(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】導電体ユニット、インバータ装置、モータユニットおよび車両
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241210BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241210BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020154945
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】ニデックエレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
(72)【発明者】
【氏名】後藤 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】小西 隆義
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521501(JP,A)
【文献】特開2016-195078(JP,A)
【文献】特開平11-353951(JP,A)
【文献】特開2015-198042(JP,A)
【文献】特開2013-115072(JP,A)
【文献】特開2005-151474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H02M 7/42-7/98
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源の電力を電力変換装置へ入力する導電体ユニットであって、
前記電力変換装置は金属板から構成される筐体を備え、
前記導電体ユニットは、中心電線と、シールド部材と、被覆部材と、を有し、
前記シールド部材は、前記中心電線の長さ方向の少なくとも一部の範囲において、前記中心電線の周囲を覆い、
前記被覆部材は、前記シールド部材の長さ方向の少なくとも一部の範囲において、前記シールド部材の周囲を覆
うと共に、前記シールド部材の露出部において前記被覆部材は前記シールド部材を覆わず、
前記導電体ユニットは前記露出部において、前記シールド部材が前記筐体に接するように配置され、
前記露出部において前記シールド部材は押圧され径方向断面の形状を変形された状態で固定され、かつ、該露出部において前記中心電線は延伸方向を転換する、
導電体ユニット。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記シールド部材の長さ方向の一方側を覆う第1の被覆部材と、他方側を覆う第2の被覆部
材から構成される請求項1に記載の導電体ユニット。
【請求項3】
前記シールド部材と前記筐体を電気的に接続するハーネスをさらに備える請求項1または2に記載の導電体ユニット。
【請求項4】
前記ハーネスの長さ方向の一部は、前記中心電線の径方向において、前記被覆部材と前記シールド部材の間に配置される請求項3に記載の導電体ユニット。
【請求項5】
前記筐体は、底壁部と、底壁部と連結し底壁部の周囲に設けられた周壁部を備え、
前記シールド部材の少なくとも一部は、前記筐体に収容され、
前記電力変換装置はコンデンサを備え、
前記底壁部を上から見た時、前記周壁部から前記コンデンサまでの距離は、前記シールド部材で覆われた前記中心電線の径方向長さよりも短い箇所を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の導電体ユニット。
【請求項6】
前記筐体は、前記周壁部の端辺がなす開口部を備え、
前記開口部を上から覆うカバー部を有し、
前記周壁部は前記カバー部と連結する連結部を有し、
前記筐体を上から見たとき、前記連結部から前記コンデンサまでの距離は、前記シールド部材で覆われた前記中心電線の径方向長さよりも短い箇所を有する
請求項5に記載の導電体ユニット。
【請求項7】
前記導電体ユニットは、前記中心電線の両端にそれぞれ第1コネクタと第2コネクタを有し、
前記筐体は前記周壁部を厚さ方向に貫通する接続孔を有し、
前記電力変換装置は制御回路基板を有し、
前記第1コネクタは前記接続孔に挿通し、
前記第2コネクタは前記制御回路基板上に配置され、
前記接続孔は、前記開口部の上から見て前記制御回路基板より下側に設けられる
請求項6に記載の導電体ユニット。
【請求項8】
前記筐体は、底壁部と、底壁部と連結し底壁部の周囲に設けられた周壁部を備え、
前記シールド部材の少なくとも一部は、前記筐体に収容され、
前記電力変換装置はコンデンサを備え、
