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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】自動車のサブフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B62D21/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021057945
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154759
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】中倉 陽己
(72)【発明者】
【氏名】小宮 勝行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 一真
(72)【発明者】
【氏名】仁井 達也
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-169359(JP,A)
【文献】特開2004-058877(JP,A)
【文献】特開2002-173047(JP,A)
【文献】特開2006-347338(JP,A)
【文献】特開2013-129335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向左右両側でそれぞれ車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、この一対のサイドメンバを互いに連結するように車幅方向に延びる前側クロスメンバおよび後側クロスメンバとにより井桁状に構成された自動車のサブフレーム構造であって、
上記後側クロスメンバは、前後の板状部材を互いに結合した第1中空体で構成される後側クロスメンバ本体を有し、
この後側クロスメンバ本体は、その車幅方向の左右両側で、それぞれ、左右両端部に向けて前後長さを拡大した拡大部分を有し、これらの拡大部分が上記一対のサイドメンバにそれぞれ結合され、
これらの結合部近傍において、上記後側クロスメンバ本体の下部に、前後の板状部材を互いに結合した一対の第2中空体が垂下するように結合され、これらの第2中空体にロアアームの取付部が設けられており、
上記第2中空体は、上記後側クロスメンバ本体の下部との結合部から車幅方向外方に向けて上記サイドメンバの下方側から外側面側に回り込むと共に上記サイドメンバに結合され、さらに、上記サイドメンバの外側面の上方まで延長され、
上記第2中空体の上方まで延長された部分がリーディングアームの取付部を構成している、ことを特徴とする自動車のサブフレーム構造。
【請求項2】
上記第2中空体は、その前後長さが、上記後側クロスメンバ本体の上記拡大部分の前後長さより小さくなるよう形成されている、請求項1に記載の自動車のサブフレーム構造。
【請求項3】
上記第2中空体の上記サイドメンバの下方側から外側面側に回り込む部分は、前後の板状板材により中空体に形成され、その前後の板状部材の一方が上下に分割され、その分割された上側の板状部材が、上記サイドメンバの外側面の上方まで延長されて、上記リーディングアームの取付部におけるピボット支持部の一方を構成している、請求項1または請求項2に記載の自動車のサブフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサブフレーム構造に関し、特に、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ、および、この一対のサイドメンバを互いに連結するように車幅方向に延びる前後クロスメンバにより井桁状に構成された自動車のサブフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチリンク式サスペンション装置として、5本のIリンクを備え、その各リンクの車体側の端部が、車体に取り付けられるサブフレームに連結され、各リンクの車輪側の端部が、車輪を支持するホイールサポートに連結されたものが知られている。このようなマルチリンク式サスペンションのサブフレームとして、一対のサイドメンバと前後のクロスメンバとで井桁状にフレームを構成したものが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-347338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような井桁状サブフレームでは、一般に、後側クロスメンバの車幅方向左右両側の下部にロアアームの取付部が設けられる。また、後側クロスメンバは前後の板状部材を互いに重ね合わせて中空体とする構成が一般的である。
【0005】
