実施形態1の凹部14と相違する。つまり、実施形態5の凹部14Dは、交差方向Yの両側からコマ5を挟む一対の第2対向面18(図3図4参照)を有していない。このため、凹部14Dから交差方向Yにコマ5Dが露出している。なお、本開示は、一対の開口部150、150を2つの開口部と称することがある。
【0096】
また、実施形態5の凹部14Dは、実施形態1と同様に、第1底面16と、軸方向に互いに対向する一対の第1対向面17、17と、を有している。
【0097】
一対の開口部150、150のうち一方は、交差方向Yの一方に開口し、他方は交差方向Yの他方に開口している。実施形態5では、一対の開口部150、150が形成され、一対の第2対向面18を構成する壁部が切り欠かれている。このため、第1底面16及び一対の第1対向面17、17は、実施形態1よりも交差方向Yに拡大している。つまり、凹部14Dは、実施形態1の凹部14よりも交差方向Yに拡大している。また、実施形態5のコマ5Dも、実施形態1のコマ5よりも交差方向Yに拡大している(図13参照)。
【0098】
図15は、実施形態5の凹部を交差方向から視た図である。図15に示すように、交差方向Yから視ると、開口部150は、第1底面16及び一対の第1対向面17、17に沿った形状(四角形状)となっている。言い換えると、第1底面16又は一対の第1対向面17、17には、開口部150に突出する突起等が形成されていない。よって、コマ5は、第1底面16及び一対の第1対向面17、17に沿って交差方向Yに移動可能となっている。
【0099】
図16は、図15のXVI-XVI線矢視断面図である。図16に示すように、実施形態5によれば、凹部14Dの交差方向Yからコマ5Dを挿入することで(図16の矢印A1を参照)、凹部14Dにコマ5Dを取り付けることができる。また、実施形態5では、実施形態1の凹部14と同様に、コマ5Dを凹部14Dの径方向外側に配置し、コマ5を径方向内側に移動させることで(図16の矢印A2を参照)、凹部14Dにコマ5Dを取り付けることもできる。よって、コマ5Dを取り付ける方向の選択肢が増え、コマ5Dの取り付け性が向上する。
【0100】
また、ねじ軸側開口13bは、実施形態1では第2対向面18に形成されている(図3図4参照)。一方、図14に示すように、実施形態5のねじ軸側開口13bは、第1底面16に形成されている。このため、第1底面16の交差方向Yの両端部16bは、ねじ軸側開口13bにより切り欠かれている。
【0101】
図17は、実施形態5のコマを第2底面の方から視た図である。コマ5Dは、実施形態1と同様に、第1底面16に当接する第2底面50を有している。また、第2底面50の一部には、第1底面16と当接しない未接触面160が形成されている。
【0102】
図18は、実施形態5の凹部及びコマを軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には、図15のXVIII-XVIII線で凹部及びコマを切った場合の断面図である。図18に示すように、未接触面160は、ねじ軸2の回路外ねじ溝面213の径方向外側に配置され、回路外ねじ溝面213から離隔している。よって、実施形態5において、コマ5Dの一部は、凹部14Dでなく、回路外ねじ溝面213の径方向外側に配置されている。以下、コマ5Dのうち、回路外ねじ溝面213の径方向外側に配置された部分を凹部外肉部161と称する。この凹部外肉部161は、コマ5Dの交差方向Yの両端部にそれぞれ形成されている(図17参照)。
【0103】
また、上記した回路外ねじ溝面213とは、外周軌道面13を形成するため、ねじ軸2の外周面を螺旋方向に連続して切削したときに形成されたねじ溝面である。よって、回路外ねじ溝面213は、外周軌道面13と同じ螺旋方向に延在しているが、コマ5Dの循環路30と接続していない。つまり、回路外ねじ溝面213にボール4が配置されていない。
【0104】
上記した実施形態5のボールねじ装置1Dであっても、ボール4はタング40(図13図18参照)により確実に径方向内側に案内される。よって、実施形態1と同様に、ボール4が循環用溝面51と内周軌道面6aとの間に挟まれる、ということが回避される。なお、実施形態5の第1対向面17は、実施形態1で説明したように螺旋方向に沿って延在しているが、本開示は、第1対向面17が交差方向Yに延在してもよく、第1対向面17が延在している向き(交差方向Yに対する角度)に関し特に制限はない。
