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特許7601353画像制御システム、画像制御プログラム、画像制御プログラムが記録された記憶媒体、及び画像制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】画像制御システム、画像制御プログラム、画像制御プログラムが記録された記憶媒体、及び画像制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20241210BHJP
【FI】
G06T19/00 600
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022201437
(22)【出願日】2022-12-16
(65)【公開番号】P2024086350
(43)【公開日】2024-06-27
【審査請求日】2024-05-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516249470
【氏名又は名称】株式会社STYLY
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 征浩
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-176131(JP,A)
【文献】特開2014-079824(JP,A)
【文献】特開2021-077078(JP,A)
【文献】特開2009-237878(JP,A)
【文献】齊藤滋 他3名,コード化した模様を内装に施した室内における位置同定システム,映像情報メディア学会技術報告,2006年06月06日,Vol.30, No.29,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラとディスプレイとを備えた拡張現実又は複合現実用の表示端末における前記カメラで撮像された、壁と天井とを有する特定空間の画像である現実画像に、該特定空間より大きな所定のコンテンツ画像を重ねて前記ディスプレイに表示する制御部を備え、
前記壁と天井の表面のうち少なくとも一部の領域であるオクルージョンオフ領域には、当該オクルージョンオフ領域を覆うように予め設定された特定模様が付されており、
前記制御部は、前記現実画像において前記特定模様が付された領域を前記オクルージョンオフ領域と判定し、前記オクルージョンオフ領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行せず、前記現実画像における前記オクルージョンオフ領域以外の領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行する画像制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、前記現実画像から前記特定模様を消去する請求項1記載の画像制御システム。
【請求項3】
前記特定模様は、前記オクルージョンオフ領域内で付されている位置によって異なる模様とされており、
前記制御部は、さらに、前記現実画像に撮像された前記特定模様から、前記特定空間に対する前記表示端末の相対位置を特定し、前記特定された相対位置に応じて前記コンテンツ画像を表示する請求項1記載の画像制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記現実画像から、前記特定空間の角に対応する線を消去する請求項1記載の画像制御システム。
【請求項5】
カメラとディスプレイとを備えた拡張現実又は複合現実用の表示端末における前記カメラで撮像された、壁と天井とを有する特定空間の画像である現実画像に、該特定空間より大きな所定のコンテンツ画像を重ねて前記ディスプレイに表示する制御部を備え、
前記制御部は、前記現実画像に前記コンテンツ画像を重ねる際に、オクルージョンを実行することなく前記現実画像から前記特定空間の角に対応する線を消去する画像制御システム。
【請求項6】
前記表示端末をさらに備える請求項1~5のいずれか1項に記載の画像制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記表示端末に内蔵される請求項6記載の画像制御システム。
【請求項8】
前記特定空間をさらに備える請求項1~5のいずれか1項に記載の画像制御システム。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像制御システムに用いられる前記制御部として機能させる画像制御プログラム。
【請求項10】
請求項に記載の画像制御プログラムが記録された記憶媒体。
【請求項11】
カメラとディスプレイとを備えた拡張現実又は複合現実用の表示端末における前記カメラで撮像された、壁と天井とを有する特定空間の画像である現実画像に、該特定空間より大きな所定のコンテンツ画像を重ねて前記ディスプレイに表示する複合現実制御工程を含み、
