(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】リファイナ
(51)【国際特許分類】
D21D 5/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
D21D5/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020169600
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-08-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ラモン ムニョース
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-033894(JP,A)
【文献】特開2017-002427(JP,A)
【文献】特表2012-531529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロースを含有する繊維材料を精錬するためのリファイナであって、
少なくとも2つの実質的に対向して位置付けられる精錬要素であって、該精錬要素の各々は、ブレードバーと、ブレード溝とを備える、少なくとも1つの精錬面を含み、前記2つの実質的に対向して位置付けられる精錬要素の前記精錬面は、互いに向かい合って面し、それらの間に精錬されるべき繊維材料を収容する精錬チャンバを形成する、前記少なくとも2つの実質的に対向して位置付けられる精錬要素と、
精錬されるべき少なくとも1つの繊維材料留分を当該リファイナ内に給送するための少なくとも2つの給送チャネルと、
少なくとも2つの精錬ゾーンであって、該精錬ゾーンの間に少なくとも1つの異なる精錬面特性を有し、各精錬ゾーンは、前記少なくとも1つの繊維材料留分のうちの1つの繊維材料留分を精錬するように意図される、前記少なくとも2つの精錬ゾーンと、
該精錬ゾーンで精錬される繊維材料留分を当該リファイナから別個の流れとして排出するための前記精錬ゾーンに対する排出チャネルとを含
み、
当該リファイナは、より小さな直径の第1の端と、より大きな直径の第2の端とを有する、円錐形の精錬要素を備える、円錐形のリファイナである、
リファイナ。
【請求項2】
当該リファイナは、
第1の繊維材料留分を当該リファイナ内に給送するための第1の給送チャネルと、
第2の繊維材料留分を当該リファイナ内に給送するための第2の給送チャネルと、
前記第1の繊維材料留分を精錬するための第1の精錬ゾーン及び前記第2の繊維材料留分を精錬するための第2の精錬ゾーンと
、を含むことを特徴とする、
請求項1に記載のリファイナ。
【請求項3】
当該リファイナは、静止的な精錬要素と、精錬チャンバが前記静止的な精錬要素及び回転可能な精錬要素の対向する精錬面の間に形成されるように、前記静止的な精錬要素内にあり、前記静止的な精錬要素に実質的に対向する、前記回転可能な精錬要素とを含み、当該リファイナ、前記精錬要素、及び前記精錬チャンバは、軸方向と、該軸方向における、第1の端と、該第1の端とは反対の第2の端とを有し、
前記精錬チャンバの前記軸方向において、前記精錬チャンバの前記第1の端に、第1の繊維材料留分を精錬するために前記精錬チャンバの前記第2の端に向かって延びる第1の精錬ゾーンと、前記精錬チャンバの前記第2の端に、第2の繊維材料留分を精錬するために前記精錬チャンバの前記第1の端に向かって延びる第2の精錬ゾーンとがあり、該第2の精錬ゾーンは、前記第1の精錬ゾーンに対して少なくとも1つの異なる精錬面特性を有することを特徴とする、
請求項2に記載のリファイナ。
【請求項4】
前記第1の給送チャネルは、前記精錬チャンバの前記第1の端を通じて前記第1の精錬ゾーン内に前記第1の繊維材料留分を給送するように構成され、
前記第2の給送チャネルは、前記精錬チャンバの前記第2の端を通じて前記第2の精錬ゾーン内に前記第2の繊維材料留分を給送するように構成され、
前記静止的な精錬要素は、各精錬ゾーンに、少なくとも1つの開口を含み、前記それぞれの精錬ゾーンで精錬される前記繊維材料が前記それぞれの少なくとも1つの開口を通じて前記精錬チャンバから排出されることを可能にすることを特徴とする、
請求項
3に記載のリファイナ。
【請求項5】
前記第1の給送チャネルは、前記回転可能な精錬要素の前記第1の端を通じて前記回転可能な精錬要素の内部容積内に前記第1の繊維材料留分を給送するように構成され、
前記第2の給送チャネルは、前記回転可能な精錬要素の前記第2の端を通じて前記回転可能な精錬要素の内部容積内に前記第2の繊維材料留分を給送するように構成され、
前記回転可能な要素は、各精錬ゾーンに、少なくとも1つの開口を含み、前記それぞれの精錬ゾーンで精錬されるべき前記繊維材料留分が、前記それぞれの少なくとも1つの開口を通じて前記それぞれの精錬ゾーンで前記精錬チャンバ内に給送されることを可能にし、
前記静止的な精錬要素は、各精錬ゾーンに、少なくとも1つの開口を含み、前記それぞれの精錬ゾーンで精錬されるべき前記繊維材料留分が、前記それぞれの少なくとも1つの開口を通じて前記それぞれの精錬ゾーンで前記精錬チャンバから排出されることを可能にすることを特徴とする、
請求項
3に記載のリファイナ。
【請求項6】
当該リファイナは、第1の静止的な精錬要素と、第1の精錬ゾーンを形成する第1の精錬チャンバが前記第1の静止的な精錬要素及び回転可能な精錬要素の対向する精錬面の間に形成されるように、前記第1の静止的な精錬要素内にあり、前記第1の静止的な精錬要素に実質的に対向する、前記回転可能な精錬要素と、第2の精錬ゾーンを形成する第2の精錬チャンバが前記回転可能な精錬要素及び第2の静止的な精錬要素の対向する精錬面の間に形成されるように、前記回転可能な精錬要素内にあり、前記回転可能な精錬要素に実質的に対向する、前記第2の静止的な精錬要素と
、を含み、前記第2の精錬ゾーンでの少なくとも1つの精錬面特性が、前記第1の精錬ゾーンでの前記それぞれの少なくとも1つの精錬面特性と異なり、
当該リファイナ、前記精錬要素、及び前記精錬チャンバは、軸方向と、該軸方向における、第1の端と、該第1の端とは反対の第2の端とを有し、
前記第1の給送チャネルは、前記第1の精錬チャンバの少なくとも1つの端を通じて前記第1の精錬チャンバ内に前記第1の繊維材料留分を給送するように構成され、
