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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241210BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L29/78 617K
H01L29/78 617L
H01L29/78 617M
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L29/58 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023111343
(22)【出願日】2023-07-06
(65)【公開番号】P2024022494
(43)【公開日】2024-02-16
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0097845
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509344010
【氏名又は名称】チュンアン・ユニヴァーシティ・インダストリー・アカデミック・コーペレーション・ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】508224890
【氏名又は名称】リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション ソンギュングァン ユニバーシティ
【住所又は居所原語表記】2066, Seobu-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16419 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソン ピル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-フン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ポ ヨン
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025918(US,A1)
【文献】国際公開第2019/016642(WO,A1)
【文献】特開2022-017390(JP,A)
【文献】特開2018-093199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/336
H01L 29/423
H01L 29/49
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極の役割を同時に果たす基板上にゲート絶縁膜を形成する第1ステップ;
前記ゲート絶縁膜上に金属層を形成する第2ステップ;
前記金属層の表面を全部覆うように非晶質金属酸化物半導体層を形成して、構造体を製造する第3ステップ;
前記構造体を熱処理する第4ステップ;および
前記熱処理された構造体上にソース/ドレイン電極層を蒸着する第5ステップ;を含み、
前記第4ステップの間に、前記非晶質金属酸化物半導体層と前記金属層との間に金属酸化物層が形成され、前記非晶質金属酸化物半導体層は結晶化され、前記金属層または金属酸化物層と隣接した前記非晶質金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏領域が形成される、ことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
基板上にゲート電極を形成した後、前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する第1ステップ;
前記ゲート絶縁膜上に金属層を形成する第2ステップ;
前記金属層の表面を全部覆うように非晶質金属酸化物半導体層を形成して、構造体を製造する第3ステップ;
前記構造体を熱処理する第4ステップ;および
前記熱処理された構造体上にソース/ドレイン電極層を蒸着する第5ステップ;を含み、
前記第4ステップの間に、前記非晶質金属酸化物半導体層と前記金属層との間に金属酸化物層が形成され、前記非晶質金属酸化物半導体層は結晶化され、前記金属層または金属酸化物層と隣接した前記非晶質金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏領域が形成される、ことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記金属層は、Al、Cr、Mo、Ag、Ta、およびTiからなる群より選択されたいずれか1つの金属または2つ以上の合金で形成されたものである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物層は、前記金属層を形成する金属の酸化物層である、ことを特徴とする請求項3に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記非晶質金属酸化物半導体は、ZTO、IZTO、IGZTO、ZnO、IGZO、IZO、ITO、GZO、GZTO、ISZO、およびISZTOの中で選択されたいずれか一つの物質で形成されたものである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記熱処理は、100~1000℃の温度で行われる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記金属層の幅(Lbar)と前記ソースおよびドレインによって露出された前記非晶質金属酸化物層の幅(Lch)との比率(Lbar/Lch)は、0.5以上1未満である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