しかしながら、このような井桁状サブフレームでは、その剛性を確保するため、後方クロスメンバの板状部材の肉厚を高めたり、後方クロスメンバの両端部を拡幅してサイドメンバに結合するため、重量が増加しやすいという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、井桁状のフレーム剛性を損なうことなく、後側クロスメンバを軽量化することができる自動車のサブフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、車幅方向左右両側でそれぞれ車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、この一対のサイドメンバを互いに連結するように車幅方向に延びる前側クロスメンバおよび後側クロスメンバとにより井桁状に構成された自動車のサブフレーム構造であって、後側クロスメンバは、前後の板状部材を互いに結合した第1中空体で構成される後側クロスメンバ本体を有し、この後側クロスメンバ本体は、その車幅方向の左右両側で、それぞれ、左右両端部に向けて前後長さを拡大した拡大部分を有し、これらの拡大部分が一対のサイドメンバにそれぞれ結合され、これらの結合部近傍において、後側クロスメンバ本体の下部に、前後の板状部材を互いに結合した一対の第2中空体が垂下するように結合され、これらの第2中空体にロアアームの取付部が設けられており、第2中空体は、後側クロスメンバ本体の下部との結合部から車幅方向外方に向けてサイドメンバの下方側から外側面側に回り込むと共にサイドメンバに結合され、さらに、サイドメンバの外側面の上方まで延長され、第2中空体の上方まで延長された部分がリーディングアームの取付部を構成している、ことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、通常一体で構成される後側クロスメンバを、第1中空体である後側クロスメンバ本体による井桁形成部と、第2中空体によるアーム取付部とに機能を分離することにより、井桁状のフレーム剛性を損なうことなく、後側クロスメンバを軽量化することができる。
また、本発明によれば、第2中空体は、後側クロスメンバ本体の下部との結合部から車幅方向外方に向けてサイドメンバの下方側から外側面側に回り込むと共にサイドメンバに結合され、さらに、サイドメンバの外側面の上方まで延長され、第2中空体の上方まで延長された部分がリーディングアームの取付部を構成している。
このように構成された本発明によれば、第2中空体とサイドメンバとの結合力を高めるとともに、上下のサスアーム(リーディングアームおよびロアアーム)の取付部を互いに連結するようにして剛性を高めることができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、第2中空体は、その前後長さが、後側クロスメンバ本体の拡大部分の前後長さより小さくなるよう形成されている。
このように構成された本発明によれば、より効果的に、井桁状のフレーム剛性を損なうことなく、後側クロスメンバを軽量化することができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、第2中空体のサイドメンバの下方側から外側面側に回り込む部分は、前後の板状板材により中空体に形成され、その前後の板状部材の一方が上下に分割され、その分割された上側の板状部材が、サイドメンバの外側面の上方まで延長されて、リーディングアームの取付部におけるピボット支持部の一方を構成している。
このように構成された本発明によれば、リーディングアームのピボット支持部の成形性と、回り込み部の剛性確保とを両立することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動車のサブフレーム構造によれば、井桁状のフレーム剛性を損なうことなく、後側クロスメンバを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による自動車のサブフレームを適用した自動車のリアサスペンションアッセンブリの斜視図である。
図2図1に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図である。
図3図1に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
図4】本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図である。
図5図4のリアサスペンションの左側面図である。
図6図4のリアサスペンションの正面図である。
図7】本実施形態による自動車のサブフレームにおける車両左側のリアクロスメンバの構造を示す、図3と同様に示す一部拡大後面図である。
図8図7に示すリアクロスメンバを車両斜め後方から見た斜視図である。