前記第2の給送チャネルは、前記第2の精錬チャンバの少なくとも1つの端を通じて前記第2の精錬チャンバ内に前記第2の繊維材料留分を給送するように構成されることを特徴とする、
請求項2に記載のリファイナ。
【請求項7】
当該リファイナは、
第1の静止的なディスク状の精錬要素と、第1の精錬ゾーンを形成する第1の精錬チャンバが前記第1の静止的な精錬要素及び回転可能な精錬要素の対向する精錬面の間に形成されるように、前記第1の静止的なディスク状の精錬要素に隣接し、前記第1の静止的な精錬要素に実質的に対向する、前記回転可能なディスク状の精錬要素と、
前記第1の静止的な精錬要素に対して前記回転可能な精錬要素の反対側で前記回転可能な精錬要素に隣接する、第2のディスク状の静止的な精錬要素とを含み、該第2の静止的な精錬要素は、第2の精錬ゾーンを形成する第2の精錬チャンバが前記回転可能な精錬要素及び前記第2の静止的な精錬要素の対向する精錬面の間に形成されるように、前記回転可能な精錬要素に実質的に対向し、
前記第2の精錬ゾーンでの少なくとも1つの精錬面特性は、前記第1の精錬ゾーンでの前記それぞれの少なくとも1つの精錬面特性と異なり、
前記第1の給送チャネルは、前記第1の繊維材料留分を前記第1の精錬チャンバ内に給送するように構成され、前記第2の給送チャネルは、前記第2の繊維材料留分を前記第2の精錬チャンバ内に給送するように構成されることを特徴とする、
請求項
2に記載のリファイナ。
【請求項8】
当該リファイナは、
前記第1の精錬ゾーンで精錬される前記第1の繊維材料留分を当該リファイナから排出するための第1の排出チャネルと、
前記第2の精錬ゾーンで精錬される前記第2の繊維材料留分を当該リファイナから排出するための第2の排出チャネルと
、を含むことを特徴とする、
請求項
2に記載のリファイナ。
【請求項9】
前記精錬面特性は、ブレードバーの幅、ブレード溝の幅。ブレードバーの角度、ブレードバーの高さ、ブレード溝の深さ、開口の形状、及び開口のサイズのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項
2に記載のリファイナ。
【請求項10】
少なくとも2つの実質的に対向して位置付けられる精錬要素を含むリファイナを用いてリグノセルロースを含有する繊維材料を精錬するための方法であって、
精錬されるべき少なくとも1つの繊維材料留分の少なくとも2つの流れを前記リファイナ内に給送するステップと、
前記少なくとも1つの繊維材料留分の前記少なくとも2つの流れを前記リファイナ内で異なる精錬効果に曝すステップと、
異なる精錬効果に曝される繊維材料留分の流れを別個の流れをして前記リファイナから排出するステップと
、を含
み、
前記リファイナは、より小さな直径の第1の端と、より大きな直径の第2の端とを有する、円錐形の精錬要素を備える、円錐形のリファイナである、
方法。
【請求項11】
前記リファイナは、静止的な精錬要素と、精錬チャンバが前記静止的な精錬要素及び回転可能な精錬要素の対向する精錬面の間に形成されるように、前記静止的な精錬要素内にあり、前記静止的な精錬要素に実質的に対向する、前記回転可能な精錬要素とを含み、前記リファイナ、前記精錬要素、及び前記精錬チャンバは、軸方向と、該軸方向における、第1の端と、該第1の端とは反対の第2の端とを有し、
前記精錬チャンバの前記軸方向において、前記精錬チャンバの前記第1の端に、第1の繊維材料留分を精錬するために前記精錬チャンバの前記第2の端に向かって延びる第1の精錬ゾーンと、前記精錬チャンバの前記第2の端に、第2の繊維材料留分を精錬するために前記精錬チャンバの前記第1の端に向かって延びる第2の精錬ゾーンとがあり、前記第2の精錬ゾーンは、前記第1の精錬ゾーンに対して少なくとも1つの異なる精錬面特性を有し、それによって、
精錬されるべき第1の繊維材料留分は、前記第1の精錬ゾーン内に給送され、
精錬されるべき第2の繊維材料留分は、前記第2の精錬ゾーン内に給送され、
前記第1の精錬ゾーンで精錬される前記第1の繊維材料留分は、前記第1の精錬ゾーンで前記静止的な精錬要素に配置される少なくとも1つの開口を通じて前記第1の精錬ゾーンで前記精錬チャンバから排出され、
前記第2の精錬ゾーンで精錬される前記第2の繊維材料留分は、前記第2の精錬ゾーンで前記静止的な精錬要素に配置される少なくとも1つの開口を通じて前記第2の精錬ゾーンで前記精錬チャンバから排出される、
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
精錬されるべき前記第1の繊維材料留分は、前記回転可能な精錬要素の前記第1の端を通じて前記回転可能な精錬要素の内部容積内に、並びに前記第1の精錬ゾーンで前記回転可能な精錬要素に配置される少なくとも1つの開口を通じて前記第1の精錬ゾーンで前記精錬チャンバ内に給送され、
精錬されるべき前記第2の繊維材料留分は、前記回転可能な精錬要素の前記第2の端を通じて前記回転可能な精錬要素の内部容積内に、並びに前記第2の精錬ゾーンで前記回転可能な精錬要素に配置される少なくとも1つの開口を通じて前記第2の精錬ゾーンで前記精錬チャンバ内に給送される、
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の繊維材料留分は、前記第1の繊維材料留分と定性的に異なる、請求項
11又は
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロースを含有する(lignocellulose-containing)繊維材料を精錬するリファイナ(精錬機)(refiner)及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙(paper)及び板紙(board)の製造において、異なる品質の1つ又はそれよりも多くのリグノセルロースを含有する木質繊維材料留分(wood-based fibre material fractions)は、紙又は板紙ウェブを製造するために混合されることがある。異なる品質の繊維材料留分の混合は、例えば、特定の坪量(grammage)を有する特定の引張強さのような、最終生成物中の様々な種類の特性の組み合わせを得る必要性の故に行われる。異なる品質の繊維材料留分は、例えば、未開発の堅木及び軟木ベースの繊維パルプ、並びにOCC(Old Corrugated Container)製の長繊維及び短繊維パルプのような、異なる再生繊維材料を含むことがある。
【0003】
