(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】閲覧支援システム、閲覧支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 15/00 20180101AFI20241210BHJP
G16H 10/60 20180101ALI20241210BHJP
G16H 70/20 20180101ALI20241210BHJP
G06F 16/90 20190101ALI20241210BHJP
【FI】
G16H15/00
G16H10/60
G16H70/20
G06F16/90 100
(21)【出願番号】P 2024114086
(22)【出願日】2024-07-17
【審査請求日】2024-07-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507220361
【氏名又は名称】株式会社オプテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 仁志
(72)【発明者】
【氏名】大原 茂之
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第118098585(CN,A)
【文献】特開2023-035610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06F 16/00-16/958
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療関連情報が表示される情報処理端末と、前記医療関連情報を管理する医療関連情報管理システムと、入力支援システムとがネットワークで接続された閲覧支援システムであって、
前記情報処理端末は、
前記医療関連情報を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記医療関連情報に登録する内容の質問を作成する入力部と、を有し、
前記医療関連情報管理システムは、
前記情報処理端末により入力される、前記医療関連情報を作成するための作成情報を前記入力支援システムに出力し、前記入力支援システムから回答を受付けて、前記医療関連情報の作成を支援する作成支援部を有し、
前記入力支援システムは、
ベクトル化され、ベクトル空間に埋め込まれたナレッジが格納されるベクトルデータベースと、
前記ベクトルデータベースから、ベクトル化された前記作成情報を基に前記ナレッジを検索し、検索された前記ナレッジを成形した前記回答を前記作成支援部に出力するナレッジ検索部と、を有する
閲覧支援システム。
【請求項2】
前記ナレッジ検索部は、前記ベクトルデータベースに格納されるベクトル化された前記ナレッジと、ベクトル化された前記作成情報との類似性に基づいて、前記ベクトル化された前記ナレッジを抽出する
請求項1に記載の閲覧支援システム。
【請求項3】
前記入力支援システムは、
参照情報を読み込み、テキスト又は画像からなるプロンプトに基づいて前記参照情報を要約する大規模言語モデルを備え、
前記ナレッジ検索部は、前記大規模言語モデルにより要約された要約文書を前記医療関連情報管理システムに出力する
請求項2に記載の閲覧支援システム。
【請求項4】
前記作成情報は、前記医療関連情報の作成に用いられる医療関連情報作成表示画面の表示エリアに入力される質問、又は前記医療関連情報作成表示画面で選択された項目に含まれる情報であって、前記回答は、前記要約文書と、前記大規模言語モデルが要約した前記参照情報の参照元の情報とを含む
請求項3に記載の閲覧支援システム。
【請求項5】
前記作成情報は、テキスト、音声、及び画像のうち、少なくとも一つを含む
請求項4に記載の閲覧支援システム。
【請求項6】
前記入力支援システムは、
前記ナレッジをアップデートするナレッジアップデート部と、
アップデートされる前記ナレッジをベクトル化して前記ベクトル空間に埋め込み、ベクトル化された前記ナレッジを前記ベクトルデータベースに格納する埋め込み部と、を備える
請求項5に記載の閲覧支援システム。
【請求項7】
前記入力支援システムは、
前記ナレッジを格納するナレッジデータベースと、
前記ナレッジデータベースに前記ナレッジをアップロードするナレッジアップロード部と、を備える
請求項5又は6に記載の閲覧支援システム。
【請求項8】
医療関連情報を表示する表示部と、前記表示部に表示された前記医療関連情報を編集する入力部と、を有する情報処理端末と、前記医療関連情報を管理する医療関連情報管理システムと、入力支援システムとがネットワークで接続された閲覧支援システムで行われる閲覧支援方法であって、
前記医療関連情報管理システムの作成支援部が、前記情報処理端末により入力される、前記医療関連情報を作成するための作成情報を前記入力支援システムに出力するステップと、
前記入力支援システムが、前記作成情報をベクトル化するステップと、
ベクトル化され、ベクトル空間に埋め込まれたナレッジが格納されるベクトルデータベースから、ベクトル化された前記作成情報を基に前記ナレッジを検索するステップと、
検索された前記ナレッジを成形した回答を前記作成支援部に出力するステップと、
前記作成支援部が、前記入力支援システムから前記回答を受付けて前記医療関連情報の作成を支援するステップと、を含む
閲覧支援方法。
【請求項9】
情報処理端末により入力される、医療関連情報を作成するための作成情報をベクトル化する手順と、
ベクトル化され、ベクトル空間に埋め込まれたナレッジが格納されるベクトルデータベースから、ベクトル化された前記作成情報を基に前記ナレッジを検索する手順と、
検索された前記ナレッジを成形した回答を前記情報処理端末に出力する手順と、を
コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閲覧支援システム、閲覧支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
保険診療においては、歯科診断に対する処置の算定ルールや保険点数が厚生労働省により定義され、定期的な改定が行われている。特に保険点数においては、歯科治療の詰め物等で使用される金の価格変動をレセプトに反映させる必要がある。このために、従来は年2回であったところを3ヶ月毎(年4回)の頻度で改定されるようになった。
【0003】
保険診療を行う保険医や保険医療機関は、保険診療のルールに従って治療を行わなければならない。保険診療のルールは、例えば、厚生労働省が発表する官報に記載されている。
【0004】
特許文献1には、基準となるデータ(基準データ、第1の医療データ)と他のデータ(対象データ、第2の医療データ)との間の整合性を評価することによって、医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、カルテの記載は、個々人の能力に委ねられていた。このため、カルテの不備が頻発する歯科医師にとって、返戻が続くことによるストレスが多かった。上述したように保険診療のルールが頻繁に改訂されているので、カルテのみならずレセプトも、保険診療のルールに則した内容で記載されなければならない。保険医らは治療にまつわる知識や技術の習得のみならず、保険診療のルールを熟知すること、そして知識をアップデートすることが常に求められる。
【0007】
しかし、保険診療のルールは膨大であり、記載内容も難解である。このため、保険医にとって、頻繁に行われる知識のアップデートのサイクルに追従することは極めて困難である。保険医が、誤ったレセプトを作成してしまうと、返戻となり、あまりに返戻が多い医療機関では個別指導という形で監査が入ることになる。保険診療の経験が少ない歯科医師は、このような事態をつかめないまま診療を続けていかなければならない。一般に歯科大学等の教育機関で学生に教えられる内容は、主に診断方法や治療方法であった。このため、歯科医師は、カルテの書き方やレセプト請求について教育機関で十分な教育を受けることが殆ど無く、卒業後に臨床の現場に立って初めて直面することが殆どであった。
【0008】
