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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】入浴車
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61H33/00 310Z
A61H33/00 310A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021071029
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165617
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000134121
【氏名又は名称】株式会社デベロ
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】東海林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】飯村 司
(72)【発明者】
【氏名】浅野 芳生
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-108297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0295327(US,A1)
【文献】特開2019-214836(JP,A)
【文献】特開2002-355285(JP,A)
【文献】登録実用新案第3076900(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ボイラーと、貯水タンクと、前記貯水タンクから水を前記ボイラーに供給するポンプと、前記ボイラーに燃料を供給する燃料タンクと、搬出可能な浴槽と、前記ボイラーから搬出された前記浴槽に給湯するための単一のホースと、を含む入浴用設備機器を搭載する入浴車であって、
前記ボイラーは、給湯温度表示部と、給湯温度を昇温させる昇温スイッチと、前記給湯温度を降温させる降温スイッチと、を備える制御パネルを有しており、
前記入浴車は、前記制御パネルに外付けで取り付けられ、前記給湯温度表示部を撮像する撮像装置と、前記昇温スイッチまたは前記降温スイッチを操作して前記給湯温度を調整する温度調整部と、を備えた温度制御装置をさらに有し、
前記温度制御装置は、前記撮像装置で撮像された前記給湯温度表示部の画像を表示しつつ、前記温度調整部を遠隔操作可能な遠隔操作手段を用いて制御され、
前記ボイラーで加温された湯が、前記ホースを介して、前記浴槽に直接給湯されるように構成されていることを特徴とする入浴車。
【請求項2】
前記温度調整部は、前記制御パネルの外部から前記昇温スイッチおよび前記降温スイッチを機械的に操作する機械的操作手段を有する請求項1に記載の入浴車。
【請求項3】
前記機械的操作手段は、モータと、前記モータの回転軸に固定された制御カムと、を備え、
前記制御カムは、前記モータの前記回転軸に対して対称的に配置された第1の側部および第2の側部を備えた回動板で構成されており、前記第1の側部および前記第2の側部が、前記モータの回転により前記昇温スイッチおよび前記降温スイッチを押圧するように構成されている請求項2に記載の入浴車。
【請求項4】
前記機械的操作手段は、前記回動板の前記第1の側部および前記第2の側部が前記昇温スイッチおよび前記降温スイッチを押圧する強さ、および/または押圧する時間を変更可能に構成されている請求項3に記載の入浴車。
【請求項5】
前記温度制御装置は、前記撮像装置および前記温度調整部を収容して、前記制御パネルに外付けで取り付けられる筐体を備え、
前記筐体は、前記給湯温度表示部、前記昇温スイッチ、前記降温スイッチおよび前記温度調整部を、前記筐体の外部から視認可能に構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の入浴車。
【請求項6】
前記ボイラーは、石油給湯器である請求項1ないし5のいずれかに記載の入浴車。
【請求項7】
前記温度制御装置は、前記撮像装置および前記温度調整部の動作を制御する制御部と、前記遠隔操作手段と無線通信する無線モジュールと、を備えている請求項1ないし6のいずれかに記載の入浴車。
【請求項8】
前記無線モジュールと、前記遠隔操作手段とは、無線信号を中継する無線中継器を介して無線通信される請求項7に記載の入浴車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラー、貯水タンク、ポンプ、燃料タンク、搬出可能な浴槽および給湯用ホース等の入浴用設備機器を搭載する訪問入浴サービス用の入浴車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車中に搭載された浴槽等を訪問先の住宅に運び込んで入浴者を入浴させる訪問入浴サービス用の入浴車(移動入浴車)は、箱型商用車(ワンボックス車)の荷室内部(荷台)に、浴槽等への給湯に必要なボイラー、貯水タンク、ポンプ、燃料タンク、搬出可能な浴槽、搬出された浴槽に給湯するための配管やホース等の給湯設備機器を搭載している。
【0003】
訪問入浴サービスでは、上記入浴車で要介護者の住居に訪問し、入浴車から要介護者のいる住居内等に浴槽を運搬する。次に、給湯用ホースを準備し、給湯用ホースの一端を、ボイラーから湯を供給する配管に接続し、給湯用ホースの他端を、住居内等に運搬された浴槽の給湯栓(給水栓)に接続する。この状態で、ボイラーおよびポンプを起動させることにより、浴槽内に湯を供給する。
【0004】