一般的に、混合パルプは、別々の貯蔵タンクから異なる品質の少なくとも2つの繊維材料留分を混合することによって製造され、各々の特定の貯蔵タンクは、特定の品質の単一の繊維材料留分のために取り置かれる。しかしながら、単一の繊維材料も、長繊維留分及び短繊維留分の両方を含むOCCのように、異なる品質を含むことがある。繊維材料の精錬が精錬される繊維材料を貯蔵タンクに供給する前に行われることを考慮するとき、各々の異なる繊維材料留分は、その特定の繊維材料留分のために最適化された精錬面特性を有するように特別に設計されたリファイナで精錬される。これは、各々の精錬された繊維材料留分が高い品質を有するが、リファイナの数が混合される異なる繊維材料留分の数に従って増加することを意味する。
【0004】
リファイナの数は、先ず、異なる品質の少なくとも2つの繊維材料留分を互いに混合するか或いはOCCのように大きな繊維長の分布を有する1つの繊維材料を有することによって、然る後、単一のリファイナで繊維材料パルプを精錬することによって、減少させられることがある。しかしながら、この場合、リファイナの精錬面特性は、パルプを形成する繊維材料留分の精錬ニーズに基づく妥協である。従って、精錬後に混合されるパルプの品質は、必ずしも上記開示のように少なくとも2つの別個に精錬された繊維材料留分を混合することによって形成されるパルプの品質ほど高くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、リグノセルロース含有繊維材料を精錬する新規なリファイナ及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独立項の構成によって特徴付けられる。
【0007】
本発明の着想は、単一のリファイナを用いて単一のリファイナ内の異なる精錬ゾーンで少なくとも1つの繊維材料留分の少なくとも2つの流れを同時に精錬することであり、異なる精錬ゾーンの精錬面特性は、精錬ゾーンで精錬されるべき繊維材料留分を考慮して並びに精錬ゾーンで繊維材料留分に曝されるべき意図される精錬効果を考慮して特別に設計される。よって、繊維材料の少なくとも2つの流れをリファイナ内に給送することが可能であり、2つの流れは、1つの同じ繊維材料留分又は異なる品質の異なる繊維材料留分であってよい。
【0008】
本発明の利点は、少なくとも1つの繊維材料留分に曝されるべき異なる精錬効果を伴って少なくとも1つの繊維材料留分を同時に精錬することが単一のリファイナを用いて可能であり、それによって、異なる精錬効果を受ける繊維材料部分が、例えば、製造されるべき紙又は基板ウェブの異なる層又は異なるプロセスに向けられる場合があることである。この種のリファイナは、紙又は板紙の製造のために必要とされる繊維材料留分の量又は容積が適度である用途において特に有用である。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態は、従属項に開示される。
【0010】
以下、添付の図面を参照して、好ましい実施形態によって、本発明をより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】円錐形リファイナの側面図を断面で概略的に示している。
【
図2】
図1の円錐形リファイナにおいて使用されるよう適用可能なブレード要素の平面図を概略的に示している。
【
図3】別の円錐形リファイナの側面図を断面で概略的に示している。
【
図4】円錐形リファイナの側面図を断面で概略的に示している。
【
図5】ディスクリファイナの側面図を断面で概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
明瞭性のために、図面は、本発明の幾つかの実施形態を簡略化された方法で示している。同等の参照番号は、図中の同等の要素を特定している。
【0013】
図1は、円錐形リファイナ1(精錬機)(refiner)の極めて概略的な部分的に断面の側面図であり、円錐形リファイナは、リグノセルロース含有木質繊維材料(lignocellulose-containing wood-based fiber material)を精錬するために使用されることがある。リファイナ1は、より小さな直径の第1の端Eaと、より大きな直径の第2の端Ebとを有する。
【0014】
リファイナ1は、リファイナ1の第1の端Eaに向かって面する第1の端と、リファイナ1の第2の端Ebに向かって面する第2の端とを有する、静止精錬要素6、すなわち、ステータ6(固定子)を含み、従って、明瞭性のために、参照符号Eaは、ステータ6の第1の端を示すためにも用いられており、参照符号Ebは、ステータ6の第2の端を示すためにも用いられている。ステータ6は、リファイナ1のフレーム構造5に支持されている。
【0015】
ステータ6は、精錬面8を有する多数のステータブレード要素7を含み、各ステータブレード要素7の精錬面8は、ステータ6の完全な精錬面を提供することに寄与する。ステータブレード要素7は、リファイナ1の第1の端Eaに向かって面する第1の端と、リファイナ1の第2の端Ebに向かって面する第2の端とを有し、従って、明瞭性のために、参照符号Eaは、ステータブレード要素7の第1の端を示すためにも用いられており、参照符号Ebは、ステータブレード要素7の第2の端を示すためにも用いられている。
【0016】
ステータ6のある実施形態によれば、ステータ6は、単一のブレード要素の精錬面8がステータ6の完全に均一な精錬面を提供するように、ステータ6の全周に亘って延在する円錐形状の1つのブレード要素7のみを含んでよい。ステータ6の別の実施形態によれば、ステータ6は、少なくとも2つのセグメント状のブレード要素、すなわち、互いに隣接して配置されたブレードセグメントを含んでよく、それによって、元々別個のセグメント状のブレード要素の精錬面8は、ステータ6の完全に均一な精錬面を共に提供する。よって、ブレード要素という用語は、リファイナ1のステータ6を指すときに、ステータ6の完全な精錬面を提供する単一のブレード要素を指すことがあり、或いはステータ6の完全な精錬面の一部のみを提供するブレードセグメントを指すことがある。明瞭性のために、以下では同じ参照番号8を用いて、ステータ6のための単一のブレード要素7の精錬面8及びステータ6の完全な精錬面8の両方を示すことがある。ステータ6の精錬面8は、典型的には、ブレードバーと、ブレードバーの間のブレード溝とを備え、幾つかのブレードバー及びブレード溝のある実施形態が、後に
図2に示される。
【0017】
