(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ドメインスイッチング素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241210BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241210BHJP
H10B 51/00 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L29/78 617T
H01L29/78 617U
H01L29/78 627G
H10B51/00
(21)【出願番号】P 2020159660
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0117483
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】許 鎭盛
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲尚▼▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】李 潤姓
(72)【発明者】
【氏名】趙 常▲ヒュン▼
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102797(JP,A)
【文献】米国特許第08476155(US,B1)
【文献】国際公開第2009/128133(WO,A1)
【文献】特表2017-518639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0365719(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0284540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H10B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル領域と、
前記チャネル領域に連結されたソース及びドレインと、
前記チャネル領域と離隔されるように配置されたゲート電極と、
前記チャネル領域と前記ゲート電極との間に配置された反強誘電層と、
前記ゲート電極と前記反強誘電層との間に、前記反強誘電層と接するように配置された伝導層と、
前記反強誘電層と前記チャネル領域との間に配置されたバリア層と、を含
み、
前記伝導層の熱膨脹係数は、前記反強誘電層の熱膨脹係数より小さく、
前記反強誘電層は、前記反強誘電層に印加される引張り応力に基づいて反強誘電性を示す、ドメインスイッチング素子。
【請求項2】
前記反強誘電層は、前記伝導層と隣接した少なくとも一部領域が結晶化された、請求項1に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項3】
前記反強誘電層は、前記伝導層との界面領域において、ZrOの比率が50%以上である、請求項1または2に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項4】
前記伝導層は、面抵抗が1MΩ/squareより小さい物質からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項5】
前記伝導層の熱膨脹係数は、Moの熱膨脹係数より大きい、請求項
1から4のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項6】
前記伝導層は、窒化金属、酸窒化金属、RuO、MoOまたはWOを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項7】
前記バリア層は、前記反強誘電層の降伏電圧より大きい降伏電圧を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項8】
前記バリア層は、SiO、AlO、HfO、ZrO、LaO、YO、MgOのうち少なくとも一つを含むか、あるいはSiO、AlO、HfO、ZrO、LaO、YO、MgOのうちいずれか一つにドーパントがドーピングされた物質、または二次元絶縁体を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項9】
前記バリア層と前記チャネル領域との間に配置された誘電体層をさらに含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項10】
前記誘電体層は、前記バリア層と異なる物質からなる、請求項
9に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項11】
前記バリア層の誘電定数が前記誘電体層の誘電定数より大きい、請求項
9または
10に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項12】
前記誘電体層は、SiO、AlO、HfO、ZrO、または二次元絶縁体を含む、請求項
9から
11のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項13】
前記反強誘電層は、HfO、ZrO、SiO、AlO、CeO、YO及びLaOのうち少なくとも一つを含む、請求項1から
12のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項14】
前記反強誘電層は、ドーパントをさらに含み、
前記ドーパントは、Si、Al、Zr、Y、La、Gd、Sr、Hf、Ceのうち少なくとも一つを含む、請求項
13に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項15】