前記壁と天井の表面のうち少なくとも一部の領域であるオクルージョンオフ領域には、当該オクルージョンオフ領域を覆うように予め設定された特定模様が付されており、
前記複合現実制御工程は、前記現実画像において前記特定模様が付された領域を前記オクルージョンオフ領域と判定し、前記オクルージョンオフ領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行せず、前記現実画像における前記オクルージョンオフ領域以外の領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行する画像制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実又は複合現実を表示するための、拡張現実又は複合現実用の建物、拡張現実又は複合現実用の建物の設計方法、拡張現実又は複合現実用の内装、拡張現実又は複合現実用の内装の設計方法、画像制御システム、画像制御プログラム、画像制御プログラムが記録された記憶媒体、及び画像制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、拡張現実(AR:Augmented Reality)や複合現実(MR:Mixed Reality)において、手前に現実の物体が存在し、奥にCG(Computer Graphics)の物体が位置する場合に、現実の物体を奥のCGより手前に表示するように描画するオクルージョンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-43909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際に撮影された現実画像と、CGのコンテンツ画像とを重ねて表示する拡張現実や複合現実において、屋内などの閉鎖された空間内に、屋内空間より大きなコンテンツ画像を表示してオクルージョンを実行すると、コンテンツ画像の一部が屋内空間の天井や壁を突き抜けて、コンテンツ画像の一部が天井や壁に隠れてしまう。
【0005】
本発明の目的は、屋内空間より大きなコンテンツ画像を表示することが可能な拡張現実又は複合現実用の建物、拡張現実又は複合現実用の建物の設計方法、拡張現実又は複合現実用の内装、拡張現実又は複合現実用の内装の設計方法、画像制御システム、画像制御プログラム、画像制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像制御システムは、カメラとディスプレイとを備えた拡張現実又は複合現実用の表示端末における前記カメラで撮像された、壁と天井とを有する特定空間の画像である現実画像に、所定のコンテンツ画像を重ねて前記ディスプレイに表示する制御部を備え、前記壁と天井の表面のうち少なくとも一部の領域であるオクルージョンオフ領域には、当該オクルージョンオフ領域を覆うように予め設定された特定模様が付されており、前記制御部は、前記現実画像において前記特定模様が付された領域を前記オクルージョンオフ領域と判定し、前記オクルージョンオフ領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行せず、前記現実画像における前記オクルージョンオフ領域以外の領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行する。
【0007】
また、本発明に係る画像制御方法は、カメラとディスプレイとを備えた拡張現実又は複合現実用の表示端末における前記カメラで撮像された、壁と天井とを有する特定空間の画像である現実画像に、所定のコンテンツ画像を重ねて前記ディスプレイに表示する複合現実制御工程を含み、前記壁と天井の表面のうち少なくとも一部の領域であるオクルージョンオフ領域には、当該オクルージョンオフ領域を覆うように予め設定された特定模様が付されており、前記複合現実制御工程は、前記現実画像において前記特定模様が付された領域を前記オクルージョンオフ領域と判定し、前記オクルージョンオフ領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行せず、前記現実画像における前記オクルージョンオフ領域以外の領域と前記コンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行する。
【0008】
また、本発明に係る画像制御システムは、カメラとディスプレイとを備えた拡張現実又は複合現実用の表示端末における前記カメラで撮像された、壁と天井とを有する特定空間の画像である現実画像に、所定のコンテンツ画像を重ねて前記ディスプレイに表示する制御部を備え、前記制御部は、前記現実画像に前記コンテンツ画像を重ねる際に、オクルージョンを実行することなく前記現実画像から前記特定空間の角に対応する線を消去する。
【0009】