上述した特許文献1には、例えば、電子カルテへの記入漏れを検知するサポート技術が記載されているが、保険診療のルールに従って電子カルテを記載することのサポート技術については記載されていない。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、医療関連情報の作成をサポートすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る閲覧支援システムは、医療関連情報が表示される情報処理端末と、医療関連情報を管理する医療関連情報管理システムと、入力支援システムとがネットワークで接続される。情報処理端末は、医療関連情報を表示する表示部と、表示部に表示された医療関連情報に登録する内容の質問を作成する入力部と、を有する。医療関連情報管理システムは、情報処理端末により入力される、医療関連情報を作成するための作成情報を入力支援システムに出力し、入力支援システムから回答を受付けて、医療関連情報の作成を支援する作成支援部を有する。入力支援システムは、ベクトル化され、ベクトル空間に埋め込まれたナレッジが格納されるベクトルデータベースと、ベクトルデータベースから、ベクトル化された作成情報を基にナレッジを検索し、検索されたナレッジを成形した回答を作成支援部に出力するナレッジ検索部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、医療関連情報の作成をサポートすることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る閲覧支援システムの全体構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るカルテ管理システムシステムで用いられるデータ及び情報のデータ構造の例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るカルテDBのデータ構造の例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るRAGシステムの内部構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るナレッジDBの構成例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るベクトルDBの構成例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るプロンプトDBの構成例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る計算機のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る電子カルテ作成表示画面の第1の表示例を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る電子カルテ作成表示画面の第2の表示例を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係るRAGシステムにおけるナレッジの追加処理の例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係るRAGシステムにおけるナレッジの更新処理の例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第1の実施形態に係る電子カルテの作成処理の例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係るRAGシステムによるナレッジの検索処理の例を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る閲覧支援システムの全体構成例を示す機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
<閲覧支援システムの全体構成例>
始めに、第1の実施形態に係る閲覧支援システムの構成例及び処理例について、
図1~
図14を参照して説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係る閲覧支援システム1の全体構成例を示す機能ブロック図である。閲覧支援システム1を使用する歯科医院のスタッフは、例えば、歯科医師、歯科衛生士、受付の担当者等が想定される。
【0016】
図2は、カルテ管理システム3で用いられるデータ及び情報のデータ構造の例を示す図である。以下、閲覧支援システム1の説明と併せて、
図2を参照して、カルテ管理システム3で用いられるデータ及び情報についても説明する。
【0017】
閲覧支援システム1は、歯科医院等の医療機関、及び医療系の大学で用いられる情報処理端末10、サービス会社で運用されるレセプト管理システム2、カルテ管理システム3、及びRAG(Retrieval-Augmented Generation)システム4を主要な構成とする。情報処理端末10と、レセプト管理システム2、カルテ管理システム3は、ネットワークで接続され、暗号化及びVPN(Virtual Private Network)等のセキュアな通信方式により、データを安全に送受信することが可能になっている。なお、レセプト管理システム2、カルテ管理システム3と、RAGシステム4は、サービス会社の社内LAN等で接続されている。
【0018】
第1の実施形態に係る閲覧支援システム1は、サービス会社によって歯科医院に提供されるクラウド型のカルテ管理システム3に、カルテ管理機能とRAGを用いた入力支援機能を実装する。したがって、以下に説明するカルテは、カルテ管理システム3のカルテ管理機能を用いて電子化された「電子カルテ」であり、この電子カルテは、患者に対する処置と保険点数が書かれた保険カルテである。
【0019】
歯科医院のスタッフは、各自の情報処理端末10を用いてカルテ管理システム3の認証画面にユーザーID、パスワード等を入力することで、カルテ管理システム3にアクセスする。その後、スタッフは、カルテDB33を閲覧し、電子カルテを作成する。
【0020】
RAGシステム4は、スタッフに回答を提示し入力を支援する入力支援システムの一例である。例えば、スタッフが電子カルテを作成する時には、RAGシステム4による入力支援を可能とする。
図1に示す閲覧支援システム1の形態であれば、歯科医院は、個別にサーバ等を用意する必要がないので、初期コストを大幅に低減することができる。
【0021】
(歯科医院のスタッフ)
情報処理端末10は、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、スマートフォン又はタブレット等の情報処理端末の一例である。情報処理端末10は、インターネットを介してレセプト管理システム2及びカルテ管理システム3に接続され、レセプト及びカルテ(電子カルテ)を含む医療関連情報を表示する。
レセプト管理システム2及びカルテ管理システム3は、医療関連情報を管理する医療関連情報管理システムの一例である。情報処理端末10は、スタッフの操作により、レセプト管理システム2、カルテ管理システム3及びRAGシステム4から提供される各種の画面を表示し、スタッフによる各種の情報入力を受付ける。このため、情報処理端末10は、医療関連情報を表示する表示部11と、表示部11に表示された医療関連情報に登録する内容の質問を作成する入力部12を備える。
【0022】
例えば、歯科医院では、歯科医師が患者の歯科診療を行い、診療内容及び診療報酬を情報処理端末10に入力する。また、歯科医院では、歯科衛生士が情報処理端末10を操作して、画面に表示されるカルテやレセプトを参照する場合がある。医療系の大学では、教授又は医療学生等が情報処理端末10を操作して、必要な情報を取得することがある。
【0023】
スタッフが情報処理端末10を操作してレセプト管理システム2にアクセスする場合、レセプト管理システム2から提供される機能に基づいて、不図示のレセプト入力画面を表示部11のWebブラウザに表示する。また、情報処理端末10は、カルテ管理システム3にアクセスして、後述する
図9と
図10に示す電子カルテ作成表示画面W1を表示部11のWebブラウザに表示することもできる。
【0024】
また、歯科医院のスタッフは、入力部12を操作して、表示部11に表示された各種の画面に語句を入力し、カルテ作成及びレセプト作成を行う。カルテ作成の作業により作成された保険カルテは電子化されたものであるため、「電子カルテ」と呼ぶ。入力部12から入力された語句は、語句の入力欄の情報と共に、レセプト管理システム2に送信される。
【0025】
