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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】スプレー缶
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/04 20060101AFI20241210BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20241210BHJP
   B65D 83/30 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B05B1/04
B05B11/00 101B
B65D83/30 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024172511
(22)【出願日】2024-10-01
【審査請求日】2024-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2023202465
(32)【優先日】2023-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2023(主催:一般社団法人 日本DIY・ホームセンター協会、開催日:令和5年8月24日~8月26日)に展示 (2)株式会社コーティングメディア、「ペイント&コーティングジャーナル令和5年9月6日号」(第4面)に掲載 (3)株式会社エアゾール&受託製造産業新聞、「エアゾール&受託製造産業新聞令和5年9月25日号」(第3面)に掲載 (4)株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア、「ダイヤモンド・ホームセンター令和5年10月15日号」(第6,7面)に掲載
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101477
【氏名又は名称】アトミクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501424581
【氏名又は名称】アトムサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
(72)【発明者】
【氏名】久能 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 修太
(72)【発明者】
【氏名】石津 吉高
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-298779(JP,A)
【文献】特開2022-117865(JP,A)
【文献】特開2008-154714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0084868(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00
B05B 11/00
B65D 83/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、液状の内容物を収容する容器本体と、該容器本体の上部に突出して取り付けられ、下方に移動させると前記内容物が先端から吐出するパイプ状のバルブと、該バルブに取り付けられたノズルと、を備えるスプレー缶であって、
前記ノズルが、前記バルブへの取り付け部を含むノズル中央部と、該ノズル中央部の外周に接続し上下方向とは垂直の方向に延在する板状部と、を有し、かつ、前記バルブとともに回転可能であり、
前記ノズル中央部には、前記バルブの先端から吐出された前記内容物を上方に向けて噴射するスリット状の噴射口と、前記バルブの先端が嵌入する穴部と、前記噴射口と前記穴部の底とを連通する連通孔と、が形成されており、
前記板状部には、前記噴射口の長手方向の延長となる第1の位置、及び/または、前記噴射口の長手方向とは垂直方向で、前記噴射口の中心を通る線上となる第2の位置を中心に、前記噴射口から噴射される前記内容物の噴射幅に関する目印が付されている、スプレー缶。
【請求項2】
前記板状部が円盤状である、請求項1に記載のスプレー缶。
【請求項3】
前記板状部が十字状に平板が組まれており、当該十字状の平板の少なくとも何れかに前記目印が付されている、請求項1に記載のスプレー缶。
【請求項4】
前記十字状の平板の自身の幅が前記目印である、請求項3に記載のスプレー缶。
【請求項5】
前記容器本体の上部には、前記バルブと同心円の円形の陥没部を有し、該陥没部の底の中心部から前記バルブが突出しており、
