(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ホモジナイザの動きによる可変ビームサイズ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/13 20060101AFI20241210BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20241210BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20241210BHJP
G01N 21/73 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
H01S3/13
G01N27/62 B
G02B3/00 A
G01N21/73
(21)【出願番号】P 2022549728
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 US2021018731
(87)【国際公開番号】W WO2021168213
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2024-01-30
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519373408
【氏名又は名称】エレメンタル・サイエンティフィック・レーザーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ELEMENTAL SCIENTIFIC LASERS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンス,ジェイ エヌ
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-506795(JP,A)
【文献】特表2016-522887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0371590(US,A1)
【文献】特表2021-527200(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1913654(KR,B1)
【文献】特開2000-066133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを生成するレーザ源と、
第1ホモジナイザと第2ホモジナイザとを含み、前記レーザビームを受ける均質化光学系のセットと、
前記均質化光学系を搭載する均質化光学系調整装置と、
を備え、
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザ又は前記第2ホモジナイザのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームのビームサイズを変化させ、
前記レーザビームの前記ビームサイズの変化により、前記レーザビームのフルエンスが変化し、前記レーザビームは、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとを通過して材料をアブレーションするように構成されている、
アブレーションシステム。
【請求項2】
前記ビームサイズは、最小ビームサイズと最大ビームサイズとを含む範囲内の任意のサイズに調整可能である、
請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項3】
前記第1ホモジナイザの位置が調整可能である、
請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項4】
前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとは、それぞれマイクロレンズアレイを含む、
請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項5】
前記アブレーションシステムは、レーザアブレーションに基づく分析システム内に組み込まれ、前記レーザアブレーションに基づく分析システムは分光計を含み、前記分光計はアブレーションされた材料を受け取って分析するように構成されている、
請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項6】
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームのビーム断面積を増加させ、相応して前記レーザビームのフルエンスを減少させるように構成されている、
請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項7】
レーザビームを生成するレーザ源と、
第1ホモジナイザと第2ホモジナイザとを含み、前記レーザビームを受ける均質化光学系のセットと、
前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとを搭載する均質化光学系調整装置と、
を備え、
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザ又は前記第2ホモジナイザのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームのビーム断面を変化させ、
前記レーザビームは、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとを通過した後にサンプルをアブレーションするように構成されている、