また、情報処理端末10は、カルテ管理システム3にアクセスする場合、カルテ管理システム3から提供される機能に基づいて、電子カルテの表示画面を表示部11のWebブラウザに表示する。電子カルテには、Webブラウザ又は専用のアプリケーションにより、ページ内の語句をコピー&ペースト可能な実際の書籍のレイアウトに合わせたフィックス型で表示される。また、歯科医院のスタッフは、文字サイズを任意の大きさに変更可能なリフロー型の表示、横組み又は縦組みの表示等に切替えることができる。
【0026】
また、歯科医院のスタッフは、表示された電子カルテに対して重要箇所にマーカーを引いたり、ページに索引用のインデックスを作成したり、電子カルテをPDF(Portable Document Format)化したりすることができる。なお、電子カルテは、1ページずつめくって情報処理端末10に表示される他、複数のページを連続してめくって表示されることもある。
【0027】
電子カルテには、例えば、「病名」「処置名(又は治療名)」の他に、「患者の主訴(うずくように痛い箇所がある等)」、「歯科医師等のスタッフの所見(患部を指で押すと出血がある等)」などが記録される。例えば、電子カルテには、患者の主訴やスタッフの所見等のキーワードが病名の傾向として記載される。
【0028】
(レセプト管理システム)
歯科医院のスタッフが情報処理端末10を通じてレセプト入力欄に入力した情報は、
図2に示す診療データd1としてレセプト管理システム2に送信される。レセプト管理システム2は、レセプト管理部21及びレセプトDB(Data Base)22を備える。
【0029】
レセプト管理部21は、情報処理端末10から入力される診療に関わるデータ、及びレセプトの発行に関わるデータを管理する。レセプト管理部21は、診療に関わるデータの入力画面を、情報処理端末10に出力する。また、レセプト管理部21は、情報処理端末10に表示するための情報(html(Hyper Text Markup Language)ファイル、xml(Extensible Markup Language)ファイル、画像ファイル等)を情報処理端末10に出力する。
情報処理端末10のWebブラウザは、レセプト入力画面を表示する。また、レセプト管理部21は、レセプトの発行を管理するプログラムにより、電子カルテ入力画面の他、診療に関わるデータを入力するための画面を情報処理端末10の表示部11に表示する。
【0030】
レセプト管理部21には、診療データd1が情報処理端末10から入力される。診療データd1は、電子カルテに記入されたデータ、及びレセプトを作成するためのデータである。レセプト管理部21は、情報処理端末10から診療データd1を取り込み、レセプトDB22に保存する。
【0031】
レセプトDB22には、後述する
図2に示す診療ログデータ、及び医療機関基本情報が保存される。レセプト管理部21は、レセプトDB22から取得したデータに基づいて、レセプトを作成する。例えば、レセプトDB22には、患者毎、及び医療内容毎に作成される診療ログデータ及びレセプトデータが格納される。歯科医院のスタッフは、定期的に情報処理端末10を操作してレセプトを印刷する。例えば、スタッフは、レセプト管理システム2から読み出されたレセプトデータが表示された状態で、情報処理端末10の画面内に表示される印刷ボタンを押すことで、用紙に印刷されたレセプトを出力する。この印刷されたレセプトは、不図示の審査処理機関に提出される。
【0032】
図2に示すように、診療データd1には、日時、使用者ID、使用者氏名が格納される。日時の項目には、歯科医院のスタッフが情報処理端末10を使用してレセプトを入力した日時が格納される。
使用者IDの項目には、情報処理端末10の使用者としてのスタッフを一意に特定する使用者IDが格納される。
使用者氏名の項目には、使用者IDに紐付けられた使用者、すなわち歯科医院のスタッフの名前が格納される。
レセプト情報の項目には、使用者によって入力されたレセプト情報が格納される。
【0033】
(診療ログデータの構成)
前述のように、レセプト管理システム2のレセプトDB22には、
図2に示す診療ログデータが格納される。診療ログデータの各項目には、日時、医療従事者ID、患者氏名、カルテへの記載イベントが含まれる。
日時の項目には、歯科医院のスタッフが電子カルテを記入した日時が格納される。
医療従事者IDの項目には、スタッフを特定するために割り当てられる医療従事者IDが格納される。
【0034】
患者氏名の項目には、患者の氏名が格納される。
カルテへの記載イベントの項目には、歯科医院のスタッフが電子カルテに記入したイベントの情報が格納される。電子カルテに記入されるイベントには、スタッフが電子カルテを参照したページ又は語句の情報を電子カルテに引用した場合の引用内容(病名・処置名・摘要文など)、引用日時、引用者(医療従事者ID)、引用回数などが含まれる。
【0035】
(医療機関基本情報の構成)
また、レセプトDB22には、
図2に示す医療機関基本情報が登録されている。医療機関基本情報は、サービス会社も把握している情報である。医療機関基本情報の各項目には、院名、住所、電話番号、HP(Home Page)のURL(Uniform Resource Locator)、医療従事者情報が格納される。
【0036】
院名の項目には、歯科医院(又は病院)の名称が格納される。
住所の項目には、歯科医院(又は病院)の住所が格納される。
電話番号の項目には、歯科医院(又は病院)の電話番号が格納される。
HPのURLの項目には、歯科医院(又は病院)が管理するHPのURLが格納される。
医療従事者情報の項目には、歯科医院(又は病院)に勤務する医療従事者の情報が格納される。医療従事者の情報には、例えば、医療従事者の出身大学等の情報が含まれる。
【0037】
(サービス会社)
サービス会社は、閲覧支援システム1の全体を管理する他、カルテ管理システム3を用いて、電子カルテに記録される情報の入力を支援するサービスを歯科医院のスタッフに提供する。通常、電子カルテを閲覧可能なスタッフには、例えば、その電子カルテを作成したスタッフが勤務する歯科医院の他のスタッフも含まれる。
【0038】
カルテ管理システム3は、歯科医院のスタッフによる情報処理端末10の操作により、カルテDB33から読み出した電子カルテを、情報処理端末10の表示部11に表示させる。歯科医院のスタッフは、カルテ管理システム3に接続された情報処理端末10を操作して電子カルテを任意のページで開いて、治療内容に該当するページを参照して患者の電子カルテ又はレセプトを作成する。また、歯科医院のスタッフは、電子カルテから選択した語句をレセプト入力欄にコピー&ペーストしたり、入力欄にコメントを記入したりすることもできる。
【0039】
カルテ管理システム3は、カルテ管理部31、参照管理部32、カルテDB33、及び参照ログDB34を備える。
カルテ管理部31は、電子カルテの情報を管理する。また、カルテ管理部31は、情報処理端末10により入力される、医療関連情報を作成するための作成情報をRAGシステム4に出力する。そして、カルテ管理部31は、RAGシステム4から回答を受付けて、医療関連情報の作成を支援する。すなわち、カルテ管理部31は、スタッフによる医療関連情報の作成を支援する作成支援部の一例であるということができる。
【0040】
医療関連情報を作成するための作成情報には、その作成に用いられる医療関連情報作成表示画面(後述する
図9と
図10を参照)の表示エリアに入力される質問が含まれる。また、この作成情報には、医療関連情報作成表示画面において、歯科医院のスタッフにより選択された項目に関する情報も含まれる。
例えば、スタッフが電子カルテ又はレセプトを作成するための質問、要約文書の作成指示等が作成情報に該当する。この作成情報は、テキスト、音声、及び画像のうち、少なくとも一つを含む。また、回答は、要約文書と、LLM45が要約した参照情報の参照元の情報(例えば、参照情報のページ番号、章タイトル等)とを含む。
【0041】
カルテ管理部31は、歯科医院のスタッフによる電子カルテへの入力を受付け、電子カルテを表示する画面を情報処理端末10の表示部11に出力する。カルテ管理部31は、RAGシステム4により作成が支援された電子カルテを管理する。電子カルテは、ナレッジ検索部44がLLM45に作成情報(後述するプロンプト)を入力してRAGシステム4から得られた情報に基づいて生成される。
【0042】
