(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】コンデンサモジュール、インバータモジュールおよびモータユニット
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241210BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020199017
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】ニデックエレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017220(JP,A)
【文献】特開2020-102913(JP,A)
【文献】特開2013-247755(JP,A)
【文献】特開2018-207780(JP,A)
【文献】特開2013-188027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0051638(US,A1)
【文献】特開2011-217594(JP,A)
【文献】特開2009-177872(JP,A)
【文献】特開2017-188996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路の電圧を平滑するコンデンサモジュールであって、
前記インバータ回路への接続端子を有する供給部と、
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子と前記供給部とを接続する板状の第1バスバーとを有する
交流成分低減部と、
直流電源と前記供給部とを接続する板状の第2バスバーを有する直流部と、
を備え、
前記
交流成分低減部と前記直流部とは、コンデンサモジュールの平面視および一方の側面視において、横並びに配置され、他方の側面視において互いの側面を対向させて配置され、
前記供給部は、平面視において、前記
交流成分低減部と前記直流部の両方をまとめて囲む外形領域の内側に位置
し、
前記第2バスバーは、正極側第2バスバーと、負極側第2バスバーとを含み、
前記正極側第2バスバーおよび前記負極側第2バスバーは、それぞれが電源側バスバーと供給側バスバーの2本のバスバーからなり、
前記2本の電源側バスバーは、それぞれ、直流電源との接続端子と、前記供給側バスバーとの接続端子とを有し、
前記2本の電源側バスバーは、それぞれ、前記2つの接続端子の間に、それぞれの板面が前記交流成分低減部と前記直流部が並ぶ方向に沿って広がる部位を有する、
コンデンサモジュール。
【請求項2】
前記供給部は、平面視において、前記
交流成分低減部と前記直流部との間に位置する、
請求項1に記載のコンデンサモジュール。
【請求項3】
平面視において、前記第1バスバーと前記第2バスバーとは、前記供給部のみにおいて互いに重なる、
請求項
2に記載のコンデンサモジュール。
【請求項4】
前記第2バスバーに装着される磁性体コアと、
それぞれが前記第2バスバーに接続される第1のフィルタコンデンサおよび第2のフィルタコンデンサと、をさらに備え、
平面視において、前記磁性体コア、前記第1のフィルタコンデンサ、および前記第2のフィルタコンデンサはこの順に並び、かつ、前記供給部に沿って並ぶ、
請求項1から
3のいずれか1項に記載のコンデンサモジュール。
【請求項5】
前記第2バスバーは、正極側第2バスバーと、負極側第2バスバーとを含み、
前記正極側第2バスバーおよび前記負極側第2バスバーは、それぞれが電源側バスバーと供給側バスバーの2本のバスバーからなり、
前記電源側バスバーは、側面視でクランク形状に屈曲しており、
前記磁性体コアと前記フィルタコンデンサとは、前記電源側バスバーの屈曲部を挟んで横並びに配置される、
請求項
4に記載のコンデンサモジュール。
【請求項6】
前記
交流成分低減部と前記直流部とを保持する樹脂部材と、
前記樹脂部材に装着されるアルミ製のノイズ遮蔽部材と、を有する、
請求項
4に記載のコンデンサモジュール。
【請求項7】
コンデンサモジュールの上面に前記供給部が配置され、
コンデンサモジュールの下面には、前記下面と対向する平坦面を有しかつ平面視で前記
交流成分低減部および直流部の両方の少なくとも一部と重なる部材を設置可能である、
請求項
4に記載のコンデンサモジュール。
【請求項8】
外部装置に固定される固定部を有する、
請求項
4に記載のコンデンサモジュール。
【請求項9】
前記第1バスバーは、正極側第1バスバーと負極側第1バスバーとを有し、
前記正極側第1バスバーと前記負極側第1バスバーとは、互いに近接する位置において、前記第1バスバーの板厚よりも薄い絶縁シートを介して対向する、
請求項
4に記載のコンデンサモジュール。
【請求項10】
前記第2バスバーは、正極側第2バスバーと負極側第2バスバーとを有し、
