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特許7601383ステアリングコラム装置およびステアリングコラム装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置およびステアリングコラム装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/181 20060101AFI20241210BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B62D1/181
B62D1/185
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021106549
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023004690
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】本橋 祐也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 早紀矢
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0029009(US,A1)
【文献】特開2021-045999(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112109796(CN,A)
【文献】特開2018-192929(JP,A)
【文献】特開2020-179841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースブラケットと第一コラムと第二コラムとを有するステアリングコラムと、
前記ベースブラケットと前記第一コラムとを前後方向に相対移動させる第一アクチュエータと、
前記第一コラムと前記第二コラムとを前後方向に相対移動させる第二アクチュエータと、
前記第一アクチュエータおよび前記第二アクチュエータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一ストローク量と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二ストローク量と、を算出し、
前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一目標速度と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二目標速度とを、前記第一ストローク量と前記第二ストローク量とに基づいて算出する、
ステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第一アクチュエータが、前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して前記第一目標速度で前記第一ストローク量だけ移動させる第一目標時間と、
前記第二アクチュエータが、前記第二コラムを前記第一コラムに対して前記第二目標速度で前記第二ストローク量だけ移動させる第二目標時間と、
を一致させる、
請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
ベースブラケットと第一コラムと第二コラムとを有するステアリングコラムと、
前記ベースブラケットと前記第一コラムとを前後方向に相対移動させる第一アクチュエータと、
前記第一コラムと前記第二コラムとを前後方向に相対移動させる第二アクチュエータと、
前記第一アクチュエータおよび前記第二アクチュエータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一ストローク量と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二ストローク量とを、前記第一アクチュエータによって駆動される前記ベースブラケットに対する前記第一コラムの第一最大速度と、前記第二アクチュエータによって駆動される前記第一コラムに対する前記第二コラムの第二最大速度との比率に基づいて算出する、
ステアリングコラム装置。
【請求項4】
ベースブラケットと第一コラムと第二コラムとを有するステアリングコラムと、
前記ベースブラケットと前記第一コラムとを前後方向に相対移動させる第一アクチュエータと、
前記第一コラムと前記第二コラムとを前後方向に相対移動させる第二アクチュエータと、
を備えるステアリングコラム装置を制御する方法であって、
前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一ストローク量と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二ストローク量と、を算出し、
前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一目標速度と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二目標速度とを、前記第一ストローク量と前記第二ストローク量とに基づいて算出する、
ステアリングコラム装置の制御方法。
【請求項5】
前記第一アクチュエータが、前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して前記第一目標速度で前記第一ストローク量だけ移動させる第一目標時間と、
前記第二アクチュエータが、前記第二コラムを前記第一コラムに対して前記第二目標速度で前記第二ストローク量だけ移動させる第二目標時間と、
を一致させる、
