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特許7601402生合成経路を発現する合成染色体の作成方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】生合成経路を発現する合成染色体の作成方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20241210BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241210BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/52 Z
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019409
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2018553999の分割
【原出願日】2017-04-11
(65)【公開番号】P2022070950
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】62/321,716
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518447588
【氏名又は名称】キャリージーンズ バイオエンジニアリング
【氏名又は名称原語表記】CarryGenes Bioengineering
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】グリーン、エイミー
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-503778(JP,A)
【文献】国際公開第2011/083870(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/063722(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/022741(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0077224(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0295501(US,A1)
【文献】Nucleic Acids Res.,米国,2004年,Vol.32,No.21,e172
【文献】信州医誌,2013年,Vol.61,p.197-203
【文献】Biochem. J.,1992年,Vol.287,p.473-479
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2016年,Vol.6, No.20070,p.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞宿主において特異的最終産物を産生すべく生合成経路で協調して作用する酵素をコードする遺伝子を発現するポータブルな哺乳類合成染色体を構築する方法であって、
(a)複数の部位特異的組込み部位を組み入れた合成プラットフォーム染色体を、操作する哺乳類細胞株で作製するための合成染色体作製構成要素を、前記操作する哺乳類細胞株にトランスフェクトするステップ;
(b)ステップ(a)において作製された前記合成プラットフォーム染色体を担持する操作された哺乳類細胞を同定して単離するステップ;
(c)ステップ(b)において単離された、前記合成プラットフォーム染色体を担持する操作された哺乳類細胞に、少なくとも1つの部位特異的組換え部位と前記生合成経路で協調して作用する酵素をコードする複数の遺伝子とを含む送達ベクターをトランスフェクトするステップ;
(d)前記合成プラットフォーム染色体と前記送達ベクターとの間の部位特異的組換えを活性化させるステップであって、前記生合成経路で協調して作用する酵素をコードする前記複数の遺伝子が、前記操作された細胞内における前記合成プラットフォーム染色体にロードされて、前記生合成経路で協調して作用する酵素をコードする遺伝子を発現する哺乳類合成染色体を作製するステップ;
(e)前記哺乳類合成染色体を含む第1の宿主細胞を単離するステップであって、前記第1の宿主細胞が前記特異的最終産物を産生する、ステップ;
(f)特異的最終産物を産生すべく前記生合成経路で協調して作用する酵素をコードする遺伝子を発現する前記哺乳類合成染色体を単離するステップ;及び
(g)前記哺乳類合成染色体を第2の哺乳類宿主細胞にトランスファーするステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の哺乳類宿主細胞が、哺乳類免疫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の部位特異的組込み部位が、attP、attB、attL、及びattR又は突然変異型のattP、attB、attL、及びattRを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、合成染色体を操作して生合成経路からの複数の遺伝子を受容細胞に送達することを可能にする方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
以下の考察では、背景及び導入として特定の物及び方法が記載される。本明細書に含まれるいかなる事項も、先行技術の「承認」と解釈されてはならない。本出願人は、適宜、本明細書で参照されるそれらの物及び方法が適用法規条項に基づく先行技術をなすものではないことを立証する権利を明示的に留保する。
【0003】
複数の遺伝子、例えば、アミノ酸、核酸、糖タンパク質などの細胞代謝産物の産生能を細胞に付与する遺伝子を取り込んで発現するように細胞を操作する(engineer)現在の方法は、ウイルスベース又はプラスミドベースのいずれかの核酸送達技術に頼る。しかしながら、多くの場合に、細胞がかかる代謝産物を産生可能であるためには、生化学的な代謝産物合成経路を構成する複数の遺伝子産物の発現及び機能的な編成が必要である。例えば、多くの哺乳類細胞は、必須アミノ酸を作るのに要求される必要酵素を欠いている。細胞がこれらのアミノ酸を作ることができるようにするには、真菌又は細菌に見られる異種遺伝子を発現するように細胞を操作しなければならない;しかしながら、ウイルス及びプラスミド核酸ベクター送達システムのペイロード容量は限られているため、受容細胞に生化学的経路又は生合成経路全体を作り出すには、トランスフェクション又は形質導入イベントを複数回繰り返す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
完全に機能的な哺乳類合成染色体を作成可能であるということは、遺伝的障害を細胞ベースで修正し、及び生物学的経路を作製する強力なシステムを意味する。完全に機能的な哺乳類合成染色体は、細菌ベース及びウイルスベースの送達システムと比べて、ペイロードサイズの増加、染色体外に維持されるため宿主細胞破壊の可能性が回避されること、導入された遺伝子の転写サイレンシング及び免疫学的合併症の可能性の回避を含め、幾つかの利点をもたらし、及び哺乳類合成染色体は、その合成染色体を挿入しようとする種から誘導し、それに合わせて作ることができる。当該技術分野では、細胞において生合成経路からの複数の遺伝子を送達して発現させることにより代謝産物の産生を可能にする組成物及び方法が必要とされている。本発明は、この必要性に応える方法及び組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本概要は、以下で詳細な説明に更に説明する概念のうちの選ばれた幾つかを簡潔な形で紹介するため提供される。本概要は、特許請求される主題の主要な又は必須の特徴を特定しようと意図するものではなく、また特許請求される主題の範囲を限定するために用いられることを意図するものでもない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性、及び利点は、添付の図面に例示される、且つ添付の特許請求の範囲に定義される態様を含め、以下の記載の詳細な説明から明らかであろう。
【0006】
本発明は、合成染色体を用いて受容細胞に1つ以上の生合成経路からの複数の遺伝子を送達して発現させる組成物及び方法を包含する。経路には、1)特異的最終産物を産生することが知られるもの;2)最終産物を産生する細胞型にとって新規であり得る特異的最終産物を産生する、既存の遺伝子の新規組み合わせでの取込み及び/又は既存の遺伝子の新規細胞型での発現によって作り出される新規経路;又は3)新規最終産物を産生する、新規遺伝子の単独での、又は既存の遺伝子と組み合わせた取込みによって作り出される新規経路が含まれ得る。
【0007】
従って、一実施形態において、本発明の方法は、受容細胞に生合成経路を構築する方法を提供し、この方法は、標的核酸配列の部位特異的組込みを可能にする核酸配列を含む合成染色体作製構成要素を受容細胞株にトランスフェクトするステップ;複数の部位特異的組換え部位を有する合成プラットフォーム染色体を作製するステップ;生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子を含む送達ベクターを受容細胞株にトランスフェクトするステップであって、送達ベクターが少なくとも1つの部位特異的組換え部位を含むステップ;合成プラットフォーム染色体と送達ベクターとの間の部位特異的組換えを活性化させるステップであって、生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子が合成プラットフォーム染色体にロードされて、生合成経路を発現する合成染色体が作製されるステップ;及び生合成経路を発現する合成染色体を含む受容細胞を単離するステップを含む。
【0008】
この実施形態の一部の態様において、生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子はトリプトファン生合成に必要な遺伝子を含み、及び一部の態様において、トリプトファン生合成に必要な遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)におけるトリプトファンの合成に必要な5つの遺伝子を含む。
【0009】
この実施形態の一部の態様において、生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子を送達することに加えて、送達ベクターは、a)腫瘍細胞が免疫細胞周期進行を阻害する能力を妨害又は遮断する1つ以上の遺伝子、b)免疫細胞の活性化及び成長を亢進させる因子をコードする1つ以上の遺伝子、又はc)発生中の腫瘍に対する免疫細胞の特異性を増加させる1つ以上の遺伝子のうちの1つ以上を更に含む。
【0010】
この実施形態の更に他の態様において、本方法は、生合成経路を発現する合成染色体を単離するステップ;及び合成染色体を第2の受容細胞にトランスファーするステップを更に含む。一部の態様において、第2の受容細胞は、万能供血者T細胞又は患者自己T細胞から選択される。本発明の他の態様は、生合成経路を発現する合成染色体を提供し、及び更なる他の態様は第2の受容細胞を提供する。
【0011】
本発明の一部の態様において、部位特異的組込みを可能にする核酸配列は、attP、attB、attL、及びattR又は突然変異型のattP、attB、attL、及びattRを含む。
【0012】
本発明の他の実施形態は、第2の生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子を含む第2の送達ベクターを受容細胞株にトランスフェクトするステップであって、第2の送達ベクターが少なくとも1つの部位特異的組換え部位を含むステップ;合成プラットフォーム染色体と第2の送達ベクターとの間の部位特異的組換えを活性化させるステップであって、第2の生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子が合成プラットフォーム染色体にロードされて、第2の生合成経路を発現する合成染色体が作製されるステップ;及び第2の生合成経路を発現する合成染色体を含む受容細胞を単離するステップを更に含む。この実施形態の一部の態様は、第2の生合成経路を発現する合成染色体を単離するステップ;及び第2の生合成経路を発現する合成染色体を第2の受容細胞にトランスファーするステップを更に含む。
【0013】
詳細な説明に本発明の上記及び他の態様及び使用を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の方法の一実施形態の簡略化した概略図であり、ここでは合成染色体からの生合成経路代謝産物の産生によって細胞生理が増強される。
