(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】医療用アプリのアクティベーションシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20241210BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20241210BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H10/00
(21)【出願番号】P 2020190999
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2024-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】花輪 由美子
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】特許第6347008(JP,B1)
【文献】特許第6611112(JP,B1)
【文献】特開2003-005974(JP,A)
【文献】特開2020-160557(JP,A)
【文献】特許第6531322(JP,B1)
【文献】特開2021-168093(JP,A)
【文献】特開2022-070086(JP,A)
【文献】特開2013-037705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療
機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システムであって、
患者側端末はサーバから医療用アプリケーションプログラムをダウンロードし、
医療
機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステ
ムによる患者の診断
により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行し、
前記アクティベーションコードには
前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、
前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、
または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限
数が含まれることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う請求項
1のシステム。
【請求項3】
医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時にサーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる請求項1
、請求項
2の何れ
かのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のソフトウェアのアクティベーションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、疾患の治療を、従来の医師との対面診断により処方される薬剤の投与に代わって、スマートフォン等のデジタルデバイスにインストールされたアプリケーションのソフトフェアプログラム(以後、医療用アプリという)によって行う技術が開発されてきた。この技術において、医師の診断、あるいは代替えするシステムの疾患の診断により、患者の疾患あるいは病態が特定され、それらに応じた医療用アプリが処方され、患者は薬剤の投与に代わって、この医療用アプリを実践することによって治療を行うことになる。医療用アプリには薬剤による重篤な副作用などがなく、また、患者のスマートフォンやタブレット端末、PCなどで容易に実施することができるので、その開発が大いに期待されている。
【0003】
しかしながら、現在の医療用アプリには薬剤のように投薬期間・投薬量(薬剤の場合は、朝昼晩1錠ずつ、2週間、あるいは何回分といったように指定ができる)の設定がなく、処方されると永久に使えることとなり、アプリへの依存や、使いまわしによる無処方の利用などの問題が生じるおそれがある。そこで、容易にアプリの利用可否や利用期間等を設定することができる技術が望まれていた。
【0004】
特許文献1には、ユーザー端末にインストールされている治療関連アプリからサーバへのシステム登録の要求を受け付けた場合に、サーバは当該要求を行った治療関連アプリを正規アプリとして登録するとともに、医師とのコミュニケーション通信に関する機能の制限を解除する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、医療用アプリの利用可否や利用期間等を容易に設定することができるシステムを提供する点である。また、アプリの利用に伴う費用処理を簡易に行うシステムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システムであって、