請求項4に記載のステアリングコラム装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングコラム装置およびステアリングコラム装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールの前後方向の位置を調整するテレスコピック機構と、ステアリングホイールの上下方向の角度を調整するチルト機構と、を有するステアリングコラム装置が使用されている。
【0003】
多段階に伸縮するテレスコピック機構を備えたステアリングコラム装置が考案されている。特許文献1に記載されたステアリングコラム装置は、調整アクチュエータおよび収縮アクチュエータによりステアリングコラムが2段階に伸縮して、ステアリングホイールを所定の位置に移動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9849904号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたステアリングコラム装置は、2段階に伸縮するステアリングコラムを好適に制御する方法を備えていない。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、多段階に伸縮するステアリングコラムを好適に制御できるステアリングコラム装置およびステアリングコラム装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るステアリングコラム装置は、ベースブラケットと第一コラムと第二コラムとを有するステアリングコラムと、前記ベースブラケットと前記第一コラムとを前後方向に相対移動させる第一アクチュエータと、前記第一コラムと前記第二コラムとを前後方向に相対移動させる第二アクチュエータと、前記第一アクチュエータおよび前記第二アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一ストローク量と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二ストローク量と、を算出し、前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一目標速度と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二目標速度とを、前記第一ストローク量と前記第二ストローク量とに基づいて算出する。
【0008】
本発明の第二の態様に係るステアリングコラム装置の制御方法は、ベースブラケットと第一コラムと第二コラムとを有するステアリングコラムと、前記ベースブラケットと前記第一コラムとを前後方向に相対移動させる第一アクチュエータと、前記第一コラムと前記第二コラムとを前後方向に相対移動させる第二アクチュエータと、を備えるステアリングコラム装置を制御する方法であって、前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一ストローク量と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二ストローク量と、を算出し、前記第一コラムを前記ベースブラケットに対して移動させる第一目標速度と、前記第二コラムを前記第一コラムに対して移動させる第二目標速度とを、前記第一ストローク量と前記第二ストローク量とに基づいて算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のステアリングコラム装置およびステアリングコラム装置の制御方法によれば、多段階に伸縮するステアリングコラムを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一実施形態に係るステアリングコラム装置を備えるステアリング装置の構成を示す模式図である。
図2】同ステアリングコラム装置を示す斜視図である。
図3】同ステアリングコラム装置を示す斜視図である。
図4】同ステアリングコラム装置の断面図である。
図5】同ステアリングコラム装置のコラムホルダの斜視図である。
図6】同ステアリングコラム装置の制御装置の構成を示す図である。
図7】同制御装置の機能ブロック図である。
図8】同制御装置の制御フローチャートである。
図9】第二実施形態に係るステアリングコラム装置の制御装置の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るステアリングコラム装置100を備えるステアリング装置300の構成を示す模式図である。
【0012】
[ステアリング装置300]
ステアリング装置(操舵装置)300は、図1に示すように、車両を操向するための操舵部材であるステアリングホイール(入力機構)200と、ステアリングホイール200の回転に連動して操向車輪を転舵する転舵機構210と、ドライバの操舵を補助する操舵補助機構230と、を備える。
【0013】
転舵機構210は、ステアリングコラム装置100と、ステアリングホイール200に連結されたステアリングシャフト220と、ユニバーサルジョイント224と、中間軸225と、ピニオンラック機構226と、タイロッド227a,227bと、ハブユニット228a,228bと、を備える。
【0014】
ステアリングシャフト220は、ユニバーサルジョイント224、中間軸225、ピニオンラック機構226、タイロッド227a,227bを経て、さらにハブユニット228a,228bを介して操向車輪に連結される。
【0015】
ピニオンラック機構226は、図示しないピニオンとラックとを有している。
ピニオンは、中間軸225に連結しており、中間軸225の回転に連動して回転する。
ラックは、自動車の左右方向(直進方向に直交する方向)に沿って直線状に延びている。ラックは、ラックの軸方向の中間部付近において、ピニオンと噛み合う。ピニオンおよびラックは、ピニオンの回転をラックの軸方向移動に変換する。ラックを軸方向に移動させることにより、操向車輪が転舵される。