図2】BLoVeL-TSS_TrpPathを示す図。
図3】BLoVeL-TSS_AroPathを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載される方法は、特に指示されない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及び細胞工学技術の従来技術及び記載を用いることもあり、それらは全て当業者の技能の範囲内にある。かかる従来技術には、オリゴヌクレオチド合成、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション及びライゲーション、細胞の形質転換及び形質導入、組換えシステムの操作、トランスジェニック動物及び植物の作出、及びヒト遺伝子療法が含まれる。好適な技法の具体的な例示については、本明細書の例を参照することができる。しかしながら、当然ながら、等価な従来手順を用いることもできる。かかる従来技術及び記載は、「ゲノム解析:実験マニュアルシリーズ(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series)」、第I~IV巻、グリーン(Green)ら編、1999年;「遺伝的変異:実験マニュアル(Genetic Variation:A Laboratory Manual)」、ワイナー(Weiner)ら編、2007年;サムブルック(Sambrook)及びラッセル(Russell)著、「分子クローニング:実験マニュアルからの要約プロトコル(Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、2006年;及びサムブルック(Sambrook)及びラッセル(Russell)著、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、2002年(全てコールド・スプリング・ハーバ・ラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)発行);「タンパク質方法(Protein Methods)」、ボラグ(Bollag)ら著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1996年;「遺伝子療法用の非ウイルスベクター(Nonviral Vectors for Gene Therapy)」、ワーグナー(Wagner)ら編、アカデミックプレス(Academic Press)、1999年;「ウイルスベクター(Viral Vectors)」、カプリフト(Kaplift)及びローウィ(Loewy)編、アカデミックプレス(Academic Press)、1995年;「免疫学方法マニュアル(Immunology Methods Manual)」、レフコビッツ(Lefkovits)編、アカデミックプレス(Academic Press)、1997年;「遺伝子療法テクニック、研究室から臨床への応用及び規制(Gene Therapy Techniques,Applications and Regulations From Laboratory to Clinic)」、ミーガ(Meager)編、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1999年;M・ジャッカ(M.Giacca)著、「遺伝子療法(Gene Therapy)」、シュプリンガー(Springer)、2010年;「遺伝子療法プロトコル(Gene Therapy Protocols)」、レドゥー(LeDoux)編、シュプリンガー(Springer)、2008年;「細胞及び組織培養:バイオテクノロジーにおける実験室手順(Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology)」、ドイル(Doyle)及びグリフィス(Griffiths)編、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1998年;「哺乳類染色体エンジニアリング-方法及びプロトコル(Mammalian Chromosome Engineering-Methods and Protocols)」、G・ハドラツキー(G.Hadlaczky)編、ヒューマナ・プレス(Humana Press)、2011年;「基本的幹細胞方法(Essential Stem Cell Methods)」、ランツァ(Lanza)及びクリマンスカヤ(Klimanskaya)編、アカデミックプレス(Academic Press)、2011年;「幹細胞療法:臨床供与のクオリティ及び安全性の確保に向けた好機:合同ワークショップ要旨(Stem Cell Therapies:Opportunities for Ensuring
the Quality and Safety of Clinical Offerings:Summary of a Joint Workshop)」、ヘルスサイエンス政策委員会(Board on Health Sciences Policy)、ナショナル・アカデミー・プレス(National Academies Press)、2014年;「幹細胞生物学の基礎(Essentials of Stem
Cell Biology)」、第3版、ランツァ(Lanza)及びアタラ(Atala)編、アカデミックプレス(Academic Press)、2013年;及び「幹細胞ハンドブック(Handbook of Stem Cells)」、アタラ(Atala)及びランツァ(Lanza)編、アカデミックプレス(Academic Press)、2012年(これらは全て、本明細書においてあらゆる目的から全体として参照により援用される)などの標準的な実験マニュアルに見出すことができる。本組成物、研究ツール及び方法を説明する前に、本発明は記載される特定の方法、組成物、標的及び使用に限定されず、従って当然ながら異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は特定の態様を説明するために過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである本発明の範囲を限定する意図はないことも理解されるべきである。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含むことに留意されたい。従って、例えば「組成物(a composition)」と言うとき、それは1つの組成物又は組成物の混合物を指し、及び「アッセイ(an assay)」と言うとき、それは当業者に公知の均等なステップ及び方法への言及を含むなどである。
【0017】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書において言及される全ての刊行物は、その刊行物中で説明されている、且つ本明細書に記載する発明との関連で使用し得る装置、配合及び方法論を説明及び開示する目的で参照により本明細書に援用される。
【0018】
値の範囲が提供される場合、当該の範囲の上限と下限との間にある各中間値及び当該の明記される範囲にある任意の他の明記される値又は中間値が本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、明記される範囲における任意の具体的に除外される限界値を条件として、独立にそのより小さい範囲に含まれ得る。明記される範囲が限界値の両方を含む場合、それらの含まれる限界値のうち一方のみを除く範囲もまた本発明に含まれる。
【0019】
以下の説明においては、本発明のより完全な理解を提供するため多数の具体的な詳細が示される。しかしながら、当業者には、本明細書を読めば、それらの具体的な詳細の1つ以上がなくても本発明を実施し得ることは明らかであろう。他の場合には、本発明が曖昧になることがないよう、当業者に周知された周知の特徴及び手順は説明していない。
【0020】
定義
明示的に定めない限り、本明細書で使用される用語は、当業者が理解するとおりの平易な且つ通常の意味を有することが意図される。以下の定義は読者が本発明を理解する助けとなることを意図するものであり、具体的に指示されない限り、かかる用語の意味を変更したり、又は他の形で限定したりする意図はない。
【0021】
「結合している」は、本明細書で使用されるとき(例えば、ポリペプチドの核酸結合ドメインに関連して)、ポリペプチドと核酸との間の非共有結合性相互作用を指す。非共有結合性相互作用と言うとき、ポリペプチド及び核酸は「会合している」、「相互作用している」、又は「結合している」と言われる。結合相互作用は概して10-6M未満~10-15M未満の解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「親和性」は結合の強度を指し、高い結合親和性ほど、より低いKdと関連付けられる。
【0022】
「結合ドメイン」とは、非共有結合的に別の分子に結合可能なポリペプチド又はタンパク質ドメインが意味される。結合ドメインは、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)及び/又はタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。
【0023】
「セントロメア」は、染色体が細胞分裂を通じて娘細胞に分離する能力を付与する任意の核酸配列である。セントロメアは、セントロメアを含有する合成染色体を含め、核酸配列の有糸分裂及び減数分裂を通じた安定な分離をもたらし得る。セントロメアは、必ずしもそれが導入される細胞と同じ種に由来する必要はないが、好ましくはセントロメアは、当該の種の細胞におけるDNA分離を促進する能力を有する。「二動原体」染色体は、2つのセントロメアを含む染色体である。「以前二動原体であった染色体(formerly dicentric chromosome)」は、二動原体染色体が断片化すると生じる染色体である。「染色体」は、細胞の分裂時に細胞内で複製及び分離する能力を有する核酸分子-及び関連するタンパク質-である。典型的には、染色体は、セントロメア領域、複製起点、テロメア領域及びセントロメア領域とテロメア領域との間にある核酸領域を含む。「アクロセントリック染色体」は、腕の長さが不均等な染色体を指す。
【0024】
「コード配列」又はペプチドを「コードする」配列は、適切な制御配列の制御下に置かれたとき生体内で転写(DNAの場合)及び翻訳(mRNAの場合)されてポリペプチドになる核酸分子である。コード配列の境界は、典型的には5’(アミノ)末端の開始コドンと3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンとによって決まる。
【0025】
用語DNA「制御配列」は、まとめて、プロモータ配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、配列内リボソーム進入部位、エンハンサーなどを指し、これらはまとめて受容細胞におけるコード配列の複製、転写及び翻訳を提供する。選択のコード配列が適切な宿主細胞において複製、転写及び翻訳されることが可能である限り、この種の制御配列が全て存在する必要はない。
【0026】
用語の生合成経路を「実現する」とは、既知の生合成経路を再現すること、並びに新規生合成経路を作成及び実行することを指す。
「内因性染色体」は、合成染色体の作成又は導入前に細胞に見られる染色体を指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「ユークロマチン」は、散在性に染色される、典型的には遺伝子を含有するクロマチンを指し、「ヘテロクロマチン」は、通常凝縮したままで、転写的に不活性と考えられるクロマチンを指す。セントロメアを取り囲むヘテロクロマチンの領域には、通常、高度に反復性のDNA配列(サテライトDNA)が位置する。
【0028】
用語「異種DNA」又は「外来DNA」(又は「異種RNA」又は「外来RNA」)は同義的に使用され、天然ではその所在であるゲノムの一部として存在しない、或いはゲノム又は細胞において、それが天然に存在する場合と異なる1つ又は複数の位置に及び/又は量で見られるDNA又はRNAを指す。異種DNAの例としては、限定はされないが、1つ又は複数の目的の遺伝子産物をコードするDNAが挙げられる。異種DNAの他の例としては、限定はされないが、追跡可能なマーカタンパク質をコードするDNA並びに調節DNA配列が挙げられる。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「代謝産物」は、天然代謝産物(例えばコレステロールなど)、異種代謝産物(例えばヒトにおけるトリプトファンなど)、操作された代謝産物(即ち、キメラタンパク質などの新規の人工代謝産物又は操作されたRNA干渉分子)又は例えば生合成経路の亢進又は阻害によって改変された機能を細胞に付与する任意の他の代謝産物を指す。