前記チャネル領域は、Si、Ge、SiGe、III-V族半導体、酸化物半導体、窒化物半導体、酸窒化物半導体、二次元物質、量子ドット、遷移金属ジカルコゲナイド及び有機半導体のうち少なくとも一つを含む、請求項1から
14のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子。
【請求項16】
チャネル領域を含む基板を設ける段階と、
前記チャネル領域上に、バリア層、ドメインスイッチング層及び伝導層を含む積層構造を形成する段階と、
前記積層構造上に電極物質層を形成する段階と、
前記ドメインスイッチング層に反強誘電性を誘導する段階と、を含む、
請求項1に記載のドメインスイッチング素子製造方法。
【請求項17】
前記ドメインスイッチング層は、HfO、ZrO、SiO、AlO、CeO、YO、LaOのうち少なくとも一つを含む、請求項
16に記載のドメインスイッチング素子製造方法。
【請求項18】
前記伝導層は、窒化金属、酸窒化金属、RuO、MoOまたはWOを含む、請求項
16または
17に記載のドメインスイッチング素子製造方法。
【請求項19】
前記誘導する段階は、
前記伝導層と隣接した前記ドメインスイッチング層の少なくとも一部領域を結晶化する段階を含む、請求項
16から
18のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子製造方法。
【請求項20】
前記誘導する段階は、
前記伝導層により、前記ドメインスイッチング層に引張り応力が印加されるようにする段階を含む、請求項
16から
19のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子製造方法。
【請求項21】
前記誘導する段階は、
前記積層構造を熱処理する段階を含む、請求項
16から
20のいずれか一項に記載のドメインスイッチング素子製造方法。
【請求項22】
前記熱処理する段階は、
前記積層構造を形成する段階後、前記電極物質層を形成する以前に行われ、及び/または
前記電極物質層を形成する段階後に行われる、請求項
21に記載のドメインスイッチング素子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドメインスイッチング素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存シリコン基盤のトランジスタは、動作特性の改善及びスケールダウン(scaling down)に限界がある。
【0003】
ナノ製造技術の発達により、トランジスタ素子の大きさをさらに小さく製造することが可能になっているが、トランジスタ稼動に必要な最小限の電圧は、電子のボルツマン分布(Boltzmann distribution)によって限界がある。例えば、既存シリコン基盤のトランジスタにおいて、動作電圧と動作電流の特性を測定すれば、サブスレショルドスイング(SS:subthreshold swing)値は、下記数式1のように与えられるが、該SS値は、約60mV/decが限界であると知られている。
【0004】
【0005】
ここで、kBは、ボルツマン定数(Boltzmann constant)であり、Tは、絶対温度(absolute temperature)であり、qは、基本電荷(elementary charge)であり、CDは、空乏層(depletion layer)のキャパシタンスであり、Cinsは、ゲート絶縁体(gate insulator)のキャパシタンスである。
【0006】
トランジスタのサイズが小さくなるにつれ、動作電圧を約0.8V以下に下げ難い要因により、パワー密度(power density)は、増大することになる。従って、素子の分布密度を高める場合、発熱による故障の原因になり、素子のスケールダウンに限界がある。
【0007】
サブスレショルドスイング(SS)のような動作特性を改善することができ、スケールダウンに有利であり、制御効率を高めることができる素子の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、動作電圧が低いドメインスイッチング素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一類型によれば、チャネル領域と、前記チャネル領域に連結されたソース及びドレインと、前記チャネル領域と離隔されるように配置されたゲート電極と、前記チャネル領域と前記ゲート電極との間に配置された反強誘電(anti-ferroelectric)層と、前記ゲート電極と前記反強誘電層との間に、前記反強誘電層と接するように配置された伝導層と、前記反強誘電層と前記チャネル領域との間に配置されたバリア層と、を含むドメインスイッチング素子が提供される。
【0010】
前記反強誘電層は、前記伝導層と隣接した少なくとも一部領域が結晶化され得る。
前記反強誘電層は、前記伝導層との界面領域において、ZrOの比率が50%以上でもある。
【0011】
前記伝導層は、面抵抗が1MΩ/squareより小さい物質によってもなる。
前記伝導層の熱膨脹係数は、前記反強誘電層の熱膨脹係数よりも小さい。
前記伝導層の熱膨脹係数は、Moの熱膨脹係数よりも大きくなる。
【0012】
前記伝導層は、窒化金属(metal nitride)、酸窒化金属(metal oxynitride)、RuO、MoOまたはWOを含んでもよい。
【0013】
前記バリア層は、前記反強誘電層の降伏電圧(breakdown voltage)より大きい降伏電圧を有することができる。
【0014】
前記バリア層は、SiO、AlO、HfO、ZrO、LaO、YO、MgOのうちいずれか一つを含むか、あるいはSiO、AlO、HfO、ZrO、LaO、YO、MgOの中でいずれか一つにドーパントがドーピングされた物質、または二次元絶縁体(2D insulator)を含んでもよい。
