IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水メディカル株式会社の特許一覧

特許7601359血液採取容器、血漿の分離方法、細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法
<>
  • 特許-血液採取容器、血漿の分離方法、細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】血液採取容器、血漿の分離方法、細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01N33/48 K
G01N33/48 D
G01N33/48 J
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023524251
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2022021743
(87)【国際公開番号】W WO2022250142
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021090433
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒井 邦哉
(72)【発明者】
【氏名】内山 嵩也
(72)【発明者】
【氏名】神田 まりか
(72)【発明者】
【氏名】井上 智雅
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-017189(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159236(WO,A1)
【文献】特表2021-500585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液採取容器本体と、
前記血液採取容器本体内に収容された血漿分離材と、
前記血液採取容器本体内に収容された水溶液とを備え、
前記水溶液に含まれる溶質が、抗凝固剤を含み、
前記水溶液における前記溶質の合計濃度が、100mM以上450mM以下であるか、又は、1200mM以上である、血液採取容器。
【請求項2】
前記水溶液における前記溶質の合計濃度が、250mM以上390mM以下であるか、又は、1200mM以上6500mM以下である、請求項1に記載の血液採取容器。
【請求項3】
前記水溶液に含まれる前記溶質が、抗凝固剤以外の第2の溶質を含み、
前記第2の溶質が、無機塩、又は糖類を含む、請求項に記載の血液採取容器。
【請求項4】
前記第2の溶質が、無機塩を含み、
前記無機塩が、ナトリウム塩、又はカリウム塩を含む、請求項3に記載の血液採取容器。
【請求項5】
前記第2の溶質が、糖類を含み、
前記糖類が、グルコース、スクロース、又はトレハロースを含む、請求項に記載の血液採取容器。
【請求項6】
前記抗凝固剤が、EDTA、EDTAの金属塩、ヘパリン、ヘパリンの金属塩又はクエン酸ナトリウムである、請求項1~5のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項7】
所定量の血液が採取される血液採取容器であり、
血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を血液採取容器内に採取して、前記生理食塩水と前記水溶液とが混合された混合液を得たときに、前記混合液の浸透圧が、330mOsm/L以上380mOsm/L以下であるか、又は、440mOsm/L以上1300mOsm/L以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項8】
前記血漿分離材の25℃での比重が1.030以上1.120以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項9】
前記血漿分離材が、血漿分離用組成物である、請求項1~のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項10】
前記血漿分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、
前記有機成分が、樹脂を含み、
前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む、請求項9に記載の血液採取容器。
【請求項11】
前記微粉末シリカが、親水性シリカを含む、請求項10に記載の血液採取容器。
【請求項12】
前記血漿分離用組成物100重量%中、前記親水性シリカの含有量が、0.01重量%以上2.50重量%以下である、請求項11に記載の血液採取容器。
【請求項13】
前記微粉末シリカが、親水性シリカと疎水性シリカとを含む、請求項10に記載の血液採取容器。
【請求項14】
前記血漿分離用組成物の25℃での比重が1.050以上であり、
前記無機微粉末が、前記微粉末シリカよりも比重が大きい無機微粉末を含む、請求項10に記載の血液採取容器。
【請求項15】
前記樹脂が、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、又は(メタ)アクリル系樹脂を含む、請求項10に記載の血液採取容器。
【請求項16】
血液中の細胞外遊離核酸又は細胞外小胞を分離するために用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項17】
請求項1~のいずれか1項に記載の血液採取容器内に血液を採取する工程と、
前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血漿の分離方法。
【請求項18】
請求項1~のいずれか1項に記載の血液採取容器内に血液を採取する工程と、
前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程と、
分離された前記血漿から、細胞外遊離核酸を分離する工程とを備える、細胞外遊離核酸の分離方法。
【請求項19】
請求項1~のいずれか1項に記載の血液採取容器内に血液を採取する工程と、
前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程と、
分離された前記血漿から、細胞外小胞を分離する工程とを備える、細胞外小胞の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液採取容器に関する。また、本発明は、上記血液採取容器を用いた血漿の分離方法、細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査において、血液を採取するために採血管等の血液採取容器が広く用いられている。血漿分離材が収容された血液採取容器に血液を採取した後、血液採取容器を遠心分離することで、血液を血漿と血球とに分離することができる。このとき、血漿は血漿分離材よりも上側に位置し、血球は下側に位置する。血漿分離材が収容された血液採取容器としては、樹脂及び無機粉末等を含む血漿分離用組成物が収容された血液採取容器(例えば、特許文献1)や、血漿分離用冶具が収容された血液採取容器(例えば、特許文献2)が知られている。
【0003】
また、下記の特許文献3には、血液中の細胞外DNAを分離するためのデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2010/053180A1
【文献】WO2010/132783A1
【文献】WO2020/132747A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臨床検査では、血漿を用いた検査が行われている。特許文献1,2に記載のような従来の血液採取容器を用いて血液から血漿を分離した場合には、分離された血漿中に白血球が比較的多く混入していることがある。血漿中に白血球が比較的多く混入していると、検体の保管中に経時的に白血球が破壊されるなどして、白血球中のタンパク質及び核酸等の成分が血漿中に漏れ出て、検査結果に影響を及ぼすことがある。
【0006】