患者側端末はサーバから医療用アプリケーションプログラムをダウンロードし、
医療機関側端末から患者側端末に対するアクティベーションコードを発行することを特徴とするシステム。
(2)前記アクティベーションコードには利用可能期間に関する情報が含まれることを特徴とする(1)のシステム。
(3)前記アクティベーションコードには利用時間に関する情報が含まれることを特徴とする(1)または(2)のシステム。
(4)前記アクティベーションコードには利用可能上限数に関する情報が含まれることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかのシステム。
(5)前記アクティベーションコードは医療機関で発行される処方箋情報に含まれることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかのシステム
(6)前記アクティベーションコードはバーコードあるいは2次元コード情報として提供されることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかのシステム。
(7)前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、アプリメーカーに費用を支払うことを特徴とする(1)-(6)のシステム。
(8)前記医療用アプリケーションのアクティベーション時点、あるいは、前記医療用アプリケーションの処方の完了時にサーバから健康保険組合等へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合等からアプリメーカーに費用の支払いが行われることを特徴とする(1)-(7)のシステム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療用システムによれば、容易に医療用アプリの利用可否、利用期間の設定が可能となる。また、アプリの利用に伴う費用処理も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は医療用システムの実施形態を示した説明図である。(実施例1)
【
図3】
図3はハンドスキャナの実施形態を示した説明図である。(実施例2)
【
図4】
図4は医療用システムの実施形態を示した説明図である。(実施例3)
【
図5】
図5は医療用システムの実施形態を示した説明図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、サーバに保存された、患者端末で利用される医療用アプリを、医療機関によって発行されるアクティベートコードを用いて利用可能とすることで、簡易に医療用アプリの利用可否および利用期間の設定が可能とするという目的を達成した。特に、利用の可否や利用期間の未設定の医療用アプリを医療機関とは異なるサーバに保存することができ、医療用アプリのメインテナンスが容易になる。
【0011】
(実施例1)
図1は、本発明の医療用システム100の実施例のシステム構成例であって、医療施設101、患者102、サーバ103(典型的には、アプリストア)、アプリメーカー104とからなる。
【0012】
医療施設101は典型的には医師の所属する病院であるが、オンラインクリニックなどの施設でもよい。医療施設101の情報処理端末は医師やAIによる診断により、処方箋などの投薬情報を生成する。また、この生成は典型的には診断結果に基づき医療施設101に備えられた電子カルテ(図示しない)などの既存のシステムを介して発行されるが、発行手段についてはこれに限られない。サーバ103は典型的にはスマートフォンやPCなどでダウンロード可能にアプリケーションプログラムを保存するサーバである。サーバ103は典型的には医療施設101や患者102とは異なる第三者機関が運営するものであると、医療機関と独立にメインテナンスができるので都合が良いが、医療施設101に併設とすることもできる。アプリメーカー104は医療用のアプリケーションプログラム(医療用アプリ)を作成するメーカーであり、医療用アプリを作成し、サーバ103にプログラムをアップロードするとともに、バージョンアップなど医療用アプリのメインテナンスを行う。本実施例で用いる医療用アプリは特定の疾患の治療目的、特定の疾患の補助的な目的などで使われるようにプログラミングされており、アクティベートコードの入力で利用可能となるように構成されている。アプリにおける利用の可否の制御は当業者に周知なプログラミング技法で実行することができる。利用可能期間情報の含まれていない医療用アプリに対するアクティベートコードは少なくとも処方期間情報(例えば、アクティベート日から2週間、1か月など)を含み、また、利用可能期間情報の含まれている医療用アプリ(例えば、1か月用アプリなど)に対するアクティベートコードは少なくとも始期に関する情報(例えば、2020年11月3日)を含む。これらのアクティベートコードによって利用期間が定義され、利用期間期間経過後は少なくともアプリの治療機能の一部が利用不可となるように構成されている。利用可能期間の範囲内か、範囲外かは、利用期間として設定された日時情報と、端末内の時計の日時情報やネットワークを介して取得される日時情報とを比較して判断される。ここで、追加のアクティベートコードの再認証によって、利用期間を再定義(延長)することができるように構成されていると、医師によって再度処方された場合に再度ダウンロードする必要がないので都合が良い。