前記底壁部を上から見た時、前記周壁部から前記コンデンサまでの距離は、前記シールド部材で覆われた前記中心電線の径方向長さよりも短い箇所を有し、
前記筐体は、前記周壁部の端辺がなす開口部を備え、
前記開口部を上から覆うカバー部を有し、
前記周壁部は前記カバー部と連結する連結部を有し、
前記筐体を上から見たとき、前記連結部から前記コンデンサまでの距離は、前記シールド部材で覆われた前記中心電線の径方向長さよりも短い箇所を有し、
前記導電体ユニットは、前記中心電線の両端にそれぞれ第1コネクタと第2コネクタを有し、
前記筐体は前記周壁部を厚さ方向に貫通する接続孔を有し、
前記電力変換装置は制御回路基板を有し、
前記第1コネクタは前記接続孔に挿通し、
前記第2コネクタは前記制御回路基板上に配置され、
前記接続孔は、前記開口部の上から見て前記制御回路基板より下側に設けられ、
前記第1の被覆部材は前記第2の被覆部材よりも前記第1コネクタに近い位置に配置され、
前記第1コネクタから前記第1の被覆部材までの間の前記中心電線は前記周壁部の厚さ方向に延伸し、
前記第1の被覆部材に覆われた前記中心電線は前記筐体の高さ方向に延伸し、
前記被覆部材に覆われていない前記シールド部材において曲げられ、
前記導電体ユニットの延伸方向を、前記制御回路基板の面内方向へ変える請求項
2に記載の導電体ユニット。
【請求項9】
磁性材料を含む筒状のコア部をさらに備え、
前記筒状のコア部の貫通孔を前記中心電線が通過するように構成されている請求項1から8のいずれか一項に記載の導電体ユニット。
【請求項10】
磁性材料を含む筒状のコア部をさらに備え、
前記筒状のコア部の貫通孔を前記中心電線が通過するように構成され、
前記コア部の外周面に径方向に凹んだ溝部を備え、
前記溝部は前記筒状のコア部の軸方向に延びる帯状をなし、
前記ハーネスは前記溝部に収まり、
前記筒状のコア部の貫通孔内を前記シールド部材に覆われた前記中心電線が貫通し、
前記被覆部材が前記コア部の周囲を覆うように構成されている請求項
3に記載の導電体ユニット。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか一項に記載の導電体ユニットを備えたインバータ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の
インバータ装置を備えたモータユニット。
【請求項13】
請求項12に記載の前記モータユニットを搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電体ユニット、インバータ装置、モータユニットおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の電気自動車化(EV化)に伴い、インバータ筐体の小型化が望まれている。また、EVでは大電流を駆動用モータに入力するため、インバータにおける電磁界ノイズも増大する。そのため、ノイズ対策部材の適用が必要になる。
EMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁両立性)対策として、例えば、特許文献1にはハーネス側コネクタシェルが装置側コネクタシェルにロック係止されて導通接続されることによって、筐体のグランドへの接地を実現している構造が開示されている。
特許文献2にはモータ側の機器とインバータ側の機器を電気的に接続するシールド電線と、モータ側の機器とインバータ側の機器のそれぞれに抵抗体を設け、抵抗体を介してモータ側もしくはインバータ側のアースへの接地を実現している構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-35383号公報
【文献】特開2012-104352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータ筐体の小型化に伴い、シールド電線の配置場所が制限されている場合がある。このような場合でもシールド電線の接地を実現することが求められている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、シールド電線の配置場所が制限されている場合でもシールドを接地可能な導電体ユニット、インバータ装置、モータユニットおよび車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る導電体ユニットは、外部電源の電力を電力変換装置へ入力する導電体ユニットであって、電力変換装置は金属板から構成される筐体を備え、導電体ユニットは、中心電線と、シールド部材と、被覆部材と、を有し、シールド部材は、中心電線の長さ方向の少なくとも一部の範囲において、中心電線の周囲を覆い、被覆部材は、シールド部材の長さ方向の少なくとも一部の範囲において