前記正極側第2バスバーと前記負極側第2バスバーとは、互いに近接する位置において、前記第2バスバーの板厚よりも薄い絶縁シートを介して対向する、
請求項
4に記載のコンデンサモジュール。
【請求項11】
請求項
4に記載のコンデンサモジュールと、インバータ回路とを備えるインバータモジュール。
【請求項12】
請求項1に記載のインバータモジュールを備えた、モータユニット。
【請求項13】
請求項4に記載のインバータモジュールを備えた、モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサモジュール、インバータモジュールおよびモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータモジュールにおいて、インバータ回路の電流を平滑化するコンデンサモジュールが用いられている。コンデンサモジュールは、コンデンサ素子と、複数のバスバーとを有する。複数のバスバーは、コンデンサ素子への接続端子と、外部の電源配線への接続端子と、インバータ回路への接続端子とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータ回路の電圧を平滑するコンデンサモジュールにおいては、電源とコンデンサ素子とインバータ回路とを接続するバスバーは高温になりやすい。また、コンデンサモジュールの性能を高めるために、等価直列インダクタンス(ESL)の低減が求められる。よって、バスバーからの熱影響を低減し、ESL低減したコンデンサが求められる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、バスバーの配置自由度を向上させ、熱影響、ESLを共に低減させたコンデンサモジュールおよびインバータモジュール及びモータユニットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、インバータ回路の電圧を平滑するコンデンサモジュールが提供される。前記インバータ回路への接続端子を有する供給部と、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子と前記供給部とを接続する板状の第1バスバーとを有する交流成分低減部と、直流電源と前記供給部とを接続する板状の第2バスバーを有する直流部と、を備える。前記交流成分低減部と前記直流部とは、コンデンサモジュールの平面視および一方の側面視において、横並びに配置され、他方の側面視において互いの側面を対向させて配置される。前記供給部は、平面視において、前記交流成分低減部と前記直流部の両方をまとめて囲む外形領域の内側に位置する。前記第2バスバーは、正極側第2バスバーと、負極側第2バスバーとを含み、前記正極側第2バスバーおよび前記負極側第2バスバーは、それぞれが電源側バスバーと供給側バスバーの2本のバスバーからなり、前記2本の電源側バスバーは、それぞれ、直流電源との接続端子と、前記供給側バスバーとの接続端子とを有し、前記2本の電源側バスバーは、それぞれ、前記2つの接続端子の間に、それぞれの板面が前記交流成分低減部と前記直流部が並ぶ方向に沿って広がる部位を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、熱影響、ESLを共に低減させたコンデンサモジュールおよびインバータモジュール及びモータユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、インバータモジュールの縦断面を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図2は、インバータモジュールの回路ブロック図である。
【
図3】
図3は、コンデンサモジュールを斜め上から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、コンデンサモジュールの側面図である。
【
図5】
図5は、コンデンサモジュールを斜め下から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、コンデンサモジュールの内部構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、コンデンサモジュールの平面図である。
【
図8】
図8は、第1バスバー11および第2バスバーのうち、正極側のバスバーを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第1バスバーおよび第2バスバーのうち、負極側のバスバーを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、コンデンサ素子、第1バスバー、および第2バスバーの側面図である。
【
図11】