RAGシステム4は、過去の電子カルテ、官報等を読み込んでベクトル化したテキスト及び画像をベクトル空間にマッピングする埋め込み処理を行う。また、RAGシステム4は、大規模言語モデル(LLM:Large language Models)を用いて、入力内容に適した情報を出力する。RAGシステム4の詳細な構成例は後述する
図4に示すこととし、ここでは簡単な説明に留める。
【0043】
RAGシステム4は、後述する
図4に示すLLM45(大規模言語モデルの一例)を備える。LLM45は、サービス会社以外で提供されるサービスを利用してもよい。LLM45は、テキスト生成AI(Artificial Intelligence)の一つであり、膨大な量のテキストデータを学習した言語モデルである。LLM45は、高度な自然言語処理タスク(テキスト生成、翻訳、要約、質問応答など)を実行する能力を持つ。また、LLM45は、Transformerの仕組みを利用して、歯科医院のスタッフが入力した作成情報(例えば、質問)に従って、適切な回答を出力することができる。作成情報は、スタッフが明示的に入力するテキストだけでなく、画面に表示された情報から自動的に抽出されたテキスト又は画像であってもよい。
【0044】
参照管理部32は、情報処理端末10から受信したコマンドに従って、参照ログDB34から参照ログデータd2(
図2参照)等のデータを収集し、レセプト管理システム2のレセプトDB22に渡す。レセプト管理部21は、レセプトDB22に保存されている歯科医院毎あるいは歯科医院のスタッフ毎にレセプトデータを管理する。
【0045】
図2に示す参照ログデータd2には、歯科医院のスタッフが情報処理端末10を操作して電子カルテ作成時又はレセプト入力時に参照した電子カルテの参照履歴の情報が含まれる。参照ログデータd2は、カルテ管理システム3の参照ログDB34に保存される。
【0046】
参照ログデータd2は、スタッフが参照した電子カルテの種類、電子カルテの版(作成日付等)、電子カルテの滞留時間等を保存したデータである。参照管理部32は、入力部12から指定された版の電子カルテをカルテDB33から読み出して、情報処理端末10の表示部11に表示させる。また、歯科医院のスタッフがレセプト入力時に、電子カルテを参照して行った操作(例えば、特定項目のコピー&ペースト)も、参照ログデータd2として参照ログDB34に保存される。
【0047】
(参照ログデータの構成)
参照ログDB34には、
図2に示す参照ログデータd2が格納される。
参照ログデータd2には、カルテID、書籍名、バージョン、索引、ページ情報、参照ページが格納される。
カルテIDの項目には、情報処理端末10で閲覧される電子カルテを一意に特定するカルテIDが格納される。
書籍名の項目には、カルテIDに紐付けられた電子カルテの名称が書籍名として格納される。
バージョンの項目には、電子カルテのバージョン(作成日付等)が格納される。
ページ情報の項目には、電子カルテのページ数等のページ情報が格納される。
【0048】
また、参照ログDB34には、参照ログデータd2として、一点鎖線で示されるレセプトID、返戻情報が格納されてもよい。
レセプトIDの項目には、審査処理機関に提出されるレセプトを識別するためのレセプトIDが格納される。レセプトIDは、スタッフによるレセプト作成時にレセプトごとに付与される一意の識別情報である。
返戻情報の項目には、審査処理機関に提出されたレセプトが返戻されたか否かを示す返戻フラグ、返戻時に審査処理機関から修正が指摘された語句及び箇所等を含む返戻情報が格納される。
【0049】
図3は、カルテDB33のデータ構造の例を示す図である。
カルテDB33は、患者ID、書籍ID、日付、部位、病名、処置の各項目を有する。
患者ID項目には、患者を一意に識別する患者IDが格納される。
書籍ID項目には、書籍化された電子カルテを一意に識別する書籍IDが格納される。
日付項目には、電子カルテの作成日又は更新日が格納される。
【0050】
部位項目には、治療された部位の情報が格納される。
病名項目には、患者の病名の情報が格納される。
処置項目には、患者に行われた処置の情報が格納される。
【0051】
なお、初診の患者には、電子カルテが新規作成されるので、電子カルテの作成日が日付項目に格納される。再診の患者には、既に存在する患者IDの電子カルテに追記されるので、カルテDB33には新たにレコードが追加され、そのレコードに再診の治療内容が格納される。
【0052】
<RAGシステムの内部構成例>
図4は、RAGシステム4の内部構成例を示すブロック図である。ここでは、カルテ管理システム3とRAGシステム4との連携について説明する。
【0053】
まず、RAGについて説明する。RAGは、生成モデル(通常はテキスト生成モデル)に情報検索の能力を組み合わせた技術であり、主に検索エンジン(Retriever)と生成モデル(Generator)とで構成される。検索エンジンは、ユーザーの入力(クエリ)に基づいて、関連する文書や情報をデータベースから検索する機能を持つ。このため、検索エンジンは、ユーザーのクエリとデータベース内の文書をベクトル空間に埋め込む埋め込みモデルを使って、類似度計算を行ってクエリに関連する文書を検索する。一方、生成モデルは、検索エンジンにより検索された情報を基に、ユーザーに対する応答やテキストを生成する。このため、生成モデルは、検索エンジンで検索された文書の内容を、人間が認識しやすい言語表現に変換した応答を生成する。
【0054】
RAGシステム4は、ナレッジアップロード部41、ナレッジアップデート部42、埋め込み部43、ナレッジ検索部44、LLM45、ナレッジデータベース(ナレッジDB51)、ベクトルデータベース(ベクトルDB52)、及びプロンプトデータベース(プロンプトDB53)を備える。
【0055】
カルテ管理システム3に対して、ナレッジアップロード部41、ナレッジアップデート部42及びナレッジ検索部44がそれぞれ接続される。
ナレッジアップロード部41は、ナレッジDB51に接続され、カルテ管理システム3から取得したナレッジをナレッジDB51にアップロードする。ナレッジには、例えば、厚生労働省により発刊された官報、レセプトの記載要綱、過去の電子カルテ等が含まれる。ナレッジアップロード部41がアップロードしたナレッジは、ナレッジDB51に格納される。
【0056】
ナレッジアップデート部42には、埋め込み部43及びナレッジDB51が接続される。ナレッジアップデート部42は、ナレッジDB51に格納されているナレッジをアップデートする。そして、ナレッジアップデート部42は、カルテ管理システム3によってアップデートが指示されたナレッジをナレッジDB51から取得し、埋め込み部43に取得したナレッジを出力する。
【0057】
埋め込み部43は、埋め込みモデルを使って、ナレッジアップデート部42から入力されるナレッジをベクトル化して高次元のベクトル空間に埋め込む。ナレッジの埋め込み処理には、テキストや画像等のデータをベクトル空間にマッピングする技術が用いられる。
埋め込み部43は、ナレッジをトークンに分割するトークン化を行った後、トークンのベクトル化、クエリ全体のベクトル表現の生成を行う。
【0058】
クエリ全体のベクトル表現は、クエリ内のトークンベクトルを適切な方法(平均プーリング、最大プーリングなど)で統合して得られる。埋め込み部43における埋め込み処理により、テキストの単語や文、文書全体が数値ベクトルに変換され、意味的に類似した単語や文書がベクトル空間内で近くに配置される。この数値ベクトルを用いることで、異なるテキストの類似性計算やクラスタリングなどの機械学習タスクが容易になる。そして、埋め込み部43は、ベクトル化したナレッジをベクトルDB52に格納する。
【0059】
ベクトルDB52には、ベクトル化されてベクトル空間に埋め込まれたナレッジが格納される。このため、ベクトルDB52は、ベクトル探索に特化したデータベースとして構築される。ベクトルDB52には、ナレッジDB51に保存されるファイルを複数のチャンクに分割した一まとまりのチャンク(例えば、テキスト)と、ベクトル表現されたチャンクの情報等が保存される。
【0060】
ベクトル空間に埋め込まれたテキストは、例えば、行列形式でベクトルDB52に保存される。行列の各行は、個々のテキストのベクトルを表し、列はベクトルの次元を表す。また、ベクトルは、浮動小数点数の数値配列、又はバイナリ形式で保存されることもある。ベクトルは、ベクトル自身に対応するテキスト、テキストの記載元である文書の文書ID、発行日時等と共にベクトルDB52に保存されることで、検索性が向上する。