ート電極の役割を同時に果たす基板;
前記基板上に形成されたゲート絶縁膜;
前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層;
前記金属層上に形成され、前記金属層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物層;
前記金属酸化物層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物半導体層;および
前記金属酸化物半導体層上に形成されたソース/ドレイン電極;を含み、
前記金属酸化物層と隣接した前記金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏層をさらに含む、ことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項9】
板;
前記基板上に形成されたゲート電極;
前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜;
前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層;
前記金属層上に形成され、前記金属層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物層;
前記金属酸化物層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物半導体層;および
前記金属酸化物半導体層上に形成されたソース/ドレイン電極;を含み、
前記金属酸化物層と隣接した前記金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏層をさらに含む、ことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記金属酸化物半導体層は、結晶質金属酸化物半導体層である、ことを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ、メモリ、回路などの電子素子に適用可能な薄膜トランジスタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
初期ディスプレイ素子は、非晶質シリコン素材に基づいて技術の進歩が始まってLCD産業に利用された。非晶質シリコン素材は、低い電荷移動度を有するため、ディスプレイの解像度が増加するにつれて、高い電荷移動度が要求され、多結晶質シリコン素材が開発されたが、多結晶質シリコン素材も工程が複雑で、収率が低く、工程温度が高いなどの欠点により、近来には金属酸化物無機物を利用して半導体素材研究が行われている。非晶質金属酸化物無機物は、透明性が高く、廉価で大面積化の可能性、移動度が優れるなどの長所により、開発および研究が行われている。それにもかかわらず、高電圧での動作安定性の限界点および次世代高解像度ディスプレイに十分でない移動度により未だに研究がさらに必要な実情である。次世代高解像度ディスプレイに用いるためには、電荷移動度が高く、大面積化可能な工程、動作安定性のある半導体素子が必要である。
【0003】
最近、シリコン素材を代替できる半導体素材として、金属酸化物半導体が研究されており、一部量産に適用されている。しかしながら、従来の金属酸化物薄膜素子は、シリコン薄膜素子に比べて、低コスト、および絶縁特性にもかかわらず、低い移動度が短所として指摘された。単結晶シリコンの場合、移動度が約300cm/Vs、低温ポリシリコン(low temperature poly silicon)の場合、100cm/Vsであるが、金属酸化物の場合、10~20cm/Vsレベルの低い移動度を有していて、大面積または高走査率、超高解像度ディスプレイのように、早い反応を必要とする場合、追加的な改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、移動度が改善された結晶質の金属酸化物半導体を含む薄膜トランジスタ、およびその製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、本発明の製造方法によって製造された薄膜トランジスタを通じて、最終的に高解像度大面積ディスプレイ素子の駆動を含んで、光電素子、メモリ素子、センサーなど従来常用化された金属酸化物に基づく電子素子に適用可能な半導体製作核心技術を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による薄膜トランジスタの製造方法は、ゲート電極の役割を同時に果たす基板上にゲート絶縁膜を形成する第1ステップ;前記ゲート絶縁膜上に金属層を形成する第2ステップ;前記金属層の表面を全部覆うように非晶質金属酸化物半導体層を形成して、構造体を製造する第3ステップ;前記構造体を熱処理する第4ステップ;および前記熱処理された構造体上にソース/ドレイン電極層を蒸着する第5ステップ;を含み、前記第4ステップの間に、前記非晶質金属酸化物半導体層と前記金属層との間に金属酸化物層が形成され、前記非晶質金属酸化物半導体層は結晶化され、前記金属層または金属酸化物層と隣接した前記非晶質金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏領域が形成される。
【0007】