図11は、磁性体コアおよびフィルタコンデンサを含む部分におけるコンデンサモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態のインバータモジュールおよびコンデンサモジュールについて説明する。
以下の説明で参照する図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系は
図1の上下方向をZ軸方向として規定する。+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、コンデンサモジュールにおける直流部と交流部が並ぶ方向を示す。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向である。
本明細書において、「平面視」は、Z軸方向からインバータモジュールおよびコンデンサモジュールを見ることを意味する。なお、本明細書におけるコンデンサモジュールの姿勢は一例であって、実際にコンデンサモジュールが取り付けられる姿勢を限定するものではない。
【0010】
図1は、インバータモジュールの縦断面を模式的に示す説明図である。
図2は、インバータモジュールの回路ブロック図である。
本実施形態のインバータモジュール1は、
図1に示すように、コンデンサモジュール2と、パワーモジュール3と、制御基板40および駆動基板41からなる制御モジュール4と、筐体7と、冷媒流路8と、を備える。
【0011】
筐体7は、内部にコンデンサモジュール2と、パワーモジュール3と、制御モジュール4と、冷媒流路8と、を収容する。インバータモジュール1の各部品は、筐体7の内部において、上下方向(Z軸方向)に積層されて配置される。具体的に、下側から、制御基板40、コンデンサモジュール2、駆動基板41、パワーモジュール3、冷媒流路8の順に積層配置される。なお、この配置は一例であって、コンデンサモジュール2と、パワーモジュール3とが、XY平面に横並びに配置されていても構わない。
【0012】
インバータモジュール1は、
図2に示すように、直流電源6とモータ5との間に接続される。インバータモジュール1は、直流電源6から供給される直流電流を交流電流に変換し、モータ5に電力供給する。
モータ5は、本実施形態では、3相モータである。モータ5は、4相以上の多相モータであってもよい。モータ5は、インバータモジュール1のパワーモジュール3と接続される。直流電源6は、例えば、二次電池または電気二重層キャパシタである。直流電源6は、インバータモジュール1の外部電源用の接続端子121P、121Nに接続される。
なお、モータ5に代えて、発電機を接続してもよい。この場合、インバータモジュール1は、発電機から入力される電力を直流電力に変換し、直流電源6を充電する。
【0013】
パワーモジュール3は、複数のスイッチング素子30からなるインバータ回路31を有する。スイッチング素子30は、本実施形態の場合、IGBT(Inslated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子30は、IGBT以外のパワー半導体素子であってもよい。スイッチング素子30は、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、SiC-MOSFET、あるいはGaN-MOSFETであってもよい。
【0014】
インバータ回路31は、6個のスイッチング素子30により構成される3相インバータである。すなわち、インバータ回路31は、2つのスイッチング素子により構成されるアームをU相、V相、W相に対応する3相分有する。各アームの中間点が、モータ5に接続される。
3つのアームの正極側の端子が、コンデンサモジュール2の正極側の供給端子231P、232P、233Pに接続される。3つのアームの負極側の端子が、コンデンサモジュール2の負極側の供給端子231N、232N、233Nに接続される。
【0015】
パワーモジュール3は、
図1に示す冷却部材3Aを有する。冷却部材3Aは、インバータ回路31を冷却する。冷却部材3Aの一部は、冷媒流路8内に位置する。冷媒流路8は、筐体7またはパワーモジュール3に設けられる。冷媒流路8内を流通する冷媒と冷却部材3Aとの接触により、インバータ回路31の熱が冷媒へ放散される。冷媒流路8に流通する冷媒は、例えば、LLC(エチレングリコール水溶液)である。冷媒は水であってもよい。また、インバータモジュール1は、コンデンサモジュール2を冷却する機構を備えていてもよい。
【0016】
制御モジュール4は、制御基板40と駆動基板41とを有する。
制御基板40は、インバータ回路31の複数のスイッチング素子30をスイッチング制御するための制御信号を生成する。駆動基板41は、制御基板40から入力される制御信号に基づいて、スイッチング素子30の駆動電力を生成する。
【0017】