例えば、血漿中の細胞外遊離核酸(例えばcell free DNA)を検出する検査では、白血球から漏れ出た核酸によって、検査結果が大きく変動する。
【0007】
特許文献3に記載のデバイスでは、血漿中への白血球の混入をある程度抑えることができるものの、その効果は十分ではないことがある。そのため、特許文献3に記載のデバイスであっても、検体の保管中に経時的に白血球中の核酸等の成分が血漿中に漏れ出て、検査結果に影響を及ぼすことがある。
【0008】
本発明の目的は、血漿中への白血球及び白血球中の成分の混入を抑えることができる血液採取容器を提供することである。また、本発明は、上記血液採取容器を用いた血漿の分離方法、細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、血液採取容器本体と、前記血液採取容器本体内に収容された血漿分離材と、前記血液採取容器本体内に収容された水溶液とを備え、前記水溶液に含まれる溶質が、抗凝固剤を含み、前記水溶液における前記溶質の合計濃度が、100mM以上450mM以下であるか、又は、1200mM以上である、血液採取容器が提供される。
【0010】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記水溶液における前記溶質の合計濃度が、250mM以上390mM以下であるか、又は、1200mM以上6500mM以下である。
【0011】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記水溶液に含まれる前記溶質が、抗凝固剤以外の第2の溶質を含み、前記第2の溶質が、無機塩、又は糖類を含む。
【0012】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記第2の溶質が、無機塩を含み、前記無機塩が、ナトリウム塩、又はカリウム塩を含む。
【0013】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記第2の溶質が、糖類を含み、前記糖類が、グルコース、スクロース、又はトレハロースを含む。
【0014】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記抗凝固剤が、EDTA、EDTAの金属塩、ヘパリン、ヘパリンの金属塩又はクエン酸ナトリウムである。
【0015】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血液採取容器は、所定量の血液が採取される血液採取容器であり、血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を血液採取容器内に採取して、前記生理食塩水と前記水溶液とが混合された混合液を得たときに、前記混合液の浸透圧が、330mOsm/L以上380mOsm/L以下であるか、又は、440mOsm/L以上1300mOsm/L以下である。
【0016】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血漿分離材の25℃での比重が1.030以上1.120以下である。
【0017】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血漿分離材が、血漿分離用組成物である。
【0018】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血漿分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、前記有機成分が、樹脂を含み、前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む。
【0019】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記微粉末シリカが、親水性シリカを含む。
【0020】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血漿分離用組成物100重量%中、前記親水性シリカの含有量が、0.01重量%以上2.50重量%以下である。
【0021】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記微粉末シリカが、親水性シリカと疎水性シリカとを含む。
【0022】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血漿分離用組成物の25℃での比重が1.050以上であり、前記無機微粉末が、前記微粉末シリカよりも比重が大きい無機微粉末を含む。
【0023】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記樹脂が、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、又は(メタ)アクリル系樹脂を含む。
【0024】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血液採取容器は、血液中の細胞外遊離核酸又は細胞外小胞を分離するために用いられる。
【0025】
本発明の広い局面によれば、上述した血液採取容器内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血漿の分離方法が提供される。
【0026】
本発明の広い局面によれば、上述した血液採取容器内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程と、分離された前記血漿から、細胞外遊離核酸を分離する工程とを備える、細胞外遊離核酸の分離方法が提供される。
【0027】
本発明の広い局面によれば、上述した血液採取容器内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程と、分離された前記血漿から、細胞外小胞を分離する工程とを備える、細胞外小胞の分離方法が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る血液採取容器は、血液採取容器本体と、上記血液採取容器本体内に収容された血漿分離材と、上記血液採取容器本体内に収容された水溶液とを備える。本発明に係る血液採取容器では、上記水溶液に含まれる溶質が、抗凝固剤を含み、上記水溶液における上記溶質の合計濃度が、100mM以上450mM以下であるか、又は、1200mM以上である。本発明に係る血液採取容器では、上記の構成が備えられているので、血漿中への白血球及び白血球中の成分の混入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明に係る血液採取容器は、血液採取容器本体と、上記血液採取容器本体内に収容された血漿分離材と、上記血液採取容器本体内に収容された水溶液とを備える。本発明に係る血液採取容器では、上記水溶液に含まれる溶質が、抗凝固剤を含み、上記水溶液における上記溶質の合計濃度が、100mM以上450mM以下であるか、又は、1200mM以上である。
【0032】
本発明に係る血液採取容器では、上記の構成が備えられているので、血漿中への白血球及び白血球中の成分の混入を抑えることができる。
【0033】
また、本発明に係る血液採取容器では、上記の構成が備えられているので、血漿中への赤血球の混入も抑えることができる。
【0034】
従来の血液採取容器を用いて血液から血漿を分離した場合には、分離された血漿中に白血球が比較的多く混入していることがある。血漿中に白血球が比較的多く混入していると、白血球中の成分が血漿中に漏れ出て、血漿を用いた検査に影響を及ぼすことがある。従来の血液採取容器では、血漿中への白血球の混入及び白血球中の成分の混入を十分に抑えることは困難である。なお、検査結果への影響を抑えるために、血球を安定化させる細胞安定化剤が収容された血液採取容器が用いられることがあるものの、細胞安定化剤は高価であり、また、種類及び濃度によっては人体や環境に害を及ぼす恐れがある。
【0035】