この方法では、入浴車から要介護者の住居内までの距離が長い場合には、給湯用ホースの大部分が外気に曝されることになる。この場合、冬季や寒冷地での訪問入浴サービスにおいて、湯がボイラーから浴槽に供給されるまでの間に、湯温が下がってしまう。また、湯温に対する体感温度に個人差があったり、湯温の感じ方が日々の体調により変化する等の問題もあり、ボイラーの給湯温度の設定が難しい。
【0005】
この問題を解決するために、給湯用ホース、貯水タンクから直接水を供給する給水用ホース、および、給湯用ホースからの湯と給水用ホースからの水とを混ぜ合わせて浴槽内に供給するための混合栓(混合水栓)を用いて、浴槽内に適温の湯を供給する方法がある。なお、この方法では、ボイラーの給湯温度を、浴槽内に実際に供給される湯の温度よりも高く設定する。例えば、ボイラーの給湯温度を50℃に設定する。係る方法では、給湯用ホースの一端を、上記と同様にして、ボイラーから湯を供給する配管に接続し、給水用ホースの一端を、貯水タンクからポンプを介して水を供給する配管に接続する。そして、浴槽側に設置される混合栓(混合水栓)に給湯用ホースおよび給水用ホースの他端をそれぞれ接続する。この状態で、ボイラーおよびポンプを起動させ、混合栓の操作(温度調整ダイヤル操作、レバー操作、ハンドル操作等)により、浴槽内に適温の湯を供給する。
【0006】
しかしながら、係る方法では、入浴車から給湯用ホースおよび給水用ホースの2本のホースを要介護者の住居内に引き込む必要がある。通常、入浴車から浴槽の設置場所まで10m~50m程度あるため、2本のホースを住居内に引き込むのは、介護従事者に大きな負担となっている。また、浴槽に、混合栓やその他の関連部品を設ける必要があり、1本の給湯用ホースで浴槽に給湯する場合に比べて、必要な部品点数が増加し、入浴車の車載スペースを圧迫している。そのため、介護従事者の負担軽減のためには、1本の給湯用ホースで浴槽に給湯できるようにすることが好ましい。
【0007】
1本の給湯用ホースで浴槽に給湯する場合には、上記の理由から、ボイラーの給湯温度を適宜調整する必要がある。ボイラーの給湯温度は、ボイラー本体に取り付けられ、またはボイラー本体周辺に設置される、制御パネルの昇温・降温スイッチの操作により調整されるが、浴槽の湯温のチェックは住居内で行うのに対し、給湯温度を調整するのは入浴車で行う必要がある。そのため、介護従事者は、浴槽の湯温の調整のために、住居内と入浴車との間を行き来しなければならず、介護従事者にとって大きな負担となっている。
【0008】
このような負担を解消するため、入浴車に搭載されるボイラーの給湯温度を、無線通信によって遠隔操作するリモコンを用いて制御する方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、リモコンの給湯温度表示部にボイラーの制御パネルに表示される給湯温度が表示され、リモコンの昇温・降温スイッチを操作することにより、ボイラーの給湯温度を制御することができる。係る方法によれば、介護従事者は、要介護者の住居内において、ボイラーの給湯温度を遠隔操作することができる。
【0009】
しかしながら、平成19年(2007年)に消費生活用製品安全法が改正され、ボイラー(石油給湯器)について、製造業者等には、安全点検等の保守が求められるようになった。現在、安全管理の観点から、入浴車に搭載されるボイラーの制御パネルを遠隔操作するためのリモコンを製造販売する製造業者はなく、また、リモコンによる遠隔操作により給湯温度を調整することができるように制御パネルを改造した場合には、製造業者による点検を受けることができない。このような背景から、ボイラーの制御パネルを改造することなく、介護従事者が、浴槽に給湯される湯温の調整を容易に行える方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-114002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、ボイラーの制御パネルを改造することなく、遠隔操作によりボイラーの給湯温度を調整することができるとともに、給湯設備機器の訪問先での搬送負担を軽減して、介護従事者の負担を軽減することができる入浴車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は以下の特徴(1)~(8)を有する本発明により達成される。
(1) 少なくとも、ボイラーと、貯水タンクと、前記貯水タンクから水を前記ボイラーに供給するポンプと、前記ボイラーに燃料を供給する燃料タンクと、搬出可能な浴槽と、前記ボイラーから搬出された前記浴槽に給湯するための単一のホースと、を含む入浴用設備機器を搭載する入浴車であって、
前記ボイラーは、給湯温度表示部と、給湯温度を昇温させる昇温スイッチと、前記給湯温度を降温させる降温スイッチと、を備える制御パネルを有しており、
前記入浴車は、前記制御パネルに外付けで取り付けられ、前記給湯温度表示部を撮像する撮像装置と、前記昇温スイッチまたは前記降温スイッチを操作して前記給湯温度を調整する温度調整部と、を備えた温度制御装置をさらに有し、
前記温度制御装置は、前記撮像装置で撮像された前記給湯温度表示部の画像を表示しつつ、前記温度調整部を遠隔操作可能な遠隔操作手段を用いて制御され、
前記ボイラーで加温された湯が、前記ホースを介して、前記浴槽に直接給湯されるように構成されていることを特徴とする入浴車。
【0013】
(2) 前記温度調整部は、前記制御パネルの外部から前記昇温スイッチおよび前記降温スイッチを機械的に操作する機械的操作手段を有する上記(1)に記載の入浴車。
【0014】
(3) 前記機械的操作手段は、モータと、前記モータの回転軸に固定された制御カムと、を備え、
前記制御カムは、前記モータの前記回転軸に対して対称的に配置された第1の側部および第2の側部を備えた回動板で構成されており、前記第1の側部および前記第2の側部が、前記モータの回転により前記昇温スイッチおよび前記降温スイッチを押圧するように構成されている上記(2)に記載の入浴車。