【0015】
前記ドメインスイッチング素子は、前記バリア層と前記チャネル領域との間に配置された誘電体層をさらに含んでもよい。
【0016】
前記誘電体層は、前記バリア層と異なる物質によってもなる。
前記バリア層の誘電定数が前記誘電体層の誘電定数よりも大きくなる。
【0017】
前記誘電体層は、SiO、AlO、HfO、ZrO、または二次元絶縁体を含んでもよい。
【0018】
前記反強誘電層は、HfO、ZrO、SiO、AlO、CeO、YO、LaOのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0019】
前記反強誘電層は、ドーパントをさらに含んでもよく、前記ドーパントは、Si、Al、Zr、Y、La、Gd、Sr、Hf及びCeのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0020】
前記チャネル領域は、Si、Ge、SiGe、III-V族半導体、酸化物半導体、窒化物半導体、酸窒化物半導体、二次元物質(2D material)、量子点、遷移金属ジカルコゲナイド及び有機半導体のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0021】
また、一類型によれば、チャネル領域を含む基板を設ける段階と、前記チャネル領域上に、バリア層、ドメインスイッチング層及び伝導層を含む積層構造を形成する段階と、前記積層構造上に電極物質層を形成する段階と、前記ドメインスイッチング層に反強誘電性(anti-ferroelectricity)を誘導する段階と、を含む、ドメインスイッチング素子製造方法が提供される。
【0022】
前記ドメインスイッチング層は、HfO、ZrO、SiO、AlO、CeO、YO、LaOのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0023】
前記伝導層は、窒化金属、酸窒化金属、RuO、MoOまたはWOを含んでもよい。
前記誘導する段階は、前記伝導層と隣接した前記ドメインスイッチング層の少なくとも一部領域を結晶化する段階を含んでもよい。
【0024】
前記誘導する段階は、前記伝導層により、前記ドメインスイッチング層に引張り応力(tensile stress)が印加されるようにする段階を含んでもよい。
【0025】
前記誘導する段階は、前記積層構造を熱処理(annealing)する段階を含んでもよい。
【0026】
前記熱処理する段階は、前記積層構造を形成する段階後、前記電極物質層を形成する以前に行われ、かつ/または前記電極物質層を形成する段階後にも行われる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、反強誘電性を活用し、ヒステリシスがないネガティブキャパシタンス効果を示すドメインスイッチング素子を具現することができる。
【0028】
本発明によれば、ドメインスイッチング層と、隣接した伝導層との界面ストレイン調節を介し、ドメインスイッチング内に反強誘電相(anti-ferroelectric phase)を具現することができる。
【0029】
本発明によれば、ドメインスイッチング素子は、ロジックトランジスタにも活用され、多様な電子素子/装置/回路/システムを具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】一実施形態によるドメインスイッチング素子の概略的な構造を示す断面図である。
【
図2】比較例によるドメインスイッチング素子の概略的な構造を示す断面図である。
【
図3A】比較例によるドメインスイッチング素子に採用される強誘電性物質の電荷とエネルギーとの関係を概念的に示すグラフである。
【
図3B】比較例によるドメインスイッチング素子に採用される強誘電性物質の電場と分極との関係を概念的に示すグラフである。
【
図4A】一実施形態によるドメインスイッチング素子に採用される反強誘電性物質の電荷とエネルギーとの関係を概念的に示すグラフである。
【
図4B】一実施形態によるドメインスイッチング素子に採用される反強誘電性物質の電場と分極との関係を概念的に示すグラフである。
【
図5】HfZrOが、隣接物質層との界面ストレイン関係により、それぞれ強誘電性、反強誘電性を示すことができることを実験的に確認したグラフである。
【
図6】HfZrOが、隣接物質層との界面ストレイン関係により、それぞれ強誘電性、反強誘電性を示すことができることを実験的に確認したグラフである。
【
図7】他の実施形態によるドメインスイッチング素子の概略的な構造を示す断面図である。
【
図8A】一実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
【
図8B】一実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
【
図8C】一実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
【
図8D】一実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
【
図8E】一実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
【
図8F】一実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
【
図8G】一実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
【
図9】一実施形態による電子素子のアーキテクチャを概略的に示す概念図である。
【