【0013】
次に、医療用システム100の運用例を
図1を用いて示す。まずアプリメーカー104より医療用アプリがサーバ103にアップロードされる(アプリ供給)。次に、医療施設101では、その施設で利用する電子カルテ等のシステムに、治療に用いるアプリの情報と、該当アプリに対するアクティベートコードの生成方法が取得される。次に、医療施設101に患者102が訪問し、医療施設101で医師の診察を受ける。診察の結果、病名等の診断が行われ、医療用アプリの利用決定が行われると、医師は医療用アプリについてのインフォームドコンセントを患者に対して行い、医療用アプリの利用方法などの説明を行う。続いて、医師または医師の指示を受けた者は電子カルテ等のシステムを介して、処方箋を発行する。
図2に処方箋の例を示した。処方箋は電子カルテ等に連動するような形式で、電子カルテ上で、医師が、疾患名や、医療用アプリ名および処方期間をリストから選択することで出力できるようにすると都合がよい。これによって、電子カルテにおいて、医薬品名と個数を選択するという従来と同様の手法で処方することができる。処方期間には起算日も含まれ、何回も同じコードで利用可能期間が更新できないようにされていると都合が良い。また、医療用アプリによっては複数の治療用モジュールが含まれる場合もあるので、利用可能なモジュールが複数ある場合、そのいずれかを使うかフラグをつけることができるように指定することもできる。また、アプリを利用する推奨時間情報を含ませ(例えば、医薬品で言えば、朝食後、昼食後、夕食後、寝る前などといった服用時間に対応する情報)、医療用アプリの利用を勧めるメッセージを推奨時間にスマホ等でポップアップ表示するようにして患者に利用を促すようにすることもできる。さらに、アプリに利用回数を記憶するメモリを設け、患者によるアプリの利用ごとにメモリ内の利用回数を更新するように構成し、アプリの利用可能上限回数の情報をアクティベートコードに含ませ、実際の利用回数とアクティベートコードで指定された上限回数を比較し、利用可能上限回数に達したらアプリの利用を制限するようにしてもよい。処方期間等の情報はスマホ等で読み込み可能なバーコードや2次元コード情報として提供することができる。また、処方箋の情報には医療用アプリのダウンロード可能なアプリストアのURLやその医療用アプリのマニュアルのダウンロード可能なURLの情報を、アドレス、バーコード、2次元バーコードなどの形式で含ませることもできる。なお、医療用アプリについては、アプリストアから医療用アプリ名で検索するようにしてもよい。
【0014】
次に、処方箋の提供を受けた患者102は処方箋に記載された医療用アプリのダウンロード先のURLに、患者の利用しているスマホ等の端末からアクセスし、所望の医療用アプリのダウンロード要求を行い、サーバ103は該当医療用アプリのダウンロード可否を確認し、可能な場合は患者102の端末にプログラムを転送する。なお、メインテナンスなどでダウンロードサーバが利用不可の場合、ダウンロード不可である旨通知し、代替のアプリがある場合にはそちらを紹介するようにしてもよい。続いて、所望の医療用アプリがダウンロードされたのち、患者102はその利用する端末にアプリのインストールを行う。インストール後、該医療用アプリを起動し、典型的には端末のコードリーダー機能で医療施設101によって発行されたアクティベートコードの読み込みを行わせ、医療用アプリを利用可能な状態とする。患者102は所定期間、この医療用アプリの治療プログラムを用いて治療を行うことができる。また、医療施設から電子カルテ情報(特に、処方の有無)がサーバ103に送付され、電子カルテでの処方情報と、患者102からのダウンロード要求とが対になったときに処方が完了されたとシステムでは判断する。または、医療用アプリがアクティベーションされたことをサーバまたは医療施設101に通知するようにして判断する、あるいは、サーバ103から医療施設101にダウンロードの事実を通知して処方完了を判断するようにしてもよい。
【0015】
(課金方法)
通常の医薬品の処方箋が出された場合、医薬品を処方する医療施設101または薬局(図示しない)で医薬品が処方されて、患者102に提供される。患者102は通常、国民健康保険や健康保険組合等の健康保険に加入しており、医薬品の費用負担は健康保険組合等との取り決めによりあらかじめ決定されている。例えば、本人の負担が3割の場合は、本人は医療費の3割を支払い、残りの7割は健康保険組合が負担している。この場合、患者が医療機関を訪れた当日、患者本人は本人の支払い分の3割のみを医療機関に支払い、後日、健康保険組合から医薬品を処方した施設へ残りの支払いが行われる。本発明のシステムでは患者102がダウンロードした際にサーバ103で本人負担分を患者102に課金し、サーバ103は必要に応じてサーバ103の利用料を減算した料金をアプリメーカー104に支払う。残りの費用についてはサーバ103から健康保険組合(図示しない)に通知し、健康保険組合からアプリメーカー104に支払う。ただし、サーバ103の利用料はアプリごとに利用料を減算することなく、アプリストアからまとめて支払うようにすることもできる。