【0016】
ドライバによってステアリングホイール200が操舵(回転)されると、ステアリングホイール200の回転が、ステアリングシャフト220および中間軸225を介して、ピニオンに伝達される。そして、ピニオンの回転は、ラックの軸方向移動に変換される。ピニオンラック機構226の両端部に連結されたタイロッド227a,227bおよびハブユニット228a,228bがラックの軸方向に移動し、ハブユニット228a,228bに連結された操向車輪が転舵される。
【0017】
なお、転舵機構210は、ステアリングシャフト220と操向車輪を転舵するタイロッド227a,227bとが電気的に接続されたステアバイワイヤ方式であってもよい。
【0018】
以降の説明において、ステアリング装置300を車両に取り付けた状態において、ステアリングシャフト220の軸方向Aに沿って車両の前方に向う向きを「前方FR」と定義する。その反対向きを「後方RR」と定義する。前方FRまたは後方RRに向かう方向を「前後方向」と定義する。
【0019】
前後方向と垂直な方向において、車両の上方に向う向きを「上方UP」と定義する。その反対向きを「下方LWR」と定義する。上方UPまたは下方LWRに向かう方向を「上下方向」と定義する。
【0020】
前後方向および左右方向と垂直な方向において、後方に向かって右向きを「右方RH」と定義する。その反対向きを「左方LH」と定義する。右方RHまたは左方LHに向かう方向を「左右方向」または「幅方向」と定義する。
【0021】
図2および図3は、ステアリングコラム装置100を示す斜視図である。
操舵補助機構230は、減速機構231と、電動モータ(図示省略)と、ECU(図示省略)と、ハウジング240と、を備える。
【0022】
減速機構231は、例えばウォームギヤ機構を有する。ウォームギヤ機構のウォームは、電動モータによって回転駆動される。また、ウォームギヤ機構のウォームホイールは、ステアリングシャフト220に一体回転可能に連結されている。
【0023】
電動モータは、ステアリングシャフト220の操舵力を補助する電動モータであって、例えば三相ブラシレスモータである。電動モータは、減速機構231を介してステアリングシャフト220に連結されている。
【0024】
ECU(コントロールユニット)は、プログラム実行可能な装置(コンピュータ)を有する。ECUは、電動モータを駆動制御することで減速機構231を介してステアリングシャフト220に所望のトルクを発生させて、運転者の操舵操作を補助する。
【0025】
[ステアリングコラム装置100]
ステアリングコラム装置100は、ステアリングホイール200を支持する装置であり、ステアリングホイール200の前後方向の位置を調整するテレスコピック機構と、ステアリングホイール200の上下方向の角度を調整するチルト機構と、を有する。ステアリングコラム装置100は、ステアリングシャフト220を支持するステアリングコラム10と、リトラクタブルアクチュエータ6と、テレスコアクチュエータ7と、チルトアクチュエータ8と、制御装置9と、を備える。
【0026】
リトラクタブルアクチュエータ6およびテレスコアクチュエータ7は、2段階に伸縮するテレスコピック機構の一部を構成する。チルトアクチュエータ8は、チルト機構の一部を構成する。リトラクタブルアクチュエータ6、テレスコアクチュエータ7およびチルトアクチュエータ8は、制御装置9によって制御される。
【0027】
図4は、ステアリングコラム装置100の断面図である。
ステアリングシャフト220は、インナシャフト221と、アウタシャフト222と、を有する。インナシャフト221とアウタシャフト222とは、軸方向Aに沿う軸を回転軸とした相対回転が不能であって、前後方向に沿って相対移動が可能に連結されている。本実施形態において、前方FRのインナシャフト221と後方RRのアウタシャフト222とは、スプライン係合により連結されている。
【0028】
ステアリングシャフト220の後方RRの端部、すなわちアウタシャフト222の後方RRの端部には、ステアリングホイール200が取り付けられている。また、ステアリングシャフト220の前方FRの端部、すなわちインナシャフト221の前方FRの端部には、ドライバの操舵を補助する操舵補助機構230が設けられている。
【0029】
[ステアリングコラム10]
ステアリングコラム10は、ステアリングシャフト220を支持する軸管部材である。ステアリングコラム10は、車体に取り付けられるベースブラケット1と、コラムホルダ2と、ロアコラム3(第一コラム)と、インナコラム4と、アッパコラム5(第二コラム)と、を有する。
【0030】
ステアリングコラム10は、前後方向に沿って全長を伸縮可能である。具体的には、ステアリングコラム10において、ベースブラケット1とコラムホルダ2とは、前後方向に沿って相対移動可能に連結されている。また、ステアリングコラム10において、コラムホルダ2とアッパコラム5とは、前後方向に沿って相対移動可能に連結されている。
【0031】
図5は、コラムホルダ2の斜視図である。
コラムホルダ2は、ベースブラケット1に対して前後方向に沿って相対移動可能に連結されている。コラムホルダ2は、変位板部21と、一対の垂下板部(右垂下板部22a,左垂下板部22b)と、上下方向に揺動可能にロアコラム3を支持する揺動支持ブラケット部23と、を有する。
【0032】
変位板部21は、上下方向から見て前後方向に伸長する矩形形状を有する。一対の垂下板部(右垂下板部22a,左垂下板部22b)は、変位板部21の幅方向両側の端部から下方LWRに向けて垂下している。
【0033】