【0105】
次に、実施形態5のボールねじ装置1Dの一部を変形させた変形例1について説明する。
【0106】
(変形例1)
図19は、変形例1の凹部及びコマを交差方向から視た図である。図20は、変形例1のねじ軸の凹部の斜視図である。変形例1のボールねじ装置1Eにおいて、凹部14Dは、一対の第1対向面17、17に軸方向に窪む一対の溝220、220が形成されている点で、実施形態5と相違する。また、変形例1のコマ5Dは、一対の第1側面25、25に軸方向に突出する一対の突起230、230が形成されている点で、実施形態5と相違する。なお、本開示において、一対の第1対向面17、17を一対の対向面と称することがある。また、一対の第1側面25、25を一対の側面と称することがある。
【0107】
図20に示すように、溝220は、交差方向Yに延在している。また、溝220は、第1対向面17の交差方向Yの両端まで延在している。そして、溝220の交差方向Yの両端は、交差方向Yに開口している。図19に示すように、一対の第1対向面17、17の間の大きさはW1となっている。一対の溝220、220の間の大きさW2は、W1よりも大きい(W2>W1)。
【0108】
また、溝220の径方向の位置(第1底面16からの高さ)は、第1対向面17のうち最も径方向内側に配置されている。よって、溝220の径方向内側の端部220aが第1底面16に接続している。
【0109】
突起230は、交差方向Yから視た形状が溝220と同一形状に形成されている。また、突起230は、特に図示しないが、第1側面25に沿って交差方向Yに延在している。図19に示すように、突起230の径方向の位置は、第1側面25のうち最も径方向内側に配置されている。よって、突起230は、溝220と軸方向に対向し、かつ溝220に入り込んでいる。なお、実施形態の突起230は、交差方向Yに延在しているが、本開示は、交差方向Yに延在していなくてもよい。また、突起230は、交差方向Yに断続的に延在していてもよい。
【0110】
コマ5Eの軸方向の厚みに関し、一対の第1側面25、25の間の厚みW3は、第1対向面17、17の間の大きさW1以下となっている(W1≧W3)。よって、コマ5Eの一対の第1側面25、25は、第1対向面17、17に挟持されていない。
【0111】
一対の突起230、230の間の厚みW4は、一対の溝220、220の間の大きさW2よりも小さい(W2>W4)。よって、一対の突起230を一対の溝220、220に収容できる大きさとなっている。また、一対の突起230、230の間の厚みW4は、一対の第1対向面17、17の間の大きさW1よりも大きい(W4>W1)。
【0112】
変形例1のコマ5Dの取り付け方法は、まず、凹部14Dの交差方向Yにコマ5Dを配置する。次に、一対の突起230、230を一対の溝220、220に挿入し、コマ5Eを凹部14Dの方に押し込む。これにより、コマ5Dが凹部14Dに取り付けられる。
【0113】
変形例1によれば、コマ5Dに径方向外側への荷重が作用しても、一対の突起230、230が一対の溝220、220に引っ掛かる。このため、コマ5Dの径方向外側への移動が規制される。なお、変形例1では、一対の第1対向面17、17のそれぞれに溝220が形成されているが、本開示は、一対の第1対向面17、17のうち一方に溝220が形成されてもよい。このような場合、溝220に収容される突起230は、一対の第1側面25、25のうち一方に形成される。
【0114】
次に変形例1を変形させた変形例2について説明する。
【0115】
(変形例2)
図21は、変形例2の凹部及びコマを交差方向から視た図である。図21に示すように、変形例2のボールねじ装置1Fは、一対の溝220F、220Fと一対の突起230F、230Fの径方向の位置が変更されている点で、変形例1と相違する。
【0116】
詳細には、凹部14Dの一対の溝220F、220Fは、第1対向面17の径方向の中間部に配置されている。同様に、一対の突起230F、230Fも、第1側面25の径方向の中間部に配置されている。この変形例2であっても、変形例1と同様に、コマ5Dの径方向外側への移動が規制される。
【0117】
