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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ジョセフソン接合作成方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/01 20230101AFI20241210BHJP
【FI】
H10N60/01 J ZAA
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023549028
(86)(22)【出願日】2023-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2023092199
(87)【国際公開番号】W WO2023246326
(87)【国際公開日】2023-12-28
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】202210726039.6
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514187420
【氏名又は名称】テンセント・テクノロジー・(シェンジェン)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リー,デンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウェンロン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,マオチュン
(72)【発明者】
【氏名】ブー,クンリャン
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/261667(WO,A1)
【文献】特表2021-518655(JP,A)
【文献】特表2022-537263(JP,A)
【文献】国際公開第2019/032115(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第114256407(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114122247(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/123674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ライン機器が実行する、ジョセフソン接合を作成する方法であって、
ナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成するステップであって、前記回路構造は第一リード、第二リード、及び、前記第一リード及び前記第二リードにそれぞれ接続される周辺回路を含み、前記第一リード、前記第二リード及び前記周辺回路は一体構造である、ステップ;
前記基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成するステップであって、前記アンダーカット構造はストリップ状構造であり、前記アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域、第二領域及び第三領域を含み、前記第一領域及び前記第二領域は上層フォトレジスト及び下層鏤空を有し、前記第二領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第一領域は前記第一リードの端部を覆い、前記第二領域は前記第二リードの一部を覆い、前記第三領域は前記第一領域と前記第二領域との間に位置する、ステップ;
フォトレジストで覆われていない前記第二リードの表面に酸化層を形成するステップ;
前記第一領域から前記第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得するステップであって、前記第一超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第二リードの領域を覆い、前記第一超伝導層は前記第二リードと前記第一リードとの間の部分の基板を覆う、ステップ;及び
前記第二領域から前記第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させるステップであって、前記第二超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第一リードの領域、前記第二リードと前記第一リードとの間の部分の基板、及び前記第一超伝導層の一部を覆う、ステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記アンダーカット構造は第四領域をさらに含み、前記第四領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第二領域は前記第三領域と前記第四領域との間に位置する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記第二領域の長さは前記第一領域の長さよりも大きく、前記第二領域で覆われている前記第二リードの部分は前記第三領域に近い前記第二領域の一方側に位置する、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの何れか1項に記載の方法であって、
前記フォトレジストで覆われていない前記第二リードの表面に酸化層を形成するステップは、
前記基板を純酸素雰囲気の酸化チャンバーに置いて酸化させるステップを含み、
前記方法は、さらに、
前記第二領域から前記第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得するステップの前に、
前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行うことで、フォトレジストで覆われていない前記第一リードの表面の酸化層を除去するステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行う時間長は2分であり、エッチングパワーは200ワットである、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記酸化チャンバー内の圧力は4トールであり、前記酸化チャンバーにおける前記基板の酸化時間長は1000乃至2000秒である、方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のうちの何れか1項に記載の方法であって、
前記フォトレジストで覆われていない前記第二リードの表面に酸化層を形成するステップの前に、
前記フォトレジストによって覆われていない前記第一リード及び第二リードの表面に対してイオンエッチングを行うステップをさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記フォトレジストによって覆われていない前記第一リード及び第二リードの表面に対してイオンエッチングを行うステップは、
イオンエッチングの傾斜角を不変に保ちながら、基板を回転させるステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1乃至3のうちの何れか1項に記載の方法であって、
前記第一超伝導層の蒸着増加レートは毎秒1ナノメートルであり、前記第一超伝導層の厚さは100ナノメートルである、方法。
【請求項10】
請求項1乃至3のうちの何れか1項に記載の方法であって、
前記第一リードの延長線は前記第二リードと交差する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記第一リードは前記第二リードに垂直であり、かつ前記第一リードは前記アンダーカット構造に平行である、方法。
【請求項12】
請求項1乃至3のうちの何れか1項に記載の方法であって、
前記ナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成するステップは、
前記基板に超伝導膜層を形成するステップ;
前記超伝導膜層にナノインプリント接着剤をスピンコーティングするステップ;
ナノインプリントマスクにより前記ナノインプリント接着剤に前記回路構造の構造パターンをインプリントするステップ;
前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層に対してエッチングを行うステップ;及び
前記基板上の前記ナノインプリント接着剤を洗浄し、前記基板に位置する前記回路構造を得るステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記超伝導膜層の厚さは100ナノメートルである、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、
前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層に対してエッチングを行うステップは、
ドライエッチングの方式で前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層に対してエッチングを行うステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、
前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層に対してエッチングを行う前に、