【0061】
ナレッジ検索部44は、カルテ管理システム3、埋め込み部43、LLM45、ベクトルDB52及びプロンプトDB53に接続される。ナレッジ検索部44は、ベクトルDB52から、ベクトル化された作成情報を基にナレッジを検索し、検索されたナレッジを成形した回答をカルテ管理部31に出力する。
【0062】
そして、ナレッジ検索部44は、カルテ管理システム3から入力される質問(クエリ)を受け取ると、質問をトークンに分割するトークン化を行った後、トークンをベクトル化することで、質問をベクトル化する。その後、ナレッジ検索部44は、ベクトルDB52に格納されるベクトル化されたナレッジと、ベクトル化された作成情報(クエリベクトル)との類似性に基づいて、ベクトル化されたナレッジを抽出する。この時、ナレッジ検索部44は、ベクトルDB52に格納されている1レコードを抽出することになる。
【0063】
ナレッジ検索において、ナレッジ検索部44は、クエリベクトルとデータベース内の各ベクトルとの類似度を計算する。ベクトルの類似性は、例えば、コサイン類似度又はユークリッド距離が用いられる。コサイン類似度は、二つのベクトル間の角度の余弦を計算する方法であり、値は-1から1までの範囲を取る。1に近いほどベクトルは類似していると判断される。ユークリッド距離は、二つのベクトル間の直線距離を計算する方法であり、値が小さいほどベクトルは類似していると判断される。
【0064】
埋め込み部43は、質問のテキストをベクトル空間に埋め込み、質問の回答となるベクトルをベクトルDB52から検索する。そして、埋め込み部43は、最も類似性が高いベクトルを確信度の高い回答とする。埋め込み部43は、ベクトルDB52から検索したベクトルに対応するテキストを検索結果としてナレッジ検索部44に返す。
【0065】
また、ナレッジ検索部44は、ベクトル検索によって見つかったナレッジのテキスト等をLLM45に出力する。LLM45には、ナレッジ検索部44から入力されるナレッジのテキスト等と、通常文字とで構成された質問(プロンプト)が入力される。そして、LLM45は、プロンプトに基づいて自然な文章を生成し、プロンプトに基づく回答を生成することができる。また、LLM45は、予め参照情報を読み込み、テキスト又は画像からなるプロンプトに基づいて参照情報を要約する。例えば、LLM45は、予め読み込んだ官報、厚生労働省のHPの情報等の参照情報に含まれる長文のテキストを要約し、重要な情報を抽出することができる。
【0066】
また、LLM45は、ある言語のテキストを他の言語に翻訳したり、テキストをカテゴリに分類したりすることもできる。RAGシステム4は、LLM45を利用することで、LLM45のテキスト生成能力を活用して、検索された情報を基にして文脈に合った応答をスタッフに返すことができる。これにより、RAGシステム4は、カルテ管理システム3に対話機能を持たせることが可能となる。また、ナレッジ検索部44は、LLM45により要約された要約文書をカルテ管理システム3に出力することができる。
【0067】
プロンプトDB53からプロンプトを選択する主体として、以下に説明する第1~第3の形態が想定される。
第1の形態は、ナレッジ検索部44が固定のプロンプトIDを指定することで、指定したプロンプトIDに相当するプロンプトをプロンプトDB53から取得して動作させる形態である。
【0068】
第2の形態は、第1の形態の派生形である。例えば、ナレッジ検索部44がプロンプトDB53から取得したプロンプトの一覧を画面に表示し、歯科医院のスタッフが任意のプロンプトを選択できるように実装した形態である。
【0069】
第3の形態は、図中に一点鎖線で示すようにLLM45とプロンプトDB53を接続した形態である。すなわち、第3の形態は、LLM45がプロンプトDB53を直接参照する形態である。この第3の形態では、歯科医院のスタッフが、入力した質問を処理するために最適なプロンプトを検索する。そして、LLM45は、検索したプロンプトを用いて、要約作成等の処理を実行する。
【0070】
次に、ナレッジDB51、ベクトルDB52、プロンプトDB53の構成例について、
図5~
図7を参照して説明する。
図5は、ナレッジDB51の構成例(データ構造)を示す図である。ナレッジDB51は、文書ID、ファイル名、ファイル種別、BLOB(Binary Large OBject)の各項目を有する。
文書ID項目には、ナレッジを文書として識別可能な文書IDが格納される。なお、文書としては、電子カルテの作成に際して参照可能な各種の印刷物の情報が含まれる。
【0071】
ファイル名項目には、上記の各種の印刷物のファイル名が含まれる。例えば、PDF形式のカルテ事例集、保険改訂集、メモ等がある。他にもテキスト形式、文書ファイル形式、プレゼンテーションファイル形式で保存されたファイルのファイル名も含まれる。
ファイル種別項目には、各種の印刷物のファイルのファイル種別(例えば、拡張子)が含まれる。
BLOB項目には、ファイルを書籍化したデータ、すなわちBLOBデータが格納される。BLOBデータには、テキストデータ、又は画像データのバイナリデータが含まれる。
【0072】
図6は、ベクトルDB52の構成例(データ構造)を示す図である。ベクトルDB52は、文書ID、チャンクID、テキスト、ベクトル、ファイル名、文字位置、ページの各項目を有する。
文書ID項目には、文書IDが格納される。この文書IDは、ナレッジDB51に格納される文書IDと同じである。
チャンクID項目には、文書を所定の文字数で分割したチャンクを識別するチャンクIDが格納される。同じ文書IDに対して、複数のチャンクIDが含まれることがある。例えば、文書IDが「1」の文書に対してチャンクIDが「1」~「4」が含まれる。
【0073】
テキスト項目には、文書からチャンクとして分割されたテキストが格納される。チャンクは、例えば、500文字の固まりであり、元の文書から自動的に分割される。ただし、連続するチャンクIDで識別されるチャンクは、文脈が切れる可能性が高い。このため、連続するチャンクは、互いに一部の文字が重なるように元の文書から分割される。
【0074】
例えば、チャンクIDが「1」のチャンクは、”カルテ事例集”の0~499文字目のテキストであり、チャンクIDが「2」のチャンクは、チャンクIDが「1」のチャンクの分割終了文字位置から50文字分戻った位置から分割が開始される449~948文字目のテキストである。
なお、文脈を明確にするため、例えば、直前にチャンクとして区切った分割終了文字位置から遡って、最初に句点が現れるまでの文章を、次のチャンクとして区切る分割開始文字位置としてもよい。あるいは、見出しと本文ごとの文章が一つのチャンクとして分割されてもよい。
【0075】
ベクトル項目には、チャンクごとに算出されたベクトルが格納される。チャンクに含まれる文字に基づいて、最小単位の意味毎にトークン化され、トークンがベクトル空間に埋め込まれることで、トークンの数値ベクトルが算出される。
各トークンの数値ベクトルが組み合わされることで算出されたチャンクのベクトルがベクトル項目に格納される。このような処理により、高次元のベクトル空間においてチャンク毎に意味を保持したベクトルが得られる。
【0076】
ファイル名項目には、テキストの格納元であるファイルのファイル名が格納される。
文字位置項目には、元の文書から分割されたチャンクの文字位置として、分割開始文字位置と分割終了文字位置とが格納される。例えば、チャンクIDが「1」のチャンクの文字位置は、分割開始文字位置「0」、分割終了文字位置「499」である。
ページ項目には、チャンクが含まれていたファイル内のページ数が格納される。
【0077】
図7は、プロンプトDB53の構成例(データ構造)を示す図である。プロンプトDB53は、ID、プロンプトの各項目を有する。
【0078】
ID項目には、プロンプトを識別するプロンプトIDが格納される。
プロンプト項目には、LLM45に入力されるプロンプトが格納される。プロンプトは、歯科医院のスタッフがカルテ管理システム3を通じてRAGシステム4に入力する命令文である。例えば、ID1のプロンプトは、以下のような内容になっている。プロンプト中の「あなた」とはLLM45を指す。