揺動支持ブラケット部23は、前後方向から見て略U字形形状に形成されており、変位板部21の後方RRの端部に固設されている。揺動支持ブラケット部23は、揺動支持ブラケット部23に対して上下方向に揺動可能にロアコラム3を支持するチルト用位置調整装置81が設けられている。支持されたロアコラム3は、変位板部21と揺動支持ブラケット部23とに囲まれた空間を通過する。
【0034】
ロアコラム3(第一コラム)は、略円筒形状を有し、コラムホルダ2の揺動支持ブラケット部23に上下方向の揺動可能かつ、前後方向への移動不可能に支持されている。ロアコラム3は、図4に示すように、前方FRに配置された大径部32と、後方RRに配置された小径部33と、を有する。小径部33の内径寸法は、大径部32の内径寸法よりも小さい。また、ロアコラム3は、下面において軸方向に延びるスリット34を有する。
【0035】
大径部32は、前方FRの端部の上面にねじ孔35aを有する。ねじ孔35aには、ポリアセタール(POM)などの摩擦係数が小さい材料製のパッド36aが先端部に接着固定されたスクリュープラグ37aが螺合されている。
【0036】
小径部33は、前方FRの端部の上面にねじ孔35bを有する。ねじ孔35bには、ポリアセタール(POM)などの摩擦係数が小さい材料製のパッド36bが先端部に接着固定されたスクリュープラグ37bが螺合されている。
【0037】
インナコラム4は、図2から図4に示すように、円筒部45と、円筒部45の前方FRの端部から径方向外側に向けて折れ曲がったフランジ部46と、を有する。フランジ部46は、ハウジング240を介して、ベースブラケット1を左右方向に挿通する枢支ボルト49により、ベースブラケット1に回転可能に支持されている。
【0038】
インナコラム4とロアコラム3とは、前後方向に沿って相対移動可能に連結されている。具体的には、インナコラム4の円筒部45の後側部分が、ロアコラム3の大径部32に隙間嵌で内嵌している。ロアコラム3の前側のねじ孔35aに螺合したスクリュープラグ37aのパッド36aは、円筒部45の後側部分の外周面に突き当たっている。
【0039】
アッパコラム5(第二コラム)は、図4に示すように、略円筒形状に形成されている。ロアコラム3とアッパコラム5とは、前後方向に沿って相対移動可能に連結されている。具体的には、アッパコラム5の前側部分が、ロアコラム3の小径部33に隙間嵌で内嵌している。ロアコラム3の後側のねじ孔35bに螺合したスクリュープラグ37bのパッド36bは、アッパコラム5の前側部分の外周面に突き当たっている。
【0040】
アッパコラム5は、第一軸受部51と、第二軸受部52と、を有する。第一軸受部51は、アッパコラム5の前方FRの端部に設けられており、アウタシャフト222を回転自在に支持する。第二軸受部52は、アッパコラム5の後方RRの端部に設けられており、アウタシャフト222を回転自在に支持する。
【0041】
[リトラクタブルアクチュエータ6]
リトラクタブルアクチュエータ6(第一アクチュエータ)は、リトラクタブル用モータ60と、リトラクタブル用位置調整装置61と、を有する。リトラクタブルアクチュエータ6は、リトラクタブル用モータ60を駆動源として、ベースブラケット1に対してコラムホルダ2を前後方向に移動させる。
【0042】
リトラクタブル用モータ60は、リトラクタブル用位置調整装置61を駆動するモータであって、例えばブラシ付きモータやブラシレスモータである。リトラクタブル用モータ60は、リトラクタブル用モータ位置検出センサ60sを有する。リトラクタブル用モータ位置検出センサ60sは、例えば、ホールセンサやレゾルバやエンコードである。リトラクタブル用モータ位置検出センサ60sが検出したリトラクタブル用モータ60のモータ位置は、制御装置9によって取得される。
【0043】
リトラクタブル用位置調整装置61は、図2に示すよう、外周面に雄ねじ部を有する第一ねじ軸62と、内周面に雌ねじ部を有する第一ナット63と、を有する。第一ねじ軸62の雄ねじ部と第一ナット63の雌ねじ部とは螺合する。第一ねじ軸62は、前後方向に沿う軸を回転軸をとして、リトラクタブル用モータ60により回転駆動される。
【0044】
第一ねじ軸62の後方RRの端部は、リトラクタブル用モータ60により回転駆動可能に支持されている。また、第一ナット63は、コラムホルダ2の左垂下板部22bの左方LHの側面に対して固定されている。また、リトラクタブル用モータ60は、ベースブラケット1の左方LHの側面に固定されている。
【0045】
リトラクタブル用モータ60がウォーム減速機などの減速機構を介して第一ねじ軸62を回転駆動することに伴って第一ねじ軸62に沿って第一ナット63が前後方向に移動することにより、コラムホルダ2およびコラムホルダ2に支持されたロアコラム3がベースブラケット1に対して前後方向に移動する。
【0046】
[テレスコアクチュエータ7]
テレスコアクチュエータ7(第二アクチュエータ)は、テレスコ用モータ70と、テレスコ用位置調整装置71と、を有する。テレスコアクチュエータ7は、テレスコ用モータ70を駆動源として、コラムホルダ2に対してアッパコラム5を前後方向に移動させる。
【0047】
テレスコ用モータ70は、テレスコ用位置調整装置71を駆動するモータであって、例えばブラシ付きモータやブラシレスモータである。テレスコ用モータ70は、テレスコ用モータ位置検出センサ70sを有する。テレスコ用モータ位置検出センサ70sは、例えば、ホールセンサやレゾルバやエンコードである。テレスコ用モータ位置検出センサ70sが検出したテレスコ用モータ70のモータ位置は、制御装置9によって取得される。
【0048】
テレスコ用位置調整装置71は、図2に示すように、外周面に雄ねじ部を有する第二ねじ軸72と、内周面に雌ねじ部を有する第二ナット73と、を有する。第二ねじ軸72の雄ねじ部と第二ナット73の雌ねじ部とは螺合する。第二ねじ軸72は、前後方向に沿う軸を回転軸をとして、テレスコ用モータ70により回転駆動される。