前記ナノインプリント接着剤のインプリント溝に残っているナノインプリント接着剤を除去するステップをさらに含む、方法。
【請求項16】
ジョセフソン接合を作成するシステムであって、
前記システムはナノインプリントサブシステム、フォトリソグラフィサブシステム、酸化サブシステム、及び蒸着サブシステムを含み、
前記ナノインプリントサブシステムはナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成するために用いられ、前記回路構造は第一リード、第二リード、及び、前記第一リード及び前記第二リードにそれぞれ接続される周辺回路を含み、前記第一リード、前記第二リード及び前記周辺回路は一体構造であり、
前記フォトリソグラフィサブシステムは前記基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成するために用いられ、前記アンダーカット構造はストリップ状構造であり、前記アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域、第二領域及び第三領域を含み、前記第一領域及び前記第二領域は上層フォトレジスト及び下層鏤空を有し、前記第二領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第一領域は前記第一リードの端部を覆い、前記第二領域は前記第二リードの一部を覆い、前記第三領域は前記第一領域と前記第二領域との間に位置し、
前記酸化サブシステムはフォトレジストで覆われていない前記第二リードの表面に酸化層を形成するために用いられ、
前記蒸着サブシステムは前記第一領域から前記第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得するために用いられ、前記第一超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第二リードの領域を覆い、前記第一超伝導層は前記第二リードと前記第一リードとの間の部分の基板を覆い、
前記蒸着サブシステムはさらに、前記第二領域から前記第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させるために用いられ、前記第二超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第一リードの領域、前記第二リードと前記第一リードとの間の部分の基板、及び前記第一超伝導層の一部を覆う、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、
前記アンダーカット構造は第四領域をさらに含み、前記第四領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第二領域は前記第三領域と前記第四領域との間に位置する、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、
前記第二領域の長さは前記第一領域の長さよりも大きく、前記第二領域で覆われている前記第二リードの部分は前記第三領域に近い前記第二領域の一方側に位置する、システム。
【請求項19】
請求項16乃至18のうちの何れか1項に記載のシステムであって、
前記酸化サブシステムは前記基板を純酸素雰囲気の酸化チャンバーに置いて酸化させるために用いられ、
前記ジョセフソン接合作成システムはエッチングサブシステムをさらに含み、前記エッチングサブシステムは、前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行い、フォトレジストによって覆われていない前記第一リードの表面の酸化層を除去するために用いられる、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、
前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行う時間長は2分であり、エッチングパワーは200ワットである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年06月23日に中国専利局に出願した、出願番号が202210726039.6、発明の名称が「ジョセフソン接合作成方法及びシステム」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【0002】
本出願は、マイクロナノ加工の技術分野に関し、特に、ジョセフソン接合作成方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ジョセフソン接合は今のところ、一般的に使用されている量子ビット構造であり、それは事前設計のフォトレジスト構造により作成(準備や用意(preparation)ともいう)できる。
【0004】
関連技術では、電子ビーム露光方法を利用してベースの表面の2層電子ビームフォトレジストにおいてアンダーカットを含むドランブリッジフォトレジスト構造パターンを作り、そして、先に超伝導金属膜を斜め蒸着させ、次に酸化を行って絶縁層を形成し、それから超伝導金属膜を垂直に蒸着させるという2方向斜め蒸着方法を採用してジョセフソン接合を作成できる。
【0005】
その後、上述のジョセフソン接合の作成スキームでは、作成された量子ビットコンポーネントに余計なジョセフソン接合(寄生接合ともいう)が導入され得るため、量子ビットコンポーネントのコヒーレンスに影響を与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の実施例は、寄生接合の導入を避け、量子ビットコンポーネントのデコヒーレンスを向上させることができるジョセフソン接合作成方法及びシステムの提供を課題とする
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によれば、ジョセフソン接合作成方法が提供され、前記方法は生産ライン機器により実行され、前記方法は、
ナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成し、前記回路構造は第一リード、第二リード、及び、前記第一リード及び前記第二リードにそれぞれ接続される周辺回路を含み、前記第一リード、前記第二リード及び前記周辺回路は一体構造であり;
前記基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成し、前記アンダーカット構造はストリップ状構造であり、前記アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域、第二領域及び第三領域を含み、前記第一領域及び前記第二領域は上層フォトレジスト及び下層鏤空を有し、前記第二領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第一領域は前記第一リードの端部を覆い、前記第二領域は前記第二リードの一部を覆い、前記第三領域は前記第一領域と前記第二領域との間に位置し;
フォトレジストで覆われていない前記第二リードの表面に酸化層を形成し;
前記第一領域から前記第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得し、前記第一超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第二リードの領域を覆い、前記第一超伝導層は前記第二リードと前記第一リードとの間の一部の基板を覆い;及び
前記第二領域から前記第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させ、前記第二超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第一リードの領域、前記第二リードと前記第一リードとの間の一部の基板、及び前記第一超伝導層の一部を覆うステップを含む。
【0008】
もう1つの側面によれば、ジョセフソン接合作成システムが提供され、前記システムはナノインプリントサブシステム、フォトリソグラフィサブシステム、酸化サブシステム及び蒸着サブシステムを含み、
前記ナノインプリントサブシステムはナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成するために用いられ、前記回路構造は第一リード、第二リード、及び、前記第一リード及び前記第二リードにそれぞれ接続される周辺回路を含み、前記第一リード、前記第二リード及び前記周辺回路は一体構造であり、
前記フォトリソグラフィサブシステムは前記基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成するために用いられ、前記アンダーカット構造はストリップ状構造であり、前記アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域、第二領域及び第三領域を含み、前記第一領域及び前記第二領域は上層フォトレジスト及び下層鏤空を有し、前記第二領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第一領域は前記第一リードの端部を覆い、前記第二領域は前記第二リードの一部を覆い、前記第三領域は前記第一領域と前記第二領域との間に位置し、
前記酸化サブシステムはフォトレジストで覆われていない前記第二リードの表面に酸化層を形成するために用いられ、
前記蒸着サブシステムは前記第一領域から前記第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得するために用いられ、前記第一超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第二リードの領域を覆い、前記第一超伝導層は前記第二リードと前記第一リードとの間の一部の基板を覆い、