制御モジュール4は、車両制御装置等の上位装置とCAN(Controller Area Network)を介して接続される。制御モジュール4は、上位装置から入力される制御信号に基づいて、インバータ回路31を介したモータ5の駆動制御を実行する。
【0018】
コンデンサモジュール2は、
図2に示すように、直流電源6と、パワーモジュール3に接続される。以下、
図3以降を参照して、コンデンサモジュール2について詳細に説明する。
【0019】
図3は、コンデンサモジュール2を斜め上から見た斜視図である。
図4は、コンデンサモジュール2の側面図である。
図5は、コンデンサモジュール2を斜め下から見た斜視図である。
図6は、コンデンサモジュール2の内部構造を示す斜視図である。
図7は、コンデンサモジュール2の平面図である。
図8は、第1バスバー11および第2バスバーのうち、正極側のバスバーを示す斜視図である。
図9は、第1バスバーおよび第2バスバーのうち、負極側のバスバーを示す斜視図である。
図10は、コンデンサ素子、第1バスバー、および第2バスバーの側面図である。
【0020】
図3から
図7に示すように、コンデンサモジュール2は、交流部21と、直流部22と、供給部23とを有する。
交流部21は、5個のコンデンサ素子15と、5個のコンデンサ素子15と供給部23とを接続する板状の第1バスバー11とを有する。本実施形態の場合、5個のコンデンサ素子15は、Y軸方向に沿って並ぶ。交流部21は、全体として、Y軸方向に長手の形状である。交流部21のコンデンサ素子15の個数は5個に限られず、4個以下または6個以上の任意の個数とすることができる。
【0021】
5個のコンデンサ素子15は、上下面にそれぞれ電極を有する。第1バスバー11は、コンデンサ素子15の上面の電極に接続される正極側第1バスバー11Pと、コンデンサ素子15の下面の電極に接続される負極側第1バスバー11Nと、を有する。
【0022】
正極側第1バスバー11Pは、
図8および
図10に示すように、5個のコンデンサ素子の上面にわたってY軸方向に延びるコンデンサ側端子111Pと、コンデンサ側端子111Pの直流部22側(+X側)の端部から上側へ延びる3つの配線部112Pと、3つの配線部112Pの上端から直流部22側の端部から直流部22側へ水平方向に延びる3つの供給側端子113Pと、を有する。配線部112PのY軸方向の幅は、供給側端子113PのY軸方向幅よりも大きい。供給側端子113Pは、供給側端子113Pを板厚方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔を有する。3つの供給側端子113Pは、後述する正極側第2バスバー12Pの3つの供給側端子125Pとともに、供給部23の3つの供給端子231P、232P、233Pを構成する。
【0023】
負極側第1バスバー11Nは、
図9および
図10に示すように、5個のコンデンサ素子の上面にわたってY軸方向に延びるコンデンサ側端子111Nと、コンデンサ側端子111Nの直流部22側(+X側)の端部から上側へ延びる配線部112Nと、配線部112Nの上端から直流部22側の端部から直流部22側へ水平方向に延びる3つの供給側端子113Nと、を有する。配線部112Nは、コンデンサ側端子111NのY軸方向幅と同等の幅で上側へ延びる本体部112aNと、本体部112aNの上端から上側へ延びる3つの枝部112bNとを有する。供給側端子113Nは、枝部112bNの先端から延びる。枝部112bNのY軸方向の幅は、供給側端子113NのY軸方向幅よりも大きい。供給側端子113Nは、供給側端子113Nを板厚方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔を有する。3つの供給側端子113Nは、後述する負極側第2バスバー12Nの3つの供給側端子125Nとともに、供給部23の3つの供給端子231N、232N、233Nを構成する。
【0024】
図10に示すように、第1バスバー11の正極側第1バスバー11Pと、負極側第1バスバー11Nは、供給部23に向かって上側へ延びる部位(配線部112P、配線部112N)において、X軸方向に互いに近接して配置される。すなわち、第1バスバー11は、コンデンサ素子15と供給部23との間に、正極側第1バスバー11Pと負極側第1バスバー11Nとが互いの板厚方向に重なり合って近接する近接配置部11Aを有する。
この構成によれば、配線部112Pと配線部112Nとは、コンデンサ素子15と供給部23との間に流れる電流の向きが互いに逆向きであるので、正極側第1バスバー11Pの寄生インダクタンスと、負極側第1バスバー11Nの寄生インダクタンスとが互いに打ち消し合う。これにより、コンデンサ素子15のESL(等価直列インダクタンス)を低減できる。
【0025】
