(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】上階の床構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20241210BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
E04B5/43 Z
E04B1/24 F
E04B1/24 B
(21)【出願番号】P 2020155526
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】前田 珠希
(72)【発明者】
【氏名】辻 千佳
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332711(JP,A)
【文献】特開昭61-270431(JP,A)
【文献】登録実用新案第3070703(JP,U)
【文献】実開昭58-079601(JP,U)
【文献】特開平01-125438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/43
E04B 1/18
E04B 1/24
E04B 5/10
E04C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階の建物における二階以上の上階の床構造であって、
上階の床は、高さレベルが相対的に高い第一フロアと相対的に低い第二フロアを少なくとも有し、
前記第一フロアと前記第二フロアはそれぞれ、複数の第一床梁と第二床梁を備えており、
前記第一フロアと前記第二フロアの境界に梯子型梁が配設され、前記第一床梁と前記第二床梁がそれぞれ該梯子型梁に接続されて
おり、
前記梯子型梁は、上弦材と、下弦材と、該上弦材及び該下弦材を繋ぐ複数の縦材と、を少なくとも備えており、
前記第一床梁と前記第二床梁がそれぞれ、前記上弦材と前記下弦材に接続されて
おり、
前記梯子型梁の側方において、前記上弦材から前記下弦材に亘る補強プレートが取り付けられており、
前記補強プレートを介して前記第二床梁が前記下弦材に接続されており、
前記補強プレートの広幅面において、前記上弦材から前記第二床梁の上面に亘る補強リブが取り付けられていることを特徴とする、上階の床構造。
【請求項2】
複数の前記第一床梁の間に第一水平ブレースが設けられ、複数の前記第二床梁の間に第二水平ブレースが設けられていることを特徴とする、請求項
1に記載の上階の床構造。
【請求項3】
前記建物の下階の壁には耐力壁架構が設けられており、
前記梯子型梁は、前記耐力壁架構よりも大きな剛性を有していることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の上階の床構造。
【請求項4】
前記梯子型梁の両端もしくは両端近傍のみを下階の柱が支持していることを特徴とする、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の上階の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上階の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一階のリビング等の一部が下げられた(掘り込まれている)建物が存在している。この構造により、一階のリビング等における天井までの高さが高くなり、窓からの光がリビング等に多く取り込まれ易くなることから、より一層の開放感が奏される。
【0003】
一方、二階以上の複数階の建物において、二階以上の上階の床においても、その一部を他の部位よりも低くする構造(もしくは高くする構造)の要請がある。このように上階における居室等の床の一部を他の部位よりも低くする等により、上階の居室等における開放感が一層高められ、さらには上階の居室等に対して様々な利用オプションを付与することができる。
【0004】
ここで、上記する上階の床の一部の高さレベルが相対的に低い(もしくは高い)床構造に関する技術ではないが、例えば一階と二階の間等に設けられるスキップフロアは従来から知られており、特許文献1にスキップフロア構造として提案されている。このスキップフロア構造は、スキップフロアの外周床梁の上方又は下方において、一般床部の床梁と同じ高さレベルに腹巻梁を架構し、この腹巻梁と外周床梁との間の要所に、外周床梁から腹巻梁へ水平力を伝達するための伝達梁が介在しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上階の床の一部の高さレベルを相対的に上下させた場合、この上階を含む建物の構造解析においては、当該上階において床が上下した部分を、床の主架構における吹き抜け領域として床のモデル化を行うことが構造安全性の観点から望ましいものとなる。相対的に床の一部が上下した部分では、床の他の部分との間で例えば地震時の水平力を十分に伝達し難いことがその理由の一つである。
【0007】
