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特許7601324化合物を基板上に固定する方法および固定化した化合物の検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】化合物を基板上に固定する方法および固定化した化合物の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20241210BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20241210BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01N33/543 525E
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020095953
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021189080
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】509013703
【氏名又は名称】公立大学法人福島県立医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509088653
【氏名又は名称】株式会社メディクローム
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100156443
【弁理士】
【氏名又は名称】松崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】今井 順一
(72)【発明者】
【氏名】松倉 進
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-207936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0137411(US,A1)
【文献】特表2012-530906(JP,A)
【文献】特開2004-309372(JP,A)
【文献】特表2005-524058(JP,A)
【文献】特表2007-530925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に化合物を固定化する方法であって、
前記基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、前記化合物を前記基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する固定化工程
を含み、
前記固定用タンパク質が血中タンパク質またはその類似体であり、かつ、
前記タンパク質-化合物複合体が、前記固定用タンパク質と前記化合物との結合により形成されている、化合物固定化方法(ただし、前記タンパク質-化合物複合体は架橋剤により複合体を形成したものではない)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物固定化方法であって、
前記血中タンパク質またはその類似体が血清アルブミン、αグロブリン、トランスフェリン、リゾチーム、アポリポプロテイン、トランスサイレンチン、オボアルブミン、ラクトアルブミン、オボトランスフェリン、または、ラクトトランスフェリンである、化合物固定化方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物固定化方法であって、
前記固定化工程が、
(a)前記固定用タンパク質と前記化合物とを溶媒中で混合してタンパク質-化合物複合体を調製する工程と、
(b)前記タンパク質-化合物複合体を前記基板上に固定化する工程と、
を含む、化合物固定化方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物固定化方法であって、
前記タンパク質-化合物複合体が、前記固定用タンパク質と前記化合物との非共有結合により形成されている、化合物固定化方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物固定化方法であって、
前記基板上に複数の前記タンパク質-化合物複合体が固定化され、前記複数のタンパク質-化合物複合体間において互いに異なる配向で前記固定用タンパク質と前記化合物とが結合している、化合物固定化方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物固定化方法であって、
前記タンパク質-化合物複合体を形成している化合物が、前記タンパク質-化合物複合体を形成する前の前記化合物の活性を維持している、化合物固定化方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物固定化方法であって、
前記化合物が互いに異なる複数の化合物を含む化合物群であり、
前記固定化工程が、前記固定用タンパク質を介して、前記基板上に前記化合物群を固定化する工程である、化合物固定化方法。
【請求項8】
請求項3に記載の化合物固定化方法であって、前記工程(b)の後に
(c)前記基板を洗浄する工程
をさらに含む、化合物固定化方法。
【請求項9】
基板上に固定化した化合物を検出する方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の固定化方法により基板上に固定化した化合物を検出する検出工程
を含む、化合物検出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物検出方法であって、
前記検出工程により検出したタンパク質-化合物複合体または化合物を回収する工程をさらに含む、化合物検出方法。
【請求項11】
対象化合物に対して親和性を有する化合物をスクリーニングする方法であって、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、前記対象化合物を前記基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程であって、前記固定用タンパク質が血中タンパク質またはその類似体であり、かつ、前記タンパク質-化合物複合体が、前記固定用タンパク質と前記化合物との結合により形成されている工程と、
(ii)前記基板上に固定化した対象化合物に対して候補化合物を接触させて、前記対象化合物に対して親和性を有する化合物を検出する工程と、
を含む、化合物スクリーニング方法(ただし、前記タンパク質-化合物複合体は架橋剤により複合体を形成したものではない)
【請求項12】
請求項11に記載の化合物スクリーニング方法であって、
前記対象化合物が疾患関連マーカーに親和性を有する化合物であり、かつ、前記候補化合物が生体試料由来の化合物であり、
前記工程(ii)が、前記基板上に固定化した疾患関連マーカーに親和性を有する化合物に対して前記生体試料由来の化合物を接触させて、前記生体試料中の疾患関連マーカーを検出する工程である、化合物スクリーニング方法。
【請求項13】
請求項11に記載の化合物スクリーニング方法であって、
前記候補化合物が生体試料由来の化合物であり、
前記対象化合物に対する前記生体試料に含まれる化合物のプロファイルを得る、化合物スクリーニング方法。
【請求項14】
請求項13に記載の化合物スクリーニング方法であって、
前記対象化合物が抗原候補化合物であり、
前記候補化合物が前記生体試料由来の抗体であり、
前記抗原候補化合物に対する前記生体試料中に含まれる抗体のプロファイルを得る、化合物スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物を基板上に固定する方法および固定化した化合物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子化合物に対してどのようなタンパク質が結合するかを調べることは、ケミカルバイオロジーの領域において、基礎研究のみならず臨床薬を開発する上で非常に重要な研究である。
【0003】
一般に、「化合物マイクロアレイ」とは、DNAマイクロアレイにヒントを得て、DNAの代わりに有機化合物をチップ(またはスライドガラス)の上に固定化したものであり、目的タンパク質と化合物の物理的相互作用を評価することができるものである。化合物マイクロアレイ技術は、化合物ライブラリを効率よく利用する技術として原理的には優れているが、化合物をスライドガラスや特殊な基板に固定化することが困難であった。この課題を克服するために、様々な研究がなされてきた(例えば、非特許文献1)。
【0004】
化合物を固定化する方法として、共有結合を形成させる方法と、非共有結合で固定化させる方法に大別される。また、共有結合を形成させる方法では、化合物の特定の官能基と基板上に導入された官能基の間の選択的反応を用いる方法と、そうではない方法に分けられる。
【0005】
例えば、共有結合を形成させる固定化法で、かつ、選択的反応を用いる方法で固定化を試みたものでは、含チオール化合物ライブラリに対してはマレイミド基を導入したガラス基板に固定化する方法、アルコール化合物ライブラリに対してはシリル基との反応を利用して固定化する方法、または、ジイソシアネート基を用いて固定化する方法、酸性官能基を持つ化合物ライブラリに対してはジアゾベンジリデン基を利用して固定化する方法、含アミン化合物ライブラリに対してはアルデヒド基との反応を利用して固定化する方法、またはトリシル基との反応を利用して固定化する方法、含システイン化合物ライブラリに対してはグリオキシル基との反応を利用して固定化する方法、含ヒドラジド化合物ライブラリに対してはエポキシド基との反応を利用して固定化する方法、アジド化合物ライブラリに対してはアルキンとの反応を利用して固定化する方法、含シクロペンタジエン化合物ライブラリに対してはDiels-Alder(ディールス・アルダー)反応を利用して固定化する方法等が報告されている。また、非選択的反応を用いる方法で固定化を試みたものでは、アリールジアジリン基との反応を利用して固定化する方法等が報告されている。
【0006】