リファイナ1は、リファイナ1の第1の端Eaに向かって面する第1の端と、リファイナ1の第2の端Ebに向かって面する第2の端とを有する、回転可能な精錬要素9、すなわち、ロータ9を更に含み、従って、明瞭性のために、参照符号記号Eaは、ロータ9の第1の端を示すためにも用いられており、参照符号Ebは、ロータ9の第2の端を示すためにも用いられている。
【0018】
ロータ9は、精錬面11を有する多数のロータブレード要素10を含み、各ロータブレード要素10の精錬面11は、ロータ9の完全な精錬面11を提供するよう寄与する。ロータブレード要素10は、リファイナ1の第1の端Eaに向かって面する第1の端と、リファイナ1の第2の端Ebに向かって面する第2の端とを有し、従って、明瞭性のために、参照符号Eaは、ロータブレード要素10の第1の端を示すためにも用いられ、参照符号Ebは、ロータブレード要素10の第2の端を示すためにも用いられる。
【0019】
ロータ9のある実施形態によれば、ロータ9は、単一のブレード要素がロータ9の完全に均一な精錬面11を提供するよう、ロータ9の全周に亘って延在する円錐形状の1つのブレード要素10のみを含んでよい。ロータ9の別の実施形態によれば、ロータ9は、少なくとも2つのセグメント状のブレード要素、すなわち、互いに隣接して配置されるブレードセグメントを含んでよく、それによって、元々別個のセグメント状のブレード要素の精錬面11は、ロータ9の完全に均一な精錬面を一緒に提供する。よって、ブレード要素という用語は、リファイナ1のロータ9を指すときに、ロータ9の完全な精錬面を提供する単一のブレード要素を指すか、或いはロータ9の完全な精錬面の一部のみを提供するブレードセグメントを指す。明瞭性のために、ロータ9の単一のブレード要素9の精錬面11及びロータ9の完全な精錬面11を示すために、同じ参照番号11が以下で用いられることがある。ロータ9の精錬面11は、典型的には、後に
図2に示すように、ブレードバーと、ブレードバーの間のブレード溝とを備える。
【0020】
ロータ9は、少なくとも1つのロータブレード要素10が支持されるハブ12を含む。ハブ12は、非常に単純化されて、
図1に示されており、後に
図3及び
図4に示されている。ロータ9のハブ12は、シャフト13に接続されている。シャフト13は、極めて概略的に描写するモータ14に接続されており、モータ14は、シャフト13を、そして、シャフト13によって、ロータ9を、例えば、矢印RDで示す回転方向に回転させるように配置されている。
【0021】
リファイナ1は、明瞭性のために、
図1に示さない装填デバイス(loading device)を備えてもよく、装填デバイスは、ステータ6とロータ9との間の距離を調整するために、すなわち、ステータ6とロータ9又はブレード要素7、10との間に形成される精錬チャンバ15又はブレード間隙15のサイズを調整するために、矢印ADで概略的に示すように、ロータ9を前後に移動させるためにシャフト13に接続されてよい。よって、精錬チャンバ15は、繊維材料が精錬される容積を形成する。リファイナの他の構成要素に対する精錬チャンバ15のサイズは、全ての図において誇張されている。精錬チャンバ15は、リファイナ1の第1の端Eaに向かって面する第1の端と、リファイナ1の第2の端Ebに向かって面する第2の端とを有し、従って、明瞭性のために、参照符号Eaは、精錬チャンバ15の第1の端を示すためにも用いられ、参照符号Ebは、精錬チャンバ15の第2の端を示すためにも用いられる。
【0022】
ステータブレード要素7は、ステータブレード要素7を通じて延びる開口16a、16bを更に含み、ロータブレード要素10は、ロータブレード要素10を通じて延びる開口17a、17bを含み、よって、開口16a、16b、17a、17bは、ステータブレード要素7及びロータブレード要素10の全厚を通じて延びる。リファイナ1の軸方向において、従って、ステータブレード要素7及びロータブレード要素10の両方の軸方向において、
図1に矢印Aによって概略的に示す軸方向において、ステータブレード要素7にある開口16a、16bは、ブレード要素7、10が互いに対して反対であるとき、ロータブレード要素10にある開口17a、17bと実質的に同じ軸方向位置にある。代替的に、ステータブレード要素7にある開口16a、16bは、ロータブレード要素10にある開口17a、17bの軸方向位置に対して少なくとも部分的に異なる軸方向位置にあることができる。
【0023】
戻って
図1の実施形態を参照すると、リファイナ1は、リファイナ1の第1の端Eaに、第1の給送集合体18a(feed aggregate)と、第1の給送集合体18aに接続された第1の給送チャネル19a(feed channel)とを含み、第1の給送集合体18a及び第1の給送チャネル19aを通じて、矢印FM1で概略的に示す第1の繊維材料留分(fiber material fraction)が、ロータ9の第1の端Eaの側にあるロータ9の内部容積によって提供される第1の給送チャンバ20aに給送される。第1の給送チャンバ19aは、ロータ9の第1の端Eaからロータ9の第2の端Ebに向かって延びているが、ロータ9の第2の端Ebまで延びていない。
【0024】
リファイナ1は、更に、リファイナ1の第1の端Eaに、第2の給送集合体18bと、第2の給送集合体18bに接続された第2の給送チャネル19bとを含み、第2の給送集合体18b及び第2の給送チャネル19bを通じて、矢印FM2で概略的に示す第2の繊維材料留分が、ロータ9の第2の端Ebの側にあるロータ9の内部容積によって提供される第2の給送チャンバ20bに給送される。第2の給送チャンバ19bは、ロータ9の第2の端Ebからロータ9の第1の端Eaに向かって延びているが、ロータ9の第1の端Eaまで延びていない。
【0025】
更に、