上記した変形例1と変形例2では、コマ5Dの径方向外側への移動を規制するため、一対の溝220、220と一対の突起230、230を有している例を挙げたが、本開示は、次の変形例3で示すものであってもよい。
【0118】
(変形例3)
図22は、変形例3の凹部及びコマを交差方向から視た図である。変形例3のボールねじ装置1Gにおいて、コマ5Dは、凹部14Dの一対の第1対向面17、17に挟持されている点で、実施形態5と相違する。詳細には、一対の第1対向面17、17の間の大きさW5となっている。一方で、コマ5Dの軸方向の厚み(一対の第1側面25、25の間の大きさ)W6は、凹部14Dへの取り付け前の状態で、一対の第1対向面17、17の間の大きさW5よりも大きい。つまり、コマ5Dは、一対の第1対向面17、17に対し締め代を有しており、圧入により凹部14Dに取り付けられている。以上、変形例3によれば、コマ5Dは、径方向外側への移動と交差方向Yへの移動が規制される。
【0119】
なお、上記した変形例1及び変形例2のコマ5Dは、交差方向Yに移動する可能性がある。このコマ5Dの交差方向Yへの移動を規制するため、変形例3の内容を適用してもよい。具体的に説明すると、一対の第1側面25、25の間の厚みW3を、第1対向面17、17の間の大きさW1よりも大きくしてもよい(図19参照)。これによれば、コマ5Dは、凹部14Dに対し、軸方向の締め代を有する。この結果、コマ5Dの交差方向Yへの移動が規制される。
【0120】
また、本開示は、変形例1及び変形例2のコマ5Dの交差方向Yへの移動を規制するため、次で説明する変形例4から変形例6であってもよい。なお、以下の説明で、軸方向と交差方向Yの両方に直交する方向を直交方向とする。また、直交方向のうち第1底面16から視てねじ軸2の中心O1が配置される方向を第1直交方向Z1(図23等を参照)とする。直交方向のうち第1底面16から視てねじ軸2の中心O1が配置される方向と反対方向を第2直交方向Z2(図23等を参照)とする。
【0121】
(変形例4)
図23は、変形例4の凹部及びコマを軸方向と直交する方向に切った断面図である。図23に示すように、変形例4のボールねじ装置1Hにおいて、コマ5Dが加締め部161Hを有している点で、変形例1と相違する。この加締め部161Hは、コマ5Dを凹部14Dに取り付けた後、コマ5Dの凹部外肉部161を径方向外側から加締める(図23の矢印A3参照)ことで形成されている。
【0122】
また、変形例4では、一対の凹部外肉部161(図23では1つの凹部外肉部161のみを図示。図17を参照)をそれぞれ加締めている。よって、コマ5Dの交差方向Yの両側には、一対の加締め部161H(図23では1つの加締め部161Hのみを図示)が形成されている。
【0123】
加締め部161Hは、第1底面16よりも第1直交方向Z1に突出している。このため、コマ5Dに交差方向Yの荷重が作用した場合、一対の加締め部161Hが回路外ねじ溝面213に引っ掛かる。よって、コマ5Hは、交差方向Yへの移動が規制される。
【0124】
なお、変形例4では、凹部外肉部161を加締めているが、本開示は、凹部外肉部161以外の部位を加締めて加締め部161Hを形成してもよい。また、変形例4の加締め部161Hは、回路外ねじ溝面213に引っ掛かるようになっているが、本開示は、ねじ軸2のねじ山13a(外周面)に引っ掛かるようにしてもよい。また、変形例4では、コマ5Dの一部を加締めて直交方向に変形させて(折り曲げて)いるが、本開示は、コマ5Dの一部を軸方向に変形させて加締め部161Hにしてもよい。
【0125】
また、変形例4では、凹部14Dにコマ5Dを取り付けた後、コマ5Dの交差方向Yの両端を加締めているが、本開示は、凹部14Dにコマ5Dを取り付ける前に、コマ5Dの交差方向Yの一端を加締めてもよい。
【0126】
また、変形例4では、コマ5Dの交差方向Yの両端に一対の加締め部161Hを形成しているが、本開示は、コマ5Dの交差方向Yの両端のうち一方にのみ加締め部161Hを形成してもよい。このようなコマ5Dにおいては、コマ5Dの製造時点で、コマ5Dの交差方向Yの一方に、第1底面16よりも第1直交方向Z1に突出する突起(不図示)を予め形成しておく必要がある。
【0127】
(変形例5)