図9】本実施形態による車両左側のサブフレーム構造を示す左側面図である。
図10図9に示す車両左側のサブフレーム構造を車両斜め前方から見た斜視図である。
図11】リアクロスメンバのサイドクロスメンバへの結合構造を示す正面図である。
図12】本実施形態によるリアクロスメンバのロアアーム取付部およびコントロールアーム取付部を示す左側面部分断面図である。
図13】本実施形態によるコントロールアームの取付ブラケットを示す斜視図である。
図14】本実施形態によるコントロールアームの取付ブラケットを図13とは別の角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による自動車のサブフレーム構造を説明する。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、図1乃至図3により、本発明の実施形態による自動車のサブフレーム構造の全体構成を説明する。図1乃至図3は、本発明の実施形態による自動車の後輪サスペンション装置1(以下、単にリアサスペンションという)を自動車の左右両側の後輪にそれぞれ適用した実施形態を示し、図1は、本発明の実施形態による自動車のサブフレーム構造を適用した自動車のリアサスペンションアッセンブリの斜視図であり、図2は、図1に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図であり、図3は、図1に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
本実施形態の自動車(車両)は、図示しないが、車体前部のエンジンルームにエンジンを搭載し、車体後部にディファレンシャルを配設して車軸(図示せず)により後輪2を駆動するようにした後輪駆動車である。
図1乃至図3に示すように、後輪サスペンション装置1のリアサスペンションアッセンブリは、左右一対のリアサスペンションが連結されたサブフレーム3を備えている。
【0016】
まず、リアサスペンションの概略構成を説明する。
本実施形態のリアサスペンションは、独立した5本のIリンク4~8によって後輪2のホイールサポート10を車体に対しストローク可能に連結したマルチリンク式のものである。リアサスペンション装置1は、仮想的に上方のアームを構成する前側のアッパリンク(アッパアーム)4、および、後側のリーディングリンク(リーディングアーム)5と、仮想的に下方のアームを構成する前側のトレーリングリンク(トレーリングアーム)6、および、後側のロアリンク(ロアアーム)7と、仮想キングピン軸IK(図5参照)周りの後輪2の回動変位を規制するトーコントロールリンク(トーコントロールアーム)8とを備えている。アッパアーム4、リーディングアーム5、トレーリングアーム6およびロアアーム7は、それぞれ車体側の連結部(44、52、60、68)を中心に上下に揺動することによって、ホイールサポート10及び後輪2が所定の軌跡に沿って上下にストロークするようになっている。
【0017】
また、そのような後輪2のストロークを許容しながら、同時に所定の付勢力及び減衰力を付与するための、コイルバネ12およびダンパ14を備えた緩衝装置16が設けられている。この緩衝装置16は、コイルバネ12とダンパ14とがほぼ同軸に配置された上下方向に長い円筒形状を有し、その上端部が車体に取り付けられている。緩衝装置16の下端部は、ロアアーム7に枢着されている。
また、サスペンション装置1には、左右のロアアーム7を連結するように延びるスタビライザーバー18が回動可能に取り付けられている。
【0018】
次に、本実施形態によるサブフレーム3の概略構成を説明する。
サブフレーム3は、主に4つの鋼板製フレームを平面視で矩形枠状/井桁状に組み合わせて形成されており、それぞれ車幅方向に延びるフロントクロスメンバ(前側クロスメンバ)20およびリアクロスメンバ(後側クロスメンバ)22と、それらの左右両側の端部同士を連結するように車体の左右両側において車体前後方向に延びる一対のサイドクロスメンバ(サイドメンバ)24、26を備えている。
【0019】
まず、本実施形態のフロントクロスメンバ20は、上下の板状部材120、220を互いに接合した閉断面の中空体として構成され、車両上方から見て、直線状に車幅方向に延び、その車幅方向の左右両端部/開放端部20aにおいて、それぞれ左右のサイドクロスメンバ24、26の各前端側の箇所に結合されている。
フロントクロスメンバ20は、図1および図2に示すように、車両前後方向で見ると、その長手方向の中央部分が左右両端部よりも上方に位置するように全体に湾曲するアーチ形状に形成されている。
【0020】