前記ノズルには、前記板状部の下方から前記バルブと同心円の円筒部が突出しており、
前記円筒部が前記陥没部に上下動可能に嵌合している、請求項1~4の何れかに記載のスプレー缶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー缶に関し、特に路面標示用塗料用途に適したスプレー缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体を噴射する手段として、スプレー缶が用いられている。スプレー缶は、噴射する液体と圧縮された不活性ガスを容器本体に充填した状態で販売され、使用者は入手後すぐに、ノズルを押し込むだけで対象物に向けて液体を噴射できる手軽さがあり、噴射手段の一つとして定着している。なかでも塗料を吹き付け可能な塗料用スプレー缶は、収容された塗料が外気に触れず、噴射するまで塗料が硬化しにくいことから多く市販されている。
【0003】
スプレー缶により液体を噴射すると、液体はおよそ円形状に広がりながら面で対象物に吹きかけられる。そのため、例えば細い線を描きたい場合に塗料用スプレー缶により塗料を噴射しようとした場合には、塗料が付着して欲しくない領域をマスキングしておく必要がある。特に、駐車場等の路面に簡便にラインを引きたい場合に、塗料用スプレー缶で簡便に塗料を吹き付けることができたら便利である。
【0004】
マスキング無しにラインを描くことを目的とした塗料用スプレー缶とするためには、噴射された塗料があまり広がらないようにしたノズルを用いればよい。しかし、ノズルの広がりの程度を固定してしまうと一定の太さのラインを描くことしかできず、使用者は所望とするラインの太さが描けるノズルを備えた塗料用スプレー缶を複数用意して、都度使い分けなければならない。
【0005】
ライン状に液体を噴射することが求められるスプレー缶の用途として、塗料用スプレー缶を例に挙げて以上説明したが、例えば、目地に沿って噴射することが求められるカビ除去剤や、虫の通り道に沿って噴射することが求められる虫忌避剤のように、ライン状に液体を噴射することは、塗料用スプレー缶以外の用途のスプレー缶においても求められ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-59554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、1本で、太さが異なるライン状に内容物の液体を吹き付けることができるスプレー缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下の本発明[1]~[5]により達成される。
[1]
少なくとも、液状の内容物を収容する容器本体と、該容器本体の上部に突出して取り付けられ、下方に移動させると前記内容物が先端から吐出するパイプ状のバルブと、該バルブに取り付けられたノズルと、を備えるスプレー缶であって、
前記ノズルが、前記バルブへの取り付け部を含むノズル中央部と、該ノズル中央部の外周に接続し上下方向とは垂直の方向に延在する板状部と、を有し、かつ、前記バルブとともに回転可能であり、
前記ノズル中央部には、前記バルブの先端から吐出された前記内容物を上方に向けて噴射するスリット状の噴射口と、前記バルブの先端が嵌入する穴部と、前記噴射口と前記穴部の底とを連通する連通孔と、が形成されており、
前記板状部には、前記噴射口の長手方向の延長となる第1の位置、及び/または、前記噴射口の長手方向とは垂直方向で、前記噴射口の中心を通る線上となる第2の位置を中心に、前記噴射口から噴射される前記内容物の噴射幅に関する目印が付されている、スプレー缶。
[2]
前記板状部が円盤状である、[1]に記載のスプレー缶。
[3]
前記板状部が十字状に平板が組まれており、当該十字状の平板の少なくとも何れかに前記目印が付されている、[1]に記載のスプレー缶。
[4]
前記十字状の平板の自身の幅が前記目印である、[3]に記載のスプレー缶。
[5]
前記容器本体の上部には、前記バルブと同心円の円形の陥没部を有し、該陥没部の底の中心部から前記バルブが突出しており、
前記ノズルには、前記板状部の下方から前記バルブと同心円の円筒部が突出しており、
前記円筒部が前記陥没部に上下動可能に嵌合している、[1]~[4]の何れかに記載のスプレー缶。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスプレー缶によれば1本で、太さが異なるライン状に内容物の液体を吹き付けることができるスプレー缶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の例示的一態様である実施形態にかかるスプレー缶の斜視図である。