また、本発明に係る画像制御システムは、カメラとディスプレイとを備えた拡張現実又は複合現実用の表示端末における前記カメラで撮像された、壁と天井とを有する特定空間の画像である現実画像に、オクルージョンを実行することなく所定のコンテンツ画像を重ねる制御部を備え、前記特定空間の内面は、無地である。
【0010】
これらの構成によれば、特定空間に、特定空間より大きなコンテンツ画像を表示することが可能となる。
【0011】
また、前記制御部は、さらに、前記現実画像から前記特定模様を消去することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ユーザにとって不要な模様である特定模様を消去することによって、ユーザにとって違和感のない画像を生成することができる。
【0013】
また、前記特定模様は、前記オクルージョンオフ領域内で付されている位置によって異なる模様とされており、前記制御部は、さらに、前記現実画像に撮像された前記特定模様から、前記特定空間に対する前記表示端末の相対位置を特定し、前記特定された相対位置に応じて前記コンテンツ画像を表示することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、特定模様は、オクルージョンオフ領域内で付されている位置によって異なる模様とされているから、現実画像内における特定模様によって、現実画像を撮像した表示端末の、特定空間に対する相対位置を特定することが可能となる。
【0015】
また、前記制御部は、さらに、前記現実画像から、前記特定空間の角に対応する線を消去することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、オクルージョンを実行しないために生じる違和感を低減することができる。
【0017】
また、前記表示端末をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、表示端末は、画像制御システムに含まれる。
【0019】
また、前記制御部は、前記表示端末に内蔵されることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、表示端末が制御部として機能する。
【0021】
また、前記特定空間をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、特定空間は、画像制御システムに含まれる。
【0023】
また、本発明に係る拡張現実又は複合現実用の建物は、上述の画像制御システムに用いられる前記特定空間を備える。
【0024】
この拡張現実又は複合現実用の建物は、上述の画像制御システムに用いられる特定空間を構成する。
【0025】
また、本発明に係る拡張現実又は複合現実用の建物の設計方法は、上述の拡張現実又は複合現実用の建物の、前記壁と天井の表面のうち少なくとも一部の領域に、前記特定模様を付すように設計する。
【0026】
この設計方法によれば、拡張現実又は複合現実用の建物を設計することができる。
【0027】
また、本発明に係る拡張現実又は複合現実用の内装は、上述の画像制御システムに用いられる前記特定空間の内面の少なくとも一部に、前記特定模様が付されている。
【0028】
この拡張現実又は複合現実用の内装は、上述の画像制御システムに用いられる特定空間を構成する。
【0029】
また、本発明に係る拡張現実又は複合現実用の内装の設計方法は、上述の拡張現実又は複合現実用の内装の、内面の少なくとも一部に、前記特定模様を付すように設計する。
【0030】
この設計方法によれば、拡張現実又は複合現実用の内装を設計することができる。
【0031】
また、本発明に係る画像制御プログラムは、コンピュータを、上述の画像制御システムに用いられる前記制御部として機能させる。
【0032】
この画像制御プログラムは、コンピュータを、上述の画像制御システムに用いられる制御部として機能させる。
【0033】
また、本発明に係る記憶媒体には、上述の画像制御プログラムが記録されている。
【0034】
この記憶媒体は、上述の画像制御プログラムを記録する。
【発明の効果】
【0035】
このような構成の拡張現実又は複合現実用の建物、拡張現実又は複合現実用の建物の設計方法、拡張現実又は複合現実用の内装、拡張現実又は複合現実用の内装の設計方法、画像制御システム、画像制御プログラム、画像制御プログラムが記録された記憶媒体、及び画像制御方法は、屋内空間より大きなコンテンツ画像を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係る画像制御システムの構成の一例を示す概念図である。
図2】特定空間に三次元のCG画像を配置した場合の位置関係を説明するための概念的な説明図である。
図3図2に示す状態で、ユーザが従来の表示端末を用いて特定空間、CG画像、及び第三者を見た画像を説明する説明図である。
図4図3に示す状態で、オクルージョンを実行しなかった場合の画像を説明するための説明図である。