このように、上階の居室等における開放感を一層高めるべく、床の一部を相対的に上下させようとすると、構造解析上はこの部分が床の主架構における吹き抜け領域とされることになり、相対的に上下させることのできる一部領域は上階の床において限定的とならざるを得ない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、上階の床の一部の高さレベルを相対的に上下させる場合において、この上下させる一部領域の設定位置が限定されることなく、設計自由度の高い上階の床構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による上階の床構造の一態様は、
複数階の建物における二階以上の上階の床構造であって、
上階の床は、高さレベルが相対的に高い第一フロアと相対的に低い第二フロアを少なくとも有し、
前記第一フロアと前記第二フロアはそれぞれ、複数の第一床梁と第二床梁を備えており、
前記第一フロアと前記第二フロアの境界に梯子型梁が配設され、前記第一床梁と前記第二床梁がそれぞれ該梯子型梁に接続されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、上階の床において、高さレベルが相対的に高い第一フロアと相対的に低い第二フロアの境界に梯子型梁が配設され、第一床梁と第二床梁がそれぞれ梯子型梁に接続されていることにより、剛性の高い梯子型梁を介して第一フロアから第二フロアへ地震時の水平力を十分に伝達できることから、例えば高さレベルが相対的に低い第二フロアの設定位置が限定されることなく、自由な位置に設定することが可能になる。これは、第一床梁と第二床梁が共通の梯子型梁に接続されていることにより、構造解析に際して、例えば高さレベルが相対的に低い第二フロアを上階の床の主架構における吹き抜け領域と見なす必要がなくなり、床の全領域を主架構として構造解析することが可能になるためである。
【0011】
本態様は、建物の鉛直構面に配設されるのが一般的な梯子型梁を、上階の床の高さレベルが異なる第一フロアと第二フロアの境界に適用する床構造である。本態様によれば、設計自由度が高められることから、例えば相対的に低い第二フロアを床の様々な位置に設定することができる。また、相対的に高い第一フロアの床下を例えば床下収納に適用することができ、上階の居室等に対して利用オプションを付与することができる。
【0012】
また、本発明による上階の床構造の他の態様において、前記梯子型梁は、上弦材と、下弦材と、該上弦材及び該下弦材を繋ぐ複数の縦材と、を少なくとも備えており、
前記第一床梁と前記第二床梁がそれぞれ、前記上弦材と前記下弦材に接続されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、梯子型梁を構成する上弦材に第一床梁が接続され、梯子型梁を構成する下弦材に第二床梁が接続され、上弦材と下弦材が複数の縦材に接続されていることから、地震時の水平力を一方の床梁から上弦材もしくは下弦材の一方を介し、複数の縦材を介し、上弦材もしくは下弦材の他方を介して、他方の床梁に伝達することができる。ここで、梯子型梁は、縦材が鉛直材であるフィーレンディール構造の梁であってもよいし、縦材が鉛直材と斜材の双方を含む構造の梁であってもよい。
【0014】
第一床梁に適用される形鋼材(例えばH形鋼)と、これが接続される上弦材に適用される形鋼材は同仕様(同寸法)のものが適用されるのが望ましく、第二床梁に適用される形鋼材(例えばH形鋼)と、これが接続される下弦材に適用される形鋼材も同仕様(同寸法)のものが適用されるのが望ましい。また、上弦材と下弦材の間で水平力を伝達する縦材が高剛性の部材であるのが望ましいことから、この縦材には、鋼管や角パイプ等が適用されるのがよい。
【0015】
また、本発明による上階の床構造の他の態様は、前記梯子型梁の側方において、前記上弦材から前記下弦材に亘る補強プレートが取り付けられており、
前記補強プレートを介して前記第二床梁が前記下弦材に接続されており、
前記補強プレートの広幅面において、前記上弦材から前記第二床梁の上面に亘る補強リブが取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、上弦材から下弦材に亘る補強プレートが取り付けられ、補強プレートの広幅面において、上弦材から第二床梁の上面に亘る補強リブがさらに取り付けられていることから、これら補強プレートと補強リブにより特に縦材が補強され、上弦材と下弦材の間の水平力の伝達に寄与する高強度のユニット(縦材、補強プレート、及び補強リブによるユニット)が形成される。
【0017】
また、本発明による上階の床構造の他の態様は、複数の前記第一床梁の間に第一水平ブレースが設けられ、複数の前記第二床梁の間に第二水平ブレースが設けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、複数の第一床梁の間に第一水平ブレースが設けられ、複数の第二床梁の間に第二水平ブレースが設けられていることにより、上階の床を構成する主架構が各水平ブレースにて補剛され、高剛性の床構造を形成することができる。