、シールド部材の周囲を覆うと共に、シールド部材の露出部において被覆部材はシールド部材を覆わず、前記導電体ユニットは前記露出部において、前記シールド部材が筐体に接するように配置され、露出部においてシールド部材は押圧され径方向断面の形状を変形された状態で固定され、かつ、露出部において前記中心電線は延伸方向を転換する、導電体ユニット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シールド電線の配置場所が制限されている場合でもシールドを接地可能な導電体ユニット、インバータ装置、モータユニットおよび車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のインバータ装置を搭載した車両の概略構成図である。
【
図3】第一実施形態に係る導電体ユニットの模式図である。
【
図4】本発明に係る導電体ユニットのインバータ筐体における配置の説明図である。
【
図5】本発明に係る筐体接地部材の配置の説明図である。
【
図6】第二実施形態に係る導電体ユニットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る導電体ユニット20、インバータ制御装置10および車両1について説明する。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。また、
図3と
図6では導体ユニット20における中心電線21、シールド部材23、被覆部材24の位置関係がわかるように、被覆部材24を透過させて記載している。
【0010】
<第一実施形態>
<モータユニット>
図1において、モータユニット2は、車両1に搭載される。モータユニット2は、電動モータ15とインバータ制御装置10と、を備える。電動モータ15は、例えば、三相交流モータであり、車両1の駆動力源である。電動モータ15の回転軸は、減速機6とディファレンシャルギア7とに連結されている。これにより、電動モータ15の駆動力(トルク)は、これらの減速機6、ディファレンシャルギア7、ドライブシャフト(駆動軸)8を介して一対の車輪5a、5bに伝達される。
【0011】
<インバータ制御装置>
インバータ制御装置10は、電動モータ15に駆動電力を供給するパワーモジュールユニット13と、パワーモジュールユニット13に駆動信号を出力するパワーモジュール制御回路基板(第1の回路基板)12と、低電圧バッテリLVからの電力を使用してパワーモジュール制回路基板12に制御信号を出力するインバータ制御回路基板(第2の回路基板)11と、高電圧バッテリHVからの電圧を平滑するコンデンサユニット(電子部品ユニット)14とを備えている。インバータ制御装置10は、車両1全体の制御を司る制御部3からの制御信号により制御され、電動モータ15を駆動する。
【0012】
パワーモジュールユニット13は、パワースイッチング素子をU相、V相、W相毎に2個(上アームのパワースイッチング素子と下アームのパワースイッチング素子)、計6個
のパワースイッチング素子を接続してなるブリッジ回路(電力変換回路)を有している。
なお、パワースイッチング素子としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラジャンクショントランジスタ(英: Bipolar junction transistor)など、炭化ケイ素SiCや窒化ガリウムGaNなどの化合物を使用した等が挙げられる。
【0013】
パワーモジュールユニット13は、低電圧バッテリLVの電力を使用してパワーモジュール制御回路基板12にて生成された駆動信号(PWM制御信号)により、パワースイッチング素子のオン/オフを切り替える。これにより、パワーモジュールユニット13は、高電圧バッテリ(電源)HVからコンデンサユニット14を介して供給された直流電力を交流電力(三相交流電力)に変換して、電動モータ15に供給し、電動モータ15を駆動する。
【0014】
高電圧バッテリHVは、インバータ制御装置10の外部に設けられ、車両1に設けられる。高電圧バッテリHVは、車両1の動力源である電気エネルギーの供給元であり、例えば、複数の二次電池で構成されている100V以上のバッテリである。
インバータ制御装置10において、高電圧バッテリHVとパワーモジュールユニット13の接続部にコンデンサユニット14が配置されている。コンデンサユニット14は、高電位ライン(正極電位B+)と低電位ライン(負極電位B-(GND))との間に接続されている。このコンデンサユニット14は、高電圧バッテリHVからの入力電圧を平滑する機能を有し、大容量の平滑コンデンサ(フィルムコンデンサ)を備えている。
【0015】
図2において、インバータ筐体100は、外部に別部材の低電圧バッテリLVを備え、