「あなたはRAGのための日本語AIアシスタントで、フレンドリーな口調で会話をします。ユーザーからの質問に対して次のナレッジが見つかりました。
{“テキスト” :(”カルテ事例集”の0~499文字目のテキスト)}
ユーザーに対して上記のナレッジが見つかったことを説明するとともに、要約も合わせて回答して下さい。」
【0079】
<情報処理端末10及び各サーバのハードウェア構成例>
次に、閲覧支援システム1の情報処理端末10、レセプト管理システム2、カルテ管理システム3及びRAGシステム4を構成する計算機100のハードウェア構成を説明する。
図8は、計算機100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0080】
計算機100は、本実施形態に係る情報処理端末10、レセプト管理システム2、カルテ管理システム3及びRAGシステム4として動作可能なコンピュータとして用いられるハードウェアの一例である。
計算機100は、バス104にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、及びRAM(Random Access Memory)103を備える。さらに、計算機100は、表示装置105、入力装置106、不揮発性ストレージ107及びネットワークインターフェイス108を備える。
【0081】
CPU101は、本実施形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM102から読み出してRAM103にロードし、実行する。RAM103には、CPU101の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がCPU101によって適宜読み出される。ただし、CPU101に代えてMPU(Micro Processing Unit)を用いてもよい。レセプト管理システム2、カルテ管理システム3及びRAGシステム4の各機能は、CPU101の動作によって実現される。
【0082】
表示装置105は、例えば、液晶ディスプレイモニターであり、計算機100で行われる処理の結果等をスタッフに表示する。入力装置106には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、スタッフが所定の操作入力、指示を行うことが可能である。情報処理端末10の表示部11、入力部12の機能は、表示装置105及び入力装置106により実現される。また、カルテ管理システム3に接続される不図示のPCの表示部及び入力部の機能についても、表示装置105及び入力装置106により実現される。RAGシステム4は、表示装置105及び入力装置106を備えなくてもよい。
【0083】
不揮発性ストレージ107としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ又は不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージ107には、OS(Operating System)、各種のパラメーターの他に、計算機100を機能させるためのプログラムが記録されている。
【0084】
ROM102及び不揮発性ストレージ107は、CPU101が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録しており、計算機100によって実行されるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。レセプト管理システム2、カルテ管理システム3及びRAGシステム4の各データは、不揮発性ストレージ107に保存される。
【0085】
ネットワークインターフェイス108には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、NICの端子に接続されたLAN、専用線等を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。
【0086】
[画面の表示例]
次に、情報処理端末10に表示される画面の表示例について、
図9と
図10を参照して説明する。以下の画面は、いずれも情報処理端末10にインストールされた汎用のWebブラウザに表示される。
【0087】
<電子カルテ作成表示画面の第1の表示例>
図9は、電子カルテ作成表示画面W1の第1の表示例を示す図である。電子カルテ作成表示画面W1の表示機能は、カルテ管理部31により実現される。電子カルテ作成表示画面W1は、チャットタイプのRAGを搭載したカルテ管理システム3で用いられる。この電子カルテ作成表示画面W1は、口腔情報表示エリアW1a、カルテ情報表示エリアW1b、チャットボット表示エリアW1dを有する。
【0088】
口腔情報表示エリアW1aには、患者の口腔内の模式図が表示される。口腔内の模式図には、患者の歯の並びと、歯の状態が示される。
カルテ情報表示エリアW1bには、電子カルテに記載される内容がカルテ情報として表示される。カルテ情報には、診察日付の他、患者に行われた処置の内容が含まれる。また、カルテ情報表示エリアW1bには、PDFボタンW1cが表示される。
【0089】
歯科医院のスタッフは、PDFボタンW1cを押す操作により、カルテ情報をPDF化する指示を入力する。PDF化されたカルテ情報は、ナレッジアップロード部41によりナレッジDB51にアップロードされ、埋め込み部43によりベクトル化される。そしてベクトル化されたカルテ情報がベクトルDB52に格納される。このため、過去のカルテ情報を基にしたナレッジ検索が可能となる。
【0090】
チャットボット表示エリアW1dには、ロボットの画像で表される回答チャットと、スタッフが質問を入力する質問チャットとが表示される。最初は、回答チャットに、「何かお困りですか?」と表示される。スタッフが質問チャットに「クラウン・ブリッジ維持管理料の対象となる歯冠補綴は?」と入力すると、回答チャットは、「ナレッジ内に該当するものがあるかを探してみます。」と表示される。
【0091】
なお、スタッフがカルテ情報表示エリアW1bに表示される「クラウン・ブリッジ維持管理費(Br5歯以下)」の項目をクリックすると、質問チャットには自動的に「クラウン・ブリッジ維持管理料の対象となる歯冠補綴は?」と入力されるようにしてもよい。その後、回答チャットには、「クラウン・ブリッジ維持管理の対象となる補綴物には、以下のものが含まれます。1.…、2.…」のように項目分けされた要約が表示する。この回答は、埋め込み部43がベクトル化した質問に基づいて、ベクトルDB52から検索した結果から、LLM45が要約した説明である。
【0092】
また、回答チャットには、回答の根拠となったファイル名と、ファイル内の該当箇所とが表示される。例えば、回答チャットには、「令和6年度保険改定.pdf M015-2に掲げるCAD/CAM冠を…です。25ページ目」のように、記載内容と記載ページが共に表示される。回答の根拠としては、ファイル名の他に、ファイルにアクセス可能なURLを含むリンク情報であってもよい。また、回答チャットには、回答の確信度が高い順に複数の回答が表示されてもよく、スタッフが任意の回答を選択することもできる。
【0093】
なお、チャットボット表示エリアW1dの最下部に示すように、スタッフがキーボード操作又は音声により「クラウン・ブリッジ維持管理料の対象となる歯冠補綴は?」と入力した情報が表示されてもよい。また、「クラウン・ブリッジ維持管理料」の略称である「クラブリ」だけが質問チャットに入力され、表示されてもよい。このような質問であっても、スタッフが送信ボタンを押すことで、後述する
図13と
図14に示すナレッジ検索処理が実行される。その後、質問のテキストがカルテ管理システム3を経てRAGシステム4に送られ、回答を得ることができる。
【0094】
<電子カルテ作成表示画面の第2の表示例>
図10は、電子カルテ作成表示画面W2の第1の表示例を示す図である。電子カルテ作成表示画面W2の表示機能は、カルテ管理部31により実現される。電子カルテ作成表示画面W2は、入力を自動検知するタイプのRAGを搭載したカルテ管理システム3で用いられる。この電子カルテ作成表示画面W2は、入力情報表示エリアW2a、ナレッジ表示エリアW2bを有する。
【0095】
入力情報表示エリアW2aには、電子カルテへの入力項目が表示される。例えば、スタッフが「クラウン・ブリッジ維持管理料(Br5歯以下)」の項目を選択すると、この項目が強調表示される。