【0019】
また、本発明による上階の床構造の他の態様において、前記建物の下階の壁には耐力壁架構が設けられており、
前記梯子型梁は、前記耐力壁架構よりも大きな剛性を有していることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、建物の下階の壁に設けられている耐力壁架構よりも、上階の床に設けられている梯子型梁が大きな剛性を有していることにより、構造解析に用いられる解析モデルにおいて、梯子型梁の全体を剛な梁と見なしてモデル化することができ、簡易なモデル化にて構造解析を行うことができる。仮に、梯子型梁の剛性が弱い場合、構造解析において梯子型梁モデルに変形が生じ得ることから、構造モデルとしては上弦材及び下弦材とこれらを繋ぐ複数の縦材からなる実際の構造を正確に再現してモデル化する必要が生じ、解析モデルの作成に時間を要することになる。
【0021】
また、本発明による上階の床構造の他の態様は、前記梯子型梁の両端もしくは両端近傍のみを下階の柱が支持していることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、剛性の高い梯子型梁を適用することにより、梯子型梁の両端もしくは両端近傍の二点を支持する二本の柱のみを下階に配置することでよく、梯子型梁の両端の二点の間に別途の柱を配置することを不要にできる。従って、例えば4P乃至8P(Pはモジュールを示し、800mm乃至1100mmの間で、例えば910mm幅等、モジュール設計仕様により任意に設定可能)程度大スパンの梯子型梁であっても、その両端近傍の二点を二本の柱で支持する構造が適用できるため、上階の床は高さレベルの相違する構造を有し、この床を支持する下階の柱は可及的に少ない本数でよいことから、下階の空間自由度も高められる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明の上階の床構造によれば、上階の床の一部の高さレベルを相対的に上下させる場合において、この上下させる一部領域の設定位置が限定されることなく、設計自由度の高い上階の床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る上階の床構造の一例の平面図である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であって、床構造の一例のX軸に沿う縦断面図である。
【
図3】(a),(b)はいずれも
図1のIII-III矢視図であって、(a)は床構造の一例のY軸に沿う縦断面図であり、(b)は床構造の変形例のY軸に沿う縦断面図である。
【
図5】
図4のV-V矢視図であって、梯子型梁の一例の長手方向に直交する縦断面図である。
【
図6】
図1のVI方向の矢視図であって、梯子型梁と上弦材と下弦材の接続構造を説明する側面図である。
【
図7】梯子型梁を補強した形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係る上階の床構造について添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0026】
[実施形態に係る上階の床構造]
図1乃至
図7を参照して、実施形態に係る上階の床構造の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る上階の床構造の一例の平面図である。また、
図2は、
図1のII-II矢視図であって、床構造の一例のX軸に沿う縦断面図であり、
図3(a),(b)はいずれも
図1のIII-III矢視図であって、
図3(a)は床構造の一例のY軸に沿う縦断面図であり、
図3(b)は床構造の変形例のY軸に沿う縦断面図である。また、
図4は、
図1のIV方向の矢視図であり、
図5は、
図4のV-V矢視図であって、梯子型梁の一例の長手方向に直交する縦断面図である。さらに、
図6は、
図1のVI方向の矢視図であって、梯子型梁と上弦材と下弦材の接続構造を説明する側面図である。
【0027】
図1に示す上階の床構造40は、
図2に示す二階建て建物50の二階の床構造である。尚、例えば三階建ての建物の場合には、二階及び/又は三階の床に対して図示例の床構造40が適用される。図示例の建物50は、平面視形状が矩形の建物として示しており、その長手方向がX軸方向に沿い、その短手方向がY軸方向に沿っている。長手方向、短手方向ともに、建物の外周に複数(図示例は四つ)の柱10が立設し、一階(1F)と二階(2F)の間の階間には、高さレベルが相対的に高い第一フロア21(
図2参照)を構成する第一床梁20と、相対的に低い第二フロア26(
図2参照)を構成する第二床梁25がそれぞれ、X軸とY軸に沿うように配設されている。建物50の外周における第一床梁20は、胴差となる。
【0028】