図1の実施形態において、ステータ6及びロータ9内の精錬面8、11は、精錬チャンバ15内にリファイナ1の軸方向Aにおいて少なくとも1つの異なる精錬面特性を有する2つの異なる精錬ゾーン、すなわち、リファイナ1の第1の端Eaの側にある矢印21aで示す第1の精錬ゾーン21a及びリファイナ1の第2の端Ebの側にある矢印21bで示す第2の精錬ゾーン21bがあるように、リファイナ1の軸方向Aにおいて設計又は構成される。リファイナ1の軸方向Aにおいて、第1の精錬ゾーン21aは、リファイナ1の第1の給送チャンバ20aに対応する場所に実質的に存在し、第2の精錬ゾーン21bは、リファイナ1の第2の給送チャンバ21bに対応する場所に実質的に存在する。上記で簡潔に示唆されたように、第1の精錬ゾーン21aにおける少なくとも1つの精錬面特性は、第2の精錬ゾーン21bにおけるそれぞれの精錬面特性とは異なるように選択される。一般的に、これは、第1の精錬ゾーン21aでのステータ及びロータブレード要素7、10の精錬面特性が、第1の精錬ゾーン21aで精錬されるべき第1の繊維材料留分FM1に従うことが意図される精錬効果の観点から設計され、第2の精錬ゾーン21bでのステータ及びロータブレード要素7、10の精錬面特性が、第2の精錬ゾーン21bで精錬されるべき第2の繊維材料留分FM2に従うことが意図された精錬効果の観点から設計されることを意味する。
【0026】
【0027】
第1の繊維材料留分FM1は、第1の給送チャンバ20aから第1の精錬ゾーン21aの第1の開口17aを通じて精錬チャンバ15に流れ込み、それによって、第1の繊維材料留分FM1は、実質的に第1の精錬ゾーン21aの精錬チャンバ15内で精錬される。よって、第1の開口16aは、第1の給送チャンバ20aを第1の精錬ゾーン21aにある精錬チャンバ15に接続する。第1の繊維材料留分FM1は、第1の精錬ゾーン21aにある精錬チャンバ15内で、ステータ及びロータブレード要素7、10のそれぞれの精錬面領域によってもたらされる精錬効果を受ける。第1の精錬ゾーン21aにある精錬チャンバ15内で精錬される第1の繊維材料留分FM1は、精錬チャンバ15から第1の開口16aを通じてステータブレード要素7の背景にある排出チャンバ22に排出される。よって、第1の開口16aは、第1の精錬ゾーン21aで精錬チャンバ15を排出チャンバ22に接続する。第1の精錬ゾーン21aでの精錬チャンバ15内への第1の繊維材料留分FM1の流れ及び精錬チャンバ15からの精錬された第1の繊維材料留分FM1の流れも、矢印FM1で概略的に示されている。
【0028】
第2の繊維材料留分FM2は、第2の給送チャンバ20bから第2の精錬ゾーン21bの第2の開口17bを通じて精錬チャンバ15内に流れ込み、それによって、第2の繊維材料留分FM2は、実質的に第2の精錬ゾーン21bにある精錬チャンバ15内で精錬される。よって、第2の開口17bは、第2の精錬ゾーン21bで第2の給送チャンバ20aを精錬チャンバ15に接続する。第2の繊維材料留分FM2は、第2の精錬ゾーン21bにある精錬チャンバ15内でステータ及びロータブレード要素7、10のそれぞれの精錬面領域によってもたらされる精錬効果を受ける。第2の精錬ゾーン21bにある精錬チャンバ15内で精錬された第2の繊維材料留分FM2は、第2の開口16bを通じて精錬チャンバ15から排出チャンバ22に排出される。よって、第2の開口16bは、第2の精錬ゾーン21bにある精錬チャンバ15を排出チャンバ22に接続する。精錬チャンバ15内への第2の繊維材料留分FM2の流れ及び第2の精錬ゾーン21bにある精錬チャンバ15からの精錬された第1の繊維材料留分FM2の流れも、矢印FM2で概略的に示されている。
【0029】
排出チャンバ22内では、精錬された第1の繊維材料留分FM1及び精錬された第2の繊維材料留分FM2は組み合わされ、それによって、それらは少なくとも部分的に互いに混合される。精錬された第1の繊維材料留分FM1及び精錬された第2の繊維材料留分FM2の組み合わされた流れは、参照符号FM1+FM2で示される矢印で概略的に示すように、排出チャンバ22に接続された排出チャネル23を通じて、更に、排出チャネル23に接続された排出集合体24を通じて、リファイナ1から排出される。よって、精錬された第1の繊維材料留分FM1及び精錬された第2の繊維材料留分FM2の組み合わされた流れは、更なる処理への1つの流れとして供給される。
【0030】
よって、リファイナ1には、第1の精錬ゾーン21aが第1の繊維材料留分FM1を精錬するように特別に設計され、第2の精錬ゾーン21bが第2の繊維材料留分FM2を精錬するように特別に設計されるように、2つの精錬ゾーン21a、21bがある。よって、特定の精錬ゾーン21a、21bの特性は、精錬ゾーン21a、21bを提供するのに寄与するステータ及びロータブレードセグメント7、10の精錬面8、11の特別な設計によって提供される。これの利点は、単一のリファイナが、少なくとも1つの異なる定性的特性を有する2つの別個の繊維材料留分を同時に精錬するために使用されてよく、それによって、ステータ及びロータブレードセグメント7、10の精錬面8、11の特定の部分が、特定の繊維材料留分を精錬するために最適化されることである。換言すれば、第2の精錬ゾーン21b内のそれぞれの精錬面特性に対して少なくとも1つの異なる精錬面特性を有する第1の精錬ゾーン21aを用いて、2つの繊維材料の流れを同時に最適に精錬する単一のリファイナを提供することが可能である。
【0031】
ある実施形態によれば、第1の繊維材料留分FM1及び第2の繊維材料留分FM2は、1つの同じ繊維材料、すなわち、同じの品質を有する。この場合、同じ繊維材料の異なる部分は、異なる精錬ゾーン21a、21bで異なる精錬効果を受けることがある。
【0032】
別の実施形態によれば、第2の繊維材料留分FM2は、第1の繊維材料留分FM1と定性的に異なる。第2の繊維材料留分FM2が第1の繊維材料留分FM1と定性的に異なるという定義によって、第2の繊維材料留分FM2の原料、粒径、繊維長、自由度(freeness)、残留リグニン含有量、及び何らかの他の特性のうちの少なくとも1つが、第1の繊維材料留分FM1のそれぞれの特性と異なることを意味する。ロータ9内のハブ12は、第1の給送チャンバ20a内の第1の繊維材料留分FM1及び第2の給送チャンバ20b内の第2の繊維材料留分FM2がロータ9内で互いに混合しないように構成される。
【0033】
更なる実施形態によれば、第2の繊維材料留分FM2は、第1の精錬ゾーン21aで精錬されて、第1の精錬ゾーン21aから排出される、第1の繊維材料留分FM1であってよい。この実施形態によれば、リファイナは、第1の繊維材料留分FM1のための2段階精錬を提供することができる。
【0034】
図2は、
図1のリファイナ1のステータ6において使用されるように適用可能なブレード要素の平面図を概略的に示している。
図2は、ステータ6の完全な精錬面8の一部を提供することを意図する単一セグメント状のブレード要素7を示している。
図2は、第1の精錬ゾーン21aと第2の精錬ゾーン21bとの間の可能な異なる精錬面特性を例示することのみを意図している。明瞭性のために、ステータ6のためのセグメント状のブレード要素7のみが