図10】他の実施形態による電子素子のアーキテクチャを概略的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照し、本実施形態について詳細に説明する。説明される実施形態は、ただ例示的なものに過ぎず、そのような実施形態から多様な変形が可能である。以下の図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、図面上において、各構成要素の大きさは、説明の明瞭さと便宜さとのために誇張されてもいる。
【0032】
以下において、「上部」や「上」と記載されたところは、接触して真上にあるものだけではなく、非接触で上にあるものを含んでもよい。
【0033】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のためのみに使用される。そのような用語は、構成要素の物質または構造が異なるということを限定するものではない。
【0034】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0035】
また、明細書に記載された「…部」、「モジュール」というような用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、それは、ハードウェアまたはソフトウェアによって具現されるか、ハードウェアとソフトウェアとの結合によっても具現される。
【0036】
「前記」の用語、及びそれと類似した指示用語の使用は、単数及び複数のいずれにも該当するものである。
【0037】
方法を構成する段階は、説明された順に行わなければならないという明白な言及がなければ、適切な順序によって行われる。また、全ての例示的な用語(例えば、など)の使用は、単に技術的思想を詳細に説明するためのものであり、特許請求の範囲によって限定されない以上、そのような用語により、権利範囲が限定されるものではない。
【0038】
図1は、一実施形態によるドメインスイッチング素子の概略的な構造を示す断面図である。
【0039】
図1を参照すれば、ドメインスイッチング素子100は、チャネル領域CH、チャネル領域CHと連結されたソースSR及びドレインDR、チャネル領域CHと離隔されるように配置されたゲート電極GA、ゲート電極GAとチャネル領域CHとの間に配置された、伝導層150、反強誘電(anti-ferroelectric)層140及びバリア層130を含む。
【0040】
ソースSR及びドレインDRは、チャネル領域CHの両側に電気的に連結、接触されうる。チャネル領域CH、ソースSR、ドレインDRは、所定の基板110内にも具備される。
【0041】
基板110上の互いに離隔された2つの領域に不純物を注入し、ソースSR及びドレインDRを形成することができ、ソースSRとドレインDRとの間の基板110領域が、チャネル領域CHとも定義される。基板110は、例えば、Si基板でもあり、Si以外に他の物質、例えば、Ge、SiGe、III-V族半導体などを含む基板でもある。その場合、チャネル領域CHは、Si、Ge、SiGeまたはIII-V族半導体を含んでもよい。基板110物質は、前述のものに限定されるのではなく、多様に変化される。また、チャネル領域CHは、基板110の一部ではなく、基板110と別個の物質層にも形成される。チャネル領域CHの物質は、酸化物半導体、窒化物半導体、酸窒化物半導体、二次元物質(2D(two-dimensional) material)、遷移金属ジカルコゲナイド(TMD)、量子ドット及び有機半導体のうち少なくとも一つを含んでもよい。前記酸化物半導体は、例えば、InGaZnOなどを含んでもよく、前記二次元物質は、例えば、遷移金属ジカルコゲナイドやグラフェンを含んでもよく、前記量子ドットは、コロイダル量子ドット(colloidal QD)、ナノ結晶構造などを含んでもよいが、それらは、例示的なものであり、それらに限定されるものではない。
【0042】
チャネル領域CHと対向し、それに離隔されるようにゲート電極GAが配置され、チャネル領域CHとゲート電極GAとの間に、ドメインスイッチング層である反強誘電層140が具備されてもよい。
【0043】
ゲート電極GAは、Pt、Ru、Au、Ag、Mo、Al、W、Cuのうちいずれか一つ、合金、導電性金属酸化物または導電性金属窒化物を含んでもよい。
【0044】
反強誘電層140は、HfO、ZrO、SiO、AlO、CeO、YO、LaOのうち少なくとも一つを含んでもよく、さらに、その上に、Si、Al、Zr、Y、La、Gd、Sr、Hf、Ceのようなドーパントを含んでもよい。例示された物質は、結晶相(crystalline phase)、及び/または隣接層との界面でのストレス状態により、強誘電性(ferroelectricity)または反強誘電性(anti-ferroelectricity)を示す物質である。一実施形態によるドメインスイッチング素子100においては、前記物質が反強誘電性を示すように、界面ストレスが調節された状態であり、反強誘電層140をなしている。
【0045】
例えば、HfO系の強誘電特性は、物質の結晶相によるものであり、正方相(tetragonal phase)においては、反強誘電性の特性が、単斜相(orthorhombic phase)においては、強誘電性(ferroelectric)特性が示されると知られている。従って、非晶質HfO薄膜を蒸着した後、熱処理及びストレス制御を介し、反強誘電性を有するようにすることができる。
【0046】
反強誘電性について、強誘電性と比較して説明すれば、次の通りである。
強誘電性の物質は、結晶化された物質構造において、単位セル(unit cell)内の電荷分布が、非中心対称(non-centrosymmetric)であり、自発的な電気双極子(electric dipole)、すなわち、自発分極(spontaneous polarization)を有する。強誘電性の物質は、外部電場がない状態においても、電気双極子による残留分極(remnant polarization)を有し、同時に、外部電場により、分極の方向がドメイン単位に反転(switching)されもする。