ンバータ筐体100は、例えば、アルミ等の金属からなり、ダイカスト加工によって成型される。
低電圧バッテリLVは、インバータ制御回路基板11への電気エネルギーの供給源であり、例えば、複数の二次電池で構成されている30V以下のバッテリである。
インバータ筐体100は、底壁101(不図示)の周囲に設けられた周壁102と、周壁102の端辺がなす開口部103と、を備える。底壁103が配置される面を、X軸方向とX軸方向に垂直なY軸方向に延びる面としたとき、周壁102はXY平面に垂直なZ軸方向に沿って延伸する。開口部103は、周壁102の端辺と周壁102の端辺によって区画された領域を含む。
インバータ筐体の周壁102は、連結部105を有し、連結部105は開口部103をカバーするカバー部(不図示)と開口部103を連結する際に棒状部材を差し込んで固定する窪みである。連結部105は、例えばZ軸方向に凹む窪みである。
カバー部は、例えば、
図1に示したモータ15と減速機6とディファレンシャルギア7とドライブシャフト(駆動軸)8が収容され、開口した筐体のことであり、インバータ筐体100側の開口部103とモータユニット2側の開口部とを連結させることでモータユニット2の筐体が組み立てられる。
【0016】
インバータ筐体100内には、インバータ制御回路基板11と導電体ユニット20とコンデンサユニット14が設けられる。コンデンサユニット14とインバータ制御回路基板11はZ軸方向に重なって配置される。インバータ筐体100の周壁102には周壁102をX軸方向に貫通した接続孔104が設けられる。接続孔104にバッテリ側コネクタ20Aが挿通される。制御回路基板11上の雄または雌コネクタに基板側コネクタ20Bを挿して固定する。
【0017】
<導電体ユニット>
図3に示すように、導電体ユニット20は、長手方向の一端側にバッテリ側コネクタ20A、他端側に基板側コネクタ20Bを有する。低電圧バッテリLVから供給される電力は、導電体ユニット20を介してインバータ制御回路基板11に伝わる。さらに、
図2に示すように、導電体ユニット20は、曲げて配置される。これにより、導電体ユニット20は、インバータ筐体100内においてコンデンサユニット14をはじめとする電子部品を避けるように配置される。
【0018】
図3に示すように、導電体ユニット20は、バッテリ側コネクタ20Aと、基板側コネクタ20Bと、中心電線21と、接地部材22と、シールド部材23と、被覆部材24と、で構成される。
【0019】
中心電線21は、低電圧バッテリLVから供給される電力をインバータ制御回路基板11へ伝える電線であり、例えば、被膜で覆われた導電体を含むハーネスである。中心電線21は、1本のハーネスでも、複数本のハーネスの束でも良い。
【0020】
シールド部材23は、中心電線21の周囲の少なくとも一部を覆う導電性を有する部材であり、例えば、スズでめっきされた銅線、PETモノフィラメントを編み込んで形成される薄いシート状の金属部材等が挙げられる。
【0021】
被覆部材24は、シールド部材23の周囲の少なくとも一部を覆う絶縁性部材である。シールド部材23は、中心電線21を覆うため、被覆部材24は、シールド部材23を間に挟んで中心導線21を間接的に覆うように配置されているとも換言できる。
被覆部材24は、絶縁性のある部材であり、例えば、帯状のポリ塩化ビニル製のテープを、シールド部材23に対して数回巻きつけて筒状に形成された部材や、ポリウレタン、ケイ素化合物、フッ化物などを含んだ弾性のあるチューブ等が挙げられる。
被覆部材24は、シールド部材23の外表面から中心電線21に向かってシールド部材23に圧力をかけた状態で、シールド部材23を覆う。したがって、シールド部材23の密度は、被覆部材24に覆われることにより、被覆部材24に覆われていない場合よりも高まるように構成されている。
被覆部材24は、第1の被覆部材241と第2の被覆部材242とで構成され、バッテリ側コネクタ20Aに近い方から第1の被覆部材241と第2の被覆部材242がそれぞれ間をあけて配置されている。第1被覆部材241と第2の被覆部材242の間にあって、被覆部材24により周囲を覆われていない範囲のシールド部材23(すなわち、シールド部材23が露出している範囲)のことを露出部25として説明する。
【0022】
<露出部>
露出部25は、中心電線21とその周りを覆うシールド部材23によって構成されているのに対し、露出部25とその長さ方向において隣接する箇所は、中心電線21とシールド部材23の周りを被覆部材24が覆って構成されている。これより露出部25は、露出部25と中心電線21の長さ方向に隣接する箇所と比較して、被覆部材24が存在しない分、曲げやすく、径方向断面の形状を変形させやすい。すなわち柔軟性が高い。