図24は、変形例5のコマを第2底面の方から視た図である。図25は、変形例5のボールねじ装置を軸方向と直交する方向に切った断面図である。図24に示すように、変形例4のコマ5Dは、コマ5Dの交差方向Yの両端を円弧状に切り欠いた切り欠き面162が形成されている点で、変形例1と相違する。切り欠き面162は、一対の凹部外肉部161を切り欠いている。
【0128】
また、直交方向から視て、切り欠き面162は、ねじ軸側開口13bよりも大きい。このため、図25に示すように、第1底面16の一部(ねじ軸側開口13bの縁部)は、コマ5Iの第2底面50に覆われていない。
【0129】
また、変形例5の凹部14Dの第1底面16には、加締め部163が形成されている点で、変形例1と相違している。コマ5Dを凹部14Dに取り付けた後、第1底面16のねじ軸側開口13bの縁部を加締めることで加締め部163が形成されている。なお、特に図示しないが、加締め部163は、第1底面16の交差方向Yの両端部に形成されている。
【0130】
加締め部163は、第1底面16よりも第2直交方向Z2に突出している。このため、コマ5Dに交差方向Yの荷重が作用した場合、一対の加締め部163が切り欠き面162に引っ掛かる。よって、コマ5Dは、交差方向Yへの移動が規制される。
【0131】
なお、変形例5では、第1底面16を加締めているが、本開示は、ねじ軸2のねじ山13aを加締めてもよい。また、ねじ軸2のねじ山13aに加締め部163を形成する場合、コマ5Iに切り欠き面162を形成しなくてもよい。つまり、本開示は、コマの形状については特に問わない。また、変形例5では、ねじ軸2の一部を加締めて直交方向に変形させて(折り曲げて)いるが、本開示は、ねじ軸2の一部を軸方向に変形させて加締め部163にしてもよい。
【0132】
また、変形例5では、凹部14Dにコマ5Dを取り付けた後、コマ5Dの交差方向Yの両側に一対の加締め部163を形成しているが、本開示は、凹部14Dにコマ5Dを取り付ける前に、一対の加締め部163のうち一方の加締め部163を形成してもよい。
【0133】
また、変形例5では、コマ5Dの交差方向Yの両側に一対の加締め部163を形成しているが、本開示は、コマ5Dの交差方向Yの両側のうち一方にのみ加締め部163を形成してもよい。このような凹部14Dにおいては、ねじ軸2の製造時点で、コマ5Dの1差方向Yの一方に、第1底面16よりも第2直交方向Z2に突出する突起(不図示)を予め形成しておく必要がある。
【0134】
(変形例6)
図26は、変形例6の凹部の斜視図である。図27は、変形例6のコマを第2底面の方から視た図である。図28は、図26のXXVIII-XXVIII線矢視断面図である。図26に示すように、変形例6のボールねじ装置1Jにおいて、ねじ軸2の凹部14Dの第1底面16に2つの穴240が形成されている点で、変形例1と相違する。また、図27に示すように、変形例6のコマ5Dにおいて、第2底面50に2つの突起241が形成されている点で、変形例1と相違する。
【0135】
図28に示すように、突起241は、穴240に入り込んでいる。このため、コマ5Dに交差方向Yの荷重が作用した場合、突起241が穴240に引っ掛かる。よって、コマ5Dは交差方向Yへの移動が規制される。
【0136】
なお、コマ5Dの取り付け方法は、凹部14Dの交差方向Yにコマ5Dを配置する。次に、一対の突起230、230を一対の溝220、220に挿入し、コマ5Dを凹部14Dの方に押し込む。このとき、突起241が第1底面16に押し付けられて変形する。そして、突起241が穴240に直交方向に重なると、突起241が元の形状に復帰し、穴240に入り込む。これにより、コマ5Dが凹部14Dに取り付けられる。なお、本開示のコマは、上記したが金属製又は樹脂製を問わないが、本変形例では、弾性変形し易い樹脂製のコマの方が望ましい。
【0137】
また、2つの穴240と2つの突起241は、コマ5Dの中心C(図4参照)を点対称に配置されている。このため、凹部14Dに対しコマ5Dを180°回転させた状態で取り付けても、穴240に突起241が入り込む。よって、コマ5Dの取り付け性がよい。
【0138】
なお、変形例6では、穴240と突起241の数が2つとなっているが、本開示は、穴240と突起241の数が1つ以上であればよく、変形例で示した数に限定されない。また、穴240の形状に関し、本開示は特に限定はなく、例えば、半球、円錐台、角錐台、円錐、及び角錐であってもよい。
【0139】
