(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】保持器のない転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/06 20060101AFI20241210BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16C19/06
F16C33/78
(21)【出願番号】P 2021558884
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 DE2020100261
(87)【国際公開番号】W WO2020200365
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】202019101921.2
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506320738
【氏名又は名称】パウル ミュラー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー ウンターネーメンスベタイリグンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】フェルチュベック エーヴァルト
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-014411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/06
F16C 33/30-33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪(2)と該内輪(2)に対し同心に配置される外輪(3)との間で周方向に配分して配置されている複数の転動体(4)と、
前記周方向に沿ってリングセグメント状に配置され、少なくとも一時的に前記転動体(4)の2つと同時に接触し、前記転動体(4)のそれぞれに軸線方向に方向づけられる力を作用させる押圧要素(6)と、
を備え、
前記押圧要素(6)が押圧舌片(7)を有し、該押圧舌片がその第1の端部領域(7a)で
片持ち支持され、その第2の端部領域(7b)が
自由端として形成されている、保持器のない転がり軸受(1)において、
前記第1の端部領域(7a)内に、面取りした入口領域(7c)が形成されており、
前記第2の端部領域(7b)内に、面取りした出口領域(7d)が形成されて
おり、
先行転動体(4a)と後続転動体(4b)との間隔が、前記転動体(4)の等間隔配分に基づいて生じるべき理論的間隔よりも小さければ、前記先行転動体(4a)に対する前記押圧要素(6)の制動作用が小さく、前記先行転動体(4a)と前記後続転動体(4b)との間隔が前記理論的間隔よりも大きければ、前記先行転動体(4a)に対する前記押圧要素(6)の制動作用が大きくなるように、前記押圧要素(6)の弾性予緊張力又は弾性調整量が設定されている、ことを特徴とする保持器のない転がり軸受(1)。
【請求項2】
前記押圧舌片(7)の横断面が、前記第1の端部(7a)を起点として前記第2の端部領域(7b)まで先細りになっている、請求項1に記載の保持器のない転がり軸受(1)。
【請求項3】
前記押圧舌片(7)が軸線方向に湾曲している、請求項1または2に記載の保持器のない転がり軸受(1)。
【請求項4】
前記転がり軸受(1)が軸線方向においてリング状のカバーディスク(5)によって閉鎖され、該カバーディスク(5)に前記押圧要素(6)が装着されている、請求項1から3までのいずれか一つに記載の保持器のない転がり軸受(1)。
【請求項5】
前記押圧要素(6)が前記転動体(4)のうちの高々2つの転動体と同時に接触している、請求項1から4までのいずれか一つに記載の保持器のない転がり軸受(1)。
【請求項6】
複数の前記押圧要素(6)が等間隔で周方向にわたって配分されている、請求項1から5までのいずれか一つに記載の保持器のない転がり軸受(1)。
【請求項7】