後述のとおり、導電体ユニット20は、柔軟性の高い露出部25を曲げて、柔軟性の低い被覆部材24で覆われた箇所を、露出部25より曲げることなく、インバータ筐体100内に配置される。
【0023】
<露出部と筐体100の位置関係>
図4aと
図4bに示すように、筐体100は、導電体ユニット20とインバータ制御回路基板11とコンデンサユニット14を収容する。
図4aと
図4bにおいて、底壁101の面内方向一方向をX方向、X方向と直交する方向をY方向とし、底壁101に垂直な方向をZ方向とする。開口部103は、底壁101のZ方向にあり、制御回路基板11は、コンデンサユニット14よりもZ方向上側に重なって配置されている。
【0024】
図4aに示すように、まず中心電線21は、接続孔104に挿通されたバッテリ側コネクタ20AからX軸方向に沿って延伸する。次に中心電線21は、第1の被覆部材241の手前で延伸方向をZ軸方向に転換する。そして第1の被覆部材241に覆われた中心電線21はZ方向に沿って延伸する。次に柔軟性の高い露出部25において延伸方向をX方向に転換する。そして、第2の被覆部材242に覆われた中心電線21はX方向に沿って延伸する。基板側コネクタ20Bはインバータ制御回路基板11に接続される。すなわち、導電体ユニット20は2回延伸方向を転換し、そのうち1回は露出部25において方向転換する。
【0025】
図4bに示すように、筐体100は開口部103と連結部105を有する。開口部103は、周壁102のZ方向端部によって形成され、カバー(不図示)で覆われる。連結部105は、開口部103とカバーを連結するための棒が挿通される窪みである。露出部25は、連結部105とコンデンサユニット14の間を通るように配置される。さらに、Z方向上から見て、コンデンサユニット14と連結部105の距離は、露出部25の直径よりも小さく、露出部25はコンデンサユニット14と連結部105に押圧され、露出部25の径方向断面の形状を変形された状態で固定される。
【0026】
<ハーネス>
図3に示す接地部材22は、導電体ユニット20と、
図2に示すインバータ筐体100を電気的に接続するよう配置される。接地部材22は、接地線221と、シールド接続部222と、筐体接地部223と、を備える。接地線221は、一端にシールド接続部222と、他端に筐体接地部223と、を備える。例えば、被膜に覆われた導電体を含むハーネス等が挙げられる。シールド接地部材222と筐体接地部223は、どちらも導電性のある金属製の部材であり、接地線221に電気的に接続されている。接地線221は柔軟性を持ち、中心電線21よりも細い。
【0027】
接地線221は、
図3に示すように、延伸部22Aと、屈曲部22Bと、延伸部22Cに分けられる。言い換えると、延伸部22Aと屈曲部22Bと延伸部22Cは互いに電気的に接続されている。
延伸部22Aは、シールド接続部222と電気的に接続され、延伸部22Cと筐体接地部223は電気的に接続されている。
【0028】
延伸部22Aは、導電体ユニット20の延伸方向に沿ってシールド部材23の外表面に配置され、屈曲部22Bを介して延伸方向を変える。延伸部22Cは、
図2に示すインバータ筐体100の周壁102または
図4aに示す底壁101に向かって延伸する。シールド接続部222と延伸部22Aの一部は、中心電線21の径方向においてシールド部材23と被覆部材24の間に挟まれている。
【0029】
シールド接続部222は、シールド部材23と電気的に接続される。筐体接地部223は、インバータ筐体100の周壁102または底壁101(
図3では不図示)に電気的に接続される。
図3に示すように、筐体接地部223は、円環状の部材である。さらに
図5に示すように、円環状の筐体接地部223にボルト224等の固定用部材を通し、インバータ筐体100に対して固定と通電を行う。ボルト224を導電性のある部材とし、ボルト224を介して筐体接地部223とインバータ筐体100を通電する。上述の構成をまとめると、シールド部材23に流れるノイズは接地部材22を介してインバータ筐体100に伝わるように構成されている。
【0030】
<作用効果>
以上のように、本実施形態の導電体ユニット20は、車両1に搭載用の導電体ユニット20である。導電体ユニット20は、外表面がシールド部材23で構成された露出部25と、外表面が被覆部材24で構成された箇所を少なくとも有し、露出部25はインバータ筐体100に接している。
かかる構成によれば、導電体ユニット20の配置場所が制限された場合においても、露出部25を曲げる角度や、露出部25の径方向長さ、中心電線21の長さ方向における露出部25の長さを調整して配置することが可能になる。さらに、すなわち、インバータの小型化とノイズ対策の両方に寄与する。
【0031】