図2】本発明の例示的一態様である実施形態にかかるスプレー缶の一部断面図である。
図3】実施形態にかかるスプレー缶におけるノズルの平面図である。
図4】実施形態にかかるスプレー缶におけるノズルの斜め上方からの斜視図である。
図5】実施形態にかかるスプレー缶におけるノズルの断面図であり、図3におけるA-A断面に相当する。
図6】スプレー缶の移動方向とノズルの向きとの関係を説明するための説明図であり、細いラインを描いている状態を示すものである。
図7】スプレー缶の移動方向とノズルの向きとの関係を説明するための説明図であり、太いラインを描いている状態を示すものである。
図8】板状部の形状が十字状となっているノズルの一例を示す平面図である。
図9】板状部の形状が十字状となっているノズルの一例を示す、斜め上方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的一態様である一実施形態にかかるスプレー缶について図面を用いて説明する。本実施形態は、駐車場等のラインを塗装するための路面標示用塗料のスプレー缶の例である。
図1は、本実施形態にかかるスプレー缶の斜視図であり、図2はその一部断面図である。図2は、上部のノズル近傍のみを断面として描いている。
【0012】
なお、本発明乃至本実施形態における上下関係の表記は、スプレー缶を保管乃至流通するに際して一般的にノズルを上にして立てておくため、その状態における上下関係を意味する。したがって、ここでいう上下関係は、スプレー缶の使用時における上下関係とは無関係であり、特に、本実施形態にかかるスプレー缶は、上下反転して用いるのが通常状態である。
【0013】
図1及び図2に示されるように、本実施形態にかかるスプレー缶1は、液状の内容物を収容する容器本体2と、容器本体2の上部に突出して取り付けられ、下方に移動させると内容物が先端から吐出するパイプ状のバルブ3と、バルブ3に取り付けられたノズル4と、を備える。
【0014】
容器本体2は、金属製の缶であり、筒状の胴部21と、胴部21の底を閉塞する底部22と、胴部21の上部を閉塞するとともに中央にバルブ3が取り付けられる上部閉塞部23と、を有する。容器本体2には、塗料等の液状の内容物が収容されているとともに圧縮された不活性ガスが充填されている。
【0015】
上部閉塞部23は、リング状で上方に突出する肩部23aと、バルブ3と同心円の円形の陥没部23bと、を有する。陥没部23bは、上方に突出した肩部23aの上端から下方に陥没しており、円周状の内周面を有する。また、陥没部23bの底23b′の中心部からはバルブ3が突出している。
【0016】
図3は、ノズル4の平面図であり、図4はノズル4の斜め上方からの斜視図であり、図5図3におけるA-A断面図である。図3図5に示されるように、ノズル4は、バルブ3への取り付け部を含むノズル中央部41と、ノズル中央部41の外周に接続し上下方向とは垂直の方向に延在する板状部42と、を有する。ノズル4は、バルブ3とともに回転可能になっている。
【0017】
ノズル中央部41は、さらに上方に突出する突出部47と、外周面から外側に立ち上がる4本のリブ46と、を有する。4本のリブ46は、スプレーパターン幅(狭い方向)をより分かりやすくするための突起であり、長方形の噴射口44の長手方向の延長となる位置を中心に設けられている。後述する第1の目印リブ45Nと同様、本発明に云う「目印」の機能を有する。
【0018】
ノズル中央部41には、容器本体2に収容された内容物を上方に向けて噴射するスリット状の噴射口44と、バルブ3の先端が嵌入する穴部48と、噴射口44と穴部48の底48aとを連通する連通孔49と、が形成されている。噴射口44は、突出部47の先端に形成されている。
【0019】
本実施形態において、板状部42は円盤状になっている。また、図5に示されるように、ノズル4には、板状部42の下方からバルブ3と同心円の円筒部43が突出している。この円筒部43は、容器本体2の上部の陥没部23bに上下動可能に嵌合している。円筒部43は、陥没部23bの内周面に摺擦状態で、または、ごく狭い間隙を有して上下動する。
【0020】
図3に示されるように、板状部42には、噴射口44の長手方向(矢印x方向及びその逆方向)の延長となる第1の位置(線L上の位置)を中心に、背の低い一対の第1の目印リブ45Nが設けられている。また、板状部42には、噴射口44の長手方向とは垂直方向(矢印y方向及びその逆方向)で、噴射口44の中心を通る線L上となる第2の位置を中心に、背の低い一対の第2の目印リブ45Wが設けられている。これら第1の目印リブ45N及び第2の目印リブ45Wは、噴射口44から噴射される内容物の噴射幅に関する目印、即ち本発明に云う「目印」に相当する。