本発明の追加的な実施形態による薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極を形成した後に、前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する第1ステップ;前記ゲート絶縁膜上に金属層を形成する第2ステップ;前記金属層の表面を全部覆うように非晶質金属酸化物半導体層を形成して、構造体を製造する第3ステップ;前記構造体を熱処理する第4ステップ;および前記熱処理された構造体上にソース/ドレイン電極層を蒸着する第5ステップ;を含み、前記第4ステップの間に、前記非晶質金属酸化物半導体層と前記金属層との間に金属酸化物層が形成され、前記非晶質金属酸化物半導体層は結晶化され、前記金属層または金属酸化物層と隣接した前記非晶質金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏領域が形成される。
【0008】
前記金属層は、Al、Cr、Mo、Ag、Ta、およびTiからなる群より選択されたいずれか1つの金属または2つ以上の合金で形成される。
前記金属酸化物層は、前記金属層を形成する金属の酸化物層である。
前記非晶質金属酸化物半導体は、ZTO、IZTO、IGZTO、ZnO、IGZO、IZO、ITO、GZO、GZTO、ISZO、およびISZTOの中で選択されたいずれか一つの物質で形成される。
【0009】
前記熱処理は、100~1000℃の温度で行われる。
前記金属層の幅(Lbar)と前記ソースおよびドレインによって露出された前記非晶質金属酸化物層の幅(Lch)との比率(Lbar/Lch)は、0.5以上1未満である。
【0010】
本発明の一実施形態による薄膜トランジスタは、ゲート電極の役割を同時に果たす基板;前記基板上に形成されたゲート絶縁膜;前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層;前記金属層上に形成され、前記金属層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物層;前記金属酸化物層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物半導体層;および前記金属酸化物半導体層上に形成されたソース/ドレイン電極;を含み、前記金属酸化物層と隣接した前記金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏層をさらに含む。
【0011】
本発明の追加的な実施形態による薄膜トランジスタは、基板;前記基板上に形成されたゲート電極;前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜;前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層;前記金属層上に形成され、前記金属層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物層;前記金属酸化物層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物半導体層;および前記金属酸化物半導体層上に形成されたソース/ドレイン電極;を含み、前記金属酸化物層と隣接した前記金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏層をさらに含む。
前記金属酸化物半導体層は、非晶質金属酸化物半導体層が熱処理によって結晶化されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係ると、超高解像度、大面積ディスプレイの具現に適用可能な高移動度結晶質の金属酸化物に基づく素子、および工程核心技術を提供することができ、高移動度の結晶質金属酸化物半導体を通じて次世代ディスプレイを具現することにより、技術競争力を備えることができ、ディスプレイだけでなく、多様な金属酸化物のそれぞれの電気的性質を利用して、今後のメモリ、回路などの電子素子に容易に活用することができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の薄膜トランジスタの製造方法の順序図である。
図2】本発明の薄膜トランジスタおよびその製造方法を示す図面である。
図3A】本発明の一実施形態によって製造された薄膜トランジスタの3次元構造を示す。
図3B】断面構造および実際素子の顕微鏡写真を示す図面である。Lbarは、金属層の幅を示し、Lchは、ソース/ドレイン電極の間の間隔(チャンネル領域の長さ)を示す。
図4】本発明の一実施形態によって製造された薄膜トランジスタの断面を示すTEM(transmission electron microscopy)イメージである。
図5A】TEMのEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を示す。
図5B】ラインスキャニング(Line scanning)を通じて本発明の一実施形態によって製造された薄膜トランジスタの元素成分を分析した結果を示した図面である。
図6A図6A及び図6Bは、50μmチャンネル長さ(Lch)を有する薄膜トランジスタ素子にそれぞれ0、15、30、45μmの幅(Lbar)を有するAl金属層を適用した際の図面である。そのうち、図6Aは、ゲート電圧(gate voltage)によるドレイン電流(drain currunt)を示す。
図6B】電界効果移動度(Fleid-Effect Mobility)を示す図面である。
図7A図7A~Dは、50μmチャンネル長さ(Lch)を有する薄膜トランジスタ素子にそれぞれ0、15、30、45μmの幅(Lbar)を有するAl金属層を適用した際の図面である。そのうち、図7Aは電界効果移動度を示す。
図7B】on/off電流比(current ratio)を示す。
図7C】閾値電圧(Threshold Voltage、Vth)を示す。
図7D】閾値電圧以下の急激に小さい勾配(subthreshold slope)の変化を示す。
