(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】水晶体嚢の再建法及び緊張用装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20241210BHJP
A61F 2/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F2/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023084120
(22)【出願日】2023-05-22
(62)【分割の表示】P 2019547082の分割
【原出願日】2018-03-01
【審査請求日】2023-06-20
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519308237
【氏名又は名称】アイ-ピーシーアール ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パリカリス,イオアニス
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン,オヌルカン
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/195143(WO,A1)
【文献】特開2015-131104(JP,A)
【文献】特表2016-518927(JP,A)
【文献】特表2010-502358(JP,A)
【文献】特表2015-522308(JP,A)
【文献】国際公開第2016/110489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61F 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白内障手術後に天然の水晶体嚢のための緊張を柔軟に回復するためのシステムであって、前記システムは、
リング形状の剛性の構成要素であって、
0.1mmから0.5mmの厚みを有する遠位端部であって、前記天然の水晶体嚢の前面と支持関係に配置されるようにサイズ設定されて配置される、遠位端部、
0.2mmから1mmの厚みを有する近位端部であって、前記天然の水晶体嚢の後面と支持関係に配置されるようにサイズ設定されて構成された、嚢に係合する表面を含み、眼のウィーガー靭帯に対向して配置されるように構成された、近位端部、
前記リング形状の剛性の構成要素の遠位端部の頂点から形成されたレッジであって、嚢に係合する上面、及び、前記嚢に係合する上面上に配置された複数のマーカーを含む、レッジ、並びに
前記近位端部から前記遠位端部に延びる周壁
を含む、リング形状の剛性の構成要素と、
前記リング形状の剛性の構成要素と実質的に同心性であり、前記リング形状の剛性の構成要素の前記遠位端部の厚み又は前記リング形状の剛性の構成要素の前記近位端部の厚みより小さい0.05mmから0.75mmの厚みを有し、前記天然の水晶体嚢の内部表面に対向して柔軟に嵌るようにサイズ設定されて構成された、嚢に係合する周壁を画定する、リング形状の柔軟な構成要素であって、前記リング形状の柔軟な構成要素は、
前記リング形状の剛性の構成要素の近位端部の外側表面上で形成された近位端部、
前記リング形状の剛性の構成要素から離れて前方に延びる、自由端である遠位端部、及び
柔軟性を改善するように構成された前記リング形状の柔軟な構成要素の周囲のまわりに配置された複数の間隙、
を含む、リング形状の柔軟な構成要素と、
眼内レンズの触覚を受け取るように構成される、前記リング形状の剛性の構成要素の内部表面上に形成された溝と、及び
弾性の環状体形状の本体であり、クリップのような構造で環状体形状の本体の外周のまわりに形成された開口部を外部に備える、弾性の環状体形状の本体と、
を含み、
ここで、前記リング形状の柔軟な構成要素は、前記リング形状の剛性の構成要素の周壁の外周の周りに配置され、
前記リング形状の柔軟な構成要素は、毛様体筋が弛緩され、小帯が緊張する場合に、前記リング形状の剛性の構成要素から離れて屈曲するように構成され、並びに毛様体筋が収縮され、小帯が弛緩される場合に、前記リング形状の剛性の構成要素の方に屈曲するように構成され、
前記リング形状の剛性の構成要素の前記遠位端部の最大の厚みは、前記リング形状の剛性の構成要素の前記近位端部の最大の厚みより小さい、
システム。
【請求項2】
前記複数のマーカーは、トーリックレンズの位置合わせのガイドである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記間隙の各々は、0.1mmから5mmの幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記レッジは、0.1mmから1mmの幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記リング形状の剛性の構成要素は、前記天然の水晶体嚢の前面に実質的に垂直である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記リング形状の剛性の構成要素及び前記リング形状の柔軟な構成要素は、前記天然の水晶体嚢内に配置された際、0度から90度の角度を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記弾性の環状体形状の本体は、その下面に依存するトングを備えた上部、及び上面の周りに配置された溝を備えた下部であって、その溝内にトングを収容するように構成された下部、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記弾性の環状体形状の本体は、約5から8mmの内径、及び約6mmから約10mmの外径を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