また、フロントクロスメンバ20は、図2に示すように、車両上方から見ると、その長手方向の中央部分が直線状に延びると共に、その中央部分から左右両端部20aに向かうほど前後長さが拡大するように延びている。より詳細には、上方から見ると、フロントクロスメンバ20の前端縁が直線状に車幅方向に延び、かつ、その後端縁の中央部分が直線状に車幅方向に延びると共に後端縁の左右両側部分が中央部分よりも後方に位置するよう湾曲して車幅方向に延びている。
左右両側において前後長さが拡大した部分20bは、閉断面の開放端部20aを含み、図1および図2に示すように、各開放端部20aがサイドメンバ24、26の各前端側の箇所にそれぞれ結合(溶接接合)されている。
【0021】
また、フロントクロスメンバ20の左右両端側には、それぞれサイドクロスメンバ24、26との結合部20aに近接した位置、かつ、サイドクロスメンバ24、26の上方側および下方側に、それぞれ、アッパアーム4の取付座(ピボット軸支部)28およびトレーリングアーム6の取付座(ピボット軸支部)30が設けられている(図4乃至図6参照)。左右両側の取付座28には、それぞれ、アッパアーム4の車体側の端部が連結され、左右両側の取付座30には、それぞれ、トレーリングアーム6の車体側の端部が連結されている。
【0022】
次に、本実施形態のリアクロスメンバ22は、井桁状のサブフレーム3の一部を構成するリアクロスメンバ本体21と、主にロアアームを支持する役割を有する左右のリアクロスメンバ下方部(垂下部)23とを有し、車両上方から見て、車幅方向の左右両端部/開放端部22aにおいて、それぞれ左右のサイドクロスメンバ24、26の各前端側の箇所に結合されている。
リアクロスメンバ本体21は、前後の板状部材121、221を互いに接合した閉断面の中空体として構成され、車両上方から見て、その長手方向の中央部分がほぼ直線状に形成されると共に、その車幅方向の左右両側で、各両端部に向かうほど前後長さが拡大した拡大部分22bが形成されている。これらの拡大部分22bの開放端部22aが、サイドクロスメンバ24、26の各後端側の箇所にそれぞれ結合(溶接接合)されている。本実施形態では、このような構成により、リアクロスメンバ22自体およびサブフレーム3の剛性を確保するようにしている。
また、リアクロスメンバ本体21は、図3に示すように、車両後方から見ると、その長手方向の中央部分が左右両端部よりも下方に位置するように全体に湾曲するアーチ形状に形成されている。
【0023】
また、リアクロスメンバ下方部23は、前後の3つの板状部材123、124、223(図5参照)を互いに接合した閉断面の中空体として構成されている。リアクロスメンバ下方部23は、サイドクロスメンバ24、26の車幅方向内方かつ近傍の位置で、リアクロスメンバ本体21の下部に結合(溶接接合)され、かつ、サイドクロスメンバ24、26の車幅方向外方側まで延びて、サイドクロスメンバ24、26の下方面および外方面に結合(溶接接合)されている(図7図11参照)。
【0024】
リアクロスメンバ22の左右両端側には、サイドクロスメンバ24、26の上方側および下方側に、それぞれ、リーディングアーム5の取付座(ピボット軸支部)32およびロアアーム7の取付座(ピボット軸支部)34が設けられている(図4図5参照)。左右両側の取付座32には、それぞれ、リーディングアーム5の車体側の端部が連結され、左右両側の取付座34には、それぞれ、ロアアーム7の車体側の端部が連結されている。
本実施形態では、リアクロスメンバ下方部23の下端部が、ロアアーム7の取付座34として形成され、また、リアクロスメンバ下方部23の上端部は、リーディングアーム5の取付座32の一部として形成されている(図9図10参照)。
【0025】
また、リアクロスメンバ下方部23の後面23bには、上方から見て、各サイドクロスメンバ24、26の車幅方向内方の位置、かつ、後方から見て、各サイドクロスメンバ24、26の斜め下方の位置に、トーコントロールアーム8の取付座(ピボット軸支部)36が設けられている。左右両側の取付座36には、それぞれ、トーコントロールアーム8の車体側の端部が連結されている。
【0026】
次に、左右のサイドクロスメンバ24、26は、それぞれ、車両上方から見て、その長手方向の中央部分が前後端部に比べて車幅方向内方に位置するよう湾曲するとともに、側面視では、後端部から前端部にわたって車両前方に斜め下方に延びている(図5参照)。これらのサイドクロスメンバ24、26の前側部分には、上述した取付座28、30が設けられ、その後側部分には、上述した取付座32、34が設けられている。
【0027】
また、サイドクロスメンバ24、26には、サブフレーム3全体を車体に弾性支持させるための弾性マウント38、40が設けられている、これらの弾性マウント38、40は、各サイドクロスメンバ24、26の前端部および後端部の計4箇所に設けられている。各弾性マウント38、40は、上下方向に軸線を有する円筒形状を有し、各サイドクロスメンバ24、26に形成された凹部に取り付けられている。各サイドクロスメンバ24、26において、各弾性マウント38、40は、車両上方から見て、前端部の弾性マウント38と後端部の弾性マウント40とを結ぶ直線が、車体前後方向の中心線CL(図2にのみ示す)とほぼ平行になるように配置される。