非共有結合を形成させる固定化法で、かつ、選択的反応を用いる方法で固定化を試みたものでは、ビオチン化化合物とアビジンとの反応を利用して固定化する方法、核酸タグを導入した化合物を固定化する方法、ペプチド核酸を化合物に導入したものを固定化する方法等が報告されている。また、非選択的反応を用いる方法で固定化を試みたものでは、ニトロセルロースコートされた基板に物理的に吸着させる方法、化合物溶液の1つ1つのスポットを反応チャンバーとして利用する方法、生分解性ポリマーでコート基板を用いる方法等が報告されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法は個々の化合物を別々に固定化することが前提であり、多くの研究機関が保有している化合物ライブラリのように、多種多様な構造や官能基を有する化合物の集合体を同一の基板に固定化することは不可能である。また、それぞれの方法にはそれぞれ短所もあり、例えば、化合物上の、基板への固定化に使われる領域がタンパク質と相互作用する領域と重複する場合には、固定化された化合物は役に立たないことになる。また、タグ等を導入して構造改変された化合物は、厳密な意味では元の化合物の性質をすべて保持しているとは言えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】有機合成化学協会誌 Vol.64 No.6 35-46.(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、多種多様な構造や官能基を有する化合物であっても修飾を要せず、構造を維持したまま容易に基板に固定化する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討したところ、タンパク質は溶媒中で化合物と混合するだけで容易に複合体を形成し、当該複合体はタンパク質を介して基板上に固定化できることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、下記態様を含む:
すなわち、本発明は一態様として、
〔1〕基板上に化合物を固定化する方法であって、
前記基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、前記化合物を前記基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程
を含む、固定化方法に関する。
ここで、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載の固定化方法であって、
前記基板がガラスであることを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の固定化方法であって、
前記固定用タンパク質が血中タンパク質またはその類似体であることを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の固定化方法であって、
前記固定化工程が、
(a)前記固定用タンパク質と前記化合物とを溶媒中で混合してタンパク質-化合物複合体を調製する工程と
(b)前記タンパク質-化合物複合体を前記基板上に固定化する工程と
を含むことを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の固定化方法であって、
前記固定化工程が、
(a’)前記固定用タンパク質を前記基板上に固定化する工程と
(b’)前記基板上に固定化した前記タンパク質に前記化合物を接触させてタンパク質-化合物複合体を形成する工程と
を含むことを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の固定化方法であって、
前記タンパク質-化合物複合体が、前記固定用タンパク質と前記化合物との非共有結合により形成されていることを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の固定化方法であって、
前記基板上に複数の前記タンパク質-化合物複合体が固定化され、前記複数のタンパク質-化合物複合体間において互いに異なる配向で前記固定用タンパク質と前記化合物とが結合していることを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の固定化方法であって、
前記タンパク質-化合物複合体を形成している化合物が、前記タンパク質-化合物複合体を形成する前の前記化合物の活性を維持していることを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔9〕上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の固定化方法であって、
前記化合物が互いに異なる複数の化合物を含む化合物群であり、
前記固定化工程が、前記固定用タンパク質を介して、前記基板上に前記化合物群を固定化する工程であることを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔10〕上記〔4〕に記載の固定化方法であって、前記工程(b)の後に
(c)前記基板を洗浄する工程
をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の固定化方法は一実施の形態において、
〔11〕上記〔5〕に記載の固定化方法であって、前記工程(a’)または/および(b’)の後に、
(c’)前記基板を洗浄する工程
をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔12〕基板上に固定化した化合物を検出する方法であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載の固定化方法により基板上に固定化した化合物を検出する工程
を含む、検出方法に関する。
ここで、本発明の検出方法は一実施の形態において、
〔13〕上記〔12〕に記載の検出方法であって、
前記検出工程により検出したタンパク質-化合物複合体または化合物を回収する工程
をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔14〕対象化合物に対して親和性を有する化合物をスクリーニングする方法であって、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、前記対象化合物を前記基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程と
(ii)前記基板上に固定化した対象化合物に対して候補化合物を接触させて、前記対象化合物に対して親和性を有する化合物を検出する工程と
を含む、スクリーニング方法に関する。
ここで、本発明のスクリーニング方法は一実施の形態において、
〔15〕上記〔14〕に記載のスクリーニング方法であって、
前記対象化合物が疾患関連マーカーに親和性を有する化合物であり、かつ、前記候補化合物が生体試料由来の化合物であり、
前記工程(ii)が、前記基板上に固定化した疾患関連マーカーに親和性を有する化合物に対して生体試料由来の化合物を接触させて、前記生体試料中の疾患関連マーカーを検出する工程であることを特徴とする。
また、本発明のスクリーニング方法は一実施の形態において、
〔16〕上記〔14〕に記載のスクリーニング方法であって、
前記候補化合物が生体試料由来の化合物であり、
前記対象化合物に対する前記生体試料に含まれる化合物のプロファイルを得ることを特徴とする。
また、本発明のスクリーニング方法は一実施の形態において、
〔17〕上記〔16〕に記載のスクリーニング方法であって、
前記対象化合物が抗原候補化合物であり、
前記候補化合物が生体試料に含まれる抗体であり、
前記抗原候補化合物に対する前記生体試料中に含まれる抗体のプロファイルを得ることを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔18〕基板へ化合物を固定化するための固定用タンパク質からなる固定化剤に関する。
また、本発明は別の態様において、
〔19〕上記〔12〕もしくは〔13〕に記載の検出方法、または、上記〔14〕もしくは〔15〕に記載のスクリーニング方法に用いる基板であって、固定用タンパク質が表面に結合している、基板に関する。
ここで、本発明の基板は一実施の形態において、
〔20〕上記〔19〕に記載の基板であって、
前記タンパク質が化合物と複合体を形成していることを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔21〕基板上に化合物を固定化するためのキットであって、
基板と固定用タンパク質とを含む、キットに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固定化方法によれば、多種多様な構造や官能基を有する化合物を、別途修飾を要せず、当該化合物の構造を維持したまま容易に基板に固定化することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、14種類の化合物(Amoxicillin、Ampicillin、Apramycin、Bacitracin、Cefalexin、Ceftazidime、Cloxacillin、Gentamicin、Hygromycin B、Neomycin、Penicillin G、Streptomycin、SulfadimidineおよびTetracycline)とHSAとの複合体、および、当該14種の化合物とBSAとが共有結合した化合物を基板上に固定し、6種のマウスモノクローナル抗HSA抗体および1種のマウスモノクローナル抗BSA抗体ならびに蛍光標識二次抗体を用いて、基板上のHSAおよびBSAを検出した結果を示す表である。
図2図2は、14種類の化合物(Amoxicillin、Ampicillin、Apramycin、Bacitracin、Cefalexin、Ceftazidime、Cloxacillin、Gentamicin、Hygromycin B、Neomycin、Penicillin G、Streptomycin、SulfadimidineおよびTetracycline)とHSAとの複合体、および、当該14種の化合物とBSAとが共有結合した化合物を基板上に固定し、抗Amoxicillin抗体、抗Ampicillin抗体、抗Penicillin抗体、抗Gentamycin抗体、抗Dihydrostreptomycin抗体、および、抗Streptomycin/Dihydrostreptomycin抗体ならびに蛍光標識二次抗体を用いて基板上の各化合物を検出した結果を示す表である。
図3図3は、下記実施例2において基板上に固定化したBSAと予め共有結合している化合物、または、HSAと化合物との複合体について、標識抗体を用いて各化合物を検出した際の画像を示す。各化合物について上段の画像はBSAと予め共有結合している各化合物の検出結果を示し、下段の画像はHSAと各化合物との複合体の検出結果を示す。矢印はそれぞれの抗体の標的抗原となる化合物がスポットされている位置を示す。
図4図4は、下記実施例3においてAmoxicillin、Amoxicillin Sodium、Penicillin G SodiumおよびGentamycin Sulfateと混合するHSAの濃度を変化させた際の基板への固定化への影響を、標識抗体を用いて検出した結果を示す表である。