【0030】
「作動可能に連結された」は、そのように記載される構成要素がその通常の機能を果たすように構成されるエレメントの配置を指す。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、そのコード配列の発現を生じさせる能力を有する。制御配列は、それがコード配列の発現を導く働きをする限り、コード配列に連続している必要はない。従って、例えば、プロモータ配列とコード配列との間に、翻訳はされないが転写はされる介在配列が存在してもよく、それでもなお、そのプロモータ配列はコード配列に「作動可能に連結されている」と見なすことができる。事実、かかる配列は同じ連続するDNA分子(即ち染色体)上にある必要はなく、それでもなお、調節の変化をもたらす相互作用を有し得る。
【0031】
「プロモータ」又は「プロモータ配列」は、細胞内でRNAポリメラーゼと結合して、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、核内低分子若しくは核小体RNA又は任意のクラスの任意のRNAポリメラーゼI、II又はIIIによって転写される任意の種類のRNAなど、ポリヌクレオチド又はポリペプチドコード配列の転写を開始させる能力を有するDNA調節領域である。
【0032】
受容細胞は、合成染色体、合成プラットフォーム染色体又は所与の一組のDNAエレメントを含むようにバイオエンジニアリングを受けた合成プラットフォーム染色体を作成するための構成要素が入る細胞である。受容細胞のタイプには、限定はされないが、幹細胞、間葉系幹細胞、成人由来幹細胞、T細胞、免疫細胞、人工多能性幹細胞、線維芽細胞、内皮細胞、中胚葉、外胚葉及び内胚葉の細胞が含まれ得る。また、腫瘍細胞、細胞培養株、初代細胞、及び生殖細胞も含まれ得る。次に細胞は、例えば、培養する、移植用に調製する、全トランスジェニック動物の作出に使用するなどすることができる。
【0033】
「認識配列」は、タンパク質、DNA、又はRNA分子、又はこれらの組み合わせ(限定はされないが、制限エンドヌクレアーゼ、修飾メチラーゼ又はリコンビナーゼなど)が認識して結合する特定のヌクレオチド配列である。例えば、Creリコンビナーゼの認識配列は、2つの13塩基対逆方向反復(リコンビナーゼ結合部位として働く)とそれに隣接する8塩基対のコアを含む、loxPと称される34塩基対配列である(例えば、サウアー(Sauer)著、カレント・オピニオン・イン・バイオテクノロジー(Current Opinion in Biotechnology)、第5巻、p.521~527、1994年を参照のこと)。認識配列の他の例としては、限定はされないが、attB及びattP、attR及びattL並びにその他の、リコンビナーゼ酵素バクテリオファージλインテグラーゼによって認識されるものが挙げられる。attBと称される組換え部位は、2つの9塩基対のコア型Int結合部位及び7塩基対のオーバラップ領域を含む約33塩基対配列である;attPは、コア型Int結合部位及びアーム型Int結合部位並びに補助タンパク質IHF、FIS、及びXisに対する部位を含む約240塩基対配列である(例えば、ランディ(Landy)著、カレント・オピニオン・イン・バイオテクノロジー(Current Opinion in Biotechnology)、第3巻、p.699~7071、1993年を参照のこと)。
【0034】
「リコンビナーゼ」は、特定の組換え部位におけるDNAセグメントの交換を触媒する酵素である。インテグラーゼとは、通常はウイルス又はトランスポゾン、並びに恐らくは古代ウイルスにも由来するリコンビナーゼを指す。「組換えタンパク質」には、1つ以上の組換え部位を用いた組換え反応に関与する切出しタンパク質、組込みタンパク質、酵素、補因子及び関連タンパク質が含まれる(ランディ(Landy)著、カレント・オピニオン・イン・バイオテクノロジー(Current Opinion in Biotechnology)、第3巻、p.699~707、1993年を参照のこと)。本明細書の方法において使用される組換えタンパク質は、プラスミドなど、適切なベクター上の発現カセットを介して細胞に送達することができる。他の実施形態において、組換えタンパク質は、所望の1つ又は複数の核酸の送達に用いられる同じ反応混合物中においてタンパク質の形態で細胞に送達することができる。更に他の実施形態において、リコンビナーゼはまた、細胞にコードし、厳密に制御された誘導性プロモータを用いて必要に応じて発現させてもよい。
【0035】
「リボソームRNA」(rRNA)は、リボソームの構造の一部を形成してタンパク質合成に関与する特殊なRNAである。リボソームRNAは、真核細胞では複数のコピーで存在する遺伝子の転写によって産生される。ヒト細胞では、一倍体ゲノム当たり約250コピーのrRNA遺伝子(即ち、rRNAをコードする遺伝子)が少なくとも5つの異なる染色体(13番、14番、15番、21番及び22番染色体)上にクラスターを成して分散している。ヒト細胞では、高度に保存されたrRNA遺伝子の複数のコピーが、一連のタンデムに並んだrDNA単位に位置し、rDNA単位は概して約40~45kb長であり、転写領域と、長さ及び配列が様々であり得るスペーサ(即ち遺伝子間スペーサ)DNAとして知られる非転写領域とを含む。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「選択可能マーカ」は、細胞、特に本発明の文脈では培養下の細胞に導入される、人為淘汰に好適な形質を付与する遺伝子を指す。一般的用途の選択可能マーカは当業者に周知である。好ましい実施形態において、ヒト合成染色体システムに用いられる選択可能マーカはヒトにおいて非免疫原性でなければならず、限定はされないが、ヒト神経成長因子受容体(米国特許第6,365,373号明細書に記載されるように、MAbで検出される);トランケート型ヒト成長因子受容体(MAbで検出される);突然変異型ヒトジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR;蛍光MTX基質利用可能);分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP;蛍光基質利用可能);ヒトチミジル酸シンターゼ(TS;抗癌剤フルオロデオキシウリジン耐性を付与する);ヒトグルタチオンS-トランスフェラーゼα(GSTA1;グルタチオンを幹細胞選択的アルキル化薬ブスルファンにコンジュゲートする;CD34細胞における化学保護的選択可能マーカ);造血幹細胞におけるCD24細胞表面抗原;N-ホスホノアセチル(phosphonacetyl)-L-アスパラギン酸(PALA)に対する耐性を付与するヒトCAD遺伝子;ヒト多剤耐性1(MDR-1;薬剤耐性の増加によって選択可能な、又はFACSによってエンリッチされるP糖タンパク質表面タンパク質);ヒトCD25(IL-2α;Mab-FITCによって検出可能);メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT;カルムスチンによって選択可能);及びシチジンデアミナーゼ(CD;Ara-Cによって選択可能)が挙げられる。ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、G418、テトラサイクリンなど、薬物選択可能なマーカもまた利用し得る。加えて、FACsソーティングを用いて任意の蛍光マーカ遺伝子をポジティブ選択に使用してもよく、化学発光マーカ(例えばHalotag)なども同様に使用し得る。
【0037】
「部位特異的組換え」は、単一の核酸分子上の2つの特異的部位間又は2つの異なる分子間で生じる、インテグラーゼ又はリコンビナーゼなどの外因性タンパク質の存在が必要な部位特異的組換えを指す。特定の部位特異的組換えシステムを用いてDNAを特異的に欠失させ、逆位させ、又は挿入することができ、正確なイベントはそれらの特異的部位の向き、具体的なシステム及びアクセサリータンパク質又は因子の存在によって制御される。加えて、染色体間でDNAのセグメントを交換することができる(染色体腕の交換)。
【0038】
「合成染色体」(「人工染色体」とも称される)は、異種遺伝子を受け入れてそれを発現させる能力を有する、且つ細胞において内因性染色体と共に安定に複製及び分離する核酸分子、典型的にはDNA分子である。「哺乳類合成染色体」は、1つ又は複数の活性な哺乳類セントロメアを有する染色体を指す。「ヒト合成染色体」は、ヒト細胞で機能するセントロメアを含み、且つ好ましくはヒト細胞で産生される染色体を指す。例示的な人工染色体については、例えば、米国特許第8,389,802号明細書;同第7,521,240号明細書;同第6,025,155号明細書;同第6,077,697号明細書;同第5,891,691号明細書;同第5,869,294号明細書;同第5,721,118号明細書;同第5,712,134号明細書;同第5,695,967号明細書;及び同第5,288,625号明細書並びに国際公開第97/40183号及び同第98/08964号を参照のこと。
【0039】
用語「対象」、「個体」又は「患者」は本明細書では同義的に使用されてもよく、哺乳類、及び一部の実施形態ではヒトを指し得る。
「ベクター」は、プラスミド、ファージ、ウイルスコンストラクト、コスミド、細菌人工染色体、P-1由来人工染色体又は酵母人工染色体など、別のDNAセグメントを付加し得るレプリコンである。一部の例では、ベクターは、組換え部位を含むように操作された1つの内因性染色体から合成染色体に腕を交換する場合のような染色体であってもよい。ベクターは、細胞におけるDNAセグメントの形質導入及び発現に使用される。
【0040】
発明
本発明は、細胞において生合成経路からの複数の遺伝子を送達して発現させることにより代謝産物の作製を可能にする組成物及び方法を包含する。合成染色体はその大きい運搬能力をもって複数の遺伝子産物-詳細には、1つ以上の生合成経路からの複数の遺伝子-を運搬して発現させることができ、それによりウイルスベース及びプラスミドベースの核酸送達の限界を回避し得る。本発明は、生化学的経路内の複数の遺伝子の協調した発現及び機能がその合成に必要な代謝産物(又は2つ以上の代謝産物)の作製を可能にして、それにより受容細胞の細胞生理を増強し、亢進させる方法及び組成物を提供する。経路には、1)特異的最終産物を産生することが知られるもの;2)最終産物を産生する細胞型にとって新規であり得る特異的最終産物を産生する、既存の遺伝子の新規組み合わせでの取込み及び/又は既存の遺伝子の新規細胞型での発現によって作り出される新規経路;又は3)新規最終産物を産生する、新規遺伝子の単独での、又は既存の遺伝子と組み合わせた取込みによって作り出される新規経路が含まれ得る。従って、本発明の方法及び組成物は、細胞に存在しない又は準最適レベルで合成される代謝産物を合成するように細胞を操作することが可能であり、「トップダウン」手法、「ボトムアップ」手法、天然に存在するミニ染色体の操作、及び特定の染色体セグメントのターゲット増幅による誘導性デノボ染色体生成(これらは全て以下に更に詳細に考察する)を含めたあらゆる合成染色体作製方法に適用可能である。
【0041】
図1は、細胞の生合成能力を機能的に亢進させるための本発明の方法の一実施形態の簡略化した概略図である。図1は、細胞内にある合成プラットフォーム染色体を示す。生合成経路の遺伝子を担持する送達ベクターが細胞に送達され、生合成経路からの遺伝子が合成プラットフォーム染色体(以下に更に詳細に記載される)「にロード」される。次に、合成染色体にロードされた遺伝子が細胞内で発現する。次に、合成染色体からの遺伝子の転写及び翻訳によって発現したタンパク質が協調して働き、生合成複合体(即ち、一連の酵素反応)を通じて1つ以上の代謝産物を産生する。
【0042】
細胞機能を亢進させるため合成プラットフォーム染色体を用いることの有用性の一例は、必須アミノ酸トリプトファンを合成させる免疫系細胞の操作である。腫瘍成長中、腫瘍細胞は局所腫瘍環境から大量のトリプトファンを取り入れ、これが腫瘍細胞成長を阻害する免疫細胞の飢餓及び続く停止につながり、飢餓免疫細胞には成長中の腫瘍細胞を阻害する能力がなくなる。トリプトファンは必須アミノ酸-即ち、ヒトがデノボ合成できないアミノ酸-であり、トリプトファンの食事による摂取は、腫瘍細胞によって誘導されるトリプトファン飢餓を軽減することができない。しかしながら、トリプトファン生合成につながる異種遺伝子を発現する合成染色体を含有する免疫細胞は選択的利点を有し、腫瘍細胞と相互作用する間の、又は腫瘍細胞環境内での「トリプトファン不足」による死を免れる。例えば、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、トリプトファンの合成に必要な5つの遺伝子(TRP1~5)を発現する。これらの遺伝子の各々は哺乳類プロモータ(構成的に発現するか、又は調節性プロモータから発現するかのいずれか)から単離及び制御して、合成プラットフォーム染色体(以下に記載する)に複数の遺伝子を送達する又は「ロードする」ように操作された細菌人工染色体(BAC)などの大量のDNAを担持し得る細菌ベクターに置くことができる。次に、トリプトファン生合成遺伝子を含む合成染色体は、続いて免疫腫瘍学的細胞ベース療法のため免疫細胞(例えば、万能供血者T細胞又は患者自己T細胞)に導入されてもよい。