【0028】
各弾性マウント38、40には、「すぐり」と言われる所定の空隙が形成され、各弾性マウント38、40は、その軸線に対して、前後方向と左右方向とで硬さ(所定のたわみ量(mm)を生じさせる荷重(N)の大きさで示される特性)が異なるよう形成されている。各弾性マウント38、40は、いずれも、車両前後方向の硬さに対して車幅方向の硬さが大きくなるような向きとなるよう、サイドクロスメンバ24、26に取り付けられている。
【0029】
次に、図4乃至図6により、車両左側のリアサスペンション装置1について、各アーム4~8の配置構成およびサブフレーム3のアーム支持構成を説明する。図4は、本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図であり、図5は、図4のリアサスペンションの左側面図であり、図6は、図4のリアサスペンションの正面図である。車両右側のリアサスペンション装置1は、車両左側のリアサスペンション1と同じ構成を有しているので、以下では、その説明を省略する。
【0030】
まず、図4乃至図6に示すように、アッパアーム4は、その車体側の端部が弾性ブッシュ(ゴム製のブッシュであり、以下、「ブッシュ」という)42を介してサイドクロスメンバ24(26)のピボット軸支部28に連結されている。アッパアーム4は、車両上方から見て、車体側の連結部44から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延びている。車輪側の連結部46では、アッパアーム4の車輪側の端部がブッシュ48を介してホイールサポート10に連結されている。
【0031】
アッパアーム4のピボット軸支部28は、サイドクロスメンバ24、26に基部が溶接された対向する2つの板状部材で構成され、これらの板状部材により、アッパアーム4の車体側のピボット部が軸支されている(図4乃至図6参照)。
【0032】
次に、リーディングアーム5は、その車体側の端部がブッシュ50を介して上述したピボット軸支部32に連結されている。リーディングアーム5は、車両上方から見て、車体側の連結部52から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪側の連結部54では、リーディングアーム5の車輪側の端部がブッシュ56を介してホイールサポート10に連結されている。
【0033】
リーディングアーム5のピボット軸支部32は、対向する2つの板状部材で構成され、本実施形態では、その一方が、上述したリアクロスメンバ下方部23の上端部(板状部材124)であり、他方が、サイドクロスメンバ24、26に基部が溶接された板状部材である(図4図5参照)。
【0034】
このように、2本の上方のアーム4、5は、車両上方から見て、車体外方側に向かって互いに接近するように配置されている。
本実施形態では、車体側の各ブッシュ42、50および車輪側の各ブッシュ48、56にピロボールジョイントを採用している。
【0035】
次に、トレーリングアーム6は、その車体側の端部がブッシュ58を介して上述したピボット軸支部30に連結されている。トレーリングアーム6は、車両上方から見て、車体側の連結部60から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延びている。車輪側の連結部62では、トレーリングアーム6の車輪側の端部がブッシュ64を介してホイールサポート10に連結されている。
【0036】
トレーリングアーム6のピボット軸支部30は、2つの対向するL字状の側面部材を互いに溶接した断面コの字状のアーム支持ブラケット30であり、対向する側面部により、トレーリングアーム6の車体側のピボット部が軸支されている(図5図6参照)。
【0037】
次に、ロアアーム7は、その車体側の端部がブッシュ66を介して上述したピボット軸支部34に連結されている。ロアアーム7は、車両上方から見て、車体側の連結部68から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪側の連結部70では、トレーリングアーム6の車輪側の端部がブッシュ72を介してホイールサポート10に連結されている。
【0038】
ロアアーム7のピボット軸支部34は、上述したリアクロスメンバ下方部23の下端部であり、その下端部の前後の板状部材123、223により、ロアアーム7の車体側のピボット部が軸支されている(図5参照)。
【0039】