アブレーションシステム。
【請求項8】
前記ビーム断面は、最小ビーム断面と最大ビーム断面とを含む範囲内において調整可能である、
請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項9】
前記第1ホモジナイザの位置が調整可能である、
請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項10】
前記第1ホモジナイザ又は前記第2ホモジナイザのうちの少なくとも1つは、マイクロレンズアレイを含む、
請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項11】
前記アブレーションシステムは、レーザアブレーションに基づく分析システム内に組み込まれている、
請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項12】
前記レーザアブレーションに基づく分析システムは分光計を含み、前記分光計はアブレーションされたサンプルを受け取って分析するように構成されている、
請求項11に記載のアブレーションシステム。
【請求項13】
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームの前記ビーム断面を増加させ、相応して前記レーザビームのフルエンスを減少させるように構成されている、
請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項14】
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームの前記ビーム断面を減少させ、相応して前記レーザビームのフルエンスを増加させるように構成されている、
請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項15】
レーザビームを生成するレーザ源と、
第1ホモジナイザと第2ホモジナイザとを含み、前記レーザビームを受ける均質化光学系のセットと、
前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとを搭載する均質化光学系調整装置と、
アブレーションされた材料を受け取って分析するように構成された分光計と、
を備え、
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザ又は前記第2ホモジナイザのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームのビームサイズを変化させ、
前記レーザビームは、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとを通過した後に前記材料をアブレーションするように構成されている、
レーザアブレーションに基づく分析システム。
【請求項16】
前記レーザビームの前記ビームサイズは、最小ビームサイズと最大ビームサイズとを含む範囲内において調整可能である、
請求項15に記載のレーザアブレーションに基づく分析システム。
【請求項17】
前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとは、それぞれマイクロレンズアレイを含む、
請求項15に記載のレーザアブレーションに基づく分析システム。
【請求項18】
前記マイクロレンズアレイは、正方形マイクロレンズアレイ又はフライアイマイクロレンズアレイのいずれかを含む、
請求項17に記載のレーザアブレーションに基づく分析システム。
【請求項19】
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームの前記ビームサイズを増加させ、相応して前記レーザビームのフルエンスを減少させるように構成されている、
請求項15に記載のレーザアブレーションに基づく分析システム。
【請求項20】
前記均質化光学系調整装置は、前記第1ホモジナイザと前記第2ホモジナイザとのうちの少なくとも1つの位置を選択的に調整して、前記レーザビームの前記ビームサイズを減少させ、相応して前記レーザビームのフルエンスを増加させるように構成されている、
請求項15に記載のレーザアブレーションに基づく分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月19日に出願され、「ホモジナイザの動きによる可変ビームサイズ」を題とした米国仮特許出願第62/978,516号に基づいて優先権を主張する。米国仮出願第62/978,516号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
レーザアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)又はレーザアブレーション誘導結合プラズマ発光分析(LA-ICP-OES)技術を利用して、ターゲット(例えば、固体又は液体ターゲット材料)の組成を分析することができる。多くの場合、ターゲットのサンプルは、エアロゾル(すなわち、ヘリウムガス等のキャリアガス中の、固体、及び場合によっては液体の粒子及び/又は蒸気の懸濁液)の形態で分析システムに提供される。サンプルは通常、レーザアブレーションチャンバー内にターゲットを配置し、チャンバー内にキャリアガスの流れを導入し、1つ又は複数のレーザパルスでターゲットの一部をアブレーションしてプルームを発生させることによって生成される。プルームは、ターゲット(以下、「ターゲット物質」という)から、放出され又は別の方法で生成され、キャリアガス内に浮遊する粒子及び/又は蒸気を含む。流れるキャリアガス内に取り込まれたターゲット材料は、輸送導管を介して分析システムに輸送され、TCPトーチに送られ、そこでイオン化される。そして、イオン化粒子及び/又は蒸気を含むプラズマは、分析システム、例えば、MS、OES、同位体比質量分析システム(IRMS)、又はエレクトロスプレーイオン化(ESI)システムなどによって分析される。