【0049】
第二ねじ軸72の後方RRの端部は、テレスコ用モータ70により回転駆動可能に支持されている。また、第二ナット73は、アッパコラム5の下面に対して固定されている。第二ナット73は、図4に示すように、ロアコラム3に形成されたスリット34を通過している。また、テレスコ用モータ70は、ロアコラム3の大径部32の下面に対して固定されている。
【0050】
テレスコ用モータ70がウォーム減速機などの減速機構を介して第二ねじ軸72を回転駆動することに伴って第二ねじ軸72に沿って第二ナット73が前後方向に移動することにより、アッパコラム5がロアコラム3に対して前後方向に移動する。
【0051】
[チルトアクチュエータ8]
チルトアクチュエータ8は、チルト用モータ80と、チルト用位置調整装置81と、を有する。チルトアクチュエータ8は、チルト用モータ80を駆動源として、コラムホルダ2に対してロアコラム3を上下方向に移動させる。
【0052】
チルト用モータ80は、チルト用位置調整装置81を駆動するモータであって、例えばブラシ付きモータやブラシレスモータである。チルト用モータ80は、チルト用モータ位置検出センサ80sを有する。チルト用モータ位置検出センサ80sは、例えば、ホールセンサやレゾルバやエンコードである。チルト用モータ位置検出センサ80sが検出したチルト用モータ80のモータ位置は、制御装置9によって取得される。
【0053】
チルト用位置調整装置81は、図5に示すように、外周面に雄ねじ部を有する第三ねじ軸82と、内周面に雌ねじ部を有する第三ナット83と、を有する。第三ねじ軸82の雄ねじ部と第三ナット83の雌ねじ部とは螺合する。第三ねじ軸82は、チルト用モータ80により回転駆動される。第三ナット83は、外周面に円柱状の枢支軸部84を有する。
【0054】
第三ねじ軸82は、上下方向に沿う軸を回転軸として回転自在に揺動支持ブラケット部23に支持される。第三ナット83の枢支軸部84は、ロアコラム3に固定されている。
【0055】
チルト用モータ80がウォーム減速機などの減速機構を介して第三ねじ軸82を回転駆動することに伴って第三ねじ軸82に沿って第三ナット83が上下方向に移動することにより、連結されたロアコラム3がコラムホルダ2に対して上下方向に移動する。
【0056】
[制御装置9]
図6は、制御装置9の構成を示す図である。
制御装置9は、プロセッサとメモリ等を有するМCU91と、記憶装置92と、通信インターフェイス93と、電源回路94と、モータ駆動回路96aと、位置検出回路96bと、モータ駆動回路97aと、位置検出回路97bと、モータ駆動回路98aと、位置検出回路98bと、を備える。なお、制御装置9の少なくとも一部は、操舵補助機構230のECUと共通化されていてもよい。
【0057】
МCU91は、プログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。МCU91は、所定のプログラムを実行することにより、後述するテレスコ方向目標方向算出部911等の複数の機能ブロックとして機能する。
【0058】
МCU91は、ステアリング装置300が取り付けられる車両が備えるテレスコマニュアルスイッチ402と、チルトマニュアルスイッチ403と、に接続されている。テレスコマニュアルスイッチ402は、ステアリングコラム装置100のテレスコピック機構を操作するスイッチである。チルトマニュアルスイッチ403は、ステアリングコラム装置100のチルト機構を操作するスイッチである。テレスコマニュアルスイッチ402とチルトマニュアルスイッチ403は、後述するステアリングホイール200の位置Xsetの設定や、ステアリングホイール200の位置の調整に用いられる。ステアリング装置300は、ステアリングホイール200の位置を調整するにあたり、リトラクタブルアクチュエータ6とテレスコアクチュエータ7の一方のみを駆動させてもよいし、一定の比率に基づいて両方のアクチュエータを駆動させてもよい。
【0059】
記憶装置92は、MCU91が実行するプログラムやデータを格納する装置である。記憶装置92は、例えばROMやフラッシュメモリやハードディスク等で構成される。
【0060】
通信インターフェイス93は、ステアリング装置300が取り付けられる車両が備える車両ECU400等とМCU91との通信を行うインターフェイス回路である。
【0061】
電源回路94は、ステアリング装置300が取り付けられる車両が備えるバッテリ401等に接続されている。電源回路94は、制御装置9の各装置に電力を供給する。
【0062】
モータ駆動回路96aは、リトラクタブル用モータ60を駆動する。位置検出回路96bは、リトラクタブル用モータ位置検出センサ60sからリトラクタブル用モータ60のモータ位置を取得する。
【0063】
モータ駆動回路97aは、テレスコ用モータ70を駆動する。位置検出回路97bは、テレスコ用モータ位置検出センサ70sからテレスコ用モータ70のモータ位置を取得する。
【0064】
モータ駆動回路98aは、チルト用モータ80を駆動する。位置検出回路98bは、チルト用モータ位置検出センサ80sからチルト用モータ80のモータ位置を取得する。
【0065】
図7は制御装置9の機能ブロック図である。
制御装置9の機能ブロックは、テレスコ方向目標方向算出部911と、リトラクタブル速度制御部912と、リトラクタブルモータ速度算出部913と、リトラクタブルストローク量算出部914と、テレスコ速度制御部915と、テレスコモータ速度算出部916と、テレスコストローク量算出部917と、を有する。
【0066】
テレスコ方向目標方向算出部911は、通信インターフェイス93を経由して車両ECU400から取得した目標速度V、リトラクタブル目標位置Prrおよびテレスコ目標位置Ptr等に基づいて、リトラクタブル目標速度Vrと、テレスコ目標速度Vtを算出する。
【0067】