このように、2本の下方のアーム6、7は、車両上方から見て、車幅方向外方に向かって互いに接近するように配置されており、主にこの配置によって、後輪2には、制動時などに路面G(図3参照)からの制動力が後輪2に作用すると、その車両後方への変位に伴い幾何学的にトーインが付与され(前後力コンプライアンスステア)、また、旋回時に後輪2に横力が加わると、主に下方のアーム6、7の各ブッシュ56、64が撓むことにより、後輪2がトーインの向きに変化するようになっている(横力コンプライアンスステア)。
本実施形態では、車体側の各ブッシュ58、66および車輪側の各ブッシュ64、72にピロボールジョイントを採用している。
【0040】
次に、トーコントロールアーム8は、その車体側の端部がブッシュ74を介して上述したピボット軸支部36に連結されている。トーコントロールアーム8は、車両上方から見て、車体側の連結部76から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪側の連結部78では、トレーリングアーム6の車輪側の端部がブッシュ80を介してホイールサポート10に連結されている。
本実施形態では、車体側のブッシュ74および車輪側のブッシュ80にピロボールジョイントを採用している。
【0041】
トーコントロールアーム8のピボット軸支部36は、プレス成形で一体的に形成された断面コの字状のアーム支持ブラケット37を有している。ピボット軸支部36は、このアーム支持ブラケット37の軸支部と、前後方向に対向する位置に形成された、リアクロスメンバ下方部23側の軸支部とで構成され、そのような2つの対向する軸支部により、コントロールアーム8の車体側のピボット部が軸支されている(図3図5参照)。
【0042】
ここで、リアサスペンションには、アッパアーム4の仮想延長線とリーディングアーム5の仮想延長線との交点と、トレーリングアーム6の仮想延長線とロアアーム7の仮想延長線との交点とを上下に結ぶ仮想キングピン軸IK(図5参照)が形成される。この仮想キングピン軸は、後輪2の操向方向(トー方向)への回動の瞬間回転中心である。
【0043】
次に、図4乃至図6により、ホイールサポート10の構成および各アームの取付構成を説明する。
まず、図4乃至図6に示すように、ホイールサポート10には、その中央部に、ハブ82が取り付けられると共に、車軸(図示せず)が貫通する開口部84が形成されている。
また、ホイールサポート10には、開口部84より車両前方側の部分に、車幅方向内方に突出する前方縦壁部86が形成され、この前方縦壁部86に、アッパアーム4、リーディングアーム5およびトレーリングアーム6が連結されている。図6に示すように、この前方縦壁部86の外縁には補強リブ86aが形成されている。
また、ホイールサポート10には、開口部84の下方部分に、車幅方向内方に突出する下方縦壁部88が形成され、この下方縦壁部88にロアアーム7が連結されている。
さらに、ホイールサポート10には、開口部84より車両後方側の部分(車軸より車両後方側の部分)に、車幅方向内方に突出する後方縦壁部90が形成され、この後方縦壁部90にトーコントロールアーム8が連結されている。
【0044】
次に、図7乃至図12により、リアクロスメンバ22のサイドクロスメンバ24、26への結合構造を説明する。図7は、本実施形態による自動車のサブフレームにおける車両左側のリアクロスメンバの構造を示す、図3と同様に示す一部拡大後面図であり、図8は、図7に示すリアクロスメンバを車両斜め後方から見た斜視図であり、図9は、本実施形態による車両左側のサブフレーム構造を示す左側面図であり、図10は、図9に示す車両左側のサブフレーム構造を車両斜め前方から見た斜視図であり、図11は、リアクロスメンバのサイドクロスメンバへの結合構造を示す正面図であり、図12は、本実施形態によるリアクロスメンバのロアアーム取付部およびコントロールアーム取付部を示す左側面部分断面図である。
まず、図7および図11に示すように、リアクロスメンバ本体21の左右両側の下部に、リアクロスメンバ下方部23が設けられている。
リアクロスメンバ下方部23は、主に、図10および図11に示すように、前方側かつ下方側の第1の板状部材(第1前側部材)123と、前方側かつ上方側の第2の板状部材(第2前側部材)124と、図7乃至図9に示すように、後方側の板状部材(後側部材)223とで構成されている。
【0045】
まず、図7乃至図9により、リアクロスメンバ下方部23の後側部材223の構成を説明する。
後側部材223には、リアクロスメンバ本体21の後面21aの下縁部に結合される上縁部分23dと、その上縁部分23dに対して、リアクロスメンバ本体21の後面21aより車両前方側に位置する段差部分23e(特に図9参照)とが形成されている。後側部材223の上縁部分23dは、図中符号Wで示す溶接ラインに沿って、リアクロスメンバ本体21の後面21aに溶接されている。また、後側部材223の下端部、すなわち、段差部分23eの下方には、図7乃至図9に示すように、ロアアーム7のピボット軸支部34が設けられている。