【0003】
詳細については、添付の図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本開示の例示的な実施形態に係る、レーザアブレーションに基づく分析システムの概略図である。
【
図2A】
図1に示すレーザアブレーションに基づく分析システムのレーザ源、一対の均質化光学系(第1のホモジナイザ及び第2のホモジナイザ)、及び均質化光学系調整装置の一連の概略図であって、均質化光学系調整装置に関連する共焦点位置を示す図である。
【
図2B】
図1に示すレーザアブレーションに基づく分析システムのレーザ源、一対の均質化光学系(第1のホモジナイザ及び第2のホモジナイザ)、及び均質化光学系調整装置の一連の概略図であって、均質化光学系調整装置に関連する最小ビームサイズ位置を示す図である。
【
図2C】
図1に示すレーザアブレーションに基づく分析システムのレーザ源、一対の均質化光学系(第1のホモジナイザ及び第2のホモジナイザ)、及び均質化光学系調整装置の一連の概略図であって、均質化光学系調整装置に関連する最大ビームサイズ位置を示す図である。
【
図3A】
図2A-2Cに示す均質化光学系に使用できる正方形マイクロレンズアレイの概略等角図である。
【
図3B】
図2A-2Cに示す均質化光学系に使用できるフライアイ(fly’s eye)マイクロレンズコンデンサの概略等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示の態様は、本明細書の一部を形成し、例として特徴を示す添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。しかしながら、特徴は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載された組み合わせに限定されると解釈されるべきではない。 むしろ、これらの組み合わせは、この開示が充分かつ完全になり、その範囲を完全に伝えるために提供される。
【0006】
レーザアブレーションに基づく分光分析システムのレーザアブレーション部分の現在の技術の水準では、レーザビームを均質化するために、2つのフライアイ均質化(レンズセット)光学系(例えば、ペアで使用されるもの)を使用してきた。このビーム均質化方法は、193nmのエキシマベース(すなわち、希ガス、ハロゲンなどの化合物をレーザ媒質として使用する紫外(UV)レーザ)のレーザアブレーションシステムのみで使用され、且つ、高エネルギーシステム、例えば、Teledyne,Coherent,又はApplied Spectraにより製造されたレーザアブレーションシステムのみで機能することが示されている。これらの企業はそれぞれ、自社のシステムでデュアルフライアイ均質化方法を使用していることが分かる。いずれも、デバイスの1つを動かしてレーザビームのパラメーターを制御し、そして、システムの動作パラメーターを変化させる方法を実施していない。
【0007】
高エネルギーアブレーションシステムを開発する過程で、顧客が要望する少なくとも2つの主要なユースケースがあることが明らかになった。1つは、中等程度のエネルギー密度で非常に大きなアブレーションスポットを生成することであり、もう1つは、比較的小さなアブレーションスポットで非常に高いエネルギー密度又はフルエンスを生成することである。光学では、フルエンスF、例えば、レーザパルスのフルエンスFは、単位面積あたりに分配される光エネルギーである。その最も一般的な単位は、J/cm2(ジュール/平方センチメートル)である。非常に高いエネルギー密度を達成するとともに、大きなビームスポットの要求を満たすように試みたところ、一実施形態では、システムビームトレインの2つの均質化光学系のうちの第1のものを移動させることによって、サンプルにおけるエネルギー密度を選択的に増加又は減少させることが可能であることを見出した。一実施形態では、この光学調整システムは電動化することができる。このような電動化調整システムは、ソフトウェアを介して制御可能であり、少なくとも2つの(例えば、位置/エネルギー密度)モードを有することができる。
【0008】
純粋な光学的観点から、この概念は調整可能な望遠鏡に類似していると考えられる。しかしながら、質量分光分析のためのレーザアブレーションでは、エネルギー密度を選択的に増加又は減少させるための可動光学系の使用は、これまでに採用されておらず、更に、このような調整可能な光学系が一般にアブレーション、フォトエッチング、又はマイクロマシニングに使用されている証拠もない。
【0009】
(実施例)