【0015】
(4) 前記機械的操作手段は、前記回動板の前記第1の側部および前記第2の側部が前記昇温スイッチおよび前記降温スイッチを押圧する強さ、および/または押圧する時間を変更可能に構成されている上記(3)に記載の入浴車。
【0016】
(5) 前記温度制御装置は、前記撮像装置および前記温度調整部を収容して、前記制御パネルに外付けで取り付けられる筐体を備え、
前記筐体は、前記給湯温度表示部、前記昇温スイッチ、前記降温スイッチおよび前記温度調整部を、前記筐体の外部から視認可能に構成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の入浴車。
【0017】
(6) 前記ボイラーは、石油給湯器である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の入浴車。
【0018】
(7) 前記温度制御装置は、前記撮像装置および前記温度調整部の動作を制御する制御部と、前記遠隔操作手段と無線通信する無線モジュールと、を備えている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の入浴車。
【0019】
(8) 前記無線モジュールと、前記遠隔操作手段とは、無線信号を中継する無線中継器を介して無線通信される上記(7)に記載の入浴車。
【発明の効果】
【0020】
本発明の入浴車は、ボイラーの制御パネルに外付けで取り付けられ、制御パネルの給湯温度表示部を撮像する撮像装置と、給湯温度を昇温させる昇温スイッチおよび給湯温度を降温させる降温スイッチを操作して、給湯温度を調整する温度調整部と、を備えた温度制御装置を有する。係る温度制御装置は、撮像装置で撮像された給湯温度表示部の画像を表示しつつ、温度調整部を遠隔操作可能な遠隔操作手段を用いて制御される。したがって、介護従事者は、訪問先において、住居内から入浴車まで移動することなく、遠隔操作によりボイラーの給湯温度を制御して、浴槽に供給される湯温の調整を容易に行うことができる。
【0021】
また、本発明では、ボイラーの制御パネルを改造して、遠隔操作により給湯温度を直接調整しようとするのではなく、昇温スイッチおよび降温スイッチを外部から操作する構成とすることで、ボイラー製造業者によるボイラーのメンテナンスサービスを受けることができる。訪問介護サービスを安全に行い続ける観点から、このようなボイラーのメンテナンスは欠かせない。
【0022】
さらに、本発明では、ボイラーの給湯温度を住居内から遠隔操作することができるため、ボイラーで加温された湯を、単一のホースを介して直接浴槽に給湯することができる。すなわち、貯水タンクから浴槽(混合栓)に給水するための給水ホースが不要となる。また、湯と水との混合比率を調整する混合栓も不要となる。そのため、給湯設備機器の訪問先での搬送負担が軽減される。
本発明によれば、以上の効果により、介護従事者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の入浴車の好適な実施形態における遠隔操作の概要を説明するための図である。
図2】本発明の入浴車の好適な実施形態の荷台に搭載された給湯設備機器の一部を示す斜視図である。
図3図2に示す入浴車の温度制御装置周辺の拡大図である。
図4図3に示す温度制御装置およびボイラーの制御パネルを上側から見た図である。
図5図3に示す温度制御装置をボイラーの制御パネルから取り外した状態を示す斜視図である。
図6図3に示す温度制御装置の構成を示すブロック図である。
図7図3に示す温度制御装置およびボイラーの制御パネルを斜め後方から見た斜視図である。
図8】本発明の入浴車の温度制御装置が備える温度調整部の制御カムの変形例を示す平面図である。
図9】本発明の入浴車の好適な実施形態における、遠隔操作手段を用いた温度制御装置の操作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の入浴車を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
(入浴車)
図1は、本発明の入浴車の好適な実施形態における遠隔操作の概要を説明するための図である。図2は、本発明の入浴車の好適な実施形態の荷台に搭載された給湯設備機器の一部を示す斜視図である。図3は、図2に示す入浴車の温度制御装置周辺の拡大図である。図4は、図3に示す温度制御装置およびボイラーの制御パネルを上側から見た図である。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態の入浴車100は、ハッチバック式のバックドアが設けられた自動車(ワンボックス車)である。入浴車100の荷室内部(荷台)には、給湯用のボイラー1、入浴用水を貯水する貯水タンク、貯水タンクから水をボイラー1に供給するポンプ2、ボイラー1に燃料を供給する燃料タンク、訪問先の住居内に搬出可能な浴槽3(分割浴槽または一体型浴槽)、ボイラー1から住居内に搬出された浴槽3に給湯するための単一のホース(給湯ホース)、入浴者を乗せて浴槽3に入浴させるための入浴用担架等の入浴用設備機器が搭載されている(貯水タンク、燃料タンク、ホースおよび入浴用担架は図示せず)。なお、本実施形態のボイラー1としては、石油給湯器が用いられる。
【0026】
また、図1に示すように、本実施形態の入浴車100には、ボイラー1の制御パネル10の給湯温度表示部を撮像する撮像装置と、ボイラー1の給湯温度の昇温スイッチまたは降温スイッチを操作して給湯温度を調整する温度調整部と、を備えた温度制御装置5が、ボイラー1の制御パネル10に外付けで取り付けられている。この温度制御装置5は、撮像装置で撮像された給湯温度表示部の画像を表示するとともに、温度調整部を遠隔操作可能な遠隔操作手段9を用いて制御される。
【0027】