図10に示す近接配置部11Aにおいて、配線部112Pと配線部112Nとの間に、絶縁紙などの絶縁シートを挟んでもよい。絶縁シートの厚さは、例えば、0.05mm以上1mm未満である。絶縁シートの厚さは、0.1mm以上としてもよい。絶縁シートの厚さは、0.7mm以下としてもよく、0.5mm以下としてもよい。
すなわち、正極側第1バスバー11Pと負極側第1バスバー11Nとは、互いに近接する位置において、第1バスバーの板厚よりも薄い絶縁シートを介して対向する構成であってもよい。この構成によれば、配線部112Pと配線部112Nとを絶縁シートの厚さまで近接させることができる。両者を可能な限り近接させることでESL低減効果を高めることができる。
【0026】
直流部22は、直流電源6と供給部23とを接続する板状の第2バスバー12を有する。第2バスバー12は、
図6および
図7に示すように、直流電源6の正極側に接続される正極側第2バスバー12Pと、直流電源6の負極側に接続される負極側第2バスバー12Nと、を有する。
【0027】
正極側第2バスバー12Pは、
図8および
図10に示すように、電源側バスバー221Pと供給側バスバー222Pの2本のバスバーからなる。
電源側バスバー221Pは、直流電源6との接続端子121Pと、供給側バスバー222Pとの接続端子122Pとを有する。電源側バスバー221Pにおいて、接続端子121Pと接続端子122Pとは、配線部123Pを介して接続される。
【0028】
配線部123Pは、直流部22の-Y側の端部に位置する接続端子121Pから、直流部22の+Y側の端部に位置する接続端子122Pに向かって、Y軸方向に沿って延びる。配線部123Pは、複数の配線部分123aP~123ePからなる。
【0029】
配線部分123aPは、接続端子121Pの交流部21と反対側(+X側)の端部から下側へ延びる。配線部分123bPは、配線部分123aPの下端から+Y側へ延び、直流部22のY軸方向の中央部に達する。配線部分123cPは、配線部分123bPの+Y側の端部から上側へ延びる。配線部分123dPは、配線部分123cPの上端から+Y側へ延びる。配線部分123ePは、配線部分123dPの+Y側の端部から+X側へ延び、接続端子122Pに接続される。
【0030】
配線部分123aP~123ePのうち、配線部分123bP、123cP、123dPは、それらの板面を上下方向(Z軸方向)またはY軸方向に向けて延びる。すなわち、配線部分123bP、123cP、123dPの板面は、交流部21と直流部22が並ぶ方向(X軸方向)に沿って広がる。つまり、電源側バスバー221Pは、2つの接続端子121P、122Pの間に、板面が交流部21と直流部22が並ぶ方向(X軸方向)に沿って広がる部位を有する。
この構成によれば、配線部分123bP、123cP、123dPは、それらの板面が交流部21側(-X側)を向いていないので、それらの板面から放散される熱が、交流部21側へ向かいにくい。これにより、大電流が流れるために高温になる電源側バスバー221Pの熱が、コンデンサ素子15に伝わりにくくなる。
【0031】
供給側バスバー222Pは、電源側バスバー221Pとの接続端子124Pと、供給部23と接続される3つの供給側端子125Pとを有する。接続端子124Pは、電源側バスバー221Pの接続端子122Pにネジ固定される。供給側バスバー222Pにおいて、接続端子124Pと3つの供給側端子125Pとは、配線部126Pを介して接続される。
【0032】
配線部126Pは、直流部22の交流部21と反対側(+X側)の端部に位置する接続端子124Pから、供給部23に位置する供給側端子125Pに向かって、平面視でX軸方向に延びる。配線部126Pは、複数の配線部分126aP~126dPからなる。
【0033】
配線部分126aPは、接続端子124Pの交流部21側(-X側)の端部から下側へ延びる。配線部分126bPは、配線部分126aPの下端から交流部21側へ延びる。配線部分126cPは、配線部分126bPの交流部21側の端部から上側および接続端子121P側(-Y側)へ延びる。すなわち、配線部分126cPは、Y軸方向およびZ軸方向に沿って広がる。配線部分126dPは、配線部分126cPの上端の3箇所から上側へ延び、それぞれが供給側端子125Pに接続される。
【0034】
供給側端子125Pは、供給側端子125Pを板厚方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔を有する。3つの供給側端子125Pは、正極側第1バスバー11Pの3つの供給側端子113Pとともに、供給部23の3つの供給端子231P、232P、233Pを構成する。
【0035】
負極側第2バスバー12Nは、
図9および
図10に示すように、電源側バスバー221Nと供給側バスバー222Nの2本のバスバーからなる。
電源側バスバー221Nは、直流電源6との接続端子121Nと、供給側バスバー222Nとの接続端子122Nとを有する。電源側バスバー221Nにおいて、接続端子121Nと接続端子122Nとは、配線部123Nを介して接続される。