図2に示すように、図示例の床構造40は、X軸方向に三等分されたうちの中央領域に第二フロア26が形成され、左右領域に第一フロア21が形成されている。中央領域に高さの低い第二フロア26が設けられていることにより、この第二フロア26における天井までの高さs1が高くなり、開放感のある二階の居室が形成される。図示を省略するが、平面視における第一フロアと第二フロアの設定態様は多様に存在し、例えば
図1における左側領域のみ、もしくは右側領域のみに第二フロアが設けられている形態であってもよいし、
図1における九つの区画のうちのいずれか一つもしくは相互に離れた複数の区画のみに第二フロアが設けられている形態であってもよい。また、第二フロア26の形態として、図示例では、
図3(a)、(b)に示す二つの形態を示している。まず、
図3(a)に示す床構造の一例について、
図1、
図2及び
図3(a)を参照して説明する。
【0029】
図3(a)に示す第二フロア26は、
図1に示す中央領域をさらにY軸方向に三等分した際に、そのうちの上方領域(上方区画)が第一フロア21となっているものであり、従って、
図1において相対的に低い第二フロア26は、
図1においてドットで示すA1領域(下方の二区画)となる。
【0030】
第一フロア21を構成する複数の第一床梁20により形成される水平構面には、複数の第一水平ブレース28Aが交差する態様で配設されている。同様に、第二フロア26を構成する複数の第二床梁25により形成される水平構面においても、複数の第二水平ブレース28Bが交差する態様で配設されている。水平ブレース28は例えばメタルブレースにより形成され、ターンバックルをその途中に有していてもよい。
【0031】
図2に示すように、相互に高さの異なる第一床梁20と第二床梁25は、梯子型梁30を介して相互に接続されている。
図1を参照してこのことを説明すると、X軸方向に三等分されたうちの中央領域と左右領域の境界に、Y軸方向に沿う梯子型梁30Aが配設され、梯子型梁30Aの両端(
図1における上下端)において柱10と接続されている。
【0032】
図3(a)に示す例では、当該中央領域における胴差に相当する位置に別途の梯子型梁30B,30Cが配設されて柱10に接続されており、さらに、当該中央領域における第一フロア21と第二フロア26の境界においても、別途の梯子型梁30Dが配設されている。
【0033】
このように、相互に高さの異なる第一フロア21と第二フロア26の境界に梯子型梁30が配設され、第一フロア21を構成する第一床梁20と第二フロア26を構成する第二床梁25が梯子型梁30に接続される。
【0034】
第一床梁20と第二床梁25はいずれも、同規格のH形鋼(形鋼材の一例)により形成されており、H-200×100やH-250×100等の規格が適用できる。
【0035】
図4及び
図5に示すように、梯子型梁30は、上弦材34A及び下弦材34Bと、上弦材34Aと下弦材34Bの間に配設されて上弦材34Aと下弦材34Bを繋ぐ複数(図示例は七つ)の縦材35とを有する。
【0036】
上弦材34Aと下弦材34BはいずれもH形鋼により形成され、より詳細には、第一床梁20と第二床梁25を形成するH形鋼と同規格のH形鋼により形成されており、
図5に示すように、上弦材34A,下弦材34Bはともに、ウエブ31と上下のフランジ32,33とを有している。
【0037】
一方、縦材35は、鋼管や角パイプ等により形成される高剛性の部材であり、上弦材34Aと下弦材34Bに対してその上下端が溶接もしくはボルトにより剛接合されている。尚、本明細書において、「溶接」とは、開先溶接(完全溶け込み溶接、部分溶け込み溶接)や隅肉溶接など、接続部に要求される強度や接合態様(剛接続、ピン接続)に応じて選択される適宜の溶接を示す。
【0038】
図4に示すように、床構造40においては、梯子型梁30を水平方向に配設することにより、その構成要素としている。
図4に示すように、梯子型梁30は縦材35が鉛直材であるフィーレンディール構造の梁である。尚、縦材として、鉛直材の他に斜材を有し、上弦材34Aと下弦材34Bを鉛直材と斜材の双方で繋ぐ構造の梁であってもよい。
【0039】
図6に示すように、第一床梁20の端部にはエンドプレート20aが溶接接合されており、上弦材34Aの端部にも同様にエンドプレート36が溶接接合されている。双方のエンドプレート20a、36には、図示例のように相互に当接された際に対応する位置にボルト孔(図示せず)が開設されており、各ボルト孔にボルト39が挿通され、締め付けられることによりボルト接合される。
【0040】
一方、第二床梁25の端部にもエンドプレート20aが溶接接合されており、下弦材34Bの端部にも同様にエンドプレート36が溶接接合されている。双方のエンドプレート20a、36の対応する位置に開設されているボルト孔(図示せず)にボルト39が挿通され、締め付けられることによりボルト接合される。尚、上弦材34Aと第一床梁20,下弦材34Bと第二床梁25のそれぞれが、溶接接合される形態であってもよい。
【0041】
また、
図6に示す接続構造に代わり、