目標速度Vは、ステアリングコラム10を前後方向に伸縮させる速度である。
リトラクタブル目標位置Prrは、リトラクタブルアクチュエータ6により、ベースブラケット1に対してコラムホルダ2を前後方向に移動させる目標位置である。すなわち、リトラクタブル目標位置Prrは、ベースブラケット1に対するコラムホルダ2の位置の目標値である。なお、リトラクタブル目標位置Prrおよびリトラクタブル現在位置Prsは、リトラクタブルアクチュエータ6が最も短く縮んだ状態をゼロとし、伸びる方向をプラス方向と定義する。
リトラクタブル目標速度Vrは、リトラクタブルアクチュエータ6により、ベースブラケット1に対してコラムホルダ2を前後方向に移動させる目標速度である。
テレスコ目標位置Ptrは、テレスコアクチュエータ7により、コラムホルダ2に対してアッパコラム5を前後方向に移動させる目標位置である。すなわち、テレスコ目標位置Ptrは、コラムホルダ2に対するアッパコラム5の位置の目標値である。なお、テレスコ目標位置Ptrおよびテレスコ現在位置Ptsは、テレスコアクチュエータ7が最も短く縮んだ状態をゼロとし、伸びる方向をプラス方向と定義する。
テレスコ目標速度Vtは、テレスコアクチュエータ7により、コラムホルダ2に対してアッパコラム5を前後方向に移動させる目標速度である。
【0068】
リトラクタブル速度制御部912は、テレスコ方向目標方向算出部911が算出したリトラクタブル目標速度Vrに基づいて、リトラクタブルアクチュエータ6の駆動を制御する。
【0069】
リトラクタブルモータ速度算出部913は、位置検出回路96bが取得したリトラクタブル用モータ60のモータ位置から、リトラクタブル用モータ60のモータ速度を算出するする。リトラクタブル用モータ60のモータ速度は、リトラクタブル速度制御部912においてリトラクタブルアクチュエータ6の駆動における速度PID制御(フィードバック制御)に使用される。
【0070】
リトラクタブルストローク量算出部914は、位置検出回路96bが取得したリトラクタブル用モータ60のモータ位置から、リトラクタブル現在位置Prsを算出する。リトラクタブル現在位置Prsは、ベースブラケット1に対するコラムホルダ2の前後方向における現在位置である。
【0071】
テレスコ速度制御部915は、テレスコ方向目標方向算出部911が算出したテレスコ目標速度Vtに基づいて、テレスコアクチュエータ7の駆動を制御する。
【0072】
テレスコモータ速度算出部916は、位置検出回路97bが取得したテレスコ用モータ70のモータ位置から、テレスコ用モータ70のモータ速度を算出するする。テレスコ用モータ70のモータ速度は、テレスコ速度制御部915においてテレスコアクチュエータ7の駆動における速度PID制御(フィードバック制御)に使用される。
【0073】
テレスコストローク量算出部917は、位置検出回路97bが取得したテレスコ用モータ70のモータ位置から、テレスコ現在位置Ptsを算出する。テレスコ現在位置Ptsは、コラムホルダ2に対するアッパコラム5の前後方向における現在位置である。
【0074】
[目標位置について]
次に、車両ECU400から取得するリトラクタブル目標位置Prrおよびテレスコ目標位置Ptrについて説明する。リトラクタブル目標位置Prrおよびテレスコ目標位置Ptrは、固定パラメータであってもよいし、ユーザ設定可能なパラメータであってもよい。
【0075】
例えば、リトラクタブル目標位置Prrおよびテレスコ目標位置Ptrは、自動車メーカーが設定したステアリングホイール200の位置に基づいて設定された固定パラメータを用いることができる。自動車メーカーが設定したステアリングホイール200の位置は、例えば、推奨のドライブポジションや、自動運転時におけるステアリングホイール200の格納位置である。
【0076】
また、例えば、リトラクタブル目標位置Prrおよびテレスコ目標位置Ptrは、ステアリングホイールの位置の目標値である目標位置Xrefに基づき決定することができる。
この場合、運転者により設定された位置Xsetを、目標位置Xrefとして用いることができる。すなわち、運転者が移動させたステアリングホイール200の任意の位置を位置Xsetとして設定することができる。
【0077】
例えば、運転者がテレスコマニュアルスイッチ402を操作している間、ステアリングホイール200が前後方向に移動するようなステアリングホイール200の位置調整機能を有するステアリングコラム装置では、以下の要領により、位置Xsetは設定される。
【0078】
まず、運転者はスイッチ等を操作し、ステアリングホイール200を任意の位置に移動させる。次に、運転者は、位置設定動作を実行する。位置設定動作は、図示しない位置記憶ボタンを押下することにより実施される。また、位置設定動作は、図示しないダッシュボードに配置された情報入出力端末を操作することにより実施されてもよい。位置設定動作が実施されることにより、任意の位置が位置Xsetとして設定され、車両ECU400側の記憶装置に記憶される。上記要領で設定された位置Xsetは、次回以降に、ステアリングホイール200を格納状態からドライブポジションに移動させる際に用いられる。すなわち、格納位置からドライブポジションに移動させる場合には、目標位置Xref=Xsetに設定し、ドライブポジションから格納位置に移動させる場合には、目標位置Xref=0に設定する。
【0079】
なお、ステアリングホイール200の位置Xset、ステアリングホイール200の現在位置Xsと、リトラクタブル目標位置Prr、リトラクタブル現在位置Prsとテレスコ目標位置Ptr、テレスコ現在位置Ptsとの間には、式1に示す関係が成立する。
Xref-Xs=Prr-Prs+Ptr-Pts・・・(式1)
【0080】