図8】金属層の長さによる薄膜トランジスタ素子の活性化エネルギーを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。本発明は、多様な変更を施すことができ、様々な形態を有し得、特定の実施例を図面に例示して本文で詳しく説明する。しかしながら、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことに理解されるべきである。各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素に対して用いた。
【0015】
本出願で用いた用語は、ただ特定の実施例を説明するために用いられたもので、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたのが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはその以上の他の特徴や、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないことに理解されるべきである。
【0016】
異なるように定義されない限り、技術的または科学的用語を含んでここで用いられるすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。通常用いられる辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有することに解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0017】
本発明において、「非晶質」とは、物質内の原子が特定周期性を有せず、ランダムに配列されている状態を意味する。
本発明において、「結晶化」とは、原子がランダムに配列されている状態から特定配列構造を有する状態に変化されることを意味する。
【0018】
図1および2は、本発明の薄膜トランジスタ、およびその製造方法を説明するための図面である。
図1および2を参照すると、本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極を形成し、前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する第1ステップ、前記ゲート絶縁膜上に金属層を形成する第2ステップ、前記金属層の表面を全部覆うように非晶質金属酸化物半導体層を形成して、構造体を製造する第3ステップ、前記構造体を熱処理する第4ステップ、および前記熱処理された構造体上にソース/ドレイン電極層を蒸着する第5ステップを含む。
【0019】
この場合、第1ステップで上記のように行われることが通常的であるが、基板自体がゲート電極の役割まで果たす場合(例えば、図2のように、p型Siが基板およびゲート電極として同時に用いられる場合)には、基板上にゲート絶縁膜をすぐ形成するように行われてもよい。第1ステップは、本発明の明細書全体において、同一に基板がゲート電極の役割まで果たす場合と、そうでない場合に適用されることができ、これは、請求項でも分けて記載した。
【0020】
前記基板は、シリコン(Si)を含んでもよい。しかしながら、シリコンに限定されるものではなく、硝子および高分子などを含んでもよい。前記基板は、p型不純物イオンを含むp型基板またはn型不純物イオンを含むn型基板であってもよい。本発明の一実施形態の薄膜トランジスタにおいて、基板は、p型Si基板であってもよい。
【0021】
前記ゲート電極は、Al、Cr、Mo、Ta、およびTiからなる群より選択されたいずれか1つの金属または2つ以上の合金で形成されてもよいが、これに限定されない。
【0022】
前記ゲート絶縁膜は、SiO、Si、Al、HfOおよびZrOの少なくともいずれか一つの物質で形成されたものであってもよい。一実施形態において、ゲート絶縁膜は、SiOであってもよい。ゲート絶縁膜の厚さは、約1~1000nmであってもよい。
【0023】
前記第1ステップにおいて、前記ゲート絶縁膜の形成は、熱酸化(Thermal Oxidation)方法によって行われてもよい。本発明の薄膜トランジスタで安定的なゲート絶縁膜の形成が非常に重要である。したがって、本発明の一実施形態において、前記熱酸化方法によって基板上にSiOゲート絶縁膜を形成してもよい。
【0024】
前記金属層は、Al、Cr、Mo、Al、Ag、Ta、およびTiからなる群より選択されたいずれか一つの金属で形成されたものであってもよい。しかしながら、必ずこれに限定するものではない。例えば、一実施形態において、金属層は、Alであってもよい。金属層の厚さは、約1~50nmであってもよく、好ましくは、金属層の厚さは、約1~15nmであってもよい。
【0025】
一実施形態において、金属層はパターン化された金属層であってもよい。パターン化された金属層は、薄膜トランジスタの集積度を高めることができる。また、パターン化された金属層の幅(Lbar)によって本発明の薄膜トランジスタの特性を制御することができる。これに関する内容は、下記の実験例を参照して詳しく説明する。
【0026】
前記第2ステップにおいて、金属層の形成は、スパッタリング(Sputtering)、電子ビーム蒸着法(E-beam evaporation)、熱蒸着法(Thermal evaporation)、レーザ分子線蒸着法(L-MBE、Laser Molecular Beam Epitaxy)、パルスレーザ蒸着法(PLD、Pulsed Laser Deposition)、有機金属化学蒸着法(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)、水素気相蒸着法(Hydride Vapor Phase Epitaxy、HVPE)などによって行われてもよく、好ましくは、熱蒸着法(Thermal evaporation)によって行われてもよい。前記方法によって金属層を蒸着した後に、追加的にパターニングステップを行ってもよい。例えば、前記パターニングは、フォトリソグラフィによって行われてもよい。
【0027】