【0043】
「トリプトファン不足」による死に対する抵抗性を付与することに加え、合成染色体の大きい運搬能力は更に、限定はされないが、1)腫瘍細胞が免疫細胞周期進行を阻害する能力を妨害又は遮断する遺伝子、例えば抗PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)又は抗CTLA-4(中枢T細胞活性化及び阻害4)分子の発現;2)免疫細胞の活性化及び成長を亢進させる因子(例えば、インターロイキン2又は他のかかるサイトカイン);及び/又は3)発生中の腫瘍に対する操作免疫細胞の特異性を増加させる因子、例えば、腫瘍への免疫細胞ホーミング又は特異的腫瘍マーカへの免疫細胞結合を増加させる因子の追加を含め、腫瘍細胞阻害を遮断する他の生合成経路の遺伝子を操作することを可能にする。従って、追加的な経路及び/又は因子と共にトリプトファン生化学的経路を操作することは、免疫細胞ベースの抗癌治療法用の合成プラットフォーム染色体(即ち、「免疫/腫瘍(immuno/onc)合成染色体又は免疫/腫瘍(immuno/onc)SynC」)と区別される。
【0044】
合成染色体の作製
合成染色体は培養細胞で作成される。一部の実施形態において、操作を受ける、及び/又は合成染色体を産生する細胞は、その合成染色体からの遺伝子又は調節配列が最終的に発現することになる対象(ヒト患者、動物又は植物)に天然に存在する細胞であってもよい。かかる細胞は、個体に特異的な合成染色体作製用に樹立された初代培養細胞株であってもよい。他の実施形態において、操作を受ける、及び/又は合成染色体を産生する細胞は、樹立細胞株からのものである。組織培養用の多種多様な細胞株が当該技術分野において公知である。細胞株の例としては、限定はされないが、ヒト細胞株、例えば、293-T(胎児由来腎臓)、721(メラノーマ)、A2780(卵巣)、A172(膠芽腫)、A253(癌腫)、A431(上皮)、A549(癌腫)、BCP-1(リンパ腫)、BEAS-2B(肺)、BR293(乳房)、BxPC3(膵癌)、Cal-27(舌)、COR-L23(肺)、COV-434(卵巣)、CML T1(白血病)、DUI45(前立腺)、DuCaP(前立腺)、FM3(リンパ節)、H1299(肺)、H69(肺)、HCA2(線維芽細胞)、HEK0293(胎児由来腎臓)、HeLa(頸部)、HL-60(骨髄芽球)、HMEC(上皮)、HT-29(結腸)、HUVEC(臍帯静脈上皮)、ジャーカット(T細胞白血病)、JY(リンパ芽球様)、K562(リンパ芽球様)、KBM-7(リンパ芽球様)、Ku812(リンパ芽球様)、KCL22(リンパ芽球様)、KGI(リンパ芽球様)、KYO1(リンパ芽球様)、LNCap(前立腺)、Ma-Mel(メラノーマ)、MCF-7(乳腺)、MDF-10A(乳腺)、MDA-MB-231、-468及び-435(乳房)、MG63(骨肉腫)、MOR/0.2R(肺)、MONO-MAC6(白血球細胞)、MRC5(肺)、NCI-H69(肺)、NALM-1(末梢血)、NW-145(メラノーマ)、OPCN/OPCT(前立腺)、ピア(Peer)(白血病)、ラージ(Raji)(Bリンパ腫)、Saos-2(骨肉腫)、Sf21(卵巣)、Sf9(卵巣)、SiHa(子宮頸癌)、SKBR3(乳癌)、SKOV-2(卵巣癌腫)、T-47D(乳腺)、T84(肺)、U373(膠芽腫)、U87(膠芽腫)、U937(リンパ腫)、VCaP(前立腺)、WM39(皮膚)、WT-49(リンパ芽球様)、YAR(B細胞)、胚細胞株、多能性細胞株、成人由来幹細胞、再プログラム化細胞株、任意の種の汎用動物細胞株又は広義に胎児性の若しくは再プログラム化される細胞、患者自己細胞株が挙げられ、一部の好ましい実施形態では、HT1080ヒト細胞株が利用される。これらの細胞株及び他の細胞株は当業者に公知の種々の供給元から入手可能である(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)(バージニア州マナサス)を参照)。
【0045】
生化学的経路又は生合成経路内の複数の遺伝子を発現させるための合成染色体の操作は、当該技術分野で用いられる「トップダウン」、「ボトムアップ」、ミニ染色体の操作、及び誘導性デノボ染色体生成方法の全てに適用可能である。合成染色体形成の「ボトムアップ」手法は、テロメアDNA及びゲノムDNA有り又は無しの、典型的な宿主細胞に適切なセントロメア及び1つ又は複数の選択可能マーカ遺伝子を含むクローニングされたαサテライト配列による許容的細胞株のトランスフェクション後の細胞介在性デノボ染色体形成に頼るものである。(これらの方法のプロトコル及び詳細な説明については、例えば、ハリントン(Harrington)ら著、ネイチャー・ジェネティクス(Nat.Genet.)、第15巻、p.345~55、1997年;イケノ(Ikeno)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat.Biotechnol.)、第16巻、p.431~39、1998年;マスモト(Masumoto)ら著、クロモソーマ(Chromosoma)、第107巻、p.406~16、1998年、エバーソール(Ebersole)ら著、ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス(Hum.Mol.Gene.)、第9巻、p.1623~31、2000年;ヘニング(Henning)ら著、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、第96巻、p.592~97、1999年;グライムス(Grimes)ら著、エンボ・リポーツ(EMBO Rep.)、第2巻、p.910~14、2001年;メヒア(Mejia)ら著、ゲノミクス(Genomics)、第79巻、p.297~304、2002年;及びグライムス(Grimes)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol.Ther.)、第5巻、p.798~805、2002年を参照)。酵母人工染色体、細菌人工染色体又はP1由来人工染色体ベクターにクローニングされた合成の及び天然に存在するαサテライトアレイの両方が、当該技術分野でデノボ合成染色体形成に用いられている。ボトムアップアセンブリの産物は線状又は環状であってもよく、αサテライトDNAベースのセントロメアを有する単純化した及び/又はコンカテマー化した入力DNAを含み、及び典型的にはサイズが1~10Mbの範囲であり得る。ボトムアップ由来の合成染色体はまた、合成染色体への標的DNA配列の部位特異的組込みを可能にする核酸配列も取り込むように操作される。
【0046】
合成染色体を作製する「トップダウン」手法には、先在している染色体腕のランダム及び/又はターゲットトランケーションの連続ラウンドによって、セントロメア、テロメア、及びDNA複製起点を含む合成染色体に切り詰めることが関わる。(これらの方法のプロトコル及び詳細な説明については、例えば、ヘラー(Heller)ら著、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、第93巻、p.7125~30、1996年;サフェリー(Saffery)ら著、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、第98巻、p.5705~10、2001年;チュウ(Choo)著、トレンズ・イン・モレキュラー・メディシン(Trends Mol.Med.)、第7巻、p.235~37、2001年;バーネット(Barnett)ら著、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nuc.Ac.Res.)、第21巻、p.27~36、1993年;ファー(Farr)ら著、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、第88巻、p.7006~10、1991年;及びカトウ(Katoh)ら著、ビオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)、第321巻、p.280~90、2004年を参照)。「トップダウン」合成染色体は、最適には天然に存在する発現遺伝子を欠くように構築され、例えば部位特異的DNAインテグラーゼによって媒介される、トランケート型染色体への標的DNA配列の部位特異的組込みを可能にするDNA配列を含むように操作される。
【0047】
当該技術分野において公知の合成染色体を作製する第3の方法は、天然に存在するミニ染色体の操作である。この作製方法には、典型的には、セントロメア機能を有するがαサテライトDNA配列は欠いている機能性の、例えばヒト新生セントロメアを含み、且つ非必須DNAは持たないように操作された染色体の放射線照射誘導性の断片化が関わる。(これらの方法のプロトコル及び詳細な説明については、例えば、オリッシュ(Auriche)ら著、エンボ・リポーツ(EMBO Rep.)、第2巻、p.102~07、2001年;モラーリ(Moralli)ら著、サイトジェネティクス・アンド・セル・ジェネティクス(Cytogenet.Cell Genet.)、第94巻、p.113~20、2001年;及びカリーヌ(Carine)ら著、ソマティック・セル・アンド・モレキュラー・ジェネティクス(Somat.Cell Mol.Genet.)、第15巻、p.445~460、1989年を参照)。合成染色体を生成する他の方法と同様に、操作されたミニ染色体は、標的DNA配列の部位特異的組込みを可能にするDNA配列を含むように操作することができる。
【0048】
合成染色体を作製する第4の好ましい手法には、特定の染色体セグメントのターゲット増幅による誘導性デノボ染色体生成が関わる。この手法には、アクロセントリック染色体に位置する動原体周囲/リボソームDNA領域の大規模増幅が関わる。増幅は、リボソームRNAなど、染色体の挟動原体領域(percentric region)に特異的な過剰のDNAを、標的DNA配列の部位特異的組込みを可能にするDNA配列(attP、attB、attL、attRなど)、及び任意選択で選択可能マーカと共に(これらの全てが染色体の挟動原体領域に組み込まれる)コトランスフェクトすることによって惹起される。(これらの方法のプロトコル及び詳細な説明については、例えば、クソンカ(Csonka)ら著、ジャーナル・オブ・セル・サイエンス(J.Cell Sci)、第113巻、p.3207~16、2002年;ハドラツキー(Hadlaczky)ら著、カレント・オピニオン・イン・モレキュラー・セラピューティクス(Curr.Opini.Mol.Ther.)、第3巻、p.125~32、2001年;及びリンデンバウム(Lindenbaum)及びパーキンス(パーキンス(Perkins))ら著、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nuc.Ac.Res.)、第32巻、第21号、p.el72、2004年を参照)。この過程では、コトランスフェクトされたDNAによるアクロセントリック染色体の挟動原体領域へのターゲティングが大規模染色体DNA増幅、セントロメア配列の複製/活性化、並びに続く二動原体染色体の切断及び分割を誘導し、その結果、複数の部位特異的組込み部位を含むサテライトDNAベースの合成染色体の「離脱(break-off)」がもたらされる。
【0049】
合成プラットフォーム染色体技術の不可欠な部分は、合成染色体に選択の遺伝子を「ロードする」又は置くことを可能にする部位特異的組換えシステムである。本発明の好ましい実施形態において、合成プラットフォーム染色体は、その各々に1つ又は数個の目的遺伝子が挿入され得る複数の部位特異的組換え部位を含む。大腸菌(E.coli)ファージP1からのCREリコンビナーゼを使用したCre/lox組換えシステム(例えば、サウアー(Sauer)著、メソッド・イン・エンザイモロジー(Methods in