ここで、各現在位置Xs、Prs、Ptsは、位置センサにより検出される。リトラクタブル目標位置Prrとテレスコ目標位置Ptrとの一方の値を決定すること、または、リトラクタブル目標位置Prrとテレスコ目標位置Ptrの比率を決定することにより、リトラクタブル目標位置Prrとテレスコ目標位置Ptrの具体的な値を決定することができる。
【0081】
例えば、格納位置から位置Xsetに移動させる場合に、リトラクタブル目標位置Prrをリトラクタブルアクチュエータ6の最大移動距離であるPrr_maxと設定すれば、テレスコ目標位置Ptrとテレスコ現在位置Ptsの差分、すなわち、テレスコアクチュエータにより移動されるべき移動量Ptr-Ptsは、(Xset-Xs)-(Prr_max―Prs)となる。
【0082】
他の例として、格納位置から位置Xsetに移動させる場合に、リトラクタブル目標位置Prrとテレスコ目標位置Ptrを、所定の比率になるように、PrrとPtrを決定することができる。例えば、PrrとPtrの比率を1:1となるように設定する場合、Prr―Prs=Ptr―Pts=0.5×(Xset-Xs)となる。
【0083】
[ステアリングコラム装置100の動作]
次に、ステアリングコラム装置100の動作を説明する。図8に示す制御装置9の制御フローチャートに沿って説明を行う。
【0084】
制御装置9が起動されると、制御装置9は各機能ブロックの初期化を実施した後にステアリングコラム装置100の制御を開始する。車両ECU400からの動作指令を検出すると、制御装置9はステップS1を実行する。動作指令は、図示しない車両起動スイッチを押下げすることに対応して、車両ECU400から発生させることができる。
【0085】
テレスコ方向目標方向算出部911は、テレスコ方向目標方向算出部911は、車両ECU400がXrefとXsとに基づき決定したPrrとPtrを取得する。なお、テレスコ方向目標方向算出部911は、車両ECU400からXrefとXsを取得して、PrrとPtrを決定してもよい。
【0086】
テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS1において、リトラクタブルストローク量Srr(第一ストローク量)を取得する。具体的には、テレスコ方向目標方向算出部911は、Srr=リトラクタブル目標位置Prr-リトラクタブル現在位置Prsによりリトラクタブルストローク量Srrを算出する。
【0087】
テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS2において、テレスコストローク量Str(第二ストローク量)を取得する。具体的には、テレスコ方向目標方向算出部911は、Str=テレスコ目標位置Ptr-テレスコ現在位置Ptsによりテレスコストローク量Strを算出する。なお、テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS1の前にステップS2を実施してもよい。
【0088】
テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS3において、合計ストローク量Sを算出する。具体的には、テレスコ方向目標方向算出部911は、S=リトラクタブルストローク量Srr+テレスコストローク量Strにより合計ストローク量Sを算出する。
【0089】
テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS4において、目標移動時間Trを算出する。具体的には、テレスコ方向目標方向算出部911は、Tr=合計ストローク量S÷目標速度Vにより目標移動時間Trを算出する。
【0090】
テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS5において、リトラクタブル目標速度Vr(第一目標速度)を算出する。具体的には、テレスコ方向目標方向算出部911は、Vr=リトラクタブルストローク量Srr÷目標移動時間Trによりリトラクタブル目標速度Vrを算出する。
【0091】
テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS6において、テレスコ目標速度Vt(第二目標速度)を算出する。具体的には、テレスコ方向目標方向算出部911は、Vt=テレスコストローク量Str÷目標移動時間Trによりテレスコ目標速度Vrを算出する。なお、テレスコ方向目標方向算出部911は、ステップS5の前にステップS6を実施してもよい。
【0092】
リトラクタブル目標速度Vr(第一目標速度)およびテレスコ目標速度Vt(第二目標速度)は、リトラクタブルストローク量Srr(第一ストローク量)とテレスコストローク量Str(第二ストローク量)とによって相対的に決定される。
【0093】
本実施形態においては、リトラクタブルアクチュエータ6が、前記第一コラムを前記ベースブラケット1に対してリトラクタブル目標速度Vr(第一目標速度)でリトラクタブルストローク量Srr(第一ストローク量)だけ移動させる時間(第一目標時間)と、テレスコアクチュエータ7が、前記第二コラムを前記第一コラムに対してテレスコ目標速度Vt(第二目標速度)でテレスコストローク量Str(第二ストローク量)だけ移動させる時間(第二目標時間)とを一致させるように、制御装置9はリトラクタブル目標速度Vr(第一目標速度)およびテレスコ目標速度Vt(第二目標速度)を決定する。
【0094】
リトラクタブル速度制御部912は、リトラクタブル目標速度Vrに基づいて、リトラクタブル用モータ60を駆動して、ベースブラケット1に対してコラムホルダ2をリトラクタブルストローク量Srrだけ前後方向に移動させる。
【0095】
テレスコ速度制御部915は、テレスコ目標速度Vtに基づいて、テレスコ用モータ70を制御して、ロアコラム3に対してアッパコラム5をリトラクタブルストローク量Srrだけ前後方向に移動させる。
【0096】