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る、レーザアブレーションに基づく分析システム100を示す。レーザアブレーションに基づく分析システム100は、サンプル材料のターゲット(図示せず)をアブレーションするためのアブレーションシステム105と、レーザアブレーションされたサンプル(例えば、アブレーションシステム105を利用してアブレーションされたサンプル)の化学分析を可能にする分光計118(例えば、発光分析システム(OES)又は質量分析システム(MS))と、システム100全体の動作を制御するコンピューティングシステム120とを備える。アブレーションシステム105は、レーザ源110(例えば、エキシマレーザ)と、一対の均質化光学系112(第1ホモジナイザ112A及び第2ホモジナイザ112B)と、均質化光学系調整装置114と、ビーム調整光学系116(例えば、収差を減少させ、及び/又はビームを拡大するための反射面又は部分反射面及び/又はウィンドウ)と、を含む。全体的なレーザアブレーションに基づく分析システムの例は、米国特許公開第2019/0371590A1号に示され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、アブレーションシステム105に集中している。アブレーションシステム105は、レーザアブレーションに基づく分析システム100の一部として示されているが、アブレーションシステム105は、別個に使用され、分析されるサンプル材料以外の材料をアブレーションするように用いられてもよく、及び/又はレーザアブレーションに基づく分析システムに属して使用されないことを理解されたい。一実施形態では、分光計118は、レーザによってアブレーションされた材料を受け取って分析するように構成することができる。
【0010】
アブレーションシステム105のレーザビームを最初に受ける第1ホモジナイザ112Aは、第1のマイクロレンズアレイの形態であってもよく、第1ホモジナイザ112Aによって最初に屈折されたレーザビームを受ける第2ホモジナイザ112Bは、第2のマイクロレンズアレイの形態であってもよい。一実施形態では、第1のマイクロレンズアレイは、第2のマイクロレンズアレイと同じように構成される。一実施形態では、所与の第1ホモジナイザ112A及び/又は所与の第2ホモジナイザ112Bは、
図3Aに示すように、正方形マイクロレンズアレイ112(1)の形態(例えば、横方向及び縦方向に延びるマイクロレンズの二次元アレイ)であってもよい。一実施形態では、所与の第1ホモジナイザ112A及び/又は所与の第2ホモジナイザ112Bは、
図3Bに示すように、フライアイマイクロレンズアレイ112(2)の形態(例えば、一次元アレイに配置された、両面円筒形マイクロレンズのモノリシックアセンブリ)であってもよい。他のマイクロレンズアレイの構成(例えば、マイクロレンズの六角形アレイ、又はマイクロレンズの長方形アレイ)も可能であり、本開示の範囲内であることを理解されたい。
【0011】
第1ホモジナイザ112Aと第2ホモジナイザ112Bとは、
図2A-2Cに示すように、互いに対して移動可能に取り付けることができる(例えば、第1ホモジナイザ112A、又は第2ホモジナイザ112Bのうちの少なくとも1つは、他方に対して選択的に移動可能である)。第1ホモジナイザ112A又は第2ホモジナイザ112Bのうちの少なくとも一方が他方に対してそのような選択可能な移動は、均質化光学系調整装置114を使用して達成することができる。均質化光学系調整装置114は、機械的調整可能な運搬装置(例えば、ラックピニオン(rack and pinion)、スライドマウント(slide mount)など)の形をとることができる。一実施形態では、均質化光学系調整装置114は、第1ホモジナイザ112Aと第2ホモジナイザ112Bとのそれぞれ用の固定具(図示せず)と、第1ホモジナイザ112A又は第2ホモジナイザ112Bを互いに対して選択的に移動させるための調整機構(図示せず)とを含むことができる。一実施形態では、均質化光学系調整装置114は、レーザビームに対して軸方向(平行)に第1ホモジナイザ112Aを正確に移動させることができる。レーザ源110により発されたレーザビーム(符号を付していない)は、一対の均質化光学系112に導かれ、レーザビームのサイズは、任意のビーム調整光学系116を通過して最終的にアブレーションされるサンプル又は他の材料に当たる前に、一対の均質化光学系112によって調整する(後でより詳細に説明する)ことができる。
図2Aから
図2Cは、それぞれ、均質化光学系調整装置114の位置決めによって決定される、一対の均質化光学系112の共焦点位置と、最小ビームサイズ位置と、最大ビームサイズ位置とを示す。一実施形態では、均質化光学系112と任意のビーム調整光学系116とを通過すると、レーザビームは、材料/サンプルに当たって、材料/サンプルをアブレートすることができる。
【0012】
アブレーションシステム105の均質化光学調整デバイス114は、電動化又は非電動化のいずれかであってもよく、位置変化すること(すなわち、第1ホモジナイザ112Aと第2ホモジナイザ112Bとの間の相対位置を変化させることを可能にする)が可能である。例えば、第1ホモジナイザ112Aが移動すると、アパーチャ平面におけるビームサイズ(例えば、ビーム直径又はビーム断面)を変化させることができ、それにより、サンプル(アブレーション)部位においてより高いフルエンスを得ることができる。位置変化することにより、ビームサイズは、最小ビームサイズと最大ビームサイズとを含む範囲内に、所望に応じて、任意のサイズに調整することができる。共焦点ビームサイズと最小ビームサイズとの間の調整は、第1モードとして動作すると考えられ、当該第1モードにおいて、ビームサイズ(例えば、ビーム断面積)が小さくなるが、共焦点位置よりもエネルギー密度が高くなる。反対に、共焦点ビームサイズと最大ビームサイズとの間の調整は、第2モードとして動作すると考えられ、当該第2モードにおいて、ビームサイズ(例えば、ビーム断面積)が大きくなるが、エネルギー密度は共焦点位置よりも小さくなる。別の実施形態では、第2ホモジナイザ112Bは、(第1ホモジナイザ112Aの移動の代わりに、又はそれに加えて)均質化光学系調整装置114によって移動可能であり、レーザビームのフルエンスの変化を容易にすることができる。
【0013】