以上、変形例4から変形例6について説明したが、本開示は、変形例4から変形例6の内容を変形例3に適用してもよい。これによれば、コマの交差方向Yへの移動がより確実に規制されるようになる。
【0140】
以上、各実施形態及び各変形例について説明したが、本開示の循環用溝面51は、断面形状が四角形状を成す角溝でもよい。又は循環用溝面51の断面形状がゴシックアーク形状でもよく、実施形態で示した例に限定されない。また、実施形態1から実施形態4のボールねじにおいて、コマが凹部に締め代を有するようにし、圧入によりコマを凹部に取り付けるようにしてもよい。また、実施形態5と各変形例の凹部14Bは、2つの開口部150、150を有しているが、本開示は、開口部150が1つであってもよい。つまり、凹部は、交差方向Yの一方にのみ開口していてもよい。
【0141】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)
内周面に内周軌道面が設けられたナットと、
前記ナットを貫通し、外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸と、
前記外周軌道面と前記内周軌道面との間の軌道に配置された複数のボールと、
前記ボールを循環させる少なくとも1つ以上のコマと、
を備え、
前記ねじ軸の外周面には、径方向内側に窪み、前記コマを収容する凹部が少なくとも1つ以上設けられ、
前記凹部は、径方向外側を向く第1底面を有し、
前記第1底面の少なくとも一部は、平面となっており、
前記コマは、
前記第1底面と当接する第2底面と、
前記第2底面から径方向外側に窪み、内部空間が循環路を構成する循環用溝面と、
前記循環路を径方向内側に向かって開口させる底部開口と、
前記循環路を周方向に開口させ、前記循環路と前記軌道とを接続する一対のコマ側開口と、
前記軌道から前記循環路に進入した前記ボールを径方向内側に案内する一対のタングと、
を有し、
前記第1底面のうち前記底部開口を閉塞する部分は、前記循環路を移動する前記ボールの転動面となっているボールねじ装置。
(2)
前記第1底面の全てが平面となっている
(1)に記載のボールねじ装置。
(3)
前記ねじ軸と平行な軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在し、
前記第1底面の前記交差方向の中央部に、径方向内側に窪む凹面が設けられ、
前記凹面の交差方向の両側に、平面が設けられている
(1)に記載のボールねじ装置。
(4)
前記タングには、径方向外側に突出するリブが設けられている
(1)から(3)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
(5)
前記ねじ軸と平行な軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在し、
前記凹部は、前記コマの周囲を囲む環状の内周面を有し、
前記内周面は、前記交差方向の両側から前記コマを挟む一対の側面を有している
(1)から(4)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
(6)
前記ねじ軸の中心から前記ナットのねじ山までの距離とRとし、
前記ボールの直径をDwとし、
前記コマの外径面のうち前記ナットのねじ山と対向する部分と、前記ナットの前記ねじ山と、の距離が0.2mm以上1.5mm以下であり、かつ、
前記コマの外径面のうち前記ナットのねじ山と対向する部分から前記循環用溝面までの肉厚が0.3mm以上1.0mm以下であり、かつ、
前記循環路の径方向の隙間が0.05×Dw以上0.25×Dw以下であり、
前記第1底面と前記ねじ軸の中心との距離hが以下の式(3)を満たす
(1)から(5)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
【0142】
【数3】
【0143】
(7)
前記ねじ軸と平行な軸方向から視て、前記第1底面は、前記ねじ軸の中心から径方向外側に延在する仮想線に対し交差する交差方向に延在し、
前記凹部は、前記交差方向に開口する開口部を少なくとも1つ有し、
前記コマは、前記第1底面に沿って前記交差方向に移動可能となっている
(1)から(4)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