本実施形態において、露出部25の径方向長さよりも狭い空間であって、空間の一部をインバータ筐体100の周壁102または底壁101が構成している空間に露出部25が配置されている。
かかる構成によれば、露出部25を押圧しながら確実にインバータ筐体の周壁102または103に接させることができ、通電可能となる。さらに、露出部25のシールド部材23を押圧することから、押圧されない箇所よりもシールド部材23の金属密度は向上し、導電体ユニット20のノイズ遮蔽効果が高まる。
【0032】
本実施形態において、導電体ユニット20の一部の外表面は被覆部材24で構成され、被覆部材24はシールド部材23で覆われた中心電線21の外表面を覆う。被覆部材24は中心電線21の径方向外側からシールド部材23に圧力をかけている。換言すれば、被覆部材24はシールド部材23を締め付けている。
かかる構成によれば、シールド部材23が締め付けられるので、被覆部材24がシールド部材23に圧力をかけない場合よりもシールド部材23の金属密度は向上し、導電体ユニット20のノイズ遮蔽効果が高まる。
【0033】
本実施形態において、接地部材22のシールド接続部222と延伸部22Aの長さ方向の一部は、被覆部材24に覆われている。
かかる構成によれば、シールド接続部222が被覆部材24に覆われていない場合よりも、シールド接続部222とシールド部材23を強固に接続し、車両1の振動等により接続が外れてしまう可能性を下げることができる。さらに、延伸部22Aの少なくとも一部が被覆部材24に覆われていることで延伸部22Aとシールド部材23は一体となり、導電体ユニット20から接地部材22が簡単に離れるような遊びの箇所を減らすことができる。よって、延伸部22Aを傷つけること無く、導電体ユニット20のインバータ筐体100への組立が可能になる。
【0034】
本実施形態において、導電体ユニット20は、接地部材22を有し、接地部材22は、筐体接地部223をインバータ筐体100の周壁102または底壁101に接することでシールド部材23とインバータ筐体100を電気的に接続するように構成される。
かかる構成によれば、導電体ユニット20は、露出部25での接地と筐体接地部223での接地によって2点接地を実現できる。
【0035】
本実施形態において、接地部材22は屈曲部22Bに接続された延伸部22Cの先に円環上の筐体接地部223を有する。よって、接地部材22の延伸部22Aは、中心電線21の延伸方向に沿って配置され、屈曲部22Bを起点に接地線221の延伸方向を変え、インバータ筐体100内のスペースが空いている方向に延伸部22Cを伸ばし、筐体接地部223を介してインバータ筐体100の周壁102もしくは底壁101に接地させる。
かかる構成によれば、導電体ユニット20の配置空間が制限される場合においても、接地線221は柔軟性を持ち、空いているスペースに柔軟に配置しやすい。
【0036】
本実施形態において、導電体ユニット20における露出部25と、外表面が被覆部材24で構成される箇所の違いは、表面に被覆部材24があるか無いかである。すなわち、外表面が被覆部材で構成される箇所の被覆部材24を除けば、露出部25になる。
かかる構成によれば、被覆部材24を除くだけで露出部25を形成し、被覆部材24が無くなったことで被覆部24が存在している状態よりも柔軟性が高まり、インバータ筐体100への接地を可能とした。すなわち、別部材を追加して接地を実現する場合よりも、低コスト化又は組立工程の削減等に繋がる。
【0037】
図2において、基板側コネクタ20Bはインバータ制御回路基板11上において接続孔104に近い位置に配置されている。すなわち、導電体ユニット20は基板側コネクタ20Bが接続孔104に遠い位置に配置されている場合よりも、導電体ユニット20を構成する中心電線21が短く構成されている。
かかる構成によれば、中心電線21が長い場合よりも、導電体ユニット20は周囲のノイズの影響を受けにくくすることが可能である。
【0038】
<第二実施形態>
上述した第一実施形態では、被覆部材24がシールド部材23の一部を覆い、被覆部材24に覆われない露出部25がインバータ筐体100に接するように配置され、被覆部材24とシールド部材23の間に接地線221の一部が挟まれる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、導電体ユニット20はシールド部材23と被覆部材24の間にコア部27を有していてもよい。第二実施形態において、上記第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
<コア部>
図6に示すように、導電体ユニット20はコア部27を有する。コア部27は1つの貫通孔を有する筒状をなし、筒の貫通孔の内部をシールド部材23に覆われた中心電線21が通過する。