前記蒸着サブシステムはさらに、前記第二領域から前記第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させるために用いられ、前記第二超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第一リードの領域、前記第二リードと前記第一リードとの間の一部の基板、及び前記第一超伝導層の一部を覆う。
【0009】
1つの可能な実現方式において、前記アンダーカット構造は第四領域をさらに含み、前記第四領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第二領域は前記第三領域と前記第四領域との間に位置する。
【0010】
1つの可能な実現方式において、前記第二領域の長さは前記第一領域の長さよりも大きく、前記第二領域で覆われている前記第二リードの部分は前記第二領域のうち、前記第三領域に近い一方側に位置する。
【0011】
1つの可能な実現方式において、前記酸化サブシステムは前記基板を純酸素雰囲気(環境)の酸化チャンバーに置いて酸化させるために用いられる。
【0012】
前記ジョセフソン接合作成システムはエッチングサブシステムをさらに含み、それは前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行うことで、フォトレジストによって覆われていない前記第一リードの表面の酸化層を除去するために用いられる。
【0013】
1つの可能な実現方式において、前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行う時間長は2分であり、エッチングパワーは200ワットである。
【0014】
1つの可能な実現方式において、前記酸化チャンバー内の圧力は4トールであり、前記酸化チャンバーにおける前記基板の酸化時間長は1000乃至2000秒である。
【0015】
1つの可能な実現方式において、前記エッチングサブシステムはさらに、フォトレジストによって覆われていない前記第一リード及び前記第二リードの表面に対してイオンエッチングを行うために用いられる。
【0016】
1つの可能な実現方式において、前記エッチングサブシステムはイオンエッチングの傾斜角度を不変に保ちながら、基板を回転させるために用いられる。
【0017】
1つの可能な実現方式において、前記第一超伝導層の蒸着増加レートは毎秒1ナノメートルであり、前記第一超伝導層の厚さは100ナノメートルである。
【0018】
1つの可能な実現方式において、前記第一リードの延長線は前記第二リードと交差する。
【0019】
1つの可能な実現方式において、前記第一リードは前記第二リードに垂直であり、かつ前記第一リードは前記アンダーカット構造に平行である。
【0020】
1つの可能な実現方式において、前記ナノインプリントサブシステムは以下のことを行うために用いられ、即ち、
前記基板に超伝導膜層を形成し;
前記超伝導膜層にナノインプリント接着剤をスピンコーティングし;
ナノインプリントマスクにより前記ナノインプリント接着剤に前記回路構造の構造パターンをインプリントし;
前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層に対してエッチングを行い;及び
前記基板上の前記ナノインプリント接着剤を洗浄し、前記基板に位置する前記回路構造を取得することである。
【0021】
1つの可能な実現方式において、前記超伝導膜層の厚さは100ナノメートルである。
【0022】
1つの可能な実現方式において、前記ナノインプリントサブシステムは、ドライエッチングの方式で、前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層においてエッチングを行うために用いられる。
【0023】
1つの可能な実現方式において、前記ナノインプリントサブシステムはさらに、前記ナノインプリント接着剤のインプリント溝に残っているナノインプリント接着剤を除去するために用いられる。
【発明の効果】
【0024】
本出願の実施例で提供される技術案がもたらす有利な効果は、少なくとも、以下のとおりである。
【0025】
量子コンピューティングデバイスを作成するときに、まず、ナノインプリントの方式でジョセフソン接合の周辺回路、及びジョセフソン接合と該周辺回路との接続のためのリードを形成し、かつリード及び周辺回路は一体構造であり、このようにして、後続に形成されるジョセフソン接合は周辺回路に接続されるためのジョセフソン接合パッチ(継ぎ)/ジョセフソン接合バンテージ(包帯)を追加で作成する必要がなくなり、その後、アンダーカット構造によってそれぞれ2つの斜め方向の超伝導材料の蒸着を行うことで、第一超伝導層及び第二超伝導層を作成し、そのうち、第一超伝導層は第二リードと交差する処でジョセフソン接合を形成し、第二超伝導層は第一超伝導層及び第一リードの端部に接続され、これによって、第一リードの端部とジョセフソン接合との超伝導接続を行うことができる。上述のスキームによって量子コンピューティングデバイスにおけるジョセフソン接合を作成するときに、寄生接合の導入を回避できるため、量子ビットコンポーネントのデコヒーレンスを向上させ、量子コンピューティングデバイスのパフォーマンスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本出願に係るジョセフソン接合の作成効果図である。
図2】本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合作成方法のフローチャートである。
図3図2に示す実施例に係るアンダーカット構造を示す図である。
図4】本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合の作成のフローチャートである。
図5】本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合作成方法のフローチャートである。
図6図5に示す実施例に係る回路構造及びアンダーカット構造を示す図である。
図7図5に示す実施例に係るもう1つの回路構造及びアンダーカット構造を示す図である。
図8図5に示す実施例に係る酸化後の結果を示す図である。
図9図5に示す実施例に係るアルミニウムコーティング後の効果図である。
図10図5に示す実施例に係る酸化層除去を示す図である。
図11図5に示す実施例に係るジョセフソン接合領域を示す図である。
図12】本出願の1つの例示的な実施例に係る量子コンピューティングデバイスの作成のフローチャートである。
図13】本出願の1つの実施例で提供されるプロダクト適用シナリオを示す図である。
図14】本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合作成システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本出願に係る幾つかの用語の意味を紹介する。
【0028】
量子ビット(Qubit):量子情報科学において量子情報の計量単位である。0及び1のうちの何れか1つの状態にしかない古典ビットとは異なり、量子ビットは同時に0と1の状態、即ち、0と1の量子重ね合わせ状態にあり得る。
【0029】
ジョセフソン接合(Josephson Junction):超伝導層、絶縁層及び超伝導層でスタックされるサンドイッチ構造であり、超伝導トンネル接合とも呼ばれる。ジョセフソン接合は一般に、2つの超伝導体で非常に薄いバリア層(厚さ≦クーパー(Cooper)電子対のコヒーレンス長)を挟むことで構成される構造であり、例えば、S(Superconductor、超伝導体)-I(半導体又は絶縁体(Insulator))-S(超伝導体)構造であり、SIS構造と略称される。ジョセフソン接合では、超伝導電子はトンネル効果によって一方の超伝導層から半導体又は絶縁体薄膜を通過して他方の超伝導層に到達できる。
【0030】
寄生接合(parasitic junction):ジョセフソン接合を作成するプロセスに生じる他のジョセフソン接合である。
【0031】
シャドウ蒸着(shadow evaporation):蒸着を行うときに、蒸着材料を所定の角度でベース(基板とも称される)の表面に入射すると同時に、入射径路にフォトレジストパターンを規定して所定の形状の遮断物を設置することにより、ベースの表面の幾つかの箇所に膜層が選択的に蒸着させられ、他の箇所に膜層が蒸着させられないようにさせる。
【0032】
ジョセフソン接合パッチ(patch):超伝導量子チップにおいてジョセフソン接合と外部回路とを接続する部分である。
【0033】
ジョセフソン接合バンテージ(bandage):超伝導量子チップにおいてジョセフソン接合パッチと外部回路とを接続する部分である。
【0034】
イオンミリング(ion milling):所定方向のイオンビームを材料表面に照射することで、材料表面の酸化層を除去する。
【0035】
斜め蒸着(oblique evaporation):蒸着材料をベースの法線方向に平行でない方向に沿って蒸着させて薄膜を形成する。
【0036】
ストレート蒸着(straight evaporation):蒸着材料をベースの法線方向に平行な方向に沿って蒸着させて薄膜を形成する。
【0037】
剥離(liftoff):フォトレジストが接着剤除去液(剥離液)に溶解すると同時に、フォトレジスト上の金属層もベースから除去されるプロセスである。
【0038】
デコヒーレンス(coherence time):量子ビットが異なる量子状態の相関性を維持する能力である。