前記転がり軸受(1)が段付き玉軸受である、請求項1から6までのいずれか一つに記載の保持器のない転がり軸受(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持器のない転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較的高い回転数(回転数値n×dm>10000mm/分)が期待される適用例で使用される転がり軸受は、典型的には軸受保持器を備えており、この軸受保持器内に転がり軸受の転動体(球体、ころ)が受容される。この種の軸受保持器により、経済的寿命と一様な同心性作動とを達成できる。さらに、軸受保持器は転動体同士の等間隔保持を保証し、転がり軸受が作動している間の摩擦学的に望ましくない転動体の接触を阻止する。
【0003】
軸受保持器を有していない転がり軸受も知られている。この転がり軸受は、保持器のない転がり軸受とも呼ばれる。この保持器のない転がり軸受の利点は、たとえば、軸受保持器を省略することにより、転がり軸受の同じサイズでより多くの転動体を設けることができることであり、このことは転がり軸受の耐荷重性を向上させる。この種の転がり軸受は総転がり軸受とも呼ばれる。しかしながら、軸受保持器を備える転がり軸受の上述の利点は、公知の保持器のない転がり軸受においてはまったく得られていない。軸受保持器を省略することで、特に高回転数の際に問題が生じる。すなわち、個々の転動体間の間隔が変化して、それらの間に接触が生じることがある。この種の望ましくない接触は摩耗を高め、転がり軸受の寿命を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、転がり軸受の作動中の隣接しあう転動体の接触をできるだけ阻止する保持機のない転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の構成によって解決される。有利な実施態様は、従属項に記載されている。
【0006】
本発明による保持機のない転がり軸受は、内輪と該内輪に対し同心に配置される外輪との間で周方向に配分して配置されている複数の転動体と、押圧要素とを有している。押圧要素は、周方向に沿ってリングセグメント状に配置され、少なくとも一時的に転動体の少なくとも2つと同時に接触し、接触しあっている転動体のそれぞれに軸線方向に方向づけられる力を作用させる。
【0007】
「軸線方向」という概念は、同心に配置されている転がり軸受の内輪と外輪との軸線方向に関する。さらに、「軸線方向に方向づけられる力」という記載は、押圧要素によって転動体に作用する方向が軸線方向に1つの方向成分を有するというように理解すべきである。したがって、この定義の下では、正確に軸線方向の力だけでなく、軸線方向の方向成分以外にたとえば半径方向の方向成分をも有することになる。
【0008】
転がり軸受の作動中、押圧要素は隣り合っている転動体の間隔に対し補償作用を持っている。たとえば、先行転動体と後続転動体との間隔が、転動体の等間隔配分に基づいて生じるべき理論的間隔よりも小さければ、先行転動体に対する押圧要素の制動作用は小さい。これら転動体間の間隔は対応的に大きくなる。これに対し、先行転動体と後続転動体との間隔が理論的間隔よりも大きければ、先行転動体に対する押圧要素の制動作用は大きい。これら転動体の間隔は対応的に小さくなる。
【0009】
このようにして、個々の転動体間の間隔は、理論的間隔に調整される。したがって、転がり軸受の作動中に隣り合っている転動体間の接触は十分に阻止される。対応的に転がり軸受の寿命が長くなり、保持器のない転がり軸受は特に高回転数を伴う適用例に対しても適している。
【0010】
有利な実施態様では、押圧要素は定置のものであり、または、静止している。転がり軸受の場合、一般的には内輪または外輪のいずれかが静止し、他方それぞれ他の輪が適用例に応じて要求される速度で回転する。転動体は、作動中に内輪および外輪のそれぞれの走行面上を転動する。さらに、通常は同様に静止している転がり軸受の他の構成要素、たとえばカバーディスクが設けられていてよい。定置であることまたは静止していることは、押圧要素が転がり軸受の静止している要素の中の1つ(たとえば静止している輪、カバーディスク、または隣接している構成部材)と結合されていることを意味している。その結果、押圧要素に対する転動体の相対運動が生じる。したがって、転がり軸受が回転運動している間にすべての転動体は順次押圧要素と接触する。押圧要素を定置の押圧要素または静止している押圧要素として形成する利点は、技術的観点からこれが比較的コントロールしやすいことにある。
【0011】