図2に開示されているが、同じ設計原理は、ステータブレード要素7の対応物を提供するロータ9のそれぞれのブレード要素10にも当て嵌まる。
【0035】
図2のブレード要素7は、ステータ6の第1の端Eaに向かって面する第1の端Eaと、ステータ6の第2の端Ebに向かって面する第2の端Ebと、精錬面8とを含む。ブレード要素7は、更に、2つの異なる精錬面領域、すなわち、第1の端Eaの側にある第1の精錬面領域8aと、第2の端Ebの側にある第2の精錬面領域8bとを含む。第1の精錬面領域8aは、リファイナ1の第1の精錬ゾーン21aでステータ6の精錬面8を提供することを意図し、第2の精錬面領域8bは、リファイナ1の第2の精錬ゾーン21bでステータ6の精錬面領域8を提供することを意図している。第1の精錬面領域8aと第2の精錬面領域8bとの間の架空の分割線が、参照符号DLで示される破線を用いて
図1、
図2、
図3及び
図4に示されている。ブレードセグメント7の軸方向Aは、
図2において点破線(dot-and-dash line)で示されている。
【0036】
ブレード要素7の第1の精錬面8aは、第1のブレードバー25及びそれらの間の第1のブレード溝26、並びにブレード要素7を通じて延びる第1の開口16aを含む。第1のブレードバー25は、ブレードバーの幅W
25と、軸方向Aに対するブレードバーの角度α
25とを有し、第1のブレード溝26は、ブレード溝の幅W
26を有する。第1の開口16aは、D
16aの直径を備える円形である。ブレード要素7の第2の精錬面領域8bは、第2のブレードバー27及びそれらの間の第2のブレード溝28、並びにブレード要素7を通じて延びる第2の開口16bを含む。第2のブレードバー27は、ブレードバーの幅W
27と、軸方向Aに対するブレードバーの角度α
27とを有し、第2のブレード溝28は、ブレード溝の幅W
28を有する。第2の開口16bは、D
16bの最大直径を有する楕円形である。
図2の概略的な例では、第1の精錬面領域8aでのブレードバーの幅、ブレード溝の幅、ブレードバーの角度、並びに開口の形状及びサイズが、第2の精錬面領域8bでのブレードバーの幅、ブレード溝の幅、ブレードバーの角度、並びに開口の形状及びサイズと異なる場合があることを見ることができる。開口の形状は、例えば、円形、楕円形、三角形、又は任意の多角形であってよい。開口のサイズは、繊維の長さの最小から要素の長さの最大の半分まで大きく異なってよい。要素内の開口は、要素の側縁間の中間部分に位置する穴又は穿孔のようなものであってよいが、それらは要素の側縁にある凹み又は切欠きのようなものであってもよい。
【0037】
ブレードバーの幅、ブレード溝の幅、ブレードバーの角度、並びに開口の形状及びサイズは、精錬面特性が特定の定性的特性を有する特定の繊維材料留分を精錬するために最適化されるときに異なってよい何らかの精錬面特性である。精錬面のピッチ、すなわち、単一のブレードバー及びブレードバーに隣接する単一のブレード溝の共通の幅、ブレードバーの高さ、及びブレード溝の深さは、精錬面特性が最適化されるときに異なってよい更なる特性であってよい。精錬ゾーン21a、21bが互いに対して少なくとも1つの異なる精錬面特性を有すると上述されるとき、それは1つの精錬ゾーン21a、21bにおけるそれらの特性のうちの少なくとも1つが、他の精錬ゾーン21a、21bにおける対応する特性と異なることを意味する。
【0038】
ある実施形態によれば、第1の繊維材料留分FM1は、未開発の堅木繊維パルプを含んでよく、第2の繊維材料留分FM2は、未開発の軟木繊維パルプを含んでよい。その場合、ブレード要素7の第1の精錬領域8a、すなわち、リファイナ1の第1の精錬ゾーン21aで、第1のブレードバーの幅W25は、例えば、1mm~3mmの間であることができ、第1のブレード溝の幅W26は、例えば、1mm~2mmの間であることができる。ブレード要素7の第2の精錬面領域8b、すなわち、リファイナ1の第2の精錬ゾーン21bで、第2のブレードバーの幅W27は、例えば、3mm~6mmの間であることができ、第2のブレード溝の幅W28は、例えば、2mm~5mmであることができる。
【0039】
精錬ゾーンにあるブレードバーは、ブレードバーが精錬ゾーンで精錬される繊維材料の流れを促進するような角度に設定される。換言すれば、そのような角度に設定されるブレードバーは、精錬ゾーンで精錬される繊維材料に対していわゆるポンプ効果(pumping effect)を提供する。この種のブレードバーの角度は、例えば、10~30度の間であってよい。他方、交差角、すなわち、ロータブレード要素のブレードバーとステータブレード要素のブレードバーとの間の角度は、10~60度の間、典型的には、20~40度の間であるように選択されてよい。
【0040】
上述の精錬面特性に加えて、ブレードバーの数、ならびにステータとロータとの間のブレード間隙も、異なる精錬ゾーンで異なってよい。いずれの場合においても、ブレード間隙のサイズは、1mm未満である。
【0041】
更に、ブレード要素の精錬面領域全体に対するブレード要素内の単一の精錬ゾーンの領域は、10%~90%の間で変化してよく、ブレード要素の精錬面領域の残余は、ブレード要素内の少なくとも1つの別の精錬ゾーンのために取り置かれることが意図される。これは異なる種類のパルプの生産の可能性を提供する。例えば、1つの精錬ゾーンで堅木繊維パルプを、他の精錬ゾーンで軟木繊維パルプを同時に精錬するとき、堅木繊維パルプを精錬するように意図される精錬ゾーンの領域は、例えば、70%~80%の間にあり、軟木繊維パルプを精錬するように意図される精錬ゾーンの面積は、それぞれ20%~30%の間にある。
【0042】