【0039】
アンダーカット構造(undercut):フォトレジストの現像後に形成されるパターン構造であり、その上の開口のサイズはその下の開口のサイズよりも小さい。
【0040】
インサイチュ(insitu):単一の真空チャンバー又は相互接続される複数の真空チャンバーにおいて多段階プロセスを行い、このプロセスではサンプル/プロダクトが大気中に移されることがない。
【0041】
量子コンピュータは幾つかの特定の問題を古典コンピュータよりも遥かに高速に対処できるため、多くの注目を集めている。今のところ、量子コンピュータを実現する1つの可能な方法としては超伝導量子コンピュータが考えられる。超伝導量子コンピュータは超伝導量子チップに依存して論理ゲート演算を実現する。超伝導量子チップは単純に、外部回路及びジョセフソン接合からなると見なすことができ、そのうち、ジョセフソン接合は超伝導量子チップのコアなデバイスである。
【0042】
ジョセフソン接合を作成する方法の1つはシャドウ蒸着法であり、インサイチュによってイオンミリング、斜め入射蒸着、酸化及びストレート入射蒸着を行い、ジョセフソン接合を形成する。図1を参照するに、それは本出願に係るジョセフソン接合の作成効果図である。そのうち、図1には並列接続される2つのジョセフソン接合101が示されており、この2つのジョセフソン接合101はジョセフソン接合パッチ102によって外部回路に接続される。図1に示すように、インサイチュによってイオンミリング、斜め入射蒸着、酸化及びストレート入射蒸着を行った後に、量子ビットコンポーネントに寄生接合103が生じることがあり、該寄生接合は図1における点線枠の部分に示すとおりである。
【0043】
図1に示すように、上述のスキームに従ってジョセフソン接合を作成するときに、該ジョセフソン接合を含む量子ビットコンポーネントに大面積の寄生接合が導入され得るため、量子ビットコンポーネントのデコヒーレンスに影響を与え、量子コンピューティングデバイスのパフォーマンスに影響を及ぼすことがある。
【0044】
構造がジョセフソン接合である量子ビットコンポーネントのパフォーマンスを向上させるために、本出願の以下の実施例では新しいジョセフソン接合作成スキームが提供される。
【0045】
図2を参照するに、それは本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合作成方法のフローチャートである。該方法は生産ライン機器により実行され、図2に示すように、該方法は次のようなステップを含んでも良い。
【0046】
ステップ201:ナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成し、回路構造は第一リード、第二リード、及び、第一リード及び第二リードにそれぞれ接続される周辺回路を含み、第一リード、第二リード及び周辺回路は一体構造である。
【0047】
1つの可能な実現方式において、第一リードの延長線は第二リードと交差する。
【0048】
ナノインプリント技術とはフォトレジストを利用してテンプレート上のマイクロナノ構造を加工待ち材料に転写する技術を指す。
【0049】
そのうち、ナノインプリント技術は以下のような3つのステップに分けることができる。
【0050】
第一ステップはテンプレートの加工である。通常、電子ビームエッチングなどの手段を使用してシリコン又は他の基板においてテンプレートとして必要な構造を加工する。電子の回折限界が光子よりも遥かに小さいため、フォトリソグラフィよりも遥かに高いリゾルーション(resolution)を達成できる。
【0051】
第二ステップは図様(パターン)の転写である。加工待ちの材料の表面にフォトレジストを塗布し、その後、テンプレートをその表面に押し当て、加圧の方式でパターンをフォトレジストに転写する。
【0052】
第三ステップは基板の加工である。紫外線を用いてフォトレジストを固化(硬化)させ、テンプレートを剥がした後に、加工待ち材料の表面を露出させ、その後、エッチングの方法で加工を行い、完成後にフォトレジストをすべて除去し、最終的には高精度の加工物を得る。
【0053】
ステップ202:基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成し、アンダーカット構造はストリップ状構造であり、アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域、第二領域及び第三領域を含み、第一領域及び第二領域は上層フォトレジスト及び下層鏤空を有し、第二領域はアンダーカット構造の開口領域であり、第一領域は第一リードの端部を覆い、第二領域は第二リードの一部を覆い、第三領域は第一領域と第二領域との間に位置する。
【0054】
そのうち、上述の開口領域とはフォトレジストが存在しない領域を指す。
【0055】
上述の第一領域は第一リードの端部を覆うとは、基板に垂直な方向において第一領域が第一リードの端部の上に位置することを指し、それ相応に、第二領域は第二リードの一部を覆うことは、基板に垂直な方向において第二領域が第二リードの一部の上に位置することを指す。
【0056】
本出願の実施例において、フォトレジストによるアンダーカット構造はストリップ状であり、かつ第一リード及び第二リードを同時に覆い、そのうち、第一リード及び第二リードのうち、アンダーカット構造によって覆われている部分の上にはともにフォトレジストが存在し、また、アンダーカット構造では、第一リードと第二リードとの間に位置する部分には開口領域が存在する。
【0057】
例えば、図3を参照するに、それは本出願の実施例に係るアンダーカット構造を示す図である。図3における(a)の部分はアンダーカット構造が形成された後の基板の上面図であり、図3における(b)の部分はアンダーカット構造が形成された後の基板の、アンダーカット構造の延伸方向に沿った断面図である。図3に示すように、第一リード31は第二リード32と交差しないが、第一リード31の延長線は第二リード32と交差する。ストリップ状のアンダーカット構造は第一リード31の端部31aから第二リード32を超えて延長し、それぞれ、第一領域33(下層鏤空)、第三領域34(開口)及び第二領域35(下層鏤空)を含み、また、そのうち、第一領域33は第一リード31の端部31aを覆い、第二領域35は第二リード32の一部を覆う。
【0058】
ステップ203:フォトレジストによって覆われていない第二リードの表面に酸化層を形成する。
【0059】
本出願の実施例において、上述のフォトレジストによって覆われていない第二リードの表面に形成される酸化層はその後、ジョセフソン接合における絶縁層とされる。
【0060】
ステップ204:第一領域から第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得し、第一超伝導層はフォトレジストによって覆われていない第二リードの領域を覆い、また、第一超伝導層は第二リードと第一リードとの間の一部の基板を覆う。
【0061】
本出願の実施例において、上述のアンダーカット構造における第一領域と第二領域との間に開口が存在するので、第一領域から第二領域への方向に従って超伝導材料を斜め蒸着させるときに、超伝導材料は開口を通じてフォトレジストによって覆われていない第二リードの表面に斜め蒸着させられ、第一超伝導層を形成し、該第一超伝導層はフォトレジストによって覆われていない第二リードの表面だけでなく、一部の基板をも覆う。フォトレジストによって覆われていない第二リードの表面、及び事前作成された酸化層によって、第一超伝導層、酸化層、及びフォトレジストによって覆われていない第二リードの部分は“超伝導層-絶縁層-超伝導層”のジョセフソン接合を形成し得る。
【0062】
ステップ205:第二領域から第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させ、第二超伝導層はフォトレジストによって覆われていない第一リードの領域、第二リードと第一リードとの間の一部の基板、及び第一超伝導層の一部を覆う。
【0063】
1つの可能な実現方式において、上述のステップ204乃至ステップ205の実現プロセスはインサイチュ環境で行うことができる。
【0064】
ステップ204における蒸着方向は第一領域から第二領域への方向から傾斜した方向であり、第一リードの上はアンダーカット構造の第一領域であり、フォトレジストの遮断が存在するので、第一リードの端部は超伝導材料が蒸着されられることがない。つまり、第一リードはステップ204で形成されるジョセフソン接合に接続されない。このときに、第二領域から第一領域への方向に従って斜め蒸着を行うことで、第一リードの端部を覆う第二超伝導層を得ることができ、また、該第二超伝導層は第一リードの端部から第一超伝導層に延伸していることで、ジョセフソン接合は第一リードに接続され、これによって上述のジョセフソン接合が周辺回路に接続されるようにさせ、量子コンピューティングデバイスにおける1つの超伝導量子ビットを構成できる。
【0065】
要約すると、本出願の実施例に示すスキームでは、量子コンピューティングデバイスを作成するときに、まず、ナノインプリントの方式でジョセフソン接合の周辺回路、及び、ジョセフソン接合と該周辺回路との接続用のリードを形成し、かつリードと周辺回路は一体構造であり、このようにして、後続に形成されるジョセフソン接合は周辺回路に接続されるためのジョセフソン接合パッチ/ジョセフソン接合バンテージを追加で形成する必要がなくなり、その後、アンダーカット構造によってそれぞれ2つの斜め方向の超伝導材料の蒸着を行うことで、第一超伝導層及び第二超伝導層を作成し、そのうち、第一超伝導層は第二リードと交差する箇所でジョセフソン接合を形成し、第二超伝導層は第一超伝導層及び第一リードの端部に接続され、これによって、第一リードの端部とジョセフソン接合との超伝導接続を行うことができる。上述のスキームによって量子コンピューティングデバイスにおけるジョセフソン接合を作成するときに、寄生接合の導入を回避できるため、量子ビットコンポーネントのデコヒーレンスを向上させ、量子コンピューティングデバイスのパフォーマンスを向上させることができる。