Enzymology)、第225巻、p.890~900、1993年及び米国特許第5,658,772号明細書を参照);サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の2μエピソームからのFLPリコンビナーゼを使用した酵母のFLP/FRTシステム(例えば、コックス(Cox)著、米国科学アカデミー紀要(PNAS U.S.A.)、第80巻、p.4223、1983年及び米国特許第5,744,336号明細書を参照);リゾルベース、例えば、ファージMuのGinリコンビナーゼ(メイザー(Maeser)ら著、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティクス(Mol Gen Genet.)、第230巻、p.170~176、1991年)、Cin、Hin、αδ、Tn3;大腸菌(E.coli)のPinリコンビナーゼ(例えば、エノモト(Enomoto)ら著、ジャーナルジャーナル・オブ・バクテリド(J Bacterid.)、第6巻、p.663~668、1983年を参照);ザイゴサッカロミセス・ロウキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)のpSRlプラスミドのR/RSシステム(例えば、アラキ(Araki)ら著、ジャーナル・オブ・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、第225巻、p.25~37、1992年を参照);クルイベロミセス・ドロソフィラリウム(Kluyveromyces drosophilarium)(例えば、チェン(Chen)ら著、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、第314巻、p.4471~4481、1986年を参照)及びクルイベロミセス・ワルチイ(Kluyveromyces waltii)(例えば、チェン(Chen)ら著、ジャーナル・オブ・ジェネラル・マイクロバイオロジー(J.Gen.Microbiol.)、第138巻、p.337~345、1992年を参照)からの部位特異的リコンビナーゼ;及び当業者に公知の他のシステムを含め、任意の公知の組換えシステムを使用することができ;しかしながら、追加的な因子の必要なしに動作する-又は突然変異のおかげで追加的な因子が不要な-組換えシステムが好ましい。一例示的実施形態において、バクテリオファージλインテグラーゼ(bactiophage lambda integrase)のリコンビナーゼ活性を用いた配列特異的組換えによって核酸を合成プラットフォーム染色体に挿入するための方法が提供される。
【0050】
λファージによってコードされるインテグラーゼ(「Int」と称される)は、インテグラーゼファミリーのプロトタイプメンバーである。Intは、attB/attP及びattL/attRと称される付着部位の対間の組換えによってファージの大腸菌(E.coli)ゲノムへの組込み及びそこからの切出しを生じさせる。各att部位は、2つの逆位の9塩基対コアInt結合部位、及び野生型att部位と同一の7塩基対オーバラップ領域を含む。Intは、Creリコンビナーゼ及びFlp-FRTリコンビナーゼシステムと同様に、組込み及び切出し組換えの間に秩序立った逐次的な対の鎖交換を実行する。Intの天然の標的配列対、attB及びattP又はattL及びattRは同じ又は異なるDNA分子に位置し、それぞれ分子内又は分子間組換えをもたらす。例えば、分子内組換えはそれぞれ逆向きのattB及びattP間、又はattL及びattR配列間で起こり、介在するDNAセグメントの逆位をもたらす。野生型Intは組込み及び切出し組換えに追加的なタンパク質因子を必要とし、及び組込み組換えに負の超らせん形成を必要とするが、突然変異Intタンパク質は、ヒト細胞におけるコトランスフェクションアッセイで分子内組込み及び切出し組換えを実施するのにアクセサリータンパク質は不要であり(ロールバッハ(Lorbach)ら著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J Mol.Biol.)、第25巻、第296号、p.1175~1181、2000年を参照)、本発明の方法に好ましい。
【0051】
生合成経路内の複数の遺伝子を送達する送達ベクター
生合成経路内の複数の遺伝子を合成プラットフォーム染色体に送達又は「ロード」するために使用する送達ベクターの選択は、伝播が所望される細胞のタイプなど、種々の要因に依存することになる。適切な送達ベクターの選択は十分に当業者の技能の範囲内にあり、多くのベクターが市販されている。送達ベクターの調製には、複数の遺伝子が、典型的にはベクター中の切断された制限酵素部位への遺伝子配列のライゲーションを用いてベクターに挿入される。或いは、所望のヌクレオチド配列が相同組換え又は部位特異的組換えによって挿入されてもよい。典型的には相同組換えは、ベクターに相同性領域を所望のヌクレオチド配列(例えば、cre-lox、att部位等)に隣接して付加することにより達成される。かかる配列を含む核酸は、例えばオリゴヌクレオチドのライゲーションによるか、又は相同性領域及び所望のヌクレオチド配列の一部分の両方を含むプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって付加することができる。使用し得る例示的送達ベクターとしては、限定はされないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNAに由来するものが挙げられる。例えば、pBR322、pUC19/18、pUC118、119などのプラスミドベクター及びM13 mp系ベクターを使用してもよい。バクテリオファージベクターとしては、λgt10、λgt11、λgt18~23、λZAP/R及びEMBL系バクテリオファージベクターを挙げることができる。利用し得るコスミドベクターとしては、限定はされないが、pJB8、pCV103、pCV107、pCV108、pTM、pMCS、pNNL、pHSG274、COS202、COS203、pWE15、pWE16及びシャロミド9系ベクターが挙げられる。更なるベクターとしては、機能性稔性プラスミド(Fプラスミド)ベースのバクテリア人工染色体(chromsome)(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、及びP1バクテリオファージのDNAに由来するDNAコンストラクトであるP1由来人工染色体(chromsome)(PAC)が挙げられる。或いは、及び好ましくは、限定はされないが、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス又はウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来するものを含め、組換えウイルスベクターが操作されてもよい。BACベクターは、大量の核酸、即ち複数の遺伝子を担持する能力があるため本発明に好ましい送達ベクターである。或いは、複数の遺伝子は、複数の送達ベクターを使用した逐次ローディングによって合成プラットフォーム染色体にロードされてもよい;即ち、第1の遺伝子が第1の送達ベクターによって合成プラットフォーム染色体にロードされてもよく、第2の遺伝子が第2の送達ベクターによって合成プラットフォーム染色体にロードされてもよく、以下同様である。2016年4月12日に出願されたパーキンス(Perkins)及びグリーン(Greene)、米国仮特許出願第62/321,711号明細書が、単一の選択可能マーカを再利用しながら複数の送達ベクターを逐次ロードすることについて記載している。
【0052】
生合成経路からの遺伝子の各々は、構成的に発現するか、又は調節可能なプロモータから発現するかのいずれかの哺乳類プロモータから単離及び制御することができる。送達ベクターを含む細胞の選択を促進するため、発現宿主で作動可能な選択可能マーカが任意選択で存在してもよい。加えて、送達ベクターは追加的なエレメントを含み得る;例えば、送達ベクターが1つ又は2つの複製システムを有してもよく;ひいては送達ベクターを生物に維持する、例えば発現のため哺乳類細胞に、並びにクローニング及び増幅のため原核生物宿主に維持することが可能になる。
【0053】
λインテグラーゼ介在性部位特異的組換え-又は任意の他のリコンビナーゼ介在性部位特異的組換え-を用いて、標的遺伝子が送達ベクターから合成プラットフォーム染色体に導入又は「ロード」される。合成プラットフォーム染色体は複数の部位特異的組換え部位を含むため、複数の遺伝子が単一の合成プラットフォーム染色体にロードされる。部位特異的組換えに介在するリコンビナーゼは、送達ベクターにリコンビナーゼの遺伝子をコードすることによって細胞に送達されてもよく、又は精製若しくはカプセル化リコンビナーゼタンパク質が標準的な技術を用いて受容細胞に送達されてもよい。複数の標的遺伝子の各々は、その独自のプロモータの制御下にあってもよく;或いは、複数の標的遺伝子の発現は、ウイルスベースのエレメント又はヒト配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントによって協調的に調節されてもよい(例えば、ジャクソン(Jackson)ら著、トレンド・イン・バイオケミカル・サイエンス(Trends Biochem Sci.)、第15巻、p.477~83、1990年;及びウマール(Oumard)ら著、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell.Biol.)、第20巻、p.2755~2759、2000年を参照)。加えて、標的遺伝子から下流の蛍光マーカ-例えば、緑色、赤色又は青色蛍光タンパク質(GFP、RFP、BFP)-に連結されたIRES型エレメントを使用すると、組み込まれた1つ又は複数の標的遺伝子を発現する合成プラットフォーム染色体を同定することが可能になる。それに代えて又は加えて、PCRによる組込みの検出用にプライマーを設計することにより、合成染色体上での部位特異的組換えイベントを迅速にスクリーニングし得る。
【0054】
合成染色体作製細胞への構成要素の送達
合成染色体作製に適切な構成要素及び1つ又は複数の送達ベクターは、当該技術分野において公知の任意の方法により受容細胞に送達することができる。用語のトランスフェクション及び形質転換は、任意のコード配列が実際に発現するか否かに関わらず、外因性核酸、例えば発現ベクターが宿主細胞によって取り込まれることを指す。例えば、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)介在性形質転換、プロトプラスト形質転換(ポリエチレングリコール(PEG)介在性形質転換、電気穿孔、プロトプラスト融合、及びマイクロセル融合を含む)、脂質介在性送達、リポソーム、電気穿孔、ソノポレーション、マイクロインジェクション、パーティクルボンバードメント及び炭化ケイ素ウイスカ介在性形質転換及びこれらの組み合わせ(例えば、パシュコフスキー(Paszkowski)ら著、エンボ・ジャーナル(EMBO J.)、第3巻、p.2717~2722、1984年;ポトリクス(Potrykus)ら著、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティクス(Mol.Gen.Genet.)、第199巻、p.169~177、1985年;ライヒ(Reich)ら著、バイオテクノロジー(Biotechnology)、第4巻、p.1001~1004、1986年;クライン(Klein)ら著、ネイチャー(Nature)、第327巻、p.70~73、1987年;米国特許第6,143,949号明細書;パシュコフスキー(Paszkowski)ら著、「植物の細胞培養及び体細胞遺伝学(Cell Culture and Somatic
