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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ブラジャー
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/10 20060101AFI20241210BHJP
   A41C 3/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A41C3/10 A
A41C3/14 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022186002
(22)【出願日】2022-11-21
(65)【公開番号】P2024074683
(43)【公開日】2024-05-31
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】512180676
【氏名又は名称】株式会社テラスハートジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 貴嘉
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-256203(JP,A)
【文献】特開2019-127678(JP,A)
【文献】特開2013-147530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/10
A41C 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラジャーであって、
バストを覆う左右一対のバスト部と、
前記左右一対のバスト部より上に設けられ、バストより上の胸元を覆う左右一対の袋状の収容部と、
前記収容部のそれぞれに収容されたクッションと
を備え、
前記クッションは、ポリウレタン発泡体で形成され、
前記ポリウレタン発泡体は、
トルエンジイソシアネートとポリエーテルポリオールを主成分とし、
損失正接のピーク値に対応する温度とされるガラス転移温度が0℃以上40℃以下であり、
温度0℃以上40℃以下において、0.1Hz以上100Hz以下の周波数領域における前記損失正接が0.4以上であり、
周波数0.1Hz以上1Hz以下の範囲での前記損失正接の平均値が、周波数10Hz以上100Hz以下の範囲での前記損失正接の平均値以下である、
ブラジャー。
【請求項2】
前記クッションは、前記収容部に出し入れ可能である請求項1に記載のブラジャー。
【請求項3】
前記クッションは板状である請求項1に記載のブラジャー。
【請求項4】
前記クッションの下辺と前記左右一対のバスト部の対応する方の上辺とは互いに整合する形状を有する請求項1に記載のブラジャー。
【請求項5】
前記左右一対のバスト部のそれぞれは袋状であり、パッドが収容されている請求項1項に記載のブラジャー。
【請求項6】
前記クッションは前記パッドより薄い請求項5に記載のブラジャー。
【請求項7】
前記パッドは、前記ポリウレタン発泡体で形成される請求項5に記載のブラジャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
バストだけでなくデコルテを美しく見せようとするブラジャーが知られている(例えば特許文献1)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2014-196583号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、ブラジャーであって、バストを覆う左右一対のバスト部と、バスト部より上に設けられた左右一対の袋状の収容部と、収容部のそれぞれに収容されたクッションとを備え、クッションはポリウレタン発泡体により形成され、ポリウレタン発泡体は、トルエンジイソシアネートとポリエーテルポリオールを主成分とし、損失正接のピーク値に対応する温度とされるガラス転移温度が0℃以上40℃以下であり、温度0℃以上40℃以下において、0.1Hz以上100Hz以下の周波数領域における損失正接が0.4以上であり、周波数0.1Hz以上1Hz以下の範囲での損失正接の平均値が、周波数10Hz以上100Hz以下の範囲での損失正接の平均値以下である。
【0004】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本実施形態に係るブラジャー10の正面図である。
図2】ブラジャー10の背面図である。
図3】本体前部100の左側を裏側、すなわち装着者に近い側から見た図である。
図4図3から説明のためフラップ114、124を除いた状態を示す。
図5】クッション190を装着時の装着者側から見た図である。
図6】パッド180を装着時の装着者側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0007】