【0047】
反強誘電性の物質は、電気双極子が配列された強誘電ドメイン(ferroelectric domain)を含むが、外部電場が印加されていない状態において残留分極は、0、または0に近い値を示す。言い換えれば、反強誘電性の物質は、印加される電場がない状態において、理想的に、分極方向が互いに反対である電気双極子の比率が同じであり、残留分極は、0に近いか、あるいは0を示すようになる。反強誘電性の物質は、外部電場が印加されるとき、分極の方向がスイッチングされうる。
【0048】
反強誘電層140は、外部電場による分極変化において、実質的に非履歴(non-hysteresis)挙動特性を有することができる。言い換えれば、反強誘電層140は、ドメインスイッチング動作時、ヒステリシス(hysteresis)特性を有さないか、あるいは実質的に有さない。
【0049】
一実施形態によるドメインスイッチング素子100においては、強誘電性または反強誘電性を示すことができる物質を使用し、それらに対して反強誘電性が発現されるように、界面ストレス及び/または結晶相を調節し、反強誘電層140を具現している。
【0050】
一実施形態によるドメインスイッチング素子100は、反強誘電層140に所定引張り応力(tensile stress)を印加して反強誘電性を誘導するシード層でもって反強誘電層140と接する伝導層150を具備している。
【0051】
伝導層150は、伝導性を有し、面抵抗が1MΩ/squareより小さい物質によってもなる。伝導層150は、ドメインスイッチング素子100の製造時の高温熱処理工程及び冷却過程において、反強誘電層140に所定引張り応力を印加することができるように、熱膨脹係数が、反強誘電層140で使用される物質の熱膨脹係数より小さい物質によってもなる。伝導層150の物質は、熱処理工程後、冷却過程において、反強誘電層140に印加される引張り応力を所定範囲以内にする熱膨脹係数を有する物質としても選択される。言い換えれば、反強誘電層140として使用される物質との熱膨脹係数差が、強誘電性が誘導される熱膨脹係数差よりは小さい値になるように、伝導層150の物質が選択されうる。例えば、伝導層150の熱膨脹係数は、反強誘電層140として使用される物質の熱膨脹係数よりも大きくも小さくもあり、Moの熱膨脹係数よりは大きい値を有するように、伝導層150の物質が選択されうる。伝導層150物質の熱膨脹係数差は、4×10-6~20×10-6/Kの範囲を有することができる。
【0052】
伝導層150は、窒化金属(metal nitride)、酸窒化金属(metal oxynitride)、RuO、MoOまたはWOを含んでもよい。
【0053】
反強誘電層140は、伝導層150と隣接した少なくとも一部領域が結晶化された状態でもあり、正方晶を含んでもよい。反強誘電層140は、伝導層との界面領域において、ZrOの比率が50%以上でもある。
【0054】
バリア層130は、チャネル領域CHと反強誘電層140との間にも配置される。バリア層130は、反強誘電層140に接するようにも配置される。
【0055】
バリア層130は、電気的漏れを抑制または防止するための絶縁層であり、Si酸化物(SiO)、Al酸化物(AlO)、Hf酸化物(HfO)、Zr酸化物(ZrO)、または二次元絶縁体(2D insulator)などが使用されうる。該二次元絶縁体として、h-BN(hexagonal boron nitride)などの物質が使用されうる。ただし、バリア層130の物質は、それらに限定されるものではない。
【0056】
バリア層130の誘電定数が高いほど、ドメインスイッチング素子100の性能向上に有利である。バリア層130は、反強誘電層140の降伏電圧(breakdown voltage)より高い降伏電圧を有する物質によってもなる。
【0057】
一実施形態によるドメインスイッチング素子100は、ネガティブキャパシタンス(negative capacitance)を示し、電場による分極変化において、実質的にヒステリシスがないか、あるいはほぼない反強誘電層140をドメインスイッチング層として採用しており、動作電圧の低下が可能であり、それにより、素子のスケールダウンに有利である。
【0058】
図2は、比較例によるドメインスイッチング素子の概略的な構造を示す断面図である。
図3A及び
図3Bは、それぞれ比較例によるドメインスイッチング素子に採用される強誘電性物質の電荷とエネルギーとの関係、及び電場と分極との関係を概念的に示すグラフであり、
図4A及び
図4Bは、一実施形態によるドメインスイッチング素子に採用される反強誘電性物質の電荷とエネルギーとの関係、及び電場と分極との関係を概念的に示すグラフである。
【0059】
比較例によるドメインスイッチング素子10は、チャネル領域CH、チャネル領域CHに連結されたソースSR及びドレインDR、チャネル領域CHと離隔されるように配置されたゲート電極GA、ゲート電極GAとチャネル領域CHとの間に配置された強誘電層14、及び誘電体層12を含む。
【0060】
比較例のドメインスイッチング素子10は、ドメインスイッチング層として強誘電層14を採用する点において、反強誘電層140をドメインスイッチングとして採用する本実施形態のドメインスイッチング素子100と違いがある。
【0061】
比較例のドメインスイッチング素子10、本実施形態のドメインスイッチング素子100にそれぞれ採用される強誘電性物質及び反強誘電性物質は、いずれも強誘電ドメインを具備し、ネガティブキャパシタンス、すなわち、負の電気容量を示すことができる。キャパシタンス(電気容量)は、ある物質が電荷(electrical charge)を保存する能力を示す指標である。実際、ほとんどの電子機器で示される一般的なキャパシタ(蓄電器)は、電圧がキャパシタに印加されたとき、電荷を保存するようになる。反対に、ネガティブキャパシタンスは、印加される電圧が上昇すれば、電荷保存が低下する性質を意味する。そのような性質は、印加電圧による電気双極子反転によるとも説明される。ネガティブキャパシタンスは、印加電圧に対する電荷の独特な反応であり、そのような性質を示す物質がトランジスタに好ましく融合される場合、トランジスタや、トランジスタを含む機器によって消費する電力を大きく低下させることができる。