【0096】
ナレッジ表示エリアW2bには、入力情報表示エリアW2aで選択された項目に関連するナレッジが自動検索された結果が表示される。例えば、スタッフが選択中の処置名、病名、又はコメントなどがカルテ管理システム3側で自動的に検索ワードとして採用される。この検索ワードに関連するナレッジは、常にナレッジ表示エリアW2bに表示される。このため、スタッフが、自ら調べる行為にかかる時間や手間を削減しつつ、診療や患者とのコミュニケーションの充足が可能となる。
【0097】
なお、RAGシステム4による検索対象は、テキストだけに限らない。例えば、カルテ管理システム3は、定期的に入力情報表示エリアW2aのスクリーンショットを撮影しておく。カルテ管理システム3は、撮影された画像をマルチモーダルに対応したRAGシステム4に入力することで、撮影された画像に対応する情報を検索し、ナレッジ表示エリアW2bに表示することもできる。この場合、常に入力情報表示エリアW2aに表示されているナレッジに関連する情報がナレッジ表示エリアW2bに表示される。
【0098】
[カルテ管理システムとRAGシステムの動作例]
次に、本実施形態に係るカルテ管理システム3とRAGシステム4の動作例の概要について、
図11~
図14を参照して説明する。以下の説明では、
図1に示したカルテ管理システム3及びRAGシステム4と、
図4に示したRAGシステム4の内部構成例を適宜参照する。
【0099】
始めに、RAGシステム4におけるナレッジの追加と更新の処理の例について、
図11と
図12を参照して説明する。これらの処理は、サービス会社が歯科医院にサービスを提供する前に行われるが、サービス提供後においても、任意のタイミングで行われる。また、これらの処理の実施主体は、サービス会社の担当者だけでなく、カルテ管理システム3を利用する歯科医院のスタッフであってもよい。
【0100】
図11は、RAGシステム4におけるナレッジの追加処理の例を示すフローチャートである。
始めに、ナレッジアップロード部41は、ナレッジDB51にアップロードするファイルを選択する(S1)。次に、ナレッジアップロード部41は、選択したファイルのファイル名と同じファイル名のファイルがナレッジDB51に保存されているかを確認する(S2)。
【0101】
同じファイル名のファイルがナレッジDB51に保存されていない場合(S2のNO)、ナレッジアップロード部41は、選択したファイルをナレッジDB51にアップロードし(S3)、本処理を終了する。
【0102】
一方、同じファイル名のファイルがナレッジDB51に保存されている場合(S2のYES)、ナレッジアップロード部41は、ナレッジを追加することなく、本処理を終了する。ただし、同じファイル名であってもバージョンが異なる場合、ナレッジアップロード部41は、異なるバージョンのファイルをナレッジDB51にアップロードした後、本処理を終了するようにしてもよい。
【0103】
図12は、RAGシステム4におけるナレッジの更新処理の例を示すフローチャートである。
始めに、ナレッジアップデート部42は、ナレッジDB51からアップデート対象であるナレッジを含むデータを取得する(S11)。次に、埋め込み部43は、埋め込みモデルを使って、データをベクトル化する(S12)。このベクトル化の処理には、例えば、文書をチャンクに分割する処理、チャンク内の語句をトークン化する処理、トークンをベクトル化する処理等が含まれる。
【0104】
次に、埋め込み部43は、ベクトル化したデータをベクトルDB52に格納する(S13)。そして、ナレッジアップデート部42は、ナレッジDB51から取得した全てのデータにより、ベクトルDB52に格納されるベクトル化されたナレッジを更新したか否かを判断する(S14)。
【0105】
全てのデータによりベクトル化されたナレッジを更新していなければ(S14のNO)、ステップS11に戻って処理を繰り返す。一方、全てのデータによりベクトル化されたナレッジを更新していれば(S14のYES)、本処理を終了する。
【0106】
次に、スタッフが電子カルテを作成する時における閲覧支援システム1の処理の例について、
図13と
図14を参照して説明する。
図13は、電子カルテの作成処理の例を示すフローチャートである。情報処理端末10における操作は、スタッフがカルテ管理システム3にアクセスして表示されるWeb画面を通じて行われる。このため、情報処理端末10における各操作は、カルテ管理システム3の各機能部により実行される。
【0107】
歯科医院のスタッフは、情報処理端末10の入力部12を操作して電子カルテの作成を開始すると、カルテ管理部31は、作成済みの電子カルテがカルテDB33に保存されているか否かを判定する(S21)。この判定は、患者が初診又は再診のいずれであるかによって判定される。歯科医院のスタッフは、患者が持っている診察券に記載された患者番号を情報処理端末10に入力することで、カルテDB33に患者番号が登録されているかを確認する。
【0108】
作成済みの電子カルテがカルテDB33に保存されている場合(S21のYES)、カルテ管理部31は、カルテDB33から作成済みの電子カルテを取得し(S22)、表示部11に表示する。この電子カルテは、電子カルテ作成表示画面W1(
図9を参照)又はW2(
図10を参照)に表示される。
【0109】
一方、ステップS21で作成済みの電子カルテがカルテDB33に保存されてない場合(S21のNO)には、電子カルテを新規に作成する(S23)
【0110】
歯科医院のスタッフは、電子カルテを確認しながら、必要事項を入力する。スタッフは、不明な項目があれば、その項目を選択し、質問チャットに質問を入力する。この選択された項目がプロンプト(テキスト又は画像)としてカルテ管理システム3に入力される(S24)。カルテ管理部31は、入力されたプロンプトをRAGシステム4に出力する(S25)。RAGシステム4は、カルテ管理システム3から入力されたプロンプトを基にナレッジの検索処理を行う(S26)。
【0111】
ここで、RAGシステム4で行われるナレッジの検索処理について、
図14を参照して説明する。
図14は、RAGシステム4によるナレッジの検索処理の例を示すフローチャートである。
図4に示したナレッジ検索部44は、カルテ管理システム3から入力されたプロンプトを受け取ると、このプロンプトを検索クエリとして埋め込み部43に入力する(S31)。上述したように、プロンプトには、テキストまたは画像が含まれる。
【0112】
次に、埋め込み部43は、埋め込みモデルを使って、検索クエリをベクトル化する(S32)。そして、埋め込み部43は、ベクトル化した検索クエリと類似性が高いナレッジをベクトルDB52から取得する(S33)。
【0113】
次に、埋め込み部43は、ベクトルDB52からナレッジを取得できたか否かを判定する(S34)。ステップS34で、ベクトルDB52からナレッジを取得できなかった場合(S34のNO)、埋め込み部43は、本処理を終了して、
図13のステップS27に進む。
【0114】
一方、ステップS34で、ベクトルDB52からナレッジを取得できた場合(S34のYES)、埋め込み部43は、LLM45にナレッジを渡す。LLM45は、ナレッジを基に、プロンプトDB53から任意のプロンプトを取得する(S35)。
【0115】
次に、検索クエリ、ナレッジ、及びプロンプトをLLM45に入力する(S36)。そして、LLM45は、プロンプトに従って、検索結果の説明と、ナレッジの要約を生成し(S37)、
図13のステップS27に進む。
【0116】
図13の説明に戻る。
カルテ管理部31は、RAGシステム4から、検索結果の説明と、ナレッジの要約を含む回答を取得する(S27)。カルテ管理部31は、取得した回答を、画面W1,W2に表示する。次に、カルテ管理部31は、電子カルテに回答を反映してカルテDB33に電子カルテを保存し(S28)、本処理を終了する。
【0117】
なお、歯科医院のスタッフは、入力部12を操作してプロンプトを書き込む代わりに、音声入力を用いてもよい。例えば、マイクロフォンを介してスタッフと患者との会話を取り込んだ入力部12が、音声入力された音声情報をテキスト変換したテキスト情報がプロンプトとしてRAGシステム4に出力されてもよい。音声入力を用いることで、スタッフは、情報処理端末10を持つ必要がなく、患者の対応に集中することができる。
【0118】