更なる実施形態によれば、精錬ゾーン21a、21bのうちの少なくとも1つは、多くとも3mmのピッチを含む構成のような、非常に密なブレードバー-ブレード溝-構成を有するように設計されてよく、それによって、リファイナ1内のステータ及びロータブレード要素7,10のブレードバーによって提供される切断縁の長さは非常に高い。これは、ステータ及びロータブレード要素7、10における適切に選択された開口構成と共通して、精錬されるべき繊維材料の粉砕の程度が非常に高い、精錬される材料の少なくとも一部がナノフィブリルセルロースの粒度特性を有するのと同じ程に非常に高い、という効果を有することがある。本明細書において、「ナノフィブリルセルロース(nanofibrillar cellulose)」という用語は、植物ベースの繊維材料、特に木質繊維材料に由来する、別個のセルロースミクロフィブリル又はミクロフィブリル束の集まりを指す。ナノフィブリルセルロース(NFC)の同義語は、例えば、ナノフィブリル化セルロース、ナノセルロース、ミクロフィブリルセルロース、セルロースナノファイバ、ナノスケールセルロース、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)又はセルロースミクロフィブリルである。粉砕の程度に依存して、別個のセルロースミクロフィブリル又はミクロフィブリル束の粒径は、数ナノメートル(nm)又は数マイクロメートル(μm)である。別個のセルロースミクロフィブリル又はミクロフィブリル束の平均的な長さは、例えば、0.2~200μmであってよく、平均的な直径は、例えば、2~1000nmであってよい。ブレード要素のピッチ及びブレード要素の開口の総開口面積は、リファイナ内のブレードバーの共通の切断縁の長さがロータ7の1回転当たり少なくとも50kmでさえあるように、組み合わせにおいて選択されてよい。
【0043】
更に、異なる精錬ゾーン21a、21bで利用される異なるプロセスパラメータがあってよい。プロセスパラメータは、例えば、流量、圧力又は圧力差、コンシステンシー(consistency)、pH値及び温度を含んでよい。
【0044】
図2のブレード要素は、リファイナの動作中に以下のような混合の何らかの傾向があり、混合が望ましくないならば、精錬面領域8a、8bの間に、例えば、実質的に架空の分割線DLに、精錬されるべき第1の繊維材料留分FM1及び精錬されるべき第2の繊維材料留分FM2が精錬ゾーン21a、21bの境界領域においてチャンバ15内で互いに混合される妨げるダム構成(dam arrangement)を含んでもよい。
【0045】
図2のブレード要素は、リファイナ1の軸方向Aにおいてステータ6の全長をカバーするように意図されているが、
図2のブレード要素は、一方が第1の精錬面領域8aを含み、他方が第2の精錬面領域8bを含む、2つの異なるピースから構成されることもできる。
【0046】
図3は、別の円錐形のリファイナ2の側面図を部分的に断面で概略的に示しており、円錐形のリファイナ2は、リグノセルロースを含有する木質繊維材料を精錬するために利用されてよい、
図1の実施形態の円錐形のリファイナ1に対応して、
図3の実施形態の円錐形のリファイナ2は、リファイナ2の第1の端Eaの側にある第1の精錬ゾーン21aと、リファイナ2の第2の端Ebの側にある第2の精錬ゾーン21bとを含む。
図1のリファイナ1と
図3のリファイナ2との間の主な相違は、リファイナ2が中実のロータブレード要素10を含むこと、すなわち、リファイナ2のロータブレード要素10がブレード要素10を通じて延びる如何なる開口も含まないことである。その結果として、
図3のリファイナ2は、いかなる給送チャンバ20a、20bも含まず、リファイナ2の第1端Eaにある第1の給送集合体18a及び第1の給送チャネル19aと、リファイナ2の第2端Ebにある第2の給送集合体18b及び第2の給送チャネル19bのみを含む。第1の繊維材料留分FM1は、第1の給送チャネル19a及び精錬チャンバ15の第1の端Eaを通じて精錬チャンバ15及びその中の第1の精錬ゾーン21aに給送されるように意図される。第2の繊維材料留分FM2は、第2の給送チャンバ19b及び精錬チャンバ15の第2の端Ebを通じて精錬チャンバ15及びその中の第2の精錬ゾーン21bに給送されるように意図される。さもなければ、
図3のリファイナ2の構造及び操作ならびに精錬面の特性は、上記に開示したものと類似であってよい。
【0047】
図4は、部分的に断面の円筒形のリファイナ3の極めて概略的な側面図であり、円筒形のリファイナ3は、リグノセルロースを含有する木質繊維材料を精錬するために利用されることがある。
図4の円筒形のリファイナ3の基本構造及び動作は、上記の
図1の円錐状のリファイナ1の基本構造及び動作と実質的に類似しており、主な相違は、円錐形の代わりの、ステータ6及びロータ9の円筒形の形態又は形状である。ステータ6及びロータ9の形態又は形状の間のこの相違の故に、精錬チャンバ15のサイズは、
図4の矢印ADで概略的に示すように、ステータ直径を調整することによって、円筒形のリファイナ3において調整される。
図4の円筒形のリファイナ3の構造及び動作は、
図1及び
図2の図並びに上記の記述の観点から自己説明的である。
【0048】
図1及び
図4のリファイナ1及び3には、リファイナの軸方向Aにおいて2つの異なる精錬ゾーン21a、21bがある。
図1及び
図4におけるように、リファイナ1及び3の軸方向Aにおける異なる精錬ゾーンの数は、別個の繊維材料留分の流れのための給送チャネルの数を増加させることによって増加させられてよい。
【0049】
図5は、部分的に断面でディスクリファイナ4の側面図を概略的に示している。
図5のリファイナ4は、第1の静止的なディスク状の精錬要素6a、すなわち、ステータブレード要素7aと、その瓜の精錬面8aとを有する、第1のステータ6aを含む。リファイナ4は、回転可能なディスク状の精錬要素9、すなわち、第1の静止的な精錬要素6aの隣にあるロータ9を更に含み、ロータ9は、第1のロータブレード要素10aと、その内の精錬面11aとを有する。第1のロータブレード要素10a及びその内の精錬面11aは、第1の精錬チャンバ15aが第1のステータ6a及びロータ9の対向する精錬面8a、11aの間に形成されるように、第1のステータ6aに向かって方向付けられる。
【0050】
図5のリファイナ4は、第2の静止的なディスク状の精錬要素6b、すなわち、ステータブレード要素7bと、その内の精錬面8bとを有する、第2のステータ6bを更に含む。第2のステータ6bは、第2のステータ6b内のステータブレード要素7bの精錬面8aがロータ9に向かって方向付けられるように、第1のステータ6aに対するロータ9の反対側でロータ9の隣に配置されている。ロータ9は、第2のロータブレード要素10bと、その内の精錬面11bとを有する。第2のロータブレード要素10b及びその内の精錬面11bは、第2の精錬チャンバ15bが第2のステータ6b及びロータ9の対向する精錬面8b、11bの間に形成されるように、第2のステータ6bに向かって方向付けられる。
【0051】