係る入浴車100による訪問介護サービスは、例えば、次のようにして行われる。
まず、入浴車100で要介護者の住居に訪問し、入浴車100から要介護者の住居内に浴槽3を運搬する。次に、ホースの一端を、ボイラーから湯を供給する配管に接続し、ホースの他端を、住居内まで引き込んで、住居内に設置した浴槽3の給湯栓に接続する。その後、ポンプ2およびボイラー1を起動させ、ボイラー1で加温された湯を、ホースを介して、直接浴槽3に給湯する。介護従事者は、浴槽3に給湯される湯温をチェックし、入浴者の所望の湯温となるように、その場で遠隔操作手段9を操作して、ボイラー1の給湯温度を制御することができる。したがって、介護従事者は、浴槽3に給湯される湯温の調整のため、住居内と入浴車100との間を行き来する必要はなく、また、ボイラー1の給湯温度を調整するために入浴車100に別の介護従事者を滞在させる必要もない。所定量の湯が浴槽3内に給湯された後、入浴用担架を用いて、要介護者の入浴サービスを行う。
【0028】
図3に示すように、本実施形態の入浴車100では、ボイラー1の制御パネル10が、ボイラー1と離間しており、ボイラー1およびポンプ2等への電力の供給を制御する電源制御部4と一体となって構成されている。係る電源制御部4は、入浴車100の車内電源または要介護者の住居内の家庭用電源に接続される。電源制御部4には、メインスイッチ41、ポンプ2を起動させるポンプ起動スイッチ42、ポンプ2の起動を知らせるためのポンプ起動ランプ43等が設けられている。制御パネル10の表面には、図4に示すように、ボイラー1の給湯温度を表示する給湯温度表示部11、ボイラー1を起動させるボイラー起動スイッチ12、給湯温度を昇温させる昇温スイッチ13、給湯温度を降温させる降温スイッチ14等が設けられている。
【0029】
制御パネル10には、その外周を覆うようにして温度制御装置5が取り付けられている。
【0030】
以下、前述した図4および図5~7を参照して、温度制御装置5の具体的な構成について説明する。
【0031】
(温度制御装置)
図5は、図3に示す温度制御装置をボイラーの制御パネルから取り外した状態を示す斜視図である。図6は、図3に示す温度制御装置の構成を示すブロック図である。図7は、図3に示す温度制御装置およびボイラーの制御パネルを斜め後方から見た斜視図である。
【0032】
図5および図6に示すように、温度制御装置5は、箱状の筐体51と、制御パネル10の給湯温度表示部11を撮像する撮像装置52と、昇温スイッチ13または降温スイッチ14を操作する温度調整部と、撮像装置52および温度調整部に配線接続される制御ユニット55とを備えている。撮像装置52、温度調整部および制御ユニット55は、筐体51内に収納されている。また、制御ユニット55は、電源コードにより筐体51の側部に設けられたDCジャック562に接続され、電源アダプタ(ACアダプタ)56を介して図3に示す電源制御部4に接続されている。
【0033】
筐体51は、撮像装置52、温度調整部および制御ユニット55を内部に収納する機能を有している。図5に示すように、筐体51は、金属製の枠体と、係る枠体の外部を覆う樹脂製のケースとを備えており、ボイラー1の制御パネル10に外付けで取り付けられるように構成されている。また、枠体を覆う樹脂製のケースは、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透明性の高い材料で構成される。そのため、筐体51の外部から、制御パネル10の給湯温度表示部11、昇温スイッチ13、降温スイッチ14および温度制御装置5の温度調整部の駆動状態を視認することができる。さらに、図4に示すように、筐体51(ケース)の両側面には、半円状に切り欠かれた切り欠き部511が形成されている。介護従事者は、切り欠き部511から筐体51内に手を入れて、制御パネル10のボイラー起動スイッチ12を操作して、ボイラー1の起動または停止を行う。また、万が一、温度制御装置5に不具合が生じた場合には、温度制御装置5の遠隔操作を中止して、介護従事者が制御パネル10を直接操作して給湯温度の昇温、降温を行うことができる。
【0034】
さらに、温度制御装置5の電源スイッチ561は、筐体51の側部に設けられており、介護従事者が容易に温度制御装置5の電源のオンまたはオフを行うことができる。
【0035】
このように、温度制御装置5は、ボイラー1を取り扱う上で、高い安全性を考慮した設計となっている。
【0036】
また、図5および図7に示すように、筐体51の上面および底面には、それぞれ、筐体51をボイラー1の制御パネル10に取り付けるための2つの固定ネジ512が設けられている。各固定ネジ512は、工具を必要とすることなく、介護従事者が指で固定ネジ512を回転させることにより、温度制御装置5をボイラー1の制御パネル10に取り付け、または取り外しを容易に行うことができる。
【0037】
撮像装置52は、制御パネル10の給湯温度表示部11を撮像する機能を有している。また、撮像装置52は、制御ユニット55に有線接続されており、後述する制御マイコン551からの制御に応じて、給湯温度表示部11を撮像する。
【0038】
この撮像装置52は、レンズユニット521、イメージセンサ等を備えている。レンズユニット521は、給湯温度表示部11に表示される給湯温度を鮮明に撮像することができるように、給湯温度表示部11と対向して設けられる。レンズユニット521のレンズは、特に限定されないが、ボイラー1の種類を問わず、制御パネル10とレンズユニット521との距離がほぼ一定であり、より明るい画像を撮ることができるため、焦点距離が固定される単焦点レンズであることが好ましい。
【0039】
また、撮像装置52は、所定間隔で給湯温度表示部11を撮像し、撮像した画像信号を制御マイコン551にリアルタイムで送信する。
【0040】