前記非晶質金属酸化物半導体層は、ZTO、IZTO、IGZTO、ZnO、IGZO、IZO、ITO、GZO、GZTO、ISZO、およびISZTOの中で選択されたいずれか一つの物質で形成されたものであってもよい。例えば、前記非晶質金属酸化物半導体は、ZTOであってもよい。
【0028】
前記第3ステップにおいて、非晶質金属酸化物半導体層の形成は、スパッタリング(Sputtering)、ALD(Atomic Layer Deposition)などの真空蒸着方法、スピンコーティング(Sping coating)またはインクジェット方法などによって行われてもよい。一実施形態において、非晶質金属酸化物半導体層は、RFスパッタリングによって行われてもよい。非晶質金属酸化物半導体層は、露出された金属層の表面を全部覆うように形成されてもよく、たとえ、金属層がパターン化されている場合、非晶質金属酸化物半導体層は、金属層と同じパターンで形成されてもよい。この時、前記非晶質金属酸化物半導体層のパターニングは、フォトリソグラフィによって行われてもよい。
【0029】
前記第4ステップにおいて、熱処理は、約100~1000℃の温度で行われてもよく、好ましくは、約200~800℃の温度で行われてもよく、さらに好ましくは、約400~600℃の温度で行われてもよい。熱処理実行時間や方法は、本発明で特に限定されず、実験者が所望の目的によって考慮して実行すればよい。
【0030】
前記第4ステップを行う間に、非晶質金属酸化物半導体層と当接する金属層は、非晶質金属酸化物半導体層の酸素を吸収して、界面に金属酸化物層を形成することができる。すなわち、金属酸化物層は、金属層の金属が酸化された物質で形成されたものである。この時、金属層または金属酸化物層と隣接した非晶質金属酸化物半導体層の内部には、酸素欠乏領域または酸素欠乏層が形成されることができる。この過程が行われると同時に、非晶質金属酸化物半導体層は結晶化されることができる。
【0031】
整理すると、本発明は、前記第4ステップを行った後、金属層と前記金属層上に形成された非晶質金属酸化物半導体層構造物が、金属層、前記金属層上に形成された金属酸化物層、および前記金属酸化物層上に形成された結晶化された結晶質金属酸化物半導体層を含む構造物に変更されることができ、また前記結晶質金属酸化物半導体層は、前記金属酸化物層と隣接した領域に酸素欠乏層を含んでもよい。
【0032】
前記ソース/ドレイン電極は、金属で形成されてもよく、例えば、Al、Ag、Au、Cr、Mo、Al、Ag、Ta、およびTiからなる群より選択されたいずれか一つの金属で形成されてもよい。
【0033】
前記第5ステップにおいて、ソース/ドレイン電極層の形成は、熱蒸着方法によって形成されることができる。前記ソース/ドレイン電極層は、前記結晶質金属酸化物半導体層上に形成され、前記結晶質金属酸化物半導体層の表面を全部覆わないように形成されることができる。
【0034】
前記第5ステップ以後に、前記ソース/ドレイン電極層によって露出された前記結晶質酸化物半導体層の表面は、チャンネル領域(またはチャンネル層)に定義されることができる。本発明は、チャンネル領域の幅(Lch)、すなわち、ソースとドレイン電極との間の間隔によって本発明の薄膜トランジスタの特性を制御することができる。
【0035】
一実施形態において、前記金属層の幅(Lbar)と前記ソースおよびドレインによって露出された前記非晶質金属酸化物層の幅(Lch)との比率(Lbar/Lch)は、1未満であってもよい。本発明の薄膜トランジスタは、Lbar/Lch比率によって薄膜トランジスタの電気的特性が変化するようになるが、通常、Lbar/Lchが1に近いほど移動度が高くなる。ただ、下部金属層とチャンネル上部のソース/ドレイン電極が両方で全部重なるようになる場合(overlap)、移動度特性向上が低下されることがある。好ましくは、本発明において、Lbar/Lch比率は0.5~1以下、または0.8以上1未満であってもよい。
【0036】
本発明の薄膜トランジスタは、本発明の製造方法によって製造され、基板、前記基板上に形成されたゲート絶縁膜、前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層、前記金属層上に形成され、前記金属層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物層、前記金属酸化物層の表面を全部覆うように形成された金属酸化物半導体層、および前記金属酸化物半導体層上に形成されたソース/ドレイン電極を含み、前記金属酸化物層と隣接した前記金属酸化物半導体層の内部に酸素欠乏層をさらに含むことを特徴とする。
【0037】
本発明の薄膜トランジスタは、金属層と金属酸化物半導体層との間に金属酸化物層、すなわち、絶縁体層を形成することを特徴とする。これは、金属酸化物半導体層の上部に金属層を備える従来のトランジスタと比べて、金属酸化物半導体層の追加的な電荷蓄積(chargeAccumulation)および電荷挙動(charge transport)に肯定的な影響を与えることができる。
【0038】
前記酸素欠乏層は、電荷濃度および移動度の向上をもたらすことができる。これは、熱処理以後にトランジスタ素子の活性化エネルギー(activation energy:EA)変化によって確認することができ、これは、以下の実験例を通じて具体的に説明する。
【0039】
前記金属酸化物半導体層は結晶質金属酸化物半導体層で、非晶質金属酸化物半導体層が熱処理によって結晶化された結晶質金属酸化物半導体層であってもよい。
【0040】
以下、具体的な実施例および比較例を通じて本発明の薄膜トランジスタおよびその製造方法についてより詳しく説明する。ただ、本発明の実施形態は、本発明の一部実施形態に過ぎず、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0041】