これに対して、本発明に係る血液採取容器では、血漿中への白血球の混入及び白血球中の成分の混入を効果的に抑えることができる。本発明に係る血液採取容器内に血液を採取すると、血液と上記水溶液とが混合されて、血液の浸透圧が大きくなる。そのため、白血球内の水分及び赤血球内の水分が血球外へ移動し、白血球及び赤血球の比重が大きくなる。比重が大きくなった白血球及び赤血球は、血液採取容器を遠心分離することにより、特定の比重を有する血漿分離材よりも下方に良好に移動する。その結果、血漿中への白血球及び赤血球の混入を抑えることができる。なお、採取後の血液の浸透圧が適切ではない場合、血球細胞にストレスがかかり、遠心分離後も血漿に混入している白血球が破損して白血球中の成分が血漿中へ漏出しやすい。これに対して、本発明に係る血液採取容器では、溶質の濃度が適切な範囲であるため、血球細胞へのストレスが抑えられ、血漿中に混入している血球細胞からの内容物の漏出も効果的に抑えることができる。
【0036】
以下、本発明に係る血液採取容器の詳細などを説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味する。
【0037】
(血漿分離材)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体内に収容された血漿分離材を備える。上記血漿分離材として、従来公知の血漿分離材を用いることができる。上記血漿分離材としては、血漿分離用組成物、及び血漿分離用冶具等が挙げられる。血漿分離材の作製が容易であることから、上記血漿分離材は、上記血漿分離用組成物であることが好ましい。
【0038】
上記血漿分離材の25℃での比重は、1.030以上であってもよく、1.040以上であってもよく、1.050以上であってもよく、1.060以上であってもよく、1.060を超えていてもよく、1.070以上であってもよい。上記血漿分離材の25℃での比重は、1.120以下であってもよく、1.100以下であってもよく、1.080以下であってもよく、1.070未満であってもよく、1.060未満であってもよく、1.050未満であってもよく、1.040未満であってもよい。
【0039】
上記血漿分離材の収容箇所は、上記血液採取容器本体内であれば特に限定されない。上記血漿分離材は、上記血液採取容器本体の底部に配置されていてもよく、上記血液採取容器本体の内壁面上に配置されていてもよく、上記血液採取容器本体の側壁面上に配置されていてもよい。
【0040】
<血漿分離用組成物>
上記血漿分離用組成物は、遠心分離時に血漿層と血球層との間に移動して隔壁を形成する組成物である。また、上記血漿分離用組成物は、遠心分離後に血漿層と血球層との間の成分移行を防止する目的で用いられる。上記血漿分離用組成物は、チクソトロピー性を有することが好ましい。上記血漿分離用組成物は、上記血液採取容器本体の底部に収容されていてもよく、上記血液採取容器本体の側壁面上に配置されていてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点から、上記血漿分離用組成物は、上記血液採取容器本体の底部に収容されていることが好ましい。
【0041】
上記血漿分離用組成物として、従来公知の血漿分離用組成物を用いることができる。
【0042】
上記血漿分離用組成物は、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含むことが好ましい。上記25℃で流動性を有する有機成分、及び上記無機微粉末はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
25℃で流動性を有する有機成分:
上記「25℃で流動性を有する」とは、25℃での粘度が500Pa・s以下であることを意味する。
【0044】
上記有機成分の25℃での粘度は、好ましくは30Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上、好ましくは200Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿分離用組成物の流動性が高められ、隔壁の強度を高めることができる。
【0045】
上記有機成分の25℃での粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE-35」)を用いて、25℃及びせん断速度1.0秒-1の条件で測定される。
【0046】
上記有機成分としては、樹脂、及び樹脂と可塑剤等の有機化合物との混合物等が挙げられる。したがって、上記有機成分は、上記樹脂を含むことが好ましく、上記樹脂と上記有機化合物とを含むことがより好ましい。上記有機成分が、上記樹脂と上記有機化合物との混合物である場合に、該混合物(上記有機成分)として流動性を有していればよく、該樹脂又は該有機化合物が流動性を有していなくてもよい。上記有機成分が、上記樹脂と上記有機化合物との混合物である場合に、該樹脂は、例えば、25℃で固体の樹脂であってもよい。上記樹脂及び上記有機化合物はそれぞれ1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記樹脂としては、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、α-オレフィン-フマル酸エステル共重合体、セバシン酸と2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールと1,2-プロパンジオールとの共重合体、ポリエーテルポリウレタン系樹脂、及びポリエーテルポリエステル系樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記樹脂は、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、又は(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
【0049】
上記石油樹脂の市販品としては、イーストマンケミカル社製「リガライトS5090」等が挙げられる。
【0050】
上記シクロペンタジエン系樹脂としては、シクロペンタジエン系モノマーの重合体、シクロペンタジエン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体、及びジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。上記シクロペンタジエン系樹脂は、水素添加されていてもよい。上記シクロペンタジエン系モノマーの重合体及び上記シクロペンタジエン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体は、オリゴマーであってもよい。
【0051】
上記シクロペンタジエン系モノマーとしては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、及びシクロペンタジエンのアルキル置換誘導体等が挙げられる。
【0052】
上記芳香族系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、インデン、及びメチルインデン等が挙げられる。
【0053】
上記ジシクロペンタジエン樹脂の市販品としては、コロン社製「スコレッツSU500」及び「スコレッツSU90」等が挙げられる。
【0054】
上記ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、及びポリアルキレンナフタレート樹脂等が挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0055】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。
【0056】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合することにより得られる樹脂、及び少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体と少なくとも1種の該(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体とを重合することにより得られる樹脂が挙げられる。
【0057】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