図5】画像制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】表示端末で撮像された現実画像の一例を示す画像である。
図7】ステップS5で生成された合成画像G2の一例を示す説明図である。
図8】ステップS6で生成された合成画像G3の一例を示す説明図である。
図9】ステップS7で生成された合成画像G4の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。各図には、方向関係を明確にするために適宜XYZ直交座標軸を示している。図1は、本発明の一実施形態に係る画像制御システム1の構成の一例を示す概念図である。画像制御システム1は、建物2と、表示端末4と、制御部3とを備えている。
【0038】
建物2は、壁21a,21b,21c、天井22、及び床23を有する特定空間20を備えている。天井22には、段差221が設けられている。壁21a,21c、天井22、及び床23の一部を覆うように予め設定された特定模様6が付された内装を有している。天井22の段差221、及び壁21bの全面が特定模様6で覆われている。特定空間20には、全面特定模様6で覆われた突起部24が設けられている。突起部24は、壁21a,21b及び天井22から張り出している。
【0039】
なお、画像制御システム1は、表示端末4を含んでいなくてもよく、建物2及び特定空間20を含んでいなくてもよい。
【0040】
特定模様6で覆われた領域が、オクルージョンオフ領域5とされている。特定模様6は、オクルージョンオフ領域5内で付されている位置によって異なる模様とされている。特定模様6としては、例えば、ランダムドットパターンとして知られている模様やQRコード(登録商標)に類似したARマーカー等、種々の模様を用いることができる。
【0041】
建物2の設計方法としては、壁と天井の表面のうち少なくとも一部の領域に、特定模様を付すように設計する方法を用いることができる。特定空間20の内装の設計方法としては、特定空間20の内面の少なくとも一部に、特定模様を付すように設計する方法を用いることができる。
【0042】
表示端末4は、カメラ41とディスプレイ42とを備えた端末装置である。表示端末4としては、いわゆるスマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ等のカメラ付きVRゴーグル、いわゆるARグラス等を用いることができる。表示端末4は、制御部3との間で通信可能とされている。表示端末4は、例えばWiFi(登録商標)等の無線通信により制御部3と通信してもよく、移動体通信やインターネットを介して制御部3と通信してもよく、ケーブルを介して制御部3と有線通信してもよい。
【0043】
表示端末4は、カメラ41で撮像された現実画像G1を制御部3へ送信し、制御部3からの指示に応じた画像をディスプレイ42に表示する。
【0044】
制御部3は、例えばサーバ装置やゲーム機等のコンピュータを用いて構成することができる。あるいは、制御部3は、表示端末4に内蔵されていてもよい。
【0045】
制御部3は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶装置、通信回路、及びこれらの周辺回路等から構成されている。制御部3は、例えば上述の記憶装置に記憶された画像制御プログラムを実行することによって動作する。
【0046】
制御部3は、表示端末4のカメラ41で撮像された、特定空間20の画像である現実画像G1に、所定のコンテンツ画像を重ねてディスプレイ42に表示する。制御部3は、現実画像G1において特定模様6が付された領域をオクルージョンオフ領域5と判定し、オクルージョンオフ領域5とコンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行せず、現実画像G1におけるオクルージョンオフ領域5以外の領域とコンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行する。
【0047】
次に、画像制御システム1の動作について説明する前に、まず、本発明者の考える複合現実の利用シーンについて説明する。複合現実では、現実の空間内にユーザが存在する。そして、スマートフォンやヘッドマウントディスプレイ等の複合現実デバイスに対して、実際にカメラで撮像された現実画像にCGの画像を重ね合わせて表示する。ユーザは、複合現実デバイスを通して、言わば、CGによって拡張された現実の空間を体験することになる。
【0048】
このとき、現実の空間サイズ、例えばユーザが居る部屋の大きさよりも大きなCG画像を表示することができれば、ユーザに、現実の空間が拡がったような、空間の拡がりを感じさせることができると考えらえる。
【0049】
図2は、特定空間20に三次元のCG画像CG1,CG2を配置した場合の位置関係を説明するための概念的な説明図である。CG画像CG1は、特定空間20よりも大きなキリンの三次元CG画像である。特定空間20にCG画像CG1を配置すると、図2に示すように、キリンの首が天井22を突き抜ける。