中心電線21の長さ方向において、コア部27の長さ(筒の高さ)は、第1の被覆部材241の長さよりも短く、中心電線21の径方向において、コア部27の長さ(筒の外径)は、第1の被覆部材241よりも短い。
例えば、コア部27は酸化鉄を主成分とするセラミックス等の磁性材料でできたコアが挙げられ、コアが樹脂製のコアケース内に収容されていても、コアケースを備えることなくコア単体でもよい。
ここで、筒状には、円筒状、楕円筒状、角筒状(例えば、正方形の四角筒状、長方形の四角筒状、三角筒状、五角筒状、六角筒状等)、異形筒状が含まれる。
【0040】
筒状をなすコア部27の径方向外側の表面に、筒の延伸方向に沿って凹む溝部271が設けられている。すなわち、磁性材料を含むコア、もしくは樹脂製のコアケースのどちらかの径方向外側の表面に溝部271が設けられる。溝部271は、コア部27の筒の径方向外側に開口する。例えば径方向外側から別部材を溝部271の中に完全に収めた場合、コア部27の厚みを含めた外径を変えることなく別部材とコア部27は組み合わせることが可能となる。
【0041】
筒状のコア部27の周方向における溝部271の幅は、接地線221の延伸部22Aの太さよりも大きく、延伸部22Aの少なくとも一部は溝部271に収まるように配置される。コア部27の延伸方向と、中心電線21と、延伸部22Aと、は導電体ユニット20の延伸方向に沿うように配置される。
さらに詳細には、コア部27の貫通孔を、中心電線21がシールド部材23に覆われた状態で通過し、コア部27の溝部271に、延伸部22Aが収容される。コア部27に対してその通過と、収容が完了している状態でコア部27の周囲を第1の被覆部材241で覆う。すなわち、コア部27を第1の被覆部材241が覆うことで、中心電線21の一部と、シールド部材23の一部と、延伸部22Aの一部と、が第1の被覆部材241に覆われて一体となるように配置されている。
【0042】
上記構成には、コア部27の貫通孔を、シールド部材23を間に挟んで被覆部材24で覆われた中心電線21が通過する構成も含まれる。シールド部材23と中心電線21が、被覆部材24によって締め付けられた状態でコア部27の貫通孔を通過し、コア部27の溝部271を延伸部22Aが収容され、この通過と収容が完了した状態で、コア部27の周囲を被覆部材24で覆う構成としてもよい。
【0043】
コア部27は、例えば、導電体ユニット20において、第1の被覆部材241に上から覆われる。
【0044】
<作用効果>
本実施形態において、導電体ユニット20は、露出部25と筐体接地部223の2点でシールド部材とインバータ筐体100を通電しつつ、導電体ユニット20の一部は筒状のコア部27の貫通孔内を通過する。
かかる構成によれば、導電体ユニット20において露出部25と筐体接地部225でインバータ筐体100に接地することによって高周波数(例えば30-100MHz)のノイズを低減しつつ、コア部27によって低周波数(例えば5-20MHz)のノイズを低減できるので、コア部27が設けられていない場合と比較して、より広範囲のノイズの影響を低減できる。
【0045】
本実施形態において、コア部27は溝部271を備え、溝部271に接地部材22の延伸部22Aが収まるように配置され、その状態でコア部27の周囲を第1の被覆部材241で覆うように配置されている。
かかる構成によれば、第1の被覆部材とコア部27の間で、延伸部22Aを、溝部271に固定された状態で保つことができる。よって、延伸部22Aは、コア部27の周方向に移動することがないため、被覆部材24と接地部材22間の摩擦を低減し、延伸部22Aが導電体ユニット20以外の部材と接触することによる損傷を防ぐことができる。
さらに、コア部27外側面全体とシールド部材23の一部を、第1の被覆部材24が中心電線21の径方向内側に圧力をかけながら覆うので、コア部27が中心電線21の延伸方向に移動するのを防ぐことができる。
【0046】
<変形例>
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