(8)
前記凹部は、前記開口部を2つ有し、
2つの前記開口部は、
前記交差方向の一方に開口する前記開口部と、
前記交差方向の他方に開口する前記開口部と、である
(7)に記載のボールねじ装置。
(9)
前記凹部は、前記軸方向に対向する一対の対向面を有し、
前記コマは、前記軸方向を向き、一対の前記対向面と対向する一対の側面を有し、
一対の前記対向面のうち少なくとも一方には、前記軸方向に窪み、かつ前記交差方向に延在する溝が形成され、
一対の前記側面のうち少なくとも一方には、前記軸方向に突出し、前記溝に収容する突起が形成されている
(7)又は(8)に記載のボールねじ装置。
(10)
前記溝は、一対の前記対向面の両方に形成され、
前記突起は、一対の前記側面の両方に形成されている
(9)に記載のボールねじ装置。
(11)
前記凹部は、前記軸方向に対向する一対の対向面を有し、
前記コマは、一対の前記対向面に対し締め代を有し、一対の前記対向面に挟持されている
(7)から(10)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
(12)
前記軸方向と前記交差方向の両方に直交する方向を直交方向とし、
前記直交方向のうち、前記第1底面から視て前記ねじ軸の中心が配置される方向を第1直交方向とし、
前記コマの前記交差方向の両端部のうち少なくとも一方には、前記第1底面よりも前記第1直交方向に突出する加締め部が形成されている
(7)から(11)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
(13)
前記軸方向と前記交差方向の両方に直交する方向を直交方向とし、
前記直交方向のうち、前記第1底面から視て前記ねじ軸の中心が配置される方向と反対方向を第2直交方向とし、
前記ねじ軸には、前記コマの前記交差方向の両側のうち少なくとも一方に配置され、前記第1底面よりも前記第2直交方向に突出する加締め部が形成されている
(7)から(11)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
(14)
前記第1底面には、1つ以上の穴が形成され、
前記第2底面には、前記穴に入り込む突起が形成されている
(7)から(11)のいずれか1つに記載のボールねじ装置。
【符号の説明】
【0144】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1J ボールねじ装置
2 ねじ軸
4 ボール
5、5A、5B、5D コマ
6 ナット
6a 内周軌道面
8 軌道
13 外周軌道面
14、14D 凹部
15 内周面
16、16A 第1底面
17 第1対向面
18 第2対向面
13a ねじ山
13b ねじ軸側開口
13c 端面
13d 部分端面
25 第1側面
26 第2側面
30、30A 循環路
31 コマ側開口
40 タング
41 外径面
42 突出部
43 溝面
50 第2底面
51 循環用溝面
53 底部開口
54 転動面
60 リブ
100 ブレーキキャリパー
104 電動アクチュエータ
120 ハウジング
150 開口部
160 未接触面
161 凹部外肉部
161H、163 加締め部
162 切り欠き面
201 凹面
202 平面
213 回路外ねじ溝面
220、220F 溝
230、230F 突起
240 穴
241 突起
251 凸部
【要約】
本開示のボールねじ装置は、ナット、ねじ軸、複数のボール、及び1つ以上のコマと、を備えている。ねじ軸の外周面には、径方向内側に窪み、コマを収容する凹部が少なくとも1つ以上設けられている。凹部は、径方向外側を向く第1底面を有している。第1底面の少なくとも一部は、平面となっている。コマは、第1底面と当接する第2底面と、第2底面から径方向外側に窪み、内部空間が循環路を構成する循環用溝面と、循環路を径方向内側に向かって開口させる底部開口と、循環路を周方向に開口させ、循環路と軌道とを接続する一対のコマ側開口と、軌道から循環路に進入したボールを径方向内側に案内する一対のタングと、を有している。第1底面のうち底部開口を閉塞する部分は、循環路を移動するボールの転動面となっている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28