図5図5は、下記実施例4においていくつかの固定用タンパク質とAmoxicillinとの複合体を基板上に固定化し、抗Amoxicillin抗体、抗Ampicillin抗体、抗Penicillin抗体、抗Gentamycin抗体ならびに蛍光標識二次抗体を用いて基板上の各化合物を検出した結果を示す表である。
図6図6は、下記実施例4において固定用タンパク質とAmoxicillin Sodiumとの複合体を基板上に固定化し、抗Amoxicillin抗体、抗Ampicillin抗体、抗Penicillin抗体、抗Gentamycin抗体ならびに蛍光標識二次抗体を用いて基板上の各化合物を検出した結果を示す表である。
図7図7は、図5の表におけるRed Intensitiyの値をグラフ化したものである。
図8図8は、図6の表におけるRed Intensitiyの値をグラフ化したものである。
図9図9は、下記実施例4において固定用タンパク質とPenicillin G sodiumとの複合体を基板上に固定化し、抗Amoxicillin抗体、抗Ampicillin抗体、抗Penicillin抗体、抗Gentamycin抗体ならびに蛍光標識二次抗体を用いて基板上の各化合物を検出した結果を示す表である。
図10図10は、下記実施例4において固定用タンパク質とBenzyl Penicillin Potassiumとの複合体を基板上に固定化し、抗Amoxicillin抗体、抗Ampicillin抗体、抗Penicillin抗体、抗Gentamycin抗体ならびに蛍光標識二次抗体を用いて基板上の各化合物を検出した結果を示す表である。
図11図11は、図9の表におけるRed Intensitiyの値をグラフ化したものである。
図12図12は、図10の表におけるRed Intensitiyの値をグラフ化したものである。
図13図13は、下記実施例4において固定用タンパク質とGentamycin Sulfateとの複合体を基板上に固定化し、抗Amoxicillin抗体、抗Ampicillin抗体、抗Penicillin抗体、抗Gentamycin抗体ならびに蛍光標識二次抗体を用いて基板上の各化合物を検出した結果を示す表である。
図14図14は、図13の表におけるRed Intensitiyの値をグラフ化したものである。
図15図15は下記実施例5において、各種プロスタグランジンとHSAとの複合体を基板上に固定化し、抗プロスタグランジンE2抗体および蛍光標識二次抗体を用いて基板上の各プロスタグランジンを検出した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.基板への化合物固定化方法
1-1.概要
本発明の一態様は、多種多様な構造や官能基を有する化合物であっても修飾を要せず一律の方法で構造を維持したまま基板に固定化する方法に関する。
本発明の基板上に化合物を固定化する方法は、基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、前記化合物を前記基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程を含む。
固定用タンパク質を介して基板上に化合物を固定するとは、基板に対して固定用タンパク質が結びつき、当該固定用タンパク質に対して化合物が結びつくことにより、結果として化合物が基板上に固定される状態を意味する。このように化合物を基板上に固定する方法は、先に化合物と固定用タンパク質との複合体を調製して当該複合体を基板に固定してもよいし、先に基板上に固定用タンパク質を結合し、その後当該固定用タンパク質に化合物を結合させてもよい。
すなわち、本発明の固定化方法は一実施の形態において、上記固定化工程が
(a)固定用タンパク質と化合物とを溶媒中で混合してタンパク質-化合物複合体を調製する工程と
(b)前記タンパク質-化合物複合体を基板上に固定化する工程と
を含む。
また本発明の固定化方法は別の実施の形態において、上記固定化工程が
(a’)固定用タンパク質を基板上に固定化する工程と
(b’)前記基板上に固定化した固定用タンパク質に化合物を接触させてタンパク質-化合物複合体を形成する工程と
を含む。
【0014】
1-2.定義
本明細書において「基板」とは、固定用タンパク質を介してタンパク質-化合物複合体を固定できるものであり、基板上に固定化される化合物の検出などに用いることができるものであれば限定されない。このような基板としては、金属、金属酸化物、ガラス、石英、シリコン、セラミックなどの無機材料、エラストマー、プラスチック、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂などの合成高分子、キチン、キトサン、セルロースなどの天然高分子を挙げることができる。基板の形状は限定されず、例えば、平板、平膜、フィルム、多孔質膜などの平坦な形状や、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路、微粒子などの立体的な形状が挙げられる。基板としては、ガラス、石英またはシリコンからなる基板がより好ましく、ガラスがさらに好ましい。
ガラスとはケイ酸塩を主成分とする透明の化合物である。本発明の基板に用いることのできるガラスは固定用タンパク質を介して化合物を固定できるものであれば限定されず、ケイ酸塩以外の化学成分を含んでいても良い。以下に限定されないが、例えばソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、石灰ガラスなどが含まれる。産業上の利用の観点からは、以下に限定されないが、ガラス板またはスライドガラスが望ましい。
【0015】
本発明に用いることのできる「基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質」とは、本明細書で定義する基板上(好ましくは、ガラス)に化合物を固定できるタンパク質であれば限定されず、例えば、血中タンパク質などを挙げることができる。このような固定用タンパク質は生合成されたものに限らず、化学合成されたものも用いることができる。固定用タンパク質の由来は限定されず、好ましくは哺乳類(ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ラット、モルモット、マウスなど)または鳥類由来の血中タンパク質である。
本明細書において固定用タンパク質というとき、基板上に化合物を固定できる性質を有する限り、その変異体や修飾体などの改変体またはその一部が含まれる。変異体とは、例えば固定用タンパク質を構成するアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、化合物と複合体を形成して基板上に当該化合物を固定化できる性質を有するものを意味する。また修飾体とはタンパク質のアミノ酸配列の一部に化学修飾を受けることにより当該固定用タンパク質のアミノ酸配列にそれ以外の化学構造が付加されたタンパク質、または、当該固定用タンパク質中の化学構造の一部が外されたタンパク質であって、化合物と複合体を形成して基板上に当該化合物を固定化できる性質を有するものを意味する。
本明細書において「血中タンパク質」とは血液中に含まれるタンパク質を意味する。本発明に用いることのできる血中タンパク質としては、例えばアルブミン(Human Serum Albumin (HSA)、Bovine Serum Albumin(BSA)などの血清アルブミン、など)、αグロブリン(α1-アンチトリプシン、ハプトグロビン、α2-マクロブロブリン、セルロプラスミン、チロキシン結合グロブリン、など)、トランスフェリン(Apo-Transferrin、Holo-Transferrin、など)、リゾチーム(Lysozyme)、アポリポプロテイン(apolipoprotein)、トランスサイレンチンなどを挙げることができる。また、化合物と複合体を形成し、かつ基板上に固定化できる限りにおいてこれら血中タンパク質の一部も含む。
また本明細書において「血中タンパク質の類似体」とは、血液以外に由来するタンパク質であって、特定の血中タンパク質と類似の性質を有するタンパク質もしくはその改変体、または、それらの一部をいい、かつ、基板上に化合物を固定できるものをいう。血液以外に由来する血中タンパク質の類似体としては、例えば、オボアルブミン、ラクトアルブミン、オボトランスフェリン、ラクトトランスフェリンなどを挙げることができる。
血中タンパク質は生体より採取した血清から単離したものであっても、人工的に合成(生合成および化学合成を含む)したものであってもよい。生体より血清を調製し、血清より各血中タンパク質を単離・精製する手法は公知である。また血中タンパク質として市販のものを用いることもできる。
なお好ましい実施の形態において、本発明に用いる血中タンパク質は血清タンパク質である。
【0016】
本明細書における「化合物」には、低分子化合物、高分子化合物、有機化合物、無機化合物、多糖類、ポリマー、脂質、核酸およびその類似体、ポリペプチド、タンパク質、抗体、レクチン、ならびに、それらの組み合わせにより構成される化合物を含む。本発明において基板に固定する化合物は、溶媒に溶解して基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質と複合体を形成できるものであれば限定されない。化合物は天然に存在するものでもよいし、人工的に合成したものでもよい。 またタンパク質-化合物複合体を形成する化合物は、タンパク質-化合物複合体間において互に同一であってもよく、また、互いに異なる二種以上の化合物であってもよい。
【0017】
「低分子化合物」とは分子量約10,000以下の化合物であって、高分子化合物、核酸、ポリペプチドと区別される化合物を意味し、以下に限定されないが、例えばAmoxicillin、Ampicillin、Apramycin、Bacitracin、Cefalexin、Ceftazidime、Cloxacillin、Gentamicin、Hygromycin B、Neomycin、Penicillin G、Streptomycin、Sulfadimidine、Tetracyclineなどを挙げることができる。
「高分子化合物」とは分子量約10,000を超える化合物であって、低分子化合物、核酸、ポリペプチドと区別される化合物を意味し、以下に限定されないが、例えば、でんぷん、セルロース、合成繊維、プラスチック、ゴム、アスベスト、塩化ホスホニトリル重合体等を挙げることができる。
「多糖類」とはグルコースやマンノース等の単糖が複数重合した化合物を意味し、多糖類を構成する単糖の種類や結合方法、分子量や主鎖と側鎖の形態など限定されない。以下に限定されないが、例えばカラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天、トラガントガムなどを含む酸性多糖類;タマリンドシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、澱粉、プルランなどを含む中性多糖類;キトサンなどを含む塩基性多糖類を挙げることができる。