温度調整部は、昇温スイッチ13または降温スイッチ14を操作する機能を有している。また、温度調整部は、制御ユニット55に有線接続されており、後述する制御マイコン551からの制御に応じて、その駆動が制御される。
【0041】
また、温度調整部は、制御パネル10の昇温スイッチ13および降温スイッチ14のみを操作するように構成されており、その他のボイラー起動スイッチ12等は操作できないようになっている。これは、ボイラー1の起動は、安全面の問題から、介護従事者がボイラー1の状態を確認しながら、制御パネル10を直接操作する必要があるためである。したがって、遠隔操作手段9による遠隔操作は、ボイラー1の給湯温度の昇温および降温操作のみに限定されることが適切である。
【0042】
温度調整部は、制御パネル10を改造することなく、制御パネル10の外部から昇温スイッチ13および降温スイッチ14を操作する構成であれば、特に限定されないが、昇温・降温スイッチ13、14を機械的に操作する機械的操作手段で構成されていることが好ましい。
【0043】
このような機械的操作手段としては、モータ等の駆動手段と、駆動手段により回動運動または往復運動するようなカム部材とを備えた構成が用いられる。本実施形態では、図5に示すように、制御ユニット55に配線されたモータ53と、モータ53の回転軸に固定された制御カム54とが、機械的操作手段(温度調整部)を構成している。
【0044】
図4に示すように、制御カム54は、モータ53の回転軸に対して対称的に配置された第1の側部541および第2の側部542を備えた回動板で構成されている。より具体的には、この回動板は、平面視で円環状の一部を扇状に切り欠いた形状の部材で構成されており、平面視で切欠き面の外周側の両側部(第1の側部541、第2の側部542)が、モータ53の回動により昇温スイッチ13および降温スイッチ14を操作(押圧)する。
【0045】
制御ユニット55が、遠隔操作手段9から操作信号を受信していない状態では、第1の側部541および第2の側部542が、いずれも昇温・降温スイッチ13、14から離間して、制御パネル10に対して略平行な位置に配置されている。
【0046】
制御ユニット55が、遠隔操作手段9から給湯温度を1℃昇温させる操作信号を受信した場合には、モータ53の駆動により制御カム54が反時計回りに回動して、第1の側部541が昇温スイッチ13を1回押圧する(図4参照)。これにより、ボイラー1の給湯温度が1℃昇温する。その後、制御カム54は時計回りに回動して、元の状態に戻る。一方、制御ユニット55が、遠隔操作手段9から1℃降温させる操作信号を受信した場合には、モータ53の駆動により制御カム54が時計回りに回動して、第2の側部542が降温スイッチ14を1回押圧する。これにより、ボイラー1の給湯温度が1℃降温する。その後、制御カム54は反時計回りに回動して、元の状態に戻る。
【0047】
制御カム54の形状を、図示するような、平面視で円環状の一部を扇状に切り欠いた形状とすることにより、機械的操作手段(温度調整部)がモータ53と制御カム54との簡易的な構成でありながら、昇温・降温スイッチ13、14を押圧する操作をきめ細かく制御することができる。図示の制御カム54の構成であれば、部品点数や組立工程を減らすことができ、温度制御装置5を低コストで製造することができる。また、カム部材の構成としては、図示の構成に限定されず、例えば、図8に示す形状の制御カム54や、ピストン式のカム部材を用いることもできる。
【0048】
図8は、本発明の入浴車の温度制御装置が備える温度調整部の制御カムの変形例を示す平面図である。
【0049】
図8に示す制御カム54は、平面視で略三角形状をなす回動板で構成されており、一方の傾斜面の端部が第1の側部541となり、他方の傾斜面の端部が第2の側部542となる。係る構成の制御カム54も、図4に示す制御カム54と同様に、第1の側部541および第2の側部542が、モータ53の回動により昇温スイッチ13および降温スイッチ14を押圧する。制御カム54の形状を、図8に示すような形状とした場合でも、図4に示す形状の制御カム54と同様の作用効果を奏する。
【0050】
なお、制御カム54の第1の側部541および第2の側部542が昇温・降温スイッチ13、14を押圧する強さや、押圧する時間は、モータ53の駆動量および駆動時間を調整することにより変更可能に構成されており、温度制御装置5を取り付けるボイラー1の種類に応じて適宜調整することができる。
【0051】
制御カム54の構成材料としては、特に限定されず、硬質な材料(例えば、各種樹脂材料、セラミック材料)を用いることができる。また、モータ53としては、特に限定されないが、DCサーボモータを用いるのが好ましい。DCサーボモータを用いることにより、例えば、ステッピングモータ等を用いた場合に比べて、微細な制御が可能な上に、高いトルクで作動させることができ、より正確な動作が可能となる。
【0052】
制御ユニット55は、図6に示すように、温度制御装置5の制御を実行するための制御マイコン(制御部)551と、撮像装置52を駆動させるカメラドライバIC552と、温度調整部(モータ53)を駆動させるモータドライバIC553と、制御マイコン551の処理を実行するために用いられる各種データおよびモジュールを保存している1つ以上のメモリー554と、電源アダプタ56に接続され、制御マイコン551、撮像装置52、温度調整部等に電力を供給する電源回路555と、外部の遠隔操作手段9と無線通信するための無線モジュール556とを備えている。
【0053】
制御マイコン551は、無線モジュール556を介して受信した遠隔操作手段9からの操作信号に応じて、カメラドライバIC552を介した撮像装置52の駆動、モータドライバIC553を介したモータ53の駆動を制御する。さらに、撮像装置52から送信される画像信号を、無線モジュール556を用いて、遠隔操作手段9に無線送信する。
【0054】