図1は本実施形態に係るブラジャー10の正面図であり、図2はブラジャー10の背面図である。ブラジャー10は、本体前部100と本体後部160とが一体的に形成されている。本体前部100の上部と本体後部160と上部がその左右において一対の肩掛け部170でさらに連結されている。なお、特に断らない限り、左右はブラジャー10を装着した装着者にとっての左右を表す。
【0008】
本体前部100の中央には、上下を横断する開閉部140が配される。開閉部140は本体前部100を左右に分離したり結合したりすることで、装着者がブラジャー10を着脱するものである。開閉部140は例えばジッパーや面ファスナーを含む。開閉部140さらに、ジッパー等が図1の方向からみて隠れるよう、ジッパー等よりも装着者から遠い側にフラップが設けられてもよい。
【0009】
本体前部100には、装着者のバストの位置に略対応する左右一対のバスト部110、バスト部110のそれぞれの上部に配された前胸上部120、前胸上部120のそれぞれの上部に配されたレース部130がさらに設けられる。以下、左右一対の構成のうち左の構成について説明し、特に断らない限り右の構成は左の構成と左右対称であるので説明を省略する。
【0010】
バスト部110は装着者のバストを覆う部分である。一方、前胸上部120は、装着者のバストより上で鎖骨の下くらいまでの、胸元、デコルテなどと呼ばれる部分を覆う部分である。
【0011】
本体前部100及び本体後部160は、開閉部140を除き、オーガニックの綿や絹などの天然繊維で編んだ編物で一体的に形成されることが好ましい。ただし、オーガニックに限られず、また、天然繊維に代えて人工繊維でもよい。さらに、編物に代えて織物で形成されてもよいし、各部分が別個に形成されて縫い合わされたり編み込まれたりして一体的になっていてもよい。
【0012】
図3は本体前部100の左側を裏側、すなわち装着者に近い側から見た図である。図4図3から説明のためフラップ114、124を除いた状態を示す。
【0013】
図4に示すように、バスト部110は袋状であって脇側上部に開口112を有し、これにより収容部を形成している。さらに、図3に示すように開口112を覆うフラップ114を有する。フラップ114の脇側上辺は本体前部100に取り付けられ、下辺が解放されている。
【0014】
図6は、パッド180を装着時の装着者側から見た図である。パッド180は、バスト部110の開口112から収容部へ出し入れされる。パッド180は例えば略お椀型である。パッド180は装着時にバストの前側に位置し、バストを豊かに見せたり、バストを保護したりする。パッド180の下辺はバスト部110の下辺に沿った形状であることが好ましい。これにより装着時において、バスト部110に収容されたパッド180の位置が安定する。
【0015】
図4に示すように、前胸上部120は袋状であって上部に開口122を有し、これにより収容部を形成している。さらに、図3に示すように開口122を覆うフラップ124を有する。フラップ124の上辺は本体前部100に取り付けられ、下辺が解放されている。
【0016】
図5は、クッション190を装着時の装着者側から見た図である。クッション190は、前胸上部120の開口122から収容部へ出し入れされる。クッション190は装着時にデコルテの前側に位置する。これにより、病気の治療のためバストとデコルテを含む胸部を切除した装着者について、バストと一緒に切除されたデコルテの部分に厚みを持たせてバストまでのラインを自然に見せることができる。
【0017】
クッション190は例えば板状である。クッション190の厚みは装着者のデコルテに合わせて決められてよく、数ミリから数センチである。装着時に胸部全体を自然に見せるため、パッド180よりも薄いことが好ましい。また、片方の胸部のみを切除した装着者において、切除した側のクッション190の厚みの半分程度の厚みのクッション190を切除していない側に挿入して、見た目のバランスを整えてもよい。
【0018】
クッション190の下辺は前胸上部120の下辺に沿った形状であることが好まい。これにより装着時において、前胸上部120に収容されたクッション190の位置が安定する。また、クッション190の下辺とバスト部110の上辺とは互いに整合する形状を有することが好ましい。本実施形態の左側においては、クッション190の下辺が、左から右に伸びる水平線と、当該水平線から中央方向かつ下方に伸びる線分からなっており、バスト部110の上辺も左から右に伸びる水平線と、当該水平線から中央方向かつ下方に伸びる線分からなっており、互いに整合する形状となっている。これにより、装着時におけるクッション190の位置が安定する。
【0019】