また「有機化合物」とは炭素が原子結合の中心となる化合物を意味し、「無機化合物」とは炭素が原子結合に含まれない化合物を意味する。「ポリマー」とは二つ以上の単量体が重合してできた化合物を意味する。「脂質」とは生物体内に存在して、水に溶けず有機溶媒に溶ける有機化合物を意味する。脂質には、以下に限定されないが、プロスタグランジンのような生理活性物質が含まれる。「核酸」とはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などを意味する。「ポリペプチド」とは、多数のアミノ酸が縮重反応によりペプチド結合が形成されてできた重合体を意味する。上記列挙した化合物も特に限定されず、本発明の固定化方法において基板に固定する対象化合物となる。
【0018】
1-3.(a)固定用タンパク質と化合物とを溶媒中で混合してタンパク質-化合物複合体を調製する工程
本発明の基板上に固定用タンパク質を介して化合物を固定化する工程は一実施の形態において、上記工程(a)固定用タンパク質と化合物とを溶媒中で混合してタンパク質-化合物複合体を調製する工程を含む。
工程(a)に用いることのできる溶媒としては、固定用タンパク質および化合物が溶解し、溶媒中でタンパク質-化合物複合体を形成可能なものであれば制限されない。好適には、化合物マイクロアレイ、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイなど基板上に固定した各種化合物の検出技術において、固定または検出の際に通常用いられる溶媒を挙げることができる。このような溶媒は公知であり、市販のものを用いても良い。以下に限定されないが、例えば、蒸留水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸メチル、アセトン、またはそれらの混合物などを挙げることができる。
溶媒中における固定用タンパク質と化合物との混合時の条件は、タンパク質-化合物複合体が形成できる限りにおいて制限されない。混合時の条件は、用いる固定用タンパク質および化合物により異なり当業者であれば適宜設定することができる。また固定用タンパク質および化合物の濃度もタンパク質-化合物複合体が形成できる限りにおいて制限されず、使用する固定用タンパク質や対象とする化合物ごとに適宜設定することができる。以下に限定されないが、固定用タンパク質の濃度は0.1 mg/ml~10 mg/mlの範囲内とすることができ、好ましくは0.4 mg/ml~1.0 mg/mlの範囲内の濃度である。
溶媒にはさらに安定剤などの添加剤を含んでもよい。
【0019】
ここで、「タンパク質-化合物複合体」とは、溶媒中において基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質と化合物とが結びついて形成された複合体をいう。固定用タンパク質と化合物とは一対一で結合してもよく、一対複数、複数対一、複数対複数の比で結合していてもよい。
一実施の形態において、「タンパク質-化合物複合体」はタンパク質と化合物同士が特定の一つの原子間または特定の一つの構造間における特定の結合様式を介さずに結びついて形成された複合体をいう。言い換えれば、タンパク質-化合物複合体が複数存在するとき、固定用タンパク質と化合物とはそれぞれのタンパク質-化合物複合体において異なる原子間または構造間において結びついている。これにより、当該複合体を形成する化合物は、タンパク質-化合物複合体間において異なる配向で固定用タンパク質と結びつき、タンパク質-化合物複合体間において異なる配向でその表面を外部に提示する。
また一実施の形態において、「タンパク質-化合物複合体」は固定用タンパク質と化合物とが非共有結合により結合している複合体とすることができる。また好ましい一実施の形態において、「タンパク質-化合物複合体」は固定用タンパク質と化合物とが物理吸着により結びついている複合体をいう。
【0020】
1-4.(b)タンパク質-化合物複合体を基板上に固定化する工程
本発明の基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して化合物を固定化する工程は一実施の形態において、上記工程(a)の後、(b)タンパク質-化合物複合体を基板上に固定化する工程を含む。
本明細書において「タンパク質-化合物複合体を基板上に固定化する」とは、タンパク質-化合物複合体における固定用タンパク質の構造を介して基板に当該複合体を固定することをいう。固定は目的の用途に耐えうる強度で基板上に固定できれば良く、例えば、化合物に結合する抗体の検出を目的とする場合、固定化後の化合物に結合する抗体の検出を可能とする強度で基板に固定されていればよい。一実施の形態において、タンパク質-化合物複合体における固定用タンパク質の構造を介した基板への結合は非共有結合により結合してもよい。好ましい一実施の形態において、タンパク質-化合物複合体における固定用タンパク質の構造を介した基板への結合は物理吸着により結合している。
タンパク質-化合物複合体を固定化する方法は、タンパク質-化合物複合体を含む溶液を基板上に接触させることで行うことができる。タンパク質-化合物複合体を含む溶液は、上記工程(a)において調製した溶液をそのまま用いてもよいし、別の溶媒に移したものを用いてもよい。
タンパク質-化合物複合体を含む溶液を基板上に接触させる方法は、当該溶液を基板上に接触させてタンパク質-化合物複合体のタンパク質が基板上に固定できる限りにおいて限定されない。好ましくは公知の超微量分注装置(MicroDiagnostic)などを用いて基板上にスポットする形態である。
【0021】
上記(b)の固定化の工程により基板上に固定化されたタンパク質-化合物複合体における化合物はその構造を維持している。化合物が構造を維持しているとは、化合物の構造中に固定化のための修飾を有しないことをいう。またタンパク質-化合物複合体中の化合物は、その構造の全部または一部をタンパク質-化合物複合体形成前と同様に保持する。例えば、タンパク質-化合物複合体形成後の化合物を、適当な検出手段を用いて検出することにより、当該化合物を検出する際に必要な構造を維持していることを確認できる。タンパク質-化合物複合体における化合物がその構造を維持している一例を挙げると、以下に限定されないが、化合物に対する抗体が結合するエピトープの構造を保持していることなどが含まれる。
好ましい一実施の形態において、基板上に固定化されたタンパク質-化合物複合体における化合物はその活性を維持している。化合物が活性を維持しているとは、当該化合物を検出する際に必要な活性をタンパク質-化合物複合体形成前と同様に保持していることを含む。活性はタンパク質-化合物複合体形成前と同程度であることが好ましいが、当該化合物の検出に必要な程度で活性を保持していればよい。以下に限定されないが、一例として挙げると、化合物が酵素である場合の当該酵素の活性を維持していることなどが含まれ、この場合に当該酵素活性を利用して基板上に固定した化合物(酵素)を検出することができる。
【0022】
タンパク質-化合物複合体を含む溶液を基板上に接触させた後、必要に応じて基板上に固定化されなかった夾雑物などを取り除くため、基板を洗浄することが好ましい。よって、本発明の基板上に化合物を固定化する方法は一実施の形態において、工程(b)の後に、洗浄工程を含むことができる。これにより基板上に固定化した化合物の検出の感度や精度を向上させることができる。
基板の洗浄に用いる溶液は、タンパク質-化合物複合体と基板との結合を完全に解離させずに夾雑物を除ける限りにおいて制限されず、マイクロアレイチップの製造等に用いることのできる公知の洗浄液を用いることができる。具体的には以下に限定されないが、エタノール、超純水などを挙げることができる。
洗浄工程は、エタノールや超純水などの洗浄液中にタンパク質-化合物複合体を固定化した基板を浸し、以下に限定されないが室温にて30秒程度振とうさせて行うことが好ましい。洗浄工程は1回または複数回行うことが好ましく、例えば、エタノールによる洗浄を1回行った後、超純水による洗浄を2回行うことができる。
【0023】
1-5.(a’)固定用タンパク質を基板上に固定化する工程
本発明の基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して化合物を固定化する工程は一実施の形態において、(a’)固定用タンパク質を基板上に固定化する工程を含む。
固定用タンパク質を基板上に固定化する方法は、固定用タンパク質を含む溶液を基板上に接触させればよい。
固定用タンパク質を含む溶液を基板上に接触させる方法は、当該溶液を基板上に接触させて固定用タンパク質が基板上に固定できる限りにおいて限定されない。好ましくは公知の超微量分注装置(MicroDiagnostic)などを用いて基板上にスポットする形態である。溶媒は上記工程(a)で用いることのできるものを使用することができる。
【0024】
1-6.(b’)基板上に固定化した固定用タンパク質に化合物を接触させてタンパク質-化合物複合体を形成する工程
本発明の基板上に固定用タンパク質を介して化合物を固定化する工程は一実施の形態において、上記工程(a’)の後、(b’)基板上に固定化した固定用タンパク質に化合物を接触させてタンパク質-化合物複合体を形成する工程を含む。
基板上に固定化した固定用タンパク質に化合物を接触させる方法は、基板上の固定用タンパク質に化合物を含む溶液を接触させればよい。好ましくは公知の超微量分注装置(MicroDiagnostic)などを用いて基板上にスポットする形態である。化合物を含む溶液を基板上の固定用タンパク質に接触させる条件は、上記工程(a)の方法と同様の溶媒や混合条件と同様にして、適宜設定することができる。
また、本発明の基板上に化合物を固定化する方法は一実施の形態において、工程(a’)および/または(b’)の後に洗浄工程を含むことができる。洗浄工程は上記工程(b)後の洗浄工程と同様の条件にて行うことができる。
【0025】
1-7.回収工程
本発明の基板上に固定用タンパク質を介して化合物を固定化する工程は一実施の形態において、上記工程(b)または(b)’の後、化合物を基板から回収する工程を含む。基板から化合物を回収する手法は、基板上からタンパク質-化合物複合体が分離するようにしてタンパク質-化合物複合体として回収してもよいし、化合物自体をタンパク質-化合物複合体から分離するように回収してもよい。化合物を回収する手法は、用いる基板やタンパク質、回収したい化合物の種類により適宜公知の手段を採用することができる。
【0026】
2.基板上に固定化した化合物の検出
2-1.概要
本発明の別の態様は、基板上に固定化した化合物を検出する方法に関する。
本発明の基板上に固定化した化合物を検出する方法は、上記固定化方法により基板上に固定化したタンパク質-化合物複合体を検出する工程を含む。
2-2.検出工程