【0036】
配線部123Nは、直流部22の-Y側の端部に位置する接続端子121Nから、直流部22の+Y側の端部に位置する接続端子122Nに向かって、Y軸方向に沿って延びる。配線部123Nは、複数の配線部分123aN~123dNからなる。
【0037】
配線部分123aNは、接続端子121Nの交流部21側(-X側)の端部から下側へ延びる。配線部分123bNは、配線部分123aNの下端から+Y側へ延び、直流部22のY軸方向の中央部に達する。配線部分123cNは、配線部分123bNの+Y側の端部から上側へ延びる。配線部分123dNは、配線部分123cNの上端から+Y側へ延び、接続端子122Nの交流部21側(-X側)の端部に接続される。
【0038】
配線部分123aN~123dNのうち、配線部分123bN、123cN、123dNは、それらの板面を上下方向(Z軸方向)またはY軸方向に向けて延びる。すなわち、配線部分123bN、123cN、123dNの板面は、交流部21と直流部22が並ぶ方向(X軸方向)に沿って広がる。つまり、電源側バスバー221Nは、2つの接続端子121N、122Nの間に、板面が交流部21と直流部22が並ぶ方向(X軸方向)に沿って広がる部位を有する。
この構成によれば、配線部分123bN、123cN、123dNは、それらの板面が交流部21側(-X側)を向いていないので、それらの板面から放散される熱が、交流部21側へ向かいにくい。これにより、大電流が流れるために高温になる電源側バスバー221Nの熱が、コンデンサ素子15に伝わりにくくなる。
【0039】
供給側バスバー222Nは、電源側バスバー221Nとの接続端子124Nと、供給部23と接続される3つの供給側端子125Nとを有する。接続端子124Nは、電源側バスバー221Nにネジ固定される。供給側バスバー222Nにおいて、接続端子124Nと3つの供給側端子125Nとは、配線部126Nを介して接続される。
【0040】
配線部126Nは、直流部22の交流部21と反対側(+X側)の端部に位置する接続端子124Nから、供給部23に位置する供給側端子125Nに向かって、平面視でX軸方向に延びる。配線部126Nは、複数の配線部分126aN~126dNからなる。
【0041】
配線部分126aNは、接続端子124Nの交流部21側(-X側)の端部から下側へ延びる。配線部分126bNは、配線部分126aNの下端から交流部21側へ延びる。配線部分126cNは、配線部分126bNの交流部21側の端部から上側および接続端子121N側(-Y側)へ延びる。すなわち、配線部分126cNは、Y軸方向およびZ軸方向に沿って広がる。配線部分126dNは、配線部分126cNの上端の3箇所から上側へ延び、それぞれが供給側端子125Nに接続される。
【0042】
供給側端子125Nは、供給側端子125Nを板厚方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔を有する。3つの供給側端子125Nは、負極側第1バスバー11Nの3つの供給側端子113Nとともに、供給部23の3つの供給端子231N、232N、233Nを構成する。
【0043】
図10に示すように、第2バスバー12においても、供給側バスバー222P、222Nが、供給部23の近傍において互いの板厚方向に近接して配置される。より詳細には、
図10に示す近接配置部12Aにおいて、配線部126Pの配線部分126cPと、配線部126Nの配線部分126cNとが、互いの板厚方向に近接して配置され、配線部分126dPと配線部分126dNとが、互いの板厚方向に近接して配置される。
【0044】
近接配置部12Aにおいても、供給側バスバー222P、222Nの間に、絶縁紙などの薄い絶縁シートを挟み込んでもよい。すなわち、正極側第2バスバー12Pと負極側第2バスバー12Nとが、互いに近接する位置において、第2バスバー12の板厚よりも薄い絶縁シートを介して対向する構成としてもよい。この構成によれば、バスバー間の距離を小さくでき、直流部22を小型化しやすくなる。
なお、上記以外の位置であっても、バスバー同士が近接する位置において、バスバー同士の間に絶縁シートを配置してもよい。
【0045】
図6および
図7に示すように、コンデンサモジュール2は、直流部22に、磁性体コア27と、2つのフィルタコンデンサ28とを有する。
図11は、磁性体コア27およびフィルタコンデンサ28を含む部分におけるコンデンサモジュール2の断面図である。
【0046】
磁性体コア27は、円筒状の磁性体からなる。磁性体コア27は、例えばフェライトコアである。磁性体コア27は、Y軸方向に延びて配置される。磁性体コア27の内孔に、電源側バスバー221P、221Nの配線部分123bP、123bNが通される。電源側バスバー221P、221Nは、
