(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】配管端面規制具と該規制具を用いたフレア成形工具
(51)【国際特許分類】
B21D 41/02 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B21D41/02 C
(21)【出願番号】P 2021081041
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000132079
【氏名又は名称】株式会社スーパーツール
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】林 輝樹
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3198457(JP,U)
【文献】特開2012-179610(JP,A)
【文献】特開平08-002185(JP,A)
【文献】特開2014-069348(JP,A)
【文献】米国特許第06062060(US,A)
【文献】特開昭56-17293(JP,A)
【文献】特公平1-27874(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面から上面に貫通し、金属配管の端部を保持する複数の配管保持孔を複数有するゲージバーを具備し、前記ゲージバーがスライド自在に保持され、前記ゲージバーのいずれかの配管保持孔に保持されている金属配管の端部にフレア加工を施すフレア成形工具に用いられる配管端面規制具であって、
前記配管端面規制具は、前記ゲージバーの上面に沿って前記配管保持孔内に突き出た大きさを有し、上記の選択された配管保持孔に下面側から挿入された金属配管の端面が当接する管端規制片を備え、且つ前記ゲージバーに磁気吸着する磁気、或いは磁石を備えていることを特徴とする配管端面規制具。
【請求項2】
前記配管端面規制具は、前記管端規制片と、前記ゲージバーの一方の側面に沿って配置される側面片と、前記ゲージバーの下面に沿って配設された下面片とで構成され、前記側面片の上端は前記管端規制片の一方の端部に接続され、前記側面片の下端は下面片の一方の端部に接続されてなることを特徴とする請求項1に記載した配管端面規制具。
【請求項3】
前記配管端面規制具は、前記管端規制片と、前記ゲージバーの一方の側面に沿って配置される側面片とで構成され、前記側面片の上端は前記管端規制片の一方の端部に接続されてなることを特徴とする請求項1に記載した配管端面規制具。
【請求項4】
下面から上面に貫通し、金属配管の端部を保持する複数の配管保持孔を有するゲージバーと、前記ゲージバーに取り付けられ、前記ゲージバーの長手方向に沿ってスライドし、前記金属配管の端部を配管保持孔のフレア加工面に押圧してフレアを形成する円錐状の偏心コーンを保持するヨーク本体と、前記ゲージバーの長手方向に沿ってスライドし、前記金属配管の端面を前記フレア加工面が形成された前記ゲージバーの上面に一致させる請求項1~3のいずれかに記載の配管端面規制具とを備えることを特徴とするフレア成形工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配管の端部をフレア加工する際に用いられる配管端面規制具の改良と改良された該規制具を用いたフレア成形工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機の室内機と室外機とを接続する際、金属配管の端部を円錐状に拡径加工する必要があり、このようなフレア加工を行うための配管工具としてフレア成形工具が使用されている。
【0003】
従来のフレア成形工具は、回転ハンドルと、回転ハンドルに固定され、下端部にコーン取付部が設けられ、回転ハンドルと一体となって回転するコーンシャフトと、コーン取付部の下面に設けられたフレア加工用の偏心コーンと、回転ハンドルとコーン取付部との間にてコーンシャフトに同軸的に取り付けられ、その外周面に雄ネジが刻設されているフィードスクリュと、径の異なる複数の配管保持孔を有するゲージバーと、その上部にフィードスクリュの雄ネジが螺合する雌ネジを有し、その下部にゲージバーがスライド自在に挿通されるゲージバー摺動溝を有するヨーク本体と、ヨーク本体に取り付けられ、ゲージバー摺動溝に挿通されたゲージバーをヨーク本体に固定する締付クランプとを備えている。
【0004】