レーザ源110と、一対の均質化光学系112(第1ボロゲナイザ112A及び第2ボロゲナイザ112B)と、アブレーションシステム105の均質化光学系調整装置114との組み合わせによって生成されるレーザビームスポットのエネルギー密度(例えば、フルエンス)は、一般に以下の式で表すことができる。
【0014】
【0015】
ここで、
E=レーザエネルギー(例えば、mJ)
A=ビーム断面積
エネルギー密度(例えば、J/cm2)
【0016】
ビームの断面が円形である場合、エネルギー密度は以下の式でより具体的に表すことができる。
【0017】
【0018】
ここで、
E=レーザエネルギー(例えば、mJ)
D=ビーム直径(例えば、cm)
エネルギー密度(例えば、J/cm2)
【0019】
ビームの断面が長方形である場合(例えば、エキシマレーザによるビーム)、エネルギー密度は以下の式でより具体的に表すことができる。
【0020】
【0021】
ここで、
E=レーザエネルギー(例えば、mJ)
L=ビーム断面の長さ(例えば、cm)
W=ビーム断面の長さ(例えば、cm)
エネルギー密度(例えば、J/cm2)
【0022】
レーザアブレーションに基づく分析システム100は、コンピューティングシステム120によって制御することができる。コンピューティングシステム120は、非一時的キャリア媒体(例えば、フラッシュドライブ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートディスクドライブ、SDカード、光ディスクなどの記憶媒体)からコンピュータ可読プログラム命令(すなわち、制御ロジック)を実行するように構成されたプロセッサを有する。コンピューティングシステム120は、直接接続、又は1つ以上のネットワーク接続(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイヤレスエリアネットワーク(WAN又はWLAN)、1つ又は複数のハブ接続(例えば、USBハブ)等)を介して分析システムの様々なコンポーネントに接続することができる。例えば、コンピューティングシステム120は、所与のレーザアブレーションに基づく分析システム100の制御可能な要素(例えば、レーザ源110、均質化光学系調整装置114、ビーム調整光学系116、及び/又は分光計118)に(例えば、有線又は無線で)通信可能に結合することができる。プログラム命令は、プロセッサにより実行されることによって、コンピューティングシステム120は、所与のレーザアブレーションに基づく分析システム100を制御することができる。一実装では、プログラム命令は、プロセッサによる実行のためのソフトウェアプログラムの少なくとも一部を形成する。アブレーションシステム105が別個に使用される場合、コンピューティングシステム120に類似するコンピューティングシステムによって制御できることが理解されるべきである。
【0023】
プロセッサは、コンピューティングシステムに処理機能を提供し、任意の数のプロセッサ、マイクロコントローラ、又は他の処理システム、及びコンピューティングシステム120によってアクセス又は生成されたデータ及び他の情報を格納するための常駐又は外部メモリを含むことができる。プロセッサは、それが形成される材料又はそこで使用される処理機構に限定されない、したがって、半導体及び/又はトランジスタ(例えば、電子集積回路(IC))などを介して実装されてもよい。
【0024】
非一時的なキャリア媒体は、ソフトウェアプログラムなど、コンピューティングシステム120の動作に関連する様々なデータ、例えば、ソフトウェアプログラム、コードセグメント、又はプログラム命令、又はプロセッサ及びコンピューティングシステムの他の要素に、本明細書に記載の技術を実行するように命令する他のデータを保存するための格納機能を提供するデバイス可読記憶媒体の例である。キャリア媒体は、プロセッサと、スタンドアロンメモリと、又は両方の組み合わせと一体化することができる。キャリア媒体は、例えば、RAM、ROM、フラッシュ(例えば、SDカード、mini-SDカード、micro-SDカード)、磁気、光学、USBメモリデバイス等の取り外し可能な及び取り外し不可のメモリ要素を含むことができる。コンピューティングシステム120の実施形態では、キャリア媒体は、例えば、SIM(加入者識別モジュール)カード、USIM(ユニバーサル加入者識別モジュール)カード、UICC(ユニバーサル集積回路カード)等によって提供される取り外し可能なICC(集積回路カード)メモリを含むことができる。
【0025】
コンピューティングシステム120は、コンピューティングシステム120のユーザに情報を表示するための1つ又は複数のディスプレイを含むことができる。実施形態では、ディスプレイは、CRT(陰極線管)ディスプレイ、LED(発光ダイオード)ディスプレイ、OLED(有機LED)ディスプレイ、LCD(液晶ダイオード)ディスプレイ、TFT(薄膜トランジスタ)LCDディスプレイ、LEP(発光ポリマー)、又はPLED(高分子発光ダイオード)ディスプレイ等を含み、グラフィカルユーザインターフェース等のテキスト及び/又はグラフィック情報を表示するように構成することができる。ディスプレイは、暗い環境又は他の低照度環境で視認することができるように、バックライトによってバックライトを当てることができる。ディスプレイには、ユーザからの入力(例えば、データ、コマンド等)を受け取るタッチスクリーンを設けることができる。例えば、ユーザは、タッチスクリーンに触れることによって、及び/又はタッチスクリーン上でジェスチャを実行することによって、コンピューティングシステム120を操作することができる。いくつかの実施形態では、タッチスクリーンは、容量性タッチスクリーン、抵抗性タッチスクリーン、赤外線タッチスクリーン、それらの組み合わせ等であってもよい。コンピューティングシステム120は、1つ又は複数の入出力(I/O)デバイス(例えば、キーパッド、ボタン、ワイヤレス入力デバイス、サムホイール入力デバイス、トラックティック入力デバイス等)を更に含んでもよい。I/Oデバイスは、マイクロフォン、スピーカー等の1つ又は複数のオーディオI/Oデバイスを含むことができる。