上記有機化合物としては、ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体等が挙げられる。上記有機化合物は、ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体であることが好ましい。したがって、上記有機成分は、上記樹脂と、上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体との混合物であることが好ましい。
【0059】
上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、及びピロメリット酸エステル等が挙げられる。上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリn-オクチル、トリメリット酸トリイソオクチル、及びトリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
【0061】
上記ピロメリット酸エステルとしては、ピロメリット酸テトライソオクチル等が挙げられる。
【0062】
上記トリメリット酸エステルの市販品としては、DIC社製「モノサイザーW700」、及び「モノサイザーW-750」、新日本理化社製「サンソサイザーTOTM」及び「サンソサイザーTITM」等が挙げられる。
【0063】
上記ピロメリット酸エステルの市販品としては、DIC社製「モノサイザーW-7010」等が挙げられる。
【0064】
上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、又はピロメリット酸エステルであることが好ましく、トリメリット酸エステルであることがより好ましい。
【0065】
上記血漿分離用組成物100重量%中、上記有機成分の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、好ましくは97重量%以下である。
【0066】
無機微粉末:
上記無機微粉末としては、微粉末シリカ、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、ガラス微粉末、タルク粉末、カオリン粉末、ベントナイト粉末、チタニア粉末、及びジルコニウム粉末等が挙げられる。
【0067】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記無機微粉末は、微粉末シリカを含むことが好ましい。25℃での比重が1.050以上である血漿分離用組成物を得る場合には、上記無機微粉末は、微粉末シリカと、微粉末シリカ以外の無機微粉末(第2の無機微粉末)とを含むことがより好ましい。ただし、血漿分離用組成物の25℃での比重が1.050以上である場合であっても、上記無機微粉末は、上記第2の無機微粉末を含んでいなくてもよい。また、血漿分離用組成物の25℃での比重が1.050未満である場合であっても、上記無機微粉末は、上記第2の無機微粉末を含んでいてもよい。上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
上記微粉末シリカとしては、天然シリカ及び合成シリカが挙げられる。合成シリカとしては、親水性シリカ及び疎水性シリカが挙げられる。親水性シリカは、例えば、粒子表面の水酸基同士が水素結合することにより、血漿分離用組成物にチクソトロピー性を付与すると共に、比重を調整する作用を有する。一方、疎水性シリカは、親水性シリカに比べてチクソトロピー性の付与効果は小さい。
【0069】
血漿分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方を共に好適な範囲に維持する観点からは、上記微粉末シリカは、親水性シリカを含むことが好ましく、親水性シリカと疎水性シリカとを含むことがより好ましい。上記微粉末シリカは、親水性シリカを少なくとも含むことが好ましい。
【0070】
上記第2の無機微粉末は、微粉末シリカよりも比重が大きい無機微粉末であることが好ましく、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末、アルミナ粉末等の比重が3以上である無機微粉末であることがより好ましい。
【0071】
上記第2の無機微粉末の比重は、好ましくは3以上、より好ましくは3.5以上、更に好ましくは4以上である。上記第2の無機微粉末の比重は大きいほどよい。上記比重が上記下限以上であると、血漿分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0072】
上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、特に限定されない。上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、1nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、500nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。
【0073】
上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、体積基準で測定される平均径であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法、画像解析法、コールター法、及び遠心沈降法等により測定可能である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法又は画像解析法による測定により求めることが好ましい。
【0074】
上記微粉末シリカの比表面積は、特に限定されない。上記微粉末シリカの比表面積は、20m/g以上であってもよく、100m/g以上であってもよく、500m/g以下であってもよく、300m/g以下であってもよい。
【0075】
上記微粉末シリカの比表面積は、BET法により測定される。
【0076】
上記血漿分離用組成物100重量%中、上記親水性シリカの含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.10重量%以上、更に好ましくは0.30重量%以上、好ましくは2.50重量%以下、より好ましくは2.00重量%以下である。上記親水性シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方をより一層好適な範囲に維持することができる。
【0077】
上記血漿分離用組成物100重量%中、上記微粉末シリカの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記微粉末シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方をより一層好適な範囲に維持することができる。
【0078】
上記血漿分離用組成物100重量%中、上記第2の無機微粉末の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記第2の無機微粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0079】
上記血漿分離用組成物100重量%中、上記無機微粉末の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記無機微粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0080】
他の成分:
上記血漿分離用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、有機ゲル化剤、熱可塑性エラストマー、ポリアルキレングリコール、シリコーンオイル、補助溶媒、酸化防止剤、着色剤及び水等が挙げられる。上記他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.030以上、より好ましくは1.040以上、好ましくは1.120以下である。上記血漿分離用組成物の25℃での比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0082】