このフレア成形工具を用いてフレア加工を行う場合には、ゲージバー左右に開いてフレア加工を行おうとしている配管のサイズに合ったゲージバーの配管保持孔に配管の端部を挿入し、目視でゲージバーの上面に配管の端面を合わせてゲージバーを閉じ、そして、フレア成形工具のヨーク本体を配管が保持されている配管保持孔の上に移動させ、クランプハンドルを回して偏心コーンを降下させ、偏心コーンの円錐面が配管の端部内面に回転しつつ配管保持孔の開口部に設けたフレア加工面に当該部分を押し当て該端部を逆円錐状に押し広げることで配管の先端にフレアを形成している。
【0005】
この時、偏心コーン側のゲージバーの上面とゲージバーの配管保持孔に保持された配管の端面とが一致していないと、正確なフレアが形成されない。特に、目視の場合は不一致になりやすい。そこで、フレア加工の前に、配管の端面をこれに突き当てることで該端面とゲージバーの上面とを一致させる配管端面規制具を備えたフレア成形工具が提案された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のフレア成形工具の配管端面規制具は、コ字状の部材で、ゲージバーの一方の側面から上面および下面を抱くようにしてゲージバーにスライド可能に嵌め込まれている。ゲージバーの上面に沿ってスライドするこの配管端面規制具の上片である管端規制片は、ゲージバーのスライド側側面からゲージバーの上面に開口する配管保持孔を塞ぐ長さに形成されている。一方、ゲージバーの下面に沿ってスライドする下面片にはゲージバーの下面に長手方向に設けられたガイド溝にスライド可能に嵌め込まれるガイド爪或いはガイドピンが設けられている。上記ガイド溝はゲージバーの裏面側において一方の側面と配管保持孔との間に掘られている。
【0008】
そして上記フレア成形工具を使用する場合、ゲージバーの配管保持孔に挿入した配管の端面を配管端面規制具の管端規制片に突き当ててゲージバーの上面と配管の端面とを一致させ、次いでフレア加工に干渉しない位置まで配管端面規制具をずらし、最後にゲージバーを移動させて配管のセンタと偏心コーンの下端尖端とを一致させ、この状態でハンドルを回して上記の様にフレア加工を行う。
【0009】
しかしながら、この特許文献1に記載のフレア成形工具では、以下のような問題点がある。
(a)配管端面規制具の装着には、ゲージバーには本来存在しなかったガイド溝を新たにフライス加工で掘らなければならずコスト増に繋がるし、このフレア成形工具では、ガイド溝なしの従来のゲージバーを使用できない。専用のゲージバーが必要となる。
(b)配管端面規制具がゲージバーから外れないようにするために、上記ガイド溝とこのガイド溝に嵌り込んでスライドする抜け止め用のガイドピンや折り返したガイド爪が必要となる。
(c)ガイド溝にガイドされながら配管端面規制具がゲージバーに沿ってスムーズに摺動するには配管端面規制具とゲージバーとの間にある程度のクリアランスが必要となる。配管がゲージバーの配管保持孔に下から挿入され、管端位置決めのために配管端面規制具の管端規制片に配管の端面が突き当たると、このクリアランス分だけ管端規制片が持ち上げられてその分だけ管端規制片がゲージバーの上面から離れ、これがフレア加工の不良に繋がる。
(d)配管端面規制具は、ゲージバーに軽くスライドするように取り付けられており、固定手段がないので、管端位置決め作業中に配管端面規制具から手が離れると管端位置決め中の配管保持孔から離脱することがある。
(e)ガイド溝はゲージバーの一方の下面側辺に沿って設けられているため、配管端面規制具はガイド溝が設けられている側の側辺しか取り付けることが出来ない。換言すれば、施工現場の状況に応じてゲージバーの両側面を使えず、不便である。
【0010】
本発明はこのような従来例の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、従来のゲージバーが使用でき、且つゲージバーのいずれの側面側からでも装着できて施工現場の状況に応じた使い方が出来、更にゲージバーに挿入された配管の端面とゲージバーの上面とを確実に一致させることができる配管端面規制具と、該規制具を具備したフレア成形工具を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明(
図5~
図7)は、
下面から上面22jに貫通し、金属配管Pの端部を保持する複数の配管保持孔40を複数有するゲージバー22を具備し、前記ゲージバー22がスライド自在に保持され、前記ゲージバー22のいずれかの配管保持孔40に保持されている金属配管Pの端部にフレア加工を施すフレア成形工具Aに用いられる配管端面規制具1であって、