【0026】
コンピューティングシステム120はまた、コンピューティングデバイスが異なるデバイス(例えば、構成要素/周辺機器)間、及び/又は、1つ又は複数のネットワークにわたってデータを送信/受信することを可能にする通信機能を表す通信モジュールを含むことができる。通信モジュールは、様々な通信コンポーネントおよび機能を表すことができ、これらに限定されないが、ブラウザ、送信機及び/又は受信機、データポート、ソフトウェアインターフェイス及びドライバー、ネットワーキングインターフェイス、データ処理コンポーネントなどを含むことができる。
【0027】
1つ又は複数のネットワークは、様々な異なる通信経路及びネットワーク接続を表し、これらは、レーザアブレーションに基づく分析システム100の構成要素間で通信するために、個別に又は組み合わせて利用することができる。したがって、1つ又は複数のネットワークは、単一のネットワーク又は複数のネットワークを使用して達成される通信経路を表すことができる。更に、1つ又は複数のネットワークは、これらに限定されないが、インターネット、イントラネット、パーソナルエリアネットワーク(PAN) 、ローカルエリアネットワーク(LAN)(例えば、イーサネット)、広域ネットワーク(WAN)、衛星ネットワーク、セルラーネットワーク、モバイルデータネットワーク、有線及び/又は無線接続などを含む、考えられる様々な異なるタイプのネットワーク及び接続を代表する。無線ネットワークの例は、これらに限定されないが、電気電子技術者協会(IEEE)の1つ又は複数の規格、例えば、802.11又は802.16(Wi-Max)規格、Wi-Fi Allianceによって公布されたWi-Fi規格、Bluetooth Special Interest Groupによって公布されたBluetooth(登録商標)規格等に従って通信用に構成されたネットワークを含む。ユニバーサルシリアルバス(USB)、イーサネット、シリアル接続等による有線通信も考えられる。
【0028】
コンピューティングシステム120は、メモリ(例えば、キャリア媒体)に格納可能であり、プロセッサによって実行可能なユーザインターフェースを含むものとして説明されている。ユーザインターフェースは、ディスプレイを介してコンピューティングシステムのユーザへの情報及びデータの表示を制御する機能を表す。一部の実装では、ディスプレイはコンピューティングシステムには統合されず、代わりに、ユニバーサルシリアルバス(USB)、イーサネット、シリアル接続などを使用して外部に接続することができる。ユーザインターフェースは、タッチスクリーン及び/又はI/Oデバイスを介して入力(例えば、サンプルアイデンティティ、所望の希釈係数、標準アイデンティティ、溶離剤アイデンティティ/場所、流体追加流量等)を提供することによって、ユーザがコンピューティングシステムの1つ又は複数のアプリケーションと相互作用できるようにする機能を提供することができる。例えば、ユーザインターフェースは、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を生成し、機能をオンライン希釈制御モジュールに公開して、ディスプレイ又は別のディスプレイと組み合わせて表示するようにアプリケーションを構成することができる。実施形態では、APIは、インライン希釈制御モジュールを構成する機能を更に公開して、タッチスクリーン及び/又はI/Oデバイスを介して入力を提供することにより、ユーザがアプリケーションと相互作用して分析のための所望の希釈ファクターを提供することを可能にすることができる。
【0029】
実施において、ユーザインターフェースはブラウザを含むことができる。ブラウザは、コンピューティングデバイスが、ワールドワイドウェブ内のウェブページ、プライベートネットワーク内のウェブサーバによって提供されるウェブページなどのコンテンツを表示し、相互作用できるようにすることができる。ブラウザは様々な方法で構成することができる。ブラウザは、十分なメモリとプロセッサリソース(スマートフォン、携帯情報端末(PDA)など)を有するフールリソースを備えたデバイスでの使用に適したウエブブラウザであってもよい。
【0030】
一般に、本明細書で説明した機能のいずれも、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア(例えば、固定論理回路)、手動処理、又はこれらの実装の組み合わせを利用して実施することができる。本明細書で使用される「モジュール」及び「機能」といった用語は、一般に、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせを表す。レーザアブレーションに基づく分析システム100内の構成要素間の通信は、例えば、有線、無線、又はそれらの何らかの組み合わせとすることができる。プログラムコードは、1つ又は複数のデバイス可読記憶媒体に格納することができ、その一例は、コンピューティングシステムに関連する非一時的キャリア媒体である。
【0031】
本開示の主題は、構造的特徴及び/又は方法論的動作に特有な用語で説明されたが、添付の特許請求の範囲において定義される主題は、上記の特定の特徴又は動作に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、上記の特定の特徴及び動作は、請求項を実施する例示的な形態として開示されている。