Cell Genetics of Plants)」、第6巻、「植物核遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of Plant Nuclear Genes)」、シェル(Schell)及びバシル(Vasil)編、アカデミック・パブリッシャーズ(Academic Publishers)、1989年;及びフレーム(Frame)ら著、プラント・ジャーナル(Plant J.)、第6巻、p.941~948、1994年を参照);リン酸カルシウムを使用した直接取込み(ウィグラー(Wigler)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、第76巻、p.1373~1376、1979年);ポリエチレングリコール(PEG)介在性DNA取込み;リポフェクション(例えば、シュトラウス(Strauss)著、メソッド・イン・モレキュラー・バイオロジー(Meth.Mol.Biol.)、第54巻、p.307~327、1996年を参照);マイクロセル融合(ランバート(Lambert)著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、第88巻、p.5907~5911、1991年;米国特許第5,396,767号明細書;ソーフォード(Sawford)ら著、ソマティック・セル・アンド・モレキュラー・ジェネティクス(Somatic Cell Mol.Genet.)、第13巻、p.279~284、1987年;ダール(Dhar)ら著、ソマティック・セル・アンド・モレキュラー・ジェネティクス(Somatic Cell Mol.Genet.)、第10巻、p.547~559、1984年;及びマクニール=キラリー(McNeill-Killary)ら著、メソッド・イン・エンザイモロジー(Meth.EnzymoL)、第254巻、p.133~152、1995年);脂質介在性担体システム(例えば、テイフェル(Teifel)ら著、バイオテクニクス(Biotechniques)、第19巻、p.79~80、1995年;アルブレヒト(Albrecht)ら著、アニュアルズ・オブ・ヘマトロジー(Ann.Hematol.)、第72巻、p.73~79、1996年;ホルメン(Holmen)ら著、インビトロ・セルラー・アンド・デベロップメンタル・バイオロジー・アニマル(In Vitro Cell Dev.Biol.Anim.)、第31巻、p.347~351、1995年;レミー(Remy)ら著、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjug.Chem.)、第5巻、p.647~654、1994年;ル・ボルシュ(Le Bolch)ら著、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、第36巻、p.6681~6684、1995年;及びレフラー(Loeffler)ら著、メソッド・イン・エンザイモロジー(Meth.EnzymoL)、第217巻、p.599~618、1993年を参照);又は他の好適な方法による数多くのトランスフェクション方法が当業者に公知である。合成染色体の送達方法はまた、米国特許出願第09/815,979号明細書にも記載されている。トランスフェクションの成功は、概して、トランスフェクト細胞内における異種核酸の存在の検出、例えば、異種核酸の何らかの視覚化、選択可能マーカの発現又は宿主細胞内での合成プラットフォーム染色体又は送達ベクターの作動の何らかの指標などによって認識される。本発明の実施において有用な送達方法の説明については、米国特許第5,011,776号明細書;米国特許第5,747,308号明細書;米国特許第4,966,843号明細書;米国特許第5,627,059号明細書;米国特許第5,681,713号明細書;キム(Kim)及びエーベルワイン(Eberwine)著、アナリティカル・アンド・バイオアナリティカル・ケミストリー(Anal.Bioanal.Chem.)、第397巻、第8号、p.3173~3178、2010年を参照のこと。
【0055】
受容免疫細胞の視覚化、単離、及びトランスファー
本発明の合成プラットフォーム染色体の作製及びローディングは、様々な方法によってモニタすることができる。リンデンバウム(Lindenbaum)及びパーキンス(Perkins)ら著、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acid Research)、第32巻、第21号、p.el72、2004年は、先行技術のテクノロジーを用いた哺乳類サテライトDNAベースの人工染色体発現(ACE)システムの作製について記載している。この先行技術のシステムでは、PCR生成したプローブ又はニック翻訳を受けたプローブを使用して従来の単色及び二色FISH分析並びに高分解能FISHが行われた。テロメア配列の検出のため、有糸分裂スプレッドが、市販品から入手されたペプチド核酸プローブとハイブリダイズされた。蛍光顕微鏡法を用いて顕微鏡法が実施された。或いは、2016年2月9日に出願されたパーキンス(Perkins)及びグリーン(Greene)、PCT/US16/17179号明細書が、2つの標識したタグ:合成プラットフォーム染色体の作製に使用する細胞株内の内因性染色体に特異的な1つの標識タグ、及び作製しようとする合成染色体上の配列に特異的な1つの異なる標識のタグを用いて標準化された蛍光技術による合成染色体形成のリアルタイムモニタリングを可能にする組成物及び方法について記載している。
【0056】
合成染色体の単離及びトランスファーには、典型的には、微小核細胞融合(microcell mediated cell transfer:MMCT)技術又は色素依存的染色体染色と、続くフローサイトメトリーベースのソーティングが関わる。MMCT技術では、ドナー細胞が化学的に誘導されてその染色体が多核化され、続いて微小細胞にパッケージングされ、最終的に受容細胞に融合される。合成染色体が受容細胞にトランスファーされたことの確認は、薬物選択及びFISHによって確かめられる、トランスファーされた染色体のインタクトな送達により行われる。或いは、フローサイトメトリーベースのトランスファーを用いてもよい。フローサイトメトリーベースのトランスファーについては、有糸分裂を停止させた染色体が単離され、DNA特異的色素で染色され、及びサイズ及び異なる色素染色に基づきフローソーティングされる。フローソーティングされた染色体は、次に標準的なDNAトランスフェクション技術によって受容細胞に送達され、インタクトな染色体の送達がFISHによって判定される。更に別の代替例では、2016年2月9日に出願されたパーキンス(Perkins)及びグリーン(Greene)、PCT/US16/17179号明細書に記載される合成染色体作製の視覚化及びモニタリングに加え、合成染色体タグを使用してフローサイトメトリーによって合成染色体作製細胞から合成染色体を単離し、並びに受容細胞(即ち免疫細胞)への合成染色体のトランスファーをモニタすることができる。
【0057】
(実施例)
実施例1:サテライトDNAベースの人工染色体のデノボ作成
合成染色体(chromomsome)のデノボ作製のため、外因性DNA配列をHT1080合成染色体生成細胞株に導入し、それがアクロセントリック染色体のセントロメア周辺ヘテロクロマチン領域に組み込まれると、アクロセントリック染色体の短腕(rDNA/セントロメア領域)の大規模増幅が惹起された。増幅イベントの間にセントロメアが複製されて2つの活性セントロメアを有する二動原体染色体になった。続く有糸分裂イベントによって二動原体染色体の切断及び分離が起こり、主にサテライト反復配列を含む約20~120Mbサイズの離脱につながり、そこには増幅されたrDNAコピーも含み得る共増幅されたトランスフェクト導入遺伝子のサブドメインが含まれた。新規に作成された合成染色体は、内因性染色体タグ及びHT1080合成染色体生成細胞株内に操作された合成染色体タグを用いた蛍光染色体ペイント(又はFISH)の観察によってバリデートされる。
【0058】
トランスフェクションの前日、HT1080合成染色体生成細胞株の細胞を約2.0~8.0×10接着細胞密度となるように24ウェル組織培養ディッシュに分け、外来DNAを含むベクターを精製し(例えば、キアゲン(Qiagen)エンドフリー・プラスミド・マキシキット(EndoFree Plasmid Maxi Kit)を使用)、線状化し、及びトランスフェクション用にベクターの濃度を決定した。培養HT1080細胞は、トランスフェクション前に3~5時間フィードした。標準的なトランスフェクション試薬、例えば、サーモフィッシャー(ThermoFisher)リポフェクタミンLTX(Lipofectamine LTX)、プロメガ(Promega)のビアフェクト(Viafect)、又はインビトロジェン(Invitrogen)のリン酸カルシウムトランスフェクションキットを使用したHT1080細胞のトランスフェクションには、24ウェルセミコンフルエント組織培養ディッシュ当たり225ngのpSTV28HurDNAベクター及び12.5ng p15A7248lacEF1attPPuroベクターを使用した。pSTV28HurDNAベクターはリボソームDNA配列を含む。p15A7248lacEF1attPPuroベクターは、部位特異的組換えシステムの構成要素、LacOリピート並びにアンピシリン及びピューロマイシン耐性遺伝子を含む。細胞をトランスフェクション後1~3日間維持した時点でそれらをトリプシン処理し、10cmディッシュにリプレーティングした。プレーティング時又はプレーティングの1~3日後に10cmディッシュに選択培地を加えた。2~3日おきに培地を交換しながら選択的条件を10~21日間維持した。コロニーが直径2~3mmに達したところで抗生物質耐性クローンをピックした。十分に離れているコロニーが好ましかった。クローニングシリンダ及びトリプシンを使用して細胞を剥がし取り、24ウェルプレートに移して増殖させた。
【0059】
実施例2:サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)トリプトファン経路送達ベクターの作成
BLoVeL-TTSベクターを骨格送達ベクターとして使用して、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)トリプトファン経路の5つの遺伝子(Trp1~Trp5)を合成プラットフォーム染色体に挿入する。これらの5つのトリプトファン遺伝子は、2Aペプチド又はIRESエレメントのいずれかをコードするDNA配列によって隔てられて、5つの遺伝子を含有する単一の転写物を形成し、それによりトリプトファン合成に必要なタンパク質の発現レベルがほぼ同等になる。利用し得る2A自己切断ペプチドとしては、限定はされないが:ブタテッショウウイルス1 2A(P2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス2A(T2A)、ウマ鼻炎Aウイルス2A(E2A)、口蹄疫ウイルス2A(F2A)、細胞質多角体病ウイルス(BmCPV 2A)、及び軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)が挙げられる(下記参照)。データが示すところによれば、短い3アミノ酸ペプチド(グリシン-セリン-グリシン)が自己切断ペプチドのN末端に付加されると自己切断が改善する。従って、本例はまた、2A自己切断ペプチド活性の効率を改善する僅かな修飾も包含する。
【0060】
【表1】

利用し得る内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントとしては、限定はされないが、ウイルス性及び細胞性IRESエレメントが挙げられる。ウイルス性IRESエレメントは4種類に分類される。I型はエンテロウイルス(EV、PV、HRV)、II型はカルジオウイルス(EMCV)及びアフトウイルス(口蹄疫ウイルス、FMDV)を含み、III型はA型肝炎ウイルス(HAV)に用いられ、及びC型肝炎ウイルス(HCV)様IRESはIVグループに適合する(パチェコ(Pacheco)及びマルチネーゼ=サラス(Martinez-Salas)著、ジャーナル・オブ・バイオメディシン・アンド・バイオテクノロジー(J Biomed Biotechnol.)、2010年2月2日、p.458927、doi:10.1155/2010/458927、PMID:20150968;及びヘレン(Hellen)及びサルナウ(Sarnow)著、ジーンズ・アンド・デベロップメント(Genes Dev.)、第15巻、第13号、p.1593~612、2001年を参照)。
【0061】
BLoVeL-TTSをEco53KIで消化して送達ベクター骨格を線状化する。5つのTrp遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)s288cゲノムDNAから、線状化BLoVeL-TTSベクターへの5つの遺伝子及び選択のプロモータのIN-Fusionクローニング(Takara)用に設計されたプライマーを使用してPCR増幅するか、或いは合成する。
【0062】
【表2】

プロモータは、天然に見られるもの又は人工的にアセンブルしたプロモータから選択され得る。特定の経路及び適用に構成的プロモータが好ましいか、それとも誘導性プロモータが好ましいかは、所望の発現制御によって決まる。例えば、細胞内の特定の代謝産物のレベルに応じて転写を誘導又は抑制するフィードバック機構を提供し得るプロモータを利用してもよい。
【0063】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)生合成経路内の5つのTrp遺伝子は、以下の変更を伴い合成する:1)Trp1、Trp2、Trp3、Trp4遺伝子を終止コドンなしに合成する;2)P2AスペーサをTrp2遺伝子の上流にコードし、及びグリシン-セリン-グリシンスペーサ+15bpのT2Aスペーサを最後のTrp2アミノ酸コドンの下流にコードする;3)T2AスペーサをTrp3遺伝子の上流にコードし、及びグリシン-セリン-グリシンスペーサ+15bpのE2Aスペーサを最後のTrp3アミノ酸コドンの下流にコードする;4)E2AスペーサをTrp4遺伝子の上流にコードし、及びグリシン-セリン-グリシンスペーサ+15bpのF2Aスペーサを最後のTrp4アミノ酸コドンの下流にコードする;及び5)F2AスペーサをTrp5遺伝子の上流にコードし、及びポリアデニル化シグナルをTrp5遺伝子の下流にコードする。