前記配管端面規制具1は、前記ゲージバー22の上面22jに沿って前記配管保持孔40内に突き出た大きさを有し、上記の選択された配管保持孔40に下面側から挿入された金属配管Pの端面Tが当接する管端規制片2を備え、且つ前記ゲージバー22に磁気吸着する磁気、或いは磁石5を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載した配管端面規制具1に於いて(
図5、
図6)、
前記配管端面規制具1は、前記管端規制片2と、前記ゲージバー22の一方の側面に沿って配置される側面片3と、前記ゲージバー22の下面に沿って配設された下面片4とで構成され、前記側面片3の上端は前記管端規制片2の一方の端部に接続され、前記側面片3の下端は下面片4の一方の端部に接続されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項3は、請求項1に記載した配管端面規制具1に於いて(
図7)、
前記配管端面規制具1は、前記管端規制片2と、前記ゲージバー22の一方の側面に沿って配置される側面片3とで構成され、前記側面片3の上端は前記管端規制片2の一方の端部に接続されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載した発明は、
下面から上面22jに貫通し、金属配管Pの端部を保持する複数の配管保持孔40を有するゲージバー22と、前記ゲージバー22に取り付けられ、前記ゲージバー22の長手方向に沿ってスライドし、前記金属配管Pの端部を配管保持孔40のフレア加工面41に押圧してフレアを形成する円錐状の偏心コーン16を保持するヨーク本体24と、前記ゲージバー22の長手方向に沿ってスライドし、前記金属配管Pの端面Tを、前記フレア加工面41が形成された前記ゲージバー22の上面22jに一致させる請求項1~3のいずれかに記載の配管端面規制具1とを備えるフレア成形工具Aである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管端面規制具1がゲージバー22に磁気吸着されるので、金属配管Pに端面Tがその管端規制片2に突き当てられたとしてもこの突き当て力によって位置ずれを起こすことなく該端面Tをゲージバー22の上面22jに確実に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかるフレア成形工具を示す斜視図である。
【
図2】(a)
図1におけるフレア加工時のX-X’縦断面矢視図、(b)係止ピンと係脱孔の関係をB方向から見た部分断面図である。
【
図3】
図1におけるフレア加工前或いは加工後のX-X’縦断面拡大矢視図である。
【
図4】ゲージバーに第1実施形態の配管端面規制具を装着した部分拡大図である。
【
図5】(a)配管端面規制具の第1実施形態の装着状態を示す縦断面図、(b)同配管端面規制具の平面図、(c)同配管端面規制具の底面図である。
【
図6】配管端面規制具の第2実施形態の装着状態を示す縦断面図である。
【
図7】配管端面規制具の第3実施形態の装着状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係るフレア成形工具Aについて図面を参照しつつ詳細に説明する。フレア成形工具Aは、大略、ゲージバー22、ヨーク本体24、配管端面規制具1及び機構部20とで構成されている。
機構部20は、回転ハンドル12、コーンシャフト14、偏心コーン16、フィードスクリュ18及び押圧バネ26などで構成されている。
【0018】
回転ハンドル12は、その外形が円形ブロック状のもので、その周囲には6つの握り部12aが等角度間隔で外方に張り出している(
図1参照)。
回転ハンドル12の上面中央には、断面矩形状のドライバ穴12bが軸心に一致させて凹設されており、下面には、ドライバ穴12bと同軸で断面円形状のシャフト取付孔12cがドライバ穴12bと連通して形成されている。
【0019】
また、このシャフト取付孔12cの近傍には、係止ピン保持穴12dがシャフト取付孔12cと平行に穿設されている。係止ピン保持穴12dには、係止ピン36がその出没方向にてスライド可能に挿入されており、係止ピン保持穴12d内に収納されたコイルスプリング37にて押し出し方向に押圧付勢されている。
【0020】
コーンシャフト14は、細いシャフト本体14aと、下端部にシャフト本体14aより太径のコーン取付部14bとで形成されており、シャフト本体14aの上端部がシャフト取付坑12cに挿入されている。そして、上記係止ピン36には、その外周に凹溝38が設けられており、シャフト本体14aに直角に取り付けられた保持ピン28の先端が嵌め込まれており、回転ハンドル12とコーンシャフト14とが所定の上下方向の遊びを以って一体的に上下方向に移動できるように係止固定されている。なお、図示しないが、係止ピン36には回り止めが設けられており、係脱孔18fで回転しない。