【0021】
本実施形態にかかるスプレー缶1は、上下反転して噴射口44を被塗物である路面に向けた状態で、ノズル4を図面上の下方(上下反転しているので実際には上方)に向けて押し込むことで、スリット状の噴射口44から板状にやや広がって内容物である塗料が噴射される。
【0022】
本実施形態にかかるスプレー缶1において、ノズル4を下方に向けて押し込む操作は、手作業で塗布する際には、容器本体2を親指と薬指及び小指で包み込むように握り、人差し指と中指をノズル4の上面に置き、人差し指と中指を下方に向けて曲げることで押し込んで噴射口44から内容物である塗料を噴射する。
【0023】
また、本実施形態にかかるスプレー缶1は、車輪の付いた不図示の線引き装置に上下反転させてセットし、ノズル4を下方に向けて押し込みながら当該線引き装置を走行させることによって、容易に直線状のラインを形成することができる。このとき、線引き装置におけるハンドル部に不図示のグリップレバーを備えておき、使用者が当該グリップレバーを握り込むことでノズル4が下方に向けて押し込まれるようにしておけばよい。
【0024】
前記不図示のグリップレバーは、不図示の押圧部材と連動しており、グリップレバーを握り込むと押圧部材が動いてノズル4を下方に向けて押し込むようになっている。押圧部材は、噴射口44を避け、かつ、噴射口44を中心に一対の線状に、あるいは、噴射口44を取り囲むように円状乃至円弧状に、ノズル4の上面に当接するようにしておく。押圧部材は、噴射口44を中心に3点以上の当接点を有していてもよい。噴射口44を中心に複数の当接点を有していたり、取り囲むように線状の当接点を有していたりすることで、線引き装置へのスプレー缶1のセットが容易でありながら、塗布作業時のノズル4の下方に向けての押し込みを安定して行うことができる。
【0025】
本実施形態にかかるスプレー缶1において、ノズル4は、既述の通りバルブ3とともに回転可能になっている。そのため、本実施形態にかかるスプレー缶1で路面にラインを描く際には、ノズル4を回転させて、スプレー缶1の移動方向とノズル4の向きとを適宜合わせてから塗布作業を行う。
【0026】
図6及び図7は、スプレー缶1の移動方向Rとノズル4の向きとの関係を説明するための説明図であり、図6は幅の細いラインLNを、図7は幅の太いラインLWを描いている状態を示している。図6及び図7に示されるように、ノズル4は、噴射口44を中心に不図示のバルブ3とともに両矢印T方向に回転可能になっている。
【0027】
なお、図6及び図7は、あくまでもスプレー缶1の移動方向Rとノズル4の向きとの関係を説明するための説明図であり、実際の塗布作業の際には、噴射口44は路面側(ラインLN,LWが形成される面の側、即ち、図面の紙面における奥側)を向いていて、視認することができない。
【0028】
細いラインLNを形成しようとする際には、図6に示されるように、一対のリブ間隔が狭い第1の目印リブ45Nがスプレー缶1の移動方向Rと一致するようにノズル4の向きを調整して、塗布作業を進めればよい。ノズル4の噴射口44はスリット状に形成されているので、噴射口44の長手方向(矢印x方向及びその逆方向)にはある程度広がりつつ、噴射口44の長手方向とは垂直方向(矢印y方向及びその逆方向)にはほとんど広がらずに、内容物である塗料が噴射される。
【0029】
したがって、図6に示されるように、一対のリブ間隔が狭い第1の目印リブ45Nがスプレー缶1の移動方向Rと一致するようにノズル4の向きを調整して塗料を噴射することで、噴射口44から噴射される塗料の噴射幅が狭くなり、幅の細いラインLNを形成することができる。一方、図7に示されるように、一対のリブ間隔が広い第2の目印リブ45Wがスプレー缶1の移動方向Rと一致するようにノズル4の向きを調整して塗料を噴射することで、噴射口44から噴射される塗料の噴射幅が広くなり、幅の太いラインLWを形成することができる。
【0030】
手作業で塗布する場合には、第1の目印リブ45Nあるいは第2の目印リブ45Wが移動方向Rと一致するようにスプレー缶1を移動させながら塗布すればよい。線引き装置で塗布する場合には、線引き装置にセットされたスプレー缶1のノズル4を回転させて、第1の目印リブ45Nあるいは第2の目印リブ45Wが線引き装置の走行方向と一致するように合わせればよい。
【0031】
このように、本実施形態にかかるスプレー缶1によれば、ノズル4の噴射口44がスリット状なので、噴射口44の向きとスプレー缶1の移動方向を選択するだけで、被塗物に対して2種類の太さで噴霧することができる。したがって、本実施形態にかかるスプレー缶1によれば、1本のスプレー缶1で広狭2種類のラインLW,LNを容易に形成することができる。
【0032】