【0066】
図2に示すスキームをもとに、図4を参照するに、それは本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合の作成を示す図である。図4に示すように、該ジョセフソン接合の作成フローは次のとおりであっても良い。
【0067】
S1:ナノインプリントの方式でベースに回路構造を形成する。
【0068】
図4における(a)の部分に示すように、該回路構造は第一リード41、第二リード42、及び第一リード41及び第二リード42にそれぞれ接続される周辺回路43を含む。
【0069】
そのうち、上述の第一リード41は第二リード42と交差しないが、第一リード41の延長線は第二リード42と交差する(つまり、上述の第一リード41は第二リード42に平行でない)。上述の第一リード41、第二リード42及び周辺回路はナノインプリントにより形成される一体構造であり、ジョセフソン接合パッチ又はジョセフソン接合バンテージが存在しない。
【0070】
S2:基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成する。
【0071】
図4における(b)の部分に示すように、アンダーカット構造はストリップ状構造であり、アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域44、第二領域45及び第三領域46を含み、第一領域44は第一リード41の端部を覆い、第二領域45は第二リード42の一部を覆い、第三領域46は第一領域44と第二領域45との間に位置する。
【0072】
S3:フォトレジストによって覆われていない第二リードの表面に酸化層を形成する。
【0073】
図4における(b)の部分に示すように、酸化層47は第二リードを構成する超伝導材料が純酸素に接触した後に酸化することで生成されても良く、第二領域によって覆われている第二リードの部分のみが純酸素に接触し得るので、上述の酸化層47もフォトレジストによって覆われていない第二リードの表面に制限され得る。
【0074】
S4:第一領域から第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させる。
【0075】
そのうち、図4における(c)の部分に示すように、第一領域44、第二領域45及び第三領域46からなるアンダーカット構造によって、第一領域から第二領域への方向に超伝導材料を斜め蒸着させるときに、超伝導材料は第三領域46の処の開口を通じて第二リードの処に斜め入射できるが、第一リードの処に入射できないため、第二リード及び第二リードと第一リードとの間の一部のベースにのみ第一超伝導層48を形成でき、そのうち、第二リード42、酸化層47及び第一超伝導層48は第二リード42の処でジョセフソン接合を構成する。
【0076】
S5:第二領域から第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させる。
【0077】
そのうち、図4における(d)の部分に示すように、第二超伝導層49はフォトレジストによって覆われていない第一リード41の領域、第二リード42と第一リード41との間の一部の基板、及び第一超伝導層48の一部を覆う。第二超伝導層49は第一超伝導層48と第一リード41超伝導とを接続することで、第二リード42、酸化層47及び第一超伝導層48によって第二リード42の処で構成されるジョセフソン接合が周辺回路に接続されるようにさせることができる。
【0078】
上述の図2及び図4に示すスキームでは、フォトレジストによって覆われていない第二リードの表面に酸化層を形成するプロセスにおいて、先に、フォトレジストによって覆われていない第一リード及び第二リードの表面に酸化層を形成し、次に、フォトレジストによって覆われていない第一リードの表面の酸化層を除去しても良い。
【0079】
図5を参照するに、それは本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合作成方法のフローチャートである。図5に示すように、該方法は以下のようなステップを含んでも良い。
【0080】
ステップ501:ナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成する。
【0081】
そのうち、上述の回路構造は第一リード、第二リード、及び第一リード及び第二リードにそれぞれ接続される周辺回路を含み、第一リード、第二リード及び周辺回路は一体構造である。
【0082】
1つの可能な実現方式において、第一リードの延長線は第二リードと交差する。
【0083】
1つの可能な実現方式において、上述のナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成することは、
基板に超伝導膜層を形成し;
超伝導膜層にナノインプリント接着剤をスピンコーティングし;
ナノインプリントマスクによりナノインプリント接着剤に回路構造の構造パターンをインプリントし;
構造パターンに基づいて超伝導膜層においてエッチングを行い;及び
基板上のナノインプリント接着剤を洗浄し、基板に位置する回路構造を得ることを含む。
【0084】
本出願の実施例において、上述の超伝導膜層の厚さを制御することで、超伝導膜層が量子コンピューティングデバイスの回路要件を満たすようにさせることができ、例えば、上述の超伝導膜層の厚さは80ナノメートル(nm)乃至120nmの範囲に設定され得る。
【0085】
例えば、本出願の実施例の1つの可能な実現方式において、上述の超伝導膜層の厚さは100ナノメートルであっても良い。
【0086】
例えば、本出願の実施例において、蒸着装置により基板に超伝導材料(例えば、アルミニウム)を蒸着させることができ、蒸着時間、超伝導膜層増加速度などのファクターを制御することで、超伝導膜層の厚さが略100nmになるようにさせることができる。
【0087】
1つの可能な実現方式において、上述の構造パターンに基づいて超伝導膜層においてエッチングを行うプロセスは、
ドライエッチングの方式で、構造パターンに基づいて超伝導膜層においてエッチングを行うことを含んでも良い。
【0088】
あるいは、もう1つの可能な実現方式において、ウェットエッチングの方式で、構造パターンに基づいて超伝導膜層においてエッチングを行っても良い。
【0089】
1つの可能な実現方式において、構造パターンに基づいて超伝導膜層においてエッチングを行う前に、さらに、ナノインプリント接着剤のインプリント溝に残っているナノインプリント接着剤を除去しても良い。
【0090】
まず、電子ビーム蒸発又は分子ビームエピタキシー(Molecular Beam Epitaxy、MBE)装置を使用して、サファイア又はシリコンのベースに厚さが100nmの高品質アルミニウム膜を成長させる。そして、アルミニウム膜にナノインプリント接着剤をスピンコーティングする。その後、ナノインプリント装置及びナノインプリントマスクを用いて、読み取り線、共振空洞、コンデンサなどを含む量子チップの回路構造、及びジョセフソン接合の底層アルミニウムを接着剤にインプリントする。それから、プラズマ式接着剤除去装置を使用して、ナノインプリント接着剤溝に残っているフォトレジストを除去する。最後に、ドライエッチング又はウェットエッチングにより、アルミニウム膜においてエッチングを行うことでパターンを形成し、そのうち、ドライエッチングを使用するときに、構造のサイズをより正確に制御でき、かつエッチング後のアルミニウム膜の構造の特性がより良い。エッチングによりアルミニウム膜構造を形成した後にナノインプリント接着剤を洗浄でき、最終的には図4における(a)の部分の結果を得ることができる。そのうち、周辺回路43は大きな回路構造を表し、線幅は一般に数ミクロンから十数ミクロンであり、この部分はリードの方式でチップ以外の回路に接続され得る。第一リード41及び第二リード42はジョセフソン接合の底層アルミニウムを表しても良く、線幅は200nm以下であっても良い。
【0091】
そのうち、上述の周辺回路は読み取り線、共振チャンバー、コンデンサなどのサイズが比較的大きいミクロンレベルの回路を含んでも良い。
【0092】
ステップ502:基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成する。
【0093】
そのうち、上述のアンダーカット構造はストリップ状構造であり、アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域、第二領域及び第三領域を含み、第一領域及び第二領域は上層フォトレジスト及び下層鏤空を有し、第二領域はアンダーカット構造の開口領域であり、第一領域は第一リードの端部を覆い、第二領域は第二リードの一部を覆い、第三領域は第一領域と第二領域との間に位置する。
【0094】
オプションとして、第二リードのうち、第二領域で覆われている部分は、第二リードの端部であっても良く、第二リードの他の部分であっても良い。
【0095】
1つの可能な実現方式において、第一リードは第二リードに垂直であり、かつ第一リードはアンダーカット構造に平行である。そのうち、上述の第一リードはアンダーカット構造に平行であるとは、第一リードがストリップ状のアンダーカット構造の延伸方向(長手方向)に平行であることを指しても良い。