基板上に固定化したタンパク質-化合物複合体を検出する方法は、対象とする化合物により適宜好ましい公知の検出手段を用いた方法を採用することができる。このような検出手段は、化合物と結合または反応することにより当該化合物の存在を検出可能な手段であれば制限されない。以下に限定されないが、抗体、レクチン、プローブ、レセプター、抗原、ハプテン、核酸(DNA、RNA、または、PNA)、糖鎖、リガンド、アプタマー、ポリヌクレオチド、脂質、酵素、酵素基質などを挙げることができる。またこれらの検出手段を用いて基板上に固定化された化合物を検出する方法も公知の手法を採用することができる。以下の手法に限定されないが、好ましい実施の形態における検出手法は、標識抗体を用いた検出方法を挙げることができる。
【0027】
3.基板上に固定化した化合物に対する親和性を有する化合物のスクリーニング
3-1.概要
本発明の別の態様は、基板上に固定化した対象化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法に関する。
本発明の基板上に固定化した対象化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法は、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、前記対象化合物を基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程と
(ii)基板上に固定化した対象化合物に対して候補化合物を接触させて、前記対象化合物に対して親和性を有する化合物を検出する工程と
を含む。
本発明のスクリーニング方法における工程(i)は、上記固定化方法における工程(a)および(b)または工程(a’)および(b’)と同様に実施することができる。
【0028】
3-2.(ii)基板上に固定化したタンパク質-化合物複合体に対して化合物を接触させて、前記タンパク質-化合物複合体に対して親和性を有する化合物を検出する工程
本発明の基板上に固定化された化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法は、工程(i)の後、工程(ii)において、基板上に固定化したタンパク質-化合物複合体を構成する化合物に親和性を有する化合物をスクリーニングするため、候補化合物を接触させる。
基板上に固定化された化合物に対して親和性を有する化合物をスクリーニングするために候補化合物を接触させる方法は公知であり、タンパク質-化合物複合体を構成する化合物および候補化合物の組み合わせにより適宜接触させる際に用いる溶媒、温度、時間などの条件を設定することができる。
候補化合物を接触させた後、候補化合物のうち基板上に固定した化合物と親和性を有する化合物を検出する。検出方法は上記のタンパク質-化合物複合体の検出工程と同様に、公知の方法を用いることができる。
また親和性を有する化合物として検出された候補化合物は、適宜公知の方法により基板より回収することができる。
【0029】
3-3.抗化合物抗体のスクリーニング方法
本発明の基板上に固定化された対象化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法の具体的な一実施の形態は、化合物マイクロアレイを用いてサンプル中に存在する抗化合物抗体を網羅的に検出し、スクリーニングする方法である。
当該方法は、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、前記対象化合物を基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程と
(ii’)基板上に固定化した前記タンパク質-化合物複合体に対して抗体を接触させて、前記タンパク質-化合物複合体に対して親和性を有する抗化合物抗体を検出する工程とを含む。
本発明のスクリーニング方法における工程(i)は、上記固定化方法における工程(a)および(b)または工程(a’)および(b’)と同様に実施することができる。
【0030】
本実施の形態において、工程(ii’)にて基板上に固定化される複数のタンパク質-化合物複合体を構成する化合物は、互いに同一の化合物であることが好ましい。
また工程(ii’)において、互に異なる相補鎖決定領域(CDR)を有する複数の抗体を候補抗体としてタンパク質-化合物複合体と接触させることで、当該候補抗体から親和性を有する抗化合物抗体を検出することができる。基板上に固定化した前記タンパク質-化合物複合体に対して抗体を接触させる方法および対象化合物に親和性を有する抗体の検出方法は、特定の化合物に対して親和性を有する抗体をスクリーニングする公知の方法に準して行うことができる。
また親和性を有する抗化合物抗体として検出された候補抗体は、適宜公知の方法により基板より回収することができる。
【0031】
3-4.生体試料の検査方法
本発明の基板上に固定化された対象化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法の具体的な一実施の形態は、疾患関連マーカーに対する抗体が固定化された化合物マイクロアレイを用いて生体試料中に疾患関連マーカーの存在を網羅的に検出する方法である。
当該方法は、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、疾患関連マーカーに親和性を有する化合物を基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程と
(ii’’)前記基板上に固定化した疾患関連マーカーに親和性を有する化合物に対して生体試料由来の化合物を接触させて、前記生体試料中の疾患関連マーカーを検出する工程とを含む。
ここで好ましい一実施の形態において、対象化合物は疾患関連マーカーに対する抗体である。
【0032】
「疾患関連マーカー」とは、特定の疾患の罹患や罹患のリスク、予後の経過に関連して発現が上昇または抑制される遺伝子であり、特定の疾患の罹患や罹患のリスク、予後経過を判断できるものであれば特に制限されない。疾患関連マーカーは転写産物および翻訳産物を含み、これらを検出することにより特定の疾患に罹患している、または、罹患のリスクについて判断することができるものである。
「生体試料」とは生体より採取され、本態様の生体試料の検査方法に供されるものであって、例えば、組織、細胞、体液又は腹腔洗浄液が該当する。ここでいう「体液」とは、生体から採取された液体状の生体試料をいう。例えば、血液(血清、血漿及び間質液を含む)、髄液(脳脊髄液)、尿、糞便、唾液、リンパ液、消化液、腹水、胸水、神経根周囲液、各組織若しくは細胞の抽出液等が挙げられる。好ましくは血液である。
生体試料由来の化合物は、基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する前に、生体試料中の目的とする化合物に応じて精製や濃縮などの前処理をしたものを用いてもよい。生体試料の精製や濃縮は目的の化合物に応じて適宜公知の方法を採用することができる。生体試料由来の化合物は基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化できる限り、生体より採取した試料をそのまま用いることもできる。
本実施の形態において、工程(ii’’)は、基板上に固定化された疾患関連マーカーに親和性を有する化合物と生体試料中の化合物(疾患関連マーカー)との結合を検出する。これにより、生体試料中の疾患関連マーカーの存在を確認することができ、当該疾患の罹患やそのリスク、予後の経過を判定することが可能となる。
【0033】
3-5.生体試料の検査方法2
本発明の基板上に固定化された対象化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法の具体的な一実施の形態は、生体試料中に含まれる化合物のプロファイルを得る方法に関する。
当該方法は、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、対象化合物を基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程と
(ii’’’)基板上に固定化した対象化合物に対して生体試料由来の化合物を接触させて、前記抗原候補化合物に対して親和性を有する前記生体試料由来の化合物を検出する工程と、を含む。
本実施の形態は、生体試料中に含まれる化合物のプロファイルを得るために実施することができる。本実施の形態における対象化合物は、生体試料中に含まれる所望の化合物に親和性を有する化合物とすることができる。本実施の形態における生体試料に含まれる化合物としては、以下に限定されないが、抗体、レクチン、核酸などを挙げることができる。
本実施の形態によれば、対象化合物に対して親和性を有する化合物が生体試料中に含まれるか否かを検出することで、生体試料に含まれる化合物のプロファイルを得ることを可能とする。
【0034】
3-6.生体試料の検査方法3
本発明の基板上に固定化された対象化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法の具体的な一実施の形態は、生体試料中に含まれる抗体のプロファイルを得る方法に関する。
当該方法は、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、抗原候補化合物を基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程と
(ii’’’’)基板上に固定化した抗原候補化合物に対して生体試料由来の抗体を接触させて、前記抗原候補化合物に対して親和性を有する前記生体試料由来の抗体を検出する工程と
を含む。
【0035】
「抗原候補化合物」とは、生体(好ましくはヒト)内において抗原となり得る化合物を意味する。抗原候補化合物としては、好ましくは生体における抗体の存在を確認するための抗原であり、以下に限定されないが、生体内においてアレルギー(薬剤アレルギー、食品アレルギー、金属アレルギー、花粉症など)を生じるアレルゲン、ウイルスまたは細菌由来の化合物、を挙げることができる。
本実施の形態によれば、抗原候補化合物に対する抗体の存在を検出することにより、アレルギーの検査(例えば、薬剤アレルギー)などに用いることができる。例えば、生体から採取した血中に、特定の化合物に対する抗体が存在していることが事前に分かれば、薬剤のアナフィラキシーショックを避けることを可能とする。
【0036】
3-7.抗原受容体を発現する細胞または抗体産生細胞の選別および取得方法
本発明の基板上に固定化された対象化合物に対する親和性を有する化合物をスクリーニングする方法の具体的な一実施の形態は、対象化合物に対する抗原受容体を発現する細胞または抗体を産生する細胞を選別し取得する方法に関する。
当該方法は、
(i)基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質を介して、抗原候補化合物を基板上にタンパク質-化合物複合体として固定化する工程と