白内障手術後の眼の天然の水晶体嚢のための緊張装置であって、前記緊張装置は、
弾性のリング形状の本体であって、
弾性のリング形状の本体の外周に形成された開口部によってクリップのような構造で分けられた上部本体部分並びに下部本体部分を備えた上部構成要素、
及び、下部本体部分の下面から
下部本体部分の上端の形状に応じて形成された下部構成要素を含む、弾性のリング形状の本体と、
下部構成要素と実質的に同心性であり、かつ前記下部構成要素の下端から外側に延びる柔軟なリング形状の本体とを含む、緊張装置。
【請求項10】
前記下部構成要素は
、眼内レンズ上の触覚を受け取るように構成された内部表面のまわりに配置された溝、を更に含む、請求項
9に記載の緊張装置。
【請求項11】
前記上部本体部分は、その下面に依存するトング、及び上面の周りに配置された溝を備え、その溝内にトングを収容するように構成される下部、を含む、請求項
9に記載の装置。
【請求項12】
前記柔軟なリング形状の本体は連続的な表面を含む、請求項
9に記載の緊張装置。
【請求項13】
前記柔軟なリング形状の本体は、円周方向に配置された複数の間隙を含む、請求項
9に記載の緊張装置。
【請求項14】
前記複数の間隙の各々は約0.1mmから約5mmの幅を有する、請求項
13に記載の緊張装置。
【請求項15】
前記弾性のリング形状の本体は、約5から8mmの内径、及び約6mmから約10mmの外径を有する、請求項
9に記載の緊張装置。
【請求項16】
前記弾性のリング形状の本体の下部構成要素は、前記上端で約0.2mmから約1mmの厚みを有し、前記下端で約0.1mmから約0.5mmの厚みを有する、請求項
9に記載の緊張装置。
【請求項17】
前記柔軟なリング形状の本体は、約0.05mmから約0.75mmの厚みを有する、請求項
9に記載の緊張装置。
【請求項18】
前記柔軟なリング形状の本体は、シリコン、アクリル、ヒドロゲル、あるいはその組み合わせを含む、請求項
9に記載の緊張装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本国際出願は、2017年3月1日に出願された出願中の米国非仮特許出願第15/446,121号の35U.S.C.§120の下、優先権の利益を主張し、その全体は、引用によって本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、眼における動作のための眼科用及び外科的な装置の分野に関する。より具体的には、本発明は、ヒト水晶体嚢の機能的並びに解剖学的再建法、及び水晶体の交換並びに位置合わせを必要とするいかなる手術用の眼内レンズの正確な位置合わせのための、機器に関する。
【0003】
<関連技術の詳細>
眼内レンズは、交換されるように意図された、天然の水晶体と同じ視覚の能力を実質的に有する、プラスチックレンズである。典型的には、白内障手術中に、眼科医は白内障に害された天然の水晶体を取り除き、それを人工の眼内レンズに取り替える。概して屈折レンズ、回折レンズ及び屈折の回折レンズを含む3つのタイプの眼内レンズがある。屈折レンズは、屈折により光軸上の焦点に向けて光を集中させ、一方で、回折レンズは回折次数ごとに光軸上の1つの焦点を形成する回折パターンを生み出す。屈折回折レンズは、両方のタイプの特徴を組み合わせる。しかしながら、これらの単なる屈折遠近両用あるいは多焦点レンズはいくつかの顕著な欠点を有する。第1に、それらの有効性は、サイズ及び瞳孔の中心化に極度に依存する。第2に、それらはいくつかの焦点を有するので、結果として生じる差異が減少される。これは、減少した光度と共に、特に遠方視力におけるハローの形成を誘発する場合がある(例えば、(特許文献1)参照)。
【0004】
さらに、後嚢混濁(PCO、あるいは白内障の後)は眼内レンズの移植を伴う白内障手術の後の共通の問題を残す。後嚢混濁は、概して、後部の水晶体嚢が手術中に完全に放置される場合の、嚢内白内障摘出術(ICCE)から嚢外白内障摘出術(ECCE)までの遷移に起因する。後嚢混濁を有する患者は、弱った視力、害された対比感度及びグレア不能に苦しむ。臨床的に、後嚢混濁の構成要素は、再生構成要素、及び線維性構成要素として特定され、再生後嚢混濁構成要素は線維性構成要素より、遥かに一般的である。
【0005】
再生後嚢混濁は、後嚢と眼内レンズとの間の空間へ遊走し、かつ増殖し、レンズ材料及びエルシュニッヒ真珠の層を形成する、いわゆるe-細胞である、水晶体赤道領域からの残余の水晶体上皮細胞(LEC)に起因する。これに対して、線維性後嚢混濁は、筋線維芽細胞への変化し、並びに後嚢に接近する、前嚢からのLECによって引き起こされ、水晶体嚢を漂白すること、並びに水晶体嚢にしわが寄ることを引き起こす。これは眼内レンズの分散をもたらし、並びに周辺部網膜の可視化を妨害する場合がある。(非特許文献1)は、後嚢混濁の両方の構成要素はそれらが視軸のまわりの中央部に影響する場合、視覚機能の減少をもたらすことを開示する。YAGレーザー水晶体嚢切開において利用されるYAGまたはNdレーザーは、後嚢混濁を治療するために最も一般に使用される。しかしながら、(非特許文献2)において開示されるように、レーザー水晶体嚢切開は、網膜剥離または眼内圧上昇などの他の合併症をもたらし得る。