上記実施形態においては、導電体ユニットは、インバータ、モータユニット及び車両に搭載されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、導電体ユニットは、コンバータなどのインバータ以外の電子部品や、船舶及び航空機等の車両以外の移動体に搭載されていてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、導電体ユニット20は被覆部材24を備える構成としたが、被覆部材24は無くとも良い。シールド部材23がインバータ筐体100に電気的に接続されている構成であれば、中心電線21をシールド部材23で覆うだけの構成としてもよい。すなわちシールド部材23で覆われた箇所は全て露出部25としてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、カバー部は、開口したモータユニット2(不図示)の筐体であり、インバータ筐体100側の開口部103とモータユニット2側の開口部とを連結させることでモータユニット2の筐体が組み立てられるとして説明したが、これに限らない。カバー部は、インバータ筐体100側の開口部103の全体をカバーできる構成であれば、いかなる構成でも構わない。例えば、カバー部は、板状のカバー部であり、カバー部によってカバーされたインバータ筐体100と、モータハウジングと、が連結されてモータユニット2の筐体を構成しても構わない。
【0049】
上記実施形態においては、インバータ筐体100は底壁101を有するとしたが、車両1搭載時において、底壁101はいかなる方向に配置されていても構わない。例えば、開口部103に対して重力方向上方にあっても、重力方向に沿って配置されていても構わない。
【0050】
上記実施形態においては被覆部材24として第1の被覆部材241と第2の被覆部材242の二つを例に挙げたが、被覆部材の数はこれに限らない。導電体ユニット20において、被覆部材24で覆われたシールド部材23と覆われていないシールド部材23(露出部25)が混在していればいかなる構成であってもよい。
【0051】
上記実施形態においては、コア部27の外周面が第1の被覆部材241に覆われている構成として説明したが、これに限らない。コア部27の貫通孔を中心電線21が通ればコア部は導電体ユニット20のいかなる場所に配置されていても良い。
【0052】
上記実施形態においては、接地部材22を構成する延伸部22Aの一部とシールド接続部222が被覆部材24に覆われているとして説明したが、これに限らない。接地部材22によるシールド部材23とインバータ筐体100間の通電が保たれていれば、接地部材22は導電体ユニット20のどこに固定されていても構わない。
【0053】
上記実施形態においては、バッテリ側コネクタ20Aと接続しているのは中心電線21のみを例にあげて説明したが、これに限らない。
例えば、バッテリ側コネクタ20Aには中心電線21の他に、中心電線21とは異なる電線も接続され、低電圧バッテリLVの電力をインバータ制御回路基板11以外の電子部品へ出力する構成としてもよい。さらに、その中心電線21と異なる電線にも本発明の接地部材22、シールド部材23、被覆部材24、コア部27を適用する構成としてもよい。
【0054】
上記実施形態においては、インバータ筐体100内において連結部105とコンデンサユニット14の間を、露出部25が通る配置としたが、これに限らない。インバータ筐体100と露出部25の通電が保たれるのであれば、インバータ筐体100内のいかなる場所に配置してもよい。さらには、導電体ユニット20は接地部材22とは異なる第2ハーネスを備え、第2ハーネスを介して露出部25とインバータ筐体100を通電する構成としてもよい。
【0055】
以上、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明かかる例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨を逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。上記において実施形態またはその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・車両、2・・・モータユニット、3・・・制御部、5a、5b・・・車輪、6・・・減速機、7・・・ディファレンシャルギア、8・・・ドライブシャフト(駆動軸)、10・・・インバータ制御装置、11…インバータ制御回路基板、12・・・パワーモジュール制御回路基板、13・・・パワーモジュールユニット、14・・・コンデンサユニット、15・・・電動モータ、LV・・・低電圧バッテリ、HV・・・高電圧バッテリ、100・・・インバータ筐体、101・・・底壁、102・・・周壁、103・・・開口部、104・・・接続孔、105・・・連結部、20・・・導電体ユニット、20A・・・バッテリ側コネクタ、20B・・・基板側コネクタ、21・・・中心電線、22・・・接地部材、221・・・接地線、222・・・シールド接続部、223・・・筐体接地部、224・・・ボルト、22A、22C・・・延伸部、22B・・・屈曲部、23・・・シールド部材、24・・・被覆部材、241・・・第1の被覆部材、242・・・第2の被覆部材、25・・・露出部、27・・・コア部、271・・・溝部