また、本実施形態にかかるスプレー缶1によれば、回転するノズル4の板状部42に目印(第1の目印リブ45N及び第2の目印リブ45W)が付されているため、被塗物に対する2種類の太さの噴霧を容易に選択することができる。したがって、本実施形態にかかるスプレー缶1によれば、1本のスプレー缶1で広狭2種類のラインLW,LNを容易に選択して形成することができる。
【0033】
なお、目印(第1の目印リブ45N及び第2の目印リブ45W)の位置をスプレー缶1の移動方向と一致させずに、その途中に位置させることで、太い線と狭い線の間で無段階の太さの塗膜のラインを形成することもできる。線引き装置にスプレー缶1をセットして塗布する場合には、中途半端な太さの塗膜のラインが形成されないように、目印の位置とスプレー缶1の移動方向とが一致しない途中段階では塗料の噴射がロックされるよう機構を設けてもよい。あるいは、何れかの目印の位置とスプレー缶1の移動方向とが一致するところで、ノズル4の回転が保持される機構を設けてもよい。
【0034】
さらに、本実施形態にかかるスプレー缶1は、ノズル4における板状部42の下方から突出する円筒部43が、容器本体2の上部の陥没部23bに上下動可能に嵌合しているため、ノズル4の下方への押圧がスムーズであるとともに、ノズル4がバルブ3から外れにくい。
【0035】
以上説明した実施形態は、本発明の代表的な形態の例を示したに過ぎず、本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、目印として、背の低い第1の目印リブ45N及び第2の目印リブ45Wが設けられた例を示しているが、目印はこの構成に限られない。例えば、リブの代わりに一対の線を板状部の表面に描いても構わないし、リブや線自体を1本の太線状と細線状となるようにしても構わない。
【0036】
目印は、リブや線のように、太さを直接示す形状でなく、例えば「太」「細」のように文字で示しても構わない(図8及び図9に示す変形例のノズル104参照)。さらに、目印は、板状部42の上面に設けなければならないわけではなく、例えば、板状部42の端部を鈍角状あるいは鋭角状に突出させて、これを目印としても構わない。
【0037】
また、上記実施形態において、目印は、円盤状の板状部42の4方向に付されているが、これらのうち少なくとも1方向以上に付されていればよい。上記実施形態(特に図3参照)の符号を利用して説明すると、本発明においては、板状部42に、噴射口44の長手方向(矢印x方向及びその逆方向)の延長となる位置(線L上の位置)、及び、噴射口44の長手方向とは垂直方向(矢印y方向及びその逆方向)で、噴射口44の中心を通る線L上となる位置、の少なくとも何れかの位置を中心に目印が付されていればよい。勿論、噴射口44の長手方向(矢印x方向及びその逆方向)の延長となる位置(線L上の位置)、及び、噴射口44の長手方向とは垂直方向(矢印y方向及びその逆方向)で、噴射口44の中心を通る線L上となる位置、の両方に目印が付されていることが好ましい。
【0038】
また、上記実施形態において、板状部42は円盤状であるが、板状部42の形状はこれに限らず、例えば、長方形状や三角形状等の多角形状や、星形、十字状、その他各種定形状や不定形状であっても構わない。
【0039】
板状部の形状を十字状にする場合には、矩形の平板4枚を十字状に組めばよい。ここでいう「十字状に組む」とは、矩形の平板状の部位が四方に配置された状態にすることを意味し、これら部位が一体成型されていても別体を組み立てていてもよく、どちらも「十字状に組む」の概念に含まれる。
【0040】
板状部の形状が十字状となっているノズルの一例(変形例)を示す平面図を図8に、斜め上方からの斜視図を図9に示す。なお、図8及び図9に示す変形例のノズル104においては、上記実施形態のスプレー缶1に用いたノズル4と同様の構成の部材について、ノズル4における符号の頭に「1」を加えて百番台の符号とする。
【0041】
したがって、図8及び図9に示す変形例のノズル104において、各符号の部材は、同符号の百の位を除した40番台の符号の上記実施形態におけるノズル4の部材と、特に説明が無い限り同様の構成の部材を示す。また、ノズル104の断面形状は、凡そ上記実施形態におけるノズル4と同様であり、図5を参照されたい(ただし、ノズル104には突出部47に相当する部材はない。)。
【0042】
図8及び図9に示されるように、変形例のノズル104は、不図示のバルブ(図2におけるバルブ3を参照)への取り付け部を含むノズル中央部141と、ノズル中央部141の外周に接続し上下方向とは垂直の方向に延在する板状部142と、を有する。ノズル104は、不図示のバルブとともに回転可能になっている。なお、ノズル104は、ノズル中央部141、板状部142及び円筒部143を含む全体が一体成型により形成されている。