【0006】
(特許文献2)は、水晶体摘出の後に実質的に円形の水晶体嚢の形状を維持するための“阻害する装置”、及び、後嚢中への変形した上皮細胞の侵入等の阻害の問題、更に付け加えて、その内周の中の溝の形成により好適な状態で眼内レンズが保持される阻害する装置、の必要性を記載する。彼は、輪の外側部分の実際の直径を参照せずに、水晶体嚢が縮むことを阻害するのに効果的な装置の安定した円形の形状を記載する。
【0007】
(特許文献3)は、水晶体嚢が視覚に有害な手術後の変化を回避するために、ある構造において保持されても良いように、天然の水晶体嚢に付けられた装置を記載する。単一あるいは二重光学システムが提供され、これは適応している場合がある。レンズの置換における、視覚の変化、及び乱視の誘発を結果としてもたらす空の水晶体嚢の“術後の短縮”の役割が強調される。したがって、水晶体嚢の形状を維持し、並びに装置のために水晶体嚢切開開口部の直径を維持する装置または機器及び手順を提供する必要性がある。
【0008】
(特許文献4)は、“角膜の表面から水晶体嚢の後面までの距離、及び角膜または水晶体嚢の後面から網膜までの距離等の構造の空間的関係”は例えば超音波、部分干渉性インターフェロメトリ、光コヒーレンストモグラフィーまたはレーザー測定技術を使用することによって、あるいはいかなる他の技術で既知の手段により、手術前に測定されることを記載し、したがって手術前の解剖学的関係を築く。眼内レンズ移植等の外科手術を遂行し、並びに、間隔をあける手段がそれらのあらかじめ測定された空間的関係または所定の新しい間隔を回復するために提供される。間隔をあける手段は、例えばスペーサー、リング、膨張可能な構造、厚いまたは複数のレンズを含む場合がある。これらの手段は患者の前嚢及び後嚢の正常な深さを維持することを助け、そのような動きの結果生じるかもしれない硝子体剥離及び網膜剥離の前進を予防する。
【0009】
(非特許文献3)は“後部水晶体を安定させる形状である、通過小帯クレードル(the crossing zonules cradle)”について述べる。モデルにおいて、前部硝子体小帯は ウィーガー靭帯に挿入され、並びにPIZ-LE小帯は後部の挿入地帯に水晶体赤道をつなぎ留める。通過小帯(the crossing zonules)及びウィーガー靭帯は水晶体の配置を維持し、一方で前部及び後部の小帯は相互の適応及び不適応を提供する。後嚢の中央周辺地帯を表わすウィーガー靭帯は、適応の間に水晶体の位置を安定させるための最も重要な領域である。
【0010】
(特許文献5)は、リング形状固定化プラットフォームを有する眼内レンズ装置を記載し、本発明の眼内レンズが付けられる“構造”を生み出すことができ、かつ本発明の発見が、眼内レンズの挿入、後の除去、並びに交換のための外科的方法を、眼に対する外傷あるいは視覚の喪失のリスクを減らして可能にするという結論を下す。
【0011】
(非特許文献4)に基づくと、高価な眼内レンズの市場は、全世界で9.3%、及び世界的な眼内レンズ市場の総収入の34%に達するだろう。多焦点及びトーリック眼内レンズ(Toric IOLs)は約90%の市場占有率での高価な眼内レンズの市場を占めるだろう。トーリック及び多焦点は、水晶体嚢の内部での正確な中心化及び位置決めに非常に敏感である。
【0012】
(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)及び(特許文献13)を含むいくつかの特許及び公報は、異なる目的ための様々な水晶体嚢内のリングを開示する。しかしながら、これらの研究は、1つの標準サイズ、または適応のための調節可能性のない様々なサイズのどちらかを有するリングを記載する。これらの装置は、概してリングとリングに適した眼組織とを含む。装置のうちのいくつかは、毛様体の圧力下で中央の視覚部分の形状を変化し、適応機構を模倣する、変形可能なリングを含む。
【0013】
既に市場にあり、かつ近い将来に急速に改善することが期待される、多焦点及びトーリック眼内レンズに関する小帯の牽引の複雑さのために、この分野での先の研究のどれも、適応、及び水晶体嚢の形状の連続的な変化の保持の現代の理論を考慮しない。したがって、水晶体嚢を再建するための装置及び方法のための技術において認識される必要性がある。特に、先行技術は、眼内レンズの正確な配置及び位置合わせを手術後に可能にする装置が不足している。本発明はこの長年のニーズと先行技術分野での要望を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】US8,636,796
【文献】European Patent No.507292
【文献】US2006/004733
【文献】WO2007044604
【文献】US2010/0204790
【文献】US9,339,375
【文献】US4710194
【文献】US2005/0085,907
【文献】US2005/0209692
【文献】US2010/0204790
【文献】US2010/0228344
【文献】US2011/0082543
【文献】European Application No.037,390