図11に示すように、クランク状に屈曲する形状である。磁性体コア27は、Y軸方向において、接続端子121P、121Nと、クランク状の屈曲部である配線部分123cP、123cNとの間に配置される。
【0047】
フィルタコンデンサ28は、電源側バスバー221P、221Nの配線部分123dP、123dNと、供給側バスバー222P、222Nの配線部分126bP、126bNとの間に、上下方向に挟まれて配置される。フィルタコンデンサ28は、供給側バスバー222Pとグランドとの間、および、供給側バスバー222Nとグランドとの間にそれぞれ1つずつ接続される。
【0048】
本実施形態のコンデンサモジュール2では、磁性体コア27とフィルタコンデンサ28とが、互いの側面を対向させて平面視で横並びに配置される。この構成によれば、磁性体コア27とフィルタコンデンサ28を比較的狭いスペースに設置可能である。コンデンサモジュール2の大型化を避けながら、直流部22のノイズ対策が可能になる。
【0049】
また、本実施形態のコンデンサモジュール2では、電源側バスバー221P、221Nは、側面視でクランク形状に屈曲しており、磁性体コア27とフィルタコンデンサ28とは、電源側バスバー221P、221Nの屈曲部を挟んで横並びに配置される。この構成によれば、電源側バスバー221P、221Nと磁性体コア27とフィルタコンデンサ28とを、より狭いスペースに効率よく配置できる。
【0050】
供給部23は、インバータ回路31への6つの供給端子231P、232P、233P、231N、232N、および233Nを有する。
正極側の供給端子231P、232P、233Pは、正極側第1バスバー11Pの3つの供給側端子113Pと、正極側第2バスバー12Pの3つの供給側端子125Pとにより構成される。
負極側の供給端子231N、232N、233Nは、負極側第1バスバー11Nの3つの供給側端子113Nと、負極側第2バスバー12Nの3つの供給側端子125Nとによって構成される。
【0051】
図10および
図7に示すように、第1バスバー11は、供給部23からコンデンサ素子15側(-X側)にのみ配置され、第2バスバー12は、供給部23からコンデンサ素子15と反対側(+X側)にのみ配置される。すなわち、第1バスバー11と第2バスバー12とは、平面視において、供給部23のみにおいて互いに重なる。
この構成によれば、第1バスバー11と第2バスバー12とが互いに近接する部位が少なくなるので、直流電源6に接続される第2バスバー12の熱が第1バスバー11に伝わりにくくなる。これにより、第1バスバー11に接続されるコンデンサ素子15にも熱が伝わりにくくなる。
【0052】
本実施形態のコンデンサモジュール2では、交流部21と直流部22とは、
図6および
図7に示すように、互いの側面を対向させて平面視(Z軸方向視)で横並びに配置される。本実施形態において、交流部21と直流部22は、X軸方向に沿って並ぶ。すなわち、交流部21と直流部22とは、平面視(Z軸方向視)および一方の側面視(Y軸方向視)において、横並びに配置される。交流部21の+X側を向く側面と、直流部22の-X側を向く側面とが、X軸方向において互いに対向する。すなわち、交流部21と直流部22とは、他方の側面視に沿った方向(X軸方向)において、互いの側面を対向させて配置される。そして、供給部23は、平面視において、交流部21と直流部22との間に位置する。具体的には、交流部21と直流部22との間のY軸方向に沿って延びる領域に、供給端子231P、231N、232P、232N、233P、233Nが、Y軸方向に一列に並んで配置される。
【0053】
上記構成によれば、大電流が流れることにより高温になる電源側バスバー221P、221Nと、高温を避けるべきコンデンサ素子15との水平方向(X軸方向)の間隔を、供給部23が間に配置されている分、大きく引き離すことができる。これにより、電源側バスバー221P、221Nの熱が、コンデンサ素子15に伝わるのを抑制できる。高温によってコンデンサ素子15の電気特性が変化したり、寿命が短くなったりするのを抑制できる。
【0054】
さらに、交流部21と直流部22とが横並びに配置され、供給部23がそれらの間に配置されていることにより、供給部23に含まれるバスバーと直流部に含まれるバスバーの形状をそれぞれ自由に設計し、供給部23に接続することができる。よって、直流部と交流部の形状は互いに制限されること無く、ESL低減可能なバスバー設計を行うことができる。
【0055】
なお、供給部23の位置は、交流部21と直流部22との間に限られない。供給部23は、平面視において、交流部21もしくは直流部22と重なる位置に位置してもよい。あるいは、供給部23は、交流部21と直流部22の両方と重なる位置に位置してもよい。すなわち、供給部23は、