(ii’’’’’)基板上に固定化した抗原候補化合物に対して抗原受容体を発現する細胞または抗体産生細胞由来の抗体を接触させる工程と、
(iii)前記抗原候補化合物に対して親和性を有する抗原受容体を発現する細胞または前記抗体を産生する抗体産生細胞を回収する工程と
を含む。
対象化合物に対する抗原受容体を発現する細胞または抗体を産生する細胞を選別し取得する方法は一実施の形態において、工程(iii)の前に、抗原候補化合物に対して親和性を有する抗原受容体を発現する細胞または前記抗体を検出する工程を含んでも良い。
ここで抗原受容体を発現する細胞または抗体産生細胞には、例えば、B細胞、メモリーB細胞、T細胞、プラズマ細胞、リンパ芽球様細胞株などが含まれる。これらの細胞は、生体試料由来の細胞であってもよいし、ヒト末梢血単核細胞にEBウイルス等のウイルスを感染させた細胞でもよく、さらに、人工的に調製または遺伝子操作した細胞であってもよい。
基板上に固定化した抗原候補化合物に対して抗原受容体を発現する細胞または抗体産生細胞由来の抗体を接触させる手法は特に限定されず、抗原受容体を発現する細胞または抗体産生細胞を含む溶液(例えば、抗体産生細胞の培養に通常用いられる培養液)を抗原候補化合物が固定化されている基板上へ接触させてもよいし、抗体産生細胞由来の抗体を含む溶液(例えば抗体産生細胞を培養した培養上清)を抗原候補化合物が固定化されている基板上へ接触させてもよい。
抗原候補化合物に対して親和性を有する抗原受容体を発現する細胞を回収する手法は特に制限されず、例えば、基板上の抗原候補化合物近傍に集積している細胞を回収する方法や、洗浄操作などの物理的な選別手法により親和性の低い抗原候補化合物を発現する細胞を除いて候補化合物と親和性の高い抗原受容体を発現する細胞を回収する方法などが挙げられる。
本実施の形態によれば、抗原受容体または抗体産生細胞由来の抗体と基板上の抗原候補化合物との親和性を利用し、当該抗原候補化合物に特異的な抗体を産生しうる細胞を選別することができる。
【0037】
4.基板上に化合物を固定するための固定化剤
4-1.概要
本発明の別の態様は、基板へ化合物を固定化するための固定用タンパク質を含む固定化剤に関する。基板や基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質、固定される化合物は、上記に説明または列挙する基板、固定用タンパク質、および、化合物である。本発明に係る固定化剤の好ましい実施の形態は、基板上に化合物を固定するための固定用タンパク質からなる固定化剤である。
【0038】
5.キット
5-1.概要
本発明の別の態様は、基板上に化合物を固定化するためのキットに関する。当該キットは、基板と基板上に化合物を固定化するための固定用タンパク質とを含む。
本発明のキットは一実施の形態において、さらに固定用タンパク質と化合物との複合体を形成するための溶媒、化合物を検出するための手段、洗浄液、ウェル等の器具などを含むことができる。
本発明に係るキットによれば、多種多様な構造や官能基を有する化合物を、別途修飾を要せず、当該化合物の構造を維持したまま容易に基板に固定化することを可能とする。
【0039】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例
【0040】
(実施例1.ヒト血清アルブミンを用いた化合物のスライドガラスへの固定化)
14種類の化合物(Amoxicillin、Ampicillin、Apramycin、Bacitracin、Cefalexin、Ceftazidime、Cloxacillin、Gentamicin、Hygromycin B、Neomycin、Penicillin G、Streptomycin、SulfadimidineおよびTetracycline)をそれぞれヒト血清アルブミン(HSA)(シグマアルドリッチ)と混合してスライドガラス上にプリントした。また、比較対照サンプルとして、それら14種類の化合物にウシ血清アルブミン(BSA)があらかじめ共有結合したもの(ImgenBioSciences)をスライドガラス上にプリントした。化合物は、それぞれ0.5 mMの濃度になるように、タンパク質マイクロアレイ専用solution A(Fukushima Protein Factory)に溶解した。また、HSAは0.1マイクログラム/マイクロリットルの最終濃度になるように調製して化合物を含むsolution Aに混合した。なお、それぞれの化合物のスライドガラス上へのプリントは、超微量分注装置(MicroDiagnostic)を用いて約2~4nlの微小滴をスライドガラス上にスポットすることで行った。
【0041】
化合物をプリントしたスライドガラス(以下「化合物マイクロアレイ」とする。)をエタノールに浸し、室温で30秒間振とうさせた。その後、化合物マイクロアレイを超純水に浸し、26℃で30秒間を振とうさせた。なお、超純水での振とうは2回行った。溶液置換のため、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution A(Fukushima Protein Factory, Fukushima, Japan)に浸し、26℃で約5分間振とうさせた。
【0042】
上記のようにして処理した化合物マイクロアレイをブロッキングワン(Nacalai tesque, Kyoto, Japan)に浸し、26℃で1時間振とうさせた。その後、タンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で約5分間振とうさせた。
【0043】
タンパク質マイクロアレイ専用一次抗体希釈液(Fukushima Protein Factory)に4000分の1量のGoat Reference Antibody Mixture I(Fukushima Protein Factory)を添加した溶液を用いて、マウスモノクローナル抗BSA抗体(ab79827; abcam, Cambridge, UK)、または、マウスモノクローナル抗HSA抗体6種類(Proteintech Group; Proteintech、NBP1-79079; Novus Biologicals、NB100-73044; Novus Biologicals、NB100-7903; Novus Biologicals、ab10241; abcam、8260-0025; Bio-Rad)(表1)のいずれかを1マイクログラム/ミリリットルになるように希釈した。
【表1】
【0044】
一次抗体を希釈した各溶液2ミリリットルをタンパク質マイクロアレイ用カセットP-DE1(Fukushima Protein Factory)に添加した。そこに化合物マイクロアレイを浸して当該カセットの蓋をし、専用クリップで密閉して37℃で約17時間振とうさせながら反応させた。
【0045】
一次抗体と反応させた後、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で1分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。
【0046】
タンパク質マイクロアレイ専用二次抗体希釈液に、500分の1量のCy3標識anti-Goat IgG抗体(Jackson)およびAlexa Fluor647標識 anti-Mouse IgG抗体(Jackson)を添加し、当該溶液2ミリリットルをタンパク質マイクロアレイ用カセットP-DE1に添加した。そこに化合物マイクロアレイを浸して当該カセットの蓋をし、専用クリップで密閉して26℃で約1時間振とうさせながら反応させた。
【0047】
二次抗体と反応させた後、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で1分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。
【0048】
化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution B(Fukushima Protein Factory)に浸し、26℃で3分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。
【0049】
化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用最終洗浄液(Fukushima Protein Factory)に浸し、26℃で3分間振とうさせた。なお、この工程を4回繰り返した。
【0050】
化合物マイクロアレイを乾燥後、1,500 rpmで1分間遠心した後、GenePix 4000B(Molecular Devices, CA, USA)で蛍光強度をスキャンした。その結果を図1に示す。図1中のGreen IntensityはCy3標識anti-Goat IgG抗体由来の蛍光強度を示し、Red IntensityはAlexa Fluor647標識 anti-Mouse IgG抗体由来の蛍光強度を示し、Median of RationsはGreen Intensityに対するRed Intensityの相対値(Log値)を示す(以下、同様)。
【0051】
抗BSA抗体で反応させた場合には、あらかじめBSAを共有結合させた化合物をプリントしたスポットにのみ、化合物の種類によらず、シグナルが検出された(図1中Red Intensityのレーン1)。このことは、BSAはスライドガラスに固定化できることを示し、BSAと化合物が共有結合できれば、それをスライドガラスに固定化することができることを示している。
【0052】
また、6つの異なる抗HSA抗体で反応させた場合には、すべての抗HSA抗体の試験区においてHSAと化合物を混合させたスポットにのみシグナルが検出された(図1中Red Intensityのレーン2~7)。このことは、少なくともHSAはスライドガラスに固定化できることを示している。
【0053】
(実施例2.化合物の固定化の検証)
14種類の化合物(Amoxicillin、Ampicillin、Apramycin、Bacitracin、Cefalexin、Ceftazidime、Cloxacillin、Gentamicin、Hygromycin B、Neomycin、Penicillin G、Streptomycin、SulfadimidineおよびTetracycline)をそれぞれヒト血清アルブミン(HSA)(シグマアルドリッチ)と混合してスライドガラス上にプリントした。また、比較対照サンプルとして、それら14種類の化合物にウシ血清アルブミン(BSA)があらかじめ共有結合したもの(ImgenBioSciences)をスライドガラス上にプリントした。HSAと混合した化合物は、それぞれ0.5 mMの濃度になるようにし、タンパク質マイクロアレイ専用solution A(Fukushima Protein Factory)に溶解した。また、HSAは0.1マイクログラム/マイクロリットルの最終濃度になるように化合物を含むsolution Aに調製して混合した。なお、それぞれの化合物のスライドガラス上へのプリントは、超微量分注装置(MicroDiagnostic)を用いて約2~4nlの微小滴をスライドガラス上にスポットすることで行った。