【0096】
本出願の実施例において、ジョセフソン接合の量子パフォーマンスを確保し、作成の難易度を下げるために、第一リードと第二リードが互いに垂直であるように設定しても良い。
【0097】
オプションとして、多様な回路配線の要件を満たすために、上述の第一リードと第二リードが互いに垂直でないように設定しても良く、それ相応に、第一リードとアンダーカット構造が互いに平行でないよう設定しても良い。
【0098】
例えば、図6を参照するに、それは本出願の実施例に係る回路構造及びアンダーカット構造を示す図である。図6に示すように、回路構造における第一リード61と第二リード62は45度の角度を成しており、かつ両者は交差せず、アンダーカット構造は第一リード61及び第二リード62にまたがっており、アンダーカット構造における第一領域63a(底部鏤空)及び第二領域63b(底部鏤空)はそれぞれ、第一リード61及び第二リード62の端部を覆い、また、第一領域63aと第二領域63bとの間には開口する第三領域63cが存在する。
【0099】
1つの可能な実現方式において、アンダーカット構造は第四領域をさらに含み、第四領域はアンダーカット構造の開口領域であり、第二領域は第三領域と第四領域との間に位置する。
【0100】
1つの可能な実現方式において、第二領域の長さは第一領域の長さよりも大きく、第二リードのうち、第二領域によって覆われている部分は、第二領域のうち、第三領域に近い一方側に位置する。
【0101】
例えば、図7を参照するに、それは本出願の実施例に係るもう1つの回路構造及びアンダーカット構造を示す図である。図7における(a)の部分に示すように、回路構造における第一リード71と第二リード72は90度の角度を形成しており、アンダーカット構造は第一領域73a(底部鏤空)、第二領域73b(底部鏤空)、第三領域73c(開口領域)及び第四領域73d(開口領域)を含み、そのうち、第一領域73aは第一リード71端部を覆い、第二領域73bは第二リード72端部を覆い、かつ継続して左側(第一領域73aに対する他方の側)へ延伸しており、第三領域73cは第一領域73aと第二領域73bとの間に位置し、第四領域73dは第二領域73bの他方の側に位置する。そのうち、第二リード72の端部は第一領域73aに近い第二領域73bの一方側(左側)に位置する。
【0102】
本出願の実施例において、底層アルミニウムのエッチングを完了した後に、電子ビームフォトレジストを用いて、電子ビーム露光の方法でジョセフソン接合領域においてアンダーカット構造を形成でき、該アンダーカット構造とは上の層にフォトレジストがあり、下の層が空洞である構造を指し、図7における(a)の部分に示すとおりである。このステップではMMA(Methyl Methacrylate)とPMMA(Poly Methyl Methacrylate)の2層接着剤の方法でフォトリソグラフィを行うことができ、露出剤の量はそれぞれ、150μC/cm2及び450μC/cm2として選択されても良く、その後、MIBK(Methyl Isobutyl Ketone)とIPA(Isopropyl Alcohol)の混合液を使用して現像を行い、そして、IPAを使用して定着操作を行うことができる。そのうち、図7における第三領域73c及び第四領域73dはフォトレジストが現像によって除去されることでベースを環境に露出させる部分を表し、第一領域73a及び第二領域73bはアンダーカット構造、即ち、上の層にフォトレジストがあり、かつ下の層が空洞である構造を表す。第一領域73a及び第二領域73bにおける一部の領域のアンダーカット構造はジョセフソン接合の底層アルミニウム(即ち、2つのリードの端部)と重ね合っている。図7における(b)の部分に対応するのは図7における(a)の部分の点線に沿った側面図であり、そのうち、領域74はアンダーカット構造のストップ範囲(境界範囲)を表し、即ち、ここからの右側は完全なフォトレジストである。
【0103】
ステップ503:フォトレジストによって覆われていない第一リード及び第二リードの表面に対してイオンエッチングを行う。
【0104】
本出願の実施例において、上述の回路構造を形成した後に、第一リード及び第二リードは大気中に露出する可能性があるため、第一リード及び第二リードの露出した表面は空気中の酸素と酸化反応を行って自然酸化層を生成する恐れがある。自然酸化層は通常、緻密ではなく、その絶縁性能は比較的低いため、後続に形成される酸化層の絶縁性能に影響を及ぼすことがある。このため、本出願の実施例において、緻密な酸化層を形成する前に、先にイオンエッチングの方式で、フォトレジストによって覆われていない第一リード及び第二リードの表面の自然酸化層を除去できる。
【0105】
1つの可能な実現方式において、フォトレジストによって覆われていない第一リード及び第二リードの表面に対してイオンエッチングを行うことは、
イオンエッチングの傾斜角を不変に保ち、基板を回転させることを含む。
【0106】
本出願の実施例において、イオンエッチングの傾斜角度を不変に保ちながら、基板を回転される方式で、イオン流がアンダーカット構造に十分に進入するようにさせることができるため、第一リード及び第二リードの表面の自然酸化層の除去効果を向上させることができる。
【0107】
本出願の実施例において、アンダーカット構造を形成した後に、プラズマを用いて所定の角度(例えば、図7の左斜め方向)で第三領域73c、第四領域73dなどの領域に照射し、また、比較的大きなイオンエッチングのベベル角をできるだけ制御すると同時に、ベースが所定の回転速度で水平方向に回転するように制御することで、プラズマが第三領域73c及び第四領域73dに十分に進入するようにさせることができ、この回転速度は10rpmとして選択されても良く、これによってプラズマは第一リード71及び第二リード72上の露出部分の自然酸化層を均一かつ完全に除去できる。
【0108】
ステップ504:基板を純酸素雰囲気の酸化チャンバーに置いて酸化させる。
【0109】
本ステップではフォトレジストによって覆われていない第二リードの表面に酸化層を形成できる。
【0110】
1つの可能な実現方式において、酸化チャンバー内の圧力は4トールであり(Torr)、酸化チャンバー内の基板の酸化時間長は1000乃至2000秒である。
【0111】
本出願の実施例において、基板をインサイチュの方式(真空環境を維持した状態)で酸化チャンバーに置いて純酸素の環境で酸化させることができる。このときに、酸化チャンバー内の圧力が約4Torr、酸化時間が1000s~2000sになるように設定することで、より緻密な酸化層を得ることができ、また、酸化時のチャンバー内の圧力及び酸化時間を精確に制御することで必要なジョセフソン接合の抵抗を得ることができる。
【0112】
ステップ505:第一領域から第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得する。
【0113】
そのうち、第一超伝導層はフォトレジストによって覆われていない第二リードの領域、及び第二リードと第一リードとの間の一部の基板を覆う。
【0114】
1つの可能な実現方式において、第一超伝導層の蒸着増加レートは毎秒1ナノメートルであり、第一超伝導層の厚さは100ナノメートルである。
【0115】
図8を参照するに、それは本出願の実施例に係る酸化後の結果を示す図である。そのうち、酸素に露出した超伝導膜(例えば、アルミニウム膜)はすべて酸化可能であり、そのうち、領域81及び領域82は酸化チャンバーにおいて酸化した後に得た緻密な酸化アルミニウム層を表し、これはジョセフソン接合の作成における重要なステップの1つである。その後、図8に示す左斜め方向に沿って、領域81で表される酸化アルミニウム膜層に1層のアルミニウム膜をコーティングする。そのうち、コーティングレートは1nm/sとして選択でき、アルミニウム膜の厚さは100nmとして選択できる。
【0116】
図9を参照するに、それは本出願の実施例に係るアルミニウムコーティング後の効果図である。図9に示すように、そのうち、領域91に示すアルミニウム-酸化アルミニウム-アルミニウムの構造は得られたジョセフソン接合である。図8に示すステップにおいてコーティング方向が左斜め方向であるので、ジョセフソン接合が得られるだけでなく、ベースに新たなアルミニウム膜も1層コーティングされ、例えば、図9に示す領域92の部分である。また、コーティング角度を精確に制御することで、新たにコーティングされる領域92の部分と、領域93の部分(即ち、第一リード端部)との距離を比較的に近づけることができるが、領域92は領域93には接触せず、領域92と領域93との距離は数百ナノメートルのオーダーになるように制御できる。
【0117】
ステップ506:第二領域から第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行う。
【0118】
該ステップではフォトレジストによって覆われていない第一リードの表面の酸化層を除去できる。
【0119】
1つの可能な実現方式において、第二領域から第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行う時間長は2分であり、エッチングパワーは200ワットである。
【0120】