【0062】
一方、比較例のような構造のドメインスイッチング素子10の場合、強誘電層14が示すヒステリシスにより、性能が制限されてしまう。
【0063】
図3Aは、強誘電性物質の電荷(Q)とエネルギー(U)との関係、及び2つのエネルギー状態での双極子ドメイン(dipole domain)の分極分布を例示的に示している。
【0064】
図3Aを参照すれば、強誘電性物質は、分極方向がいずれもの下方向を向くか、あるいはいずれも上方向を向く2つの縮退(degenerate)状態を有する。電荷(Q)が0であるときは、マルチドメイン形成により、そのような2つの状態が半分ずつ混ざった状態になって印加された電場の方向により、総分極方向は、上または下になり、印加された電場が消えた後には、AまたはBの状態として残っているようになる。その後の印加電場に係わる分極変化は、A状態またはB状態に依存する履歴を有するようになる。
【0065】
図3Bのグラフは、電場(E)と分極(P)との関係を示しており、グラフを参照すれば、印加された電場がないときの分極(P)状態(A,B)により、その後に印加される電場(E)による分極(P)は、異なる値を有するヒステリシスを示す。
一方、反強誘電性物質の場合、そのようなヒステリシスがほとんど示されない。
【0066】
図4Aの電荷(Q)-エネルギー(U)グラフを参照すれば、分極方向が上下に反復配置され、全分極が0である状態(S)が最も安定した状態になる。その状態において、外部電場が印加されれば、ドメインがスイッチングされ、ある一方向にさらに多くの双極子を有する、例えば、C状態またはD状態になる。その状態で印加された電場が消えれば、また分極が上下に反復配置される状態(S)に戻り、その後に印加される電場(E)による分極(P)は、以前と同一の変化傾向を示し、ヒステリシスを示さない。そのような傾向は、印加された電場が小さい範囲において、例えば、印加された電場による状態変化が
図4Aのグラフ上のPまたはQの状態にならない範囲において維持される。
【0067】
図4Bのグラフは、電場(E)と分極(P)との関係を示しており、グラフを参照すれば、印加された電場の値が所定範囲以内であるとき、例えば、点線円で表示された領域範囲において、電場(E)による分極(P)は、ヒステリシスなしに、一定傾向を示す。
【0068】
そのように、強誘電性物質は、ドメインスイッチングによるネガティブキャパシタンス効果を、ヒステリシスがない状況で得ることができる。
【0069】
図5及び
図6は、HfZrOが、隣接物質層との界面ストレイン関係により、それぞれ強誘電性、反強誘電性を示すことができるということを実験的に確認したグラフである。
【0070】
図5の実験に使用された積層膜は、上からMo/HfZrO/Moの順序に積層された構造を有する。そのような積層構造において、HfZrO薄膜が示す電場・分極グラフは、明らかなヒステリシスを示しており、HfZrOが強誘電性を示す状態であるということが分かる。
【0071】
図6の実験に使用された積層膜は、上からTiN/HfZrO/Moの順序に積層された構造を有する。そのような積層構造において、HfZrOが示す電場・分極グラフは、
図5に比べ、明らかに低減されたヒステリシスを示している。特に、印加された電場が小さい範囲において、そのような傾向はさらに明確に示されている。そのような積層構造内のHfZrOには、強誘電相と反強誘電相とが共に存在すると見ることができ、それにより、TiN/HfZrO/Moの構造において、HfZrOが反強誘電性を示すことができるということが分かる。
【0072】
そのような傾向は、HfZrOとの隣接層により、HfZrOに印加される応力(stress)によるものであると分析され、すなわち、TiNとHfZrOとの熱膨脹係数差、及びMoとHfZrOとの熱膨脹係数差によるものであるとも分析される。
【0073】
TiNとMoは、いずれもHfZrOより小さい熱膨脹係数を有し、従って、高温熱処理工程後に冷却するとき、HfZrOに引張り応力を印加することになる。一方、TiNの場合、Moよりは大きい熱膨脹係数を有し、従って、HfZrOとTiNとの熱膨脹係数差が、HfZrOとMoとの熱膨脹係数差より小さい。言い換えれば、熱処理後の冷却時、TiN/HfZrO/Moの構造において、HfZrOに印加される引張り応力が、Mo/HfZrO/Moの構造において、HfZrOに印加される引張り応力より小さい。
【0074】
Hf酸化物やZr酸化物は、斜方晶(orthorhombic)結晶相において強誘電性を示し、正方晶(tetragonal)結晶相において反強誘電性を示すと知られている。従って、該実験結果から、HfZrOは、相対的に大きい引張り応力状態において斜方晶(orthorhombic)結晶相が形成され、強誘電性を示し、相対的に小さい引張り応力状態において正方晶(tetragonal)/斜方晶(orthorhombic)結晶相が形成され、反強誘電性/強誘電性を示すことができると分析される。言い換えれば、HfZrOは、隣接層との引張り応力を適切に調節することにより、反強誘電性を示すことができるということが分かる。
【0075】
前述のように、本実施形態によるドメインスイッチング素子100は、反強誘電性誘導及びストレス調節のためのシード層として伝導層150を具備しており、伝導層150の熱膨脹係数が、反強誘電層140をなす物質との熱膨脹係数との関係において、適切に設定されるように、伝導層150の物質を選択し、反強誘電性を具現することができる。