【0064】
PCRプライマーは、線状化BLoVeL-TSSベクター骨格へのIN-Fusionクローニング用に5つの合成DNAエレメント並びにヒトEF1αプロモータ(pEF1hrGFPから増幅される)をPCR増幅するように設計する。得られるコンストラクト、BLoVeL-TSS_TrpPathを図2に示す。(BLoVeL-TSS_TrpPathには、以下のエレメントが存在する:sopA、sopB、及びsopC=プラスミド分割タンパク質;SV40pAn=SV40ポリA;TTS=転写終結シグナル;attB=部位特異的組換え部位;lox=部位特異的組換え部位;eGFP=蛍光タンパク質;Bsr=ブラストサイジン耐性遺伝子;repE=複製開始部位;Ori2=複製起点;CmR=クロラムフェニコール耐性遺伝子;ポリAn=ポリA;EF1αPr=プロモータ;TRP1、TRP2、TRP3 TRP4、及びTRP5=トリプトファン遺伝子1~5;P2A、T2A、E2A、及びF2A=自己切断ペプチド)。BLoVeL-TSS_TrpPath送達ベクターが構築されたところで、合成プラットフォーム染色体を含有する細胞にそれをトランスフェクトする。
【0065】
実施例3:合成プラットフォーム染色体へのサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)トリプトファン経路遺伝子のローディング
BLoVeL-TTSベクターを送達ベクターとして使用して、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)トリプトファン経路からの5つの遺伝子(Trp1~Trp5)を合成プラットフォーム染色体に挿入する。0日目、合成プラットフォーム染色体(hSynC)を含有する受容細胞株(例えば、HT1080)を24ウェルディッシュの1ウェル当たり約4E4細胞で播種し、ウェルが1日目に約70%コンフルエントになる。適切な培地(例えば、HT1080についてDMEM+10%FC3)中において細胞を37℃、5%COで一晩インキュベートする。1日目、製造者の指示に従い(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、リポフェクタミンLTX(Lipofectamine LTX)、プラス(Plus)試薬含有)、送達ベクター(例えば、BLoVeL-TSS_TrpPath)及び組換えタンパク質をコードするプラスミド(例えばpCXLamIntR)の両方をHT1080細胞にトランスフェクトする。トランスフェクションはデュプリケートで実施して、薬物選択の比較及び直接的な細胞ソーティングを行うことができるようにする。リポフェクタミンLTX(Lipofectamine LTX)をオプティメム(Opti-MEM)培地に希釈し(ギブコ(Gibco);トランスフェクトする24ウェルディッシュの各ウェルにつき1.5μl LTX/50μl オプティメム(Opti-MEM))、オプティメム(Opti-MEM)中50μlの希釈LTXに250ng DNA(例えば125ng BLoVeL-TSS_TrpPathプラスミド及び125ng pCXLamIntR/ウェル)を加える。各約50μl DNA-LTX-オプティメム(Opti_MEM)試料に0.25μlのプラス(PLUS)試薬を加え、各試料を室温で5分間インキュベートする。次に、この5分間のインキュベーション中に、0日目にプレーティングした細胞から培地を取り除き、新鮮培地を使用して培地を交換する。この細胞にDNA-脂質複合体を加えて、適切な培地中、37℃、5%COでインキュベートする。
【0066】
2~24日目、薬物選択を実施する。デュプリケート24ウェルのウェルのうちの1つからの細胞をトリプシン処理し、薬物選択(例えば、5μg/mlのピューロマイシン又は3μg/mlのブラストサイジン)を含む新鮮培地が入った10cmディッシュに移す。次に細胞を適切な培地中、37℃、5%COでインキュベートし、コロニー形成に関してモニタする。培地は約72時間毎に交換する。個別コロニーが形成されたら(約10日)、各コロニーをガラスシリンダによって単離し、トリプシン処理して、24ウェルディッシュのウェルに移す。次に、クローンを低温貯蔵下に置いてPCR分析用のゲノムDNAを単離するのに十分な細胞が利用可能になるまで、これらの「クローン」を培養下で増殖させる(約2週間;プロメガ(Promega)ウィザードSV(Wizard SV)ゲノムDNA精製)。
【0067】
或いは、デュプリケートウェルの細胞をトリプシン処理して、薬物選択を含まない新鮮培地が入った6cmディッシュに置き、適切な培地中、37℃、5%COでインキュベートしてもよい。3又は4日目、6cmディッシュ内の細胞をトリプシン処理し、セルソータにかけることにより、ベクターが組み込まれた、且つ送達ベクター上の蛍光タンパク質(例えばGFP;BLoVeL-TSS_TrpPath)を発現する蛍光細胞をシングルセルソーティングする。ソータは合成染色体への組込み後のインフレームGFP陽性組換え体を同定することに留意されたく、これは本発明の方法のユニークな側面の一つである。目的の遺伝子/DNAエレメントを含有する送達ベクターの組込みは、適切なPCRプライマーを使用した合成プラットフォーム染色体と送達ベクター(BLoVeL-TSS_TrpPath)との間の組換え部位にわたるユニークなPCR産物の産生によって同定される。試験ゲノムDNA試料と併せて、水と宿主ゲノムDNA(例えばHT1080)との陰性対照PCR反応を実施する。BLoVeL-TSS_TrpPathベクター組込みからのジャンクションPCR産物の増幅に使用するPCRプライマーは、ジャンクション1-予想産物サイズ392bp(ACCGAGCTGCAAGAACTCTTCCTC[配列番号5]及びctcgccgcagccgtgtaa[配列番号6]);ジャンクション2-予想産物サイズ401bp(gcgctaatgctctgttacaggt[配列番号7]及びGGAAAGCTGCCAGTGCCTTG[配列番号8])である。
【0068】
正しいジャンクションPCR産物サイズの候補クローンの同定後、更なるPCR反応を実施して、当初送達ベクターにロードされた、今は合成染色体上にある目的のDNAエレメント(例えばTRP1、TRP2、TRP3、TRP4及びTRP5)の存在が確認される。加えて、トリプトファン産生に関する試験が実施され、これは幾つもの方法で決定することができる。初めに、細胞がアミノ酸トリプトファンを含まない細胞培養培地で成長する能力に関して、これらの細胞の成長をトリプトファン含有の細胞培養培地で成長する細胞と比較して試験し得る。トリプトファン合成に関する別の試験は、ブリッジ・イット(Bridge-it)L-トリプトファン蛍光アッセイキット(メディオミクス社(Mediomics,LLC))で溶解細胞ペレット中のトリプトファンレベルをアッセイすることであり得る。トリプトファンレベルは、TRP1、TRP2、TRP3、TRP4及びTRP5遺伝子を担持する独立した培養物でトリプリケートで測定され、BLoVeL-TSS_TrpPathを含有する合成染色体を有しない細胞の培養物と比較される。
【0069】
実施例4:トリプトファン経路への芳香族アミノ酸経路の付加
酵母のトリプトファン経路は、ヒト細胞におけるトリプトファン生合成経路の前駆体を提供するのにARO経路も更に必要とし得る。トリプトファン生合成経路に入る前駆分子はコリスミ酸であり、これは芳香族アミノ酸経路(シキミ酸(shikamate)経路とも称される)によって産生される。S.セレビシエ(S.cerevisiae)では、ホスホエノールピルビン酸(PEP)及びエリトロース-4-リン酸(E4P)からコリスミ酸への変換に4つの遺伝子が関与する:
【0070】
【表3】

TRP1、TRP2、TRP3、TRP4及びTRP5遺伝子を含有する細胞の同定後、CRE-lox組換えを用いて選択可能マーカカセット(eGFP-BSR)を除去する。合成染色体を含有する細胞株にCRE発現プラスミドをトランスフェクトする。0日目、細胞を6cm細胞培養ディッシュ当たり2E5細胞で播種し、37℃、5%COで一晩インキュベートする。1日目、CRE発現プラスミド(例えばPSF-CMV-CRE-CREリコンビナーゼ発現ベクター;シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))を製造者のプロトコルに従いリポフェクタミンLTX(Lipofectamine LTX)で細胞株(TRP1、TRP2、TRP3、Trp4及びTRP5遺伝子を含有する)にトランスフェクトする。リポフェクタミンLTX(Lipofectamine LTX)はオプティメム(Opti-MEM)培地に希釈し(ギブコ(Gibco);トランスフェクトする各6ウェルディッシュにつき7.25μl LTX/500μlオプティメム(Opti-MEM))、オプティメム(Opti-MEM)中の500μl希釈LTXに1.25μg DNAを加える(例えば6cmディッシュ当たりのPSF-CMV-CRE-CREリコンビナーゼ発現ベクター)。次に各約500μl DNA-LTX-オプティメム(Opti_MEM)試料に1.25μlのプラス(PLUS)試薬を加え、室温で5分間インキュベートする。次に、この5分間のインキュベーション中に、0日目にプレーティングした細胞から培地を取り除き、新鮮培地に交換する。細胞にDNA-脂質複合体を加え、適切な培地中、37℃、5%COでインキュベートする。2日目、6cmディッシュからCREトランスフェクト細胞をトリプシン処理によって回収し、ゲーティングにより非蛍光細胞を収集する。非蛍光細胞はCRE-lox組換えを受けており、eGFP-BSRカセットの除去が生じている。非蛍光細胞は96ウェルディッシュにシングルセルソーティングしてもよく、及び/又はチューブにバルクソーティングして、次に細胞培養ディッシュ(例えば6cmディッシュ)にプレーティングしてもよい。次に細胞が培養下で増殖するときの蛍光に関して細胞をモニタする。蛍光を示さない単細胞クローンを低温貯蔵及びゲノムDNA単離用に培養下で増殖させる。PCRによる正しいCRE-lox組換えイベントの確認は、BLoVeL-TSSベースのベクターの以下のプライマーを用いて決定する:Loxカセットフォワード:
(AGCCGTGTAACCGAGCATAGtgaagcctgcttttttatactaacttgagcgaa[配列番号9])Loxカセットリバース:
(CTGTTTCCTTCAGCCTGCATGGCCTTGACTAGAGGGTCGACGG[配列番号10])
462bp産物を示す候補がeGFP-BSRカセットの正しい切出しを示し、一方、1,819bp産物は切出しが起こらなかったことを示す。正しいPCR産物の候補をPCRによって更に試験して、目的のDNAエレメントの存在を確認する。
【0071】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)生合成経路の4つのARO遺伝子は、以下の変更を伴い合成する:1)ARO1、ARO2、ARO3遺伝子を終止コドンなしに合成する;2)P2AスペーサをARO2遺伝子の上流にコードし、及びグリシン-セリン-グリシンスペーサ+15bpのT2Aスペーサを最後のARO2アミノ酸コドンの下流にコードする;3)T2AスペーサをARO3遺伝子の上流にコードし、及びグリシン-セリン-グリシンスペーサ+15bpのE2Aスペーサを最後のARO3アミノ酸コドンの下流にコードする;及び4)E2AスペーサをARO4遺伝子の上流にコードし、及びポリアデニル化シグナルをARO4遺伝子の下流にコードする。pGLuc-Basic_2(NEB)から新規合成ポリアデニル化部位をコピーした。PCRプライマーは、線状化BLoVeL-TSS送達ベクター骨格へのIN-Fusionクローニング用にこれらの4つの合成DNAエレメント並びにEF1αプロモータ(pEF1hrGFPから増幅される)を増幅するように設計する。得られるコンストラクト、BLoVeL-TSS_AroPathを図3に示す。(BLoVeL-TSS_AroPathには、以下のエレメントが存在する:sopA、sopB、及びsopC=プラスミド分割タンパク質;SV40pAn=SV40ポリA;TTS=転写終結シグナル;attB=部位特異的組換え部位;lox=部位特異的組換え部位;eGFP=蛍光タンパク質;Bsr=ブラストサイジン耐性遺伝子;repE=複製開始部位;Ori2=複製起点;CmR=クロラムフェニコール耐性遺伝子;ポリAn=ポリA;EF1αPr=プロモータ;ARO1、ARO2、ARO3、及びARO4=芳香族アミノ酸遺伝子1~4;P2A、T2A、及びE2A=自己切断ペプチド)。TRP1、TRP2、TRP3、Trp4及びTRP5遺伝子が既にロードされた合成染色体を含有する細胞にBLoVeL-TSS_AroPathベクターをトランスフェクトする。