ステップ504に示すような酸化ステップでは、酸化チャンバーにおいて酸化を行うときに、露出したすべての超伝導膜(例えば、アルミニウム膜)の表面に酸化アルミニウムを形成させることができ、即ち、図8における領域81及び領域82で表される部分であり、そのうち、領域81はジョセフソン接合を形成するためのものであり、本出願に示すスキームに必要な部分であり、領域82に示す領域は外部回路に接続される必要があるから、この部分の領域の酸化層は除去される必要があり、さもなければ、寄生接合を形成し、ビットパフォーマンスに影響を与えることができる。図10を参照するに、それは本出願の実施例に係る酸化層の除去を示す図である。図10における(a)の部分に示すように、右下への方向に沿って、第一リードの端部に追加で形成された酸化アルミニウムを除去し、即ち、領域1001の部分の酸化層を除去し、このときに、プラズマによる酸化アルミニウムへの照射時間は2minとして選択されても良く、パワーは200Wとして選択されても良い。また、領域1002に示すアンダーカット構造が領域1003に示すアンダーカット構造よりも大きいので、イオンビームの傾斜角度を制御することで、領域1001の部分における酸化アルミニウムが除去されることを実現するとともに、プラズマがジョセフソン接合の領域に作用しないように保証することもできる。
【0121】
本出願の実施例において、プラズマを領域1001に照射するときに、不純物が生じてジョセフソン接合の接合領域の酸化層に落ちることで、ビットパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があるので、上述のステップ506はステップ505の後に実行されても良い。
【0122】
オプションとして、上述のステップ506はステップ505の前に実行されても良く、このようにして、プラズマを領域1001の部分の酸化層に照射するときに図9における領域92の部分に新たにコーティングされる超伝導膜層に影響することを回避できる。
【0123】
ステップ507:第二領域から第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させる。
【0124】
そのうち、第二超伝導層はフォトレジストによって覆われていない第一リードの領域、第二リードと第一リードとの間の一部の基板、及び第一超伝導層の一部を覆う。
【0125】
本出願の実施例において、第一超伝導層の蒸着及び第一リード上の酸化層の除去の後に、図10における(b)の部分に示すように、右斜め下方向に沿って超伝導膜(アルミニウム膜)をコーティングできる。ここでアルミニウム膜をコーティングする目的は領域1004(第一超伝導層)と領域1005(第一リードの端部)を接続することにあり、また、領域1002に示すアンダーカット構造が領域1003に示すアンダーカット構造よりも大きいので、イオンビームの傾斜角度を制御することで、アルミニウム膜がコーティングされるときに領域1004と領域1005との接続のみを行い、アルミニウム膜をジョセフソン接合領域にコーティングしないようにさせることができる。このときに、ジョセフソン接合と外部回路との接続を完了する。そのうち、第二超伝導層のコーティングレートは1nm/sとして選択されても良く、アルミニウム膜の厚さは100nmとして選択されても良い。
【0126】
図11を参照するに、それは本出願の実施例に係るジョセフソン接合領域を示す図である。図11に示すように、本出願の実施例に示すスキームにより得られる量子コンピューティングデバイスは、ジョセフソン接合にのみ酸化アルミニウム膜があり、他の領域には寄生接合が存在しない。また、領域1101に示す非常に小さい領域のベースにのみプラズマが照射されるので、ベースの損傷によるビットパフォーマンスへの影響を大幅に低減することができる。
【0127】
要約すると、本出願の実施例に示すスキームでは、量子コンピューティングデバイスを作成するときに、まず、ナノインプリントの方式でジョセフソン接合の周辺回路、及びジョセフソン接合と該周辺回路とを接続するリードを形成し、かつリード及び周辺回路は一体構造であり、このようにして、後続に形成されるジョセフソン接合は周辺回路に接続されるためのジョセフソン接合パッチ/ジョセフソン接合バンテージを追加で形成する必要がなくなり、その後、アンダーカット構造によってそれぞれ2つの斜め方向の超伝導材料の蒸着を行うことで、第一超伝導層及び第二超伝導層を形成し、そのうち、第一超伝導層は第二リードと交差する処でジョセフソン接合を形成し、第二超伝導層は第一超伝導層と第一リードの端部とを接続し、これによって、第一リードの端部とジョセフソン接合との超伝導接続を行うことができる。上述のスキームによって量子コンピューティングデバイスにおけるジョセフソン接合を作成するときに、寄生接合の導入を回避できるため、量子ビットコンポーネントのデコヒーレンスを向上させ、量子コンピューティングデバイスのパフォーマンスを向上させることができる。
【0128】
本出願の基本的な構想はまず、ナノインプリントの方法を用いて大きな回路構造及びジョセフソン接合の底層アルミニウム構造を一度に形成することにある。ナノインプリントの方法によるリゾルーションが数ナノメートルに達でき、かつ機械的インプリントに属するので、インプリントによって大きな面積の構造を迅速に形成できる。よって、ミクロンレベルの回路構造及びナノメートルレベルジョセフソン接合は同じマスクに作成できる。
【0129】
図12は本出願の1つの例示的な実施例に係る量子コンピューティングデバイスの作成のフローチャートである。図12に示すように、該量子コンピューティングデバイスの作成の基本的なフローは以下のようなステップを含んでも良い。
【0130】
S1201:まず、量子チップの回路構造に従ってナノインプリントのマスクを形成する。
【0131】
S1202:次に、ナノインプリントのマスクを用いてフォトレジストにパターンをインプリメントし、それは読み取り線、共振チャンバー、コンデンサ及び接合領域を含む。
【0132】
ナノインプリントでは機械的圧力を使用してフォトレジストに凹溝構造をインプリントするため、凹溝の底部には明らかなフォトレジストの残留物がある。続いて、プラズマ式接着剤除去装置を使用して凹溝底部の残留フォトレジストを除去する。
【0133】
S1203:アルミニウム膜においてエッチングにより回路構造を形成し、それは読み取り線、共振チャンバー、コンデンサなどの、サイズが比較的大きいミクロンレベルの回路、及びジョセフソン接合の底層アルミニウムのような、サイズが比較的小さいナノメートル級回路を含み、このステップではドライエッチング又はウェットエッチングを利用できる。
【0134】
S1204:そして、ナノインプリントフォトレジストを除去し、その後、電子ビームフォトレジストを用いてジョセフソン接合領域において露出によりアンダーカット構造を形成する。
【0135】
S1205:アルミニウム膜の表面が空気中に非常に酸化しやすいので、アンダーカット構造を形成した後にコーティング装置でプラズマを用いてアルミニウム膜の表面の自然酸化層を除去し、また、このステップではベースが所定の回転速度で回転するように制御できるから、酸化層の除去プロセスがより均一かつ完全になるようにさせることができる。
【0136】
S1206:その後、コーティング装置の酸化チャンバーにおいてアルミニウム膜の酸化を行うことで、緻密な酸化層を得る。
【0137】
S1207:その後、酸化層においてアルミニウム膜を1層斜め蒸着させてジョセフソン接合を得る。
【0138】
S1208:他方の側でプラズマを用いて酸化層を除去して膜のコーティングを行うことで、ジョセフソン接合が外部回路と導通するようにさせる。
【0139】
S1209:最後にフォトレジストを洗浄し、量子コンピューティングデバイスのチップを取得する。
【0140】
本出願の実施例に示すスキームでは、ナノインプリントの方式で大きな回路構造及びジョセフソン接合の底層アルミニウムを一度に形成することで、量子コンピューティングデバイス作成プロセスでの寄生接合の形成を避け、ビットパフォーマンスへの影響を減少させることができる。
【0141】
今のところ、一般的に使用されているジョセフソン接合の底層アルミニウムの形成方法は剥離の方法であるが、本出願の各実施例に示すスキームではエッチングの方法を採用してジョセフソン接合の底層アルミニウムの構造を形成することで、量子コンピューティングデバイスの品質を向上させることができる。
【0142】
図13を参照するに、それは本出願の1つの実施例で提供されるプロダクト適用シナリオを示す図である。図13に示すように、本出願の実施例で作成される量子コンピューティングデバイスのプロダクト(例えば、量子コンピューティングチップ)は図13に示すような適用シナリオに用いることができ、該適用シナリオは超伝導量子コンピューティングプラットホームであっても良く、該適用シナリオは量子コンピューティングデバイス131、希釈冷凍機132、制御装置133及びコンピュータ134を含む。
【0143】
量子コンピューティングデバイス131は物理量子ビットに作用する回路であり、量子コンピューティングデバイス131は量子チップ、例えば、絶対零度近傍にある超伝導量子チップとして実現されても良い。希釈冷凍機132は超伝導量子チップに絶対零度の環境を提供するために用いられる。そのうち、上述の物理量子ビットは本出願の上述の実施例に示す方法により作成されるジョセフソン接合であっても良い。
【0144】
制御装置133は量子コンピューティングデバイス131を制御するために用いられ、コンピュータ134は制御装置133を制御するために用いられる。例えば、書かれた量子プログラムはコンピュータ134におけるソフトウェアによって命令にコンパイルされ、この命令は制御装置133(例えば、電子/マイクロ波制御システム)に送信される。制御装置133は上述の命令を電子/マイクロ波制御信号を変換して希釈冷凍機132に入力することで、10mK未満の温度の超伝導量子ビットを制御する。読み取りプロセスはそれと逆であり、読み取り波形は量子コンピューティングデバイス131に伝送される。
【0145】