制御マイコン551は、制御マイコン551の制御を実行するための1つ以上のプロセッサーと、制御マイコン551への入力および制御マイコン551からの出力を実行するためのI/O(インプット/アウトプット)インターフェースと、を備えている。
【0055】
1つ以上のプロセッサーは、1つ以上のマイクロプロセッサー、マイクロコンピューター、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサー(DSP)、中央演算処理装置(CPU)、メモリーコントロールユニット(MCU)、画像処理用演算処理装置(GPU)、状態機械、論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはこれらの組み合わせ等のコンピューター可読命令に基づいて信号操作等の演算処理を実行する演算ユニットである。特に、プロセッサーは、メモリー554内に保存されているコンピューター可読命令(例えば、データ、プログラム、モジュール等)をフェッチし、演算、信号操作および制御を実行するよう構成されている。
【0056】
I/Oインターフェースは、ウェブインターフェース、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)等の様々なソフトウェアインターフェースおよびハードウェアインターフェースを含む。例えば、I/Oインターフェースは、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ、外部メモリー、プリンター、ディスプレイのような周辺デバイスのためのインターフェースである。I/Oインターフェースは、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイのような入力デバイスを用いた制御マイコン551への入力およびディスプレイ、プリンター、外部メモリーへの制御マイコン551からの出力を可能とする。また、I/Oインターフェースは、制御マイコン551が、インターネット等のネットワークを介して、遠隔操作手段9以外の外部に設けられたウェブサーバーやデータサーバーのような任意の外部デバイスと通信を行うことを可能としてもよい。
【0057】
カメラドライバIC552は、制御マイコン551からの制御により、撮像装置52の駆動を制御する機能を有している。制御マイコン551からの制御に応じてカメラドライバIC552が、撮像装置52による給湯温度表示部11を撮像するタイミング、撮像間隔等を調整する。制御マイコン551は、遠隔操作手段9を操作し始めてから所定間隔で撮像装置52による撮像を行い続けるように制御してもよいし、遠隔操作手段9による昇温・降温操作を行ってから所定の時間だけ所定間隔で撮像装置52による撮像を行うように制御してもよい。制御マイコン551は、遠隔操作手段9による昇温・降温操作を行ってから所定の時間だけ撮像装置52による撮像を行うように制御することにより、撮像装置52の消費電力を抑えることができる。なお、撮像装置52による撮像を行う間隔は、特に限定されず、1秒~数十秒間隔で撮像するようにカメラドライバIC552を制御することができる。
【0058】
モータドライバIC553は、制御マイコン551からの制御により、モータ53の駆動を制御する機能を有している。制御マイコン551からの制御に応じてモータドライバIC553が、モータ53の回動方向、駆動量、駆動時間等を調整する。
【0059】
メモリー554は、揮発性記憶媒体(例えば、RAM、SRAM、DRAM)、不揮発性記憶媒体(例えば、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリー、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、光ディスク、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク)、またはこれらの組み合わせを含むコンピューター可読媒体である。
【0060】
メモリー(記憶部)554は、制御マイコン551のプロセッサーと通信可能に接続され、プロセッサーにより実行可能な複数のモジュール、および、複数のモジュールによる処理に必要なデータを保存している。また、メモリー554は、複数のモジュールの1つ以上によって受信、処理、生成されたデータや、複数のモジュールによる処理を実行するために必要なデータを一時保存する機能を備えている。データとしては、例えば、撮像装置52の撮像間隔、モータ53の駆動量、駆動時間等が含まれる。
【0061】
無線モジュール556は、遠隔操作手段9からの操作信号を無線通信により受信する機能、および撮像装置52から制御マイコン551に送信される画像信号を、遠隔操作手段9に無線通信により送信する機能を有している。無線モジュール556は、アンテナ、送受信回路、変復調回路等の無線通信を実行するために必要なコンポーネントを備えており、制御マイコン551からの制御に応じて、遠隔操作手段9との間の無線通信を実行する。無線モジュール556は、例えば、Wi-Fi(登録商標)のような無線LAN方式、ZigBee(登録商標)やBLE(ブルートゥース(登録商標)・ロー・エナジー)のような無線PAN方式、WiMAX(登録商標)のような無線MAN方式、無線WAN方式等の無線通信分野において既知の任意の近距離無線通信技術を用いて、遠隔操作手段9からの操作信号を無線通信によりリアルタイムで受信し、また、撮像装置52から制御マイコン551に送信される画像信号を、遠隔操作手段9にリアルタイムで送信する。
【0062】
(遠隔操作手段)
次に、遠隔操作手段9について説明する。なお、以下の説明では、遠隔操作手段9と無線モジュール556との無線通信方式として、代表的に、Wi-Fi(登録商標)を使用する場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0063】