その結果、ステアリングコラム10は車両ECU400が指示した目標位置まで目標速度Vで伸縮する。
【0097】
本実施形態に係るステアリングコラム装置100によれば、リトラクタブルアクチュエータ6とテレスコアクチュエータ7を別々の目標速度(リトラクタブル目標速度Vrとテレスコ目標速度Vt)で駆動させることにより、リトラクタブルアクチュエータ6の駆動動作とテレスコアクチュエータ7の駆動動作のいずれもが、目標移動時間Trの経過後に完了する。リトラクタブルアクチュエータ6の駆動動作とテレスコアクチュエータ7の駆動動作のいずれか一方が先に完了しないため、使用者にとって違和感がない。
【0098】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0099】
(変形例1)
上記実施形態において、リトラクタブル用位置調整装置61およびテレスコ用位置調整装置71は、ネジ軸とナットを有する送りねじ機構を備える。しかしながら、リトラクタブル用位置調整装置61およびテレスコ用位置調整装置71の態様はこれに限定されない。リトラクタブル用位置調整装置61およびテレスコ用位置調整装置71は、例えば、直接位置を調整する機構や、減速機などであってもよい。
【0100】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係るステアリングコラム装置100Bについて、図9を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0101】
[ステアリングコラム装置100B]
ステアリングコラム装置100Bは、図1に示すように、第一実施形態のステアリングコラム装置100と同様の構成を備える。ステアリングコラム装置100Bは、第一実施形態のステアリングコラム装置100と比較して、制御装置9の制御フローのみが異なる。
【0102】
以降の説明において、リトラクタブルアクチュエータ6により駆動されるベースブラケット1に対するコラムホルダ2(第一コラム)の相対速度の最大値を、リトラクタブル最大速度Vr_max(第一最大速度)とする。また、テレスコアクチュエータ7により駆動されるコラムホルダ2(第一コラム)に対するアッパコラム5(第二コラム)の相対速度の最大値を、テレスコ目標速度Vt_max(第二最大速度)とする。
【0103】
以降、図9に示す制御装置9の制御フローチャートに沿って説明を行う。制御装置9が起動されると、制御装置9は各機能ブロックの初期化を実施した後にステアリングコラム装置100Bの制御を開始する(ステップS10)。車両ECU400からの動作指令による動作指令を検出すると、制御装置9はステップS11を実行する。
【0104】
制御装置9は、ステップS11において、車両ECU400から合計ストローク量Sを取得する。具体的には、ステアリングホイールの現在位置Xsと、ステアリングホイールの目標位置Xrefとの差分に基づき、合計ストローク量Sが算出される。次に、制御装置9は、ステップS12およびステップS13を実施する。制御装置9は、ステップS12とステップS13のいずれを先に実行してもよい。
【0105】
制御装置9は、ステップS12およびステップS13において、リトラクタブルストローク量Srr(第一ストローク量)とテレスコストローク量Str(第二ストローク量)を算出する。
【0106】
具体的には、リトラクタブルストローク量Srr(第一ストローク量)とテレスコストローク量Str(第二ストローク量)は、リトラクタブル最大速度Vr_max(第一最大速度)およびテレスコ目標速度Vt_max(第二最大速度)との比率(式2)によって相対的に算出される。
Srr:Str=Vr_max:Vt_max・・・(式2)
【0107】
リトラクタブルアクチュエータ6とテレスコアクチュエータ7の最大速度がほぼ同じである場合、リトラクタブルストローク量Srrとテレスコストローク量Strがほぼ同じになる。
【0108】
ただし、算出したリトラクタブルストローク量Srrがベースブラケット1に対してコラムホルダ2を移動できる実際のストローク量を超えている場合、制御装置9はリトラクタブルストローク量Srr等を調整する。また、算出したテレスコストローク量Strがコラムホルダ2に対してアッパコラム5を移動できる実際のストローク量を超えている場合、制御装置9はテレスコストローク量Str等を調整する。
【0109】
本実施形態に係るステアリングコラム装置100Bによれば、ステアリングホイール200を各アクチュエータの最大速度にて移動させることができ、かつ、各アクチュエータの移動が、同時に開始または終了される。すなわち、本実施形態によれば、ステアリングホイール200の移動速度が変化することに伴う運転者の違和感を生じさせることなく、短時間でステアリングホイール200を移動させることができる。
【0110】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0111】
各実施形態におけるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、ステアリングコラム装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
300 ステアリング装置(操舵装置)
220 ステアリングシャフト
200 ステアリングホイール(入力機構)
100,100B ステアリングコラム装置
10 ステアリングコラム
1 ベースブラケット
2 コラムホルダ
3 ロアコラム(第一コラム)
4 インナコラム
5 アッパコラム(第二コラム)
6 リトラクタブルアクチュエータ(第一アクチュエータ)
7 テレスコアクチュエータ(第二アクチュエータ)
8 チルトアクチュエータ
9 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9