なお、上記血漿分離用組成物の25℃での比重は、1.050以上であってもよく、1.060以上であってもよく、1.060を超えていてもよく、1.070以上であってもよい。上記血漿分離用組成物の25℃での比重は、1.100以下であってもよく、1.080以下であってもよく、1.070未満であってもよく、1.060未満であってもよく、1.050未満であってもよく、1.040未満であってもよい。
【0083】
上記血漿分離用組成物の25℃での比重は、血漿分離用組成物1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により測定される。
【0084】
上記血漿分離用組成物の25℃での粘度は、好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは150Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0085】
上記血漿分離用組成物の25℃での粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE-35」)を用いて、25℃及びせん断速度1.0秒-1の条件で測定される。
【0086】
<血漿分離用冶具>
上記血漿分離用冶具は、遠心分離時に血漿層と血球層との間に移動して隔壁を形成する冶具である。また、上記血漿分離用冶具は、血漿層と血球層との間の成分移行を防止する目的で用いられる。
【0087】
上記血漿分離用冶具として、従来公知の血漿分離用冶具を用いることができる。上記血漿分離用冶具としては、例えば、WO2010/132783A1等に記載の機械的セパレータ(血漿分離用冶具)等が挙げられる。
【0088】
上記血漿分離用冶具の材料としては、例えば、エラストマー等が挙げられる。
【0089】
(水溶液)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体内に収容された水溶液を備える。上記水溶液は、抗凝固剤と、水とを含む。上記水溶液に含まれる溶質は、抗凝固剤を含む。上記水溶液は、抗凝固剤以外の第2の溶質を含むことが好ましい。したがって、上記水溶液は、抗凝固剤(第1の溶質)と、第2の溶質と、水とを含むことが好ましい。上記水溶液に含まれる溶質は、抗凝固剤(第1の溶質)と、第2の溶質とを含むことが好ましい。
【0090】
本発明の効果を発揮する観点から、上記水溶液における上記溶質の合計濃度は、100mM以上450mM以下であるか、又は、1200mM以上である。すなわち、上記水溶液における上記溶質の合計濃度は、100mmol/L以上450mmol/L以下であるか、又は、1200mmol/L以上である。上記溶質の合計濃度は、上記水溶液が溶質として抗凝固剤のみを含む場合には、抗凝固剤の濃度である。上記溶質の合計濃度は、上記水溶液が溶質として抗凝固剤と第2の溶質とを含む場合には、抗凝固剤の濃度と、第2の溶質の濃度との合計である。上記抗凝固剤の濃度は、上記水溶液が抗凝固剤を1種類のみ含む場合には、上記水溶液における該抗凝固剤の濃度であり、上記水溶液が抗凝固剤を2種類以上含む場合には、上記水溶液における抗凝固剤の濃度の合計である。上記第2の溶質の濃度は、上記水溶液が第2の溶質を1種類のみ含む場合には、上記水溶液における該第2の溶質の濃度であり、上記水溶液が第2の溶質を2種類以上含む場合には、上記水溶液における第2の溶質の濃度の合計である。例えば、上記水溶液が、抗凝固剤(X)、第2の溶質(Y)及び第2の溶質(Z)の3種類の溶質を含み、かつそれらの濃度(mM)がそれぞれ、A、B、Cである場合に、上記水溶液における溶質の合計濃度は、(A+B+C)mMである。
【0091】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度は、上記水溶液に含まれる水以外の成分の合計濃度であることが好ましい。
【0092】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度は、100mM以上450mM以下であってもよく、1200mM以上であってもよい。
【0093】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が100mM以上450mM以下である場合に、上記水溶液における上記溶質の合計濃度は、好ましくは250mM以上、より好ましくは300mM以上、好ましくは390mM以下、より好ましくは380mM以下である。上記溶質の合計濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0094】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が1200mM以上である場合に、上記水溶液における上記溶質の合計濃度は、好ましくは1500mM以上、より好ましくは2000mM以上、好ましくは7000mM以下、より好ましくは6500mM以下である。上記溶質の合計濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0095】
<抗凝固剤(第1の溶質)>
上記水溶液は、抗凝固剤を含む。上記抗凝固剤として、従来公知の抗凝固剤を用いることができる。上記抗凝固剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
上記抗凝固剤としては、ヘパリン、ヘパリンの金属塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの金属塩及びクエン酸等が挙げられる。
【0097】
抗凝固性能を良好に発揮させる観点から、上記抗凝固剤は、EDTA、EDTAの金属塩、ヘパリン、ヘパリンの金属塩又はクエン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0098】
上記水溶液における上記抗凝固剤の濃度は、好ましくは2mM以上、より好ましくは5mM以上、更に好ましくは10mM以上、好ましくは2000mM以下、より好ましくは1000mM以下、より一層好ましくは500mM以下、更に好ましくは250mM以下、更により一層好ましくは100mM以下、特に好ましくは50mM以下である。上記抗凝固剤の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、抗凝固性能を良好に発揮させることができる。
【0099】
<第2の溶質>
上記第2の溶質は、上記水溶液に含まれる抗凝固剤以外の溶質である。上記第2の溶質を用いることにより、抗凝固剤の含有量を過度に多くすることなく、血液採取容器内に採取された血液の浸透圧を効果的に大きくすることができる。上記第2の溶質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
上記第2の溶質は、抗凝固剤以外の成分であれば特に限定されない。上記第2の溶質としては、例えば、無機塩、糖類、糖アルコール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(PEG)等が挙げられる。
【0101】
上記無機塩としては、塩化ナトリウム及びリン酸水素ナトリウム等のナトリウム塩、並びに、塩化カリウム及び炭酸水素カリウム等のカリウム塩等が挙げられる。
【0102】
上記糖類としては、単糖類、二糖類及び多糖類等が挙げられる。上記単糖類としては、グルコース、ジヒドロキシアセトン、フルクトース及びガラクトース等が挙げられる。上記二糖類としては、スクロース、トレハロース、マルトース及びラクツロース等が挙げられる。上記多糖類としては、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、メチルセルロース、及びポリスクロース等が挙げられる。
【0103】
上記糖アルコールとしては、D-マンニトール及びD-ソルビトール等が挙げられる。
【0104】
上記第2の溶質は、無機塩、又は糖類を含むことが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0105】
上記無機塩は、ナトリウム塩、又はカリウム塩を含むことが好ましく、塩化ナトリウム、又は塩化カリウムを含むことがより好ましい。この場合には、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0106】