図6に示すように、遠隔操作手段9は、制御マイコン551により送信された、撮像装置52による撮像画像を表示する画像表示部91と、制御カム54の駆動により制御パネル10の昇温スイッチ13の押圧を指示する昇温指示スイッチ92と、制御カム54の駆動により制御パネル10の降温スイッチ14の押圧を指示する降温指示スイッチ93と、昇温指示スイッチ92および降温指示スイッチ93の操作を有効にするロック解除スイッチ94と、Wi-Fi(登録商標)の電波状態を示す電波インジケータ95と、図示しない電源スイッチとを備えている。また、画像表示部91に表示される撮像画像には、給湯温度表示部11に表示された給湯温度だけではなく、制御カム54の動作状態等も含まれる。そのため、介護従事者は、ボイラー1の給湯温度だけではなく、温度制御装置5が正常に作動しているかどうかについても、遠隔操作手段9により確認することができる。
【0064】
介護従事者(操作者)が、ロック解除スイッチ94を押下しながら昇温指示スイッチ92を操作(押下)することにより、遠隔操作手段9から給湯温度を1℃昇温させる操作信号が温度制御装置5に送信される。制御マイコン551は、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9からの操作信号を受信した際に、撮像装置52を駆動させて、撮像装置52から送信された画像信号を、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9にリアルタイムで送信する。また、制御マイコン551は、モータ53を駆動させて、制御カム54が反時計回りに回動することにより、第1の側部541が昇温スイッチ13を1回押圧して、ボイラー1の給湯温度を1℃昇温させることができる。
【0065】
また、操作者が、ロック解除スイッチ94を押下しながら降温指示スイッチ93を操作(押下)することにより、遠隔操作手段9から給湯温度を1℃降温させる操作信号が温度制御装置5に送信される。制御マイコン551は、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9からの操作信号を受信した際に、撮像装置52を駆動させて、撮像装置52から送信された画像信号を、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9にリアルタイムで送信する。また、制御マイコン551は、モータ53を駆動させて、制御カム54が時計回りに回動することにより、第2の側部542が降温スイッチ14を1回押圧して、ボイラー1の給湯温度を1℃降温させることができる。
【0066】
また、昇温指示スイッチ92および降温指示スイッチ93は、誤って連続で操作した際に、急激に給湯温度が変化しないようにするために、昇温指示スイッチ92および降温指示スイッチ93を1回操作した後、画像表示部91に表示される画像が複数回(例えば、2回)更新されるまで、昇温指示スイッチ92および降温指示スイッチ93を一時的に操作できないように構成されていることが好ましい。
【0067】
また、遠隔操作手段9では、ロック解除スイッチ94を押下した状態でなければ、昇温指示スイッチ92および降温指示スイッチ93の操作が有効とならないため、介護従事者が要介護者を入浴させている際に、不用意に遠隔操作手段9に接触した場合に給湯温度が変更されることを防止することができる。なお、ロック解除スイッチ94によるロック状態は、無効に設定することもできる。
【0068】
また、遠隔操作手段9と無線モジュール556との無線通信は、通常、図6の(a)の経路に示されるように、無線中継器を用いることなく、直接信号を送受信することができる。ただし、入浴車100から要介護者の住居までの距離が長かったり、入浴車100から要介護者の住居までの高低差がある場合には、無線通信するための電波状態が悪いことも考えられる。このような場合には、電波インジケータ95に表示される電波状態を確認した上で、図6の(b)の経路に示されるように、入浴車100と要介護者の住居との間に無線中継器20を配置し、無線中継器20を介して、遠隔操作手段9と無線モジュール556との無線通信を行うこともできる。
【0069】
なお、遠隔操作手段9としては、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、ノートパソコン、ワークステーション、タブレット型コンピューター、携帯電話、スマートフォン、PDA、ウェアラブル端末、サーバー等の任意の端末を用いることができる。
【0070】
次に、上述した遠隔操作手段9を用いた温度制御装置5の操作方法S100について説明する。
【0071】
図9は、本発明の入浴車の好適な実施形態における、遠隔操作手段を用いた温度制御装置の操作方法を示すフローチャートである。
【0072】
操作方法S100の各行程S110~S170は、制御マイコン551のプロセッサーが、メモリー554内の各モジュールを含む制御マイコン551の各コンポーネントを用いることにより実行される。
【0073】
まず、入浴車100で要介護者の住居に訪問し、要介護者の住居内に入浴車100から浴槽3を運搬する。次に、ホースの一端を、ボイラーから湯を供給する配管に接続し、ホースの他端を、住居内まで引き込んで、住居内に設置した浴槽3の給湯栓に接続する。その後、電源制御部4のメインスイッチ41をオンにすることにより、ポンプ2およびボイラー1を起動させ、ボイラー1で加温された湯を、ホースを介して、直接浴槽3に給湯する。操作方法S100は、浴槽3に給湯する状態から開始される。
【0074】