【0021】
コーン取付部14bの下面には、コーンシャフト14に対して傾斜した傾斜穴14cが穿設されており、スラストベアリング30及びニードルベアリング32を介して偏心コーン16の偏心軸16aが偏心回転可能に挿入されている。偏心軸16aには、傾斜穴14cから偏心軸16aが脱落することを防止する抜け止め用のC形リング34が装着されている。これにより偏心コーン16はコーンシャフト14の中心軸を中心にしてその周囲を回転する。なお、円錐状の偏心コーン16の先端は、コーンシャフト14の中心軸に一致し、偏心コーン16の母線は、後述するゲージバー22の配管保持孔40のフレア加工面41に一致するように設けられている。
【0022】
コーン取付部14bの上端外周縁は、抜け止め用の係合縁14dとなっていて、後述するヨーク本体24の雌ネジ24bが螺設されているフィードスクリュ孔24aの下端で、段状に形成されている下縁に係合する。
【0023】
偏心コーン16は、偏心軸16aと円錐ヘッド16bとで構成されており、円錐ヘッド16bがコーン取付部14bの下面から傾斜して露出している。
【0024】
フィードスクリュ18は、その上部に円盤状のフランジ部18aが形成され、フランジ部18aの下面からフランジ部18aより細い胴部18bが垂設されている。胴部18bの挿入先端部分には、ネジが刻設されていない(雄ネジ18cの谷径と同じまたはそれよりも小さい直径)円筒部18gが設けられ、該円筒部18gとフランジ部18aとの間に雄ネジ18cが刻設されている。円筒部18gの外径は、雄ネジ18cの谷径と同じまたはそれよりも小さい直径なので、後述するヨーク本体24に刻設された雌ネジ24bの山の内径より若干細い寸法に形成されている。
【0025】
そして、フランジ部18aから胴部18bの途中にかけてコーンシャフト14のシャフト本体14aが回転自在かつ摺動自在に挿通されるスライド孔18dが穿設されており、スライド孔18dの下端から胴部18bの下面にかけて太いバネ収納孔18eが穿設されている。
【0026】
前記フランジ部18aには、上下に貫通する係脱孔18fが穿設されており、この係脱孔18fに、係止ピン保持穴12d内に挿入されている係止ピン36の下端が嵌り込んでいる。
【0027】
ゲージバー22は、開閉自在な棒状の半体部材22a,22bからなり、半体部材22a,22bを閉じた状態で、その合わせ面に径の異なる複数の配管保持孔40が形成されている。従って、各配管保持孔40は、半割れ状に形成されている。そして、ゲージバー22の上面22j側の、配管保持孔40の開口縁には断面V形に大きく面取りされたフレア加工面41が形成されている。
【0028】
ヨーク本体24は門型の下部(ゲージ支持部24f)とその上面に一体的に設けられた筒状部24gとで形成され、筒状部24gには、上面に開口するフィードスクリュ孔24aが穿設され、フィードスクリュ孔24aの内周面に雌ネジ24bが穿設されている。
【0029】
フィードスクリュ孔24aの下縁(この部分がコーンシャフト14のコーン取付部14bとの係合部である抜け止め段部24cである)からフィードスクリュ孔24aより内径の大きな中間孔部24dが形成され、中間孔部24dの下縁から中間孔部24dより更に内径の大きな下部孔部24eが形成され、ヨーク本体24の下部に設けられたゲージ支持部24fに開口している。
【0030】
ここで、フィードスクリュ孔24aの内径は、コーン取付部14bの外径より小さく、中間孔部24dの内径は、コーン取付部14bの外径よりやや大きく、フィードスクリュ18の螺退と共にコーンシャフト14が筒状部24g側に引き込まれた時には、コーン取付部14bが中間孔部24d内に収納されるようになっている(
図3参照)。
上記下部孔部24e内にはニードルベアリング25が装着されており、コーン取付部14bの回転を支えている。
【0031】
フィードスクリュ孔24aの下縁は、中間孔部24dに対して段状に形成されており、この段状部分が、フィードスクリュ18の螺退時のコーンシャフト14の引き込みで、コーン取付部14bの上縁の係合縁14dと係合する。この時、フィードスクリュ孔24aの雌ネジ24bからフィードスクリュ18の雄ネジ18cが螺脱し、ネジが刻設されていない円筒部18gが雌ネジ24b内を空回りする。
【0032】