図7に示すように、梯子型梁30の側方において、上弦材34Aから下弦材34Bに亘る補強プレート37が取り付けられる形態であってもよい。この形態では、補強プレート37を介して第二床梁25が下弦材34Bにボルト接合される。また、補強プレート37の広幅面において、上弦材34Aから第二床梁25の上方フランジ25aの上面に亘る補強リブ38が溶接接合されている。例えば、縦材35の剛性が小さい場合や、梯子型梁30の剛性をより一層高剛性にしたい場合において、図示例の補強構造は有効になる。
【0042】
このように、相互に高さの異なる第一床梁20と第二床梁25は、剛性の高い梯子型梁30に接続されている。そのため、
図2に示すように、建物50に地震時の水平力Hが作用した際に、一方の第一床梁20(図示例は左側の第一床梁20)から一方の梯子型梁30Aを介して第二床梁25に水平力がZ1方向に伝達され、第二床梁25から他方の梯子型梁30Aを介して他方の第一床梁20(図示例は右側の第一床梁20)に水平力がZ2方向に伝達される。
【0043】
すなわち、相互に高さの異なるフロアを有する床構造において、梯子型梁30を介して各フロアを構成する一方の床梁からの水平力を他方の床梁に十分に伝達することが可能な構造であることから、上階の床に関する構造解析上は、例えば高さの低くなる部分が床の主架構における吹き抜け領域とされることなく、全ての領域を主架構として構造モデルを構築し、構造解析を行うことが可能になる。
【0044】
より詳細には、梯子型梁30は、例えば一階の鉛直構面(壁)に配設される耐力壁架構(図示せず)よりも大きな剛性を有しているのが望ましい。建物の下階の壁に設けられている耐力壁架構よりも、上階の床に設けられている梯子型梁30が大きな剛性を有していることにより、構造解析に用いられる解析モデルにおいて、梯子型梁30の全体を剛な梁と見なしてモデル化することができ、簡易なモデル化にて構造解析を行うことが可能になる。
【0045】
また、梯子型梁30を介して高さの相違する第一床梁20と第二床梁25が接続される構成により、上階の床の一部の高さレベルが相対的に上下する床構造においては、この上下する一部領域の設定位置が限定されることなく(図示例では、第二フロア26の設定位置が限定されない)、設計自由度の高い床構造となる。
【0046】
さらに、高剛性の梯子型梁30を適用することにより、
図1に示すように、梯子型梁30の両端を二本の柱10にて支持するのみで構造安定性が保証されることから、梯子型梁30の途中位置に別途の柱を配設する必要はなく、従って下階(図示例は一階)の設計自由度も高められる。
【0047】
図4に示すように、第一フロア21を構成する第一床梁20(
図4には胴差として図示)と梯子型梁30の上弦材34Aは同じ高さレベルに配設されており、従って、
図1に示す建物50の外周の胴差は、第一床梁20と梯子型梁30の上弦材34Aが連続することにより形成されている。
【0048】
図5に示すように、梯子型梁30の全高t1は、500mm乃至800mm程度(例えば600mm)に設定でき、上弦材34Aと下弦材34BにH-200やH-250を適用する場合、縦材35には高さ100mm乃至300mm程度の角パイプ等が適用される。
【0049】
図3(a)に示す例では、中央領域(
図1参照)が第一フロア21と第二フロア26を有し、第一フロア21と第二フロア26の境界に梯子型梁30Dが配設され、第一フロア21を構成する第一床梁20と第二フロア26を構成する第二床梁25が梯子型梁30に接続されている。そして、相対的に高さの高い第一フロア21の下方空間を、収納空間22として用いる等、二階の床に多様なオプションが付与されている。
【0050】
一方、
図3(b)に示す例は、中央領域(
図1参照)を三等分した上方領域(上方区画)が、完全に吹き抜け27となっている形態である。尚、この形態では、
図1において点線で示す水平ブレース28は不要になる。
【0051】
このように、床の一部に吹き抜け27が存在している場合であっても、吹き抜け27の周囲が高剛性の梯子型梁30にて包囲されていることから、二階の床の全域を主架構として構造解析することが可能になり、吹き抜けの設定位置の自由度が高くなる。
【0052】
また、図示を省略するが、梯子型梁30の下方において、下階(図示例は一階)の耐力壁架構を設置してもよく、梯子型梁30の上方において、上階(図示例は二階)の耐力壁架構を設定してもよい。
【0053】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0054】
10:柱
20:第一床梁
21:第一フロア
22:収納空間
25:第二床梁
26:第二フロア
28:水平ブレース
28A:第一水平ブレース
28B:第二水平ブレース
30,30A,30B,30C:梯子型梁
31:ウエブ
32,33:フランジ
34A:上弦材
34B:下弦材
35:縦材
36:エンドプレート
37:補強プレート
38:補強リブ
39:ボルト
40,40A:床構造(上階の床構造)
50:二階建て建物(建物)