【0046】
また、後側部材223の後面(リアクロスメンバ下方部23の後面23b)には、図7乃至図9に示すように、上述したトーコントロールアーム8のピボット軸支部36が設けられている。このピボット軸支部36は、断面コの字状のアーム支持ブラケット37を含み、このアーム支持ブラケット37は、上面部37a、下面部37bおよび後面部37cを有し、その基部37dが、後側部材223の後面23bに結合(溶接接合)されている。本実施形態では、上面部37aが、車幅方向外方に向かうほど上方に位置するよう形成され、下面部37bが、ほぼ水平方向に延びるよう形成され、これにより、ブラケット37は、車幅方向外方に向けて上下方向長さが拡大するよう、後面視で三角形状に形成されている。
【0047】
図7および図8に示すように、ブラケット37は、上面部37aの基部37d、および、下面部37bの基部37dに沿った溶接ラインWで、後側部材223の後面23bに溶接されている。また、これらの溶接ラインWにより、ブラケット37は、リアクロスメンバ下方部23の上縁部分23dと段差部分23eとにまたがるように、後側部材223に溶接されている。
【0048】
次に、アーム支持ブラケット37の後面部37cの車幅方向外方側の端部には、ピボット部の一方の軸支部(ブラケット側軸支部)37eが形成されている。他方、特に図9に示すように、この軸支部37eの前方側の対向する位置において、後側部材223の上述した段差部分23eには、ピボット部の他方の軸支部(クロスメンバ側軸支部)23c(図9図12参照)が形成され、このような2つの対向する軸支部37e、23cにより、コントロールアーム8の車体側の軸支ボルト39を含むピボット部が軸支されている。
また、特に図12に示すように、本実施形態では、トーコントロールアーム8の軸支ボルト39をカムボルトとして、トーコントロールアーム8に後輪2のトー角の調整機能を持たせている。そのため、アーム支持ブラケット37の軸支部37eには、そのようなカムボルト39を挿通する孔部が形成されると共に、偏心の度合い(トー角の調節度合い)を示す目盛りが付された偏心指標板41(図8参照)が取り付けられている。
【0049】
次に、アーム支持ブラケット37の上面部37aおよび下面部37bには、軸支部37eの上方および下方においてそれぞれ車幅方向外方に開口する開口部37fが形成され、また、ブラケット37の軸支部37eの近傍には、リブ37gが形成されている。
【0050】
次に、図9乃至図11により、リアクロスメンバ下方部23の前側部材123、124の構成を説明する。
まず、図9乃至図11に示すように、リアクロスメンバ下方部23は、前方側かつ下方側の第1前側部材123と、前方側かつ上方側の第2前側部材124とを有している。
第1前側部材123は、リアクロスメンバ本体21の下部との結合部23aから車幅方向外方に向けて、サイドクロスメンバ24(26)の下方側から外側面側に回り込むように形成されている。
【0051】
第1前側部材123の上縁部には、作業者がトー角調節用のカムボルト39にアクセス可能となるよう、開口部23fが形成されている。すなわち、本実施形態では、図11に示すように、車両前方から見て、開口部23f内にカムボルト39が設けられるようにしている。
【0052】
次に、第1前側部材123は、開口部23fより車幅方向外方の上縁部が、サイドクロスメンバ24(26)の下面から側面にかけて溶接されている(溶接ラインW参照)。さらに、第1前側部材123は、その車幅方向内方の上縁部が、リアクロスメンバ本体21の下部に溶接され(溶接ラインW参照)、その車幅方向外方の端縁部が、上述した後側部材223の車幅方向外方の端縁部に溶接されている(溶接ラインW参照)。
【0053】
次に、上方に設けられる第2前側部材124は、第1前側部材123をサイドクロスメンバ24(26)の外側面の上方まで延長する延長部として構成されると共に、上述したリーディングアーム5の取付座32において、ピボット軸を軸支する対向する板状部材の一方を構成している。
【0054】
第2前側部材124は、その車幅方向外方の端縁部が、上述した後側部材223の車幅方向外方の端縁部に溶接されている(溶接ラインW参照)。さらに、第2前側部材124は、上述した取付座32のアーム支持剛性を確保するように、サイドクロスメンバ24(26)の側面および上面に溶接されている(溶接ラインW参照)。さらに、第2前側部材124の下縁部が、第1前側部材123の車幅方向外方の端縁部に溶接されている(溶接ラインW参照)。
【0055】
次に、上述したように構成された前側部材123、124および後側部材223で構成されるリアクロスメンバ下方部23は、特に図8および図10に示すように、その前後長さが、リアクロスメンバ本体21の前後長さの拡大部分(左右両端部におけるサイドクロスメンバ24(26)への結合部分)22bの前後長さより小さくなるよう形成されている。