【非特許文献】
【0015】
【文献】Findl et al.(J Cataract Refract Surg 2003年; 29(1):106-11)
【文献】Georgalas et al.(Ther Clin Risk Manag. 2009年; 5:133-137)
【文献】Goldberg(Clin Ophthalmol. 2011年; 5:1-7)
【文献】Market Scope Report(2015 Comprehensive Report on the Global Intraocular Lens Market,2015年6月)
【発明の概要】
【0016】
本発明は、白内障手術の後に眼の天然の水晶体嚢を再建するための装置を対象とする。装置はリング形状の剛性の構成要素を含む。剛性の構成要素は、水晶体嚢の前面に接する遠位端部、及び水晶体嚢の後面上かつ眼におけるウィーガー靭帯に対抗して配置された近位端部を含む。剛性の構成要素で実質的に同心性であるリング形状の柔軟な構成要素は、水晶体嚢の内部表面に対抗して柔軟に嵌められる。リング形状の柔軟な構成要素は、剛性の構成要素の近位端部の外部表面上で形成された近位端部、及び剛性の構成要素から離れて延びる遠位端部を含む。溝は、眼内レンズの触覚を受け取るように構成された剛性の構成要素の内部表面に配置される。本発明は、剛性の構成要素の遠位端部の頂点から形成されたレッジをさらに含む、関連装置を対象とする。
【0017】
本発明は、また白内障手術後の、天然の水晶体嚢における緊張を柔軟に回復するための装置を対象とする。装置は、水晶体嚢の前面と支持関係に配置された遠位端部を含むリング形状の剛性の構成要素、水晶体嚢の後面と支持関係に配置され、かつウィーガー靭帯における眼に対抗して配置された近位端部、及び、剛性の構成要素の遠位端部の頂点から形成されたレッジを含む。剛性の構成要素で実質的に同心性であるリング形の柔軟な構成要素は、水晶体嚢の内部表面に対抗して柔軟に嵌められる。柔軟な構成要素は、毛様体筋が弛緩され、及び小帯が緊張している場合に剛性の構成要素から離れて屈曲するように、かつ毛様体筋が収縮され、小帯が弛緩される場合に、剛性の構成要素に向かって屈曲するように、構成される。リング形状の柔軟な構成要素は、剛性の構成要素の近位端部の外部表面上で形成された近位端部、及び剛性の構成要素から離れて延びる遠位端部を含む。溝は、眼内レンズの触覚を受け取るように構成された剛性の構成要素の内部表面に配置される。本発明は、トーリックレンズ位置合わせをガイドするように構成されたレッジの上面に配置された多くのマーカー、をさらに含む関係する装置を対象とする。本発明は、その柔軟性を改善するように構成された前記リング形状の柔軟な構成要素の周囲のまわりに配置された多くの間隙をさらに含む他の関係する装置を対象とする。
【0018】
本発明は、また白内障手術後の、天然の水晶体嚢における緊張を柔軟に回復するためのシステムを更に対象とする。システムは、本明細書に記載されるような、天然の水晶体嚢における緊張を柔軟に回復するための装置、及び、弾性の環状体形状の本体であり、クリップのような構造で環状体形状の本体の内周のまわりに形成された開口部を内部に備える、弾性の環状体形状の本体を含む。
【0019】
本発明は、白内障手術の後に眼の天然の水晶体嚢を緊張するための装置を更にまた対象とする。装置は、弾性のリングのような本体であって、リング形状の本体の外周のまわりへ開口部によって形成された、クリップのような構造で、上部及び下部を備えた、弾性のリング形状の本体を含む。
【0020】
本発明は、白内障手術の後に眼の天然の水晶体嚢を緊張するための装置を更にまた対象とする。緊張装置は、弾性のリング形状の本体、及び、実質的に同心性であり、かつ下部構成要素の下端から外側に延びる柔軟なリング形状の本体を含む。弾性のリング形状の本体は、内周のまわりで内部に形成された開口部によってクリップのような構造で分けられた上部本体部分並びに下部本体部分を備えた上部構成要素と、並びに、下部本体部分の下面から上端で依存するように形成された下部構成要素とを含む。本発明は、眼内レンズの触覚を受け取るように構成された弾性のリング形状の本体の下部構成要素が、内側表面のまわりに配置された溝を含む、関連した緊張装置を対象とする。
【0021】
本発明の他の及び更なる態様、特徴、及び利点は、開示のために与えられる、本発明の現在好ましい実施形態に関する以下の記載から、明白となる。これらの実施形態は開示の目的のために与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上に詳述された特徴、利点及び目的の他に、より明らかになる他のものが、達成され、また詳細に、より具体的な記載において理解され得、及び上に簡潔に要約された本発明の特定の実施形態が、添付の図面で例証される。これらの図は明細書の一部を形成する。しかしながら、添付の図が本発明の好ましい実施形態を例証しており、したがって、その範囲に限定するものと考慮するものではないことに留意する。
【
図1】毛様体が収縮した(左側)、及び収縮していない(右側)、水晶体嚢の構造及び ウィーガー靭帯の構造を描写する。
【
図2】自由な形状(右側)、並びに眼の水晶体嚢の側面に対して嵌められた装置の柔軟な構成要素を示す、装置の断面図である。
【
図3】装置の近端部が水晶体嚢の中、かつウィーガー靱帯に対抗して配置されることを示す装置の断面図である。
【