一方で、アプリの場合は、単にダウンロードしただけでは実際にアプリが利用されているかどうかは不明である。そこで、上述の処方の完了が判断された時点で、本人の課金手続きを実施し、および/また、健康保険組合に通知を行うようにしてもよい。健康保険組合ではこの通知をそこに含まれるサーバで電子的に受信し、随時または所定の期間ごとに集計された金額をアプリメーカー104に支払うようにしてもよい。
【0016】
(実施例2)
実施例2の医療用システム200では、医療用アプリは、医療用アプリのプログラム自体とは別のものである、期間情報を持つデータモジュールを参照するように構成され、そのデータモジュールには期間情報が含まれ、その情報で指定された期間は医療用アプリケーションの利用ができるように構成される。それ以外の点は実施例1と同様に動作する。すなわち、実施例1の操作で、患者102が医療用アプリケーションをインストールし、アクティベートしたのち、さらに、アクティベートコードに含まれる期間情報に対応したライセンス情報(例えば、2021年10月1日~2021年10月30日)を含むデータモジュールをサーバ103からダウンロードして所定の場所に保存し、医療用アプリは起動の都度そのデータモジュールの情報にアクセスし、そのライセンス情報が有効な期間、患者102による医療用アプリの使用が可能となる。また、データモジュールのライセンス情報は利用可能期間の情報だけを持ち、ライセンスアクティベート作業を行い、医療用アプリの始期と利用可能期間を合わせて利用可能期間を設定できるようにしてもよい。この場合、課金はデータモジュール、特にアプリストアからのダウンロード時に、に対して行われると都合が良い。
【0017】
(実施例3)
実施例3の医療用システム300においては、まず、アプリメーカー104がサーバ103に、医療用アプリを供給し、サーバ103は医療用アプリを記憶する。次に、患者102が医療施設を訪問し、アクティベートコードを含む処方箋を取得する。ここでアクティベートコードは本人にカスタマイズされたアプリケーションの識別するための識別番号等を含む。次に医療施設101から利用可能期間情報を含む処方箋情報が典型的には電子カルテソフトを介してサーバ103に通知される。サーバ103では記憶された医療用アプリを利用可能期間を前記処方期間と対応するように個人用にカスタマイズして上述の識別番号と対応付けて新たに保存する。続いて、患者102はサーバ103にアクセスし、識別番号を含むアクティベートコードをサーバ103に伝え、前記識別番号に対応して記憶された修正された医療用アプリを患者102に対してダウンロードさせる。患者102はダウンロードされた医療用アプリを使用端末にインストールし、治療に用いる。
【0018】
(実施例4)
実施例4の医療用システム400では、医療施設101、患者102、サーバ103、アプリメーカー104に加えて、管理用サーバ105が追加されている。実施例4の医療用システム400では医療施設101から患者102に提供されるアクティベートコードには期間情報が含まれなくても良い点が異なっている。その代わりに本実施例の処方箋には本人の識別情報を含むアクティベートコードが含まれ、その識別情報がアプリに登録される。そして、処方期間に関する情報は、該識別情報とともに、医療施設101から管理用サーバ105に送信される。医療用アプリはそのプログラムを患者が起動させた都度、管理用サーバにアクセスし、管理用サーバ105では、その医療用アプリの利用者(患者102)と管理サーバ105に記憶された利用者情報を識別情報をもとに対比し、本人確認の後、利用可能期間内であると判断すると、利用可能とリプライし、医療用アプリは治療プログラムを実行する。また、利用可能期間でないと判断すると、治療プログラムの実行を停止する。
【0019】
実施例4の場合、課金方法は、本人分の課金は、医療用アプリのサーバ3からのダウンロード時、または、管理用サーバへの初回アクセス時に管理用サーバに課金し、健康保険組合の負担分については管理用サーバへの初回アクセスがあった場合に健康保険組合に通知し、そこから、アプリメーカー104へ支払うようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
サーバに保存された、患者端末で利用される医療用アプリを、医療機関によって発行されるアクティベートコードを用いて利用可能とすることで、簡易に医療用アプリの利用可否および利用期間の設定が可能とするという目的を達成した。特に、利用の可否や利用期間の未設定の医療用アプリを医療機関とは異なるサーバに保存することができ、医療用アプリのメインテナンスが容易になる。
【符号の説明】
【0021】
101 医療施設
102 患者
103 サーバ
104 アプリメーカー
105 管理用サーバ