クッション190は、胸元の装着感およびフィット感のある材料であることが好ましく、例えばポリウレタン発泡体で形成される。ポリウレタン発泡体は、人体からの伝熱によって硬度を低下させ、体表面の形状に追従させて変形させて使用することができる形状追従性を有するものであり、安静時には人体に良好にフィットするとともに、運動時には優れた装着性および保持性を有するものである。
【0020】
ポリウレタン発泡体は例えば、トルエンジイソシアネートとポリエーテルポリオールを主成分とし、損失正接のピーク値に対応する温度とされるガラス転移温度が0℃ 以上40℃ 以下であり、温度0℃以上40℃以下において、0.1Hz以上100Hz以下の周波数領域における損失正接が0.4以上であり、周波数0.1Hz以上1Hz以下(安静時の人体体表面の周波数)の範囲での損失正接の平均値が、周波数10Hz以上100Hz以下(運動時の人体体表面の周波数)の範囲での損失正接の平均値以下であることが好ましい。さらに、上記ポリウレタン発泡体において、トルエンジイソシアネートが、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートとが65:35~80:20の比率で混合され、ポリエーテルポリオールが、数平均分子量が700以上3000以下のポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量が400以上2000以下のポリオキシプロピレンジオール、または、ポリオキシプロピレントリオールとポリオキシプロピレンジオールの混合物であることがより好ましい。
【0021】
上記ポリウレタン発泡体において、周波数0.1Hz以上1Hz以下の範囲での損失正接の平均値に対する周波数10Hz以上100Hz以下の範囲での損失正接の平均値の変化の割合が、0%以上10%以下であることが好ましい。また、上記ポリウレタン発泡体において、ポリエーテルポリオールとトルエンジイソシアネートとが、100:39.21~100:48.77(質量比)の比率で配合されることが好ましい。
【0022】
このようなポリウレタン発泡体を用いることにより、クッション190に体温が伝わって、クッション190の硬度が低下して柔軟になり、装着者の胸元の装着感およびフィット感を向上させることができる。
【0023】
パッド180にも上記ポリウレタン発泡体が用いられてもよい。これに代えて、パッド180には他の材料が用いられてもよい。
【0024】
(実施例)
上記実施形態に係るブラジャー10を装着者に装着してもらい、官能試験を行った。実施例1は、クッション190に株式会社SMPテクノロジーズ製の商品名「SMP Foam」を用いた。この「SMP Foam」は、上記実施形態のポリウレタン発泡体の一例である。比較例1は、クッション190に株式会社インズコーポレーション製の商品名「ウレタンフォーム ソフトタイプ」を用いた。この「ウレタンフォーム ソフトタイプ」はポリウレタン発泡体ではあるが、上記実施形態のポリウレタン発泡体の性質を満たさないものである。比較例2は、クッション190にナイロン布生地を用いた。
【0025】
装着者は40代から60代の乳がんで胸部を切除された10名の患者様であり、バストサイズは様々であった。切除された側の前胸上部120に実施例1、比較例1、比較例2、の順にクッション190を出し入れして、ブラジャー10を着用してもらった。それぞれの装着感について、「フィットする」、「快適」、「シルエット」をそれぞれ3段階で評価してもらった。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示されるように、「フィットする」、「快適」及び「シルエット」のいずれについても、実施例1が比較例1や2に比べて格段に良好であった。さらに、下記意見もあった。
・実施例1は、比較例1や2と比べて、フィットや凹凸を埋めてくれて安心感がある。
・比較例1は、実施例1と比べてフォームが固く、肌とフィットしない。
・比較例1で「フィットする」に「はい」と答えた3名はいずれもバストのサイズが他の7名より小さく、凹凸があまり感じられなかった、とのこと。
・比較例2に対しては、ごわつきがあり安定しない、肌に触れた感じが強い、シルエットが悪い、などの意見あり。
【0028】
実施例1によれば、デコルテからバストまでを豊かにかつ自然に見せるブラジャー10において、装着者の胸元の装着感およびフィット感を向上させることができる。特に、治療等により胸部を切除した装着者に対しての使用感を向上させることができる。
【0029】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0030】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0031】
10 ブラジャー、100 本体前部、110 バスト部、112 開口、114 フラップ、120 前胸上部、122 開口、124 フラップ、130 レース部、140 開閉部、160 本体後部、170 肩掛け部、180 パッド、190 クッション
図1
図2
図3
図4
図5
図6