図4】水晶体嚢の前面の直径がその後面より大きいことを示す装置の断面図である。
【
図5】剛性の構成要素の内部表面に配置された溝の中にその触覚を挿入することにより、装置に眼内レンズが配置されることを示す装置の断面図である。
【
図6】非対称の眼内レンズが装置に置かれることを示す装置の断面図である。
【
図7】剛性の構成要素及び柔軟な構成要素を示す装置側からの断面図である。
【
図8】トーリック眼内レンズ位置合わせのための指標となる複数のマーカーが剛性の構成要素の上表面上に配置されることを示す装置の平面図である。
【
図9】その柔軟性を改善するために柔軟な構成要素の周囲に沿って配置された多くの間隙を示す装置の平面図である。
【
図10】弾性のリングのような緊張装置の1つの実施形態の断面図である。
【
図11】水晶体嚢切開の縁を固定する際の、弾性のリングのような緊張装置の位置決めを断面でさらに例示する、
図2の断面図である。
【
図12】水晶体嚢切開の縁と水晶体嚢とに関する弾性のリング形状の本体及び柔軟なリング形状の本体の配置を示す、緊張装置の他の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用されるように、次の用語と語句は以下で示す意味を有するものとする。別段の定めのない限り、すべての技術用語と科学用語は当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語、「1つの」「あるいは1つの」1つ以上を意味することがある。本明細書で使用されるように、請求項において、「含む(comprising)」という単語と共に使用されるとき、単語「1つ((a)または(an))」は1以上を意味してもよい。本明細書で使用されるように、「別の(another)」または「他の(other)」は、少なくとも第2のまたはそれ以上の同じまたは異なる請求項の要素またはその構成要素を意味してもよい。用語「含む(comprise)」及び「含むこと(comprising)」は包括的な開かれた意味で使用され、追加の元素が含まれ得ることを意味している。
【0025】
本明細書で使用されるように、本開示は代替物と「及び/または」のみを指す定義を立証してはいるが、請求項での用語「または」は、代替物のみを指すか、あるいは代替物が相互に排他的であることを指すと明示されていない限り、「及び/または」を指す。
【0026】
本明細書で使用されているように、用語「約(about)」は数値を指しており、明示されているかどうかにかかわらず、例えば、全ての数字、分数、及び割合を含んでいる。用語「約」は一般に、列挙された値と同等である(例えば、同じ機能または結果を有する)と当業者がみなす数値範囲(例えば、列挙された値の+/-5~10%)を指す。幾つかの例においては、用語「約」は、最も近い有効数字まで四捨五入される数値を含んでもよい。
【0027】
本明細書に使用されるように、用語「遠位端部」は水晶体嚢の後面から離れている端部を指す。用語「近位端部」は、水晶体嚢の後面の方にある端部を指す。
【0028】
本明細書に使用されるように、用語「実質的にリングのような」、「リングのような」、「環状体形状の」は交換可能であり、例えばドーナツに類似する、あるいはドーナツに似ている、本明細書に記載された装置の三次元の形状を指す。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、白内障手術後に眼の天然の水晶体嚢を再建するための装置が提供され、該装置は、リング形状の剛性の構成要素であって:水晶体嚢の前面に接する遠位端部;及び、眼の中のウィーガー靭帯に対抗して配置された近位端部を含む、リング形状の剛性の構成要素と;剛性の構成要素と実質的に同心性でありかつ、水晶体嚢の内部表面に対抗して柔軟に嵌められたリング形状の柔軟な構成要素であって:剛性の構成要素の近位端部の外側表面上で形成された近位端部;及び剛性の構成要素から離れて延びる遠位端部を含む、リング形状の柔軟な構成要素と;眼内レンズ上で触覚を受け取るように構成される、剛性の構成要素の内部表面上に配置される、溝とを含む。
【0030】
この実施形態に付け加えると、装置は更に、剛性の構成要素の遠位端部の上部から形成されたレッジを含んでも良い。この更なる実施形態において、レッジは、その上面に配置された複数のマーカーを含んでも良く、トーリックレンズの位置合わせをガイドするように構成される。また、この更なる実施形態において、レッジは約0.1mmから約1mmの幅を有しても良い。
【0031】
両方の実施形態において、剛性の構成要素の近位端部は約0.2mmから約1mmの厚みを有しても良い。さらに、剛性の構成要素の遠位端部は約0.1mmから約0.5mmの厚みを有しても良い。さらに、剛性の構成要素は、シリコン、アクリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ヒドロゲルあるいはその組み合わせから作られても良く、あるいは含んでも良いが、制限されない。
【0032】
また、両方の実施形態において、リング形状の剛性の構成要素は、天然の水晶体嚢の前面に実質的に垂直であっても良い。両方の実施形態において、リング形状の柔軟な構成要素は、毛様体筋が弛緩され、小帯が緊張していて、かつ剛性の構成要素の方に屈曲する場合、毛様体筋が収縮され、小帯が弛緩される場合、剛性の構成要素から遠ざかって屈曲するように構成されても良い。
【0033】