上記糖類は、グルコース、スクロース、又はトレハロースを含むことが好ましい。この場合には、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0107】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が100mM以上450mM以下である場合に、上記水溶液における上記無機塩の濃度は、好ましくは100mM以上、より好ましくは200mM以上、更に好ましくは300mM以上、好ましくは450mM以下、より好ましくは420mM以下、更に好ましくは400mM以下である。上記無機塩の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0108】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が1200mM以上である場合に、上記水溶液における上記無機塩の濃度は、好ましくは400mM以上、より好ましくは500mM以上、更に好ましくは1000mM以上、好ましくは5000mM以下、より好ましくは2000mM以下、更に好ましくは1500mM以下である。上記無機塩の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0109】
上記無機塩の濃度は、上記水溶液が無機塩を1種類のみ含む場合には、上記水溶液における該無機塩の濃度であり、上記水溶液が無機塩を2種類以上含む場合には、上記水溶液における無機塩の濃度の合計である。
【0110】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が100mM以上450mM以下である場合に、上記水溶液における上記糖類の濃度は、好ましくは100mM以上、より好ましくは200mM以上、更に好ましくは300mM以上、好ましくは450mM以下、より好ましくは420mM以下、更に好ましくは400mM以下である。上記糖類の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0111】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が1200mM以上である場合に、上記水溶液における上記糖類の濃度は、好ましくは400mM以上、より好ましくは500mM以上、更に好ましくは1000mM以上、好ましくは5000mM以下、より好ましくは3000mM以下、更に好ましくは2500mM以下である。上記糖類の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0112】
上記糖類の濃度は、上記水溶液が糖類を1種類のみ含む場合には、上記水溶液における該糖類の濃度であり、上記水溶液が糖類を2種類以上含む場合には、上記水溶液における糖類の濃度の合計である。
【0113】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が100mM以上450mM以下である場合に、上記水溶液における上記第2の溶質の濃度は、好ましくは80mM以上、より好ましくは100mM以上、更に好ましくは300mM以上、好ましくは450mM以下、より好ましくは420mM以下、更に好ましくは400mM以下である。上記第2の溶質の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0114】
上記水溶液における上記溶質の合計濃度が1200mM以上である場合に、上記水溶液における上記第2の溶質の濃度は、好ましくは400mM以上、より好ましくは1000mM以上、更に好ましくは2000mM以上、好ましくは7000mM以下、より好ましくは6500mM以下、更に好ましくは6000mM以下である。上記第2の溶質の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。
【0115】
上記血液採取容器本体内に収容されている水溶液の量は、血液採取容器本体のサイズ、及び採取される血液量等により適宜変更される。上記血液採取容器本体内に収容されている水溶液の量は、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.5mL以上、更に好ましくは0.7mL以上、好ましくは5mL以下、より好ましくは3mL以下、更に好ましくは2.5mL以下である。上記水溶液の量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0116】
(血液採取容器本体)
上記血液採取容器本体の形状としては、特に限定されない。上記血液採取容器本体は、有底の管状容器であることが好ましい。
【0117】
上記血液採取容器本体の素材は特に限定されない。上記血液採取容器本体の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ-アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂;ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラス等のガラスが挙げられる。上記血液採取容器本体の素材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0118】
(栓体)
上記血液採取容器は、栓体を備えることが好ましい。上記栓体として、従来公知の栓体を用いることができる。上記栓体は、血液採取容器本体の開口に、気密的かつ液密的に取付けることが可能な素材、形状からなる栓体であることが好ましい。上記栓体は、採血針が刺通され得るように構成されていることが好ましい。
【0119】
上記栓体としては、血液採取容器本体の開口に嵌合する形状を有する栓体、シート状のシール栓体等が挙げられる。
【0120】
また、上記栓体は、ゴム栓等の栓本体と、プラスチック等で構成されたキャップ部材とを備える栓体であってもよい。この場合には、血液採取後に、血液採取容器本体の開口から栓体を引き抜く際に、血液が人体と接触するリスクを抑えることができる。
【0121】
上記栓体(又は上記栓本体)の材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、ゴム、金属箔等が挙げられる。上記ゴムとしては、ブチルゴム、及びハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。上記金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。密封性を高める観点からは、上記栓体の材料は、ブチルゴムであることが好ましい。上記栓体(又は上記栓本体)は、ブチルゴム栓であることが好ましい。
【0122】
(血液採取容器の他の詳細)
上記血液採取容器は、所定量の血液が採取される血液採取容器である。上記血液の上記所定量は、血液採取容器のサイズ及び内圧等により適宜変更される。上記血液の上記所定量は、1mL以上であってもよく、2mL以上であってもよく、4mL以上であってもよく、12mL以下であってもよく、11mL以下であってもよく、10mL以下であってもよい。
【0123】
上記血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を上記血液採取容器内に採取して、上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された混合液を得る。例えば、5mLの血液が採取される血液採取容器では、5mLの生理食塩水を該血液採取容器内に採取して、転倒混和するなどして、上記生理食塩水と上記水溶液とを混合し、混合液を得る。上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された上記混合液の浸透圧は、330mOsm/L以上380mOsm/L以下であるか、又は、440mOsm/L以上であることが好ましい。この場合には、血液採取容器に血液が採取された場合に、白血球及び赤血球の比重を効果的に大きくすることができ、血漿中への白血球及び赤血球の混入をより一層効果的に抑えることができる。また、この場合には、血球細胞への過度なストレスを抑えることができ、血球細胞中の成分の混入をより一層効果的に抑えることができる。