しかしながら、押圧要素を回転する押圧要素として形成することも可能である。この場合、押圧要素は転がり軸受の回転する要素、たとえば回転する輪に装着される。一組の転動体は典型的にはほぼ外輪および内輪の平均回転数で周回するので、一組の転動体と押圧要素との間にはほぼ同じ相対運動が与えられ、押圧要素の作用原理はほぼ等しい。
【0012】
換言すれば、押圧要素は、所定の力をもたらすことによって転動体の周回速度に局所的に影響を与えることで、転動体の周回側の間隔保持をコントロールする機能を持っている。これは、押圧要素がその弾性的形態および弾性的調整量に関して次のように構成されていることで達成され、すなわち後続転動体が先行転動体に対し大きな間隔を持っているか、小さな間隔を持っているかに応じて、先行転動体と後続転動体に対し異なる力配分が発生するように、構成されていることで達成される。たとえば、押圧要素と転動体との間の接触力は、力の方向が軸線方向において転がり軸受の内輪の担持肩とは逆の方向に向けられていることにより、または、外輪の担持肩のほうに向けられていることにより、転動体の周回速度を制動させる。これにより、臨界間隔で接近している後続転動体に対する接触力が高くなることによって切り離し作用を得ることができる。
【0013】
本発明による保持機のない転がり軸受の利点は以下のとおりである。
・組み立てに伴うパック密度の制限のない軸受においては、特に転動体を切り離す保持器の中間細条部のためのスペースが省略されることにより少なくとも1つの拘束フランジが少なくとも部分的に取り外されているような軸受(段付き玉軸受、スピンドル軸受、入れ溝付き軸受など)においては、転動体の数量がより多いことによってより高い耐荷重性が得られる。
・回転する保持器の案内面における保持器ポケットと転動体との間の摩擦個所と、強制力によって生じる保持器の材料内のヒステリシス損失とがなくなるので、摩擦を低減させることができる。
・自らの偏心自由度と、回転自由度と、弾性自由度との範囲内で走行して一緒に回転する保持器により誘導される、軸受の走行特性における非再帰的回転ぶれがなくなる。
・転動体と軸受外輪および軸受内輪との接触角度に対する補償作用または低減作用による、ボーリング対ローリング比率と先行球体および後続球体とに関する転動体の転動の際の運動学的状況をより好都合にさせる。
【0014】
有利な実施態様では、押圧要素は圧舌片を有し、該押圧舌片は第1の端部領域で支持されている。この場合、押圧舌片の支持は、有利な態様では、軸受台として機能する突出部を介して行われ、突出部を介して押圧要素は転がり軸受またはその周囲の静止要素のうちの1つと相対回転不能に結合されている。
【0015】
押圧舌片の第1の端部領域に対向している、押圧舌片の第2の領域は、有利な態様では、自由端として形成されている。(カンチレバーのように)片持ち式舌片として形成することにより、押圧要素は、接触するそれぞれの転動体に軸線方向の可変力を作用させる弾性を得る。このようにして、隣接しあっている転動体の間隔を特に精確に調整することができる。
【0016】
しかしながら、押圧舌片の第2の端部領域は、安定性の理由から撓み可能に固定されていてもよい。
【0017】
有利な態様では、押圧舌片の横断面は、第1の端部を起点として第2の端部の方向に先細りになっている。対応的に、第2の端部領域は第1の端部領域よりも小さな横断面を有する。このようにして、押圧要素の弾性分布または曲げ抵抗モーメントを調整することができる。この点も、隣り合っている転動体の間隔の特に精確な調整を可能にする。その際、横断面の先細りは押圧舌片の厚さおよび/または幅を小さくすることによって行うことができる。
【0018】
さらに、押圧舌片の第1の端部領域内に、面取りした入口領域が形成されていてよい。この面取りした入口領域により、それぞれの転動体と押圧要素との接触の開始時に軸線方向の力が穏やかに導入される。
【0019】
また、第2の端部領域に、面取りした出口領域が形成されていてもよい。この面取りした出口領域により、それぞれの転動体と押圧要素との接触の終了時に力の導入が穏やかに終結する。
【0020】
更なる有利な実施態様では、押圧舌片は湾曲して、または、弧状に形成されている。このような湾曲も押圧要素の弾性予緊張力(たとえば弾性調整量)に影響し、それ故2つの隣り合う転動体の間隔を特に精確に調整できる。
【0021】
更なる有利な実施態様では、押圧要素はシーソー状の押圧要素として形成され、シーソー状の押圧要素は、中央領域で支持され、且つ両端部領域において撓み可能に固定され、または、完全に片持ち式である。このようにして、押圧要素はある種の弾性のあるシーソーとして機能し、後続転動体が臨界的に追従すると、先行転動体をより強く加速させることができる。