両方の実施形態に付け加えると、リング形状の柔軟な構成要素は、その周囲のまわりに配置された複数の間隙を含んでも良い。さらに、間隙の各々は約0.1mmから約5mmの幅を有しても良い。さらに、リング形状の柔軟な構成要素は、約0.05mmから約0.75mmの厚みを有しても良い。また更に、リング形状の構成要素は、シリコン、アクリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ヒドロゲルあるいはその組み合わせから作られても良く、あるいは含んでも良いが、制限されない。更にまだこの実施形態において、リング形状の剛性の構成要素及びリング形状の柔軟な構成要素は、天然の水晶体嚢内に嵌められた際、約2度から約90度までの角度を形成する。
【0034】
本発明の1つの他の実施形態において、白内障手術後に天然の水晶体嚢のための緊張を柔軟に回復するための装置が提供され、該装置は:リング形状の剛性の構成要素であって:水晶体嚢の前面と支持関係に配置される遠位端部、及び;水晶体嚢の後面と支持関係に配置され、眼のウィーガー靭帯に対抗して配置される近位端部;及び、剛性の構成要素の遠位端部の頂点から形成されたレッジを含む、リング形状の剛性の構成要素と;剛性の構成要素と実質的に同心性でありかつ、水晶体嚢の内部表面に対抗して柔軟に嵌められたリング形状の柔軟な構成要素であって、毛様体筋が弛緩され、小帯が緊張する場合、剛性の構成要素の方に屈曲するように構成され、並びに毛様体筋が収縮され、小帯が弛緩される場合、剛性の構成要素から遠ざかって屈曲するように構成され、該柔軟な構成要素は:剛性の構成要素の近位端部の外側表面上で形成された近位端部;及び剛性の構成要素から離れて延びる遠位端部を含む、リング形状の柔軟な構成要素を含む、リング形状の柔軟な構成要素と;眼内レンズ上で触覚を受け取るように構成される、剛性の構成要素の内部表面上に配置される、溝とを含む。
【0035】
この実施形態に付け加えると、装置は、トーリックレンズの位置合わせをガイドするように構成されたレッジの上面に配置された、複数のマーカーを含んでも良い。他の更なる実施形態において、装置は、その柔軟性を改善するように構成されたリング形状の柔軟な構成要素の周囲のまわりに配置された、複数の間隙を含んでも良い。この更なる実施形態において、間隙の各々は約0.1mmから約5mmの幅を有しても良い。
【0036】
全ての実施形態において、レッジは約0.1mmから約1mmの幅を有しても良い。さらに、剛性の構成要素の近位端部は約0.2mmから約1mmの厚みを有しても良く、及び、剛性の構成要素の遠位端部は約0.1mmから約0.5mmの厚みを有しても良い。さらにリング形状の剛性の構成要素は、シリコン、アクリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ヒドロゲルあるいはその組み合わせから作られても良く、あるいは含んでも良いが、制限されない。更に、リング形状の剛性の構成要素は、天然の水晶体嚢の前面に実質的に垂直であっても良い。更にまだ、リング形状の剛性の構成要素及びリング形状の柔軟な構成要素は、天然の水晶体嚢内に配置される際、約2度から約90度までの角度を形成する。
【0037】
更に本発明の他の実施形態において、白内障手術後に天然の水晶体嚢のための緊張を柔軟に回復するためのシステムが提供され、該システムは:上述されるような緊張を再建するための装置を含み;及び、弾性の環状体形状の本体であり、クリップのような構造で環状体形状の本体の内周のまわりに形成された開口部を内部に備える、弾性の環状体形状の本体を含む。
【0038】
この実施形態において、弾性の環状体形状の本体は、その下面に依存するトングを備えた上部、及びその溝内のトングを収容するように構成された上面の周りに配置された溝を備えた下部、を含んでも良い。さらに、この実施形態において、弾性の環状体形状の本体は、約5から8mmの内径、及び約6mmから約10mmの外径を有しても良い。さらに弾性のリングのような本体は、若いヒトの眼の中の水晶体嚢の前辺縁部の弾性の性質に実質的に類似する弾性の性質を有する材料を含んでも良い。
【0039】
また本発明の他の実施形態において、白内障手術後に眼の水晶体嚢を緊張するための装置が提供され、装置は、弾性のリングのような本体であって、リング形状の本体の外周のまわりへ開口部によって形成された、クリップのような構造で、上部及び下部を備えた、弾性のリング形状の本体を含む。
【0040】
この実施形態において、上部は、その下面に依存するトングを備えた上部、及びその溝内のトングを収容するように構成された上面の周りに配置された溝を備えた下部、を含んでも良い。また、この更なる実施形態において、弾性のリングのような本体は、約5から8mmの内径、及び約6mmから約10mmの外径を有しても良い。さらに、弾性のリングのような本体は、若いヒトの眼の中の水晶体嚢の前辺縁部の弾性の性質に実質的に類似する弾性の性質、を有する材料を含んでも良い。
【0041】
また本発明の他の実施形態において、白内障手術後の眼の天然の水晶体嚢のための緊張装置が提供され、該装置は、弾性のリング形状の本体であって、内周のまわりで内部に形成された開口部によってクリップのような構造で分けられた上部本体部分並びに下部本体部分を備えた上部構成要素、並びに、下部本体部分の下面から上端で依存するように形成された下部構成要素を含む、弾性リング形状の本体と;実質的に同心性であり、かつ下部構成要素の下端から外側に延びる柔軟なリング形状の本体とを含む。この実施形態に付け加えると、下部構成要素は、その眼内レンズ上の触覚を受け取るように構成された内部表面のまわりに配置された溝を含んでも良い。