押圧バネ26は、バネ収納孔18eに収納されており、その上端は、バネ収納孔18eの天井に弾接し、その下端は、スラストベアリング27を介してコーン取付部14bに弾接し、コーンシャフト14をフィードスクリュ18から下方に抜き出す方向に押圧付勢している。
【0033】
ヨーク本体24のゲージ支持部24fは、ヨーク本体24の下部にて、その前・後壁を貫通し、その両側壁の内面にゲージバー22が挿通されるゲージバー摺動溝24hを有する門型の部分である。ゲージバー摺動溝24hはヨーク本体24の中心軸に対して直角に形成されている。このゲージ支持部24fの一方の壁面には、ゲージバー22を偏心コーン16の回転中心に一致して固定するように締付クランプ42が設けられている。
【0034】
配管端面規制具1は、
図5~
図7に示すように様々な形状のものがある。ここでは、第1実施形態について説明する(
図5)。
図5に示す配管端面規制具1は、金属(例えば、鉄のような強磁性体)製で縦断面コ字状に形成されたもので、上片がゲージバー22の上面をその長手方向にスライドする管端規制片2、下片がゲージバー22の下面をその長手方向にスライドする下面片4で、管端規制片2と下面片4とが側面片3で繋がっている。即ち、側面片3の上端は前記管端規制片2の一方の端部に接続され、前記側面片3の下端は下面片4の一方の端部に接続されている。
管端規制片2と下面片4との間の距離(側面片3の長さ)は、ゲージバー22の上下の厚みとほぼ同じでゲージバー22に沿ってスライドできるようになっている。
【0035】
上記管端規制片2の側面片3側の接続端からその先端部までの長さは、ゲージバー22の配管保持孔40を一部又は全体を覆うことができるだけの長さ或いは幅に設定されており、管端規制片2の下面でゲージバー22の上面22jに摺接する面を、金属配管Pの管端Tが突き当たる規制面2aとする。配管保持孔40上に位置する管端規制片2の先端は、先端に行くほどその幅が漸減するV形、図示していないが、四角形、円形等に形成されている。
そして、側面片3の内面には窪み3aが形成されており、この窪み3aの中に磁石5が取り付けられている。
【0036】
この配管端面規制具1は、
図4に示すように、ゲージバー22に側面から嵌め込まれ、磁石5によってゲージバー22の側面に磁気吸着され、その管端規制片2はゲージバー22の配管保持孔40を上面から覆うことになる。この場合、現場に合わせていずれの側面から配管端面規制具1を嵌め込んで使用することが出来る。
【0037】
配管端面規制具1の側面片3に固着された磁石5は、ゲージバー22に磁気吸着する部分と、側面片3側の部分とが異極に着磁され、ゲージバー22の側面に強く磁気吸着する。
磁気吸着された配管端面規制具1の下面片4は、ゲージバー22の下面に開口する配管保持孔40を開放しておかなければならないので、その長さは管端規制片2より短く、配管保持孔40に至らない。
【0038】
以上のように構成されたフレア成形工具Aを用いて金属配管Pの端部にフレア加工を施す手順の一例を説明する。
ゲージバー22は、締付クランプ42を緩めた状態で、ヨーク本体24のゲージバー摺動溝24hにスライド自在に差し込まれており、ゲージバー摺動溝24hの内寸とゲージバー22の横幅とのクリアランスにより、ゲージバー22を大きい角度で開閉できるようになっている。
【0039】
まず、フレア加工しようとする金属配管Pに合致した内径の配管保持孔40を選択し、当該配管保持孔40から離れた位置までヨーク本体24を移動させる。続いて、配管端面規制具1を当該配管保持孔40まで移動させる。移動した配管端面規制具1の管端規制片2は、ゲージバー22の上面22jに接した状態で当該配管保持孔40の上面開口を塞ぐ。
【0040】
そして、配管端面規制具1を設置した配管保持孔40にその下面開口側から金属配管Pの端部を挿入し、金属配管Pの端面Tを管端規制片2に突き当て、ゲージバー22の上面22jと金属配管Pの端面Tとを一致させる。この時、金属配管Pの端面Tが管端規制片2の規制面2aにある程度の力を以って突き当たったとしても配管端面規制具1が磁石5によりゲージバー22に磁気吸着しているので、スライド移動を可能にするために、仮にゲージバー22と配管端面規制具1との間に僅かながらの隙間があったとしても上記強い磁気吸着により配管端面規制具1がゲージバー22からずれるようなことがなく、更に言えば、強い磁気吸着力により、ゲージバー22の上面22jから規制面2aが離れるようなことがなく、ゲージバー22の上面22jと金属配管Pの端面Tとを一致させることができる。然る後、金属配管Pをその状態で保持したままで、配管端面規制具1をヨーク本体24に干渉しない位置までずらす。次いで、金属配管Pを挟持した配管保持孔40の直上までヨーク本体24を移動させる。