図7に示す外形領域Aの範囲内であれば、位置を変更可能である。供給部23は、平面視において、交流部21と直流部22の両方をまとめて囲む外形領域Aの内側に位置する構成とすることができる。この構成によれば、平面視において、供給部23が交流部21の外側または直流部の外側に位置することがないので、平面視において、交流部21と直流部22とが重なる面積を少なくできる。これにより、第2バスバー12の高温になる部位(電源側バスバー221P、221N)から第1バスバー11およびコンデンサ素子15へ熱が伝わるのを抑制できる。
【0056】
図3に示すように、本実施形態のコンデンサモジュール2は、交流部21および直流部22を保持する樹脂部材24を有する。樹脂部材24は、交流部21および直流部22の側面および底面を囲む。すなわち、樹脂部材24は、コンデンサモジュール2の筐体である。樹脂部材24は、上側に開口する形状であるが、交流部21および直流部22を上側から覆う蓋を備えていてもよい。あるいは、交流部21および直流部22の上面側から封止樹脂を流し込み、交流部21および直流部22を樹脂封止してもよい。
【0057】
樹脂部材24は、平面視における外周部に、外部装置に固定される固定部25を有する。上記外部装置は、例えば、
図1に示すインバータモジュール1の筐体7である。この構成によれば、コンデンサモジュール2を、インバータモジュール1などへ搭載しやすくなる。
【0058】
樹脂部材24の下面側には、アルミ製のノイズ遮蔽部材26が装着される。ノイズ遮蔽部材26は、上下方向と直交する平面(XY平面)に沿って広がる板状である。ノイズ遮蔽部材26は、下面側から交流部21、直流部22および供給部23を覆う。ノイズ遮蔽部材26を備えることで、インバータモジュール1における上下方向のノイズの伝播を抑制できる。
【0059】
本実施形態では、
図1に示すように、コンデンサモジュール2の上面側に駆動基板41およびパワーモジュール3が配置され、コンデンサモジュール2の下面側に制御基板40が配置される。この構成では、ノイズ遮蔽部材26が、制御基板40と、駆動基板41およびパワーモジュール3との間に配置されるので、駆動基板41側で発生するノイズが制御基板40に伝わるのを抑制できる。
【0060】
図3および
図4に示すように、コンデンサモジュール2は、樹脂部材24の下面から下側に突出する複数の円柱状のネジボス241を有する。本実施形態の場合、樹脂部材24は、11個のネジボス241を有する。ネジボス241は、ノイズ遮蔽部材26に設けられる貫通孔を通って、ノイズ遮蔽部材26よりも下側に突出する。
【0061】
11個のネジボス241の下端位置は、一つの平面上に位置する。
図4に示すように、ネジボス241には、制御基板40をネジ止め設置可能である。下端位置が揃ったネジボス241に制御基板40を固定することで、コンデンサモジュール2の下面に対して平行に制御基板40を設置可能である。
【0062】
制御基板40は、上面側にコンデンサモジュール2と上下方向に対向する平坦面40aを有する。また制御基板40は、平面視で交流部21および直流部22の両方と重なる位置に設置される。すなわち、本実施形態のコンデンサモジュール2の下面には、コンデンサモジュール2の下面と対向する平坦面40aを有し、かつ平面視で交流部21および直流部22の両方の少なくとも一部と重なる部材(制御基板40)を設置可能である。
【0063】
上記構成によれば、コンデンサモジュール2と、コンデンサモジュール2の下面側に設置される部材(例えば制御基板40)とを、上下方向にコンパクトに配置できる。インバータモジュール1の筐体7の内部空間を効率的に利用できる。インバータモジュール1を小型化しやすくなる。ノイズ遮蔽部材26と制御基板40とを均一な間隔で配置できるので、ノイズ遮蔽部材26によるノイズ遮蔽機能を効果的に発揮できる。
【0064】
本実施形態のインバータモジュール1はモータユニット(不図示)に搭載される。モータモジュールは車両に搭載される。本実施形態のインバータモジュールは、上述したように、熱影響、ESLを低減したコンデンサインバータを搭載しているため、性能が高く、故障に耐えうる。よって、それを搭載したモータユニットにおいても、大電流に耐え、長寿命化が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1…インバータモジュール、2…コンデンサモジュール、6…直流電源、11…第1バスバー、11P…正極側第1バスバー、11N…負極側第1バスバー、11A…近接配置部、12…第2バスバー、12P…正極側第2バスバー、12N…負極側第2バスバー、15…コンデンサ素子、21…交流部、22…直流部、23…供給部、24…樹脂部材、25…固定部、26…ノイズ遮蔽部材、27…磁性体コア、28…フィルタコンデンサ、31…インバータ回路、40a…平坦面、221N,221P…電源側バスバー、222N,222P…供給側バスバー、A…外形領域