【0054】
化合物をプリントした化合物マイクロアレイをエタノールに浸し、室温で30秒間振とうさせた。その後、化合物マイクロアレイを超純水に浸し、26℃で30秒間を振とうさせた。なお、超純水での振とうは2回行った。溶液置換のため、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution A(Fukushima Protein Factory, Fukushima, Japan)に浸し、26℃で約5分間振とうさせた。
【0055】
上記のようにして処理した化合物マイクロアレイをブロッキングワン(Nacalai tesque, Kyoto, Japan)に浸し、26℃で1時間振とうさせた。その後、タンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で約5分間振とうさせた。
【0056】
タンパク質マイクロアレイ専用一次抗体希釈液(Fukushima Protein Factory)に4000分の1量のGoat Reference Antibody Mixture I(Fukushima Protein Factory)を添加した溶液を用いて、マウスモノクローナル抗化合物抗体8種類(表2)のいずれかを1マイクログラム/ミリリットルになるように希釈した。
【表2】
【0057】
一次抗体を希釈した溶液2ミリリットルをタンパク質マイクロアレイ用カセットP-DE1(Fukushima Protein Factory)に添加した。そこに化合物マイクロアレイを浸して当該カセットの蓋をし、専用クリップで密閉して37℃で約17時間振とうさせながら反応させた。
【0058】
一次抗体と反応させた後、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で1分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。
【0059】
タンパク質マイクロアレイ専用二次抗体希釈液に、500分の1量のCy3標識anti-Goat IgG(Jackson)およびAlexa Fluor647標識 anti-Mouse IgG抗体(Jackson)を添加し、当該溶液2ミリリットルをタンパク質マイクロアレイ用カセットP-DE1に添加した。そこに化合物マイクロアレイを浸して当該カセットの蓋をし、専用クリップで密閉して26℃で約1時間振とうさせながら反応させた。
【0060】
二次抗体と反応させた後、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で1分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。
【0061】
化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution B(Fukushima Protein Factory)に浸し、26℃で3分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。
【0062】
化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用最終洗浄液(Fukushima Protein Factory)に浸し、26℃で3分間振とうさせた。なお、この工程を4回繰り返した。
【0063】
化合物マイクロアレイを乾燥後、1,500 rpmで1分間遠心した後、GenePix 4000B(Molecular Devices, CA, USA)で蛍光強度をスキャンした。蛍光強度の測定結果を図2に示し、基板上にスポットした各微小滴における蛍光の有無を光学顕微鏡下で観察した画像を図3に示す。
【0064】
抗Amoxicillin抗体で強いシグナル(Red Intensityで2000以上の値。以下同じ。)を検出したのは、BSAをあらかじめ共有結合させたAmoxicillinおよびAmpicillin、ならびにHSAと混合したAmoxicillinおよびAmpicillinをプリントしたスポットであった(図2中Red Intensity)。
抗Ampicillin抗体で強いシグナルを検出したのは、HSAと混合したAmpicillinのみであった(図2中Red Intensity)。
抗Penicillin抗体[Pen-9]で強いシグナルを検出したのは、BSAをあらかじめ共有結合させたAmoxicillinならびにHSAと混合したAmoxicillin、AmpicillinおよびPenicillin Gであった(図2中Red Intensity)。
抗Gentamycin抗体で強いシグナルを検出したのは、BSAをあらかじめ共有結合させたGentamycinおよびHSAと混合したGentamycinであった(図2中Red Intensity)。
なお、抗Penicillin[P2B9]抗体では強いシグナルは検出できなかったが、HSAと混合したPenicillinで弱いシグナルが検出された(図2中Red Intensity)。
また、抗Streptomycin抗体、抗Dihydrostreptmycin[1.BB.891]およびStreptomycin/Dihydrostreptmycin[CH-2013]でも強いシグナルは検出できなかったが、HSAと混合したStreptomycinで弱いシグナルが検出された(図2中Red Intensity)。これらの抗体が弱いシグナルしか検出できなかったのは、これらの抗体の特徴である(すなわち、結合力がやや弱い)と考えることができる。
これらの結果は、HSAと混合した化合物はスライドガラスに固定化できていることを示している。
さらに、Gentamycinを除いた7種類の化合物においてBSAをあらかじめ共有結合させた化合物よりもHSAと混合して固定化した化合物の方が強いシグナルが検出された(図2、3)。この結果は、HSAと混合して固定化する本発明が既存の技術よりも優れた効果があることを示している。またHSAは化合物と複合体を形成する際に、HSAと化合物同士が様々な配向で互いに複合体を形成しておりこれにより本試験に用いた抗体のエピトープが露出することにより高い感度の結果を得られたと考えられる。一方で、BSAとあらかじめ共有結合により結合している化合物は、場合により抗体に対するエピトープを露出することができなかったと推察される。
【0065】
(実施例3.化合物の濃度依存)
HSAの濃度(または量)に依存して、HSAと混合してスライドガラスに固定化した化合物の検出感度が上がるかを検証した。
【0066】
Amoxicillin、Amoxicillin Sodium、Penicillin G SodiumおよびGentamycin Sulfateと混合するHSAの濃度を0.5 mM~0.0005 mMで調製し、上記と同様にして化合物マイクロアレイを作製した。その後、上記と同様の方法で、抗Amoxicillin抗体、抗Penicillin抗体または抗Gentamycin抗体を用いて各スポットのシグナルを検出した。その結果、Amoxicillin、Penicillin G SodiumおよびGentamycin SulfateをそれぞれHSAと混合してスライドガラスに固定化した場合、HSAの濃度依存的にシグナル強度が上昇していた。また、Amoxicillin SodiumとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合も、最も強いシグナルは0.05 mMのHSAと混合した場合であったが、濃度依存の傾向にあった(図4)。
【0067】
(実施例4.固定用タンパク質との混合による化合物の固定化)
HSA、BSA以外の他の血清中に含まれているタンパク質と化合物を混合した場合に、化合物の固定化の可能性を検証した。
【0068】
血中タンパク質またはその類似体としてApo-Transferrin、Holo-Transferrin、alpha 2-Macroglobulin、Lysozyme, ThermoPhage、Lysozyme, Egg Allergen、Chicken、Ovalbumin, Egg White, PurifiedおよびOvalbuminを用いた。それぞれの血中タンパク質を各化合物(Amoxicillin、Amoxicillin Sodium、Penicillin G sodium、Benzyl Penicillin Potassium、またはGentamycin Sulfate)とsolution A中にて混合し、タンパク質-化合物複合体を形成させた。血中タンパク質は0.1マイクログラム/マイクロリットルの最終濃度となるように溶解し、化合物はそれぞれ0.5 mMの最終濃度になるように調製した。これらのタンパク質-化合物複合体を含む溶液を用いて上記と同様にして化合物マイクロアレイを作製した。その後、上記と同様の方法で、抗Amoxicillin抗体、抗Penicillin抗体または抗Gentamycin抗体を用いて各スポットのシグナルを検出した。またネガティブコントロールとして、抗体を反応させずにサンプルの蛍光シグナルを測定した。
【0069】
AmoxicillinまたはAmoxicillin Sodiumを各固定用タンパク質またはHSAと混合してスライドガラスに固定化したものは、抗Amoxicillin抗体と反応させた場合のみ強いシグナルが検出された(図5~8)。
【0070】
Penicillin G SodiumまたはBenzyl penicillin Potassiumを各固定用タンパク質またはHSAと混合してスライドガラスに固定化したものは、抗Penicillin抗体と反応させた場合のみ強いシグナルが検出された(図9~12)。
【0071】
Gentamycin Sulfateを各固定用タンパク質またはHSAと混合してスライドガラスに固定化したものは、抗Gentamycin Sulfate抗体と反応させた場合のみ強いシグナルが検出された(図13、14)。
【0072】
4-1.固定用タンパク質との混合によるAmoxicillinの検出感度に対する効果
Amoxicillinとalpha 2-Macroglobulinを混合してスライドガラスに固定化した場合に、AmoxicillinとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりも約12.5倍のシグナル強度を示し、AmoxicillinとOvalbuminを混合して固定化した場合に、AmoxicillinとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりも約8.2倍のシグナル強度を検出した。また、AmoxicillinとLysozyme, ThermoPhageまたはLysozyme, Egg Allergenを混合してスライドガラスに固定化した場合に、AmoxicillinとHSAを混合して固定化した場合よりもそれぞれ約2.8倍、約2.4倍のシグナル強度を検出した。