【0124】
上記混合液の浸透圧が330mOsm/L以上380mOsm/L以下である場合に、上記混合液の浸透圧は、好ましくは340mOsm/L以上、より好ましくは350mOsm/L以上、好ましくは375mOsm/L以下、より好ましくは370mOsm/L以下である。上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液採取容器に血液が採取された場合に、白血球及び赤血球の比重を効果的に大きくすることができ、血漿中への白血球及び赤血球の混入をより一層効果的に抑えることができる。また、上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、血球細胞への過度なストレスを抑えることができ、血球細胞中の成分の混入をより一層効果的に抑えることができる。
【0125】
上記混合液の浸透圧が440mOsm/L以上である場合に、上記混合液の浸透圧は、好ましくは450mOsm/L以上、より好ましくは500mOsm/L以上、好ましくは1300mOsm/L以下、より好ましくは1000mOsm/L以下である。上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液採取容器に血液が採取された場合に、白血球及び赤血球の比重を効果的に大きくすることができ、血漿中への白血球及び赤血球の混入をより一層効果的に抑えることができる。また、上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、血球細胞への過度なストレスを抑えることができ、血球細胞中の成分の混入をより一層効果的に抑えることができる。
【0126】
上記混合液の浸透圧は、浸透圧計(例えば、アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定される。
【0127】
上記血液採取容器では、収容されている上記水溶液1mLに対して、血液が3mL以上採取されることが好ましく、4mL以上採取されることがより好ましく、11mL以下採取されることが好ましく、7mL以下採取されることがより好ましい。この場合には、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0128】
上記血液採取容器は、採血管であることが好ましい。上記血液採取容器本体は、採血管本体であることが好ましい。
【0129】
上記血液採取容器は、血液から血漿を分離するために用いられることが好ましい。また、上記血液採取容器は、血液中の細胞外遊離核酸又は細胞外小胞を分離するために用いられることが好ましく、血液中の細胞外遊離核酸又は細胞外小胞を単離するために用いられることが好ましい。
【0130】
上記血液採取容器は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0131】
上記抗凝固剤と上記第2の溶質とを水に溶解して水溶液を得る。得られた水溶液を血液採取容器本体内に添加する。水溶液を添加する前又は添加した後に、血液採取容器本体内に血漿分離材を収容する。
【0132】
図1は、本発明の一実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【0133】
図1に示す血液採取容器1は、血液採取容器本体2と、血漿分離用組成物3と、抗凝固剤及び第2の溶質を含む水溶液4と、栓体5とを備える。血液採取容器本体2は、一端に開口を有し、他端に閉じられている底部を有する。血漿分離用組成物3は、血液採取容器本体2の底部に収容されている。栓体5は、血液採取容器本体2の開口に挿入されている。
【0134】
水溶液4は、血漿分離用組成物3の表面上に配置されており、より具体的には、血漿分離用組成物3の上面(一端側の表面)に配置されている。水溶液4は、血液採取容器1を正立状態としたときに、血漿分離用組成物3の表面上に配置されている。抗凝固剤及び第2の溶質は、水に溶解した状態で、血液採取容器本体2内に収容されている。
【0135】
本発明に係る血液採取容器では、上記血漿分離用組成物が上記血液採取容器本体の側壁面上に配置されており、かつ上記水溶液が、血液採取容器を正立状態としたときに、血液採取容器本体の底部に配置されていてもよい。また、上記血漿分離用組成物の代わりに上記血漿分離用冶具が用いられてもよい。
【0136】
上記血液採取容器の内圧は特に限定されない。上記血液採取容器は、内部が排気された上で、上記栓体によって密閉された真空採血管として用いることもできる。真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液採取を簡便に行うことができる。
【0137】
細菌感染を防止する観点から、血液採取容器の内部はISO又はJISの基準に則って滅菌されていることが好ましい。
【0138】
(血漿の分離方法)
上記血液採取容器を用いて、血液から血漿を分離することができる。本発明に係る血漿の分離方法は、上述した血液採取容器内に血液を採取する工程と、上記血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える。
【0139】
本発明に係る血漿の分離方法では、上記血液を採取する工程と上記遠心分離する工程との間に、採取された血液と、上記水溶液とを混合する工程を備えることが好ましい。採取された血液と上記水溶液とを混合する方法としては、転倒混和等が挙げられる。
【0140】
上記遠心分離する工程における遠心分離条件は、上記血漿分離材により隔壁を形成させて、血漿と血球とを分離させることができる限り、特に限定されない。上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下で遠心分離する条件等が挙げられる。
【0141】
(細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法)
本発明に係る細胞外遊離核酸の分離方法は、上述した血液採取容器内に血液を採取する工程と、上記血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程と、分離された上記血漿から、細胞外遊離核酸を分離する工程とを備える。
【0142】
本発明に係る細胞外小胞の分離方法は、上述した血液採取容器内に血液を採取する工程と、上記血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程と、分離された上記血漿から、細胞外小胞を分離する工程とを備える。
【0143】
本発明に係る細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法では、上記血液を採取する工程と上記遠心分離する工程との間に、採取された血液と、上記水溶液とを混合する工程を備えることが好ましい。採取された血液と上記水溶液とを混合する方法としては、転倒混和等が挙げられる。
【0144】
上記遠心分離する工程における遠心分離条件は、上記血漿分離材により隔壁を形成させて、血漿と血球とを分離させることができる限り、特に限定されない。上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下で遠心分離する条件等が挙げられる。
【0145】
上記細胞外遊離核酸を分離する工程では、従来公知の方法を用いて、血漿から細胞外遊離核酸を分離することができる。上記細胞外遊離核酸としては、cell free DNA(cfDNA)、cell free RNA(cfRNA)等が挙げられる。上記血漿から細胞外遊離核酸を分離する方法としては、市販の核酸精製キットを用いる方法等が挙げられる。市販の核酸精製キットを用いることで、血漿から細胞外遊離核酸を簡便に分離することができる。核酸精製キットの市販品としては、QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit(QIAGEN社)、QIAamp MinElute ccfDNA Kits(QIAGEN社)及びMagMAX Cell-Free DNA Isolation Kit(Applied biosystems社)等が挙げられる。