工程S110において、介護従事者は、遠隔操作手段9の電源スイッチをオンにする。この操作により、温度制御装置5は、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9の電源がオンになった操作信号を受信する。次に、工程S120において、制御マイコン551は、カメラドライバIC552を制御して、撮像装置52を駆動させる。工程S130において、制御マイコン551は、撮像装置52から送信された画像信号を、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9にリアルタイムで送信する。これにより、画像表示部91に、撮像装置52で撮像された給湯温度表示部11の画像が表示されるため、介護従事者は、昇温・降温操作前のボイラー1の給湯温度を知ることができる。
【0075】
次に、工程S140において、浴槽3に給湯される湯の温度を、入浴者の要望に応じて調整する。具体的には、昇温指示スイッチ92または降温指示スイッチ93を操作する。この操作により、温度制御装置5は、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9からの給湯温度を1℃昇温または1℃降温させる操作信号を受信する。
【0076】
次に、工程S150において、制御マイコン551は、カメラドライバIC552を制御して、撮像装置52を駆動させる。工程S160において、制御マイコン551は、撮像装置52から送信された画像信号を、無線モジュール556を介して遠隔操作手段9にリアルタイムで送信する。その後、遠隔操作手段9の昇温または降温操作から所定時間経過するまで、工程S150およびS160が繰り返される。
【0077】
また、最初の工程S150とほぼ同じタイミングで、工程S170において、制御マイコン551は、モータドライバIC553を制御して、制御カム54が反時計回り、または時計回りに回動するようにモータ53を駆動させる。これにより、昇温スイッチ13または降温スイッチ14が1回押圧されて、ボイラー1の給湯温度を1℃昇温または1℃降温させることができる。その後、制御マイコン551は、モータドライバIC553を制御して、制御カム54は元の状態に戻る。
【0078】
このように、本実施形態の入浴車100では、撮像装置52で撮像された給湯温度表示部11の画像を表示しつつ、温度調整部(制御カム54)を遠隔操作可能な遠隔操作手段9を用いて制御される。したがって、介護従事者は、訪問先において、住居内から入浴車100まで移動することなく、遠隔操作によりボイラーの給湯温度を制御して、浴槽に供給される湯温の調整を容易に行うことができる。
【0079】
また、ボイラー1の制御パネル10を改造して、遠隔操作により給湯温度を直接調整しようとするのではなく、昇温スイッチ13および降温スイッチ14を外部から操作する構成とすることで、ボイラー製造業者によるボイラーのメンテナンスサービスを受けることができる。訪問介護サービスを安全に行い続ける観点から、このようなボイラーのメンテナンスは欠かせない。また、温度制御装置5は、制御パネル10に容易に着脱可能となっており、さらに、筐体51の両側部から介護従事者が筐体51内に手を入れて、直接制御パネル10を操作できる構成としている。そのため、万が一、温度制御装置5に不具合が生じた場合には、温度制御装置5の遠隔操作を中止して、介護従事者が制御パネル10を直接操作して給湯温度の昇温、降温を行うことができるため、安全な状態を確保することができる。
【0080】
さらに、本実施形態の入浴車100では、ボイラー1の給湯温度を住居内から遠隔操作することができるため、ボイラー1で加温された湯を、単一のホースを介して直接浴槽に給湯することができる。すなわち、貯水タンクから浴槽(混合栓)に給水するための給水ホースが不要となる。また、湯と水との混合比率を調整する混合栓も不要となる。そのため、給湯設備機器の訪問先での搬送負担が軽減される。
【0081】
本実施形態の入浴車100によれば、以上の効果により、介護従事者の負担を軽減することができる。
【0082】
以上、本発明の入浴車について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0083】
例えば、図6に示された入浴車の温度制御装置のコンポーネントの数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意のコンポーネントが追加若しくは組み合わされ、または任意のコンポーネントが削除された態様も、本発明の範囲内である。また、入浴車の温度制御装置の各コンポーネントは、ハードウェア的に実現されていてもよいし、ソフトウェア的に実現されていてもよいし、これらの組み合わせによって実現されていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…ボイラー 10…制御パネル 11…給湯温度表示部 12…ボイラー起動スイッチ 13…昇温スイッチ 14…降温スイッチ 2…ポンプ 20…無線中継器 3…浴槽 4…電源制御部 41…メインスイッチ 42…起動スイッチ 43…ポンプ起動ランプ 5…温度制御装置 51…筐体 511…切り欠き部 512…固定ネジ 52…撮像装置 521…レンズユニット 53…モータ 54…制御カム 541…第1の側部 542…第2の側部 55…制御ユニット 551…制御マイコン 552…カメラドライバIC 553…モータドライバIC 554…メモリー 555…電源回路 556…無線モジュール 56…電源アダプタ 561…電源スイッチ 562…DCジャック 9…遠隔操作手段 91…画像表示部 92…昇温指示スイッチ 93…降温指示スイッチ 94…ロック解除スイッチ 95…電波インジケータ 100…入浴車 S100…操作方法 S110、S120、S130、S140、S150、S160、S170…工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9