【0050】
特定空間20には、CG画像CG1の-Y方向に、三次元の牛のCG画像CG2が配置されている。CG画像CG2の-X方向には、現実の第三者R1が立っており、第三者R1の-X方向にユーザUが立っている。ユーザUは、表示端末4を用いて、ディスプレイ42を介して特定空間20を見ている。
【0051】
図3は、図2に示す状態で、ユーザUが従来の表示端末を用いて特定空間20、CG画像CG1,CG2、及び第三者R1を見た画像を説明する説明図である。この場合、特定空間20の壁、天井、床、及び第三者R1は実際に撮影された現実画像となり、この現実画像にCG画像CG1,CG2が重ね合わされる。
【0052】
そして、従来の表示端末の表示画像では、天井22を突き抜けたキリンのCG画像CG1の首は、オクルージョンによって天井22の陰に隠れる。また、牛のCG画像CG2は、第三者R1よりも奥に配置されているため、CG画像CG2の一部がオクルージョンによって第三者R1の陰に隠れる。
【0053】
このように、従来の表示端末を用いてオクルージョンを実行すると、特定空間20よりも大きなCG画像の全体を表示することはできない。
【0054】
図4は、図3に示す状態で、オクルージョンを実行しなかった場合の画像を説明するための説明図である。オクルージョンを実行しない場合、図3とは異なり、キリンのCG画像CG1全体を表示することができる。一方、第三者R1よりも奥に配置されている牛のCG画像CG2も全体が表示され、CG画像CG2よりも手前にいる第三者R1の現実画像がCG画像CG2で覆い隠されてしまう。
【0055】
このように、第三者R1の現実画像がCG画像CG2で覆い隠された状態で、ユーザUが従来の表示端末を用いて特定空間20を見ながら移動した場合、ユーザUは第三者R1の存在に気付かずにぶつかってしまうおそれがある。従って、例えキリンのCG画像CG1全体を表示することができたとしても、オクルージョンを実行しないことは好ましくない。
【0056】
以下、画像制御システム1の動作について説明する。図5は、画像制御システム1の動作の一例を示すフローチャートである。前提として、図1に示す特定空間20に対し、図2に示す位置にユーザUと第三者R1とが立っている場合を例に説明する。
【0057】
まず、図1に示す特定空間20に対し、ユーザUが表示端末4のカメラで撮影を行う。そうすると、表示端末4で撮像された現実画像G1が、制御部3によって取得される(ステップS1)。
【0058】
図6は、表示端末4で撮像された現実画像G1の一例を示す画像である。現実画像G1には、現実に存在する特定空間20及び第三者R1の外観のみが写っている。
【0059】
次に、制御部3は、現実画像G1における特定模様6から、特定空間20に対する表示端末4の相対位置を特定する(ステップS2)。特定模様6は、オクルージョンオフ領域5内で付されている位置によって異なる模様とされているから、現実画像G1内における特定模様6によって、現実画像G1を写した表示端末4の、特定空間20に対する相対位置を特定することが可能となる。
【0060】
なお、表示端末4の、特定空間20に対する相対位置を、特定模様6に基づいて特定する例に限らない。表示端末4の、特定空間20に対する相対位置を特定する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。
【0061】
次に、制御部3は、ステップS2で特定された相対位置に基づいて、現実画像G1に対するCG画像CG1,CG2の合成位置及び角度を決定する(ステップS3)。CG画像CG1,CG2は、コンテンツ画像の一例に相当する。なお、コンテンツ画像の一例として、キリンと牛を示したが、コンテンツ画像は特定の画像に限定されない。コンテンツ画像は、例えば星空や街の景色等であってもよい。
【0062】
次に、制御部3は、現実画像G1において特定模様6が付された領域をオクルージョンオフ領域5と判定する(ステップS4)。
【0063】
次に、制御部3は、オクルージョンオフ領域5とコンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行せず、現実画像G1におけるオクルージョンオフ領域5以外の領域とコンテンツ画像とを重ねる場合、オクルージョンを実行して合成画像G2を生成する(ステップS5)。ステップS5において、制御部3は、ステップS3で決定された合成位置及び角度に基づいて、コンテンツ画像であるCG画像CG1,CG2を、現実画像G1に合成して合成画像G2を生成する。
【0064】
図7は、ステップS5で生成された合成画像G2の一例を示す説明図である。キリンのCG画像CG1は、特定模様6で覆われたオクルージョンオフ領域5と重ね合わされる。そのため、ステップS7において、オクルージョンが実行されず、キリンのCG画像CG1は特定空間20よりも大きいにもかかわらず、図3とは異なりCG画像CG1の全体が表示される。
【0065】