【0072】
0日目、合成染色体(hSynC)を含有する受容細胞株(例えば、HT1080)を24ウェルディッシュの1ウェル当たり約4E4細胞で播種して、ウェルが1日目に約70%コンフルエントになり、適切な培地(例えば、HT1080についてDMEM+10%FC3)中において37℃、5%COで一晩インキュベートする。1日目、製造者の指示に従い(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、リポフェクタミンLTX(Lipofectamine LTX)、プラス(Plus)試薬含有)、送達ベクター(例えば、BLoVeL-TSS_AroPath)及び組換えタンパク質をコードするプラスミド(例えばpCXLamIntR)の両方をHT1080細胞にトランスフェクトする。トランスフェクションは典型的にはデュプリケートで実施して、薬物選択の比較及び直接的な細胞ソーティングを行うことができるようにする。リポフェクタミンLTX(Lipofectamine LTX)をオプティメム(Opti-MEM)培地に希釈し(ギブコ(Gibco);トランスフェクトする24ウェルディッシュの各ウェルにつき1.5μl LTX/50μl オプティメム(Opti-MEM))、オプティメム(Opti-MEM)中50μlの希釈LTXに250ng DNA(例えば125ng BLoVeL-TSS_AroPathプラスミド及び125ng pCXLamIntR/ウェル)を加える。各約50μl DNA-LTX-オプティメム(Opti_MEM)試料に0.25μlのプラス(PLUS)試薬を加え、室温で5分間インキュベートする。次に、この5分間のインキュベーション中に、0日目にプレーティングした細胞から培地を取り除き、新鮮培地に交換する。この細胞にDNA-脂質複合体を加えて、適切な培地中、37℃、5%COでインキュベートする。
【0073】
2~24日目、薬物選択を実施する。デュプリケート24ウェルのウェルのうちの1つからの細胞をトリプシン処理し、薬物選択(例えば、5μg/mlのピューロマイシン又は3μg/mlのブラストサイジン)を含む新鮮培地が入った10cmディッシュに移す。次に細胞を適切な培地中、37℃、5%COでインキュベートし、コロニー形成に関してモニタする。培地は約72時間毎に交換する。個別コロニーが形成されたら(約10日)、各コロニーをガラスシリンダによって単離し、トリプシン処理して、24ウェルディッシュのウェルに移す。次に、クローンを低温貯蔵下に置いてPCR分析用のゲノムDNAを単離するのに十分な細胞が利用可能になるまで、これらの「クローン」を培養下で増殖させる(約2週間;プロメガ(Promega)ウィザードSV(Wizard SV)ゲノムDNA精製)。
【0074】
或いは、デュプリケートウェルの細胞をトリプシン処理して、薬物選択を含まない新鮮培地が入った6cmディッシュに置き、適切な培地中、37℃、5%COでインキュベートしてもよい。3又は4日目、6cmディッシュの細胞をトリプシン処理し、セルソータにかけることにより、ベクターが組み込まれた、且つ標的ベクター上の蛍光タンパク質(GFP;BLoVeL-TSS_AroPath)を発現する蛍光細胞をシングルセルソーティングする。目的の遺伝子/DNAエレメントを含有する送達ベクターの組込みは、適切なPCRプライマーを使用した合成染色体と送達ベクター(BLoVeL-TSS_AroPath)との間の組換え部位にわたるユニークなPCR産物の産生によって同定される。試験ゲノムDNA試料と併せて、水と宿主ゲノムDNA(例えばHT1080)との陰性対照PCR反応を実施する。BLoVeL-TSS_AroPath送達ベクター組込みからのユニークなジャンクションPCR産物の増幅に使用するPCRプライマーは、ジャンクション1-予想産物サイズ401bp(gcgctaatgctctgttacaggt[配列番号7]及びGGAAAGCTGCCAGTGCCTTG[配列番号8])である。正しいジャンクションPCR産物サイズの候補クローンの同定後、更なるPCR反応を実施して、当初送達ベクターにロードされた(TRP1、TRP2、TRP3、Trp4及びTRP5遺伝子)、現在合成染色体上にある(例えば、ARO1、ARO2、ARO3及びARO4)目的のDNAエレメントの存在が確認される。2回目のジャンクションPCRは、合成染色体への2回目のローディングでもはやユニークでないことに留意されたい:BLoVeL-TSS_AroPathとBLoVeL-TSS_TrpPathとの両方のターゲット組込みイベントによって共有されるジャンクション-予想産物サイズ392bp(accgagctgcaagaactcttcctc[配列番号5]及びctcgccgcagccgtgtaa[配列番号6])。加えて、コリスミ酸産生に関する試験が実施される。これは幾つもの方法で決定することができる。例えば、細胞が、アミノ酸トリプトファンを含まない細胞培養培地で成長する能力及びトリプトファンを含有する細胞培養培地で成長する細胞と比較した成長に関して試験されてもよい。これらの細胞はここでトリプトファン及び芳香族アミノ酸生合成経路の両方を有する。後者の経路は前者の経路によるトリプトファン産生のためのコリスミ酸基質を産生するはずである。別のトリプトファン合成試験は、ブリッジ・イット(Bridge-it)L-トリプトファン蛍光アッセイキット(メディオミクス社(Mediomics,LLC))で溶解細胞ペレット中のトリプトファンレベルをアッセイすることであり得る。トリプトファンレベルは、トリプトファンを担持する独立した培養物に関してトリプリケートで測定され、BLoVeL-TSS_AroPathを含有する合成染色体を有しない細胞の培養物並びにBLoVeL-TSS-AroPath及びBLoVeL-TSS-TrpPathの両方の組込みイベントを欠く培養物と比較される。
【0075】
上記は単に本発明の原理を例示するに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載又は図示されないものの本発明の原理を具体化し、且つその趣旨及び範囲内に含まれる様々な変形例を考案可能であることが理解されるであろう。更に、本明細書に記載される例及び条件付きの文言は全て、主として、本発明の原理及び本発明者らが当該技術分野の拡大に寄与する概念についての読者の理解の助けとなることを意図し、かかる具体的に記載される例及び条件に限定されないものと解釈されなければならない。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態並びにその具体的な例を記載する本明細書における記述は全て、その構造的均等物及び機能的均等物の両方を包含することが意図される。加えて、かかる均等物は、現在公知の均等物、及び将来開発される均等物、即ち構造に関わらず同じ機能を果たす開発される任意の要素の両方を含むことが意図される。従って本発明の範囲が、本明細書に図示及び記載される例示的実施形態に限定されることは意図されない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲によって具体化される。以下の特許請求の範囲においては、用語「手段」が使用されない限り、そこに記載されるいかなる特徴又は要素も、米国特許法第112条第16段落に準ずるミーンズ・プラス・ファンクション限定と解釈されてはならない。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
受容細胞に生合成経路を構築する方法であって、
標的核酸配列の部位特異的組込みを可能にする核酸配列を含む合成染色体作製構成要素を受容細胞株にトランスフェクトするステップ;
複数の部位特異的組換え部位を有する合成プラットフォーム染色体を作製するステップ;
生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子を含む送達ベクターを前記受容細胞株にトランスフェクトするステップであって、前記送達ベクターが少なくとも1つの部位特異的組換え部位を含むステップ;
前記合成プラットフォーム染色体と前記送達ベクターとの間の部位特異的組換えを活性化させるステップであって、生合成経路を実現する能力を有する前記複数の遺伝子が前記合成プラットフォーム染色体にロードされて、前記生合成経路を発現する合成染色体が作製されるステップ;及び
前記生合成経路を発現する前記合成染色体を含む受容細胞を単離するステップを含む方法。
[項目2]
生合成経路を実現する能力を有する前記複数の遺伝子が、トリプトファン生合成に必要な遺伝子を含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
トリプトファン生合成に必要な前記遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるトリプトファンの合成に必要な5つの遺伝子を含む、項目2に記載の方法。
[項目4]
前記送達ベクターが、a)腫瘍細胞が免疫細胞周期進行を阻害する能力を妨害又は遮断する1つ以上の遺伝子、b)免疫細胞の活性化及び成長を亢進させる因子をコードする1つ以上の遺伝子、又はc)発生中の腫瘍に対する免疫細胞の特異性を増加させる1つ以上の遺伝子を更に含む、項目2に記載の方法。
[項目5]
前記送達ベクターが、a)、b)又はc)のうちの少なくとも2つを含む、項目4に記載の方法。
[項目6]
前記送達ベクターが、a)、b)及びc)の3つ全てを含む、項目5に記載の方法。
[項目7]
前記生合成経路を発現する前記合成染色体を単離するステップ;及び
前記合成染色体を第2の受容細胞にトランスファーするステップを更に含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
項目7に記載の第2の受容細胞。
[項目9]
前記第2の受容細胞が、万能供血者T細胞又は患者自己T細胞から選択される、項目7に記載の方法。
[項目10]
項目9に記載の第2の受容細胞。
[項目11]
部位特異的組込みを可能にする前記核酸配列が、attP、attB、attL、及びattR又は突然変異型のattP、attB、attL、及びattRを含む、項目1に記載の方法。
[項目12]
前記送達ベクターがBACである、項目1に記載の方法。
[項目13]
項目1に記載の生合成経路を発現する合成染色体。
[項目14]
項目1に記載の生合成経路を発現する合成染色体を含む受容細胞。
[項目15]
第2の生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子を含む第2の送達ベクターを前記受容細胞株にトランスフェクトするステップであって、前記第2の送達ベクターが少なくとも1つの部位特異的組換え部位を含むステップ;
前記合成プラットフォーム染色体と前記第2の送達ベクターとの間の部位特異的組換えを活性化させるステップであって、第2の生合成経路を実現する能力を有する前記複数の遺伝子が前記合成プラットフォーム染色体にロードされて、前記第2の生合成経路を発現する合成染色体が作製されるステップ;及び
前記第2の生合成経路を発現する前記合成染色体を含む受容細胞を単離するステップを更に含む、項目1に記載の方法。
[項目16]
項目15に記載の第2の生合成経路を発現する合成染色体。
[項目17]
前記第2の生合成経路を発現する前記合成染色体を単離するステップ;及び
前記第2の生合成経路を発現する前記合成染色体を第2の受容細胞にトランスファーするステップを更に含む、項目15に記載の方法。
[項目18]
項目15に記載の第2の受容細胞。
[項目19]
前記第2の受容細胞が、万能供血者T細胞又は患者自己T細胞から選択される、項目15に記載の方法。
[項目20]
項目19に記載の第2の受容細胞。
[項目21]
受容免疫細胞に生合成経路を構築する方法であって、
標的核酸配列の部位特異的組込みを可能にする核酸配列を含む合成染色体作製構成要素を受容細胞株にトランスフェクトするステップ;
複数の部位特異的組換え部位を有する合成プラットフォーム染色体を作製するステップ;
生合成経路を実現する能力を有する複数の遺伝子を含む送達ベクターを前記受容細胞株にトランスフェクトするステップであって、前記送達ベクターが少なくとも1つの部位特異的組換え部位を含むステップ;
前記合成プラットフォーム染色体と前記送達ベクターとの間の部位特異的組換えを活性化させるステップであって、生合成経路を実現する能力を有する前記複数の遺伝子が前記合成プラットフォーム染色体にロードされて、前記生合成経路を発現する合成染色体が作製されるステップ;
前記生合成経路を発現する前記合成染色体を含む受容細胞を単離するステップ;
前記生合成経路を発現する前記合成染色体を単離するステップ;及び
前記合成染色体を第2の受容細胞にトランスファーするステップを含む方法。
図1
図2
図3
【配列表】
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