【0042】
両方の実施形態において、上部本体は、その下面に依存するトングを備えた上部、及びその溝内のトングを収容するように構成された上面の周りに配置された溝を備えた下部、を含んでも良い。また、この更なる実施形態において、弾性のリング形状の本体は、約5から8mmの内径、及び約6mmから約10mmの外径を有しても良い。さらに、弾性のリング形状の下部構成要素は、近位端部で約0.2mmから約1mmの厚みを有しても良く、遠位端部で約0.1mmから約0.5mmの厚みを有する。更に、柔軟なリング形状の本体は、約0.05mmから約0.75mmまでの厚みを有しても良い。
【0043】
両方の実施形態において、弾性のリング形状の本体は、若いヒトの眼の中の水晶体嚢の前辺縁部の弾性の性質に実質的に類似する弾性の性質、を有する材料を含んでも良い。さらに、柔軟なリング形状の本体は、シリコン、アクリル、ヒドロゲル、あるいはその組み合わせを含んでも良い。
【0044】
両方の実施形態の1つの態様において、柔軟なリング形状の本体は連続的な表面を含んでもよい。他の態様において、柔軟なリング形状の本体は、円周方向に配置された複数の間隙を含んでも良い。この態様において、複数の間隙の各々は約0.1mmから約5mmの幅を有する。
【0045】
本明細書で提供されるのは、白内障手術後の水晶体嚢(1)の再建のための装置である。さらに提供されるのは、単独あるいは水晶体嚢再建の装置と共に使用される場合がある、白内障手術後に水晶体嚢を緊張するための装置である。下記に述べられるように、発明は多くの利点及び用途を備えている。しかしながら、そのような利点及び用途はそのような記載によって限定的ではない。本発明の実施形態は、図に関して一層よく例証される。しかし、そのような引用文は、任意の方法で本発明を制限するのが目的ではない。詳細に本明細書に記載された実施形態と変化は、それについて添付されたクレーム及び同等物によって解釈されることになっている。
【0046】
図1に示されるように、毛様体筋が視覚焦点を調節するために弛緩するか収縮する場合、眼の水晶体は平らになった(2a)または凸面の(2b)の間で切り替わる。より明確には、眼が遠距離の物体を見ている場合、毛様体筋は弛緩した(3a)であり、かつ小帯(4a)は緊張し、結果としてレンズを平らにする。毛様体筋が短縮した(3b)であり、かつ小帯が弛緩した(4b)である場合、目の水晶体は凸面形状(2b)であり、更なる屈折力を与える。したがって、同心性であるリング形状装置(5)は眼の柔構造の柔軟性を適合するために使用される。
【0047】
図2に示されるように、装置はV字形状の断面を有する。装置は剛性の構成要素(9)、構成要素の外側または後部に配置された柔軟性があるか変形可能な構成要素(7)(緊張なしの)または(7’)(緊張を伴う)を含む。柔軟な構成要素の近位端部は、剛性の構成要素の近位端部の外面で形成される。天然の水晶体嚢の中に置かれる場合、剛性の構成要素(9)は水晶体嚢を支持し、一方で柔軟な構成要素(7’)は水晶体嚢の側面に対抗して嵌り、接触し、水晶体嚢の収縮または弛緩で収縮するあるいは弛緩するように構成される。一般に、リング形状の剛性の構成要素は、天然の水晶体嚢の前面に実質的に垂直であっても良い。
【0048】
図3は、装置が天然の水晶体嚢に置かれる場合、剛性の構成要素の近位端部がウィーガー靭帯(8)に対抗して配置されることを図示する。柔軟な構成要素の外側表面は水晶体嚢の内部表面に直接接触する。柔軟な構成要素は水晶体嚢からの定圧下にある。それは、後嚢に遊走するいかなる繊維芽細胞及び水晶体上皮細胞も遮断する。好ましくは、水晶体嚢が収縮し弛緩する場合、剛性の構成要素と柔軟な構成要素との間の角度は約0度から約90度である。剛性の構成要素及び柔軟な構成要素は、シリコン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ヒドロゲルまたはその組み合わせ等のアクリルなどの、生物学的適合の材料で作られても良いが、制限されない。剛性で柔軟な構成要素の厚さは、柔軟性と固縮のパラメータを定義する。
【0049】
図4に示されるように、水晶体嚢の前部に接している剛性の構成要素の上部分(10)は、水晶体嚢の後部に接しているその底部分(6)より薄い。レッジ(18)は、剛性の構成要素の上部分の遠位端部で形成される。剛性の構成要素の上部分(10)の直径は、その底部分(6)より大きい、あるいは実質的に同様であっても良い。剛性の構成要素のこの円錐形のような形状は、外科医ためにより良好な視野を生み出し、眼の手術中に溝(11)を見ることを可能にし。彼らが水晶体(13)を置き、かつ整列させるために容易な到達を提供する。好ましくは、剛性の構成要素は0.1mmから1mmの厚みを有しても良い。柔軟な構成要素は0.05mmから0.75mmの厚みを有しても良い。
【0050】
図5は、リング形状の溝(11)が剛性の構成要素の内部表面に配置され、かつ眼内レンズの触覚(12)に嵌るあるいはそれを受け取るように、及びそれを固定するように構成されることを図示する。溝(11)は、水晶体嚢の中心に適切に整列した水晶体を保持する。一度水晶体(13)の触覚(12)が溝(11)に置かれれば、溝(11)は移動可能に触覚(12)を固定し、水晶体(13)が傾くあるいはねじれるのを予防する。