【0073】
4-2.固定用タンパク質との混合によるAmoxicillin Sodiumの検出感度に対する効果
Amoxicillin Sodiumとalpha 2-Macroglobulinを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Amoxicillin SodiumとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりも約9.9倍のシグナル強度を検出し、Amoxicillin SodiumとOvalbumin, Egg Whiteを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Amoxicillin SodiumとHSAを混合して固定化した場合よりも、約4.2倍のシグナル強度を検出した。また、Amoxicillin SodiumとLysozyme, ThermoPhageまたはLysozyme, Egg Allergenを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Amoxicillin SodiumとHSAを混合して固定化した場合よりもそれぞれ約2.8倍、約2.3倍のシグナル強度を検出した。
【0074】
4-3.固定用タンパク質との混合によるPenicillin G Sodiumの検出感度に対する効果
Penicillin G SodiumとOvalbuminまたはOvalbumin, Egg Whiteを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Penicillin G SodiumとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりもそれぞれ約2.3倍、約1.6倍のシグナル強度を検出し、Penicillin G SodiumとHolo-Transferrinを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Penicillin G SodiumとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりも約1.2倍のシグナル強度を検出した。
【0075】
4-4.固定用タンパク質との混合によるBenzyl penicillin Potassiumの検出感度に対する効果
Benzyl penicillin PotassiumとOvalbumin, Egg WhiteまたはOvalbuminを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Benzyl penicillin PotassiumとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりもそれぞれ約2.1倍、約1.8倍のシグナル強度を検出し、Benzyl penicillin PotassiumとApo-TransferinまたはHolo-Transferrinを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Benzyl penicillin PotassiumとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりも、ともに約1.3倍のシグナル強度を検出した。
【0076】
4-5.固定用タンパク質との混合によるGentamycin Sulfateの検出感度に対する効果
Gentamycin SulfateとOvalbumin, Egg WhiteまたはOvalbuminを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Benzyl penicillin PotassiumとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりもそれぞれ約5.6倍、約3.0倍のシグナル強度を検出し、Gentamycin SulfateとApo-Transferinを混合してスライドガラスに固定化した場合、Gentamycin SulfateとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりも、約2.4倍のシグナル強度を検出した。また、Gentamycin Sulfateとalpha 2-Macroglobulinを混合してスライドガラスに固定化した場合、Gentamycin SulfateとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりも、約1.7倍のシグナル強度を検出した。さらに、Gentamycin SulfateとLysozyme, ThermoPhageまたはLysozyme, Egg Allergenを混合してスライドガラスに固定化した場合に、Gentamycin SulfateとHSAを混合してスライドガラスに固定化した場合よりもともに約1.4倍のシグナル強度を検出した。
【0077】
(実施例5.生理活性脂質の固定化)
生理活性脂質であるプロスタグランジンの固定化を検証した。
本実施例ではプロスタグランジンとして、プロスタグランジンA1、A2、A3、B1、B2、B3、D1、D2、D3、E1、E2、E3、F1a、F2a、F3a、G2、H1、H2、I2、I3、J2、K1およびK2を用いた。各プロスタグランジンは、下記表に示す溶媒および最終濃度でHSAと混合しプロスタグランジンとHSAとの複合体を形成させた。なおHSAは0.1ミリグラム/ミリリットルの最終濃度となるように添加した。
【表3】
調製した各プロスタグランジンおよびHSAを含む溶液は、超微量分注装置(MicroDiagnostic)を用いて約2~4nlの微小滴としてスライドガラス上にスポットしプリントした。
プロスタグランジンをプリントした化合物マイクロアレイはエタノールに浸し、室温で30秒間振とうさせた。その後、化合物マイクロアレイを超純水に浸し、26℃で30秒間を振とうさせた。超純水での振とうは2回行った。溶液置換のため、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution A(Fukushima Protein Factory, Fukushima, Japan)に浸し、26℃で約5分間振とうさせた。
上記のようにして処理した化合物マイクロアレイをブロッキングワン(Nacalai tesque, Kyoto, Japan)に浸し、26℃で1時間振とうさせた。その後、タンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で約5分間振とうさせた。
【0078】
タンパク質マイクロアレイ専用一次抗体希釈液(Fukushima Protein Factory)に4000分の1量のGoat Reference Antibody Mixture I(Fukushima Protein Factory)を添加した溶液を用いて、抗プロスタグランジンE2抗体(Ab00484-23.0、Absolute Antibody社)を1マイクログラム/ミリリットルになるように希釈した。
一次抗体を希釈した溶液2ミリリットルをタンパク質マイクロアレイ用カセットP-DE1(Fukushima Protein Factory)に添加した。そこに化合物マイクロアレイを浸して当該カセットの蓋をし、専用クリップで密閉して37℃で約17時間振とうさせながら反応させた。一次抗体と反応させた後、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で1分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。またコントロールとして、タンパク質マイクロアレイ専用一次抗体希釈液(Fukushima Protein Factory)に4000分の1量のGoat Reference Antibody Mixture I(Fukushima Protein Factory)のみを添加した溶液を調製し、コントロール溶液とした。コントロール溶液を用いて、抗プロスタグランジンE2抗体を含む一次抗体希釈溶液を用いた上記工程と同様の工程を行った。
【0079】
タンパク質マイクロアレイ専用二次抗体希釈液に、500分の1量のCy3標識anti-Goat IgG(Jackson, 製品番号:805-165-180)およびAlexa Fluor647標識 anti-Rabbit IgG抗体(Jackson, 製品番号:711-605-152)を添加し、当該溶液2ミリリットルをタンパク質マイクロアレイ用カセットP-DE1に添加した。そこに化合物マイクロアレイを浸して当該カセットの蓋をし、専用クリップで密閉して26℃で約1時間振とうさせながら反応させた。
【0080】
二次抗体と反応させた後、化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution Aに浸し、26℃で1分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用solution B(Fukushima Protein Factory)に浸し、26℃で3分間振とうさせた。なお、この工程を3回繰り返した。化合物マイクロアレイをタンパク質マイクロアレイ専用最終洗浄液(Fukushima Protein Factory)に浸し、26℃で3分間振とうさせた。なお、この工程を4回繰り返した。化合物マイクロアレイを乾燥後、1,500 rpmで1分間遠心した後、GenePix 4000B(Molecular Devices, CA, USA)で蛍光強度をスキャンした。蛍光強度の測定結果を図15に示す。
【0081】
その結果、抗プロスタグランジンE2抗体はプロスタグランジンE2、E3およびI2に強く反応した。プロスタグランジンはそれぞれ構造が似ている部分が存在するため、クロスリアクションが想定されるが、この結果は、プロスタグランジンのような脂質も本発明によりスライドガラスに固定することが可能であることを示している。

図1
図2
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図5
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