ディスク状のリファイナ4において、精錬要素6a、6b、9及び精錬面6a、6b、11a、11bは、リファイナ4の半径方向Rに延び、半径方向Rは、リファイナ4の軸方向Aに対して実質的に垂直である。相応して、第1のステータ6aとロータ9との間の第1の精錬チャンバ15a及び第2のステータ6bとロータ9との間の第2の精錬チャンバ15bは、リファイナ4の半径方向Rに延びる。リファイナ4の半径方向Rにおいて、ステータ6a、6b及びロータ9、並びに精錬チャンバ15a、15bは、それぞれ、精錬要素6a、6b、9の対向する端及び精錬チャンバ15a、15bで、内縁IE又は内周IEと、外縁OE又は外周OEとを有する。
【0052】
更に、
図5のリファイナ4には、第1の精錬チャンバ15aの内縁IEを通じて第1の繊維材料留分FM1を第1の精錬チャンバ15a内に給送するように配置された第1の給送集合体18a及び第1の給送チャネル19aがある。更に、第2の精錬チャンバ15bの内縁IEを通じて第2の繊維材料留分FM2を第2の精錬チャンバ15b内に給送するように配置された第2の給送集合体18b及び第2の給送チャンバ19bがある。第2の繊維材料留分FM2は、第1の繊維材料留分FM1と定性的に異なってよく、或いはそれらは1つの同じ繊維材料留分であってよい。それらの間に第1の精錬チャンバ15aを形成する第1のステータ6aの精錬面8a及びロータ9の第1の精錬面11bの精錬面特性は、第1の繊維原料留分FM1の精錬ニーズに従って選択され、それによって、第1の精錬チャンバ15aは、リファイナ4の第1の精錬ゾーン21aを提供する。それらの間に第2の精錬チャンバ15bを形成する第2のステータ6bの精錬面8b及びロータ9の第2の精錬面9bの精錬面特性は、第2の繊維材料留分FM2の精錬ニーズに従って選択され、それによって、第2の精錬チャンバ15bは、リファイナ4の第2の精錬ゾーン21bを提供する。定性的に異なる繊維材料留分FM1、FM2の異なる精錬ニーズの故に、第1の精錬チャンバ15aにおける少なくとも1つの精錬面特性は、第2の精錬チャンバ15bにおけるそれぞれの精錬面特性と異なる。
【0053】
更に、
図5のリファイナ4には、2つの別個の排出チャンバ22a、22bがある。第1の排出チャンバ22aは、矢印FM1も用いて概略的に示すように、第1の精錬チャンバ15a内で精錬された第1の繊維材料留分FM1を受け取ることを意図している。第2の排出チャンバ22bは、矢印FM2も用いて概略的に示すように、第2の精錬チャンバ15b内で精錬された第2の繊維材料留分FM2を受け取ることを意図している。精錬された第1の繊維材料留分FM1は、第1の排出チャネル23a及び第1の排出集合体24aを通じて第1の排出チャネル22aから排出される。精錬された第2の繊維材料留分FM2は、第2の排出チャネル23b及び第2の排出集合体24bを通じて第2の排出チャネル22bから排出される。よって、精錬された第1の繊維材料留分FM1及び精錬された第2の繊維材料留分FM2は、別個の流れとして、更なる処理に供給される。
【0054】
よって、
図5のリファイナでは、リファイナから別個の流れとして異なる精錬ゾーン21a、21bで異なる精錬効果を受けた繊維材料留分を排出するために精錬ゾーン21a、21bに対する排出チャネル23a、23bがある。典型的には、排出チャネルの数は、精錬ゾーンの数と同じである。すなわち、各精錬ゾーンについて1つの排出チャネルがある。しかしながら、何らかの精錬ゾーンにあるより多い数の排出チャネルは除外されない。この種のリファイナは、中程度の量の異なる繊維材料留分が生成されるべきパルプ製造用途において特に有用であり、中程度の数のリファイナでの異なる繊維材料留分の利用が可能にするが、特定の繊維材料留分が受ける最適化された精錬効果を依然として有する。
【0055】
図5のリファイナ4では、別個の排出チャンバ22a、22b、別個の排出チャンバ23a、23b、及び別個の排出集合体24a、24bの代わりに、1つの共通の排出チャンバ22、1つの共通の排出チャネル23、及び1つの共通の排出集合体24を利用することができる。相応して、
図1、
図3、及び
図4のリファイナ1、2、3では、1つの共通の排出チャンバ22、1つの共通の排出チャネル23、及び1つの共通の排出集合体24の代わりに、別個の排出チャンバ22a、22b、別個の排出チャネル23a、23b、及び別個の排出集合体24a、24bを利用することもできる。
【0056】
図5のリファイナ4は、2つのステータと、それらの間のロータとを含む、二重ディスクリファイナであり、それによって、2つの異なる精錬チャンバ15a、15bがリファイナ内に提供される。類似のタイプの構造が円錐形のリファイナ及び円筒形のリファイナで利用されてもよく、それによって、各精錬チャンバが少なくとも1つの異なる精錬面特性を有するそれぞれの精錬ゾーン21a、21bを提供する、2つの異なる精錬チャンバ15a、15bを提供するように、2つの円錐形又は円筒形のステータと、それらの間の円錐形又は円筒形のロータとがある。よって、この種のリファイナは、第1の静止的な精錬要素と、第1の精錬ゾーンを形成する第1の精錬チャンバが第1の静止的な精錬要素及び回転可能な精錬要素の対向する精錬面の間に形成されるように、第1の静止的な精錬要素内にあり、第1の静止的な精錬要素に対して実質的に反対側にある、回転可能な精錬要素と、第2の精錬ゾーンを形成する第2の精錬チャンバが回転可能な精錬要素と第2の静止的な精錬要素との間に形成されるように、回転可能な精錬要素内にあり、回転可能な精錬要素に対して実質的に反対側にある、第2の静止的な精錬要素とを含み、第2の精錬ゾーンでの少なくとも1つの精錬面特性は、第1の精錬ゾーンでのそれぞれの少なくとも1つの精錬面特性と異なる。この種の円錐形又は円筒形のリファイナにおいて、第1の給送チャンバは、第1の精錬チャンバの少なくとも一端を通じて第1の繊維材料留分を第1の精錬チャンバ内に給送するように構成されてよく、第2の給送チャンバは、第2の精錬チャンバの少なくとも一端を通じて第2の繊維材料留分を第2の精錬チャンバ内に給送するように構成されてよい。このタイプの円錐形及び円筒形のリファイナにける並びに
図5のディスクリファイナのタイプにおける異なるリファイナチャンバの数は、リファイナ内のステータ及びロータの数を増加させることによって更に増加させられてよい。
【0057】
技術が進歩するに応じて、発明的な概念を様々な方法で実施し得ることが当業者に明らかであろう。本発明及びその実施形態は上述の例に限定されず、請求項の範囲内で変化することがある。