【0051】
図6は、非対称の触覚(14)を備えた眼内レンズがリング形状の溝(11)の中に置かれることを示す。これは、視軸に関して瞳孔が偏心性であり、この偏心性が0.2mm以上である場合、より高いκ角で患者の眼の中に高価な眼内レンズに取り付けるために使用される。
【0052】
図7及び
図8は、装置の示される側面図と上からの図のそれぞれで、対応する部分を図示する。特に、
図8は、剛性の構成要素上で形成されたレッジの上面に配置された多くのマーカー(16)を示す。
【0053】
図9において、多くの間隙が、(17a)と(17b)によって表わされるように、その柔軟性を改善するために柔軟な構成要素の周囲に沿って配置される。
(7a)と(7b)によって表わされるように、これらの間隙は柔軟な構成要素を多くの不連続の区分に分割する。
【0054】
図10は、緊張装置(20)の弾性のリングのような本体を図示する。装置は、クリップのような構造を備えた弾性の実質上リングのような、あるいは環状体形状の本体である。リングのような本体は、上部(22)または上部本体部分、及び下部(24)または、下部本体部分を有する。外周のまわりのリングのような本体中への開口部(26)は、装置のクリップのような作用を有効にする。上部は、その内部表面から下方へ依存するトング(22a)を含む。下部は、トングをそこに収容するに置かれたその内側表面の周りに配置された、溝(24a)を含む。
【0055】
弾性のリングのような装置は、辺縁の水晶体嚢切開縁のまわりに置かれ、それによって縁がトングと溝との間で固定され、装置は辺縁の水晶体嚢切開縁に隣接して固定される場合がある。弾性のリングのような装置は、装置が水晶体嚢にしっかりと嵌められるあるいは水晶体嚢内に固定されることを確実にするために、水晶体嚢にクリップまたはクリップのような構造(
図12を参照)、または生体付着性材料あるいは他の固定する手段で固定される。辺縁の水晶体嚢切開縁に固定された際、弾性のリングは水晶体嚢を辺縁の水晶体嚢切開縁の外部の弾性の部分を中心に向かって引っ張らせる。
【0056】
弾性のリングのような本体は、特に水晶体嚢の所与の前辺縁部における若いヒトの眼の中の天然の水晶体嚢のそれに類似するか同等である弾性の特性を有する1つ以上の材料で作られている。弾性のリングのような本体は、約5から8mmの内径、及び約6から10mmの外径を有する。
【0057】
図2を続けて参照すると、
図11は、水晶体嚢再建装置(1)を備えた弾性のリングのような装置(20)の使用を断面で例示する。弾性のリングのような装置は、水晶体嚢再建装置の柔軟な構成要素が緊張を有する(7)あるいは緊張なし(7’)に関わらず、辺縁の水晶体嚢切開縁に固定され続ける。
【0058】
図12は、白内障手術の後、水晶体嚢中に装置を固定するためのクリップのような構造を含む緊張装置(30)を図示する。緊張装置は、上部構成要素、下部構成要素(32)及び柔軟なリング形状の本体(36)として、弾性のリング形状の本体(20)を含む。
【0059】
下部構成要素は、辺縁の水晶体嚢切開縁が弾性のリング形状の本体によって固定される場合に、下部構成要素の下端(32b)が水晶体嚢の前面に対抗して置かれるように、下部本体部分(24)の下面から上端(32a)で延びる。装置の下部構成要素は、その内部表面のまわりで円周方向に配置され、眼内レンズの触覚を受け取るように構成される、溝(34)を含む。弾性のリング形状の本体の下部構成要素は上端で厚さ約0.2mmから約1mmを有し、下端で厚さ約0.1mmから約0.5mmを有する。下部構成要素は、弾性のリング形状の本体(20)のように、同じ1つ以上の弾性の材料で作られても良い。
【0060】
柔軟なリング形状の本体(36)は、緊張装置の上部(20)及び下部(32)の構成要素と実質的に同心性であり、下部構成要素の下端(32b)から柔軟に上方へ延びる。緊張装置が水晶体嚢内に置かれる場合、柔軟なリング形状の本体の外部表面(36a)は水晶体嚢の内部表面に直接接触する。柔軟な構成要素は水晶体嚢からの定圧下にある。下部構成要素と柔軟なリング形状の本体との間の角度は、水晶体嚢が収縮し弛緩する場合、0度と約90度の間で変化する場合がある。柔軟なリング形状の本体は約0.05mmから約0.75mmの厚みを有しても良く、例えば、シリコン、アクリル、ヒドロゲルあるいはその組み合わせの生物学的適合の材料を含むが、制限されない。水晶体を再建する装置(1)の柔軟な構成要素(7)上の間隙(17a、b)と類似して、柔軟なリング形状の本体の表面は連続的か、あるいは円周方向に配置された多くの間隙を含んでも良い。複数の間隙の各々は約0.1mmから約5mmの幅を有しても良い。
【0061】
本発明は、本発明に固有の目的及び利点と同様に、言及される目的及び利点も達成するように十分に適応されている。上に開示された特定の実施形態は、単に例示目的であり、本発明は、本明細書の教示の恩恵を有している当業者に明白である、異なるが同等な方法で修正及び実施され得る。さらに、本明細書に示される構成または設計の詳細に対しての限定は、以下の請求項に記載される以上には意図されない。それ故、上に開示された特定の例示的な実施形態が変更または修正され得ること、及びすべてのそのような変動が、本発明の範囲及び精神内で考慮されることは明らかである。また、請求項での用語は、他に明確に示されない限り及び特許権者によって明確に定義されない限り、その明白な、通常の意味を有する。