【0041】
続いて、締付クランプ42を締めてゲージバー22をヨーク本体24にしっかりと固定する。この時点で対応する配管保持孔40の金属配管Pの中心とコーンシャフト14の軸心とが一致する。
【0042】
軸心が一致した処で、回転ハンドル12を正転させると、回転ハンドル12の回転力がコーンシャフト14へと伝達され、フィードスクリュ18がヨーク本体24内を螺進することにより偏心コーン16がゲージバー22側に移動し、金属配管Pの端部Tが偏心コーン16によってフレア加工面41に沿って押し広げられフレア加工される(
図2)。
【0043】
金属配管Pのフレア加工が完了した状態で更に回転ハンドル12を正転させると、偏心コーン16は金属配管Pのフレア加工部分上で滑りながら回転し、コーンシャフト14はその位置で停止しているが、フィードスクリュ18は回転ハンドル12の正転に合わせて更に螺進する。これによって保持ピン28に係止してその位置で停止している係止ピン36に対してフィードスクリュ18の係脱孔18fが保持ピン28から抜ける方向に移動する。
【0044】
図2(b)に示すように、保持ピン28の挿入下端の傾斜面36aまで抜けると、傾斜面36aは係脱孔18fの開口縁に当接して滑り、保持ピン28がコイルスプリング37に抗して押し上げられ、係脱孔18fから離脱して回転ハンドル12が空回りする。これにより、フィードスクリュ18の螺進が止まり、フレア加工の終了が分かる。
【0045】
フレア加工が完了すると、回転ハンドル12を反時計周り方向に回転させる。回転ハンドル12を反時計周り方向に回転させと、
図2(b)から分かるように、コイルスプリング37の弾発力により、保持ピン28の傾斜面36aの反対側の側面36bが係脱孔18fに入り込んで係脱孔18fの開口縁に係止し、フィードスクリュ18を反時計周り方向に回転させて螺脱方向に移動させる。これにより、偏心コーン16が引き上げられ、金属配管Pのフレア加工部分から離脱する。
そして、締付クランプ42を緩め、ゲージバー22を開き、半体部材22a,22bを広げてフレア加工が施された金属配管Pを抜き取り、フレア加工が終了する。
【0046】
配管端面規制具1の別の例を説明する。
図5の配管端面規制具1は、上記のようにその側面片3に磁石5を設置したものであるが、磁石5の設置位置はこの部分に限定されるものでなく、管端規制片2に設けてもよい。管端規制片2に磁石5を設けると、ゲージバー22の上面22jに管端規制片2が直接磁気吸着され、磁石5を側面片3に設けるより好ましい。また、上記の場合は磁石5を用いたものであるが、配管端面規制具1自体を磁石板で構成してもよい(
図6)。この場合は内面側と外面側とが異極に着磁される。
【0047】
図7は、配管端面規制具1を磁石板で構成し、配管端面規制具1全体でゲージバー22の上面22jと側面に磁気吸着させるもので、下面片4を省略し、断面L字状としたものである。配管端面規制具1の最もシンプルな構造としては、図示していないが、配管端面規制具1を磁石板で構成し、側面片3をなくし、管端規制片2だけで構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
A:フレア成形工具、P:金属配管、T:端面、1:配管端面規制具、2:管端規制片、2a:規制面、3:側面片、3a:窪み、4:下面片、5:磁石、12:回転ハンドル、12a:握り部、12b:ドライバ穴、12c:シャフト取付孔、12d:係止ピン保持穴、14:コーンシャフト、14a:シャフト本体、14b:コーン取付部、14c:傾斜穴、14d:係合縁、16:偏心コーン、16a:偏心軸、16b:円錐ヘッド、18:フィードスクリュ、18a:フランジ部、18b:胴部、18c:雄ネジ、18d:スライド孔、18e:バネ収納孔、18f:係脱孔、18g:円筒部、20:機構部、22:ゲージバー、22a・22b:半体部材、22j:上面、24:ヨーク本体、24a:フィードスクリュ孔、24b:雌ネジ、24c:抜け止め段部、24d:中間孔部、24e:下部孔部、24f:ゲージ支持部、24g:筒状部、24h:ゲージバー摺動溝、25:ニードルベアリング、26:押圧バネ、27:スラストベアリング、28:保持ピン、30:スラストベアリング、32:ニードルベアリング、34:C形リング、36:係止ピン、36a:傾斜面、36b:傾斜面の反対側の側面、37:コイルスプリング、38:凹溝、40:配管保持孔、41:フレア加工面、42:締付クランプ