【0022】
本発明によれば、一時的に少なくとも2つの転動体に同時に押圧要素によって軸線方向に力を作用させる必要がある。しかしながら、2つ以上の転動体に同時に押圧要素によって軸線方向に力を作用させることも可能である。このようにして、複数の転動体にわたってその間隔を長時間にわたり調整することができる。これにより、隣り合う転動体間の望ましくない接触の可能性が少なくなる。
【0023】
また、複数の押圧要素を周方向にわたって配分して配置することも可能である。これによっても、隣り合う転動体間の望ましくない接触の可能性が付加的に少なくなる。
【0024】
有利な態様では、転がり軸受は段付き玉軸受として形成されている。転動体が押圧要素によって段付き玉軸受の外輪肩部の方向に押されると、このようにして特に一定の力導入が押圧要素によって可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明を、図面の実施形態に基づいてさらに説明する。
【
図2】カバーディスクの図示を省略した、
図1の転がり軸受の前面図である。
【
図3】
図2の複数の押圧要素のうちの1つを単独で示した図である。
【
図5】押圧要素と接触している2つの転動体とともに示した押圧要素の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、保持器のない転がり軸受1を断面図で示している。転がり軸受は、内輪2と、内輪2に対し同心に配置される外輪3とを有している。内輪2と外輪3との間には、リング状の軸受内部空間が形成されている。この軸受内部空間内には、周方向に等間隔で複数の転動体4が配分されている。
図1で転がり軸受1の右側にある軸線方向終端部を、リング状のカバーディスク5が形成している。このカバーディスク5と内輪2および/または外輪3との間に、図には詳細に図示していないが、密封要素が設けられていてよい。
【0027】
図2は
図1の転がり軸受1の前面図であるが、わかりやすくするためにカバーディスク5は図示していない。内輪2、外輪3、転動体4、カバーディスク5に加えて、転がり軸受1は全部で3つの押圧要素6を有している。
【0028】
これら押圧要素6はカバーディスク5に固定され、周方向に等間隔で配分されている。各押圧要素6はリングセグメント状の基本形状を持ち、対応的に軸受内部空間のリングセグメントを覆っている。各押圧要素6が覆っている角度範囲の大きさは、一時的に少なくとも2つの転動体4が同時に押圧要素6によって接触する程度のものである。この場合各押圧要素6は、接触しあっている転動体4に対し軸線方向に向けられる力を作用させる。より正確には、押圧要素6は転動体4に対し、
図1で右側から左側へ方向づけられた軸線方向の力を作用させる。これにより、転動体4は押圧要素6により外輪3の肩部の方向に押される。
【0029】
図3および
図4は、
図1および
図2の押圧要素6を単独で示している。
図4は、
図2と同じ方向から見た押圧要素6を示している。
図3は、押圧要素6の側面図である。
【0030】
押圧要素6は、押圧舌片7と突出部8とを有する。突出部8は、押圧舌片7の第1の端部領域7aに形成され、押圧要素6をカバーディスク5に固定するために用いる。これにより、押圧要素6は第1の端部領域7aで支持されている。押圧舌片7の、第1の端部領域7aに対向している第2の端部領域7bは、
自由端として形成されている。すなわち、第2の端部領域7bは支持されていない。押圧舌片7の横断面は、第1の端部領域7aを起点として第2の端部領域7bの方向に先細りになっている。より正確には、押圧舌片7の厚さは減っており、他方押圧舌片7の幅は一定である。第1の端部領域7aには、面取りした入口領域7cが形成されている。第2の端部領域7bには、面取りした出口領域7dが形成されている。特に
図4に図示したように、押圧舌片7は曲げて、または、湾曲させて形成されている。
【0031】
図5は、保持器のない転がり軸受1の機能原理を図式的に示したものである。1つの押圧要素6と、例として2つの転動体4a,4bが図示されている。鎖線で示した位置は、転動体4aと4bがない時に押圧要素6が占める位置である。両転動体4a,4bにより、押圧要素6は実線で示した位置へ押される。同時に、押圧要素6は対応的な反力を両転動体4aと4bに生じさせる。この反力は、押圧要素6が転動体4に作用する軸線方向の力に対応している。