【0146】
上記細胞外小胞を分離する工程では、従来公知の方法を用いて、血漿から細胞外小胞を分離することができる。
【0147】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0148】
血漿分離用組成物の材料として、以下を用意した。
【0149】
(25℃で流動性を有する有機成分の材料)
(メタ)アクリル系樹脂:
アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、25℃で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得た。
【0150】
その他の樹脂:
石油樹脂(イーストマンケミカル社製「リガライトS5090」)
ジシクロペンタジエン樹脂1(コロン社製「スコレッツSU500」)
ジシクロペンタジエン樹脂2(コロン社製「スコレッツSU90」)
【0151】
有機化合物:
トリメリット酸エステル(ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体、DIC社製「モノサイザーW700」)
【0152】
(無機微粉末)
親水性シリカ(微粉末シリカ、日本アエロジル社製「200CF」)
疎水性シリカ(微粉末シリカ、日本アエロジル社製「R974」)
酸化チタン粉末(第2の無機微粉末、石原産業社製「A-100」)
【0153】
(その他の成分)
シリコーンオイル(東レダウコーニング社製「SF8410」)
有機ゲル化剤(新日本理化社製「ゲルオールD」)
1-メチル-2-ピロリドン(補助溶媒)
【0154】
血漿分離用組成物A,Bの作製:
表1に記載の配合割合で、25℃で流動性を有する有機成分と無機微粉末とその他の成分とを混合し、血漿分離用組成物A,Bを作製した。
【0155】
血漿分離用組成物Cの作製:
表1に記載の25℃で流動性を有する有機成分の材料を配合し、130℃で加熱溶解し、混合して、25℃で流動性を有する有機成分を作製した。次いで、表1に記載の配合割合で、25℃で流動性を有する有機成分と無機微粉末とその他の成分とを混合し、血漿分離用組成物Cを作製した。
【0156】
【表1】
【0157】
得られた血漿分離用組成物1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により比重を測定した。得られた血漿分離用組成物の25℃での比重は表2~4に示した。
【0158】
水溶液の溶質として、以下を用意した。
【0159】
(抗凝固剤)
エチレンジアミン四酢酸二カリウム二水和物(EDTA2K・2HO)
【0160】
(第2の溶質)
塩化カリウム(KCl)
塩化ナトリウム(NaCl)
スクロース
グルコース
プロピレングリコール
ポリエチレングリコール(PEG4000)
【0161】
血液採取容器本体として、以下を用意した。
【0162】
長さ100mm、開口部の内径14mmのPET有底管(ポリエチレンテレフタレート管)
【0163】
(実施例1)
抗凝固剤及び第2の溶質を水に溶解して水溶液を得た。得られた水溶液の配合成分の種類及び濃度を表2に示す。
【0164】
1.2gの血漿分離用組成物Cを、血液採取容器本体の底部に収容した。また、得られた水溶液1mLを血漿分離用組成物Cの表面上に添加した。血液採取容器内部を、血液採取量が5mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして血液採取容器を作製した。
【0165】
(実施例2~7及び比較例2~4)
血漿分離用組成物の種類、及び水溶液の組成を表2~4のように変更した。また、実施例5及び比較例2,3では、血液採取容器内部を、血液採取量が10mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。これら以外は、実施例1と同様にして、血液採取容器を作製した。
【0166】
(比較例1)
抗凝固剤32重量部を、水68重量部に溶解して、混合液を得た。1.2gの血漿分離用組成物Cを、血液採取容器本体の底部に収容した。また、得られた混合液60mgを、血液採取容器本体の内壁面に塗布し、乾燥させた。血液採取容器内部を、血液採取量が10mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして血液採取容器を作製した。
【0167】
(評価)
(1)混合液の浸透圧
実施例1~4,6,7で得られた血液採取容器に生理食塩水5mLを採取した。また、実施例5で得られた血液採取容器に生理食塩水10mLを採取した。生理食塩水を採取した後、転倒混和して、生理食塩水と血液採取容器内に収容された水溶液とを混合し、混合液を得た。得られた混合液の浸透圧を、浸透圧計(アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定した。
【0168】
(2)cfDNAの回収量
3名の血液を使用し、それぞれについて以下の操作を行った。実施例1~4,6,7及び比較例4で得られた血液採取容器を各2本用意し、それぞれに血液5mLを採取した。また、実施例5及び比較例1~3で得られた血液採取容器を各2本用意し、それぞれに血液10mLを採取した。血液を採取した後、転倒混和して、血液と血液採取容器内に収容された水溶液とを混合した。次いで、血液採取容器を1500Gで15分間遠心分離した。遠心分離後、血漿分離用組成物により形成された隔壁よりも上方に血漿が位置していた。
【0169】
血漿分離後の血液採取容器2本のうちの1本については、血液を採取した当日に血液採取容器から血漿を回収した。また、血漿分離後の血液採取容器2本のうちの残りの1本については、血漿が分離された状態の血液採取容器を室温(25℃)で7日間保管した後、血液採取容器から血漿を回収した。
【0170】
cfDNA精製キット(QIAGEN社製「QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit」)を用いて、回収した血漿に含まれるDNAを精製した。なお、DNAの精製操作は、血液採取容器から血漿を回収した日に実施した。
【0171】
精製後の抽出液中のDNA濃度を、Qubit dsDNA HS Assay kit(Invitrogen社)を用いて測定した。次いで、以下の式に従い、cfDNA濃度(血漿1mLあたりに含まれるcfDNAの含量)を算出した。
【0172】
cfDNA濃度(ng/血漿1mL)=[A]×[B]/[C]
【0173】
[A]:精製後の抽出液中のDNA濃度の測定値(ng/mL)
[B]:精製後の抽出液の全量(mL)
[C]:DNA精製に使用した血漿の量(mL)
【0174】
血液採取当日の血漿から回収したcfDNAの濃度の平均値を「cfDNA濃度(採取当日)」とし、7日間保管後の血漿から回収したcfDNAの濃度の平均値を「cfDNA濃度(7日保管)」とした。また、cfDNA濃度(7日保管)とcfDNA濃度(採取当日)との差を「cfDNA濃度の増加量」とした。なお、上記cfDNAの濃度の平均値とは、3名の血液を用いた結果の平均値である。
【0175】
cfDNAの回収量を以下の基準で判定した。なお、血漿中の白血球の混入量が多いほど、また、血漿中の白血球が不安定であるほど、保管中の白血球の破壊に伴ってcfDNA濃度の増加量が大きくなる。したがって、cfDNA濃度の増加量が小さいほど、血漿中への白血球の混入及び白血球中の成分の混入が抑えられている。
【0176】
<cfDNAの回収量の判定基準>
〇〇:cfDNA濃度の増加量が20ng/血漿1mL未満である
○:cfDNA濃度の増加量が20ng/血漿1mL以上100ng/血漿1mL未満である
×:cfDNA濃度の増加量が100ng/血漿1mL以上である
【0177】
構成及び結果を下記の表2~4に示す。なお、表中、抗凝固剤の濃度は、EDTA2K・2HOの濃度ではなく、EDTA2Kの濃度を意味する。
【0178】
【表2】
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
【符号の説明】
【0181】
1…血液採取容器
2…血液採取容器本体
3…血漿分離用組成物
4…水溶液
5…栓体
図1