【0056】
次に、図13および図14に示すように、アーム支持ブラケット37は、板状の鋼板部材をプレス成形したものであり、上述した上面部37a、下面部37b、後面部37c、基部37dおよび軸支部37eを有し、また、ブラケット37には、開口部37fおよびリブ37gが形成されている。
【0057】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態によれば、リアクロスメンバ22は、前後の板状部材121、221を互いに結合した第1中空体で構成されるリアクロスメンバ本体21を有し、このリアクロスメンバ本体21は、その車幅方向の左右両側で、それぞれ、左右両端部に向けて前後長さを拡大した拡大部分22bを有し、これらの拡大部分22bが一対のサイドクロスメンバ24、26にそれぞれ結合され、これらの結合部(開放端部22a)近傍において、リアクロスメンバ本体21の下部に、前後の板状部材123、124、223を互いに結合した一対の第2中空体23が垂下するように結合され、これらの第2中空体23にロアアーム7の取付部34が設けられている。
このように構成された本実施形態によれば、リアクロスメンバ22を、第1中空体であるリアクロスメンバ本体21による井桁形成部と、第2中空体23によるアーム取付部とに機能を分離することにより、井桁状のフレーム剛性を損なうことなく、リアクロスメンバ22を軽量化することができる。
【0058】
また、本実施形態において、第2中空体23は、その前後長さが、リアクロスメンバ本体21の拡大部分22bの前後長さより小さくなるよう形成されているので、より効果的に、井桁状のフレーム剛性を損なうことなく、リアクロスメンバ22を軽量化することができる。
【0059】
また、本実施形態において、第2中空体23は、リアクロスメンバ本体21の下部との結合部23aから車幅方向外方に向けてサイドクロスメンバ24、26の下方側から外側面側に回り込むと共にサイドクロスメンバ24、26に結合され、さらに、サイドクロスメンバ24、26の外側面の上方まで延長され、第2中空体23の上方まで延長された部分(第2前側部材124)がリーディングアーム5の取付部32を構成しているので、第2中空体23とサイドクロスメンバ24、26との結合力を高めるとともに、上下のリーディングアーム5およびロアアーム7の取付部32、34を互いに連結するようにして剛性を高めることができる。
また、第2中空体23の下方側から外側面側に回り込む部分は、前後の板状板材123、124、223により中空体に形成され、その前後の板状部材の一方の前側部材123、124が上下に分割され、その分割された上側の板状部材124が、サイドクロスメンバ24、26の外側面の上方まで延長されて、リーディングアーム5の取付部32におけるピボット支持部の一方を構成しているので、リーディングアーム5のピボット軸支部(ピボット支持部)32の成形性と、回り込み部の剛性確保とを両立することができる。
なお、変形例として、後側部材223を上下に分割して、その分割した上方の部材でリーディングアーム5の取付座32を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 自動車のサスペンション装置/リアサスペンションアッセンブリ
2 後輪
3 サブフレーム
4 アッパアーム
5 リーディングアーム
6 トレーリングアーム
7 ロアアーム
8 トーコントロールアーム(コントロールアーム)
10 ホイールサポート
16 緩衝装置
18 スタビライザーバー(スタビライザーリンク)
20 フロントクロスメンバ
21 リアクロスメンバ本体(第1中空体)
21a 後面
22 リアクロスメンバ
22a 両端部/左右開放端部
22b 拡大部分
23 リアクロスメンバ下方部(第2中空体)
23a 結合部
23b 後面
23c クロスメンバ側軸支部
23d 上縁部分
23e 段差部分
23f リアクロスメンバ下方部23の前面開口部
24、26 サイドクロスメンバ(サイドメンバ)
32 リーディングアーム5のピボット軸支部(ピボット支持部)
34 ロアアーム7のピボット軸支部(ピボット支持部)
37 トーコントロールアーム8の支持ブラケット
37a、37b、37c 上面部、下面部、後面部
37d 基部
37e ブラケット側軸支部
37f 開口部
37g リブ
39 軸支ボルト/カムボルト
41 偏心指標板
123 リアクロスメンバの前側下方の板状部材(第1前側部材)
124 リアクロスメンバの前側上方の板状部材(第2前側部材)
223 リアクロスメンバの後側の板状部材(後側部材)
IK 仮想キングピン軸
W 溶接ライン(溶接線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14