【0032】
転がり軸受1の作動中に(すなわち回転中に)、転動体4aは先行転動体であり、転動体4bは後続転動体である。すなわち、まず転動体4aが入口領域7cで押圧要素6と接触し、その後第1の端部領域7aを起点として第2の端部領域7bの方向に前進する。後続転動体4bは、対応的にこれよりも後で入口領域7cで押圧要素6と接触し、同様に第1の端部領域7aを起点として第2の端部領域7bの方向に前進する。最初に先行転動体4aが第2の端部領域7bに到達し、その後出口領域7dを経て押圧要素6との接触を失う。同時に、転動体4bに続く転動体4がすでに入口領域7cを通過している。転動体4bには、先行転動体に対応してこの新たな後続転動体が続く。
【0033】
いま、先行転動体4aと後続転動体4bとの間隔が、転動体4の等間隔配分に基づいて生じるべき理論的間隔よりも小さければ、先行転動体に対する押圧要素6の制動作用は小さい。対応的に転動体4aと4bの間隔は大きくなる。これに対し、先行転動体4aと後続転動体4bとの間隔が理論的間隔よりも大きければ、先行転動体4aに対する押圧要素6の制動作用は大きい。対応的に転動体4aと4bの間隔は小さくなる。
【0034】
したがって、転動体4aと4bの間隔を理論的間隔に調整する。よって、転がり軸受1の作動中に隣り合っている転動体4aと4bとの接触は確実に阻止される。
【0035】
図6は、押圧要素の他の実施形態を示している。
図6に図示した押圧要素106が前図に図示した押圧要素6と異なるのは、押圧舌片107が別様に成形されている点である。押圧要素6の押圧舌片7は一定の幅を有しているが、押圧要素107は先細りの幅を有している。より正確には、押圧要素107の幅は、第1の端部領域107aを起点として第2の端部領域107bの方向へ狭くなっている。第2の端部領域107bは対応的に、第1の端部領域107aよりも小さな横断面を有する。このようにして、押圧要素106は押圧要素6とは異なる弾性分布または曲げ抵抗モーメントを有している。
【0036】
図に図示した複数の実施形態では、転動体4は球体として形成されている。対応的に転がり軸受1は玉軸受として形成され、より正確には段付き玉軸受として形成されている。しかしながら、転動体4を筒状に、すなわちころまたは筒体として形成することも可能である。
【0037】
図に図示した1実施形態では、3つの押圧要素6が等間隔に配分して配置されている。しかしながら、他の数量の押圧要素またはただ1つの押圧要素6を設けることも可能である。
【0038】
図に図示した1実施形態では、転がり軸受1は総転がり軸受として形成されている。軸受内部空間を転動体4によってほぼ完全に充填することにより、高い耐荷重性が達成される。しかしながら、転動体4をより少なく密にパッキングすることも可能である。
【0039】
図に図示した1実施形態では、押圧要素6はカバーディスク5と結合されている。しかしながら、押圧要素6を転がり軸受の他の定置の構成要素または静止している構成要素に結合させること、或いは、転がり軸受に隣接して配置される保持部材と結合させることも可能である。さらに、押圧要素6を転がり軸受1の回転要素、たとえば回転する内輪2または外輪3に配置することも可能である。
【0040】
図に図示した複数の実施例では、押圧要素6,106はそれぞれ押圧舌片7または107を備えた押圧要素として形成されている。この場合、それぞれ第2の端部領域7bまたは107bは完全に片持ち式に形成されている。しかしながら、第2の端部領域7bまたは107bを撓み可能に固定することも可能である。
【0041】
さらに、シーソー状の押圧要素として形成されている1つまたは複数の押圧要素を設けることも可能である。シーソー状の押圧要素は中央領域で支持され、端部領域において撓み可能に固定されるか、或いは、片持ち式に自立して支持される。押圧要素のこのような構成は、特に押圧力を軸線方向に交互に方向づける場合に有利である。
【符号の説明】
【0042】
1 保持器のない転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4,4a,4b 転動体
5 カバーディスク
6,106 押圧要素
7,107 押圧舌片
7a,107a 第1の端部領域
7b,107b 第2の端部領域
7c 入口領域
7d 出口領域
8 突出部