【0076】
図7は、他の実施形態によるドメインスイッチング素子の概略的な構造を示す断面図である。
【0077】
図7を参照すれば、ドメインスイッチング素子101は、チャネル領域CH、チャネル領域CHに連結されたソースSR及びドレインDR、チャネル領域CHと離隔されるように配置されたゲート電極GA、ゲート電極GAとチャネル領域CHとの間に配置された、伝導層150、反強誘電層140及びバリア層130を含む。また、バリア層130とチャネル領域CHとの間に、誘電体層120が設けられる。
【0078】
誘電体層120は、バリア層130と共に、電気的漏れを抑制または防止するための絶縁層である。誘電体層120は、バリア層130とは異なる物質を含んでもよい。誘電体層120は、バリア層130の誘電定数より小さい誘電定数を有することができる。誘電体層120は、SiO、AlO、HfO、ZrO、または二次元絶縁体を含んでもよい。二次元絶縁体として、h-BNのような物質が使用されうる。ただし、誘電体層120の物質は、それらに限定されるものではない。
【0079】
図8Aないし
図8Gは、実施形態によるドメインスイッチング素子製造方法について説明する図面である。
図8Aを参照すれば、チャネル領域CHを含む基板110が設けられる。
【0080】
チャネル領域CHは、Si、Ge、SiGe、III-V族半導体、酸化物半導体、窒化物半導体、酸窒化物半導体、二次元物質、遷移金属ジカルコゲナイド、量子ドット及び有機半導体のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0081】
基板110上の互いに離隔された2つの領域に不純物を注入し、ソースSR及びドレインDRを形成することができ、ソースSRとドレインDRとの間の基板110領域が、チャネル領域CHとも定義される。ソースSR、ドレインDRの形成は、該段階においても遂行されるが、それに限定されるものではなく、その後の段階においても遂行され得る。
【0082】
図8Bを参照すれば、チャネル領域上に、ドメインスイッチング層142と伝導層150とを含む積層構造を形成する。該積層構造は、誘電体層120、バリア層130、ドメインスイッチング層142及び伝導層150を含んでもよい。ただし、それらに限定されるものではなく、誘電体層120を省略することも可能である。
【0083】
ドメインスイッチング層142は、非晶質薄膜層であり、HfO、ZrO、SiO、AlO、CeO、YO、LaOのうち少なくとも一つを含んでもよく、また、それらのうちいずれか一つに、Si、Al、Zr、Y、La、Gd、Sr、Hf、Ceのようなドーパントがさらにドーピングされうる。
【0084】
伝導層150は、ドメインスイッチング142に接触し、窒化金属、酸窒化金属、RuO、MoOまたはWOを含んでもよい。
【0085】
伝導層150の物質は、熱処理後の冷却過程において、ドメインスイッチング層142に引張り応力を印加するように、また、印加される引張り応力が所定範囲以内になるようにも選択されることができる。例えば、伝導層150の熱膨脹係数は、ドメインスイッチング層142の熱膨脹係数より小さく、Moの熱膨脹係数よりは大きい値を有するように、伝導層150の物質が選択されうる。
【0086】
バリア層130と誘電体層120は、SiO、AlO、HfO、ZrO、LaO、YO、MgOのうちいずれか一つを含むか、あるいはSiO、AlO、HfO、ZrO、LaO、YO、MgOのうちいずれか一つにドーパントがドーピングされた物質、または二次元絶縁体を含んでもよく、バリア層130は、誘電体層120より高い誘電定数を有する物質でもある。
【0087】
前記積層構造は、ALD(atomic layer deposition)、CVD(chemical vapor deposition)またはPVD(physical vapor deposition)などの蒸着工程で形成することができる。
【0088】
ドメインスイッチング層142は、非晶質薄膜層であり、反強誘電性を示さない状態でもある。従って、ドメインスイッチング層142に反強誘電性を誘導するための追加工程が遂行されうる。そのような工程は、伝導層150と隣接したドメインスイッチング層142の少なくとも一部領域を結晶化する工程でもあり、または、伝導層150により、ドメインスイッチング層142に所定引張り応力が印加されるようにする工程でもある。そのような工程は、前記積層構造を熱処理(annealing)する工程でもある。そのための細部段階について述べれば、次の通りである。
【0089】
図8Cを参照すれば、ドメインスイッチング層142に対して熱処理工程を遂行することができる。熱処理温度は、約400℃ないし1,200℃範囲の温度によっても遂行されるが、ただし、それに限定されるものではなく、ドメインスイッチング層142及び伝導層150の材質を考慮し、ドメインスイッチング層142に適切な引張り応力が印加される範囲においても定められる。
【0090】
そのような熱処理工程により、ドメインスイッチング層142の少なくとも一部領域が結晶化されもする。また、熱処理工程後の冷却過程において、ドメインスイッチング層142に所定引張り応力が印加されうる。そのような過程により、
図8Dのように、ドメインスイッチング層142は、所定反強誘電性(AF1)を有することができる。
【0091】
図8Eを参照すれば、伝導層150上に、ゲート電極GAが形成されうる。ゲート電極GAは、伝導性物質を蒸着することによっても形成される。ゲート電極GA形成のために、伝導性物質が、例えば、ALD、CVDまたはPVDのような工程によっても蒸着される。
【0092】
図8Fを参照すれば、ドメインスイッチング層142に熱処理工程が遂行されうる。ゲート電極GAが伝導層150に接触した状態での熱処理工程は、ドメインスイッチング層142の結晶化をさらに容易にすることができる。そのような熱処理工程は、