以上説明した第1の実施形態に係る閲覧支援システム1では、スタッフが専用のサーバを用意しなくても、情報処理端末10を用意するだけで、レセプト管理機能、及びカルテ管理機能を利用することができる。カルテ管理機能には、RAGシステム4を用いた回答支援機能が組み込まれており、スタッフが電子カルテの作成に際して、何らかの入力を行う度に、この入力に関連する情報が表示される。したがって、歯科医院のスタッフは、表示部11に表示された情報を参照しながら電子カルテを正しい書式で作成することができる。
【0119】
また、歯科医院のスタッフが電子カルテの作成に際して、質問を入力すると、この質問に対する回答が表示される。回答は、LLM45が元の長い文書(参照情報)を要約したものであるため、スタッフが理解しやすい。また、回答の元になる文書の参照元の情報も表示されるので、スタッフがより詳しい情報を確認したい時に、文書の参照元の情報に直ちにあたることができる。
【0120】
また、サービス会社がカルテ管理システム3を管理しており、歯科医院にサーバ等を設置しなくてよい。このため、閲覧支援システム1の導入に要するサーバ等の導入費用、及び継続費用を抑えることができる。また、情報処理端末10は、特定の場所に設置する必要はない。
【0121】
例えば、歯科医院のスタッフは、歯科医院の外に持ち出した情報処理端末10(例えば、ノートPC、タブレット端末)を使って、インターネットを介してレセプト管理システム2及びカルテ管理システム3にアクセスすることもできる。このため、歯科医院のスタッフは、電子カルテ及びレセプトの入力状況を確認することが容易になり、電子カルテの内容を確認することも容易となる。
【0122】
歯科医院のスタッフが入力した質問に対する回答は、LLM45等のAI技術を用いて生成される。この回答には、例えば、検索結果の説明と、ナレッジの要約とが含まれるので、スタッフが難解な文書を理解しやすくなる。
【0123】
また、新しい文書が刊行されるとナレッジがアップロードされる。また、文書が改訂されると、ナレッジが改訂される。このため、RAGシステム4は、最新のナレッジに基づく回答をカルテ管理システム3に出力し、電子カルテに回答を反映させることができる。
【0124】
上述した第1の実施形態では、カルテ管理システム3とRAGシステム4との連携について説明したが、レセプト管理システム2とRAGシステム4も同様に連携される。例えば、
図9と
図10に示した画面W1、W2と同様のレセプト作成表示画面が表示部11に表示される。このため、レセプト管理システム2の使用時に表示される画面で、スタッフが不明な項目を指定することで、RAGシステム4から得られた回答が表示部11に表示される。また、レセプトの記載要綱が書かれた文書から適切な内容の要約が表示される。このため、スタッフが作成したレセプトが正確になり、返戻の可能性を低くすることができる。
【0125】
また、上述した第1の実施形態に係るRAGシステム4からナレッジアップロード部41とナレッジDB51を除いた形態としてもよい。この場合、カルテシステム3のカルテ管理部31がRAGシステム4に送った文書(ナレッジ)は、ナレッジアップデート部42により、埋め込み部43に送られる。埋め込み部43は、文書(ナレッジ)をベクトル化し、ベクトル化したナレッジをベクトルDB52に格納する。このような構成であっても、ナレッジ検索部44は、ベクトルDB52内にあるチャンク化されたテキストを画面W1,W2に表示できるので、スタッフは、チャンク化されたテキストを確認することが可能である。
【0126】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る閲覧支援システムの構成例について、
図15を参照して説明する。
図15は、第2の実施形態に係る閲覧支援システム1Aの全体構成例を示す機能構成図である。閲覧支援システム1Aは、オフライン状態でも電子カルテの生成と、RAGによる回答支援が可能である。
【0127】
閲覧支援システム1Aは、歯科医院ごとに情報処理端末10とカルテコンピュータ6を備える。カルテコンピュータ6は、カルテ管理システム60及びRAGシステム70を備える。カルテ管理システム60は、カルテ管理部61、参照管理部62、カルテDB63、参照ログDB64及びレセプトDB65を備える。
【0128】
カルテ管理部61及び参照管理部62の各機能は、第1の実施形態に係るカルテ管理部31及び参照管理部32と同様である。このため、オフライン状態で、カルテ管理部61が電子カルテを生成し、電子カルテを管理できる。
【0129】
カルテDB63は、カルテコンピュータ6で作成される電子カルテの情報を格納する。
電子カルテの情報は、患者の個人情報が含まれるので、カルテコンピュータ6内に留まる。カルテコンピュータ6からレセプト管理システム2に対して診療データd1が送信され、レセプトDB22に診療データd1が登録される。また、カルテコンピュータ6からカルテ管理システム3に対して参照ログデータd2が送信され、参照ログDB34に参照ログデータd2が登録される。
【0130】
カルテDB63、参照ログDB64及びレセプトDB65のデータ構成は、カルテDB33、参照ログDB34、及びレセプトDB22のデータ構成と同様である。
RAGシステム70の内部は、
図4に示したRAGシステム4と同様に構成される。RAGシステム70は、歯科医院内に設けられ、個人情報等のデータを歯科医院の外部に出力する必要がない。
【0131】
カルテコンピュータ6に構築される各DBのデータは、スタッフが参照可能な情報に限られる。スタッフは、カルテコンピュータ6がオフライン状態であっても、情報処理端末10を操作して、カルテコンピュータ6内の各DBに記録された情報を閲覧することができる。また、カルテコンピュータ6の各DBに書き込まれた情報のうち、カルテDB63以外の情報は、定期的にレセプト管理システム2及びカルテ管理システム3が備える各DBと同期されて利用される。
【0132】
以上説明した第2の実施形態に係る閲覧支援システム1Aでは、カルテコンピュータ6が備える各DBの情報が、レセプト管理システム2及びカルテ管理システム3が備える各DBの情報と同期されている。このため、カルテコンピュータ6がオフライン状態になったとしても、スタッフは、カルテコンピュータ6の各DBに記録されている情報を確認することができる。
【0133】
[変形例]
なお、上述した各実施形態では、歯科診療における診療記録(電子カルテ)やレセプト作成について説明したが、医師、看護師、理学療法士、柔道整復師等の診療に対する診療記録(電子カルテ)やレセプト等の作成時にも本発明を適用することが可能である。例えば、歯科だけでなく、医科、薬科、動物医療といった診療科であっても、各科のスタッフが電子カルテを確認することが可能となる。
【0134】
また、LLM45が電子カルテを要約したデータを、この電子カルテに記録された患者に提供してもよい。患者は、要約したデータを確認することで自身の治療内容を確認することができる。また、患者が他の歯科医院に罹る場合には、要約したデータを持ちこむことで、以前に罹っていた歯科医院からの継続した治療を受けることもできる。
【0135】
本発明は上述した各実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1,1A…閲覧支援システム、2…レセプト管理システム、3…カルテ管理システム、4…RAGシステム、10…情報処理端末、11…表示部、12…入力部、21…レセプト管理部、31…カルテ管理部、41…ナレッジアップロード部、42…ナレッジアップデート部、43…埋め込み部、44…ナレッジ検索部、45…LLM
【要約】
【課題】医療関連情報の記載を正確に行えるようにするための閲覧支援システムを提供する。
【解決手段】閲覧支援システム1が備える情報処理端末10は、表示部11に表示された電子カルテに登録する内容の質問を作成する入力部12を有する。カルテ管理システム3は、情報処理端末10により入力される、電子カルテを作成するための作成情報をRAGシステム4に出力し、RAGシステム4から回答を受付けて、電子カルテの作成を支援するカルテ管理部31を有する。RAGシステム4は、ベクトル化され、ベクトル空間に埋め込まれたナレッジが格納されるベクトルDB52と、ベクトルDB52から、ベクトル化された作成情報を基にナレッジを検索し、検索されたナレッジを成形した回答をカルテ管理部31に出力するナレッジ検索部44を有する。
【選択図】
図1