このように、現実の空間サイズよりも大きなCG画像CG1が表示される合成画像G2によれば、表示端末4を用いるユーザUに対し、現実の空間が拡がったような、空間の拡がりを感じさせることが可能となる。
【0066】
一方、牛のCG画像CG2は、第三者R1の現実の画像と重ね合わされる。第三者R1の画像には特定模様6が付されていないから、ステップS5において、第三者R1はオクルージョンオフ領域5以外の領域となる。従って、オクルージョンオフ領域5以外の領域である第三者R1の画像と牛のCG画像CG2は、オクルージョンを実行して重ね合わされる。その結果、第三者R1の画像が牛のCG画像CG2に覆い隠されることがなく、ユーザUが表示端末4を用いて特定空間20を見ながら移動した場合であっても、図4と異なりユーザUが第三者R1の存在に気付かずにぶつかってしまうおそれが低減される。
【0067】
次に、制御部3は、合成画像G2の現実画像G1部分から特定模様6を消去して合成画像G3を生成する(ステップS6)。図8は、ステップS6で生成された合成画像G3の一例を示す説明図である。
【0068】
画像制御システム1では、壁21a,21b,21c、天井22、床23、及び突起部24に付された特定模様6によって、屋内空間より大きなコンテンツ画像であるCG画像CG1の表示と、ユーザUが第三者R1等にぶつかってしまうおそれの低減とを両立している。しかしながら、特定模様6は、ユーザUにとって不要な模様である。そこで、合成画像G2から特定模様6を消去することによって、ユーザUにとって見やすい合成画像G3を生成することができる。
【0069】
次に、制御部3は、合成画像G3の現実画像G1部分から、特定空間20の角に対応する線である角線Lを消去して合成画像G4を生成する(ステップS7)。図9は、ステップS7で生成された合成画像G4の一例を示す説明図である。
【0070】
図8に示す合成画像G3では、屋内空間より大きなCG画像CG1を表示できるものの、段差221よりも奥にいるはずのキリンの首が段差221の手前に表示され、遠近のつじつまが合わず、空間がゆがんだような違和感が生じる。そこで、合成画像G3から角線Lを消去することによって、図9に示す合成画像G4のように、空間のゆがみを感じることが無くなり、違和感を低減することができる。
【0071】
次に、制御部3は、表示端末4のディスプレイ42に合成画像G4を表示する(ステップS8)。これにより、ユーザUは、表示端末4を介して特定空間20を見ることによって、違和感なく特定空間20が拡張されてCG画像CG1が表示された複合現実感を体感することができ、かつユーザUが第三者R1等にぶつかってしまうおそれを低減することができる。
【0072】
なお、制御部3は、ステップS7を実行することなくステップS8で合成画像G3を表示してもよく、ステップS6,S7を実行することなくステップS8で合成画像G2を表示してもよい。また、制御部3は、ステップS6を実行することなくステップS7で合成画像G2を処理対象としてもよい。
【0073】
また、特定模様6は、必ずしもオクルージョンオフ領域5内で付されている位置によって異なる模様でなくてもよく、制御部3はステップS2,S3を実行しなくてもよい。
【0074】
また、特定空間20には特定模様6が付されていなくてもよく、制御部3はステップS2~S4,S6を実行せず、ステップS5において、オクルージョンを常時実行せずに現実画像G1とコンテンツ画像とを重ねてもよい。ステップS5において常時オクルージョンを実行しない場合であっても、ステップS7において角線Lを消去することによって、屋内空間より大きなコンテンツ画像を表示しつつ、空間がゆがんでいるような違和感を低減することができる。
【0075】
また、特定空間20の内面が無地であり、制御部3はステップS2~S4,S6を実行せず、ステップS5において、常時オクルージョンを実行せずに現実画像G1とコンテンツ画像とを重ねて合成画像G2とし、ステップS7で合成画像G2を処理対象としてもよい。あるいは、ステップS7を実行せず、ステップS8で合成画像G2を表示してもよい。
【0076】
ステップS5において常時オクルージョンを実行しない場合であっても、特定空間20の内面が無地であれば、ユーザUはディスプレイ42に表示された合成画像G4から遠近感を感じにくくなるため、屋内空間より大きなコンテンツ画像を表示しつつ、空間がゆがんでいるような違和感を低減することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 画像制御システム
2 建物
3 制御部
4 表示端末
5 オクルージョンオフ領域
6 特定模様
20 特定空間
21a,21b,21c 壁
22 天井
23 床
24 突起部
41 カメラ
42 ディスプレイ
221 段差
CG1,CG2 CG画像(コンテンツ画像)
G1 現実画像
G2,G3,G4 合成画像
L 角線
R1 第三者
U ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9