図8Eの熱処理工程を省略し、代わりに本段階で遂行されるものでもあり、または、
図8Eの熱処理工程遂行後、さらに遂行されるものでもある。
【0093】
図8Gのように、所定反強誘電性(AF2)を有するドメインスイッチング層142を具備するドメインスイッチング素子102が製造されうる。ドメインスイッチング素子102は、誘電体層120の有無により、
図1のドメインスイッチング素子100、または
図7のドメインスイッチング素子101と実質的に同一でもある。
【0094】
一実施形態によるドメインスイッチング素子は、ロジックトランジスタとして、多様な電子素子、論理素子などにも適用される。該ロジックトランジスタは、多様な電子素子/論理素子の基本構成要素にもなる。一実施形態によれば、ヒステリシスがほぼないネガティブキャパシタンスを具現し、サブスレショルドスイング(SS)のような動作特性を改善することができ、制御効率を高めることができ、スケールダウンにも有利なロジックトランジスタを具現することができるために、それを適用し、優秀な性能の電子素子/論理素子を製造することができる。
【0095】
図9は、一実施形態による電子素子のアーキテクチャーを概略的に示す概念図である。
図9を参照すれば、1つのチップ1000に、メモリユニット1010、ALU(arithmetic logic unit)1020及び制御ユニット1030が形成されうる。同一基板上に、メモリユニット1010、ALU 1020及び制御ユニット1030をモノリシック(monolithic)に集積し、チップ1000を形成することができる。ALU 1020及び制御ユニット1030それぞれは、前述の実施形態のうちいずれか一つによるドメインスイッチング素子100,101,102を含むロジックトランジスタを含んでもよい。例えば、該ロジックトランジスタは、反強誘電性を有し、実質的に非履歴挙動特性を有するドメインスイッチング層を含んでもよい。メモリユニット1010は、メモリ素子を含んでもよい。例えば、前記メモリ素子は、強誘電ドメインを含みながら、履歴挙動特性を有するドメイン層を含んでもよい。メモリユニット1010、ALU 1020及び制御ユニット1030は、オンチップ(on-chip)において、メタルラインで相互連結され、直接通信することができる。メモリユニット1010は、メインメモリ及びキャッシュメモリをいずれも含んでもよい。そのようなチップ1000は、オンチップメモリ処理ユニット(on-chip memory processing unit)と言える。チップ1000と連結された入出力素子2000がさらに具備されうる。
【0096】
そのような電子素子は、1つのチップに、メモリユニットとロジック素子ユニットとを共に集積して製造することができるために、コスト側面で有利である。また、メモリユニットとロジック素子ユニットとの間において、データ伝送量が多く、データ伝送が連続してなされる応用分野、例えば、ニューロモーフィック素子(neuromorphic device)分野において、本実施形態の電子素子を適用すれば、効率向上、速度向上、電力消耗低減のような多様な効果を得ることができる。ニューロモーフィック素子の基本的な構成及び動作方式は、周知のところであるために、それに係わる詳細な説明は、排除する。
【0097】
場合により、本実施形態による電子素子は、1つのチップにおいて、サブユニット(sub-units)の区分なしに、コンピューティング単位素子とメモリ単位素子とが相互隣接して形成されるアーキテクチャによっても具現される。
【0098】
図10は、他の実施形態による電子素子のアーキテクチャを概略的に示す概念図である。
【0099】
図10を参照すれば、CPUチップ1500は、キャッシュメモリ1510、ALU 1520及び制御ユニット1530を含んでもよい。ALU 1520及び制御ユニット1530のそれぞれは、前述の実施形態のうちいずれか一つによるドメインスイッチング素子100,101,102を含むロジックトランジスタを含んでもよい。例えば、該ロジックトランジスタは、反強誘電性を示し、実質的に非履歴挙動特性を有するドメインスイッチング層を含んでもよい。
【0100】
CPUチップ1500と別個に、メインメモリ1600及び補助ストレージ1700が具備され、入出力素子2500が具備されてもよい。例えば、キャッシュメモリ1510は、SRAM(static random access memory)によっても構成され、メインメモリ1600は、DRAM(dynamic random access memory)によっても構成される。
【0101】
前述の説明で多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、発明の範囲を限定するものとするよりも、具体的な実施形態の例示として解釈されなければならない。例えば、本発明が属する技術分野で当業者であるならば、
図1ないし
図7のドメインスイッチング素子、及び
図9、
図10の電子素子の構成は、多様にも変形されるということが分かるであろう。また、
図8Aないし
図8Gを参照して説明したドメインスイッチング素子の製造方法も、多様にも変形されるということが分かるであろう。従って、開示された実施形態は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならない。本明細書の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異は、含まれていると解釈されなければならないのである。
【符号の説明】
【0102】
100,101,102 ドメインスイッチング素子
110 基板
120 誘電体層
130 バリア層
140 反強誘電層
142 ドメインスイッチング層
CH チャネル領域
DR ドレイン
GA ゲート電極
SR ソース