図14は本出願の1つの例示的な実施例に示すジョセフソン接合作成システムを示す図である。該ジョセフソン接合作成システムは生産ライン機器として実現され得る。図14に示すように、該ジョセフソン接合作成システムはナノインプリントサブシステム1401、フォトリソグラフィサブシステム1402、酸化サブシステム1403、及び蒸着サブシステム1404を含む。
【0146】
前記ナノインプリントサブシステム1401はナノインプリントの方式で基板に回路構造を形成するために用いられ、前記回路構造は第一リード、第二リード、及び、前記第一リード及び前記第二リードにそれぞれ接続される周辺回路を含み、前記第一リード、前記第二リード及び前記周辺回路は一体構造である。
【0147】
1つの可能な実現方式において、前記第一リードの延長線は前記第二リードと交差する。
【0148】
そのうち、上述のナノインプリントサブシステム1401はスピンコーティング装置(ナノインプリント接着剤をスピンコーティングするために用いられる)、ナノインプリント装置(回路パターンをインプリントするために用いられる)、接着剤除去装置(ナノインプリント接着剤を除去するために用いられる)、エッチング装置(超伝導膜層をエッチングするために用いられる)などを含んでも良い。
【0149】
前記フォトリソグラフィサブシステム1402は前記基板にフォトレジストによるアンダーカット構造を形成するために用いられ、前記アンダーカット構造はストリップ状構造であり、前記アンダーカット構造は首尾が相接する第一領域、第二領域及び第三領域を含み、前記第一領域及び前記第二領域は上層フォトレジスト及び下層鏤空を有し、前記第二領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第一領域は前記第一リードの端部を覆い、前記第二領域は前記第二リードの一部を覆い、前記第三領域は前記第一領域と前記第二領域との間に位置する。
【0150】
そのうち、上述のフォトリソグラフィサブシステム1402はスピンコーティング装置(フォトレジストをスピンコーティングするために用いられる)、フォトリソグラフィ装置(フォトレジストに対してフォトリソグラフィを行うために用いられる)、現像装置(フォトリソグラフィ後のフォトレジストに対して露出・現像を行うために用いられる)、洗浄剤(残りの露出したフォトレジストを洗浄するために用いられる)などを含んでも良い。
【0151】
前記酸化サブシステム1403はフォトレジストで覆われていない前記第二リードの表面に酸化層を形成するために用いられる。
【0152】
上述の酸化サブシステム1403は酸化チャンバーを含んでも良い。
【0153】
前記蒸着サブシステム1404は前記第一領域から前記第二領域への方向に従って第一超伝導層を斜め蒸着させ、ジョセフソン接合を取得するために用いられ、前記第一超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第二リードの領域を覆い、前記第一超伝導層は前記第二リードと前記第一リードとの間の一部の基板を覆う。
【0154】
前記蒸着サブシステム1404はさらに、前記第二領域から前記第一領域への方向に従って第二超伝導層を斜め蒸着させるために用いられ、前記第二超伝導層はフォトレジストで覆われていない前記第一リードの領域、前記第二リードと前記第一リードとの間の一部の基板、及び前記第一超伝導層の一部を覆う。
【0155】
上述の蒸着サブシステム1404は蒸着装置(超伝導材料を蒸着させるために用いられる)を含んでも良い。
【0156】
1つの可能な実現方式において、前記アンダーカット構造は第四領域をさらに含み、前記第四領域は前記アンダーカット構造の開口領域であり、前記第二領域は前記第三領域と前記第四領域との間に位置する。
【0157】
1つの可能な実現方式において、前記第二領域の長さは前記第一領域の長さよりも大きく、前記第二領域で覆われている前記第二リードの部分は前記第二領域のうち、前記第三領域に近い一方側に位置する。
【0158】
1つの可能な実現方式において、前記酸化サブシステムは前記基板を純酸素雰囲気の酸化チャンバーに置いて酸化させるために用いられる。
【0159】
前記ジョセフソン接合作成システムはエッチングサブシステムをさらに含み、それは前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行うことで、フォトレジストによって覆われていない前記第一リードの表面の酸化層を除去するために用いられる。
【0160】
1つの可能な実現方式において、前記第二領域から前記第一領域への方向に従って傾斜してイオンエッチングを行う時間長は2分であり、エッチングパワーは200ワットである。
【0161】
1つの可能な実現方式において、前記酸化チャンバー内の圧力は4トールであり、前記酸化チャンバーにおける前記基板の酸化時間長は1000乃至2000秒である。
【0162】
1つの可能な実現方式において、前記エッチングサブシステムはさらに、フォトレジストによって覆われていない前記第一リード及び前記第二リードの表面に対してイオンエッチングを行うために用いられる。
【0163】
1つの可能な実現方式において、前記エッチングサブシステムはイオンエッチングの傾斜角度を不変に保ち、基板を回転させるために用いられる。
【0164】
1つの可能な実現方式において、前記第一超伝導層の蒸着増加レートは毎秒1ナノメートルであり、前記第一超伝導層の厚さは100ナノメートルである。
【0165】
1つの可能な実現方式において、前記第一リードは前記第二リードに垂直であり、かつ前記第一リードは前記アンダーカット構造に平行である。
【0166】
1つの可能な実現方式において、前記ナノインプリントサブシステム1401は、
前記基板に超伝導膜層を形成し;
前記超伝導膜層にナノインプリント接着剤をスピンコーティングし;
ナノインプリントマスクにより前記ナノインプリント接着剤に前記回路構造の構造パターンをインプリントし;
前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層に対してエッチングを行い;及び
前記基板上の前記ナノインプリント接着剤を洗浄し、前記基板に位置する前記回路構造を取得するために用いられる。
【0167】
1つの可能な実現方式において、前記超伝導膜層の厚さは100ナノメートルである。
【0168】
1つの可能な実現方式において、前記ナノインプリントサブシステム1401はドライエッチングの方式で、前記構造パターンに基づいて前記超伝導膜層に対してエッチングを行うために用いられる。
【0169】
1つの可能な実現方式において、前記ナノインプリントサブシステム1401はさらに、前記ナノインプリント接着剤のインプリント溝に残っているナノインプリント接着剤を除去するために用いられる。
【0170】
オプションとして、各サブシステムの間、及びサブシステムにおける各装置の間はコンベアベルトを介して空間的に接続され、あるいは、ロボットアームのようなもので作成物の各装置間の移動を完了しても良い。
【0171】
オプションとして、該ジョセフソン接合作成システムは記憶器をさらに含み、該記憶器は少なくとも1つのコンピュータ命令を記憶するために用いられ、処理器は上述の少なくとも1つのコンピュータ命令を実行することで、ジョセフソン接合作成システムに、上述のジョセフソン接合作成方法を実現させる。
【0172】
要約すると、本出願の実施例に示すスキームでは、量子コンピューティングデバイスを作成するときに、まず、ナノインプリントの方式でジョセフソン接合の周辺回路、及びジョセフソン接合と該周辺回路との接続用のリードを形成し、かつリード及び周辺回路は一体構造であり、このようにして、後続に作成されるジョセフソン接合は周辺回路に接続されるためのジョセフソン接合パッチ/ジョセフソン接合バンテージを追加で形成する必要がなくなり、その後、アンダーカット構造によってそれぞれ2つの斜め方向の超伝導材料の蒸着を行うことで、第一超伝導層及び第二超伝導層を作成し、そのうち、第一超伝導層は第二リードと交差する処でジョセフソン接合を形成し、第二超伝導層は第一超伝導層と第一リードの端部とに接続され、これによって、第一リードの端部とジョセフソン接合との超伝導接続を行うことができる。上述のスキームによって量子コンピューティングデバイスにおけるジョセフソン接合を作成するときに、寄生接合の導入を回避できるため、量子ビットコンポーネントのデコヒーレンスを向上させ、そして、量子コンピューティングデバイスのパフォーマンスを向上させることができる。
【0173】
1つの例示的な実施例において、コンピュータ可読記憶媒体がさらに提供され、該コンピュータ可読記憶媒体には少なくとも1つのコンピュータ命令が記憶されており、該少なくとも1つのコンピュータ命令はジョセフソン接合作成システムにおける処理器により実行されるときに、ジョセフソン接合作成システムに、上述のジョセフソン接合作成方法を実行させることができる。
【0174】
例示的な実施例において、コンピュータプログラムプロダクト又はコンピュータプログラムがさらに提供され、該コンピュータプログラムプロダクト又はコンピュータプログラムはコンピュータ命令を含み、該コンピュータ命令はコンピュータ可読記憶媒体に記憶される。生産ライン機器の処理器はコンピュータ可読記憶媒体から該コンピュータ命令を読み取り、処理器は該コンピュータ命令を実行することで、ジョセフソン接合作成システムに、上述のジョセフソン接合作成方法を実行させる。
【0175】
以上、本出願の好ましい実施例を説明したが、本出願はこの実施例に限定されず、本出願の趣旨を離脱しない限り、本出願に対するあらゆる変更は本出願の技術的範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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