<実施例>
基板および電極として用いられるp-型シリコン基板上に約200nm厚さのSiOを形成し、これをゲート絶縁膜として用いた。SiOゲート絶縁膜の上部にアルミニウム(Al)金属層を熱蒸着(Thermal Evaporation)方法で形成し、次に、フォトリソグラフィを利用してパターニングを行った。その後、パターニングされた金属層の上部に非晶質ZTO(zinc tin oxide)金属酸化物半導体層をRFスパッタリング方法で形成した。この時、ZTOターゲット物質のZn:Sn比率は7:3であって。金属酸化物半導体層を形成した後、フォトリソグラフィ方法でパターニングした。その次、空気の中で450℃の温度で1時間熱処理をした。熱処理は、ホットプレートを利用した。熱処理過程で、ZTO層と当接しているAl層は、隣接したZTOの中の酸素を吸収して界面で酸化アルミニウム(Al)が形成され、同時に非晶質ZTO層の結晶化が行われた。また、Al層と隣接したZTO層では酸素欠乏層が形成された。最後に、薄膜トランジスタを製造するのために、ソース/ドレイン電極を形成し、ソース/ドレイン電極はAl電極で熱蒸着方法によって形成した。その次に、フォトリソグラフィを利用してパターニングして、本発明の一実施形態による薄膜トランジスタを製造した。
【0042】
<実験例>
1.構造分析
図3Aは、本発明の一実施形態によって製造された薄膜トランジスタの3次元構造を示し、図3Bは、断面構造および実際素子の顕微鏡写真を示す図面である。Lbarは金属層の幅を示し、Lchはソース/ドレイン電極の間の間隔(チャンネル領域の長さ)を示す。
【0043】
図3Aを参考すると、本発明の薄膜トランジスタは、熱処理によってAl層とZTO層との間に酸化アルミニウム(Al)を形成し、Al層と隣接したZTO層の内部領域に酸素が欠乏された層を含む(図示せず)。図3Bを参考すると、本発明の薄膜トランジスタは、Lbar/Lch比率によって電気的特性を制御することができる。Lbar/Lchの比率が1に近く製造されるほど薄膜トランジスタの移動度を高めることができる。ただ、Lbar<Lchの場合には、薄膜トランジスタの移動度特性向上が低下されることが示された。
【0044】
2.断面分析
図4は、本発明の一実施形態によって製造された薄膜トランジスタの断面を示すTEM(transmission electron microscopy)イメージである。
【0045】
図4を参照すると、Al層とZTO層が隣接した部分に酸化アルミニウム(Al)層および結晶化されたZTO層(Crystallized ZTO;c-ZTO)が形成されたことを確認することができる。
【0046】
3.元素分析
図5Aは、TEMのEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を示し、図5Bは、ラインスキャニング(Line scanning)を通じて本発明の一実施形態によって製造された薄膜トランジスタの元素成分を分析した結果を示した図面である。
【0047】
図5Aおよび図5Bを参照すると、酸化アルミニウム(Al)層と隣接している結晶化されたZTO層(c-ZTO)に酸素欠乏層が存在することを確認することができる。金属酸化物半導体層に酸素欠乏層が存在するようになると、電子濃度を増加させて、移動度を増加させることができることと知られている。よって、本発明は、金属酸化物半導体層に酸素欠乏層を含むことにより、高移動度特性を提供することができる。
【0048】
4.薄膜トランジスタ特性
図6は、50μmチャンネル長さ(Lch)を有する薄膜トランジスタ素子に、それぞれ0、15、30、45μmの幅(Lbar)を有するAl金属層を適用した際の図面であり、図6Aは、ゲート電圧(gate voltage)によるドレイン電流(drain currunt)を示し、図6Bは、電界効果移動度(Fleid-Effect Mobility)を示す図面である。
【0049】
図6Aを参照すると、Lbarの大きさが0から45μmに増加した時、ドレイン電流が増加することが示され、図6Bを参照すると、電界効果移動度もLbarの大きさが大きくなるほど増加する傾向を示した。特に、Lbarが45μmの場合、100cm/Vs以上の電界効果移動度を示した。
【0050】
図7は、50μmチャンネル長さ(Lch)を有する薄膜トランジスタ素子にそれぞれ0、15、30、45μmの幅(Lbar)を有するAl金属層を適用した際の図面であり、それぞれ、図7Aは、電界効果移動度、図7Bは、on/off電流比(current ratio)、図7Cは、閾値電圧(Threshold Voltage、Vth)、および図7Dは、閾値電圧以下の急激に小さい勾配(subthreshold slope)の変化を示している。
【0051】
図7Aを参照すると、Lbarの大きさが大きくなるほど電界効果移動度は増加する傾向を示した。一方、それぞれ、図7B、7Cおよび7Dを参照すると、on/off電流比、閾値電圧および閾値電圧以下勾配特性の場合、Al金属層がない場合と類似の特性を示している。
【0052】
5.活性化エネルギー分析
図8は、金属層の長さによる薄膜トランジスタ素子の活性化エネルギーを示す図面である。
図8を参照すると、金属層の長さによって活性化エネルギー減少が確認され、特に、金属層の長さがチャンネル長さに近接するほど活性化エネルギーは減少することが示された。活性化エネルギーの減少は、酸素欠乏層または結晶化層の存在で説明することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野において通常の知識を有する者は、特許請求範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正および変更することができることを理解すべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8