【0043】
本実施形態において、板状部142は、形状が十字状であり、4枚の矩形の平板142a,142b,142c,142dが十字状に組まれている。
【0044】
図8に示されるように、板状部142における平板142a,142bの上面には、噴射口144の長手方向(矢印x方向及びその逆方向)の延長となる第1の位置(線L上の位置)を中心に、「細」の文字状に突起した第1の目印凸部145Nが設けられている。
【0045】
また、板状部142における平板142c,142dの上面には、噴射口144の長手方向とは垂直方向(矢印y方向及びその逆方向)で、噴射口144の中心を通る線L上となる位置を中心に、「太」の文字状に突起した第2の目印凸部145Wが設けられている。
【0046】
これら第1の目印凸部145N及び第2の目印凸部145Wは、噴射口144から噴射される内容物の噴射幅に関する目印、即ち本発明に云う「目印」に相当する。「細」の文字状の第1の目印凸部145Nが細い噴射幅の目印であり、「太」の文字状の第2の目印凸部145Wが太い噴射幅の目印である。
【0047】
したがって、上記実施形態においてノズル4に代えて変形例のノズル104を用いた場合には、上記実施形態の場合と同様、「細」の文字状の第1の目印凸部145Nが設けられた平板142a,142bの延在方向と、スプレー缶の移動方向とを一致するようにノズル104の向きを調整して塗料を噴射することで、噴射口144から噴射される塗料の噴射幅が狭くなり、幅の狭いラインを形成することができる。
【0048】
また、「太」の文字状の第2の目印凸部145Wが設けられた平板142c,142dの延在方向と、スプレー缶の移動方向とを一致するようにノズル104の向きを調整して塗料を噴射することで、噴射口144から噴射される塗料の噴射幅が太くなり、幅の太いラインを形成することができる。
【0049】
板状部の形状が十字状である場合には、矩形の平板状の部位(平板142a,142b,142c,142d)が、図8及び図9に示す例のようにノズル中央部141の外周に直接接続していても構わないし、一旦リング状の部位に接続して、当該リング状の部位の内周がノズル中央部の外周に接続するようにしても構わない。
【0050】
板状部が十字状である場合には、当該十字状の平板の少なくとも何れかに本発明に云う目印が付されていればよい。勿論、十字状の平板のうち、延在する方向の成す角が直角となる2つの平板に目印が付されていることが好ましく、全ての平板に目印が付されていることがより好ましい。
【0051】
板状部が十字状である場合には、十字状の平板の自身の幅を広狭2種類に変えることで、これを本発明に云う目印としても構わない。
【0052】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のスプレー缶の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1:スプレー缶、
2:容器本体、
3:バルブ、
4,104:ノズル、
21:胴部、
22:底部、
23:上部閉塞部、
23a:肩部、
23b:陥没部、
23b′:底、
41,141:ノズル中央部、
42,142:板状部、
43,143:円筒部、
44,144:噴射口、
45N:第1の目印リブ(目印)、
45W:第2の目印リブ(目印)、
46,146:リブ、
47:突出部、
48:穴部、
48a:底、
49:連通孔、
142a,142b,142c,142d:平板、
145N:第1の目印凸部(目印)、
145W:第2の目印凸部(目印)

【要約】
【課題】1本で、太さが異なるライン状に液体を吹き付け可能なスプレー缶を提供する。
【解決手段】液状の内容物を収容する容器本体2と、容器本体2の上部に突出して取り付けられ、下方に移動させると前記内容物が先端から吐出するパイプ状のバルブと、該バルブに取り付けられたノズル4と、を備え、ノズル4が、ノズル中央部41と、ノズル中央部41の外周に接続し上下方向とは垂直の方向に延在する板状部42と、を有し、かつ、前記バルブとともに回転可能であり、ノズル中央部41には、前記内容物を上方に向けて噴射するスリット状の噴射口44と、前記バルブの先端が嵌入する穴部と、噴射口44と前記穴部の底とを連通する連通孔と、が形成され、板状部42には、噴射口44の長手方向の延長となる位置、及び/または、噴射口44の長手方向とは垂直方向で、噴射口44の中心を通る線上となる位置を中心に目印45N,45Wが付されたスプレー缶1。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9